JP4040610B2 - 物体の標識方法、該方法により標識を付された物体、ならびに付された標識の検出による物体の判別方法 - Google Patents

物体の標識方法、該方法により標識を付された物体、ならびに付された標識の検出による物体の判別方法 Download PDF

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Description

本発明は、複数種の物体について、該物体個々の種類を判別するために、識別用の標識を付す方法、前記方法により識別用の標識を付された物体、ならびに、該方法により付された識別用の標識を検出し、物体個々の種類を判別する方法に関する。
複数種の物体を取り扱う際には、多くの場合、該物体個々の種類を正確に判別することが必要とされる。特に、取り扱われる複数種の物体自体が、見掛けの上では、容易に区別できない場合には、物体個々の種類に対応する、識別用の標識を付して、該物体個々の種類の判別に利用している。
識別用の標識には、種々の手法があるが、本質的には、区別すべき種類の数以上の判別可能な符号化された識別子(コード)を個々の種類に割り振るものである。標識を付される対象の物体サイズが大きな場合、利用される判別可能な符号化された識別子(コード)として、多くの場合、文字列型の識別子が利用されている。例えば、バー・コードは、文字列型の識別子に対応させ、所定の規則に従って、バーの線幅、間隔の情報へと変換したものに相当する。なお、文字列型の識別子には、本来、一連のシリアル番号で表記可能な識別子の割り振りをより簡便にするため、例えば、電話番号における、国コード(国番号)、エリア・コード(市外局番)、エリア内の個別番号(エリア内局番+個別回線番号)のような、階層的な標識部複数を組み合わせ、一体化して、一つの文字列型の識別子とする形態を採用するものが多い。
一方、標識を付される対象の物体サイズが小さな場合、上述するような、視覚的に判別可能な文字列型の識別子を付すことは技術的に困難となる。例えば、ICタグでは、文字列型の識別子として、ICチップ上に電子的に記載される情報を、外部の検出器との間でデジタル化された電磁波を介して識別する方法を採用している。なお、このICタグ自体のサイズは、100μmのオーダーであり、十数μm以下、場合によっては、数μm以下の物体サイズに対して、文字列型の識別子を付すことは技術的により困難な課題となる。
例えば、物体サイズが十数μm以下、場合によっては、数μm以下となるものの一例としては、生体関連物質の検出に利用される、ミクロな粒子の表面にプローブ分子を固定化したものがある。
例えば、各種微生物の分類に際して、類縁種の微生物に特異的な抗体分子の、対象微生物表面の坑原に対する交叉反応性を評価することで、分類学上の近縁関係を調査する手法が古くから利用されている。その際、プローブに利用する抗体分子を金微粒子表面に固定化し、微生物の周囲への金微粒子の集積を観察し、交叉反応の有無を判断している。また、各種抗体分子が識別するエピトープ配列の特定法として、大腸菌によってデスプレイされているランダムペプチド・ライブラリーから、例えば、ミクロなフェライト粒子の表面に固定化された抗体分子と抗原・抗体反応するペプチドを表現する大腸菌株を、パニング法を応用して分離する手法も、広く知られている。この方法では、磁気的にミクロなフェライト粒子を回収する際、抗体分子と反応可能なアミノ酸配列を有するペプチドを表現する大腸菌株のみが、フェライト粒子に連結された形態で分離される。
これら生体関連物質の検出に利用される、その表面にプローブ分子を固定化するミクロな粒子が有する主要な利点は、固形物であるミクロな粒子を液相から分離する手段を利用することで、プローブ分子によって結合された検出対象物質と、液相中に存在しているそれ以外の夾雑物との分離は容易に行えることにある。すなわち、液相中に存在している検出対象物質をプローブ分子と結合させた後、検出対象物質とプローブ分子の結合体と、未反応のプローブ分子とは、一旦、該プローブ分子を固定化するミクロな粒子を利用することで液相から分離・回収される。その後、回収された検出対象物質とプローブ分子の結合体と未反応のプローブ分子の混合物中に、実際に、検出対象物質とプローブ分子の結合体が存在するか、さらには、その存在量の定量が進められる。
プローブ分子を固相表面に固定化することで、液相との分離が簡便となるという利点は、マクロなサイズを有する固相基板表面にプローブ分子を固定化することでも達成される。例えば、検体試料中に存在する特定のIgG抗体の有無を検出する際、検出対象のIgG抗体に対するエピトープ配列を有する抗原ペプチドを固相基板表面に所定の密度で固定化し、かかる固相基板表面に検体試料を接触させ、この抗原ペプチドとの反応を介して、検出対象のIgG抗体を固相基板表面に固着させる。その後、固相基板表面に検体試料を除去した後、固相基板表面に固着されているIgG抗体分子に対して、そのFc領域(定常領域)へ、検出用標識を付した坑IgG抗体を定量的に反応させる。未反応の「標識を付した坑IgG抗体」を、固相基板表面から洗浄除去した後、固相基板表面に固着されているIgG抗体分子と定量的に反応している、標識を付した坑IgG抗体を、その検出用標識を利用して検出し、また、定量する。
マクロなサイズの固相基板表面にプローブ分子を固定化する手法では、固相基板自体が大きいため、同一基板面上を複数の領域に区分した上で、各領域に別種のプローブ分子を固定化することもできる。具体的には、複数の領域に区分する際、個々の区分をアレイ状、あるいは、マトリックス状に配置した上、各区分を特定するアドレスを付し(番地付けし)、個々の区分に別種のプローブ分子を固定化した、プローブ・アレイの形態とすることができる。例えば、プローブ・ハイブリダイゼーション反応によって、核酸プローブの塩基配列と相補的な塩基配列部分を含む標的核酸分子の固定化に利用される、DNAプローブを複数種固定するDNAプローブ・アレイ;抗原・抗体反応によって、抗原ペプチドに対して特異性を有する標的抗体分子の固定化に利用される、既知のアミノ酸配列を有する抗原ペプチドを複数種固定するペプチド抗原・アレイ;逆に、抗原・抗体反応によって、特異的抗体を用いた標的抗原分子の固定化に利用される、既知の特異的抗体分子を複数種固定する抗体アレイ;受容体タンパク質上への基質分子の結合によって、該受容体タンパク質に対する標的基質分子の固定化に利用される、既知の受容体分子を複数種固定する受容体タンパク質アレイなどの形態がある。
プローブ・アレイは、検体試料中に含まれる標的分子複数種を、対応するプローブ分子複数種を利用して、同時に固定化する際に利用される。利用している固相基板自体、マクロなサイズを有するので、液相からの分離、その後の洗浄操作は極めて簡単である。また、プローブ・アレイ上の各プローブ分子と結合体として、基板上に固定される標的物質を検出する際、予め各プローブ分子の固定位置(アドレス)は決められており、アドレスに従って、各標的物質の検出を進める。
マクロなサイズの固相基板表面にプローブ分子を固定化する、プローブ・アレイは、液相からの分離や標的物質の検出を行う際、取り扱いが容易であるという利点があり、様々な分野で利用が進んでいる。但し、マクロなサイズの固相基板表面において、特定領域に固定されているプローブ分子と検体試料中に含まれる標的分子との反応を行わせることに起因して、相対的に反応収率が低い(見掛けの反応速度が遅い)という本質的な欠点を有している。具体的には、プローブ分子は、固相基板表面上の限られた領域に固定化されているが、検体試料中に含まれる標的分子は、液相全体に均一に分布しているため、このプローブ分子と反応可能な標的分子は、限られた領域内で、且つ固相基板表面に近接する範囲に存在するものに限定される。この限られた領域内に存在する標的分子が、固定化されているプローブ分子と結合体を形成すると、この領域内において、液相中に存在する、「自由な標的分子」の濃度は急速に低減する結果、相対的に反応速度の低下が低下する。結果的には、固定化されているプローブ分子の総数当たり、プローブ分子と結合体を形成する標的分子の総数(反応収率)は、限定されたものとなる。この相対的に反応収率が低い(見掛けの反応速度が遅い)という欠点は、固相基板表面上に占める、各プローブ分子の固定領域の占有面積比率が小さくなるとともに、より顕著なものとなる。換言すると、プローブ・アレイを構成するプローブ分子の種類数が増すとともに、この欠点はより顕著なものとなる。
