JP4034154B2 - 光記録型積層導波路ホログラム媒体、ホログラム記録方法およびホログラム再生方法 - Google Patents
光記録型積層導波路ホログラム媒体、ホログラム記録方法およびホログラム再生方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、追記もしくは書き換え可能な、光記録型積層導波路ホログラム媒体、ホログラム記録方法およびホログラム再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、積層した光導波路のコア層またはコア層とクラッド層との境界部にホログラムを記録した積層ホログラム媒体が提案されている。しかし、従来の積層ホログラム媒体は、計算機ホログラム等の手法によるホログラムを媒体の製造段階で予めコア層またはコア層とクラッド層との境界部に記録しておく再生専用の媒体であり、完成後に新たなホログラムを記録することは不可能であった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そこで、積層ホログラム媒体において記録を可能にするため、積層した光導波路のコア層内またはコア層に近接した位置に光記録可能な材料による記録層を配置し、特定の記録層にのみホログラムを記録すべく、コア層を伝搬する導波光を参照光にする方法が考えられる。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−345419号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した構造の積層ホログラム媒体を用いて、ある特定の記録層にのみホログラムを記録しようとしても、少なくとも物体光は、他の層を通過しなければならないため、その際、他層に余計な露光をしてしまうことになる。一般の記録材料は、光強度に比例してその状態が変化する特徴を有しているので、参照光が導波していない他の記録層においても、物体光が照射されることによって、その光強度に比例した変化が生じてしまう。
【0006】
例えば、ある薄膜があって、この薄膜に光を照射することで不可逆に変化しうる物性値(吸収率あるいは屈折率)の変化量をξとし、その飽和変化量をξsとする。物性値の変化が光照射量に比例する、即ち、光に対する線形応答材料ならば、光強度Iを微小時間δtだけ照射したときのξの微小変化δξは、比例係数κを用いて、
【0007】
【数1】
【0008】
と表される。よって、変化量ξは、
【0009】
【数2】
【0010】
となる。参照光と物体光とが同時露光されるときのみ、記録層に干渉縞(信号)が記録されるが、物体光のみ照射された場合でも、記録層において、その光強度に比例した変化を生じる。即ち、変化量ξは、「消費」される。したがって、この薄膜がN層あるとき、第1層,第2層、…、第N層と順番に記録していった場合、第i層の露光時間をtiとして、
【0011】
【数3】
【0012】
を満たすように露光すれば、変化量ξを使い切り、かつ、すべての層で等しい物性値変化(ξs/N)が得られる。但し、上記数式3では、第N層の露光時間tNは無限大となるが、現実には有限時間の露光しかできないので、第N層に関しては少ない物理量変化しか与えられない。
【0013】
さて、露光により変化する物性値ξが吸収率か屈折率かにかかわらず、回折光量はξの2乗に比例するから、各層からの信号光強度Siは、数式4で示すようになる。
【0014】
【数4】
【0015】
即ち、線形応答材料を用いる限り、層数の2乗に反比例して信号光強度が減衰することは不可避であり、積層化によって大容量性を目指すなら、記録材料に光強度に対する何らかの非線形性を持たせることが必須であることは明らかである。
【0016】
さて、その非線形性をもたらす材料として、大別すると、光非線形材料と熱記録材料が挙げられる。このうち、光非線形材料に関しては、導波路化が可能な材料は、現在までのところ知られていない。一方、熱記録材料に関しては、薄膜化技術の開発された様々な色素膜が存在する。ホログラフィでは、物体光強度をIo、参照光強度をIRとしたとき、記録される干渉縞のビジビリティを下記数式5で示すように定めると、ビジビリティ良く記録するためには物体光強度Ioと参照光強度IRとがほぼ等しいことを要求される。
【0017】
【数5】
【0018】
しかしながら、色素膜を記録材料として用いるために、層形状にして導波路化した場合、導波路ホログラムの参照光である導波光と、導波層の概ね法線方向から入射される物体光の双方に対して、ほぼ等しい吸収を与えることは、色素膜を導波層とする限り不可能である。通過すべき距離が、層に平行な方向の導波光では数cmのオーダであり、一方、層に垂直な方向の入射光では、100nmのオーダであるので、両者は5桁も異なる。
