JP4037934B2 - 炭素繊維強化炭素材料製ホットプレス用モールド - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、炭素繊維強化炭素材料(以下、C/Cと略す)製ホットプレス用モールドに関する。さらに詳しくは、C/C製ダイス内に黒鉛製スリーブが配設されているモールドであって、被焼結材とダイスとのあいだで発生する熱応力を良好に緩和できるC/C製ホットプレス用モールドに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、セラミック製品は、炭化珪素、臭化珪素、室化珪素などのファインセラミックス粉体を適宜混合してなる粉体原料を、ホットプレス用モールド内で焼結するホットプレス成形法により形成されている。ホットプレス用モールドは主に黒鉛材により形成されており、図4に示されるように、被焼結物(粉体原料)1を上下方向から圧縮する上パンチ2および下パンチ3と、被焼結物1の外周を覆うスリーブ5およびダイス4とから構成されている。
【0003】
ここで、成形圧により上パンチ2および下パンチ3には圧縮応力がかかるが、ダイス4には引張応力がかかる。黒鉛は圧縮応力には強いが引張応力には弱いという性質を有している。そこで、ダイス4は、ホットプレス成形中にかかる引張応力に対応しうるよう、炭素質マトリックスを炭素繊維で強化したC/C(炭素繊維強化炭素材料)により形成されるものもある。しかしながらまた、このC/Cは、高強度ではあるが、熱膨張率が被焼成物の熱膨張率に比べて低いため、使用条件によっては過大な熱応力を発生させ、モールドをC/C製にすることの効果を有効に生かしきれないばあいもある。そこで、こうした熱応力の緩和のために、被焼結物1にほぼ等しい熱膨張係数を有する黒鉛により形成されたスリーブ5を、被焼結物1とダイス4の間に挿入する方法(図5〜図8参照)が採用される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図5に示されるように、ダイス4と被焼成物1の間に全くの遊びを設けずに、分割面間S5に隙間無くスリーブ55a、55bを挿入したのでは、過大な圧縮応力(矢印▲5▼)がかかりスリーブ55a、55bは破損する。そこで、図6に示されるように、分割されたスリーブ56a、56bの分割面のあいだに、分割片56a、56bが矢印▲6▼方向に伸長しうるゆとりまたはあそびとなる僅かな隙間S6を設けたばあいには、圧縮応力の緩和を図ることが可能である。また、図7に示されるように、スリーブ分割片57a、57b、57cを形状をそり板のようにすると、さらに有効に熱応力を緩和できると考えられる。しかし一方で、この方法では、隙間S6(図6参照)および空隙S7(図7参照)に被焼結物1を構成する粉体原料が入り込み、セラミック製品にバリなどの突起物を生じさせてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、図8に示されるように、分割されたスリーブ58a、58bの分割面間S8に隙間(分割片が伸長するしうるようなゆとりまたはあそび)を設けず、ダイス4とスリーブ58a、58bとの間にクッション材6を挿入し、スリーブ58a、58bが径方向(矢印▲8▼方向)に伸長する余裕を持たせて圧縮応力を緩和する方法(実開平4─50205号公報参照)が提案されている。しかしながら、この方法でも、スリーブの分割面間S8に粉体原料1が侵入するのを完全には防げない。
【0006】
そこで本発明は、ダイスと被焼結物とのあいだで発生する熱応力を緩和するとともに、粉体原料の漏れを完全に防いで、製品の表面を滑らかにしうるC/C製ホットプレス用モールドを提供することを主な目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、円柱状内部空間を有するC/C製のダイス内に黒鉛製のスリーブが配設されているホットプレス用モールドであって、
前記スリーブは、放射状に分割された複数箇の分割片からなり、各分割片の分割面間に収縮部材を介在させてなることを特徴としている。
分割面間に挿入される収縮部材により、分割片には周方向に伸長するゆとりが生じる。分割片にかかる圧縮応力は、分割片が周方向に伸長することで緩和される。