理想的には、反応液を速やかに攪拌して、液相中の濃度分布の均一化を図ることで、この欠点は解消されるが、現実的には、マクロなサイズの固相基板表面を利用する際には、反応液を緩やかに攪拌する、あるいは、ほぼ静置する状況で反応がなされる場合が少なくない。相対的に反応収率が低い(見掛けの反応速度が遅い)場合であっても、固定化されているプローブ分子の総数当たり、プローブ分子と結合体を形成する標的分子の総数(反応収率)は、検体溶液中における、当初の標的分子の濃度を反映したものとなる。但し、各プローブ分子の固定領域の占有面積比率が小さくなるとともに、プローブ分子と結合体を形成する標的分子の総数(反応収率)と、検体溶液中における、当初の標的分子の濃度との間における関係は、高い直線性を示さなくなる。すなわち、マクロなサイズの固相基板表面上に、多種のプローブ分子を高密度のマトリクス状に固定する、高密度プローブ・アレイを利用する場合、各プローブ分子との結合体として固定される標的分子の定量によって、検体溶液中における標的分子濃度の定量を図る際、その定量確度の低下要因の一つとなる。
その他、プローブ・アレイを構成する際、各プローブ分子の固定化領域の周囲に、区画分割用の格子状の枠領域を設けることがある。あるいは、前記格子状の枠領域を設けない場合でも、プローブ分子の固定化領域の周囲にプローブ分子の非固定化領域が存在する場合がある。この格子状の枠領域、もしくは、プローブ分子の非固定化領域には、固相基板表面が露呈しているため、種々の標的分子が非選択的に吸着を起こすことも少なくない。この非選択的に吸着した標的分子は、検出の際、バックグランドの信号レベルを引き上げ、プローブ分子の固定領域において検出される信号レベルと、バックグランドの信号レベルとの差違を、プローブ分子と結合体を形成する標的分子に起因する信号と判定する際、システマティックな誤差要因となる。加えて、相対的に反応収率が低い(見掛けの反応速度が遅い)ため、検体溶液中における標的分子濃度が低い範囲に対して、その定量確度の低下要因の一つとなる。
プローブ・アレイを作製する際、予め別途調製したプローブ分子を、所定の固定化領域に塗布、固定化するスポッティング法が広く利用されている。このスポッティング法は、予め別途調製したプローブ分子を含む液中に、ミクロな粒子を投入し、その表面にプローブ分子を固定する場合と同様に、単位表面積当たりに固定化されるプローブ分子の密度は高い再現性を有するものとなる。一方、固相反応によって、合成可能なDNAプローブ(オリゴヌクレオチド)分子をアレイ状に固定化する際には、フォトリソグラフィー法を利用して、マクロなサイズの固相基板表面上に、各DNAプローブ(オリゴヌクレオチド)の塩基配列に従って、逐次的に合成されるオリゴヌクレオチドを、固定化プローブ分子として利用する方法もある。この直接、固相基板表面上で合成されるオリゴヌクレオチドに関しては、合成後、その塩基配列の確認を行うことは困難であり、部分的に塩基が欠損したオリゴヌクレオチドが混入する場合がある。あるいは、原理的に1ヌクレオチドずつ短い全ての(オリゴ)ヌクレオチドが、ある割合で全て共存する。このような目的の塩基配列と異なるDNA分子が混入すると、プローブ・ハイブリダイゼーション反応における反応収率を相対的に低下させる要因となる。場合によっては、目的の塩基配列と異なるDNA分子が、偶々、他のアドレス上に固定化するDNAプローブ分子と塩基配列が共通するものとなると、本来の標的核酸分子と相違する、別種の核酸分子がかかるアドレス上にも、結合されることになる。従って、上述する所望としないオリゴヌクレオチドの混入は、定量確度の低下要因の一つとなる。
一方、プローブ分子をミクロな粒子の表面に固定化した、プローブ分子固定微粒子は、予め別途調製したプローブ分子を含む液中に、ミクロな粒子を投入し、その表面にプローブ分子を固定する方法で調製されるため、ミクロな粒子の表面へ、種々の標的分子が非選択的に吸着を起こす現象は、実質的に抑制されている。また、固定化されるプローブ分子は、別途調製した後、十分に精製を施したものが利用される。
プローブ分子固定微粒子は、通常、液相中に均一に分散した状態を維持でき、液相全体に均一に分布している標的分子と、ミクロ的には、固相/液相間での反応はあるが、マクロ的には、液相全体において均一な反応を行うことが可能である。従って、マクロなサイズの固相基板表面上に、多種のプローブ分子を高密度のマトリクス状に固定する、高密度プローブ・アレイを利用する場合に顕著である、相対的に反応収率が低い(見掛けの反応速度が遅い)という欠点は、このプローブ分子固定微粒子を利用する場合には、実質的に解消されたものとなる。従って、プローブ分子固定微粒子を利用すると、プローブ分子との結合体として固定される標的分子の定量によって、検体溶液中における標的分子濃度の定量を図る際、プローブ・アレイにおいて列挙した定量確度の低下要因の大半は回避可能である。
また、プローブ分子固定微粒子は、通常、液相中に均一に分散した状態で反応を終えた後、液相中から簡便に分離することが可能という利点は保持している。例えば、濾過や遠心分離法を適用する固液分離法が利用でき、また、粒子自体が、磁性材料を主成分とする場合、磁力を利用して、液相中から分離することが可能である。
勿論、プローブ分子固定微粒子は、各ミクロな粒子の表面に一つの種類のプローブ分子を固定化するため、多数種のプローブ分子を利用する場合には、対応するプローブ分子固定微粒子を多数種予め準備する必要がある。これらプローブ分子固定微粒子多数種は、個々のプローブ分子固定微粒子を構成するプローブ分子は異なっているが、外見上は、容易に区別することはできない。換言するならば、プローブ分子固定微粒子多数種について、用いているミクロな粒子相互を区別可能なものとし、個々のプローブ分子固定微粒子を特定することが必要となる。すなわち、用いているミクロな粒子に、相互識別用の標識を付すことが必要となる。
プローブ分子固定微粒子を構成する、ミクロな粒子に相互識別用の標識を付す手法に関して、幾つかの提案がなされている。例えば、特許文献1(特開昭61−225656号公報)には、用いるミクロな粒子の粒径の差違によって識別する手法;特許文献2(特開昭62−81566号公報)には、ミクロな粒子の粒径の差違と蛍光標識(合計n種)とを組み合わせて、区別を図る手法;特許文献3(特開昭62−195556号公報)には、ミクロな粒子に着色を施すことによって、区別を図る手法;特許文献4(特開平1−95800号公報)には、ミクロな粒子を異なる金属元素で形成して、区別を図る手法;特許文献5(特開平2−299698号公報)では、染色によって、区別を図る手法;特許文献6(特開平7−83927号公報)には、ミクロな粒子を無機蛍光体とし、その蛍光波長によって、区別を図る手法;また、特許文献7(米国特許第6602671号明細書)には、ミクロな粒子に半導体ナノ結晶を利用して、区別を図る手法;特許文献8(米国特許第6440667号明細書)には、磁気、色、形状が相違するミクロな粒子を利用して、区別を図る手法;特許文献9(米国特許第6500622号明細書)には、ミクロな粒子に半導体ナノ蛍光粒子を利用して、区別を図る手法が開示されている。;として、それぞれ粒子に個別に番地(標識)を与える技術が開示されている。
これらの従来技術では、区別可能なミクロな粒子の種類、すなわち、標識の種類は、高々、十数種程度であり、標識の種類を更に増す際、拡張性に乏しい手法である。特に、ミクロな粒子の粒子径、形状、ならびに、主要な構成材料は、共通性を維持した上で、標識の種類を更に増す際、拡張性に乏しい手法である。
特開昭61−225656号公報 特開昭62−81566号公報 特開昭62−195556号公報 特開平1−95800号公報 特開平2−299698号公報 特開平7−83927号公報 米国特許第6602671号明細書 米国特許第6440667号明細書 米国特許第6500622号明細書