【0019】
一方、干渉縞を記録するため、導波光と垂直入射光の周波数は等しくなければならないが、非晶質である色素膜の吸収に異方性はないので、両者に対する吸収係数も等しくなる。したがって、非線形材料である色素膜を用いてさえ、色素膜そのものを導波路として用いた場合には、書き込み可能な積層導波路は実現不可能であった。
【0020】
この発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、所望するコア層に効率よく光を導波させることができ、特定の色素層にのみホログラムを記録することができる光記録型積層導波路ホログラム媒体、ホログラム記録方法およびホログラム再生方法を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上述した問題点を解決するために、請求項1記載の発明では、光を導波させる少なくとも1つのコア層と、前記コア層を挟むように配置された少なくとも2つのクラッド層と、前記コア層と前記クラッド層との境界に設けられ、光照射による温度上昇によって吸収係数もしくは屈折率が変化する少なくとも1つの記録層と、前記記録層と前記コア層との間に設けられ、前記コア層より低い屈折率を有するギャップ層とを具備することを特徴とする。
【0022】
また、請求項2記載の発明では、請求項1記載の光記録型積層導波路ホログラム媒体において、前記記録層は、光強度に対して非線形特性を有する色素層から形成されていることを特徴とする。
【0023】
また、請求項3記載の発明では、請求項1記載の光記録型積層導波路ホログラム媒体において、前記ギャップ層は、前記記録層に比べて膜厚が大であることを特徴とする。
【0024】
また、上述した問題点を解決するために、請求項4記載の発明では、光を導波させる少なくとも1つのコア層と、前記コア層を挟むように配置された少なくとも2つのクラッド層と、前記コア層と前記クラッド層との境界に設けられ、光照射による温度上昇によって吸収係数もしくは屈折率が変化する少なくとも1つの記録層と、前記記録層と前記コア層との間に設けられ、前記コア層より低い屈折率を有するギャップ層とからなり、前記コア層を導波する導波光のエバネッセント光が前記ギャップ層を介して前記記録層に達するように構成されているホログラム媒体にホログラムを記録するホログラム記録方法であって、前記ホログラム媒体の各層が下方から上方に積層されているとして、物体光を該ホログラム媒体の上方あるいは下方のいずれか一方から照射し、かつ記録用参照光をいずれかのコア層の端面から該コア層に入射する記録露光を行う過程とを有することを特徴とする。
【0025】
また、請求項5記載の発明では、請求項4記載のホログラム記録方法において、前記物体光と前記記録用参照光とを照射する記録露光に先立って、予備加熱光を、前記記録用参照光を入射する前記コア層の端面から該コア層に入射する過程を有することを特徴とする。
【0026】
また、上述した問題点を解決するために、請求項6記載の発明では、光を導波させる少なくとも1つのコア層と、前記コア層を挟むように配置された少なくとも2つのクラッド層と、前記コア層と前記クラッド層との境界に設けられ、光照射による温度上昇によって吸収係数もしくは屈折率が変化する少なくとも1つの記録層と、前記記録層と前記コア層との間に設けられ、前記コア層より低い屈折率を有するギャップ層とからなり、前記コア層を導波する導波光のエバネッセント光が前記ギャップ層を介して前記記録層に達するように構成されているホログラム媒体にホログラムを記録するホログラム記録方法であって、物体光と記録用参照光とを照射する記録露光に先立って、もしくは記録露光と同時に、予備加熱光をいずれかのコア層の端面から該コア層に入射する過程と、前記ホログラム媒体の各層が下方から上方に積層されているとして、前記物体光を該ホログラム媒体の上方あるいは下方のいずれか一方から照射し、かつ前記記録用参照光を該ホログラム媒体の上方あるいは下方のいずれか一方から照射する記録露光を行う過程とを有することを特徴とする。
【0027】
また、請求項7記載の発明では、請求項4または6記載のホログラム記録方法において、前記記録露光を行う過程において、前記物体光および前記記録用参照光を、それぞれ、該ホログラム媒体内での進行方向と前記コア層の法線とのなす角度θが、前記クラッド層の屈折率をncladとして、sinθ<1/ncladとなるように照射することを特徴とする。
【0028】
