JP4034619B2 - 鉄道車両用伝送システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両内のデータ伝送に利用される鉄道車両用伝送システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
スター型ネットワークの代表的なものとして、IEEE802.3規格に規定されるイーサネットの内、ツイストペアケーブルや光ケーブルを使用した10Base−T/100Base−T等がある。
【0003】
ところで、このスター型ネットワークを鉄道車両に適用しようとした場合、鉄道車両が複数の号車で連結されていることから、図5に示すように各号車に設置される伝送中継機能をもつ伝送装置51a〜51fを直列に接続したバス状伝送路の構成となる。
【0004】
しかしながら、このスター型ネットワークの伝送システムは、伝送路や伝送装置等の一ヶ所でも障害が発生すると、それ以降の伝送路等にデータが伝送できなくなり、システムダウンにつながる問題がある。例えば2号車の伝送装置51bと3号車の伝送装置51cとの間の伝送路に障害が発生した場合、先頭車両である1号車の伝送装置51aは2号車の伝送装置51bの間でデータ伝送が可能であるが、3号車以降の各号車の伝送装置51c〜51fとの間ではデータ伝送ができない状態となる。
【0005】
そこで、従来、この種の伝送システムでは、一方の伝送路や伝送装置が故障しても他方の伝送路や伝送装置がバックアップする二重化構成にしたり、各号車の伝送装置51a〜51fをリング状に接続するトークンリング方式のネットワークが採用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、二重化構成の伝送システムは、各号車ごとにそれぞれ複数の伝送路や伝送装置を備える必要があり、システム全体の設備が非常に高価となる問題がある。
【0007】
また、トークンリング方式ネットワークシステムは、リング状ネットワーク上にトークンと呼ばれるデータを巡回させる一方、データ送信を必要とする送信元伝送装置(ノード)は、トークンが自身に巡回されてきたとき、トークンが空き状態にあるか否かを判断し、空き状態にあれば当該トークンを取込み、この空きトークンに伝送先名を含む伝送データを付加し、ネットワーク上に送信する。他の伝送装置(ノード)は、トークンを含む伝送データを監視し、自己宛のデータであれば当該データを取り込み、自己宛のデータでない場合にはそのまま次の伝送装置に送信する。
【0008】
しかし、トークンリング方式を採用したネットワークは、必要な時にデータを伝送できないばかりか、二重化構成のものと同様に価格的に高価となる問題がある。
【0009】
本発明は上記事情にかんがみてなされたもので、スター型のイーサネットを用いて伝送路をリング状に接続し、設備の低コスト化を図り、かつ、障害時でも継続的にデータを授受可能な冗長化を確保する鉄道車両用伝送システムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、イーサネットを用いて、複数の号車が連結される鉄道車両内でデータの授受を行う本発明に係る鉄道車両用伝送システムは、それぞれ送受信用伝送ポートを有する3つの第1の伝送送受信部と、これら3つの第1の伝送送受信部を結ぶ内部送受信ライン上にそれぞれ設けられ、対応する伝送送受信部の送受信用伝送ポートのデータリピートを許可・禁止するための第1のポート制御スイッチと、前記3つの第1の伝送送受信部の何れか1つの伝送送受信部に接続され、データの送受信を行う伝送局と、この伝送局からの指示内容に従って前記ポート制御スイッチに対してデータリピートの許可・禁止制御を実行する第1の中継制御部とを設けた、少なくとも先頭車両となる号車に設置される少なくとも1台の第1の伝送装置と、それぞれ送受信用伝送ポートを有する2つの第2の伝送送受信部と、これら2つの第2の伝送送受信部を結ぶ内部送受信ライン上にそれぞれ設けられ、対応する伝送送受信部の送受信用伝送ポートのデータリピートを許可・禁止するための第2のポート制御スイッチと、前記第1の中継制御部から送られてくる命令データに従い、前記第2のポート制御スイッチに対してデータリピートの許可・禁止制御を実行する第2の中継制御部とを設けた、少なくとも先頭車両以外の号車に設置される第2の伝送装置と、前記全ての伝送装置間を接続する伝送路とを備え、前記全ての伝送装置を前記伝送路によりリング状に接続する構成である。
【0011】
