JP4034814B2 - グラウト注入工法及びその装置 - Google Patents
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Description
近年、岩盤におけるグラウト注入工法において、いわゆる「動的注入」の有効性が確認されており、その工事数が増加傾向にある。
動的注入の代表例は特許文献1に開示されたもので、グラウト材を注入ポンプにより所定の注入圧力で圧送し、末端の注入管を介して亀裂性岩盤に穿設された注入孔にグラウト材を注入するに際し、前記注入圧力に5Hz〜30Hzの周波数域から選択された特定の周波数を持つ脈動圧力を重畳的に付加し、前記グラウト材の構成粒子を励起させるものである。
しかし、その後の本発明者らは、かかる方法ではグラウト材の浸透性が充分でないことが知見された。
〔請求項1記載の発明〕
注入対象領域にグラウト材を、その注入圧力を周期的に変動させながら注入するに際し、
長波の注入圧力の周期的変動に、短波の注入圧力の周期的変動を重畳した注入圧力の変動をもって前記グラウト材を注入することを特徴とするグラウト注入工法。
前記長波の周波数が0.05〜1Hzの周期である請求項1記載のグラウト注入工法。
前記短波の周波数が1〜10Hzの周期である請求項1または2記載のグラウト注入工法。
注入対象領域にグラウト材を、その注入圧力を周期的に変動させながら注入する装置であって、
前記グラウト材を長波の注入圧力の周期的変動を与えながら圧送する低周波圧送手段と、グラウト材の流れの下流側にあって短波の注入圧力の周期的変動を重畳させる高周波重畳手段と、対象地盤に臨ませ、長波の注入圧力変動に、短波の注入圧力変動を重畳した注入圧力の変動をもって前記グラウト材を吐出する注入管類とを備えたことを特徴とするグラウト注入装置。
<本発明の概要>
図1は、本発明の概念図を示したもので、0.05〜1Hz(より好適には0.05〜0.3Hz、さらに好適には0.05〜0.15Hz、特に望ましいのは0.1〜0.15Hz)の長波(一次低周波)の注入圧力変動に、1〜10Hz(より好適には5〜9Hz、特に好適には5〜8Hz)の短波(二次高周波)の注入圧力変動を重畳した複合波を示す注入圧力の変動をもって対象領域、たとえば岩盤にグラウト材を注入するものである。なお、0.05未満では長波の制御が困難であるため、0.05以上が好ましい。
グラウト注入は、都市土木でのグラウト注入と山岳土木でのグラウト注入(たとえばダムグラウト)とに大別され、本発明は、これらの両者に適用できるが、地盤、特に岩盤グラウトにおいて顕著な利点をもたらすものである。
なお、本発明において、注入開始当初から完了まですべての時間的期間において複合波による注入を必須とするものではなく、少なくとも注入の最終段階で複合波による注入を確保されればよい。したがって、注入開始段階あるいは注入最終段階では、注入圧力を一定としたり、長波(一次低周波)あるいは短波(高周波)のみによる注入圧力変動による注入などでもよい。また、注入圧力の振幅としては、ある時点の圧力Pに対し、±(0.1〜0.7P)の変動を生じるような振幅が好ましい、±(0.3〜0.5P)の変動を生じるような振幅が特に好ましいことを知見している。
以下、岩盤グラウト注入の例を挙げて実施の形態を説明すると、図2に示すように、岩盤Eのクラックにパッカー1aを備えた注入管1を挿入設置しておく。また、注入プラントとして、グラウト材料撹拌機2から、長波の注入圧力変動を与えながら圧送する低周波(長波)圧送手段を構成する、インバータ制御を行う注入ポンプ(一次低周波発生器)3、並びにグラウト材の流れの下流側にあって短波の注入圧力変動を重畳させる高周波(短波)重畳手段を構成する、回転盤を備えた二次高周波発生器4を通して、グラウト材を吐出する注入管類としての前記注入管1にグラウト材Gを圧送するようにしてある。
二次高周波発生器4を通るグラウト材Gの一部はリターンバルブ5によりグラウト材料撹拌機2へ流路11を通して返送するようにしてある。
注入時の圧力は、1次圧力計6により検出し、流量は流量計7により検出し、所定の圧力を超えた時点でコントローラ8によりリターンバルブ5を操作し、グラウト材料撹拌機2へ返送するようにしてある。また、流量が過大となった時点においてもリターンバルブ5を操作し、グラウト材料撹拌機2へ返送するようにしてある。これらのリターン系は、通常のダムグラウトで行われているのと同様の方法であるので詳細の説明を省略する。
かかる設備では、注入ポンプ3、たとえばピストン型の注入ポンプ3を、これに付属のインバータ制御器により回転数制御を行い、グラウト材の送給圧力を長波(一次低周波)で周期的に変動させる。その後において、後に詳しい構造例を説明する二次高周波発生器4により、短波(二次高周波)で周期的に変動させる。その結果、長波(一次低周波)に短波(二次高周波)が重畳された、図1に示す複合波が生じ、かかる複合波の、経時的な圧力変動を示す注入圧力変動(注入流量も変動する。)をもって、注入管1を通してグラウト材Gを岩盤EのクラックCに注入する。
