JP4037166B2 - 紙質向上剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パルプに添加して抄紙した場合に、嵩高く、良好な強度、剛度を有するシートを製造することができる紙質向上剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
地球環境保護の面から、パルプの使用量削減が求められ、その結果、紙の軽量化と古紙パルプの増配合が求められている。しかしながら、単に紙中のパルプ量を削減して得られる紙は、紙が薄くなることによる不透明度低下が起こり品質の劣るものとなる。また、紙中のパルプ量を低減させる軽量化では、板紙のように厚さの三乗に比例する剛度を要求される紙では、剛度が低下し望ましくない。一方、古紙パルプの配合比率を高めると、リサイクル過程でパルプ自体が細くなること等により紙厚が低下し不透明度低下が起こる。従って、紙中のパルプ量を削減すると共に古紙パルプの配合比率を高くすると、更に紙が薄くなり得られる紙の不透明度が一段と低下する。また、白色度の低下をもたらす古紙パルプを脱墨や漂白により白色度を高めると得られた紙の不透明度は更に減少し好ましくない。
【0003】
軽量化による厚さの低下を防止することを目的として、従来より種々の嵩向上方法が試みられてきた。例えば、プレス圧を低くする製造方法は、平滑性が低下し印刷適性が劣るという問題がある。また、架橋パルプを用いる、合成繊維と混抄する、パルプ繊維間に無機物等の充填物を満たす(特開平3-124895号公報)、空隙をもたらす(特開平5-230798号公報)等の方法も挙げることができるが、パルプのリサイクルが不可能であったり、紙の平滑度が損なわれたりする。また、嵩高剤としては、特定のアルコールおよび/またはそのポリオキシアルキレン付加物(W098/03730号公報)や多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物(特開平11-350380号公報)が知られており、更に脂肪酸ポリアミドポリアミン型の嵩高剤も市販されているが、更なる性能の向上が望まれている。
【0004】
一方、不透明度、白色度を向上させるために、炭酸カルシウム、カオリン、ホワイトカーボン等の無機填量を多量(例えば5〜20重量%)に添加する方法が当業界で実施されている。しかしながら、単に無機填量を多量に添加すると紙の重量増加が著しい上に、紙の強度や剛度が低下する。たとえパルプ量を削減して無機填量を添加しても、紙の軽量化を達成できない。特に古紙パルプに無機填量を添加する場合は多量必要となり、紙の軽量化は益々困難となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、紙の軽量化と古紙パルプの増量に伴う前記諸問題を解決することであり、具体的には、紙の強度を維持しつつ、嵩および/または剛度を向上できる紙質向上剤を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記式(A)で表わされる組成を有する化合物(以下化合物(A)という)を含有する紙質向上剤に関する。
aM1 2O・bM2O・Al2O3・cSiO2・xM3 mA1 n・yH2O 式(A)
(式中、M1はアルカリ金属、M2はアルカリ土類金属、M3はアルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群より選ばれる1種以上、A1はCO3、SO4、NO3、OHおよびClからなる群より選ばれる1種以上、aは0.1〜3、bは0〜0.1、cは0.2〜6、xは0〜2、mは1〜2、nは1〜3、yは0〜16を示す。)。
【0007】
また、本発明は、抄紙工程以前の何れかで、上記本発明の紙質向上剤を添加するパルプシートの製造方法、並びに、抄紙工程以前の何れかで、上記本発明の紙質向上剤を添加して製造されるパルプシートに関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
<化合物(A)>
一般式(A)において、M1で表示されるアルカリ金属としては特に制限されるものではないが、好ましくはNaおよび/またはK、更に好ましくはNaである。M1がNaおよびKである場合、aM1 2Oは、a1Na2O・a2K2O(但し、a1+a2=a)で表わされる。
【0009】
一般式(A)において、M2で表示されるアルカリ土類金属としては特に制限されるものではないが、通常、安価であり工業的に得やすいという観点からCaまたはMgが用いられる。
【0010】
一般式(A)において、M3は、アルカリ金属、アルカリ土類金属からなる群より選ばれる1種以上、好ましくはNa、K、Ca、Mgからなる群より選ばれる1種以上、更に好ましくはNaである。
