JP4050648B2 - 炭素膜コーティング飲料用ボトル - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、プラスチック製の飲料用ボトルに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、プラスチック容器は、その成形の容易性や軽量性、さらには低コストである点等の種々の特性から、食品分野や医薬品分野等の様々な分野において、包装容器として広く使用されている。
【0003】
しかしながら、プラスチックは、よく知られているように、酸素や二酸化炭素のような低分子ガスを透過する性質を有し、さらに低分子有機化合物が内部に収着してしまうという性質を有しているため、プラスチック容器はガラス等の他の容器に比べて、その使用対象や使用形態が様々な制約を受ける。
【0004】
ここで、収着とは、プラスチックの組成中に低分子有機化合物が浸透し拡散してプラスチック中に吸収されている現象をいう。
【0005】
例えば、ビール等の炭酸飲料をプラスチック容器に充填した場合、プラスチックを透過して容器の内部に浸透する酸素によって、内容物である飲料が経時的に酸化を起こし劣化してしまったり、また炭酸飲料の炭酸ガスがプラスチックを透過し容器の外部に放出されてしまうため、炭酸飲料が気の抜けた飲料になってしまう。
【0006】
また、オレンジジュース等の香気成分を有する飲料をプラスチック容器に充填した場合、飲料に含まれる低分子有機化合物である香気成分(例えばオレンジジュースのリモネン等)がプラスチックに収着されるため、飲料の香気成分の組成がバランスを崩して、飲料の品質が劣化してしまう虞が有る。
【0007】
また、プラスチック容器については、その組成中に含まれる低分子化合物の溶出が問題になる場合が有る。すなわち、プラスチック容器に純度を要求される内容物(特に液体)を充填した場合、プラスチック組成中に含まれている可塑剤や残留モノマ、その他の添加剤が内容物中に溶出し、内容物の純度を損なったりする可能性が有る。
【0008】
一方、使用済み容器の回収が、現在、社会問題化しており、資源のリサイクル化が進められているが、プラスチック容器を再充填容器として使用しようとしても、ガラス容器の場合と異なり、使用後回収までの間、環境中に放置されていると、その間にカビ臭など種々の低分子有機化合物がプラスチック容器に収着する。この収着した低分子有機化合物は、洗浄後もプラスチック内に残存するため、プラスチック容器を再充填容器として使用する場合、収着された低分子有機化合物が異成分として充填された内容物中に徐々に溶け出してしまい、内容物の品質低下や衛生上の問題が生じる。このため、プラスチック容器は、リターナブル容器として使用されている例はほとんどない。
【0009】
上記のようなプラスチック容器の低分子ガスを透過する性質や低分子有機化合物が内部に収着してしまうという性質を抑制するために、プラスチックを配向させ結晶化度を向上させたり、より収着性の低いプラスチックやアルミの薄膜等を積層する方法も使用されているが、何れもプラスチック容器の特質を維持したままで、ガスバリア性や収着の問題を完全に解決することは出来ていない。
【0010】
ここで、近年、DLC(Diamond Like Carbon )膜の薄膜形成技術が知られてきており、従来、ビーカやフラスコ等の実験器具をDLC膜によりコーティングしたものが知られている。このDLC膜は、炭素間のSP3 結合を主体としたアモルファスな炭素で、非常に硬く、絶縁性に優れ、高屈折率で非常に滑らかなモルフォロジを有する硬質炭素膜である。
【0011】
従来、このようなDLC膜の形成技術をビーカやフラスコ等の実験器具のコーティングに使用したものとしては、特開平2−70059号公報に記載されたものがある。
【0012】
