JP4035865B2 - スピーカ用振動板およびその製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、スピーカー用振動板に関し、振動板の比弾性率を高め、低音域から高音域までの再生周波数域を広げるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
スピーカー用振動板(以下、振動板と略記する。)として、樹脂発泡シートを用いたものは周知である(特開昭59−39199号公報、特開昭57−24197号公報等)。
しかしながら、これらの先行発明での振動板にあっては、その比弾性率(弾性率を比重で除したもの)が低く、音質の改善効果が不十分であった。
これは、樹脂発泡シートを使用することで、比重を大幅に小さくすることはできるものの発泡に伴ってその弾性率が急激に低下し、比弾性率を高くすることができないためである。
【0003】
一般に、振動板を構成する材料の比弾性率が大きくなると、振動板の共振周波数が高くなり、振動板駆動時のピストン運動領域(周波数)が拡大し、これにより再生周波数帯域が広くなることが知られている。
したがって、従来の樹脂発泡シートからなる振動板では、再生周波数域が十分に広いものではない欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明における課題は、再生周波数域が広く、音の立上り、伸びの良好な樹脂発泡シートからなる振動板を得ることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、樹脂発泡シートと、この樹脂発泡シートの少なくとも一方の面に直接形成された無機質層を有するスピーカ用振動板であって、
前記樹脂発泡シートが、セル径100μm以下、セル密度10 個/cm 以上のセル層とこのセル層の両表面に形成されたスキン層から構成され、
前記無機質層が前記スキン層の表面上に直接形成されているスピーカ用振動板である。
【0006】
請求項2にかかる発明は、上記無機質層がベリリウムからなる請求項1記載のスピーカ用振動板である。
請求項3にかかる発明は、上記無機質層の厚さが0.1〜50μmである請求項1または2記載のスピーカ用振動板である。
【0007】
請求項4にかかる発明は、超臨界状態の炭酸ガスを溶融状態の樹脂に含浸させ、この溶融樹脂を金型内に射出し、冷却して樹脂発泡シートとしたのち、この樹脂発泡シートの表 面に無機質層を薄膜形成手段により直接形成することを特徴とするスピーカ用振動板の製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の振動板の一例を示すもので、図中符号1は振動板である。この振動板1は、樹脂発泡シートと無機質層4とからなっている。この樹脂発泡シートは、中心のセル層2と、このセル層2の両表面に形成されたスキン層3,3とからなる三層構造のもので、その全厚みが0.2〜2mmのものである。
【0009】
セル層2は、セル径が100μm以下の極めて微細なセル(気泡)が、セル密度10個/cm以上と極めて多数分散した気泡層であり、シート全体の厚みの60〜99%を占めている。
セル層2のセル径が100μmを越えると、樹脂発泡シートの弾性率が急激に低下し、比弾性率を高めることができなくなる。また、セル密度が10個/cm未満では、全体としてのセルの数が不足し、軽量化(低比重化)が困難となり、比弾性率を高めることができなくなる。
スキン層3,3は、実質的に発泡していない樹脂層であって両層合せて全体の厚みの1〜40%を占めている。
【0010】
このような樹脂発泡シートは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリメタクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネイト、液晶ポリマーなどの樹脂の1種以上を種々の発泡手段により発泡させたものであるが、これらの樹脂のなかでも弾性率の高いポリスチレン、ポリカーボネイト、AS樹脂、液晶ポリマーからなる樹脂発泡シートが好ましい。
【0011】
このような樹脂発泡シートの製造は、例えば射出成形法によって行われる。可塑化スクリュー部と混合スクリュー部とを一軸で連結したスクリューを有する射出成形機を使用し、これのホッパから原料となる樹脂を投入し、可塑化スクリュー部で加熱、溶融する。また、混合スクリュー部に高圧の液化炭酸ガスを圧入し、シリンダ内で炭酸ガスを超臨界状態とし、溶融状態の樹脂に浸透させる。