【0011】
一般式(A)において、A1は、CO3、SO4、NO3、OHおよびClからなる群より選ばれる1種以上、好ましくはCO3またはNO3、更に好ましくはNO3である。
【0012】
化合物(A)は、製造条件によって結晶や非晶構造となり、これらの結晶性や非晶質のものが使用できる。
【0013】
本発明の化合物(A)は、針状、板状、柱状または球状の形態を有するものであることが好ましい。ここで、針状とは、太さが500nm以下で、長さが太さに対してアスペクト比で2以上のものをいい、板状とは、厚さが300nm以下で、板状径が厚みに対してアスペクト比で2以上のものをいい、柱状とは、太さが50nm以上で、長さが太さに対してアスペクト比で1以上2未満のものをいう。また、上記形状を有する粒子の集合体であってもよい。更に、該集合体の二次集合体であってもよい。集合体の形状は、球状、テトラポッド状、塊状が好ましい。
【0014】
以下、化合物(A)が結晶性である場合と非晶質である場合とに分けて説明する。
(1)化合物(A)が結晶性である場合
化合物(A)は、製造条件によっては、針状結晶、板状結晶または柱状結晶の集合体として得られる。
【0015】
また、本発明の化合物(A)は、紙に対する嵩高性付与の観点から、多孔性であることが好ましく、特に集合体内の空隙率で5〜95体積%が好ましく、10〜90体積%がより好ましく、20〜90体積%がさらに好ましく、30〜90体積%が特に好ましい。なお、空隙率の測定方法は粒子の断面形状から算出される。
【0016】
化合物(A)が球状の集合体である場合、球状の粒子形状を保つ観点から、d=0.365±0.015nmに主たるX線回折ピークを有するものが好ましい。ここで、「主たるX線回折ピーク」とは、最強のピークあるいは最も強い回折ピーク強度に対し20%以上の回折強度を示すピークをいう。
【0017】
また、結晶性の化合物(A)としては、多孔質な粒子を得る観点から、JCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)No.20−379、20−743、25−776、25−1499、25−1500、30−1170、31−1272、34−176、35−479、35−653、38−513、38−514、38−515および45−1373からなる群より選ばれる1種以上のカンクリナイト様のX線回折パターンを有するものが好ましい。特に、針状結晶、板状結晶または柱状結晶のいずれかからなる多孔質度の高い化合物(A)は、カンクリナイト様のX線回折パターンJCPDS No.38−513を示し、概略組成が、一般式(A)中、aが0.6〜1、bが0、cが2、xが0.3〜0.7、M3がNa、mが1、nが1〜2である。
【0018】
また、本発明の化合物(A)の粒径は、平均粒径で0.1〜500μmが好ましく、1〜100μmがより好ましい。特に集合体の場合はこの範囲の平均粒径を有することが好ましい。
【0019】
好ましい化合物として、例えばカンクリナイトや一次粒子径が1μm以下、更に0.5μm以下のサブミクロンゼオライトが挙げられる。
【0020】
本発明の化合物(A)の吸油能は、好ましくは50ml/化合物(A)100g〔以下、化合物(A)は省略する〕以上、より好ましくは80ml/100g以上、特に好ましくは100ml/100g以上である。また、吸油能とは、試料を粉砕しJIS K 6220の吸油量測定法によって測定したものをいう。
【0021】
本発明の化合物(A)を製造する方法としては、特に限定がないが、例えば、Al化合物とSi化合物をCO3 2-、SO4 2-、NO3 -、Cl-等の存在下、アルカリ溶液中で反応させる方法等が挙げられる。
【0022】
Al化合物としては、例えば、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム等が挙げられる。Si化合物としては、例えば、ケイ砂、ケイ石、水ガラス、ケイ酸ナトリウム等が挙げられる。あるいは、Al化合物およびSi化合物の両者の原料となるものとして、例えば、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、マイカ、タルク等の粘土鉱物およびムライト等のアルミノケイ酸塩鉱物を用いてもよい。
【0023】
CO3 2-の原料としては、炭酸ガス、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムカリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられ、SO4 2-の原料としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウムカリウム等が挙げられ、NO3-の原料としては、硝酸、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が挙げられ、Cl-の原料としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。
