JP4048030B2 - 水解性物品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に、トイレの清掃等に使用するに好適な水解性物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、トイレの清掃には、雑巾に替わって使い捨ての繊維シートを使用することが多くなっている。中でも水解性の繊維シートに水解性の処理液を含浸させた使用後にトイレ等に流せるタイプのものが好まれ使用されている。
【0003】
しかしながら、水解性タイプのものは、使用に耐えうる強度が要求されるのに加え、さらにトイレを詰まらせないよう水解時間が短いことが要求される。そこで、強度及び水解性(分散性)を向上させるべく、構造及び処理液(清浄剤)を特定した特開平3−113098号公報記載の方法、水溶性熱融着樹脂を使用した特開平3−286727号公報記載の方法、多層構造とし各層に適宜紙力増強剤を含有させた特開平4−370300号公報記載の方法、バインダーとしてポリビニルアルコールを使用するとともにカルボン酸塩を使用した特開平11−50389号公報記載の方法、等が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法によっても強度と水解性とをともに向上させるには十分といえない。また、現在では、使用時の快適さという観点から、水解性物品がやわらかく手触りが良いことまで望まれているが、これを解決する方法が提案されるには至っていない。
【0005】
そこで、本発明の課題は、十分な強度を有し、かつ水解性がよく、しかも柔軟性に優れた水解性物品を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は、次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
未叩解パルプからなるバインダー未使用の水解性繊維シートの面に、叩解パルプとポリビニルアルコール繊維とからなるバインダー未使用の水解性繊維シートが積層され、
これらのシートに、水溶性溶剤10〜50質量%、水50〜80質量%の処理液が80〜240質量%含浸され、かつ凸部を有するエンボスロールの間に前記水解性繊維シート が積層状態で通されて、前記水解性繊維シートの前記凸部どうしが接する部分に対応する部分に切れ目が入れられたことを特徴とする水解性物品。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記ポリビニルアルコール繊維の配合率が3質量%とされた請求項1記載の水解性物品。
【0008】
<請求項記載の発明>
未叩解パルプがNBKP及びLBKPとされ、その質量比が6:4〜4:6とされた請求項1又は請求項2記載の水解性物品。
【0009】
<請求項記載の発明>
叩解パルプがNBKP及びLBKPとされ、その質量比が6:4〜10:0とされた請求項1〜3のいずれか1項に記載の水解性物品。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳説する。なお、本発明に係る水解性物品は、その用途が特に限定されるものではなく、例えば、人間の肌を洗浄するために使用する水解性物品等をも含むものであるが、以下では、その例として、近年需要の増加しているトイレを清掃するための水解性物品について説明する。
【0011】
本実施の形態に係る水解性物品は、図1に示すように、内層シート1の少なくとも片面に、本実施の形態では両面に、外層シート2,2が積層され、これらのシート1,2,2に、処理液、本実施の形態では清浄剤が含浸されたものである。
【0012】
内層シート1は、未叩解パルプからなる水解性の繊維シートである。この繊維シートは、原料となるパルプが未叩解であるため、水解性に優れる。原料となるパルプは、特にその種類を限定するものではないが、NBKPとLBKPとを、その質量比が6:4〜4:6となるように使用するのが好ましい。LBKPはNBKPに比べ強度が低いので、LBKPを多く使用すると水解性が向上する。さらに、バインダーを未使用とすれば、より水解性が向上する。
【0013】
外層シート2,2は、叩解パルプとポリビニルアルコール(PVA)繊維とからなる水解性の繊維シートである。外層シートは2,2は、原料となるパルプとして叩解パルプを使用しているので強度及び柔軟性に優れる。原料となる叩解パルプは、特にその種類を限定するものではないが、NBKPとLBKPとを、その質量比が6:4〜10:0となるように使用するのが好ましい。NBKPはLBKPに比べ強度及び柔軟性に優れるので、NBKPを多く使用すると強度及び柔軟性が向上する。また、外層シート2,2には、叩解パルプとともにポリビニルアルコール繊維を使用するので、廃棄時(水解時)においては、叩解パルプがばらけ易くなり、水解性が向上する。さらに、ポリビニルアルコール繊維は、水解前(シート状態)においては、叩解パルプを結合させる作用を有するのでバインダーを未使用としても十分な強度を確保することができる。バインダーを未使用としておけば、水解時における水解性が、一段と向上する。
【0014】
内層シート1及び外層シート2,2に含浸させる処理液は、水溶性溶剤10〜50質量%と水50〜80質量%とからなる清浄剤であり、シート1,2,2に対し、80〜240質量%の割合で含浸させた。上記したようなシート自体の構成による水解性向上効果により、水の配合割合を80%以下に抑えることができるのであるが、水の配合割合を80%以下とすることにより、さらに、シートの強度向上効果、及びシートのふんわり感向上効果をも期待することができる。
【0015】
