JP4039268B2 - 強度・低温靭性に優れたNi含有鋼の製造方法 - Google Patents

強度・低温靭性に優れたNi含有鋼の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、LNGタンク等の低温環境で使用される構造部材または補剛部材として、高強度および低温における高靭性を必要とするNi含有鋼の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液化天然ガス(LNG)の輸送用船舶、貯蔵用容器等には、マイナス162℃からマイナス196℃の極低温域において優れた機械的性質を有する各種構造用材料が多く使用される。そのような各種構造用材料の中でも、9%Ni鋼は、高い強度と優れた靭性を有することから、これらの用途に特に好適な鋼種としてすでに多くの使用実績がある。
【0003】
例えば、9%Ni厚鋼板のASTM規格のA353(焼ならし型)では、実使用向け熱処理方法として2回焼ならし−焼戻し処理が規定されている。また、ASTM規格のA553では、再加熱焼入れ−焼戻し処理(RQ−T)が規定され、さらに、ASTM規格のA844では直接焼入れ−焼戻し処理(DQ−T)が規定されている。
【0004】
また、特に優れた高靭性が要求される鋼板では、例えば特許文献1に記載されているように、上記熱処理に加えて、さらにAc1変態点以上、Ac3変態点以下の2相域に加熱後焼入れするQ’処理を途中に行う3段熱処理(RQ−Q’−T、DQ−Q’−T)が提案されている。
【0005】
さらに、構造部材および補剛部材としては、鋼板だけでなく、H形鋼、山形鋼等の各種形鋼の9%Ni鋼も実用化されている。9%Ni形鋼の製造においては、形状制御の観点から、曲がりやひずみを生じ良好な形状の確保が困難となるため、熱処理において焼入れを実施することが困難である。
【0006】
このため、例えば、特許文献2では、9%Ni形鋼の熱処理として、鋼材を低Si−低Mn系の成分系とし、再加熱焼ならし−焼戻し処理(RN−T)、あるいは2相域加熱後空冷の熱処理を加えた3段熱処理(RN−N’−T)が提案されている。
【0007】
上記の様々な熱処理はいずれも、最終的な組織形態を微細な焼戻しマルテンサイトと安定な残留オーステナイト(γ)との複合組織とすることを目的としている。このため、上記の従来方法はいずれも、鋼に複数回の熱処理を施し、さらに、熱処理温度も微細オーステナイト組織からの焼入れ(Q)もしくは焼ならし(N)、または最適な2相温度からの焼入れ(Q’)もしくは焼ならし(N’)とし、最終焼戻し時に析出する微細オーステナイト相と焼戻しマルテンサイト相との繊密な混合組織を得ることにより、9%Ni鋼の所要の低温靭性を確保している。
【0008】
【特許文献1】
特開昭58−73717号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平2−194121号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の9%Ni鋼の製造方法では、複数回の熱処理が必要になるばかりでなく、非常に狭い温度範囲の熱処理温度制御が要求されるために、多大な時間を要して製造日数が長期化するとともに、製造コストが大幅に上昇する。
【0011】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、複数回かつ狭い温度範囲での高精度の熱処理温度制御を行うことなく、優れた強度および低温靭性を確保することができる低コストのNi含有鋼の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の強度・低温靭性に優れたNi含有鋼の製造方法は、質量%で、C:0.01〜0.10%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.3〜1.8%、P:0.010%以下、S:0.010%以下、Mo:0.05〜0.50%、Ni:7.5〜10.5%、Al:0.01〜0.07%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を、1350℃以下に加熱し、800℃以上の仕上温度で熱間圧延を行った後に放冷し、放冷後再加熱して600℃から750℃までの温度域で均熱保持時間30分以下の熱処理を