【0024】
アルカリ溶液のアルカリとしては、酸化ナトリウム、酸化カリウム等の酸化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムカリウム等の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩等が使用できる。必要に応じて、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩;炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム等の炭酸水素塩等を使用してもよい。
【0025】
また、本発明の化合物(A)を製造する際の反応温度は、化合物(A)の結晶性を高め、化合物(A)の形態を安定化させる観点および反応容器への化学的、耐圧的負荷を低減させる観点から、好ましくは15〜300℃、より好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは80〜130℃である。また、反応時間は、結晶化反応を完全に行わせる観点から、2時間以上、好ましくは8時間以上が望ましい。
(2)化合物(A)が非晶質の場合
アルミニウムイオンの溶解度を抑える観点から、一般式(A)中のxが0のものが好ましい。また、化合物(A)の吸油量は150ml/100g以上が好ましく、200ml/100g以上がより好ましい特性を有する。好ましい化合物として、例えば非晶質のアルミノシリケートが挙げられる。
【0026】
本発明の化合物(A)を製造するには、アルミナ源溶液とシリカ源溶液をアルカリ土類金属の存在下で反応させることにより容易に調製することができる。アルミナ源溶液としては、通常アルミン酸アルカリ金属塩溶液が用いられ、例えばアルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等が安価および工業的に得やすいという観点から好ましく用いられる。これらは必要に応じて苛性アルカリおよび水を用いて、適宜のモル比および濃度に調整して用いられる。例えば、水酸化アルミニウムおよび水酸化ナトリウムを水中に混合後加熱溶解してアルミン酸ナトリウム溶液を調製し、この溶液を水に撹拌しながら加えアルミナ源溶液とすることができる。また、このようなモル比および濃度の調整は、反応槽にあらかじめ水を導入し、これに高濃度のアルミン酸アルカリ金属塩溶液および苛性アルカリを加えることにより行うこともできる。
【0027】
シリカ源溶液としては、通常水ガラスが用いられ、水に溶解してシリカ源溶液とすることができる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられ、例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が好ましく用いられる。これらのアルカリ土類金属化合物は、アルミン酸ナトリウム溶液と混合してアルミナ源溶液中に含ませてもよく、水ガラスと共に水に溶解してシリカ源溶液中に含ませてもよい。またアルカリ土類金属化合物を単独で水に溶解して用いてもよい。
【0028】
アルミナ源溶液とシリカ源溶液をアルカリ土類金属の存在下で反応させるには、アルミナ源溶液を攪拌している中にシリカ源溶液を滴下して反応させてもよく、水を攪拌している中にアルミナ源溶液とシリカ源溶液を同時に滴下して反応させてもよい。特にアルカリ土類金属化合物を単独で水に溶解して用いる場合は、該溶解液を攪拌している中にアルミナ源溶液とシリカ源溶液を同時に滴下して反応させてもよい。
【0029】
前記のような組成を有する本発明の化合物(A)は、仕込組成として、M2O/Al2O3のモル比を通常0.001〜0.1、好ましくは0.005〜0.095、M1 2O/Al2O3のモル比を通常0.2〜5、好ましくは0.5〜4.0、SiO2/Al2O3のモル比を通常0.5〜10、好ましくは1.0〜8.0、M2O/H2Oのモル比を通常1×10-3〜1×100、好ましくは2×10-3〜2×10-1、M3O/H2Oのモル比を1×10-7〜1×10-1、好ましくは5×10-7〜5×10-2となるようにして調製される。
【0030】
本発明の化合物(A)を製造する場合、反応温度は通常10〜100℃、好ましくは20〜100℃であり、反応時間は反応温度によっても異なるが通常0〜120分間、好ましくは1〜60分間である。反応終了後は、常法により処理され生成物を得ることができる。例えば、通常1〜300分間加熱熟成を行ない、析出した沈澱物を濾過または遠心分離により混合物から分離し、洗浄および乾燥後、粉砕することにより、本発明の化合物(A)の粉体を得ることができる。