また、収縮部材は、熱応力発生時には、分割片の膨張(分割片が周方向に伸長すること)によって圧縮され、より強く、分割面を締結する。したがって、分割面に粉体材料が侵入するおそれは全く生じない。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記スリーブとダイスのあいだに、筒状に収縮部材を設けてなるものである。
この筒状の収縮部材は、スリーブ分割片にかかる圧縮応力を緩和することができる。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、前記各分割片の分割面間に介在させてなる前記黒鉛製の収縮部材が、可撓性黒鉛シートであるものである。また、請求項4に係る発明は、請求項2において、前記スリーブとダイスのあいだに設けてなる前記収縮部材が、可撓性を有する黒鉛シートであるものである。黒鉛は、被焼結物(セラミック製品)の粉体原料に近似した熱膨張係数を有しており、スリーブは、ダイスと被焼結物とのあいだに生じる熱応力を緩和するために黒鉛製である。スリーブの分割面に介在する収縮部材もスリーブと同様に黒鉛製であり、かつ、スリーブよりも収縮率の大きい、可撓性を有する黒鉛製シートが好適に利用される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図示例とともに説明する。
図1は本発明のモールドの一実施例の要部断面説明図、図2および図3は他の実施例の要部断面説明図であり、図4は、モールドの縦断面図である。図1乃至図3は、それぞれ図4のA−A部断面図である。すなわち、図1乃至図3に示されるスリーブ51〜53は、図4に示されるスリーブ5に相当し、ダイス4の内側に嵌入される。ダイス4は、高強度であるが熱膨張率の小さいC/C製である。
【0011】
図1において、スリーブ51は、放射状に3つに分割された分割片51a、51b、51cからなり、各分割片51a、51b、51cの間の分割面間に収縮部材61a、61b、61cを介在させている。
【0012】
スリーブ分割片51a、51b、51cは、被焼結物(セラミック製品)の熱膨張率に近似する熱膨張率を有する黒鉛製であり、ダイス4内に嵌め込まれて支持される。嵌め込まれた状態で、各分割片51a、51b、51cの分割面間には、隙間S1が生じており、ここに収縮部材61a、61b、61cが挿入される。
【0013】
収縮部材61a、61b、61cは、スリーブ分割片よりも、大きく収縮しうる部材であって、ホットプレス成形終了後にはもとの状態に戻りうるクッション性のあるものが、繰り返し使用できるなどの観点から好適に利用される。このような性質を有するものとしては、スリーブ51と同様に黒鉛製であり、可撓性を有するシート状のものが好適に使用される。この可撓性黒鉛シートは、天然鱗状黒鉛を酸処理、熱処理して膨張させ、シート状に圧縮成形したものであり、添加物を使用していない。したがって、耐熱性、耐薬品性等の黒鉛の特性を有しているうえに、柔軟性に富み、圧縮復元性を備えている。この黒鉛製シートを1枚のみ、または薄手のものを複数枚挟み込んで収縮部材61a、61b、61cとすることができる。また、このほか、黒鉛フィルム、炭素繊維ペーパ、炭素繊維フェルト、炭素繊維クロスなども好適に利用される。
【0014】
隙間S1の大きさ(収縮部材61a、61b、61cの厚さ)は、スリーブ分割片51a、51b、51cの伸長量(矢印▲2▼方向の変化量)によって決まるが、この変化量▲2▼は、被焼結物1とダイス4の膨張量の差に依存している。つまり、被焼成物1のほうがダイス4よりも大きく膨張し、スリーブ51は矢印▲1▼方向に圧縮応力を受ける。しかし、スリーブ分割片51a、51b、51cは、収縮部材61a、61b、61cの介在によって矢印▲2▼方向に伸びることができるので、この圧縮応力▲1▼を緩和させることができる。また、スリーブ分割片51a、51b、51cも自身の熱膨張係数の値に応じて熱膨張するが、ゆとりのある矢方向▲2▼方向に伸長するので、圧縮応力▲1▼を増加させることはない。このときの分割片51a、51b、51cの変化量▲2▼によって、隙間(収縮部材の厚さ)S1の大きさが決定される。また、分割面は加工の容易さの観点から、フラットにし、傾斜(テーパ)は設けない。