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明のさらなる強度・低温靭性に優れたNi含有鋼の製造方法は、質量%で、C:0.01〜0.10%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.3〜1.8%、P:0.010%以下、S:0.010%以下、Mo:0.05〜0.50%、Ni:7.5〜10.5%、Al:0.01〜0.07%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を、1100℃以上1350℃以下の温度範囲に加熱し、800℃以上950℃以下の仕上温度で熱間圧延を行った後に放冷し、放冷後再加熱して600℃から750℃までの温度域で均熱保持時間30分以下の熱処理を行うことを特徴とする。
【0014】
さらに、上記鋼は、質量%で、Cu:0.50%以下、Cr:0.50%以下、Ti:0.005〜0.05%からなる群より選択される1種または2種以上をさらに含有することが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、鋼の化学成分と製造方法を詳細に検討した結果、以下の知見を得た。
【0016】
焼入れ性を高めるMoを適正量添加することにより、従来実施されていた直接焼入れ(DQ)、再加熱焼入れ(RQ)、再加熱焼ならし(RN)等の熱処理を行うことなく圧延ままの放冷状態で、DQ、RQ、RNを実施した後に得られるミクロ組織と同等の組織を得ることが可能になる。特に、加熱温度を1100℃以上1350℃以下の範囲とし、圧延終了温度を800℃以上950℃以下の範囲とすることにより、より好ましいミクロ組織が得られる。
【0017】
また、上記のような成分・圧延条件の最適化により、熱間圧延後に熱処理を1回実施するだけで、優れた低温靭性を確保することができる。さらに、熱処理温度を600℃以上750℃以下の広範囲とすることが可能になる。特に、熱処理温度を650℃以上750℃以下の範囲とした場合には、1回の熱処理だけで従来の3段熱処理で得られていた靭性に優れた安定なオーステナイト組織が得られるため、安定して優れた低温靭性を有するNi含有鋼が得られる。
【0018】
このようにMoを適正量添加して焼入れ性を高めたNi含有鋼は、成分および圧延条件を最適化することにより、従来のように狭い温度範囲に限定された複雑な熱処理を複数回行うことなく、1回のみの熱処理で優れた低温靭性が得られる。本発明は以上のような知見に基づいてなされたものである。
【0019】
以下、本発明の強度・低温靭性に優れたNi含有鋼の製造方法について、詳しく説明する。
【0020】
まず、本発明の化学成分の限定理由について説明する。なお、以下の説明において「%」で示す単位は全て質量%である。
【0021】
(1)C:0.01〜0.10%
Cはオーステナイトまたはマルテンサイト中に固溶し、焼戻し時に析出することにより強化に寄与する元素であるが、その含有量が0.01%未満では十分な強度が確保できない。一方、0.10%を超えて添加すると、強度が著しく上昇して靭性を劣化させる。従って、C含有量は0.01〜0.10%の範囲に規定する。
【0022】
(2)Si:0.01〜0.50%
Siは脱酸のため添加するが、その含有量が0.01%未満では脱酸効果が十分でなく、清浄性が悪い。一方、0.50%を超えて添加すると固溶強化量が多くなるため、結果として靭性が劣化する。従って、Si含有量は0.01〜0.50%の範囲に規定する。
【0023】
(3)Mn:0.3〜1.8%
Mnは強度および靭性を確保するために添加するが、その含有量が0.3%未満ではその効果が十分でなく、強度が低下する。一方、1.8%を超えて添加すると偏析が生じやすくなり、靭性が劣化する。従って、Mn含有量は0.3〜1.8%の範囲に規定する。
【0024】
(4)P:0.010%以下
Pは粒界に偏析し、靭性を劣化させる不可避不純物元素であるため、その含有量が少ない方がよい。しかし、0.010%以下であれば実用上問題がないため、P含有量の上限を0.010%に規定する。
【0025】
(5)S:0.010%以下
Sは一般的には鋼中においてはMnS介在物となり、過度の存在により靭性を劣化させるため、その含有量が少ないほどよい。しかし、0.010%以下であれば問題がないため、S含有量の上限を0.010%に規定する。
【0026】
(6)Ni:7.5〜10.5%