この特開平2−70059号公報に記載されたDLC膜の形成装置は、次のようなものである。すなわち、図16に示すように、炭素源ガスの導入口1Aと排気孔1Bを有する反応室1内に陰極2が配置され、この陰極2に形成された空所2A内にビーカ等の実験器具3が収容される。そして、この実験器具3の内側にアースされた陽極4が挿入された後、反応室1内が排気孔1Bからの排気によって減圧される。そして、導入口1Aから炭素源ガスが導入された後、陰極3に高周波電源5から高周波が印加され、炭素源ガスが励起されて発生するプラズマにより、実験器具3の表面にDLC膜が形成される。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したDLC膜の形成装置は、反応室1内に陰極2および陽極4が収容され、反応室1の容積がコーティング対象である実験器具3の大きさに比べて非常に大きいため、真空操作にかかる時間とエネルギの無駄が多く、さらに、このDLC膜の形成装置は形成速度が10〜1000Å/分であり、その生成速度が遅いため、安価に連続生産することは困難であるという問題を有している。
【0014】
この従来のDLC膜の形成装置は、ビーカやフラスコ等の実験器具を対象としこれに付加価値をつけることを目的にしているため、製造コストや製造時間をあまり問題にしていないが、ビールやオレンジジュース等の飲料用の充填容器は、安価なものが大量に必要とされるため、このDLC膜形成装置を飲料用容器の製造に使用することは出来ない。
【0015】
また、上記したDLC膜の形成装置によれば、炭素源ガスが陰極2とコーティング対象である実験器具3との間の隙間にも回り込むため、器具3の内面に限定してコーティングを行うことが出来ない。
【0016】
飲料用の充填容器は、ビーカやフラスコ等の実験器具の場合と違って、工場内の製造工程においてまた販売ルートにおいて、充填容器同士がぶつかったり擦れあったりする機会が多い。このため、飲料用の充填容器の外面にDLC膜を形成した場合、このDLC膜は薄く硬いものであるので、DLC膜自体が損傷して、充填容器の商品価値を損なうことが考えられる。したがって、飲料用の充填容器については、容器の内壁面にのみDLC膜を形成するようにすることが要求される。
【0017】
この発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものである。すなわち、この発明は、プラスチック容器の特質を維持したままでプラスチックの有するガスバリア性および収着の問題を解消し、リターナブルな使用を可能にしてプラスチック容器の使用範囲と使用形態の拡大を図ることが出来るとともに、安価で連続生産することができ、しかも取扱いにおいて損傷の虞のない炭素膜コーティング飲料用ボトルを提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による炭素膜コーティング飲料用ボトルは、一体的に成形されたプラスチックボトルの内壁面に、原料ガスの低温プラズマをボトル内壁側にのみ発生させることで均一に、硬質炭素膜が形成されており、前記硬質炭素膜は、容積700ml当たり200W以上1000W以下の高周波電力が投入されて得られた、低分子有機化合物である香気成分のボトルにおける収着性が実質的に0の緻密な硬質炭素膜であり、前記硬質炭素膜の密度が1.54g/cm 3 以上であり、前記硬質炭素膜の膜厚が0.05〜5μmの範囲にあることを特徴とする。
【0019】
【作用】
上記の炭素膜コーティング飲料用ボトルによれば、プラスチック容器の内壁面に均一にコーティングされた緻密な硬質炭素膜によって、酸素や二酸化炭素のような低分子無機ガスの透過度を著しく減少させることが出来るだけでなく、臭いを有する各種の低分子有機化合物の収着を、完全に抑制することが出来る。また、この硬質炭素膜の形成によって、プラスチック容器の有する透明性が損なわれることもない。なお、硬質炭素膜としては、ダイヤモンド状炭素膜が好ましい。このダイヤモンド状炭素膜とは、iカーボン膜または水素化アモルファスカーボン膜とも呼ばれる硬質炭素膜のことで、SP3 結合を主体にしたアモルファスな炭素膜のことである。
【0020】
また、上記炭素膜コーティング飲料用ボトルは、従来の飲料用ガラス容器の代りに、リターナブル容器として使用することが出来る。
【0021】
【実施例】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、この発明による炭素膜コーティング飲料用ボトルを製造するための製造装置を示している。この製造装置は、基台10上にセラミック製の絶縁板11が取り付けられ、この絶縁板11上に外部電極12が取り付けられている。この外部電極12は、DLC膜形成のための真空チャンバを兼ねているものであり、その内部にコーティング対象の容器20を収容するための空間が形成されている。この外部電極12内の空間はそこに収容される容器20の外形よりも僅かに大きくなるように形成されている。この容器20は、飲料用ボトルであるが、他の用途に使用される容器であってもよい。