また、上述した問題点を解決するために、請求項8記載の発明では、光を導波させる少なくとも1つのコア層と、前記コア層を挟むように配置された少なくとも2つのクラッド層と、前記コア層と前記クラッド層との境界に設けられ、光照射による温度上昇によって吸収係数もしくは屈折率が変化する少なくとも1つの記録層と、前記記録層と前記コア層との間に設けられ、前記コア層より低い屈折率を有するギャップ層とからなり、各層が下方から上方に積層されているホログラム媒体に対して、物体光を該ホログラム媒体の上方あるいは下方のいずれか一方から照射し、かつ記録用参照光を該ホログラム媒体の上方あるいは下方のいずれか一方から照射する記録露光を行うことで前記記録層に記録されたホログラムを、再生するホログラム再生方法であって、前記記録露光時の前記物体光および前記記録用参照光の波長に比べて、自由空間における波長が長い再生用参照光を、いずれかのコア層の端面から該コア層に入射し、前記色素層に記録されているホログラムの再生像を得る過程を有することを特徴とする。
【0029】
この発明では、光を導波させる少なくとも1つのコア層を挟むように2つのクラッド層を配置し、前記コア層と前記クラッド層との境界に、光照射による温度上昇によって吸収係数もしくは屈折率が変化する少なくとも1つの記録層を設け、前記記録層と前記コア層との間に、前記コア層より低い屈折率を有するギャップ層を設ける。したがって、ギャップ層が障壁となって色素層での導波光の吸収を抑えるため、1つのコア層に効率よく光を導波させることができ、当該コア層の温度が上昇することで特定の色素層にのみホログラムを記録することが可能となる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
A.本発明の原理
本発明では、前述した従来技術による色素を用いた熱記録方法による、物体光と参照光の強度差の問題を解決するために、色素そのものをコア層とせず、別途、透明なコア層を用意する。通常、色素の屈折率は「2」程度であり、透明なポリマの典型的な屈折率「1.5」と比べて非常に大きい。したがって、コア層と色素とを隣接させると、最初にコア層で励起された導波光は、直ぐに屈折率の大きな色素層に吸収されるので、そのままではコア層を導波しない。
【0031】
この問題を解決するために、コア層と色素層との間に屈折率の小さなギャップ層を設ける。コア層を導波する導波光のエバネッセント波に対してギャップ層が障壁となり、色素層でのエバネッセント光の振幅は小さく抑えられる。色素層に達したエバネッセント光は、速やかに吸収されるため、色素層内を導波するモードに関しては考慮する必要がない。クラッド層、コア層、ギャップ層、そして色素層の屈折率を、各々、nc,na,nG,ndye、膜厚を、各々、dc,da,dG,ddye,とすると、導波光のコア層内での振幅を「1」に規格化したときに、色素層におけるエバネッセント光の振幅aevは、概ね、
【0032】
【数6】
【0033】
で与えられる。本発明においては、dG>>ddyeを想定しているので、エバネッセント光の振幅aevは、
【0034】
【数7】
【0035】
であり、ギャップ層の膜厚に対して指数関数的に減衰することが分かる。したがって、ギャップ層の膜厚を適当に選ぶことによって、導波光のエバネッセント光強度を制御し、ビジビリティ良くホログラムを色素層に記録することが可能となる。導波路面内でのホログラムの大きさを、導波方向にL、導波方向の幅をWとすると、物体光および参照光の振幅Eobj,Erefは、入力光強度をそれぞれIobj,Irefとして
【0036】
【数8】
【0037】
【数9】
【0038】
で表される。ゆえに、Eobj=Erefより、
【0039】
【数10】
【0040】
に従ってギャップ層の厚みや屈折率を設定すれば、色素層にビジビリティの高いホログラムを記録できることが分かる。
【0041】
一般に、Iref=Iobjの時に光の利用効率が高く、da/Lは10−4のオーダであるから、
【0042】
【数11】
【0043】
であり、√(nG 2−na 2)が0.1〜0.5の範囲で容易に制御可能であるので、数μmのギャップ層の膜厚があれば良いことが分かる。これは容易に達成可能であり、積層導波路型での書込可能なホログラムが実現できることが分かる。
【0044】
また、記録に先立って導波光のみを入射すると、該導波層のみの温度が上がり、記録時に必要な光強度の閾値が下がる。この方法によって、さらに記録時の層選択性が増すことが期待される。例えば、記録に先立ち、目標とする導波層に光を入射して予備加熱しておき、記録時には物体光、参照光ともに導波路外からの照射を行うことも可能である。このホログラムは、薄膜型のホログラフィ技術を用いたものであるから、ホログラムの記録時と再生時との光の波長が異なっていても、コア層を伝搬する導波光は、色素層に記録された干渉縞によって回折される。但し、再生時には導波光が参照光とならなければならないので、実際に記録時のホログラムを生成する光の波長は、再生時の光の波長よりも短波長でなければならない。なお、このような、記録時と再生時との波長が異なる記録系において、記録時の入射光が任意の導波層を全反射されることなく横切るためには、導波層の法線とのなす角度θが、クラッドの屈折率をncladとして、