【0015】
前述のように分割面間S1に挿入される収縮部材61a、61b、61cにより、分割片51a、51b、51cには周方向(矢印▲2▼方向)に伸長するゆとりが生じる。分割片51a、51b、51cにかかる圧縮応力▲1▼は、分割片51a、51b、51cが周方向に伸長することで緩和される。
また、収縮部材61a、61b、61cは、熱応力発生時には、分割片51a、51b、51cの伸長▲2▼によって圧縮され、より強く、分割面間S1を締結する。したがって、分割面間S1に粉体材料が侵入するおそれは全く生じない。
【0016】
図2において、スリーブ52は、2つの分割片52a、52bからなり、各分割片52a、52bの分割面間S2に収縮部材62a、62bが挿入される。このばあいも図1のスリーブ51と同様に、スリーブ分割片52a、52bおよび収縮部材62a、62bは、ダイスの内側に適宜の方法により嵌め込まれる。また、収縮部材62a、62bは、1枚または複数枚の可撓性黒鉛シートから形成されることが好ましい。このように、本発明では、スリーブの分割数は、3つに限らず、2つまたは4つ以上とすることも可能である。
【0017】
図3において、スリーブ53は、図1のスリーブ51と同様に放射状に3つに分割されており、各分割片53a、53b、53cの分割面間S3に収縮部材63a、63b、63cが挿入されている。また、スリーブ53の外径側にはダイス4との間に筒状の収縮部材64が挿入される。この筒状の収縮部材64によってスリーブ分割片53a、53b、53cは径方向(矢印▲3▼方向)に膨張しうるゆとりを得るので圧縮応力は緩和される。しかしながら、収縮部材64の厚さS4は、極めて薄いものであり、分割片53a、53b、53cが、自らの熱膨張係数の値にしたがって、矢印▲4▼方向に伸長しうるよう調整される。これにより、圧縮応力の緩和と、分割面間S3への粉体原料の進入禁止という2つの効果が効率よく出現する。
【0018】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のうち請求項1乃至4記載の発明は、放射状に分割されたスリーブの分割面間に収縮部材を介在させたので、分割片が周方向に伸長しうるゆとりができ、熱応力を緩和させることができる。また、収縮部材はホットプレス成形中には分割片の伸長により圧縮される。したがって、被焼結物の原料であるセラミック粉体が分割面間に侵入するおそれが全くなく、バリのないきれいで滑らかな表面を有するセラミック製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のC/C製モールドの一実施例の要部横断面図である。
【図2】
本発明のC/C製モールドの他の実施例の要部横断面図である。
【図3】本発明のC/C製モールドのさらに他の実施例の要部横断面図である。
【図4】本発明のC/C製モールドの縦断面図である。
【図5】従来のC/C製モールドの一例の横断面図である。
【図6】従来のC/C製モールドの一例の横断面図である。
【図7】従来のC/C製モールドの一例の横断面図である。
【図8】従来のC/C製モールドの一例の横断面図である。
【符号の説明】
1 被焼結物
2、3 上および下パンチ
4 ダイス
5、51、52、53 スリーブ
61、62、63、64 収縮部材
Claims (4)
- 円柱状内部空間を有する炭素繊維強化炭素材料製のダイス内に黒鉛製のスリーブが配設されているホットプレス用モールドであって、前記スリーブは、放射状に分割された複数箇の分割片からなり、各分割片の分割面間に収縮部材を介在させてなることを特徴とする炭素繊維強化炭素材料製ホットプレス用モールド。
- 前記スリーブとダイスのあいだに、筒状に収縮部材を設けてなる請求項1記載の炭素繊維強化炭素材料製ホットプレス用モールド。
- 前記各分割片の分割面間に介在させてなる前記収縮部材が、可撓性を有する黒鉛シートである請求項1または2に記載の炭素繊維強化炭素材料製ホットプレス用モールド。
- 前記スリーブとダイスのあいだに設けてなる前記収縮部材が、可撓性を有する黒鉛シートである請求項2に記載の炭素繊維強化炭素材料製ホットプレス用モールド。
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