JP4047645B2 - パルス電源 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は立上がりの早い矩形波状のパルス電流を発生するパルス電源について、主に平坦性を形成する波形成形方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子ビームや陽子ビームを扱う加速器は物理学の研究や医療研究などの分野に広く利用されている。このようなビームは電磁石や静電気によってビームを加速したり、軌道を曲げたり、戻したり、切り取ったりと緻密な制御がなされる。このような電磁石にはマイクロ秒から数十ミリ秒の短時間で、しかも、電流では〜数十kAにも達する大電流のパルス電源が用いられる。このようなパルス電流を発生させるには、初期充電されたコンデンサからスタート用半導体スイッチを介してパルス電流を発生させる方法がとられる。この種のパルス電源の従来例を図4に示す。
【0003】
図4において、予め初期充電されたコンデンサ1とスタート用半導体スイッチ2、および電磁石などの負荷3を構成するインダクタ4と抵抗5および放電電流を計測する電流検出器6が閉回路に接続されてパルス回路を形成する。そしてインダクタ4と抵抗5と電流検出器6の直列回路と並列にクローバ用半導体スイッチ7を接続する。スタート用半導体スイッチ2とクローバ用半導体スイッチ7のゲート端子は制御ユニット8に接続する。また、電流検出器6は上記制御ユニット8に接続して測定値のデータを送信する。なお、クローバ用半導体スイッチ7の極性はスタート用半導体スイッチ2がオン動作した時に電流が流入するのを阻止する方向に設ける。
【0004】
次に、動作を説明する。制御ユニット8から動作指令を受けたスタート用半導体スイッチ2がオン動作をし、コンデンサ1から負荷3にパルス電流を供給する。電流検出器6で計測したパルス電流が制御ユニット8に送信され、所定のパルス電流値、例えば最大電流に達すると、制御ユニット8からクローバ用半導体スイッチ7に動作オン指令を送信する。
【0005】
図5に負荷3を流れるパルス電流波形を示し、動作を説明する。縦軸がパルス電流I、横軸が時間tである。このようにインダクタ4にはパルス電流Iが所定のパルス電流値に達する立上げ時間t以降は、インダクタ4と抵抗5とクローバ用半導体スイッチ7とからなる閉回路のインダクタンスLと抵抗Rとで決まる減衰時定数τ=L/Rによって緩やかに減衰する。この回路定数に関しては、インダクタンスL分はインダクタ4が、抵抗R分は抵抗5が支配的である。次に、所定のパルス幅t〜tに達すると、制御ユニット8はクローバ用半導体スイッチ7に動作オフ指令を送信し放電を停止する。その結果、パルス電流はコンデンサ1とスタート用半導体スイッチ2を含む閉回路に転流してパルス電流Iは急激に減衰を続け、コンデンサ1は当初の充電電圧と逆の極性に充電されはじめる。その後、パルス電流Iが零になる時間tに達すると、スタート用半導体スイッチ2はコンデンサ1の逆電圧を受けて動作を停止する。このパルス電流Iの立下げ時間t〜tは立上げ時間tの放電周期と同じ時間となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
加速器は非常に緻密な制御を必要とすることから図5に示す減衰状のパルス波形ではビーム制御が巧く行かず、電流波形の立上げ・下げ時間が速く、その間は長時間にわたり安定度の高い平坦性を有するような矩形波状のパルス電流が欲しいとの要求に応じることができなかった。本発明は上記の背景を鑑みて、パルス電流立上げ後の電流制御方法を、単にコンデンサ放電に頼ることなく、直流電源と併用することによって、平坦性の良い矩形波状のパルス電源を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、コンデンサ1と負荷3との間に介在するスタート用半導体スイッチ2と、負荷3に接続される電流検出器2と、スタート用半導体スイッチ2および電流検出器6に接続される制御ユニット8とを備え、上記制御ユニット8と電流検出器6との間に、直流用半導体スイッチ12と模擬負荷回路11と直流電源10とからなる波形成形回路9を接続し、該直流電源10と負荷3との間に介在する直流用半導体スイッチ12のオン/オフ制御で平坦電流を負荷3に供給するパルス電源であって、