Niは低温靭性を確保するため、本発明において非常に重要な元素である。その含有量を7.5%以上とすることで、焼戻しマルテンサイト相と安定な微細オーステナイト相との混合組織が得られ易くなる。一方、10.5%を超えて添加すると合金コストが上昇するだけでなく、強度が上昇して靭性の劣化が生じる。従って、Ni含有量は7.5〜10.5%の範囲に規定する。
【0027】
(7)Mo:0.05〜0.50%
Moは本発明において重要な元素である。その含有量を0.05%以上とすることで、熱間圧延後の冷却およびその後の焼戻し処理だけで、従来の複数回の熱処理と同様の微細マルテンサイト相と安定な微細オーステナイト相との混合組織が得られる。一方、0.05%を超えて添加すると合金コストが上昇するだけでなく、強度が上昇して靭性の劣化が生じる。従って、Mo含有量は0.05〜0.50%の範囲に規定する。
(8)Al:0.01〜0.07%
Alは脱酸剤として添加されるが、その含有量が0.01%未満では効果がない。一方、0.07%を超えて添加すると鋼の清浄度が低下し、靭性の劣化につながる。従ってAlの含有量は0.01〜0.07%の範囲にする。
【0028】
本発明では、強度および低温靭性をさらに向上する目的で、以下に示すTi、Cu、Crのうちの1種または2種以上を含有してもよい。
【0029】
(9)Ti:0.005〜0.05%
Tiは鋼中に含まれるNとTiNを形成し、加熱時のオーステナイト粒径の微細化に寄与し、結果として靭性の向上につながる。しかし、その含有量が0.005%未満ではその効果が十分ではない。一方、0.05%を超えて添加すると析出物が著しく粗大化し、靭性の劣化を生じさせる。従ってTiを添加する場合には、その含有量は0.005〜0.05%の範囲に規定する。
【0031】
(10)Cu:0.50%以下
Cuは適正な添加であれば靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、過剰な添加は靭性の劣化を引き起こす。従ってCuを添加する場合には、その含有量は0.50%を上限とする。
【0032】
(11)Cr:0.50%以下
CrはCuと同様に、適正な添加であれば強度上昇に寄与する。さらに、焼入れ性の向上により、Moと同等の効果を示すが、過剰な添加は靭性の劣化につながる。従ってCrを添加する場合、その含有量は0.50%を上限とする。
【0033】
上記以外の残部は、Feおよび不可避不純物からなる。すなわち、本発明の作用効果を損なわない範囲内であれば他の微量元素を含有してもよい。
【0034】
また、Ca、希土類金属(REM)等のうちの1種または2種以上を適量(〜0.01%)添加して、鋼中介在物の形態制御を行い、靭性の向上を図ることもできる。
【0035】
次に、本発明の製造方法について説明する。
【0036】
本発明のNi含有鋼の製造方法は、上記の成分組成を有する鋼を用い、1350℃以下、より好ましくは、1100℃以上1350℃以下の温度範囲に加熱し、800℃以上、より好ましくは、800℃以上950℃以下の温度範囲で圧延を終了した後に放冷し再加熱して、600℃以上750℃以下、より好ましくは、650℃以上750℃以下の温度範囲で均熱保持時間30分以下の熱処理を行う。
【0037】
以下、各熱処理条件の限定理由についてより詳しく説明する。
【0038】
(i)加熱温度:1350℃以下
加熱温度が1350℃を超えると、加熱時のオーステナイト粒径が著しく粗大化し、靭性が劣化する。従って、加熱温度は1350℃以下とする。強度と低温靭性とのより優れたバランスを得るために、また形状・寸法精度を確保するために、加熱温度の下限値を1100℃とすることが好ましい。
【0039】
(ii)圧延終了温度:800℃以上
圧延終了温度が低いと、形状・寸法精度が十分に確保されないだけでなく、本来高靭性を示す安定なオーステナイトとなる組織に歪みが加わって不安定なオーステナイトとなり、靭性の劣化につながる。従って、圧延終了温度は800℃以上とする。なお、強度と靭性とのより優れたバランスを得るためには、圧延終了時のオーステナイト粒径を微細化するために、圧延終了温度の上限値を950℃とすることが望ましい。
【0040】
(iii)熱処理温度:600℃以上750℃以下