ついで、振動板のキャビティを有する成形金型内に、炭酸ガスを含浸した溶融樹脂を射出し、冷却することで、炭酸ガスが気化し、樹脂が発泡して目的とする樹脂発泡シートが得られる。
【0012】
さらに、この樹脂発泡シートのスキン層3,3の表面に無機質層4,4が設けられている。この無機質層4,4は、アルミニウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、ニッケル、クロム、銅などの金属、ダイヤモンド、黒鉛などの結晶性炭素、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、アルミナ、シリカなどの金属酸化物などからなる厚み0.1〜50μmの薄層であって、公知の蒸着法、メッキ法、CVD法、スパッタ法などの薄膜形成手段によって形成されたものである。
【0013】
この無機質層4の厚みが0.1μm未満では、薄すぎて、無機質層4による効果が得られず、50μmを越えると、振動板1の比重が上がりすぎて、比弾性率の向上が望めない。なお、無機質層4は、樹脂発泡シートの片面のみに形成してもよい。
【0014】
このような振動板1にあっては、振動板1をなす樹脂発泡シートのセル層2がセル径100μm以下、セル密度10個/cm以上となっているので、弾性率の低下が未発泡樹脂の90%程度以内となり、かつ比重が未発泡樹脂の30〜50%程度までに低下するため、比弾性率が高くなる。また、曲げ剛性が未発泡シートに比べて高くなる。さらに、無機質層4、4の存在によって、比弾性率がさらに高くなる。
したがって、この振動板1は共振周波数が高くなり、再生周波数が高音域まで拡がり、音の立上り、伸びも良好となる。
【0015】
以下、具体例を示すが、本発明はこの具体例に限定されるものではない。
(実施例1)
可塑化スクリュー部と混合スクリュー部とを一軸で連結したスクリューを有する射出成形機のホッパに液晶ポリマー(三菱エンジニアリングプラスチック社製「ノバキュレートE322」商品名)のペレットを投入し、可塑化スクリュー部で280℃で加熱、溶融させた。液化炭酸ガスをボンベから昇圧ポンプによって250kg/cmに昇圧して混合スクリュー部に圧入した。導入された液化炭酸ガスはシリンダ内で280℃に加熱されて、超臨界状態となり、溶融液晶ポリマーに含浸された。
【0016】
振動板のキャビティを有する成形金型内にこの状態の液晶ポリマーを射出成形した。成形金型の温度は100℃とし、冷却時間は60秒とした。これにより口径10cm、厚み0.5mmのコーン型の樹脂発泡シートを得た。この樹脂発泡シートのスキン層の平均厚みは20μmであり、セル層のセル径は平均10μm、セル密度は1015個/cm、比重は0.5であった。
【0017】
ついで、射出成形後の樹脂発泡シートの両面にベリリウムを厚さ0.1μmに真空蒸着して無機質層を設けた振動板を得た。この振動板を使用したところ、高音域までの再生可能となり、音の伸び、立上りも一層良好であった。
【0018】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の振動板によれば、その比弾性率が高くなり、これにより共振周波数が高くなって、再生周波数域が高音域まで拡がり、かつ音の伸び、立上りが優れたものとなるなど効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の振動板の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1…振動板、2…セル層、3…スキン層、4…無機質層

Claims (4)

  1. 樹脂発泡シートと、この樹脂発泡シートの少なくとも一方の面に直接形成された無機質層を有するスピーカ用振動板であって、
    前記樹脂発泡シートが、セル径100μm以下、セル密度10 個/cm 以上のセル層とこのセル層の両表面に形成されたスキン層から構成され、
    前記無機質層が前記スキン層の表面上に直接形成されているスピーカ用振動板。
  2. 上記無機質層がベリリウムからなる請求項1記載のスピーカ用振動板。
  3. 上記無機質層の厚さが0.1〜50μmである請求項1または2記載のスピーカ用振動板。
  4. 超臨界状態の炭酸ガスを溶融状態の樹脂に含浸させ、この溶融樹脂を金型内に射出し、冷却して樹脂発泡シートとしたのち、この樹脂発泡シートの表面に無機質層を薄膜形成手段により直接形成することを特徴とするスピーカ用振動板の製造方法。
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