以上に説明するように、液相中に含まれる種々の生体関連物質、例えば、核酸分子、タンパク質、糖鎖分子などについて、その有無の判定、含有濃度を測定する際、検査対象物質(標的物質)に対して特異的に結合する物質(通常、プローブ分子と称される)を作用させて、一旦、結合体として、液相から分離する手法が広く利用されている。具体的には、固相表面にプローブ分子を固定化した上で、液相中に存在する標的物質と結合体を形成し、この固相と液相とを分離する手法が広く利用されている。液相から分離した後、プローブ分子と結合体を構成している標的物質の有無、ならびに、その量を適合する検出手段を用いて行う。
その際、表面積の大きな固相基板上に、複数種のプローブ分子を規則的に固定化する、プローブ・アレイと比較し、各プローブ分子を微細な粒子表面に個別に固定化したプローブ分子固定微粒子は、液相における標的物質との反応性、またその定量性に関しては、有意に優れている。但し、プローブ・アレイでは、各プローブ分子種類の特定は、その固定化位置(アドレス)に基づき、簡単に行うことができるが、プローブ分子固定微粒子では、固定化に利用する微粒子に予め標識を付し、この標識を識別して、プローブ分子種類の特定を行うことが必要となる。
微粒子に標識を施す手段は、従来からいくつか提案されているが、対応可能な種類は限られており、利用するプローブ分子種類が多い場合には、それら全てに個別の標識を付す目的を充足可能なものではなかった。特には、プローブ分子の固定化に利用する微粒子のように、サイズ、形状、ならびに、主要な構成材料は、共通性を維持した上で、標識の種類を必要に応じて増すことが可能な、拡張性に富んだ標識方法の開発が待望されている。
本発明は前記の課題を解決するものであり、本発明の目的は、標識を付す対象の物体が、微小サイズであり、形状、ならびに、主要構成材料は共通とした上で、利用可能な標識種類を必要に応じて増すことを可能とする、拡張性に富んだ標識方法を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を進めた結果、先ず、以下のことに想到した。例えば、プローブ分子を固定化する際に利用される、ミクロな粒子のサイズは、液相中に均一に分散させるため、粒子径は数μm以下、場合によっては、サブミクロンの領域に選択される。その際、ミクロな粒子の表面に固定化されるプローブ分子の量の均一化を図る上では、用いる微粒子の粒子径を一定化し、個々の微粒子が有する表面積の一定化を行う必要がある。勿論、微粒子の外形形状も、例えば、球状に統一することも必要である。さらに、この微粒子表面に、別途調製したプローブ分子を固定化する場合、微粒子表面の材質が全く異なると、それに合わせて、異なる固定化手段を利用する必要がある。具体的には、金属微粒子であっても、それを構成する金属元素が全くことなると、異なる固定化手段を利用する必要がある。逆に、表面に対して、プローブ分子を固定化する手段が異なると、単位面積当たりに固定化されるプローブ分子の密度を同様にすることは困難となる。
従って、ミクロな粒子の粒子径、形状、ならびに、主要な構成材料は、共通性を維持した上で、標識の種類を必要に応じて増すことが可能な、拡張性に富んだ標識方法が望ましい。この粒子径、形状、ならびに、主要な構成材料は、共通性を維持するという要件をも満足し、且つ、付されている標識の識別に曖昧さが無く、必要に応じて、付与可能な標識の種類を任意に増減可能な、高い拡張性を有する標識方法の開発を進めた。その結果、例えば、ミクロな粒子を作製する際に利用する材料として、主要な構成成分に加えて、少量配合可能な成分として、任意に添加可能な副次的構成成分を有することが可能な材料を選択し、この任意に添加可能な副次的構成成分の組成を利用して、情報を付加することが可能であることを見出した。具体的には、かかる任意に添加可能な副次的構成成分の組成として、予め複数種の原子を選択し、この種類数(n)の原子に関して、それぞれ含有の有無を選択すると、各原子について、二水準の状態となり、予め選択される複数種の原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量の有無とを利用して、二進法n桁の数値情報に相当する、含有原子の組成条件を設定できることに想到した。更に、この手法を一般化すると、予め複数種の原子を選択し、この種類数(n)の原子に関して、それぞれ含有量の水準を複数、例えば、M個の水準を設定すると、各原子について、M個の水準の状態となり、予め選択される複数種の原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量の水準とを利用して、M進法n桁の数値情報に相当する、含有原子の組成条件を設定することも可能であることに想到した。これらの着想に加えて、本発明者は、予め選択される複数種の原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量の有無、あるいは、含有量の水準の差違は、例えば、粒子径は数μm以下の微粒子であっても、各種の分析手段を適用すると、予め選択される複数種の原子に関して、その含有量の水準を特定可能であり、かかる副次的成分の組成として付されている標識情報の判別が十分可能である点をも確認して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一の形態にかかる物体の標識方法は、
物体に対して、標識を付す方法であって、
該標識は、標識対象の物体複数に対して、該物体個々の判別を可能とする離散的な識別情報を付すものであり、
予め選択される複数種の原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量の有無とを利用して、二進法n桁の数値情報に相当する、含有原子の組成条件を構成した上で、
前記含有原子の組成条件を満足する組成を有する標識子を用いて、
前記二進法n桁の数値情報として表記される、前記離散的な識別情報を付す
ことを特徴とする物体の標識方法である。
また、本発明の第二の形態にかかる物体の標識方法は、
物体に対して、標識を付す方法であって、
該標識は、標識対象の物体複数に対して、該物体個々の判別を可能とする離散的な識別情報を付すものであり、
予め選択される複数種の原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量水準とを利用して、少なくとも二進法n桁の数値情報に相当する、含有原子の組成条件を構成した上で、
前記含有原子の組成条件を満足する組成を有する標識子を用いて、
前記少なくとも二進法n桁の数値情報として表記される、前記離散的な識別情報を付す
ことを特徴とする物体の標識方法である。
本発明にかかる物体の標識方法を利用することで、例えば、生体関連物質の検出に用いるプローブ分子の固定化に利用される微細な粒子状の基体等、微小な物体に対しても、それを構成する材料の一部として、予め選択される複数種の原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量の有無、あるいは、含有量の水準とを利用して、少なくとも二進法n桁の数値情報に相当する、含有原子の組成条件に従って調製される標識用材料を用いることで、必要に応じて多数種の標識を付すが可能となる。