【0031】
<紙質向上剤>
本発明の向上剤は、後述の各種化合物を所定の割合で配合し混合して得ることができる。本件の向上剤は嵩の向上が顕著であるので、嵩高剤として用いるのが好ましい。化合物(A)は向上剤中に50〜100重量%を含有することが好ましく、更に好ましくは70〜100重量%を、特に好ましくは90〜100重量%である。
【0032】
本発明の向上剤は、他の向上剤と併用して使用してもよい。その際の本発明の向上剤と他の向上剤との比率は、本発明の向上剤/他の向上剤=99.9/0.1〜0.1/99.9(重量比)が好ましく、特に好ましくは99.8/0.2〜20/80、更に好ましくは99.0/1.0〜30/70である。
【0033】
他の向上剤としては、例えば有機化合物系の向上剤が挙げられ、油脂系非イオン界面活性剤、糖アルコール系非イオン界面活性剤、糖系非イオン界面活性剤、多価アルコール型非イオン界面活性剤、高級アルコール、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物、高級アルコールあるいは高級脂肪酸のポリオキシアルキレン付加物、高級脂肪酸エステルのポリオキシアルキレン付加物、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物のポリオキシアルキレン付加物、脂肪酸ポリアミドポリアミンなどを挙げることができる。
【0034】
本発明の向上剤が機能を発現するためには、パルプに定着することが重要であり、そのために定着を促進する剤を添加することが好ましい。向上剤の定着を促進する剤としては、硫酸アルミニウム、アクリルアミド基を有する化合物、ポリエチレンイミン等が挙げられる。定着を促進する剤の添加量はパルプ原料100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。
【0035】
本発明の向上剤はサイズ剤、紙力剤、歩留り剤等の抄紙用薬品や通常の填料と併用してもよい。また、他の無機粉末、有機粉体、金属粉体等と混合して使用してもよい。
【0036】
本発明の向上剤は、1〜50重量%(向上剤基準)のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等の界面活性剤と併用して使用してもよい。
【0037】
アニオン界面活性剤としては、例えば、高級アルコール若しくはそのエトキシレート化物の硫酸エステルの塩、アルキルベンゼンスルホン酸の塩、パラフィンスルホン酸の塩、α−オレフィンスルホン酸の塩、スルホコハク酸ジエステルの塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物、ポリカルボン酸塩、α−スルホ脂肪酸の塩、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの塩または脂肪酸塩等が挙げられる。ここで、塩としては、Na塩、K塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
【0038】
カチオン界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩、カチオン化デンプン等が挙げられる。
【0039】
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン、スルホベタイン、アミドベタイン等のベタイン型両性界面活性剤や長鎖アルキルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
【0040】
非イオン界面活性剤としては、例えば、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物、若しくはエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルポリグリコシド等が挙げられる。
【0041】
また、本発明の化合物(A)の粒子表面に有機物、ポリマー、酸化物、非酸化物、金属等を修飾してもよく、あるいは金属イオンをイオン交換させてもよい。
【0042】
本発明の向上剤は、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、LBKP等の化学パルプ等のヴァージンパルプ、古紙パルプ等のパルプ原料に広く適用できる。古紙パルプを配合する場合は、その配合量は原料パルプ中10重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。