上記波形成形回路が、直流電源10と負荷3とを接続する直流用半導体スイッチ12と、直流電源10と並列にスイッチング作用を有する模擬負荷回路11を接続してなり、
該直流電源10から負荷3が有する平坦電流時のインピーダンスと同一要素を持たせた模擬負荷回路11をオン、直流用半導体スイッチ12をオフさせて予め所定の平坦電流に相当する電流を波形成形回路9内に流し、
電流の立上げ時は上記スタート用半導体スイッチ2をオンさせてコンデンサ1からエネルギーを負荷3に供給し、
平坦電流時は上記模擬負荷回路11をオフ、直流用半導体スイッチ12をオンさせて直流電流を負荷3に転流させ、
立下げ時は上記模擬負荷回路11をオン、直流用半導体スイッチ12をオフさせて、負荷3が有するエネルギーをコンデンサ1に回生するように制御ユニット8で制御することを特徴とするパルス電源である。
【0008】
また、上記スタート用半導体スイッチ2が複数の半導体素子2a、2b、2c、2dのタスキがけ回路で構成され、負荷3からのエネルギーを上記タスキがけ回路を介して、上記コンデンサ1に初期の充電電圧極性と同一極性で回生することを特徴とするパルス電源である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施例である。図4と同一回路を構成する素子には同一記号を付記したのでその説明を省略する。この回路は急速放電が容易なコンデンサを用いたパルス回路と一定の電流を安定に流すことができる直流回路の特徴を互いに組み合わせて構成した新しい波形成形方法である。
【0010】
図1において、図4に示したクローバ用半導体スイッチ7の代わりに波形成形回路9の出力端子を接続する。波形成形回路9は直流電源10とスイッチング作用を備えた模擬負荷回路11とを閉回路に接続し、該模擬負荷回路11の一端は直流用半導体スイッチ12を介してスタート用半導体スイッチ2の出力端子に接続され、他端は直接出力端子の他の一端に接続される。直流用半導体スイッチ12の極性はスタート用半導体スイッチ2が動作した時に電流を阻止する方向とする。また、模擬負荷回路11の極性は直流電源10から供給される直流電流を直流用半導体スイッチ12に転流できる方向とする。制御ユニット8はスタート用半導体スイッチ2、電流検出器6、模擬負荷回路11、直流用半導体スイッチ12に接続され、各半導体にゲート信号を送信したり、放電電流の確認をして、全体的な運転制御をする。
【0011】
図2に負荷3を流れるパルス電流波形と負荷電圧Vの波形を示す。縦軸に負荷電圧Vを示し、他は図5と同じであるので説明を省略する。まず負荷3にどのような矩形波状のパルス電流を流すかを決める。パルス電流Iの立上げ時間0〜tおよび立下げ時間t〜tはコンデンサ1の容量と負荷3の共振周波数によって、所定の平坦電流It1〜t2は直流電源10によって決めることになる。一方、平坦電流It1〜t2の時間帯は電流に変化がないため負荷3の電圧は抵抗5が支配的となり、その負荷電圧Vt1〜t2=(平坦電流It1〜t2)×(抵抗5の抵抗値)によって決まる値となる。
【0012】
ここで、模擬負荷回路11は抵抗5と模擬的に同一特性を有することが望ましい。
すなわち、前記負荷電圧Vt1〜t2に合わせた等価回路構成にする。従って、FETなどの半導体スイッチを用いてスイッチング作用を兼ねた電流抑制制御を行っても良いし、抵抗5と同等抵抗値の抵抗を挿入して半導体スイッチでオン/オフ制御してもよい。
【0013】