【0023】
外部電極12は、本体部12Aと、この本体部12Aの上部に着脱自在に取り付けられて本体部12Aの内部を密閉するようになっている蓋体12Bとから構成されている。この外部電極12には、整合器13を介して高周波電源14が接続されている。また、外部電極12内の空間には、排気管15が連通されており、図示しない真空ポンプによって空間内の空気が排気されるようになっている。
【0024】
外部電極12の空間内には、内部電極16が挿入され、空間の中心部に位置するように配置されている。この内部電極16は、その外形が容器20の口部20Aから挿入可能でかつ容器20の内部形状とほぼ相似形になるように形成されている。外部電極12と内部電極16との間隔は、あらゆる位置において、10〜150mmの範囲でほぼ均一に保たれるようにするのが好ましい。
【0025】
この内部電極16には、原料ガス供給管17が接続されていて、図示しないガス流量制御器を介してこの原料ガス供給管17に原料ガスが流入され、内部電極16に形成された吹出し孔16Aから吹き出されるようになっている。この吹出し孔16Aは、吹き出した原料ガスを均一に拡散させるために、図示のように内部電極16の側部に複数個形成されることが好ましいが、原料ガスが直ぐに均一に拡散されるような場合は、内部電極16の頂部に1個形成するようにしても良い。内部電極16は、原料ガス供給管17を介してアースされている。
【0026】
絶縁板11には、図2および3に拡大して示すように、複数個(この実施例では4個)の溝11Aが形成されており、図2から分かるように、外部電極12内に容器20が収容され容器20の口部20Aが絶縁板11に当接された状態で、外部電極12の内壁面と容器20の外壁面との間に形成される容器の外部空間21Aと排気管15とが、溝11Aを介して連通されるようになっている。
【0027】
次に、上記製造装置によるDLC膜の形成の方法について説明する。
【0028】
外部電極12内には、蓋体12Bを外した状態で、本体部12Aの上部開口部からプラスチック製の容器20が差し込まれて、収容される。このとき、内部電極16は、容器20の口部20Aから容器20内に挿入される。そして、口部20Aが絶縁板11上に当接されて容器20が外部電極12内に位置決めされた後、蓋体12Bが閉められて、外部電極12内が密閉される。このとき、外部電極12の内壁面と容器20の外壁面との間の間隔は、ほぼ均一に保たれており、かつ容器20の内壁面と内部電極16の外壁面との間の間隔も、ほぼ均一に保たれている。
【0029】
この後、外部電極12内の空気を真空ポンプにより排気して、外部電極12内を真空にする。このとき、絶縁板11に形成された溝11Aによって、容器20の内部空間21Bのみならず容器20の外壁面と外部電極12の内壁面との間の外部空間21Aも排気されて、真空にされる。これは、外部空間21Aも真空にしておかないと、後述するプラズマ発生の際に、この外部空間21A内が高温になり、容器20のプラスチック材質に悪影響を与えるためである。
【0030】
この時の真空度は、10-2〜10-5torrが望ましい。これは、10-1以上の真空度で良いとすると容器内に不純物が多くなり過ぎ、10-5未満の真空度にしようとすると、排気するのに時間とエネルギがかかり過ぎるためである。
【0031】
この後、図示されていないガス流量制御器から原料ガス供給管17に炭素源の原料ガスが供給され、内部電極16に形成された吹出し孔16Aから真空状態の内部空間21B内に吹き出される。この原料ガスの供給量は、1〜100ml/minが好ましく、この原料ガスの供給によって、内部空間21B内の圧力が0.5〜0.001torr以内に調整される。
【0032】
ここで、外部空間21A内は溝11Aを介して排気されるため、外部空間21A内の圧力は内部空間21B内の圧力よりも少し遅れて低下する。このため、排気直後は外部空間21A内の圧力が内部空間21Bよりも僅かに高くなっている。したがって、排気直後に原料ガスを供給するようにすれば、内部空間21B内に吹き出された原料ガスが外部空間21A内に入り込むことはない。