【0045】
【数12】
【0046】
で表される条件を満たす方向に進むことが必要である。以下、上述した内容についての実施形態について詳細に説明する。
【0047】
B.光記録型積層導波路ホログラム媒体の構造
まず、本実施形態による光記録型積層導波路ホログラム媒体の構造について説明する。図1(a)、(b)は、本発明の第1実施形態による光記録型積層導波路ホログラム媒体の構成を示す断面図である。図において、1および2はそれぞれ光導波路を構成するためのコア層およびクラッド層、3は光強度に対して非線形特性を有し、吸収係数もしくは屈折率を変化させられる色素層、4は色素層3とコア層1との間に設けられたギャップ層であり、コア層1よりも屈折率の低い材料からなる。
【0048】
図1(a)には、1つのコア層1、1つのギャップ層4、1つの色素層3を挟むように配置した2つのクラッド層2,2から構成される光記録型積層導波路ホログラム媒体の例を示す。また、図1(b)には、図1(a)で示した媒体構成を多層に積み重ねた光記録型積層導波路ホログラム媒体の例を示す。
【0049】
このように、色素層3とコア層1との間にギャップ層4を設けるごとにより、コア層1を導波する光のエバネッセント波に対してギャップ層4が障壁となって、色素層3でのエバネッセント光の振幅を小さく抑えることができるため、エネルギー損失が抑制され、コア層1に光を導波させることができる。
【0050】
図2は、光記録型積層導波路ホログラム媒体のギャップ層膜厚とコア終端部での導波光の伝搬率の関係の一例を示す概念図である。図示の例では、ギャッブ層4の膜厚に対するコア終端部での導波光の伝搬率を調べた結果を示している。媒体の構成は、クラッド層2の膜厚が10μm程度、そして同屈折率が1.51程度、また、コア層1の膜厚が1μm程度であり、同屈折率が1.52程度、さらに、色素層3の膜厚が0.1μm程度、同複素屈折率を2+i1.5(但し、iは虚数単位)程度とし、ギャップ層4の屈折率が1.505程度である。コア層1に導波させた光の波長は650nmである。コア層1に入射した光のコア終端部での導波光の伝搬率は、ギャップ層4の膜厚の増加に伴って高くなり、ギャップ層4の膜厚が1.1μmでは20%程度だが、膜厚が約2倍になると90%程度となる。
【0051】
このように、ギャップ層4の膜厚に応じてコア層1の光の伝搬状態が異なることから、ギャップ層4の膜厚を任意に選ぶことで、導波光のエバネッセント光強度を制御できるため、ビジビリティ良くホログラムを記録することが可能になる。言い換えると、ギャップ層4の膜厚を選ぶことによって、コア層終端部での導波光の伝搬率を「1」に近づけることができれば、参照光の振幅(Eref)を導波路面内のホログラムを記録する部分全面に渡ってほぼ一様にできるため、物体光と参照光との振幅をほぼ等しく(Eobj≒Eref)することが可能となり、従って、ホログラムを記録することも可能となる。
【0052】
C.第1のホログラム記録方法および第1のホログラム再生方法
次に、本実施形態による第1のホログラム記録方法および第1のホログラム再生方法について説明する。ここで、図3および図4(a)、図4(b)は、本実施形態による光記録型積層導波路ホログラム媒体の第1のホログラム記録方法を示す模式図である。
【0053】
まず、ホログラムを記録しようとするコア層1に、記録露光に先立って、予備加熱のための予備加熱光6をレンズ5によって集光させて導波させる(導波光7)。このように1つのコア層1に予備加熱光6を導波させることで該導波層のみの温度が上がり、記録時に必要な光強度の閾値を下げることができる。また、上記予備加熱によって、多層に積み重ねた媒体構成において、ホログラムを記録しようとするコア層の選択性が増し、特定の記録層にのみホログラムを記録することが可能となる。
【0054】
なお、本実施形態による第1のホログラム記録方法においては、予備加熱光6を、ホログラムを記録する際の記録用参照光8により兼ねることもできるので、後述するように、記録用参照光8と物体光9とを照射する記録露光時に、記録用参照光8によって予備加熱を行うようにしてもよい。
【0055】