先に概要を説明したように、本発明にかかる物体の標識方法では、例えば、ミクロな粒子を作製する際に利用する材料として、主要な構成成分に加えて、少量配合可能な成分として、任意に添加可能な副次的構成成分を有することが可能な材料を選択し、この任意に添加可能な副次的構成成分の組成を利用して、標識情報を付加するものである。具体的には、かかる任意に添加可能な副次的構成成分の組成として、予め複数種の原子を選択し、この種類数(n)の原子に関して、それぞれ含有の有無を選択すると、各原子について、二水準の状態となり、予め選択される複数種の原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量の有無とを利用して、二進法n桁の数値情報に相当する、含有原子の組成条件を設定でき、この設定される含有原子の組成によって、標識情報を付与する方法である。更に、この手法を一般化すると、予め複数種の原子を選択し、この種類数(n)の原子に関して、それぞれ含有量の水準を複数、例えば、M個の水準を設定すると、各原子について、M個の水準の状態となり、予め選択される複数種の原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量の水準とを利用して、M進法n桁の数値情報に相当する、含有原子の組成条件を設定することで、標識の種類を必要に応じて増すことが可能な、拡張性を有する方法としている。
なお、本発明の第一の形態にかかる物体の標識方法は、
物体に対して、標識を付す方法であって、
該標識は、標識対象の物体複数に対して、該物体個々の判別を可能とする離散的な識別情報を付すものであり、
予め選択される複数種の原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量の有無とを利用して、二進法n桁の数値情報に相当する、含有原子の組成条件を構成した上で、
前記含有原子の組成条件を満足する組成を有する標識子を用いて、
前記二進法n桁の数値情報として表記される、前記離散的な識別情報を付す
ことを特徴とする物体の標識方法であり、
また、前記第一の形態に対して、更なる拡張性を持たせている、本発明の第二の形態にかかる物体の標識方法は、
物体に対して、標識を付す方法であって、
該標識は、標識対象の物体複数に対して、該物体個々の判別を可能とする離散的な識別情報を付すものであり、
予め選択される複数種の原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量水準とを利用して、少なくとも二進法n桁の数値情報に相当する、含有原子の組成条件を構成した上で、
前記含有原子の組成条件を満足する組成を有する標識子を用いて、
前記少なくとも二進法n桁の数値情報として表記される、前記離散的な識別情報を付す
ことを特徴とする物体の標識方法であるが、それらの好ましい態様とし、以下に示す態様を挙げることができる。
例えば、上述する本発明の第一の形態、ならびに、第二の形態にかかる物体の標識方法では、
前記標識において、
予め選択される複数種の原子の種類数(n)を5以上とし、
該原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量とで表示される、数値情報の種類N;N≧Σnm=2n−1(1≦m≦n、m、nは正の整数)を、31以上とすることが可能である
。また、前記標識において、
予め選択される複数種の原子の種類数(n)を8以上とし、
該原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量とで表示される、数値情報の種類N;N≧Σnm=2n−1(1≦m≦n、m、nは正の整数)を、255以上とすることも可能であ
る。さらに、高い拡張性を示す態様として、
前記標識において、
予め選択される複数種の原子の種類数(n)を12以上とし、
該原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量とで表示される、数値情報の種類N;N≧Σnm=2n−1(1≦m≦n、m、nは正の整数)を、4095以上とすること、あるい
は、
前記標識において、
予め選択される複数種の原子の種類数(n)を16以上とし、
該原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量とで表示される、数値情報の種類N;N≧Σnm=2n−1(1≦m≦n、m、nは正の整数)を、65535以上とすることも可能
である。
以上に示す、本発明の第一の形態、ならびに、第二の形態にかかる物体の標識方法では、標識対象の物体の形状自体は、標識情報に利用されておらず、任意に選択することが可能である。従って、前記標識対象の物体の形状は、不定形微粒子、定形微粒子、繊維、またはシートから選択することが可能である。
一方、本発明にかかる物体の標識方法では、標識に、予め選択される複数種の原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量の有無、あるいはその水準とを利用しており、例えば、複数種の原子を構成成分とする磁性体材料に対しても適用できる。従って、前記標識対象の物体は、磁性体である態様を選択することが可能である。
また、本発明は、上述する構成を有する、本発明にかかる物体の標識方法の発明に加えて、かかる物体の標識方法を適用して、作製される標識された物体の発明をも提供しており、
すなわち、本発明にかかる標識された物体は、
標識を付されている物体であって、
前記標識は、上述する構成を有する、本発明にかかる物体の標識方法によって付されている
ことを特徴とする標識された物体である。
上で述べた本発明の第一の形態、ならびに、第二の形態にかかる物体の標識方法では、標識対象の物体の形状自体は、標識情報に利用されておらず、従って、本発明にかかる標識された物体においても、物体の形状は、任意に選択することが可能である。従って、前記物体の形状は、不定形微粒子、定形微粒子、繊維、またはシートから選択することが可能である。
また、物体の形状の他、物体の大きさも、標識情報に利用されておらず、従って、本発明にかかる標識された物体において、物体の大きさも、その用途に応じて、任意に選択することが可能である。例えば、前記物体の大きさとして、
物体が微粒子形状である場合には、その粒径相当サイズを1nm〜10μmの範囲に、
物体が繊維または片々の形状である場合には、その縦、横、高さのうち、少なくとも二つのサイズを1nm〜10μmの範囲に選択することも可能である。
一方、本発明にかかる物体の標識方法では、標識に、予め選択される複数種の原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量の有無、あるいはその水準とを利用しており、例えば、複数種の原子を構成成分とする磁性体材料に対しても適用できる。従って、本発明にかかる標識された物体において、前記物体は、磁性体である態様を選択することが可能である。
更には、本発明は、上述する構成を有する、本発明にかかる物体の標識方法の発明に加えて、かかる物体の標識方法を適用して作製される、標識を付されている物体について、その付されている標識を識別して、物体相互の判別を行う方法の発明をも提供しており、
すなわち、本発明にかかる物体の判別方法は、
上述する構成を有する、本発明にかかる物体の標識方法よって、標識を付されている物体を判別する方法であって、
予め選択される複数種の原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量の有無、または含有量の水準とを利用して、少なくとも二進法n桁の数値情報に相当する、含有原子の組成条件を構成した上で、
前記含有原子の組成条件を満足する組成を有する標識子を用いて、付されている標識を、
前記予め選択される複数種の原子個々について、その含有量の有無、または含有量の水準を検出可能な手段を用いて、該標識子の有する組成中における、前記予め選択される複数種の原子に関して、該原子個々の含有量の有無、または含有量の水準を識別し、
該標識子の組成において満足される、前記含有原子の組成条件を判別し、対応する少なくとも二進法n桁の数値情報を抽出して、
前記少なくとも二進法n桁の数値情報として表記される、前記離散的な識別情報に基づき、個々の物体を識別する
ことを特徴とする物体の判別方法である。
例えば、前記予め選択される複数種の原子個々について、その含有量の有無、または含有量の水準を検出可能な手段として、質量分析法を用いる態様とすることが可能である。その際、質量分析法は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)であるとより好ましい。あるいは、前記予め選択される複数種の原子個々について、その含有量の有無、または含有量の水準を検出可能な手段として、X線光電子分光法(XPS)またはオージェ電子分光法(AES)を用いる態様とすることも可能である。