【0033】
原料ガスとしては、常温で気体または液体の脂肪族炭化水素類,芳香族炭化水素類,含酸素炭化水素類,含窒素炭化水素類などが使用される。そして、特に、炭素数が6以上のベンゼン,トルエン,o-キシレン,m-キシレン,p-キシレン,シクロヘキサン等が望ましい。これらの原料は、単独で用いても良いが、2種以上の混合ガスとして使用するようにしても良い。さらに、これらのガスをアルゴンやヘリウムの様な希ガスで希釈して用いる様にしても良い。
【0034】
この原料ガスの供給後、外部電極12に整合器13を介して高周波電源14から電力が投入される。この電力の投入によって、外部電極12と内部電極16間にプラズマが発生される。このとき、内部電極16はアースされているが、外部電極12は絶縁板11により絶縁されているため、外部電極12に負の自己バイアスが発生し、これによって外部電極12に沿った容器20の内壁面にDLC膜が均一に形成される。
【0035】
すなわち、容器20の内壁面におけるDLC膜の形成は、改良されたプラズマCVD法により行われる。このプラズマCVD法によれば、低温プラズマを利用することで、DLC膜の形成時の温度が比較的低い温度に設定できるため、プラスチックのような耐熱性の悪い物品を基盤とする場合に好適であり、しかも比較的安価で広い面積のDLC膜の形成を行うことが出来る。
【0036】
ここで、低温プラズマとは、反応器内部が低圧に維持されている場合、プラズマ中の電子温度が高く、イオンや中性分子の温度がそれに比べて著しく低い状態のプラズマ、すなわち、いわゆる非平衡状態のプラズマのことをいう。
【0037】
外部電極12と内部電極16の間にプラズマが発生すると、絶縁されている外部電極12の内壁面に電子が蓄積するため、この外部電極12が負電位に自己バイアスされる。外部電極12側には、この蓄積電子のために500〜1000V程度の電位降下が生じる。このとき、プラズマ中に炭素源となる炭酸ガスが存在することによって、プラスにイオン化された炭素源が外部電極12に沿うように位置されている容器20の内壁面に選択的に衝突し、ついで近接する炭素同士が結合することによって、容器20の内壁面に極めて緻密なDLC膜からなる硬質炭素膜が形成される。
【0038】
なお、DLC膜からなる硬質炭素膜とは、iカーボン膜または水素化アモルファスカーボン膜(a−C:H)とも呼ばれる硬質炭素膜のことで、SP3 結合を主体にしたアモルファスな炭素膜のことである。
【0039】
DLC膜の膜厚は、高周波の出力,容器20内の原料ガスの圧力,供給ガス流量,プラズマ発生時間,自己バイアスおよび原料の種類等に依存するが、低分子有機化合物の収着抑制効果およびガスバリア性の向上効果と、プラスチックとの密着性,耐久性および透明性等との両立を図るため、0.05〜5μmとなるようにするのが好ましい。
【0040】
また、DLC膜の膜質も、同様に、高周波の出力,容器20内の原料ガスの圧力,供給ガス流量,プラズマ発生時間,自己バイアスおよび原料の種類等に依存する。高周波出力の増加,容器20内の原料ガスの圧力減少,供給ガスの流量減少,自己バイアスの増加および原料の炭素数の低下等は、何れもDLC膜の硬化,緻密さの向上,圧縮応力の増大および脆さの増大の原因になる。このため、プラスチックとの密着性および膜の耐久性を維持しつつ低分子有機化合物の収着抑制効果やガスバリア効果を最大限に発揮させるには、高周波出力が50〜1000W,容器20内の原料ガス圧が0.2〜0.01torr,供給ガスの流量が10〜50ml/min,自己バイアスが−200〜−1000V,原料ガスの炭素数が1〜8個程度になるように設定されるのが好ましい。
【0041】
なお、DLC膜とプラスチックとの密着性をさらに向上させるために、DLC膜を形成する前に、アルゴンや酸素などの無機ガスによってプラズマ処理を行い、容器20の内壁面を活性化させる様にしても良い。
【0042】