熱処理温度が750℃を超えると、熱処理中のオーステナイト分率が多くなり、結果としてオーステナイト中のNi含有量が減少する。この結果、熱処理後のオーステナイトが不安定となり、靭性の低下につながる。また、熱処理温度が600℃未満の場合、Niの濃化したオーステナイトが十分に生成されず、やはり靭性が低下する。従って、熱処理温度は600℃以上750℃以下の温度範囲とする。
【0041】
(iv)熱処理均熱保持時間:30分以下
熱処理の均熱保持時間が30分を超えると製造コストが上昇するだけでなく、Niが濃化したオーステナイトと熱処理を受けたマルテンサイトの間にNiの大きな濃度勾配が生じ、結果として熱処理後にNi含有量の少ない不安定なオーステナイト(低温にすることでマルテンサイトに変態するオーステナイト)の分率が増大し、靭性の低下につながる。従って、均熱保持時間は30分以下とする。良好な靭性を確保するために、均熱保持時間は3分以上とすることが好ましい。
【0042】
【実施例】
種々の化学成分を有する供試鋼を用いてフランジ厚12mmのH形鋼および板厚18mmの厚鋼板を製造した。用いた供試鋼(鋼種A〜T)の化学成分を表1に示す。
【0043】
【表1】
Figure 0004039268
【0044】
製造した鋼形態(H形鋼または厚鋼板)を表2に示す。また、このときの製造条件として、各H形鋼および厚鋼板の鋼片の加熱温度(℃)、圧延終了温度(℃)、熱処理温度(℃)、均熱保持時間(分)を表2に併記する。
【0045】
得られたH形鋼および厚鋼板の特性として、引張特性(強度)および衝撃特性(靭性)を調べた。引張特性としては、熱間圧延後、熱処理炉を用いて熱処理を行った後、H形鋼ではフランジ1/4位置より、厚鋼板では板幅中央部より、圧延方向にJIS Z 2201に規定されている1A号板状引張試験片を採取し、降伏強度および引張強度を測定した。衝撃特性としては、JIS Z 2202に規定されている4号シャルピー衝撃試験片を採取し、マイナス196℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギーを測定した。この結果を表2に併記する。
【0046】
なお、JIS G 3127の規格を満足し、さらに製造上のばらつきを考慮して、降伏強度が540MPa以上であるもの、引張強度が720MPa以上であるもの、マイナス196℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギーが75Jを超えるものを強度・低温靭性に優れたNi含有鋼として評価し、この評価基準を満たさないものを本発明範囲外とした。
【0047】
また、得られたH形鋼の形状・寸法精度がJIS G 3192の規格を満たすか否か、および厚鋼板の形状・寸法精度がJIS G 3193の規格を満たすか否かについても表2に併記する。表2中、規格を満たすものには○、規格を満たさないものには×、規格を満たすものの、規格値に対して余裕がなかったものには△を付した。
【0048】
【表2】
Figure 0004039268
【0049】
化学成分および製造条件が本発明の範囲内である例1〜14のH形鋼および厚鋼板はいずれも、降伏強度が540MPa以上、引張強度が720MPa以上で、かつマイナス196℃のシャルピー衝撃吸収エネルギーが100J以上の優れた特性を示した。さらに、形状・寸法精度にも優れていた。
【0050】
一方、化学成分は本発明の範囲内であるものの、圧延終了温度が低かった例15のH形鋼は、加工歪みにより引張強度がJIS規格で規定されている規格値830MPa(830N/mm2)を超えて高くなり、低温靭性が低下していた。さらに、形状・寸法精度が悪かった。
【0051】
化学成分は本発明の範囲内であるものの、熱処理温度が低かった例16のH形鋼は、低温靭性の向上に有効に作用する安定なγが十分に生じないため、低温靭性が劣化していた。
【0052】
化学成分は本発明の範囲内であるものの、熱処理温度が高かった例17の厚鋼板は、γ中のNi濃度が低下し、γが不安定になるため低温靭性が著しく劣化し、引張強度もJIS規格の規格値を超えて高かった。
【0053】
化学成分は本発明の範囲内であるものの、均熱保持時間が長かった例18の厚鋼板は、不安定なγが増加するため、低温靭性が劣化していた。
【0054】
化学成分は本発明の範囲内であるものの、圧延終了温度が950℃を超えて高かった例19の厚鋼板は、JIS規格で規定される強度・低温靭性は満たすものの、例1〜例14の鋼に比べて低温靭性が劣化して評価基準を満たさなかった。
【0055】