なお、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)、X線光電子分光法(XPS)またはオージェ電子分光法(AES)を利用する場合、これらの分析手法は、二次元的な拡がりを有する測定対象の分析に適用可能であり、
例えば、物体が、平面上に位置する場合、
前記標識子の有する組成中における、前記予め選択される複数種の原子に関して、該原子個々の含有量の有無、または含有量の水準を識別する際、
該物体が位置する平面上を、二次元イメージングする工程を更に設ける態様とすることが可能である。
以下に、本発明を更に詳しく説明する。
本発明にかかる物体の標識方法では、対象とする物体に付す標識子は、予め複数種の原子を選択し、この種類数(n)の原子に関して、それぞれ含有の有無、あるいは、含有量の水準で示される、組成中に内在する情報を利用している。具体的には、予め選択される複数種(n種)の原子として、例えば、互いに異なるn種の元素から、それぞれ一種の原子を選択した上、各原子に関して、含有の有無(二水準)を変えると、少なくとも、予め選択される複数種(n種)の原子の一つは含まれる組成の種類総数NTOTALは、NTOTAL=Σnm=2n−1(1≦m≦n、m、nは正の整数)となる。あるいは、各原子に関して、その含有量を、例えば、「微少量、少量」の二段階(二水準)で変えると、少なくとも、予め選択される複数種(n種)の原子は含まれ、その含有量の違いを有する組成の種類総数NTOTALは、NTOTAL=2nとなる。
一方、予め選択される複数種(n種)の原子に関して、その含有量を、例えば、「含有無し、微少量、少量」の三段階(三水準)で変えると、少なくとも、予め選択される複数種(n種)の原子の一つは含まれる組成の種類総数NTOTALは、NTOTAL=3n−1となる。更には、予め選択される複数種(n種)の原子のうち、特定の原子1種に関しては、その含有量を、例えば、「含有無し、微少量、少量」の三段階(三水準)で変え、残る(n−1)種の原子に関しては、含有の有無(二水準)を変えると、少なくとも、予め選択される複数種(n種)の原子の一つは含まれる組成の種類総数NTOTALは、NTOTAL=3×(2n-1)−1となる。前記の態様は、形式的には、予め選択される複数種(n種)の原子の全てに関して、例えば、「含有無し、微少量、少量」の三段階(三水準)の指標を設定した上、特定の原子1種に関しては、その含有量を、三段階(三水準)の指標に対応させて、変えるが、残る(n−1)種の原子に関しては、三段階(三水準)の指標中、「含有無し、少量」の二種の指標のみを選択することに対応している。つまり、設定可能な組成の種類総数NTOTAL=3n−1のうち、その部分集合の{3×(2n-1)−1}種類を選別して、利用する態様に相当する。このように、予め選択される複数種(n種)の原子に関して、その含有量を三段階(三水準)以上の区分に分け、選択肢の多様化を図ることで、例えば、含有量をM段階(M水準)に区分する際には、{Mn−1}種類に達するまで、組成の種類総数NTOTALの範囲を拡張することも可能である。
以上に説明するように、対象とする物体に付す標識子として、予め複数種の原子を選択し、この種類数(n)の原子に関して、それぞれ含有の有無、あるいは、含有量の水準で示される、組成中に内在する情報を利用することで、少なくとも、予め選択される複数種(n種)の原子に関する、含有量を変化させるのみで、前記のNTOTAL=2n−1に達する種類の標識を付与することを可能としている。例えば、前記のNTOTAL=2n−1に達する種類の標識は、予め選択される複数種(n種)の原子を各桁に対応させた際、少なくとも二進法n桁の数値に対応したものとなっている。
また、対象とする物体に付す標識子は、組成中に内在する情報を利用するので、予め選択する原子の種類数(n)は、目的とする標識種類の総種類数に応じて、適宜選択することが望ましい。例えば、予め選択する原子の種類数(n)を5以上とすると、含有の有無、あるいは、含有量の水準を指標として、少なくとも、組成の種類総数NTOTALは、NTOTAL={25−1}以上、つまり、目的とする標識種類の総種類数として、31種類以上に適用が可能となる。例えば、各種細菌の同定に際して、個々の細菌に特有な遺伝子情報、例えば、rRNAの塩基配列が利用可能である。このrRNAの塩基配列に対応する、ゲノム遺伝子上のコード領域の選別には、多種の塩基配列を有するDNAプローブを使用するDNAAハイブリダイゼーション・アッセイを実施する必要がある。より具体的には、DNAハイブリダイゼーション・アッセイを用いた感染症起炎菌の同定では、利用されるDNAプローブの種類は、31種類を大きく上回ることも少なくない、その場合、各DNAプローブを固定化する微粒子状の基材に、本発明にかかる標識方法を適用して、予め選択する原子の種類数(n)を8以上とすることによって、255以上の種類の標識を付すことが可能である。また、ヒトのゲノム遺伝子中に見出されている1塩基多形(SNP)は、255種類を大きく超えた種類が報告されており、個々の1塩基多形の検出に利用されるDNAプローブについて、その固定化に利用する微粒子状の基材に付す標識によって、区別を行うことが望ましい。例えば、予め選択する原子の種類数(n)を12以上とすると、4095以上の種類の標識を付すことが可能であり、ヒトのゲノム遺伝子中に見出されている1塩基多形(SNP)の相当部分に対応する標識が提供可能である。更には、予め選択する原子の種類数(n)を16以上とすると、65535以上の種類の標識を付すことが可能であり、例えば、ヒトのゲノム中に存在する全遺伝子に対応する、膨大な数のDNAプローブそれぞれに、独自の標識が提供可能である。このように、本発明にかかる標識方法では、目的とする標識種類の総種類数に対応させて、標識情報の表現に利用される、予め選択する原子の種類数(n)を適正に増減させることができ、各種アッセイに利用される、様々なブローブ分子に対して、その固定化に利用される微粒子状の基材に対して付与される標識子によって、相互の弁別を行うなど、極めて広範なアプリケーションへ対応可能な拡張性を有している。
例えば、特開平1−95800号公報に開示する手法では、各DNAプローブを固定化するマイクロビーズに関して、個別の金属元素一種を利用して、標識された粒子とすることで、蛍光X線を用いて該金属元素一種を分析し、各DNAプローブの種類を特定する手法が開示されている。この標識方法は、標識子として、Cr、Fe、Zn、Ba、Ti等の一種類の金属元素を、一文字の標識情報として利用する形態である。従って、本発明にかかる標識方法のように、予め選択される複数種(n種)の原子を利用して、その含有量水準を指標として、例えば、二進法n桁の数値情報に対応する標識情報の表記を行う技術とは、その技術的思想が異なったものである。また、特開平7−83927号公報に開示する手法では、複数種の無機蛍光物質を利用して、プローブ分子を固定化する超微粒子体を作製し、かかる無機蛍光物質個々に特徴的な蛍光を観測して、各プローブ分子の種類を特定する手法が開示されている。この標識方法では、標識子として、複数種の無機蛍光物質個々に特徴的な蛍光を、一文字の標識情報として利用する形態である。従って、本発明にかかる標識方法のように、予め選択される複数種(n種)の原子を利用して、その含有量水準を指標として、例えば、二進法n桁の数値情報に対応する標識情報の表記を行う技術とは、その技術的思想が異なったものである。
より詳細に、技術的思想の特徴を説明するならば、本発明にかかる標識方法においては、見掛け上は、予め5種類の原子を選択して、標識化に利用している形態であっても、その本質は、予め選択される複数種(n種)の原子として、例えば、16種類を選択した上、各原子をそれぞれ対応する桁に割付を行い、例えば、二進法16桁の数値情報に対応させた上、その内、5種類の原子のみを任意に選択して、その含有の有無を指標とする部分集合として、{25−1}種類を利用するものである。すなわち、予め十分に広い適用範囲へと拡張可能な形態であるが、その応用範囲に応じて、その一部の部分集合を利用しているものである。