本発明は以上のような構成とすることにより、各伝送装置の中継制御部は、親局となる伝送装置からの無効・有効命令に基づいて各送受信ポートを無効・有効とする制御を行うので、伝送路正常時に複数の伝送装置を所要の順序で接続するが、ある伝送路の異常時にはその異常側伝送路に接続される伝送ポートを無効とすることによりデータリピートを禁止し、既に無効とされている伝送ポートを有効とする制御を行い、複数の伝送装置の接続順序を変更することにより、データを継続的に伝送することが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本発明に係わる鉄道車両用伝送システムの一実施の形態を示す構成図である。
【0014】
この鉄道車両用伝送システムは、各号車ごとに少なくとも1台の伝送中継機能をもつ伝送装置1a〜1nと、これら伝送装置1a〜1nをリング状に接続する伝送路2a〜2nとによって構成されている。
【0015】
各伝送装置1(1a〜1nの何れか1つを意味する)は、図2に示すように3つ以上の伝送ポートの構成を備えた伝送送受信部11a〜11cと、この伝送送受信部11a〜11cにそれぞれ対応して設けられ、各伝送ポートのデータリピートを許可・禁止するためのポート制御スイッチ12a〜12cと、これらポート制御スイッチ12a〜12cを制御する中継制御部13と、自局データの送受信を行う伝送局14とが設けられている。なお、自号車がデータ授受しない場合には2ポート以上とする。なお、自号車自体がデータ授受しない場合、伝送送受信部11c,ポート制御スイッチ12c、伝送局14が不要となり、2伝送ポート構成となる。従って、この自号車においては、伝送装置は単に伝送中継機能だけをもつことになる。
【0016】
前記伝送路2a〜2nは、IEEE802.3規格に規定されるイーサネットの内、10Base−T/100Base−T等のツイストペアケーブルや10Base−FX/100Base−FX等の光ケーブルが使用されている。
【0017】
次に、以上のような伝送システムの動作について図3および図4を参照して説明する。なお、図3はシステム全体が正常に動作している例であり、図4はある伝送路に障害が発生した例を説明する図である。但し、図3,図4は、説明の便宜上、6両からなる号車編成の鉄道車両を想定したものであり、この場合にはn=hまでとし、各号車にはそれぞれ1台以上の伝送装置1a〜1hが設置されている。
【0018】
すなわち、1号車にはそれぞれ伝送中継機能をもつ2台の伝送装置1aおよび1hが設置され、伝送路2hによって結ばれている。2号車〜5号車にはそれぞれ伝送中継機能をもつ1台の伝送装置,つまり2号車には1台の伝送装置1b、3号車には1台の伝送装置1g、4号車には1台の伝送装置1c、5号車には1台の伝送装置1fが設置されている。6号車には2台の伝送装置1dと1eとが設置され、伝送路2dによって接続されている。
【0019】
これら8台の伝送装置1a〜1hは、伝送路2a〜2hによって1a〜1h−1aの順序でリング状に接続されている。
【0020】
なお、この実施の形態では、1号車と6号車が先頭車であり、これら先頭車において車両制御用データを作成し、他の各号車に伝送する役割をもっている。しかし、伝送装置に伝送局14が備えられている場合、他の号車であっても車両制御用データを作成し、他の各号車に伝送することが可能である。
【0021】
また、先頭車の伝送装置が故障しても制御が継続できるように、当該先頭車にはそれぞれ2台の伝送装置(1a,1h)、(1d,1e)が設置されているが、1台の伝送装置であってもよい。
【0022】
(1) 各伝送装置および各伝送路が正常な場合について(図3参照)。
【0023】
今、伝送装置1aがネットワークの親局とすると、この伝送装置1aの伝送局14から指示を受けて中継制御部13が一方の伝送路例えば2a側伝送ポートを有効とし、データリピートを許可するためにポート制御スイッチ12bをオンし、他方の伝送路2h側伝送ポートを無効,すなわちデータをリピートしないようにポート制御スイッチ12aをオフする。また、伝送装置1hにおいても、伝送装置1aからの指示のもとに自身の中継制御部13を介して伝送路2h側伝送ポートを無効,すなわちデータをリピートしないようにポート制御スイッチをオフする。さらに、伝送装置1aは、その他の伝送装置1b〜1gに両側伝送ポートを有効とするデータを中継制御部13,…に送信し、各ポート制御スイッチをオンに設定する。
【0024】
その結果、ネットワークのデータ伝送経路は、
1a−1b−1c−1d−1e−1f−1g−1h
の順序で接続される。つまり、スター型のイーサーネットを用いて複数の伝送装置1a〜1hをリング状に接続するが、全ての伝送路2a〜2hが正常である場合、例えば先頭車の伝送装置1aの一方の伝送路側伝送ポートを無効とし、データリピートを禁止する状態にすることにより、スター型ネットワーク発生するデータが永久に回り続けることを防止することができる。
【0025】