【0043】
本発明の向上剤の添加は、パルプ原料の稀薄液が金網上等を進む間に濾水されて紙層を形成する抄紙工程以前の何れかで行われ、パルパーや叩解機、マシンチェストやヘッドボックスや白水タンク等のタンク、あるいはこれらの設備と接続された配管中に添加してもよいが、リファイナー、マシンチェスト、ヘッドボックス、ファンポンプで添加する等、均一にパルプ原料に混合できる場所で行うことが望ましい。本発明では、向上剤は、パルプ原料に添加後、そのまま抄紙されパルプシート中に大部分残存することが好ましい。また、本発明の向上剤の定着を促進する剤を抄紙工程の何れかで添加する事が好ましい。そのために定着を促進する剤を添加することが好ましい。
【0044】
本発明のパルプシートの製造方法では、本発明の向上剤をパルプスラリーにパルプ原料100重量部に対して、0.1〜50重量部、特に1〜20重量部添加することが好ましい。これにより、嵩高く、良好な強度、剛度を有するパルプシートが得られる。本発明の向上剤は、抄紙工程の何れかにおいて添加されるものであり、そのまま添加してもよいし、必要に応じて水等で分散や希釈をして添加してもよい。
【0045】
本発明の向上剤を用いて得られたパルプシートは、軽質炭酸カルシウムを同量添加したシートに比べて、嵩高さの指標である密度が好ましくは0.02g/cm3以上、より好ましくは0.03g/cm3以上低く、破裂強度が好ましくは0.005kg/cm2以上、より好ましくは0.01kg/cm2以上高く、剛度が好ましくは0.005mN・m以上、より好ましくは0.01mN・m以上高いという物性を有する。
【0046】
また、本発明の向上剤を用いて得られたパルプシートは、紙パルプ技術便覧(紙パルプ技術協会発行、455〜460頁、1992年)に記載された品目分類の中の新聞巻取紙、印刷・情報用紙、包装用紙等の紙、または板紙に好適に用いられる。
【0047】
本発明の向上剤により、嵩高く、良好な強度、剛度を有するパルプシートが得られる機構は必ずしも明らかではないが、空隙率の高い多孔性の化合物(A)粒子がパルプ繊維間に存在することで、得られるパルプシートが嵩高くかつまたは剛度を持ち、化合物(A)のパルプへの吸着力が強いために良好な強度を有すると考えられる。本発明の化合物(A)の吸油能は粒子の空隙率やパルプ繊維への吸着力と関係していると考えられる。
【0048】
【実施例】
以下の製造例における吸油能は、試料を乳鉢で粉砕し、JIS K 6220の吸油量測定法によって測定した。なお、製造例1〜4は非晶質の化合物(A)、製造例5〜9は結晶性の化合物(A)の製造例である。また、製造例5〜9は本発明の範囲外であるが、参考のため実施例の欄に示したものである。
【0049】
製造例1
水酸化アルミニウム100重量部および水酸化ナトリウム59重量部をイオン交換水60重量部中に混合後加熱溶解し、Na2O2 0.3重量%、Al2O3 28.2重量%、Al2O3/Na2O=0.847(モル比)のアルミン酸ナトリウム溶液を予め調製しておく。この溶液384gをイオン交換水6600gに撹拌しながら加え、30℃に保持しアルミナ源溶液とする。また、3号水ガラス〔Na2O 9.5重量%、SiO2 29.0重量%、SiO2/Na2O=3.15(モル比)〕880gと塩化カルシウム二水和物1.56gをイオン交換水660gに溶解し、シリカ源溶液とする。アルミナ源溶液をホモミキサーを用いて、5000rpmの回転数で撹拌している中に、シリカ源溶液を20分間で滴下した。滴下後10分間撹拌を続けた後、100℃で10分間加熱熟成を行い、次いで濾過洗浄を行なった。得られた湿潤ケーキを100℃で11時間乾燥を行なった後解砕して、本発明の化合物(A)の粉体を得た。得られた粉体の組成は、原子吸光分析およびプラズマ発光分析の結果CaO/Al2O3=0.009、Na2O/Al2O3=0.95、SiO2/Al2O3=3.59となった。又、吸油能は308ml/100gであった。なお、この場合、x=y=0である。
【0050】
製造例2
製造例1と同様の操作により、アルミン酸ナトリウム溶液を調製し、この溶液192gと塩化カルシウム二水和物7.8gをイオン交換水10300gに加え、アルミナ源溶液とする。また、3号水ガラス440gをイオン交換水1030gに加え、シリカ源溶液とする。アルミナ源溶液を30℃に保持したまま、ホモミキサーを用いて5000rpmの回転速度で撹拌している中に、シリカ源溶液を15分間で滴下した。滴下後10分間撹拌を続けた後100℃で10分間加熱熟成を行い、以下、製造例1と同様の操作を行なって、化合物(A)の粉体を得た。得られた粉体の組成は、CaO/Al2O3=0.047、Na2O/Al2O3=0.47、SiO2/Al2O3=1.07であった。又、吸油能は298ml/100gであった。なお、この場合、x=y=0である。
