JP4046900B2 - 電磁波吸収材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁波吸収性能を有し、軽量で耐火断熱性能を有する電磁波吸収材およびその製造方法に関するもので、例えば、建築物の外壁材として利用できる。
【0002】
【背景技術】
近年、大都市に限らず地方都市においても数多くの高層ビルが建設されている。また、経済諸活動においてコミュニケーションが活発になり、数多くの通信機器が使用されている。
このような、高層建築物の急増および通信活動の活発化に伴って、電磁波を受信する通信機器や映像機器に多くの受信障害が発生している。例えば、テレビ画面に二重の画像が映るゴースト現象や、携帯電話や無線LANに発生する誤作動を招くことがある。
【0003】
そこで、このような受信障害の原因である電磁波に対する対策の1つとして、フェライト等の磁性材料を埋め込んだ電磁波吸収壁が、高層建築物の外壁として用いられている。
たとえば、特開昭60−94799号公報では、フェライト製の磁性板と、鉄筋および金網とを組み合わせて形成されたモルタル層を含む電磁波吸収壁が開示されている。
また、特開平6−283879号公報では、外側から外装材、フェライト板、空気層および金属板によって構成された電磁波吸収壁が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開昭60−94799号公報に記載された電磁波吸収壁は、フェライト板自体を製造する工程や、このフェライト板を鉄筋および金網に取り付ける工程も必要になるため、製造上や運送上問題があり、経済的に不利である。
また、特開平6−283879号公報に記載された電磁波吸収壁は、施工性は改善されているものの、複数の板材を複合化する工程が必要であり、大量生産に不向きである。また、高比重のフェライト板を用いているので、電磁波吸収壁自体も高重量のものとなり持ち運びに不便である。
従って、電磁波吸収壁として、フェライト板を用いることは、製造効率、運搬効率、経済性、耐久性および易加工性などの観点から、必ずしも実用的とはいえない。
一方、フェライト等の磁性材料を低減して電磁波吸収壁を軽量化すると、本来の目的である電磁波吸収性能が低下する結果になる。
【0005】
そこで、軽量化を目的としてケイ酸カルシウム系不燃板材中に軽量骨材を含有させることが行われている。例えば、軽量骨材としてパーライト(真珠岩)が用いられている。しかし、この場合、超軽量ではあるが、中空構造となるため、点荷重強度が小さく、原料配合物を撹拌、混練した後の押出し成形又はプレス成形の際に、パーライトの一部が圧縮破壊されて軽量化する効果が減殺され、さらには板材の強度も著しく低下する。
また、軽量骨材としてフライアッシュ焼成発泡体も用いられている。しかし、この場合、板材の軽量性や衝撃強度の点で十分なものが得られない。
さらに、今後増加するとみられる電磁波障害に備えて、高層建築物の外壁に電磁波吸収性能を付与することに限らず、内壁材や廻り縁、見切縁や窓枠等にも電磁波吸収性能を付与することが求められている。
【0006】
そこで、本発明は、十分な電磁波吸収性能を備えるとともに、軽量化に優れる製造効率の高い電磁波吸収材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1発明に係る電磁波吸収材は、セメント、シリカ質原料、超軽量ケイ酸カルシウム水和物、繊維補強材およびフェライトを含有し、前記フェライトの含有量が20〜60wt%であり、前記超軽量ケイ酸カルシウム水和物は、かさ比重が0.06〜0.15のケイ酸カルシウム水和物で、この含有量が5〜30wt%であり、かさ比重が0.71〜1.37であることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記繊維補強材としては、有機系および無機系の繊維補強材を使用できる。有機系繊維補強材には、セルロース繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維等が含まれる。無機系繊維補強材には、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維等が含まれる。
【0009】