さらに、各号車の伝送装置においても、データ送信を必要とする時、伝送局14が中継制御部13を介して必要なスイッチ11a,11b,11cを適宜選択的にオン制御し、データを送信することが可能である。
【0026】
(2) 伝送装置1bと伝送装置1cとの間の伝送路2bに障害が発生した場合について(図4参照)。
【0027】
伝送路2bに障害が発生した場合、親局である伝送装置1aは、伝送装置1bからデータを受信することが可能であるが、伝送装置1c以降(1c,1d,1e,1f,1g,1h)から送信されてくるデータを受信することができない。
【0028】
そこで、伝送装置1aは、自身からデータを送信したにも拘らず、一定時間以内に応答がないとか、或いは伝送装置1c以降の伝送装置から所定周期ごとにデータが送られてくるにも拘らず、送信されて来ない場合、伝送路2bまたは伝送装置1cに障害が発生したと判断し、伝送装置1bに対して伝送路2b側の伝送ポートを無効とする命令を送信する。
【0029】
この伝送装置1bの中継制御部13は、伝送装置1aから伝送されてくる伝送路2b側伝送ポートの無効とする命令を受けると、その無効とする命令に基づいて伝送路2b側に対応するポート制御スイッチ例えば12bをオフとし、伝送路2bへのデータ送信を停止する。
【0030】
また、伝送装置1aは、中継制御部13を介して伝送路2h側の伝送ポートを無効から有効とする制御を行い、伝送装置1aと伝送装置1hとの間のデータリピートを許可する。
【0031】
これにより、ネットワークの伝送経路は、
1b−1a−1h−1g−1f−1e−1d−1c
の順序に接続され、全伝送装置によるデータが継続的に伝送することが可能となる。
【0032】
(3) 伝送路2bの障害復旧を確認した場合について。
【0033】
伝送装置1aは、例えば次のような条件のときに障害復旧であると確認する。
【0034】
* リンクパルスを検出した場合。
【0035】
* 無効とした伝送ポートからデータを受信した場合(データはリピートしない)。
【0036】
以上のようにして障害復旧を確認すると、伝送装置1aは、伝送路2h側の伝送ポートを再度無効にするとともに、伝送装置1bに対して伝送路2b側のポートを有効ちする,つまりデータリピートを許可する命令を送出する。このようにして障害復旧時には再度初期状態に戻る。
【0037】
従って、以上のような実施の形態によれば、リング型のイーサネットのネットワークを用い、各号車の伝送装置に対して伝送路をリング状に接続し、伝送路、伝送装置の状態に応じて、所要とする伝送装置にの中継制御部に対し、伝送ポートを適宜選択的に有効・無効とする命令を送信し、データリピートの許可・禁止制御を行うことにより、ある伝送装置間の伝送路に障害が発生したしとき、伝送路の接続順序を変更することにより、データを継続的に授受することができる。
【0038】
また、親局となる伝送装置1aの伝送ポートの無効・無効解除命令のもとに容易に復元でき、かつ、各伝送装置からも必要なときにデータを送信できるので、設備の低コストの他、冗長性を確保することができる。
【0039】
なお、本願発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば上記実施の形態では、伝送路2bに障害が発生した場合について説明したが、例えば伝送装置1aに障害(故障)が発生した場合でも同様に適用できるものである。この場合には、伝送路で接続される隣接する伝送装置例えば1bが前述する伝送装置1aと同様な処理を実行する。
【0040】
また、上記実施の形態では、伝送路の障害について、各伝送装置からの受信データから判断しているが、10Base−T/100Base−T等の物理層に実装されているリンクパルスを活用して判断してもよい。つまり、リンクパルス検出中は伝送路が正常状態と判断し、リンクパルス非検出時は伝送路が障害発生時と判断する。
【0041】
さらに、各伝送装置1a,…が自装置の状態確認用情報を定周期で送信し、その情報から伝送路の状態を判断してもよい。
【0042】
さらに、障害発生後、当該障害が復旧したとき、初期状態に戻るようにしたが、初期状態に戻らずに切替えた状態のままであってもよい。
【0043】
また、各実施の形態は可能な限り組み合わせて実施することが可能であり、その場合には組み合わせによる効果が得られる。さらに、上記各実施の形態には種々の上位,下位段階の発明が含まれており、開示された複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得るものである。例えば問題点を解決するための手段に記載される全構成要件から幾つかの構成要件が省略されうることで発明が抽出された場合には、その抽出された発明を実施する場合には省略部分が周知慣用技術で適宜補われるものである。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、設備の低コスト化を実現でき、また障害発生時でもデータを継続的に授受でき、冗長性をもった鉄道車両用伝送システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる鉄道車両用伝送システムの一実施の形態を示す構成図。