【0051】
製造例3
製造例1と同様の操作によりアルミン酸ナトリウム溶液を調製し、この溶液384gをイオン交換水110gに加えアルミナ源溶液とする。また、3号水ガラス440gと塩化カルシウム二水和物4.7gをイオン交換水65gに溶解しシリカ源溶液とする。イオン交換水2830gを40℃に保持したまま、ホモミキサーによって5000rpmの回転速度で撹拌している中に、アルミナ源溶液およびシリカ源溶液をマイクロチューブポンプを用いて20分間で同時に滴下した。滴下後10分間撹拌を続けた後、100℃で20分間加熱熟成を行い、以下、製造例1と同様の操作を行なって、化合物(A)の粉体を得た。得られた粉体の組成は、CaO/Al2O3=0.015、Na2O/Al2O3=0.87、SiO2/Al2O3=2.27であった。又、吸油能は338ml/100gであった。なお、この場合、x=y=0である。
【0052】
製造例4
製造例1と同様の操作によりアルミン酸ナトリウム溶液を調製し、この溶液384gをイオン交換水110gに加えアルミナ源溶液とする。また、3号水ガラス440gをイオン交換水65gに加えシリカ源溶液とする。イオン交換水1670gに塩化マグネシウム六水和物21.5gを溶解させた塩化マグネシウム溶液を40℃に保持したまま、ホモミキサーにより5000rpmの回転速度で撹拌している中に、アルミナ源溶液およびシリカ源溶液を、20分間で同時に滴下した。滴下後20分間撹拌した後、10分間加熱熟成を行ない、以下、製造例1と同様の操作を行なって、化合物(A)の粉体を得た。得られた粉体の組成は、CaO/Al2O3=0.054、Na2O/Al2O3=1.00、SiO2/Al2O3=1.80であった。又、吸油能は286ml/100gであった。なお、この場合、x=y=0である。
【0053】
製造例5
水酸化カリウム1120gおよび硝酸ナトリウム850gをイオン交換水5000mlに溶解させた溶液中で、カオリン50gを混合分散し、攪拌下、80℃で24時間反応させた。反応後、生成した化合物(A)を洗浄し、濾過し、乾燥して、化合物(A)の粉体を得た。得られた化合物(A)は板状結晶が集合した多孔質な球状形態を呈していた。得られた化合物(A)の吸油能は130ml/100gであった。
【0054】
得られた化合物(A)の粉体は、X線回折装置〔(株)リガク製、RAD−C、CuKα〕を用いてX線回折を行なった結果、d=0.367nmに強い回折ピークを有し、JCPDS No.38−513に相当していた。化合物(A)の組成は、概略K2O・2Na2O・3Al2O3・6SiO2・2NaNO3・6H2Oであった。
【0055】
製造例6
水酸化ナトリウム800gおよび炭酸ナトリウム850gをイオン交換水5000mlに溶解させた溶液中で、カオリン50gを混合分散し、製造例5と同様にして、化合物(A)の粉体を得た。得られた化合物(A)は柱状結晶が集合した多孔質な球状形態を呈していた。
【0056】
化合物(A)の吸油能は、55ml/100gであった。また、得られた化合物(A)の粉体は、製造例5と同様にしてX線回折を行った結果、d=0.367nmに強い回折ピークを有し、JCPDSNo.38−513に相当していた。化合物(A)の組成は、概略3Na2O・3Al2O3・6SiO2・Na2CO3・2H2Oであった。
【0057】
製造例7
アルミン酸ナトリウム860g、水酸化ナトリウム1450gおよび硝酸ナトリウム1530gをイオン交換水27000mlに溶解させた溶液中で、3号ケイ酸ナトリウム(Na2O=9.7重量%,SiO2=29.7重量%,H2O=60.6重量%)を添加混合し、製造例5と同様にして、化合物(A)の粉体を得た。得られた化合物(A)は針状結晶が集合した多孔質な球状形態を呈していた。
【0058】
化合物(A)の吸油能は、180ml/100gであった。また、得られた化合物(A)の粉体は、製造例5と同様にしてX線回折を行った結果、d=0.366nmに強い回折ピークを有し、JCPDS No.38−513に相当していた。化合物(A)の組成は、概略3Na2O・3Al2O3・6SiO2・NaNO3・4H2Oであった。
【0059】
製造例8
水酸化ナトリウム94gをイオン交換水1000mlに溶解させ、さらに硝酸(61%)130gとアルミン酸ナトリウム溶液(Na2O=20.31重量%、Al2O3=25.82重量%、H2O=53.87重量%)124gを混合した溶液に、水ガラス(Na2O=9.7重量%、SiO2=29.7重量%、H2O=60.6重量%)127gを添加混合し、100℃15時間反応させた。反応後、製造例5と同様に化合物(A)の粉体を得た。得られた化合物(A)は針状結晶が集合した形態を有していた。なお、化合物(A)の組成は製造例7と概略同じであった。X線回折を行った結果、JCPDS No.38−513に相当していた。化合物(A)の吸油能は、124ml/100gであった。