次に、動作を説明する。制御ユニット8は模擬負荷回路11に動作オン指令を送信し、直流電源10から直流を供給する。模擬負荷回路11を流れる電流は所定の平坦電流It1〜t2に達すると、その電圧は負荷電圧Vt1〜t2と等価となり、その状態を維持する。次に、制御ユニット8はスタート用半導体スイッチ2に動作オン指令を送信し、所定の電圧に充電されたコンデンサ1は負荷3に向けて放電を開始する。負荷3のパルス電流Iは立上げ時間tで平坦電流I 1〜t2、負荷電圧Vt1〜t2に達する。この段階で制御ユニット8は直流用半導体スイッチ12に動作オン指令を送信し、オン動作をさせると同時に模擬負荷回路11に動作オフ指令を出し、通電を停止させる。その結果、コンデンサ1から与えた電圧はなお電圧降下を続けようとするが、直流電源10からこれを補うように電力の供給を始めることにより、電圧は負荷電圧Vt1〜t2を、電流は平坦電流It1〜t2を維持し、エネルギーの供給源がコンデンサ1から直流電源10に転流したことになる。
【0014】
その後、所定のパルス幅の時間を経過して時間tに達すると、制御ユニット8は模擬負荷回路11に動作オン指令を送信し、通電させると同時に直流用半導体スイッチ12に動作オフ指令を送信して通電を停止する。その結果、負荷3のパルス電流Iは立上げ時と同じ共振周波数で減少しやがて0に達し、負荷電圧Vも同じ時間変化で極性を反転しながらコンデンサ1を逆極性に充電し、やがて最大の逆電圧に達する。その後も共振現象で電流は反転して放電を続けようとするが、スタート用半導体スイッチ2にコンデンサ1の逆電圧が印加され、通電を停止する。
【0015】
以上の動作で1サイクルの放電が終了する。このようにパルス電流Iの立上げ時間t、立下げ時間t〜tにはコンデンサ1を、そして平坦性の必要な時間t〜tは直流電源10から電力を供給する方法を採用することは、電流的にも、パルス幅にも、そして最も大事な平坦性にも自由度が大きく、加速器の安定精度の向上に有効である。
【0016】
さて、上記の実施例ではパルス放電を1サイクルで終了する動作を説明をしたが、実際の加速器では1秒間に数十回から数千回の放電を繰り返すことになる。このような放電では前記コンデンサ1の逆極性に充電されたエネルギーを捨てることは発熱を伴うと共にエネルギーの利用効率を悪くする欠点がある。図3に本発明の他の実施例を示す。
【0017】
図3において、図1と異なるのは波形成形回路9を一括して示したこととスタート用半導体スイッチ2の回路構成である。前者の構成は図1と同じであるので後者について説明する。スタート用半導体スイッチ2は半導体素子2〜2によって構成され、コンデンサ1の一端と負荷3との間に第1の半導体素子2を順方向接続し、上記負荷3の他端とコンデンサ1の他端との間に第2の半導体素子2を順方向接続し、第1の半導体素子2のカソードと第2の半導体素子2のカソードとの間に第3の半導体素子2を逆方向接続し、第1の半導体素子2のアノードと第2の半導体素子2のアノードとの間に第4の半導体素子2を逆方向接続してなる。上記の方法による半導体素子2〜2の接続回路を「タスキがけ回路」と呼ぶ。また、それぞれのゲート端子は制御ユニット8に接続される。
【0018】
次に、スタート用半導体スイッチ2の動作について説明する。その他の回路および動作については図1と同じである。まず、コンデンサ1の放電時には制御ユニット8より第1の半導体素子2と第2の半導体素子2に動作オン指令を送信し放電が開始する。そして所定の平坦電流It1〜t2に達すると波形成形回路9を動作オンさせ、時間tまで運転させる。その後、波形成形回路9を動作オフさせると共に第1の半導体素子2と第2の半導体素子2を動作オフさせて、第3の半導体素子2と第4の半導体素子2を動作オンさせることによって、パルス電流Iの流れを負荷3の低圧側から第4の半導体素子2、コンデンサ1、第3の半導体素子2、負荷3の高圧側を結ぶ閉回路に転流させることになる。この結果コンデンサ1は初期の極性に再充電されることになり、当初負荷3に供給した電荷の一部が同じ極性でコンデンサ1に回生されたことになる。そして、当初の充電電圧に比較して不足した電圧は、図示しない直流発生器より電荷の供給を受けて再度、次の放電サイクルに移り、繰返し運転を行う。このように放電した電荷の一部、すなわち、エネルギーが回生されることは高頻度繰返し運転にはエネルギーの有効利用に役立ち、かつ、エネルギー供給源の小型化にも有益である。