一方、本発明にかかる物体の標識方法では、標識子として、特定の原子に関する含有量の情報を利用可能な限り、物体自体の形状、サイズは任意に選択できる。例えば、各種プローブ分子の固定化に利用される微粒子を対象とする場合、針状、棒状、凹凸がある等の不定形微粒子、また、球状、方形等の定形微粒子とすることが好適である。その他、各種プローブ分子の固定化に利用される基材として、繊維状、シート状の物体とする際にも、本発明にかかる物体の標識方法を好適に適用できる。加えて、各種プローブ分子の固定化に利用される微粒子の材質を、磁性体とすることも可能であり、かかる磁性体微粒子の形態を選択すると、各種プローブ分子を固定化した状態で、液相中から磁力を利用した分離操作を適用可能となる。
なお、各種プローブ分子の固定化に利用される基材は、液相中に均一に分散可能なサイズとすることが望ましい。すなわち、液相中での分散性に利する、微細なサイズが通常選択され、例えば、微粒子においては、その粒径に相当するサイズを、1nm〜10μmの範囲に選択することが望ましい。また、基材が繊維状、または、片々の形態である場合、その縦、横、高さの少なくとも二方向のサイズを、1nm〜10μmの範囲に選択することが望ましい。その他、検出に際して、上述のサイトメトリー法を応用する計数を利用する上では、前記サイズ下限を100nm以上に選択することが好ましい。
例えば、本発明にかかる物体の標識方法を、各種プローブ分子の固定化に利用可能な微粒子へ適用する際、この微粒子自体を構成する材質について、その組成を種々に変化させ、予め選択される複数種(n種)の原子について、その含有の有無、あるいは、含有量の水準が異なるものとし、標識を施す形態を採用することができる。所望の組成比に調整した原材料を混合、焼成、粉砕する乾式法、所望の組成比に調整した溶液から、複数種の原子を含む共沈物を得る共沈法、原材料を溶解、噴霧熱分解、解砕する噴霧分解法が利用可能である。例えば、特開昭64−51322号公報に開示される、酸化物超電導材微粒子の製造方法を利用して、予め選択される複数種(n種)の金属原子について、酸化物の形態で含有される酸化物微粒子として、形成することが可能である。また、特開2002−128523号公報に開示される、共沈法を利用するフェライト粒子の製造方法を利用して、予め選択される複数種(n種)の金属原子について、かかる複数の金属元素を含んだフェライト粒子として、形成することが可能である。
更には、種々の材料で形成される核微粒子に対して、被覆層を付加した被覆微粒子を構成し、前記被覆層の材質について、その組成を種々に変化させ、予め選択される複数種(n種)の原子について、その含有の有無、あるいは、含有量の水準が異なるものとし、標識を施す形態を採用することができる。例えば、核微粒子として、ガラス、プラスティック、シリコン、金属等の粒子を用いて、下記する手段によって、所望の組成を有する被覆層形成することができる。例えば、乾式法として、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等のPVD(物理的気相堆積)法、あるいは、CVD(化学的気相堆積)法、特開平07−053271号公報に開示される気中分散法を適用した被覆層形成が利用できる。さらには、被覆層に代えて、所望の元素をイオン注入法を用いて、核微粒子の表面から導入し、その表面部の組成を変更して、表面層を形成することもできる。
なお、本発明にかかる物体の標識方法において、標識子を構成する組成成分中に含有させる、予め選択される複数種(n種)の原子は、その種類の特定が高い確度で行え、また、その含有量を再現性良く測定可能である限り、特に制限はない。但し、対象とする物体自体に要求される性能、例えば、磁性体特性を保持する観点では、利用可能な元素に一定の制限がある。加えて、製造方法によっては、原理的に利用できない元素も存在する。従って、対象とする物体自体に要求される性能と、製造方法を考慮した上で、適宜、利用する複数種(n種)の原子を選択するとこが好ましい。その際、例えば、典型金属元素、遷移金属元素のうちから、前記条件を満足するものを選択することが好ましい。
一例として、利用する複数種原子の組み合わせの例として、例えば、8種の場合には、Co、Ni、Mn、Zn、Cu、Mg、Al、Ti、12種の場合には、Co、Ni、Mn、Zn、Cu、Mg、Al、Ti、Ga、Ge、Ag、Pd、また、16種の場合には、Co、Ni、Mn、Zn、Cu、Mg、Al、Ti、Ga、Ge、Ag、Pd、V、Cr、Ru、Rhの組み合わせを挙げることができる。
本発明にかかる標識を付された物体を分析、検出する方法としては、本発明による物体の標識方法、すなわち、標識子として利用される、予め選択される複数種の原子について、その含有の有無、あるいは、その含有量の水準を識別可能な手段であれば、いかなる分析方法も利用可能である。例えば、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)等の質量分析法、X線光電子分光法(XPS)、オージェ電子分光法(AES)を好適に用いることができる。さらに、二次元イメージング可能なこれらの方法を用いれば、複数の異なる粒子が二次元状に存在する場合の検出法として、利用することも可能である。
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、これら実施例は、本発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるが、本発明はかかる実施例に示す形態に限定されるものではない。
(実施例1)
特開2002−128523号公報に記載されるフェライト微粒子の製造方法に基づき、2価の鉄イオンを必須成分として含有し、その他、目的とするフェライトを構成する種々の金属元素イオンを添加した溶液を利用し、酸化剤を利用して、2価の鉄イオンを3価の鉄イオンへ酸化して、フェライト微粒子を調製する。調製されるフェライト微粒子は、主要成分の鉄イオン以外に、前記原料溶液中に添加する金属元素イオンの種類、添加濃度を選択することで、主成分金属元素の鉄に加えて、種々の金属元素を所望の含有比率で含むフェライト材質となる。
本実施例では、フェライトを構成する主成分金属元素の鉄に加えて、微量成分金属元素として、少なくとも、Co、Ni、Mn、Zn、Cu、Mg、Al、Tiの8種の金属元素から選択される1種以上の金属元素を添加するフェライト微粒子、ならびに、これら8種の金属元素はいずれも添加されていないフェライト微粒子を調製する。すなわち、少なくとも、Co、Ni、Mn、Zn、Cu、Mg、Al、Tiの8種の金属元素から選択される1種以上の金属元素を添加するフェライト微粒子は、前記8種の金属元素中、含有される金属元素の種類によって、(28−1)種=255種に分類される。更に、これら8種の金属元素はいずれも添加されていないフェライト微粒子を加えて、調製されるフェライト微粒子は、その組成中における、該金属元素8種個々の含有の有無に基づき、合計256種に分類される。
なお、本実施例においては、フェライト微粒子の作製時に利用する、複数の金属元素イオンを含む溶液中では、微量成分として添加される各金属元素イオンの濃度は同一とした。また、最終的に作製されるフェライト微粒子の粒子径は、おおよそ500 nmであった。
調製されたフェライト微粒子は、各反応液から分離し、超純水で洗浄する。なお、反応液からの回収分離、洗浄後の回収等、フェライト微粒子の回収・分離操作では、磁石を用いてフェライト粒子を集める手法を利用している。合計256種の、洗浄済フェライト微粒子は、それぞれ超純水に懸濁し、分散濃度約5.5mg/mL(約500粒子/μL)の懸濁液とする。