図4は、以上のようにしてDLC膜が形成されたプラスチック容器の側断面を示している。図中、20Aはプラスチック材を、20Bはプラスチック材20Aの内壁面に形成されたDLC膜をそれぞれ示している。このように、内壁面をDLC膜20Bによってコーティングされたプラスチック容器は、酸素や二酸化炭素のような低分子無機ガスの透過度を著しく減少させることが出来るだけでなく、臭いを有する各種の低分子有機化合物の収着を、完全に抑制することが出来る。また、このDLC膜の形成によって、プラスチック容器の有する透明性を損なうこともない。
【0043】
なお、容器20を形成するプラスチック材としては、ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリスチレン樹脂,シクロオレフィンコポリマ樹脂,ポリエチレンテレフタレート樹脂,ポリエチレンナフタレート樹脂,エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂,ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂,ポリメタクリル酸メチル樹脂,アクリロニトリル樹脂,ポリ塩化ビニル樹脂,ポリ塩化ビニリデン樹脂,アクリロニトリル・スチレン樹脂,アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂,ポリアミド樹脂,ポリアミドイミド樹脂,ポリアセタール樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリブチレンテレフタレート樹脂,アイオノマ樹脂,ポリスルホン樹脂および4フッ化エチレン樹脂などが挙げられる。
【0044】
上記製造装置および製造方法によって製造された炭素膜コーティングプラスチック容器について行った(1) DLCの膜厚、(2) DLCの密度、(3) 密着性1、(4) 密着性2、(5) 耐アルカリ性、(6) 炭酸ガスバリア性、(7) 酸素ガスバリア性、(8) 低分子有機化合物(香気成分)の収着性の各評価の結果は、下記の通りである。
【0045】
なお、各評価は、以下の方法により行った。
【0046】
(1) DLCの膜厚
予め容器の内面にマジックインキ等でマスキングを行って、DLCを被覆した後、ジエチルエーテル等でマスキングを除去し、Vecco社製、表面形状測定器DECTACK3によって膜厚を測定した。
【0047】
(2) DLCの密度
成膜前と成膜後の重量差を測定し、(1) で求めた膜厚から密度を算出した。
【0048】
(3) 密着性1
容器の側壁部について、JISK5400の碁盤目テープ法に準じて、以下の条件で行った。
【0049】
▲1▼切り傷のすきま間隔:1mm
▲2▼ます目の数 :100
(4) 密着性2
容器の側壁部について、新東科学製、連続加重式引掻試験機HEIDON22を使用して、以下の条件で行った。密着の程度は、膜が剥がれ始めたときの引掻針にかかる垂直加重で表した。
【0050】
▲1▼引掻針の素材、形状:ダイヤ、50μR
▲2▼加重速度 :100g/min
▲3▼テーブル速度 :1000mm/min
(5) 耐アルカリ性
水酸化ナトリウムを10wt%となるように添加したアルカリ溶液を容器内部に充填し、75℃の湯浴中に24時間浸漬し、DLCの形状変化、剥離の有無を確認した。結果は24時間以上の浸漬で変化のないものを優、12時間以上の浸漬で変化のないものを良として表した。
【0051】
(6) 炭酸ガスバリア性
MODERN CONTROL社製PERMATRANC−4型を使用して、炭酸ガスの透過量を25℃で測定した。
【0052】
(7) 酸素ガスバリア性
MODERN CONTROL社製OX−TRANTWINを使用して、酸素の透過量を40℃で測定した。
【0053】
(8) 低分子有機化合物(香気成分)の収着性
環境材の一種として臭いを有する低分子有機化合物(香気成分)を使用し、松井らの方法(J.Agic.Food.Chem.,1992,40,1902−1905)を参考にして試験を行った。
【0054】
手順は以下の通りである。
【0055】
▲1▼各種香気成分(n−オクタン、n−オクタナール、n−オクタノール、ヘキサン酸エチル、d−リモネン)をそれぞれ100ppm添加した0.3%シュガーエステル溶液を作り、モデルフレーバ溶液とする。
【0056】
▲2▼モデルフレーバ溶液を容器に700ml充填し、蓋をした後、20℃で1カ月間保管する。