【0060】
製造例9
水酸化ナトリウム47gをイオン交換水1000mlに溶解させ、さらにアルミン酸ナトリウム溶液(Na2O=20.31重量%、Al2O3=25.82重量%、H2O=53.87重量%)73gを混合した溶液に、水ガラス(Na2O=9.7重量%、SiO2=29.7重量%、H2O=60.6重量%)119gを添加混合し、100℃で2時間反応させた。その後、水酸化ナトリウム15gをイオン交換水50mlに溶解させ、硝酸(61%)57gを混合した溶液を、追加添加しさらに100℃で10時間反応させた。反応後、製造例5と同様に化合物(A)の粉体を得た。得られた化合物(A)は柱状結晶がテトラポッド状に発達した形態を有していた。なお、化合物(A)の組成は、概略3Na2O・3Al2O3・7SiO2・2NaNO3・4H2Oであった。X線回折を行った結果、JCPDSNo.38−513に相当していた。化合物(A)の吸油能は、86ml/100gであった。
【0061】
実施例1
原料パルプとして、LBKP(csf 450ml)を使用し、順次、硫酸アルミニウム0.5重量%、カチオン化澱粉CATO304(日本エヌエヌシー社)0.8重量%(対原料パルプ)、向上剤〔製造例1から9の化合物(A)の何れか〕を10重量%(対原料パルプ)、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AS-262:日本PMC 社)0.1重量%(対原料パルプ)を添加し、パルプ濃度を0.75重量%に希釈後、ポリアクリルアミド系歩留向上剤パーコール47(アライドコロイド社)150ppmを添加した紙料を、角型シートマシン(250mm×250mm)で150メッシュのブロンズワイヤーを用いて手抄きし、油圧式プレス装置で3.5kg/cm2(343.2kPa)の圧力下5分間保持し、その後回転シリンダー式乾燥機で105℃、2分間加熱乾燥し坪量80g/m2のシートを得た。
【0062】
得られたシートについて、坪量をJIS P 8124、厚さをJIS P 8118に基づいて測定し、密度を求めた。また、破裂強度をJIS P 8112、剛度をTAPPI UM409に基づいて測定した。その結果を表1に示す。なお、試料の前処理および測定条件はJIS P 8111に基づいた。
【0063】
比較例1
実施例1において向上剤の代わりに、代表的な填料である軽質炭酸カルシウム(TP-121 6S :奥多摩工業社)、カオリン(インドネシア産)、タルク、ホワイトカーボン、酸化チタンを用い、それ以外は同様にして、80g/m2のシートを得た。このシートに対し上記の評価試験を行った。その結果を表1に示す。
【0064】
比較例2
実施例1において向上剤の代わりに、公知の嵩高剤である脂肪酸ポリアミドポリアミンを用い、その添加量を1重量%(対パルプ)とした以外は同様にして、80g/m2のシートを得た。このシートに対し上記の評価試験を行った。その結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例2
向上剤として製造例1および製造例8の化合物(A)を(添加量は表2に示す)を用いて実施例1と同様にシートを製造し、評価を行ったところ、何れも良好な嵩、強度、剛度を示した。結果を表2に示す。
【0067】
比較例3
実施例2において向上剤の代わりに業界で用いられている代表的な填料である軽質炭酸カルシウム(TP-121 6S :奥多摩工業社)、ホワイトカーボン、酸化チタンを用い、それ以外は同様にして、80g/m2のシートを得た。このシートに対し上記の評価試験を行った。その結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
表1および表2から明らかなように、本発明の向上剤を添加すると嵩と剛度が増加し、紙力の低下が少ない。
Claims (4)
- 下記式(A)で表わされる組成を有する非晶質の化合物(以下化合物(A)という)を含有する紙質向上剤。
aM 1 2 O・bM 2 O・Al 2 O 3 ・cSiO 2 式(A)
(式中、M1はアルカリ金属、M2はCa、aは0.1〜3、bは0.009〜0.1、cは0.2〜6を示す。) - 化合物(A)の吸油能が150ml/化合物(A)100g以上である請求項1記載の紙質向上剤。
- 抄紙工程以前の何れかで、請求項1又は2記載の紙質向上剤を添加するパルプシートの製造方法。
- 抄紙工程以前の何れかで、請求項1又は2記載の紙質向上剤を添加して製造されるパルプシート。
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