得られるフェライト微粒子懸濁液、合計256種から、それぞれ約1μlを採取し、混合した後、一旦含まれるフェライト微粒子集め、100μLの純水に再懸濁し、この再懸濁液1μLをコピー紙上にスポッティングして乾燥する。次いで、前記コピー用紙を適宜切り取り、各スポッティング部分について、存在しているフェライト微粒子中に含有される金属元素組成を測定する。この例では、TOF−SIMS装置(ION−TOF社製:TOF−SIMS IV)、XPS装置(日本電子社製:JPS−9200)、AES装置(日本電子社製:JAMP−9500F)を利用し、三種の測定手法によって、それぞれ、各スポッティング部分を含む領域を二次元イメージングしながら、Fe、Co、Ni、Mn、Zn、Cu、Mg、Al、Tiの9種の金属元素に由来するスペクトルの測定を行う。
二次元イメージングの結果、三種の測定手法のいずれにおいて、各スポッティング部位から、主成分金属元素に由来するスペクトルに基づき、各フェライト微粒子存在領域(スポット領域)のイメージが得られる。同時に、それぞれのフェライト微粒子中に含有される、微量成分金属元素に由来するスペクトルに関しても、他の成分金属元素に起因する干渉を受けず、少なくとも微量成分金属元素:Co、Ni、Mn、Zn、Cu、Mg、Al、Tiの個々に特徴的なスペクトルが測定可能であることが確認された。すなわち、フェライト微粒子中に含まれる主成分金属元素Feに対して、配合可能な微量成分金属元素として、Co、Ni、Mn、Zn、Cu、Mg、Al、Tiの8種の金属元素を選択し、該8種金属元素の含有の有無によって、二進法8桁の数値情報に相当する標識を付すことで、合計256種(28種)のフェライト微粒子を判別可能であることが確認された。
(実施例2)
本実施例2においては、フェライトを構成する主成分金属元素の鉄に加えて、微量成分金属元素として、Co、Ni、Mn、Zn、Cu、Mg、Al、Tiの8種の金属元素に、さらに、Ga、Ge、Ag、Pdの4種の金属元素を加えた、合計12種の金属元素から選択される1種以上の金属元素を添加するフェライト微粒子、ならびに、これら12種の金属元素はいずれも添加されていないフェライト微粒子を調製する。すなわち、少なくとも、Co、Ni、Mn、Zn、Cu、Mg、Al、Ti、Ga、Ge、Ag、Pdの12種の金属元素から選択される1種以上の金属元素を添加するフェライト微粒子は、前記12種の金属元素中、含有される金属元素の種類によって、(212−1)種=4095種に分類される。更に、これら12種の金属元素はいずれも添加されていないフェライト微粒子を加えて、調製されるフェライト微粒子は、その組成中における、該金属元素12種個々の含有の有無に基づき、合計4096種に分類される。
なお、本実施例においても、フェライト微粒子の作製時に利用する、複数の金属元素イオンを含む溶液中では、微量成分として添加される各金属元素イオンの濃度は同一とした。但し、主成分金属元素のFe含有量に対する、前記12種の金属元素個々の含有量は、実施例1における比率の8/12に低下させている。また、最終的に作製されるフェライト微粒子の粒子径は、おおよそ500 nmであった。
調製されたフェライト微粒子は、各反応液から分離し、超純水で洗浄する。なお、反応液からの回収分離、洗浄後の回収等、フェライト微粒子の回収・分離操作では、磁石を用いてフェライト粒子を集める手法を利用している。合計4096種の、洗浄済フェライト微粒子は、それぞれ超純水に懸濁し、分散濃度約5.5mg/mL(約500粒子/μL)の懸濁液とする。
得られるフェライト微粒子懸濁液、合計4096種から、それぞれ約1μlを採取し、混合した後、一旦含まれるフェライト微粒子集め、100μLの純水に再懸濁し、この再懸濁液1μLをコピー紙上にスポッティングして乾燥する。次いで、実施例1と同様の測定手順・条件において、前記コピー用紙を適宜切り取り、各スポッティング部分について、存在しているフェライト微粒子中に含有される金属元素組成を測定する。
本実施例2のフェライト微粒子に関しても、二次元イメージングの結果、三種の測定手法のいずれにおいて、各スポッティング部位から、主成分金属元素に由来するスペクトルに基づき、各フェライト微粒子存在領域(スポット領域)のイメージが得られる。同時に、それぞれのフェライト微粒子中に含有される、微量成分金属元素に由来するスペクトルに関しても、他の成分金属元素に起因する干渉を受けず、少なくとも微量成分金属元素:Co、Ni、Mn、Zn、Cu、Mg、Al、Ti、Ga、Ge、Ag、Pdの個々に特徴的なスペクトルが測定可能であることが確認された。すなわち、フェライト微粒子中に含まれる主成分金属元素Feに対して、配合可能な微量成分金属元素として、Co、Ni、Mn、Zn、Cu、Mg、Al、Ti、Ga、Ge、Ag、Pdの12種の金属元素を選択し、該12種金属元素の含有の有無によって、二進法8桁の数値情報に相当する標識を付すことで、合計4096種(212種)のフェライト微粒子を判別可能であることが確認された。
以上の結果から、フェライトを構成する主成分金属元素の鉄に加えて、微量成分金属元素として、選択可能な金属元素の種類数を更に増した際、この多数種の金属元素の何れについても、各種の検出手段を適用して、金属元素個々に特徴的なスペクトルを測定し、その含有量の評価が可能である限り、フェライト微粒子に付すことが可能な標識の種類を増すことが可能であることが検証される。
(実施例3)
本実施例3においても、フェライトを構成する主成分金属元素の鉄に加えて、微量成分金属元素として、Co、Ni、Mn、Zn、Cu、Mg、Al、Tiの8種の金属元素から選択される1種以上の金属元素を添加するフェライト微粒子、ならびに、これら8種の金属元素はいずれも添加されていないフェライト微粒子を調製する。なお、本実施例3においては、フェライト微粒子の作製時に利用する、複数の金属元素イオンを含む溶液中では、微量成分として添加される各金属元素イオンの濃度に関して、NiとZnの二種については、実施例1と同一の濃度と、その1/10濃度の二つの水準を用いた。
すなわち、少なくとも、Co、Ni、Mn、Zn、Cu、Mg、Al、Tiの8種の金属元素から選択される1種以上の金属元素を添加するフェライト微粒子は、Co、Mn、Cu、Mg、Al、Tiの6種の金属元素中、含有される金属元素の種類(場合の数26)、ならびに、NiとZnの二種に関する含有量の水準(各三水準:0、1/10、1)の差違(場合の数32)によって、(26×32−1)種=575種に分類される。更に、これら8種の金属元素はいずれも添加されていないフェライト微粒子を加えて、調製されるフェライト微粒子は、その組成中における、該金属元素8種個々の含有量の水準に基づき、合計576種(26×32種)に分類される。なお、本実施例においても、最終的に作製されるフェライト微粒子の粒子径は、おおよそ500nmであった。
得られるフェライト微粒子懸濁液、合計575種から、それぞれ約1μlを採取し、コピー紙上にスポッティングして乾燥する。次いで、実施例1と同様の測定手順・条件において、前記コピー用紙を適宜切り取り、各スポッティング部分について、存在しているフェライト微粒子中に含有される金属元素組成を測定する。
本実施例3のフェライト微粒子に関しても、二次元イメージングの結果、三種の測定手法のいずれにおいて、各スポッティング部位から、主成分金属元素に由来するスペクトルに基づき、各フェライト微粒子存在領域(スポット領域)のイメージが得られる。同時に、それぞれのフェライト微粒子中に含有される、微量成分金属元素に由来するスペクトルに関しても、他の成分金属元素に起因する干渉を受けず、少なくとも微量成分金属元素:Co、Ni、Mn、Zn、Cu、Mg、Al、Ti、Ga、Ge、Ag、Pdの個々に特徴的なスペクトルが測定可能であること、加えて、NiとZnの二種に関する含有量水準の相違も明確に判別可能であることが確認された。すなわち、フェライト微粒子中に含まれる主成分金属元素Feに対して、配合可能な微量成分金属元素として、Co、Ni、Mn、Zn、Cu、Mg、Al、Tiの8種の金属元素を選択し、該8種金属元素の含有量水準の差違によって、二進法8桁の数値情報を超え、例えば、二進法6桁と三進法2桁からなる数値情報に相当する標識を付すことで、合計576種(26×32種)のフェライト微粒子を判別可能であることが確認された。