次に、図4(a)に示すように、予備加熱した色素層にホログラムを記録すべく、物体光9を媒体の上方から照射すると同時に、記録用参照光8(予備加熱と記録露光とを同時に行う場合、予備加熱光を兼ねる)を、レンズ5によって集光させて記録しようとするコア層1に導波させる(導波光7)。あるいは、図4(b)に示すように、物体光9を媒体の下方から照射すると同時に記録用参照光8(予備加熱と記録露光とを同時に行う場合、予備加熱光を兼ねる)を、レンズ5によって集光させて記録しようとするコア層に導波させる(導波光7)。物体光9は導波路外から照射を行う。
【0056】
次に、図5(a)は、図4(a)に示す第1のホログラム記録方法で記録されたホログラムを再生する第1のホログラム再生方法を示す模式図であり、図5(b)は、図4(b)に示す第1のホログラム記録方法で記録されたホログラムを再生する第1のホログラム再生方法を示す模式図である。本第1のホログラム記録方法によって記録されたホログラムを再生する場合には、自由空間における波長が記録露光時の物体光9および記録用参照光8と等しい波長の再生用参照光10を、いずれかのコア層1の端面からそのコア層1に入射することにより、色素層3に記録されているホログラムの再生光11(再生像)を得る。
【0057】
D.第2のホログラム記録方法および第2のホログラム再生方法
次に、本実施形態による第2のホログラム記録方法および第2のホログラム再生方法について説明する。ここで、図6および図7(a)、(b)は、本実施形態による光記録型積層導波路ホログラム媒体の第2のホログラム記録方法を示す模式図である。
【0058】
まず、ホログラムを記録しようとするコア層1に、記録露光に先立って、予備加熱のための予備加熱光6をレンズ5によって集光させて導波させる(導波光7)。前述した第1のホログラム記録方法と同様に、1つのコア層1に予備加熱光6を導波させることで該導波層のみの温度が上がり、記録時に必要な光強度の閾値を下げることができる。また、上記予備加熱によって、多層に積み重ねた媒体構成において、ホログラムを記録しようとするコア層の選択性が増し、特定の記録層にのみホログラムを記録することが可能となる。
【0059】
なお、本実施形態による第2のホログラム記録方法においても、予備加熱を記録露光と同時に行うことも可能であり、後述するように、物体光9と記録用参照光8とを照射する記録露光時に、予備加熱光6をコア層に導波させるようにしてもよい。
【0060】
次に、図7(a)に示すように、予備加熱した色素層にホログラムを記録すべく、物体光9を媒体の上方から照射すると同時に記録用参照光8を、媒体の上方から照射する。もしくは、図7(b)のように、物体光9を媒体の下方から照射すると同時に記録用参照光8を媒体の下方から照射する。物体光9と記録用参照光8とは共に導波路外から照射を行う。なお、記録露光と同時に予備加熱を行う場合には、図示するように、予備加熱光6をレンズ5によって集光させて導波させる。
【0061】
次に、図8(a)は、図7(a)に示す第2のホログラム記録方法で記録されたホログラムを再生する第2のホログラム再生方法を示す模式図であり、図8(b)は、図7(b)に示す第2のホログラム記録方法で記録されたホログラムを再生する第2のホログラム再生方法を示す模式図である。本第2のホログラム記録方法によって記録されたホログラムを再生する場合には、自由空間における波長が記録露光時の物体光9および記録用参照光8より長波長の再生用参照光10を、いずれかのコア層1の端面からそのコア層1に入射し、色素層3に記録されているホログラムの再生光11(再生像)を得る。
【0062】
このように、ホログラム記録時の記録用参照光8の波長を、再生時に用いる再生用参照光10の波長よりも短いものとすることで、長波長の再生用参照光10を導波させることにより、色素層3に記録されたホログラムによって導波光7が回折され、再生像を容易に得ることができる。
【0063】
なお、図7(a),(b)では、物体光9と記録用参照光8を共に媒体からみて同じ方向(上方あるいは下方)から照射する例を示したが、物体光9と記録用参照光8とを媒体からみて対向する方向から照射しても構わない。
【0064】
E.第3のホログラム記録方法
次に、本実施形態による第3のホログラム記録方法について説明する。ここで、図9(a)、(b)は、本実施形態による光記録型積層導波路ホログラム媒体の第3のホログラム記録方法を示す模式図である。図9(a)には物体光9と記録用参照光8とを媒体の上方から照射した場合を示し、図9(b)には物体光9と記録用参照光8とを媒体の下方から照射した場合を示している。
【0065】