また、前記超軽量ケイ酸カルシウム水和物とは、かさ比重0.15以下のケイ酸カルシウム水和物をいい、0.06〜0.08g/cm3(JIS K6220に準拠)のものを採用するのが好ましい。このようなケイ酸カルシウム水和物としては、撹拌式オートクレーブで水熱合成処理を行ったケイ酸カルシウム水和物が好ましく、具体的には、トバモライト(5CaO・6SiO2・5H2O)、ゾノトライト(6CaO・6SiO2・H2O)およびCSH(非晶質ケイ酸カルシウム水和物であり、ケイ酸カルシウム水和物が水和反応する際に生成する中間体・準結晶である。)などのケイ酸カルシウム水和物などがある。このうち、超軽量ケイ酸カルシウム水和物のかさ比重は、例えば、ゾノトライトは、0.06g/cm3(JIS K6220に準拠)であり、また、CSHは、かさ比重が0.08g/cm3(JIS K6220に準拠)である。なお、ゾノトライトは、ケイ酸カルシウムスラリーをスプレードライヤーにて、120度で乾燥して得られる。
【0010】
さらに、前記フェライトの含有量は、20〜60wt%が好ましく、特に、30〜50wt%が好ましい。これは、20wt%以下の場合では、十分な電磁波吸収性能が得られず、60wt%以上では、電磁波吸収材の重量化を招くことによる。
【0011】
また、ケイ酸カルシウム水和物の含有量は、5〜30wt%が好ましく、特に、10〜20wt%が好ましい。これは、5wt%以下の場合では、電磁波吸収材を軽量化する効果が得られなく、また、30wt%以上の場合では、ケイ酸カルシウム板材を、例えば押し出し成形によって製造する時に、押し出し性が悪化してしまい、押し出し助剤を増量して添加する必要が発生することによる。
【0012】
このような第1発明によれば、かさ比重0.15以下のケイ酸カルシウム水和物を使用することにより、電磁波を吸収するフェライトを含有することによる高重量化を抑えて、電磁波吸収材を軽量化することができる。
【0013】
電磁波吸収材には、フェライトが含有されているので、電磁波吸収材内部に入射した電磁波は、フェライトの持つ透磁率により熱エネルギーに変換され、入射電磁波が電磁波吸収材内に吸収される。従って、ケイ酸カルシウム製の板材に電磁波吸収性能を確保することができる。
【0014】
すなわち、所定の電磁波吸収性能を確保するためには、所定量のフェライトが必要となるが、フェライトは高比重であるため、電磁波吸収材の高重量化を招いてしまう。そこで、かさ比重0.15以下のケイ酸カルシウム水和物を含有することで、フェライト含有による高重量化を抑えて、電磁波吸収材の軽量化を図ることができる。
【0015】
さらに、各板材が別体となって複合的に組み合わされた電磁波吸収壁と異なり、上記の原料をもとに形成されたスラリーを成形して、電磁波吸収材を構成するので、電磁波吸収材の成形が容易になり、その分製造効率を高めることができる。
【0016】
本発明の第2発明に係る電磁波吸収材は、第1発明において、前記ケイ酸カルシウム水和物は、結晶質のゾノトライト、トバモライトであることを特徴とする。すなわち、ゾノトライトは、1000度の耐熱性があるとされ、トバモライトは650度の耐熱性があるとされているので、熱的に非常に安定であり、電磁波吸収材に十分な耐火性能を与えることができる。
【0017】
本発明の第3発明に係る電磁波吸収材の製造方法は、含有量が20〜60wt%のフェライトと、含有量が5〜30wt%であるかさ比重が0.06〜0.15のケイ酸カルシウム水和物と、セメント、シリカ質原料および繊維補強材とを混合した粉体原料に、水を加えた混練物を押し出し成形して、かさ比重が0.71〜1.37の電磁波吸収材を製造することを特徴とする。
【0018】
具体的には、粉体原料に適量の水を加えて、ゲル状などの流動性を帯びた混練物を作り、押し出し成形により得られたケイ酸カルシウム成形体に水熱処理を施すことで、電磁波吸収材を製造することができる。すなわち、電磁波吸収材の製造に、従来からある水熱処理法を適用することができるので、電磁波吸収材の製造が容易になり、製造効率を高めることができる。
【0019】
ここで、前記繊維補強材および前記超軽量ケイ酸カルシウム水和物の具体的内容は、第1発明に記載した通りである。
【0020】
このような第3発明に係る電磁波吸収材の製造方法によれば、混練物を押し出し成形することで、表面が平坦な板材、表面模様が比較的浅い板材、立体構造部材などを効果的に製造することができる。
また、押出し成形は各原料の比重差による不均一が少ない成形方法であるので、平板はもとより、回り縁、見切縁、窓枠等建築部材といった意匠性に富む建築部材の成形が可能である。特に、意匠性に富む凹凸模様を施す場合、抄造方式では、成形された凹凸模様に反発力が働くので、明瞭な柄が形成されにくいのに対して、本発明の電磁波吸収材の製造方法では、混練物の押し出し成形体が、柔らかい粘土状であるので、凹凸模様を明瞭に形成することができる。