以上の結果から、フェライトを構成する主成分金属元素の鉄に加えて、微量成分金属元素として、選択可能な金属元素の種類数(n)に対して、このn種の金属元素の何れについても、各種の検出手段を適用して、金属元素個々に特徴的なスペクトルを測定し、その含有の有無のみでなく、含有量の複数水準(水準数M)の評価が可能である限り、例えば、M進法n桁の数値情報に相当する標識をフェライト微粒子に付すことが可能であることが検証される。
本発明にかかる物体の標識方法を利用することで、例えば、バイオアッセイに用いるプローブ分子の固定化に利用される微細な粒子状の基体等、微小な物体に対しても、必要に応じて多数種の標識を付すが可能となる。換言するならば、本発明にかかる物体の標識方法を応用して、予め標識を付されている微細な粒子状の基体を利用し、該標識付きの微粒子表面に所定のプローブ分子を固定化することで、微粒子固定型の多数種のプローブ分子に対して、プローブ分子個々の種類判別に利用可能な標識を簡便に施すことが可能となる。

Claims (16)

  1. 物体に対して、標識を付す方法であって、
    該標識は、標識対象の物体複数に対して、該物体個々の判別を可能とする離散的な識別情報を付すものであり、
    予め選択される複数種の原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量の有無とを利用して、二進法n桁の数値情報に相当する、含有原子の組成条件を構成した上で、
    前記含有原子の組成条件を満足する組成を有する標識子を用いて、
    前記二進法n桁の数値情報として表記される、前記離散的な識別情報を付し、
    前記標識において、
    予め選択される複数種の原子の種類数(n)を5以上とし、
    該原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量とで表示される、数値情報の種類N;N≧Σnm=2n−1(1≦m≦n、m、nは正の整数)を、31以上とする
    ことを特徴とする物体の標識方法。
  2. 物体に対して、標識を付す方法であって、
    該標識は、標識対象の物体複数に対して、該物体個々の判別を可能とする離散的な識別情報を付すものであり、
    予め選択される複数種の原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量水準とを利用して、少なくとも二進法n桁の数値情報に相当する、含有原子の組成条件を構成した上で、
    前記含有原子の組成条件を満足する組成を有する標識子を用いて、
    前記少なくとも二進法n桁の数値情報として表記される、前記離散的な識別情報を付し、
    前記標識において、
    予め選択される複数種の原子の種類数(n)を5以上とし、
    該原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量とで表示される、数値情報の種類N;N≧Σnm=2n−1(1≦m≦n、m、nは正の整数)を、31以上とする
    ことを特徴とする物体の標識方法。
  3. 前記標識において、
    予め選択される複数種の原子の種類数(n)を8以上とし、
    該原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量とで表示される、数値情報の種類N;N≧Σnm=2n−1(1≦m≦n、m、nは正の整数)を、255以上とする
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の物体の標識方法。
  4. 前記標識において、
    予め選択される複数種の原子の種類数(n)を12以上とし、
    該原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量とで表示される、数値情報の種類N;N≧Σnm=2n−1(1≦m≦n、m、nは正の整数)を、4095以上とする

    ことを特徴とする請求項3に記載の物体の標識方法。
  5. 前記標識において、
    予め選択される複数種の原子の種類数(n)を16以上とし、
    該原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量とで表示される、数値情報の種類N;N≧Σnm=2n−1(1≦m≦n、m、nは正の整数)を、65535以上とす

    ことを特徴とする請求項3に記載の物体の標識方法。
  6. 前記標識対象の物体の形状は、不定形微粒子、定形微粒子、繊維、またはシートから選択される
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の物体の標識方法。
  7. 前記標識対象の物体は、磁性体である
    ことを特徴とする請求項6に記載の物体の標識方法。
  8. 標識を付されている物体であって、
    前記標識は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の標識方法によって付されている
    ことを特徴とする標識された物体。
  9. 前記物体の形状は、不定形微粒子、定形微粒子、繊維、片々、またはシートから選択される
    ことを特徴とする請求項8に記載の標識された物体。
  10. 前記物体の大きさとして、
    物体が微粒子形状である場合には、その粒径相当サイズを1nm〜10μmの範囲に、
    物体が繊維または片々の形状である場合には、その縦、横、高さのうち、少なくとも二つのサイズを1nm〜10μmの範囲に選択する
    ことを特徴とする請求項9に記載の標識された物体。
  11. 前記物体は、磁性体である
    ことを特徴とする請求項10に記載の標識された物体。
  12. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の標識方法よって、標識を付されている物体を判別する方法であって、
    前記の予め選択される複数種の原子の種類数(n)と、前記選択された原子個々の含有量の有無、または含有量の水準とを利用して、少なくとも二進法n桁の数値情報に相当する、含有原子の組成条件を構成した上で、
    前記含有原子の組成条件を満足する組成を有する標識子を用いて、付されている標識を、
    前記予め選択される複数種の原子個々について、その含有量の有無、または含有量の水準を検出可能な手段を用いて、該標識子の有する組成中における、前記予め選択される複数種の原子に関して、該原子個々の含有量の有無、または含有量の水準を識別し、
    該標識子の組成において満足される、前記含有原子の組成条件を判別し、対応する少なくとも二進法n桁の数値情報を抽出して、
    前記少なくとも二進法n桁の数値情報として表記される、前記離散的な識別情報に基づき、個々の物体を識別する
    ことを特徴とする物体の判別方法。
  13. 前記予め選択される複数種の原子個々について、その含有量の有無、または含有量の水準を検出可能な手段として、質量分析法を用いる
    ことを特徴とする請求項12に記載の物体の判別方法。
  14. 質量分析法は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)である
    ことを特徴とする請求項13に記載の物体の判別方法。
  15. 前記予め選択される複数種の原子個々について、その含有量の有無、または含有量の水準を検出可能な手段として、X線光電子分光法(XPS)またはオージェ電子分光法(AES)を用いる
    ことを特徴とする請求項12に記載の物体の判別方法。
  16. 物体が、平面上に位置する場合、
    前記標識子の有する組成中における、前記予め選択される複数種の原子に関して、該原子個々の含有量の有無、または含有量の水準を識別する際、
    該物体が位置する平面上を、二次元イメージングする工程を更に設ける
    ことを特徴とする請求項14または15に記載の物体の判別方法。
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