水溶性溶剤としては、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類等から1種または数種を適宜選択して使用することができる。また、その他に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤や、殺菌剤、除菌剤、消臭剤、防腐剤等の補助剤を適宜含有させることもできる。
【0016】
本実施の形態においては、図2及び図3に示すような紙面上側及び下側が二等辺三角形となった6角形の凸部3,3…を有するエンボスロール4,4の間にシート1,2,2を積層状態で通し、エンボス加工した。シートを積層状態で通すことにより、シートどうしの貼合及びシートの嵩高さ、柔軟性を得ることができる。凸部3,3の重なりL(図3参照)は、内層シート1の坪量を35g/m2、厚さを220μm、外層シート2,2の坪量を35g/m2、厚さを200μmとした場合において、850μmとした。これにより、シートの凸部3,3どうしが接する部分3Aに対応する部分に切れ目が入ることになり、シートの水解性が一層向上する。なお、坪量はJIS P 8124に基づく。また、厚さはJIS P 8111の条件の大気中で、尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK G型」を用い、直径10mmの2枚の平行円板の間にシートを挟んで測定した場合に基づく。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
(実施例1〜4及び比較例1〜4)
内層シートの両面に外層シートを積層し(3層構造)清浄剤を含浸させた試料について、温度23±1℃、湿度50±2%に設定した恒温恒湿室で、シート強度、水解性、洗浄性、及びシートの柔軟性を測定した。清浄剤は、2種用意した。清浄剤の配合成分及び配合割合は表1に示した。
【0018】
【表1】
Figure 0004048030
【0019】
評価方法は、下記のとおりである。
シート強度:試料の流れに合わせ試料裁断機で25mm×150mmに裁断し試験片とした。この試験片を、ロードセル引張り試験機のつかみに締付け、荷重をかけ、破断時の指示値を測定した。つかみ間隔は50±2mmとし、スピードは100mm/minとした。測定値が110g以下の場合を×とした。
水解性:試料を試料裁断機で100mm×100mmに裁断し試験片とした。ビーカーに350mlの水を入れ、マグネチックスターラー(円盤型回転子、回転数表示型)で回転数を600±10回転/minにした後、試験片を入れた。試験片が繊維状に分散した状態(目視)になるまでの時間を測定した。測定値が200秒以上の場合を×とした。
洗浄性:30名の使用者のうち5名以上の者が汚れの落ちが悪いと評価した場合を×とした。
柔軟性:30名の使用者のうち5名以上の者が柔軟性が悪いと評価した場合を×とした。
試験条件及び結果を表2に示した。
【0020】
【表2】
Figure 0004048030
【0021】
実施例1と比較例2との対比から、内層として叩解パルプを使用するより未叩解パルプを使用する方が水解性に優れることが知見された。実施例2と比較例3との対比から、外層として未叩解パルプを使用するより叩解パルプを使用する方が強度に優れることが知見された。実施例1と比較例4との対比から、外層にPVA繊維を混合させた方が、シート強度及び水解性に優れることが知見された。実施例3と実施例4との対比から、外層シートに使用するパルプとしてはNBKPを多く配合した方が強度に優れることが知見された。実施例1と比較例1との対比から、清浄剤の水配合率を80%以下にした方がシート強度及び洗浄性に優れることが知見された。
【0022】
(実施例5)
試験例1のPVA繊維3質量%のシート(条件1)と、PVA繊維の配合率を5質量%に変更したシート(条件2)とについて、シートの強度と水解性を測定した。結果を、表3に示した。
【0023】
【表3】
Figure 0004048030
【0024】
表3より、PVA繊維の配合率が3質量%のシートは、5質量%のシートと比較して、若干シート強度が劣るものの、水解性が著しく優れることが知見された。したがって、PVA繊維の配合率が3質量%程度で、水解性が最も優れた状態になることが分かった。
【0025】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明に係る水解性物品によれば、十分な強度を有し、かつ水解性がよく、しかも柔軟性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態にかかる水解性物品の断面図である。
【図2】 エンボスロールの平面図である。
【図3】 図2のA−A線矢視図である。
【符号の説明】
1…内層シート、2…外層シート、3…凸部、4…エンボスロール。

Claims (4)

  1. 未叩解パルプからなるバインダー未使用の水解性繊維シートの面に、叩解パルプとポリビニルアルコール繊維とからなるバインダー未使用の水解性繊維シートが積層され、
    これらのシートに、水溶性溶剤10〜50質量%、水50〜80質量%の処理液が80〜240質量%含浸され、かつ凸部を有するエンボスロールの間に前記水解性繊維シートが積層状態で通されて、前記水解性繊維シートの前記凸部どうしが接する部分に対応する部分に切れ目が入れられたことを特徴とする水解性物品。
  2. 前記ポリビニルアルコール繊維の配合率が3質量%とされた請求項1記載の水解性物品。
  3. 未叩解パルプがNBKP及びLBKPとされ、その質量比が6:4〜4:6とされた請求項1又は請求項2記載の水解性物品。
  4. 叩解パルプがNBKP及びLBKPとされ、その質量比が6:4〜10:0とされた請求項1〜3のいずれか1項に記載の水解性物品。
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