そして、スラリーを板状形状に押し出し成形した後は、通常通り高温高圧のオートクレーブ養生を施すこともできる。
【0021】
本発明の第4発明に係る電磁波吸収材の製造方法は、含有量が20〜60wt%のフェライトと、含有量が5〜30wt%であるかさ比重が0.06〜0.15のケイ酸カルシウム水和物と、セメント、シリカ質原料および繊維補強材とを混合した粉体原料に、水を加えたスラリーを脱水成形して、かさ比重が0.71〜1.37の電磁波吸収材を製造することを特徴とする。
【0022】
前記超軽量ケイ酸カルシウム水和物および前記繊維補強材の具体的内容は、第1発明に記載した通りである。前記脱水成形は、表面模様が比較的深い板材を成形する場合に、効果的に使用することができる。
そして、前記粉体原料に適量の水を加えて脱水プレスして板状に成形した後、通常通り高温高圧のオートクレーブ養生を施すことができる。
【0023】
本発明の第5発明に係る電磁波吸収材の製造方法は、第3発明または第4発明において、ケイ酸カルシウム水和物として準結晶のCSHが使用されていることを特徴とする。この場合、CSHは、撹拌式のオートクレーブによって低温合成が可能であるので、電磁波吸収材の製造コストを低減することができる。
さらに、CSHは、ケイ酸カルシウム水和物の水和反応の中間体であるため、ケイ酸カルシウムの成形体を水熱養生処理する際に、このCSHを最終的に結晶化させることで、バインダとしての効果を発現し、電磁波吸収材の強度を向上させることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
セメント、シリカ質原料、繊維補強材、含有量20〜60wt%のフェライトおよび含有量5〜30wt%がかさ比重0.15以下であるケイ酸カルシウム水和物を混合した粉体原料に、適量の水を加え、セルロース系誘導体の押出し助剤と一緒に混合攪拌して混練した混練物を得た後、この混合原料を押出し成形機に投入して製板する。
次に、製板された板状体に高温高圧のオートクレーブ養生を施して反応硬化させ、本実施形態の電磁波吸収材を製造する。
【0025】
(第2実施形態)
先ず、含有量20〜60wt%のフェライト、含有量5〜30wt%のかさ比重0.15以下のケイ酸カルシウム水和物、セメント、シリカ質原料および繊維補強材を混合した粉体原料にバインダをミキサで混合攪拌してスラリーを形成し、粉体原料の表面をバインダで充分に被覆する。その後、このスラリーを乾燥してバインダを粉体原料に固着させる。この混合攪拌は、水による再溶解の度合いを下げて被覆効果を維持し、かつ粉体原料同士の接合を防ぐために必要な時間とする。
【0026】
バインダがSBRラテックス系の場合、前記粉体原料に対して外割重量比で3〜4wt%(有姿)が好ましい。3wt%未満ではバインダ効果に劣り、4wt%を超えても効果の向上は僅かであり、不燃性に劣るようになる。
【0027】
次に、このミキサ内に適当な量の水および残りの原料を全て投入して所定時間混合攪拌して、適度なスラリー濃度となるように調整する。
そして、スラリーを型枠内に流し込んだ後、脱水プレスして板状体を成形する。
最後に、製造された板状体に高温高圧のオートクレーブ養生を施して反応硬化させ、本実施形態の電磁波吸収材を製造する。
【0028】
【実施例】
次に、本発明に係る実施例および比較例を、表1を参照しながら説明する。ここで、表1は実施例および比較例における原料の配合割合を示したものである。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の説明において、有機質繊維は、パルプとポリプロピレン繊維、混和材は鉱物微粉末である。また、フェライト粒は、Zn系フェライト焼結粒で直径が0.1〜6.0mmのものを使用した。また、石灰乳とは生石灰を水で消和した乳を60メッシュアンダー処理したものである。
【0029】
【表1】
【0030】
(実施例1)
粉体原料を、セメント22重量部、フライアッシュ20重量部、有機質繊維7重量部、フェライト粒40重量部、ケイ酸カルシウム水和物10重量部、メチルセルロース1重量部の配合とした。ここで用いたケイ酸カルシウム水和物は、モル比でCaO/SiO2が0.83になるように珪石粉末と石灰乳を配合し、25重量倍水になるように水を加えて原料スラリーを調製した後、撹拌式オートクレーブによって、撹拌数100rpm、温度180℃の状態で、3.0時間水熱処理反応させた準結晶のCSHである。