【0057】
▲3▼1カ月後、モデルフレーバ溶液を廃棄し、60℃の蒸留水で容器の内部を洗浄した後乾燥させる。
【0058】
▲4▼ジエチルエーテルを充填し、容器に収着した香気成分を抽出する。
【0059】
▲5▼ジエチルエーテルを容器から取りだし、無水硫酸ナトリウムを添加して脱水する。
【0060】
▲6▼アミルベンゼンを内標準としてガスクロマトグラフによって定量分析を行う。結果は、1ppmの香気成分が存在する水溶液が容器中にある場合、容器に収着する香気成分の量をμgで表示する。従って、単位はμg/ppm/bottleとなる。
【0061】
[試験1]
プラスチック容器として容量700mlのポリエチレンテレフタレート樹脂製容器(三井ペット樹脂(株)製PET樹脂、タイプL125)を図1の外部電極12内に収納し、固定した。
【0062】
次に、真空ポンプを作動させ、外部電極12内を10-4torr以下まで真空(背圧)にした後、前処理としてアルゴンを30ml/minの流速で圧力が0.04torrとなるようにプラスチック容器内部に導入し、300WのRf電力を投入して容器内面をプラズマ処理した。その後、補助ガスにアルゴンを用い、原料ガスとしてトルエン,シクロヘキサン,ベンゼンまたはp−キシレンを容器内部に導入し、図5に示した条件で容器の内面にDLCを均一に被覆した。
【0063】
試験結果
膜厚、成膜速度、密度、密着性1、密着性2、耐アルカリ性の各評価の結果は図6に示す通りである。密度はいずれも2.00g/cm3 を越えており、膜は極めて緻密であった。
【0064】
碁盤目試験の結果、ポリエチレンテレフタレート樹脂との密着性は良好で、実際の使用に十分耐えられることが明らかになった。また、耐アルカリ性は問題なく、DLCの膜がきわめて安定しており、ポリエチレンテレフタレート樹脂を完全に保護していることが判明した。
【0065】
酸素透過度、二酸化炭素透過度及び各種香気成分の収着の程度に関しては、その結果が図7に示されている。緻密なDLCの膜は香気成分の収着を完全に抑制するだけでなく、酸素及び二酸化炭素の透過を効果的に抑制した。
【0066】
また、DLCを内面に被覆したプラスチック容器の胴部の紫外可視領域における透過スペクトルが、図8に示されている。
【0067】
約500nm前後から紫外部にかけて透過率が急激に減少しており、DLC膜のコーティングは、内容物の紫外線による劣化をも抑制するのに有効であることが示唆された。
【0068】
図9は、試験1の条件でプラスチック容器の胴部に被覆された薄膜のラマン・スペクトルである。
【0069】
[試験2]
プラスチック容器として容量700mlのポリアクリロニトリル・スチレンコポリマ樹脂製容器(三菱モンサント化成製:PAN樹脂、タイプL700)が使用される以外は、試験1と同様の方法により容器内面にDLC膜を形成した。DLC膜の形成の条件は図10に示される通りである。また、試験1と同様にして、膜厚,密度,密着性1,密着性2,耐アルカリ性,炭酸ガスバリア性,酸素ガスバリア性および低分子有機化合物の収着性について各試験を行った。
【0070】
試験結果
膜厚,膜形成速度,密度,密着性1,密着性2および耐アルカリ性についての試験結果は、図11に示される通りである。膜厚および密度については、試験1の場合と同様に、良好であった。また、密着性1および密着性2については、試験1の場合と同様に問題がなく、DLCとアクリロニトリル・スチレンコポリマ樹脂との密着性はポリエチレンテレフタレート樹脂と同様で、実用上問題のないことが判明した。
【0071】
酸素透過度、二酸化炭素透過度及び各種香気成分の収着の程度については、その結果が図12に示されている。すなわち、アクリロニトリル・スチレンコポリマ樹脂は本来ガスバリア性に優れており、さらに、DLCを被覆したことで、酸素及び二酸化炭素の透過量が極めて低いレベルに達することが明らかになった。各種香気成分の収着量は、試験1と同様に、検出限界以下であり、官能評価においても問題なかった。
【0072】
[試験3]
プラスチック容器として容量700mlのシクロオレフィンコポリマ樹脂製容器(三井石油化学製:COC樹脂タイプAPL6015)を使用した以外は、試験1と同様の方法により、DLCを容器内部に被覆した。DLC膜の形成の条件は図13に示されている。また、試験1と同様に、膜厚、密度、密着性1、密着性2、耐アルカリ性、炭酸ガスバリア性、酸素ガスバリア性及び低分子有機化合物の収着性のそれぞれの試験を行った。