化学成分は本発明の範囲内であるものの、加熱温度が1100℃未満と低かった例20のH形鋼は、JIS規格で規定される強度・低温靭性は満たすものの、例1〜例14のH形鋼または厚鋼板に比べて形状・寸法精度が劣化し、JIS規格の規格値に対して余裕がなかった。
【0056】
製造条件は本発明の範囲内であるものの、化学成分が本発明の範囲から外れる例21〜例33の鋼は以下のような結果が得られた。すなわち、C含有量が低かった例21のH形鋼は、降伏強度、引張強度ともに低かった。
【0057】
C含有量が多かった例22のH形鋼は、引張強度がJIS規格の規格値を超えて高くなり、低温靭性が劣化していた。
【0058】
Si含有量が低かった例23の厚鋼板は、鋼の清浄性が低いため、低温靭性が劣化していた。
【0059】
Si含有量が多かった24の厚鋼板は、固溶強化により引張強度がJIS規格の規格値を超えて高くなり、低温靭性が劣化していた。
【0060】
Mn含有量が低かった例25のH形鋼は、降伏強度が低く、十分な引張強度が得られなかった。
【0061】
Mn含有量が多かった例26の厚鋼板は、偏析が著しく、低温靭性が劣化していた。
【0062】
P含有量が多かった例27のH形鋼、S含有量が多かった例28の厚鋼板、およびNi含有量が少なかった例29のH形鋼は、低温靭性が劣化していた。
【0063】
Ni含有量が多かった例30の厚鋼板は、引張強度がJIS規格の規格値を超えて高くなり、低温靭性が劣化していた。さらに、製造コストが高くなった。
【0064】
Mo含有量が少なかった例31のH形鋼は、圧延後の放冷で望ましい組織が得られないため、低温靭性が劣化していた。
【0065】
Mo含有量が多かった例32の厚鋼板は、引張強度がJIS規格の規格値を超えて高くなり、低温靭性が劣化していた。
【0066】
TiおよびAl添加量が多く、さらに、CuおよびCr含有量が多かった例33のH形鋼は、引張強度がJIS規格の規格値を超えて高くなり、低温靭性が劣化していた。
【0067】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、複数回かつ狭い温度範囲での高精度の熱処理温度制御を行うことなく、強度および低温靭性に優れたNi含有鋼を低コストで提供することができる。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.10%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.3〜1.8%、P:0.010%以下、S:0.010%以下、Mo:0.05〜0.50%、Ni:7.5〜10.5%、Al:0.01〜0.07%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を、1350℃以下に加熱し、800℃以上の仕上温度で熱間圧延を行った後に放冷し、放冷後再加熱して600℃から750℃までの温度域で均熱保持時間30分以下の熱処理を行うことを特徴とする強度・低温靭性に優れたNi含有鋼の製造方法。
  2. 前記鋼は、質量%で、Cu:0.50%以下、Cr:0.50%以下、Ti:0.005〜0.05%からなる群より選択される1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 質量%で、C:0.01〜0.10%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.3〜1.8%、P:0.010%以下、S:0.010%以下、Mo:0.05〜0.50%、Ni:7.5〜10.5%、Al:0.01〜0.07%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を、1100℃以上1350℃以下の温度範囲に加熱し、800℃以上950℃以下の仕上温度で熱間圧延を行った後に放冷し、放冷後再加熱して600℃から750℃までの温度域で均熱保持時間30分以下の熱処理を行うことを特徴とする強度・低温靭性に優れたNi含有鋼の製造方法。
  4. 前記鋼は、質量%で、Cu:0.50%以下、Cr:0.50%以下、Ti:0.005〜0.05%からなる群より選択される1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
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