前記粉体原料の固形物100に対して、外割で水が62重量部となるように調製し、モルタルミキサーによって、撹拌数50rpmの状態で、10分間混練した後、押出し成形によって長さ450mm、幅300mm、厚さ12mmの板材を得た。この後、得られた板材を5kgf/cm2、10時間で水熱養生を行い、電磁波吸収材を得た。
【0031】
(実施例2)
粉体原料を、セメント22重量部、フライアッシュ20重量部、有機質繊維7重量部、フェライト粒40重量部、ケイ酸カルシウム水和物10重量部、メチルセルロース1重量部の配合とした。ここで用いたケイ酸カルシウム水和物は、モル比でCaO/SiO2が1.00になるように珪石粉末と石灰乳を配合し、25重量倍水になるように水を加えて原料スラリーを調製した後、撹拌式オートクレーブによって、撹拌数100rpm、温度205℃の状態で、8.0時間水熱処理反応させた結晶質のゾノトライトである。
前記原料の固形物100に対して、外割で水が64重量部となるように調製し、以下、実施例1と同様に行い、電磁波吸収材を得た。
【0032】
(実施例3)
粉体原料を、セメント22重量部、フライアッシュ20重量部、有機質繊維7重量部、フェライト粒20重量部、ケイ酸カルシウム水和物5重量部、メチルセルロース1重量部、混和材25重量部の配合とした。ここで用いたケイ酸カルシウム水和物は、実施例1で用いたゾノトライトである。
前記原料の固形物100に対して、外割で水が56重量部となるように調製し、以下、実施例1と同様に行い、電磁波吸収材を得た。
【0033】
(実施例4)
粉体原料を、セメント22重量部、有機質繊維7重量部、フェライト粒40重量部、ケイ酸カルシウム水和物30重量部、メチルセルロース1重量部の配合とした。ここで用いたケイ酸カルシウム水和物は、実施例1で用いたゾノトライトである。
前記原料の固形物100に対して、外割で水が76重量部となるように調製し、以下、実施例1と同様に行い、電磁波吸収材を得た。
【0034】
(実施例5)
粉体原料を、セメント22重量部、有機質繊維7重量部、フェライト粒60重量部、ケイ酸カルシウム水和物10重量部、メチルセルロース1重量部の配合とした。ここで用いたケイ酸カルシウム水和物は、実施例1で用いたゾノトライトである。
前記原料の固形物100に対して、外割で水が61量部となるように調製し、以下、実施例1と同様に行い、電磁波吸収材を得た。
【0035】
以下に、上記実施例に対する比較例を説明する。
(比較例1)
粉体原料を、セメント22重量部、フライアッシュ20重量部、有機質繊維7重量部、フェライト粒40重量部、メチルセルロース1重量部、混和材10重量部の配合とした。
前記原料の固形物100に対して、外割で水が51重量部となるように調製し、以下、実施例1と同様に行い、電磁波吸収材を得た。
【0036】
(比較例2)
粉体原料を、セメント30重量部、フライアッシュ25重量部、有機質繊維7重量部、メチルセルロース1重量部、混和材37重量部の配合とした。
前記原料の固形物100に対して、外割で水が60重量部となるように調製し、以下、実施例1と同様に行い、電磁波吸収材を得た。
【0037】
(比較例3)
粉体原料を、セメント30重量部、フライアッシュ25重量部、有機質繊維7重量部、ケイ酸カルシウム水和物10重量部、メチルセルロース1重量部、混和材27重量部の配合とした。ここで用いたケイ酸カルシウム水和物は、実施例1で用いた準結晶のCSHである。
前記原料の固形物100に対して、外割で水が71重量部となるように調製し、以下、実施例1と同様に行い、電磁波吸収材を得た。
【0038】
(物性の測定)
さらに、上記実施例1〜5および比較例1〜3において得られた電磁波吸収材のかさ比重、曲げ強度、吸水率、吸水長さ変化率を測定した。また、比強度を(曲げ強度)/(比重)2で算出した。測定結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
ここで、前記かさ比重の測定は、JIS A5430に準拠して測定した。
前記曲げ強度の測定は、JIS A1408に準拠して測定した。単位はkgf/cm2である。
前記吸水率の測定は、JIS A5430に準拠して測定した。単位はwt%である。
前記吸水長さ変化率は、JIS A5430に準拠して測定した。単位は%である。
【0041】
(電磁波吸収材の電磁波吸収性能)