【図2】 図1に示す伝送装置の一具体例の構成図。
【図3】 伝送システム正常時の各伝送装置の接続構成図。
【図4】 ある伝送路障害時の各伝送装置の接続構成図。
【図5】 従来の伝送システムにおける障害時の伝送可能範囲を説明する図。
【符号の説明】
1a〜1n…伝送装置
2a〜2n…伝送路
11a〜11c…伝送送受信部
12a〜12c…ポート制御スイッチ
13…中継制御部
14…伝送局

Claims (5)

  1. イーサネットを用いて、複数の号車が連結される鉄道車両内でデータの授受を行う鉄道車両用伝送システムにおいて、
    それぞれ送受信用伝送ポートを有する3つの第1の伝送送受信部と、これら3つの第1の伝送送受信部を結ぶ内部送受信ライン上にそれぞれ設けられ、対応する伝送送受信部の送受信用伝送ポートのデータリピートを許可・禁止するための第1のポート制御スイッチと、前記3つの第1の伝送送受信部の何れか1つの伝送送受信部に接続され、データの送受信を行う伝送局と、この伝送局からの指示内容に従って前記ポート制御スイッチに対してデータリピートの許可・禁止制御を実行する第1の中継制御部とを設けた、少なくとも先頭車両となる号車に設置される少なくとも1台の第1の伝送装置と、
    それぞれ送受信用伝送ポートを有する2つの第2の伝送送受信部と、これら2つの第2の伝送送受信部を結ぶ内部送受信ライン上にそれぞれ設けられ、対応する伝送送受信部の送受信用伝送ポートのデータリピートを許可・禁止するための第2のポート制御スイッチと、前記第1の中継制御部から送られてくる命令データに従い、前記第2のポート制御スイッチに対してデータリピートの許可・禁止制御を実行する第2の中継制御部とを設けた、少なくとも先頭車両以外の号車に設置される第2の伝送装置と
    前記全ての伝送装置間を接続する伝送路と
    を備え、前記全ての伝送装置を前記伝送路によりリング状に接続することを特徴とする鉄道車両用伝送システム。
  2. 請求項1に記載の鉄道車両用伝送システムにおいて、
    各伝送路が正常な場合、前記第1の伝送装置内に設けられた伝送局からの指示内容に従い、第1の中継制御部が前記伝送路と接続される一方の第1の伝送送受信部の送受信用伝送ポートを無効とするように対応する前記第1のポート制御スイッチを制御することにより、データリピートを禁止し、データのループ化を禁止することを特徴とする鉄道車両用伝送システム。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の鉄道車両用伝送システムにおいて、
    ある第2の伝送装置間の伝送路に障害が発生したとき前記第1の伝送装置は、当該障害側伝送路に接続される少なくとも一方の前記第2の伝送装置から障害発生に関するデータを受けたとき、第1の中継制御部は、当該障害側伝送路に接続される第2の伝送装置に無効とする命令を送信し、当該第2の伝送装置における第2の中継制御部は、無効とする命令に従って障害側伝送路に接続される前記伝送送受信部の送受信用伝送ポートを無効とする制御によりデータリピートを禁止し、
    また、前記第1の伝送装置における第1の中継制御部は、既に無効とされた伝送送受信部の送受信用伝送ポートを有効とする制御によりデータリピートを許可し、前記複数の伝送装置の接続順序を変更することによりデータを継続的に伝送することを特徴とする鉄道車両用伝送システム。
  4. 請求項3に記載の鉄道車両用伝送システムにおいて、
    前記障害発生の確認手段は、各伝送装置間で定期的に交換する状態確認用データから障害の発生を確認することを特徴とする鉄道車両用伝送システム。
  5. 請求項3に記載の鉄道車両用伝送システムにおいて、
    伝送路の障害が復旧した場合、前記伝送路障害時に有効とされた伝送送受信部の送受信用伝送ポートをもつ伝送装置の中継制御部は、当該有効とされている当該伝送送受信部の送受信用伝送ポートを無効とする制御によりデータリピートを禁止し、
    前記伝送路障害時に無効とされた伝送送受信部の送受信用伝送ポートをもつ伝送装置の中継制御部は、当該無効とされている伝送送受信部の送受信用伝送ポートを有効とするための再開制御を行い、前記複数の伝送装置の接続順序を初期状態に復旧させることを特徴とする鉄道車両用伝送システム。
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