【0019】
さて、このような半導体スイッチまたは素子には、例えばIGBT、FET、GTOなどの自己消弧型素子やサイリスタなどが使用される。また、扱う電流が大きく、電圧も高い場合は前記半導体素子を直列または並列に接続して使用する。
【0020】
また、他の実施例として平坦電流It1〜t2を時間t〜tの間に時間tに向けて徐々に上昇させたり、降下させたりすることも可能性として有している。これは直流電源に短時間で電流変化ができる機能を持たせればよいが、あまり短時間での応答は難しい。
【0021】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明は、従来、時定数τ=L/Rによって減衰状のパルス幅を決めていた欠点を除去し、速い放電が容易なコンデンサを用いてパルス電流の立上げ/立下げ時間をインダクタ4との共振周波数によって決め、そして矩形波の平坦電流は模擬負荷回路11からの転流により直流電源から直接供給する方法を、半導体スイッチのスイッチング作用により実現した。このことにより、パルス電流立上げ後の電流制御方法を、コンデンサ放電に頼ることなく直流電源と併用することで、平担性の良い矩形波状のパルス電源を得ることができる。
上記構成により、コンデンサ、直流電源、半導体の長所を巧く利用することができ、かつ、エネルギー回生を含む効率のよい繰返し運転も可能にした。
このように、本発明はビーム制御用電磁石電源として加速器の性能向上に優れた貢献をし工業的価値大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるパルス電源の実施例を示す回路図である。
【図2】本発明によるパルス電源の電流波形および負荷電圧波形である。
【図3】本発明によるパルス電源の他の実施例である。
【図4】従来例によるパルス電源を示す回路図である
【図5】従来例によるパルス電源の電流波形である。
【符号の説明】
1 コンデンサ
2 スタート用半導体スイッチ
第1の半導体素子
第2の半導体素子
第3の半導体素子
第4の半導体素子
3 負荷
4 インダクタ
5 抵抗
6 電流検出器
7 クローバ用半導体スイッチ
8 制御ユニット
9 波形成形回路
10 直流電源
11 模擬負荷回路
12 直流用半導体スイッチ

Claims (2)

  1. コンデンサと負荷との間に介在するスタート用半導体スイッチと、負荷に接続される電流検出器と、スタート用半導体スイッチおよび電流検出器に接続される制御ユニットとを備え、上記制御ユニットと電流検出器との間に、直流用半導体スイッチと模擬負荷回路と直流電源とからなる波形成形回路を接続し、該直流用半導体スイッチのオン/オフ制御で平坦電流を負荷に供給するパルス電源であって、
    上記波形成形回路が、直流電源と負荷とを接続する直流用半導体スイッチと、直流電源と並列にスイッチング作用を有する模擬負荷回路を接続してなり、
    該直流電源から負荷が有する平坦電流時のインピーダンスと同一要素を持たせた模擬負荷回路をオン、直流用半導体スイッチをオフさせて予め所定の平坦電流に相当する電流を波形成形回路内に流し、
    電流の立上げ時は上記スタート用半導体スイッチをオンさせ、
    平坦電流時は上記模擬負荷回路をオフ、直流用半導体スイッチをオンさせ、
    立下げ時は上記模擬負荷回路をオン、直流用半導体スイッチをオフさせるように制御ユニットで制御することを特徴とするパルス電源。
  2. 上記スタート用半導体スイッチが複数の半導体素子のタスキがけ回路で構成され、負荷からのエネルギーを上記タスキがけ回路を介して、上記コンデンサに初期の充電電圧極性と同一極性で回生することを特徴とする請求項1記載のパルス電源。
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