また、上記実施例および比較例におけるフェライトを含有した電磁波吸収材の電磁波吸収性能の測定結果を図1に示す。
ここで、図1は、フェライトを40wt%含有した実施例1、2、4および比較例1における電磁波吸収材の電磁波に対する反射損失を示し、横軸に電磁波吸収材に入射する電磁波の周波数(Hz)を、縦軸に電磁波吸収材を反射した電磁波の反射損失(dB)を設定している。
フェライト粒を40wt%含有する場合、図1に示すように、電磁波吸収材の電磁波吸収性能は、4.5GHz付近で、反射損失が顕著であることであることがわかる。すなわち、電磁波吸収材に入射した電磁波は、4.5GHz近傍の周波数領域において、電磁波吸収材に著しく吸収される。従って、フェライトを含有することで、電磁波吸収材に電磁波吸収性能を確保できることが確認された。
【0042】
上記の各実施例1〜5および比較例1〜3における電磁波吸収材の物性の測定結果から、以下に述べることが確認された。
▲1▼フェライトの含有量が40wt%である実施例1、2、4および比較例1における電磁波吸収材のかさ比重は、表2に示すように、比較例1では、1.76g/cm3であるのに対して、実施例1では、1.18g/cm3、実施例2では、1.08g/cm3、実施例4では、1.12g/cm3であった。従って、本発明における電磁波吸収材の軽量化が図られたことが確認された。
【0043】
▲2▼実施例1および3における電磁波吸収材の曲げ強度は、表2に示すように、実施例1では、117kgf/cm2であり、実施例3では、106kgf/cm2であった。このような物性値は、耐火被覆板としてのケイ酸カルシウム板一種(かさ比重0.6〜1.2g/cm3、曲げ強度102kgf/cm2)を満足しているので、実施例1および3における電磁波吸収材は、耐火被覆板として有効なことが確認された。
【0044】
▲3▼実施例1および2における電磁波吸収材の曲げ強度は、CSHを10wt%含有している実施例1では、117kgf/cm2であり、ゾノトライトを10wt%含有している実施例2では、86kgf/cm2である。従って、粉体原料として採用するケイ酸カルシウム水和物には、CSHが望ましいことが確認された。
【0045】
▲4▼比較例1の電磁波吸収材では、フェライトの含有のみであるため、電磁波吸収材が高比重化し、電磁波吸収材の熱伝導性が高まるので、電磁波吸収材としては断熱性能が悪くなる。これに対して、実施例1および2における電磁波吸収材では、超軽量ケイ酸カルシウム水和物が使用されているので、電磁波吸収材が高比重化せず、電磁波吸収材の熱伝導性を高めることがない。従って、電磁波吸収材の断熱性能を損なうことがないことも確認された。
【0046】
なお、ケイ酸カルシウム水和物の結晶水は、CSH、ゾノトライト(6CaO・6SiO2・H2O)およびトバモライト(5CaO・6SiO2・5H2O)のように、ケイ酸カルシウム水和物の種類によって異なる。従って、ケイ酸カルシウム水和物の種類を変えることで、すなわち保持する結晶水の量を変えることで、電磁波吸収材の耐熱性を操作できる。
【0047】
【発明の効果】
本発明の電磁波吸収材によれば、電磁波吸収性能を有するフェライトを20〜60wt%含有するとともに、かさ比重0.15以下のケイ酸カルシウム水和物を超軽量ケイ酸カルシウム水和物として5〜30wt%含有する。このため、超軽量ケイ酸カルシウム水和物によって、フェライト含有による電磁波吸収材の重量増加を抑制して軽量化を図ることができる。また、押し出し成形や脱水成形などを利用して成形することができる上に、従来からある水熱処理を施すこともできるので、電磁波吸収材の製造効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電磁波吸収材の電磁波吸収性能を測定した結果を示す図である。
Claims (2)
- 含有量が20〜60wt%のフェライトと、
含有量が5〜30wt%であるかさ比重が0.06〜0.15のケイ酸カルシウム水和物と、
セメント、シリカ質原料および繊維補強材とを混合した粉体原料に、水を加えた混練物を押し出し成形して、かさ比重が0.71〜1.37の電磁波吸収材を製造することを特徴とする電磁波吸収材の製造方法。 - 請求項1に記載の電磁波吸収材の製造方法において、
ケイ酸カルシウム水和物として準結晶のCSHが使用されていることを特徴とする電磁波吸収材の製造方法。
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