【0073】
試験結果
膜厚、成膜速度、密度、密着性1、密着性2、耐アルカリ性の各試験の結果は図14に示されている。試験1及び試験2と同様に、いずれの試験項目についても問題はなく、特にプラスチック容器とDLCとの密着性は極めて良好であった。
【0074】
酸素透過度、二酸化炭素透過度及び各種香気成分の収着性については、その結果が図15に示されている。シクロオレフィンコポリマ樹脂はオレフィン系樹脂であるため、酸素透過度、二酸化炭素透過度および香気成分収着量が比較的大きいが、DLCにより被覆することにより、かなりのレベルまで抑制できることが判明した。
【0075】
【発明の効果】
以上のように、本発明による炭素膜コーティング飲料用ボトルは、ガスバリア性に優れているとともに、臭い成分等の低分子有機化合物の収着を完全に抑制することが出来、広い分野の包装容器として利用することを可能にし、しかも再充填可能なリターナブル容器として使用することが出来る。しかも、この炭素膜コーティング飲料用ボトルは、硬質炭素膜が容器の内壁面に形成されているので、容器の取扱いにおいて、形成された硬質炭素膜が損傷する虞はない。
【0076】
容器の内壁面に形成される硬質炭素膜がダイヤモンド状炭素膜の場合には、上記効果が、一層顕著になる。
【0077】
また、この炭素膜コーティング飲料用ボトルは、従来の飲料用ガラス容器の代りにリターナブル容器として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による炭素膜コーティング飲料用ボトルの製造に用いる製造装置の一実施例を示す側断面図である。
【図2】同実施例の一部を拡大して示す断面図である。
【図3】同実施例の絶縁板を示す平面図である。
【図4】炭素膜コーティング飲料用リターナブルボトルの一実施例を示す側断面図である。
【図5】硬質炭素膜の形成条件を示す表である。
【図6】図5の条件により形成された硬質炭素膜の膜厚等の評価結果を示す表である。
【図7】図5の条件により形成された硬質炭素膜の酸素透過度等の評価結果を示す表である。
【図8】図5の条件により硬質炭素膜が形成されたプラスチック容器の紫外可視領域における透過スペクトルを示すグラフである。
【図9】図5の条件により形成された硬質炭素膜のラマン・スペクトルを示すグラフである。
【図10】硬質炭素膜の他の形成条件を示す表である。
【図11】図10の条件により形成された硬質炭素膜の膜厚等の評価結果を示す表である。
【図12】図10の条件により形成された硬質炭素膜の酸素透過度等の評価結果を示す表である。
【図13】硬質炭素膜のさらに他の形成条件を示す表である。
【図14】図13の条件により形成された硬質炭素膜の膜厚等の評価結果を示す表である。
【図15】図13の条件により形成された硬質炭素膜の酸素透過度等の評価結果を示す表である。
【図16】従来技術を示す断面図である。
【符号の説明】
20 容器(プラスチックボトル)
20B DLC膜(硬質炭素膜)
Claims (3)
- 一体的に成形されたプラスチックボトルの内壁面に、原料ガスの低温プラズマをボトル内壁側にのみ発生させることで均一に、硬質炭素膜が形成されており、前記硬質炭素膜は、容積700ml当たり200W以上1000W以下の高周波電力が投入されて得られた、低分子有機化合物である香気成分のボトルにおける収着性が実質的に0の緻密な硬質炭素膜であり、前記硬質炭素膜の密度が1.54g/cm 3 以上であり、前記硬質炭素膜の膜厚が0.05〜5μmの範囲にあることを特徴とする炭素膜コーティング飲料用ボトル。
- 前記硬質炭素膜は、前記香気成分としてのd−リモネンの収着性が実質的に0の緻密な硬質炭素膜であることを特徴とする請求項1に記載の炭素膜コーティング飲料用ボトル。
- リターナブルボトルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素膜コーティング飲料用ボトル。
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