他方、図3に示すように、二次高周波振幅調整器13、バイパス路12及び調整弁14は、流量計7の後段に設けてもよい。
図4に示す二次高周波発生器4は、モータ4Aの出力軸に、同軸心回りに連続的に回転する回転盤4Bを設け、その回転盤4Bの周囲円に適宜の数で透過孔4b、4b…を等間隔で形成したものである。前記周囲円の一部に対して流路10が連なるよう構成してある。
ここで、透過孔4bの数は、透過孔4bの直径を25mmにした場合、本発明で規定する条件を得るためには、6孔では大きな振幅を得ることが困難であり、2孔では遮断時間が長すぎるので、3〜5孔、特に4孔が最適であることを知見している。また、透過孔4bの直径を20mmにした場合、6孔でも良好であり、図5に示す圧力振幅及び流量振幅が得られる。
本発明によれば、図6の模式図に示すように、岩盤Eに大きいクラックと細かいクラックがあるときにおいても、細かいクラックに対しても浸透させることができる。この特有の作用効果については、続いて説明する実施例(実験例)によって明らかにする。
また、高周波重畳手段としては、前掲例のほか、特許第2948881号公報の第2図、あるいは特開昭52−53504号公報に示されたダイヤフラムポンプを使用する形態、特開昭51−88810号公報に示された超音波振動子を使用する形態、特許第2952324号公報に示された振動媒体又は衝撃媒体を使用する形態、特開2002−13130号公報に開示されたアキュムレータを使用する形態など適宜の手段を採用できる。
本発明のグラウト材を吐出する注入管類としては、単管又は二重管のほか、適宜の流路を有する公知のものを使用できる。
グラウト材としては、適宜選択できるが、恒久的に高い強度を得るためにセメントミルク系のものが望ましい。
岩盤を模擬的に再現させるために、図7に示す被注入器に対して、図2に示す装置を使用して、注入実験を行った。
被注入器は、上下の圧肉鉄板(肉圧50mm)の間に狭い間隔Sの流路を形成し、その流路内に邪魔板スペーサを設け、グラウト材の入口P1から出口に向かって邪魔板スペーサを巡りながら注入するようにしたものである。被注入器として、間隙Sが100μmの場合と、50μmの場合との2つものを用意した。グラウト材Gを注入した。グラウト材は、間隙Sが100μmの場合には、図18のグラフの上部に記載した、高炉セメントB種を使用した配合とし、W/C=2/1とし、間隙Sが50μmの場合には、図19のグラフ中に記載した、超微粒子セメントを使用した配合とし、同じくW/C=2/1とした。なお、注入材については以下の例も含めてすべて同一である。
このとき、各位置P1、P2及びP3において、グラウト材の通過量及び圧力を検出した。
間隙Sが100μmの場合の結果を図8〜図12に、間隙Sが50μmの場合の結果を図13〜図17にそれぞれ示した。
各図において、グラフ上の「注入圧力」の文言の後にたとえば(X−Y)と記載されている、前者の数字Xは、長波(一次低周波)の周波数であり、後者のYは短波(二次高周波)の周波数を示す。
また、そのときの、位置P1、位置P2及び位置P3での圧力変化を示したのが図27〜図37である。位置P1、位置P2及び位置P3の奥まりの順で、波形が微細に変化していることが判る。その変化割合は周波数が低いほど顕著である。このことが通過重量(注入量)を多くする要因になっていると考えられる。
短波の周波数が5Hz〜8Hzの範囲内において特に多い通過重量(注入量)を示すこと、本発明に係る複合動的注入は、単動的注入との比較でも多い通過重量(注入量)を示すことが判る。
振幅が大きいほど通過重量(注入量)が多いを示すことが判る。ただし、装置的な要因で振幅には上限がある。この観点からして、30%〜50%の範囲内で選定するのが望ましい。
Claims (4)
- 注入対象領域にグラウト材を、その注入圧力を周期的に変動させながら注入するに際し、
長波の注入圧力の周期的変動に、短波の注入圧力の周期的変動を重畳した注入圧力の変動をもって前記グラウト材を注入することを特徴とするグラウト注入工法。 - 前記長波の周波数が0.05〜1Hzの周期である請求項1記載のグラウト注入工法。
- 前記短波の周波数が1〜10Hzの周期である請求項1または2記載のグラウト注入工法。
- 注入対象領域にグラウト材を、その注入圧力を周期的に変動させながら注入する装置であって、
前記グラウト材を長波の注入圧力の周期的変動を与えながら圧送する低周波圧送手段と、グラウト材の流れの下流側にあって短波の注入圧力の周期的変動を重畳させる高周波重畳手段と、対象地盤に臨ませ、長波の注入圧力変動に、短波の注入圧力変動を重畳した注入圧力の変動をもって前記グラウト材を吐出する注入管類とを備えたことを特徴とするグラウト注入装置。
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