前述した第2のホログラム記録方法、第2のホログラム再生方法で説明したように、記録時の物体光9および記録用参照光8の波長と、再生時の再生参照光10の波長とが異なる場合、記録時の物体光9もしくは記録用参照光8が全反射されずに媒体を横切るためには、物体光9と記録用参照光8とは、図9(a)または同図(b)に示すように、各々の導波面の法線とのなす角度θが、クラッド層2の屈折率をnclad(例えば、1.5程度)とし、sinθ<1/ncladになる条件を満たさなくてはならない。このように、記録時の物体光9と記録用参照光8との入射角度を限定することで、物体光9と記録用参照光8とが、全反射されることなく媒体内を透過でき、他層に余計な露光をすることなく、特定の層にのみ、より効果的にホログラムを記録することができる。
【0066】
なお、ここでは、図7(a),(b)に示した方法でホログラムを記録する場合を例として説明したが、図4(a),(b)に示した方法でホログラムを記録する場合には、物体光9に対する条件を全く同様とすればよい。
【0067】
また、図9(a),(b)では、物体光9と記録用参照光8とを共に媒体からみて同じ方向(上方あるいは下方)から照射する例を示したが、物体光9と記録用参照光8とを媒体からみて対向する方向から照射しても構わない。
【0068】
なお、特定の層を選択して記録再生する本発明の方法では、上述した実施形態で説明したホログラム記録に限らず、上方あるいは下方からの光ビームを各記録層に集光して、集光された部分の複素屈折率の変化を情報として記録および再生する、ビット・バイ・ビット記録にも適用可能である。
【0069】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、光を導波させる少なくとも1つのコア層を挟むように2つのクラッド層を配置し、前記コア層と前記クラッド層との境界に、光照射による温度上昇によって吸収係数もしくは屈折率が変化する少なくとも1つの記録層を設け、前記記録層と前記コア層との間に、前記コア層より低い屈折率を有するギャップ層を設けるようにしたので、ギャップ層が障壁となって色素層での導波光の吸収を抑えるため、1つのコア層に効率よく光を導波させることができ、当該コア層の温度が上昇することで特定の色素層にのみホログラムを記録することができるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態による光記録型積層導波路ホログラム媒体の構造を示す断面図である。
【図2】 光記録型積層導波路ホログラム媒体のギャップ層膜厚とコア終端部での導波光の伝搬率の関係の一例を示す概念図である。
【図3】 本実施形態による光記録型積層導波路ホログラム媒体の第1のホログラム記録方法を示す模式図である。
【図4】 本実施形態による光記録型積層導波路ホログラム媒体の第1のホログラム記録方法を示す模式図である。
【図5】 本実施形態による第1のホログラム記録方法で記録されたホログラムを再生する第1のホログラム再生方法を示す模式図である。
【図6】 本実施形態による光記録型積層導波路ホログラム媒体の第2のホログラム記録方法を示す模式図である。
【図7】 本実施形態による光記録型積層導波路ホログラム媒体の第2のホログラム記録方法を示す模式図である。
【図8】 本実施形態による第2のホログラム記録方法で記録されたホログラムを再生する第2のホログラム再生方法を示す模式図である。
【図9】 本実施形態による光記録型積層導波路ホログラム媒体の第3のホログラム記録方法を示す模式図である。
【符号の説明】
1 コア層
2 クラッド層
3 色素層
4 ギャップ層
5 レンズ
6 予備加熱光
7 導波光
8 記録用参照光
9 物体光
10 再生用参照光
11 再生光
Claims (8)
- 光を導波させる少なくとも1つのコア層と、
前記コア層を挟むように配置された少なくとも2つのクラッド層と、
前記コア層と前記クラッド層との境界に設けられ、光照射による温度上昇によって吸収係数もしくは屈折率が変化する少なくとも1つの記録層と、
前記記録層と前記コア層との間に設けられ、前記コア層より低い屈折率を有するギャップ層と
を具備することを特徴とする光記録型積層導波路ホログラム媒体。 - 前記記録層は、光強度に対して非線形特性を有する色素層から形成されていることを特徴とする請求項1記載の光記録型積層導波路ホログラム媒体。
- 前記ギャップ層は、前記記録層に比べて膜厚が大であることを特徴とする請求項1記載の光記録型積層導波路ホログラム媒体。
- 光を導波させる少なくとも1つのコア層と、前記コア層を挟むように配置された少なくとも2つのクラッド層と、前記コア層と前記クラッド層との境界に設けられ、光照射による温度上昇によって吸収係数もしくは屈折率が変化する少なくとも1つの記録層と、前記記録層と前記コア層との間に設けられ、前記コア層より低い屈折率を有するギャップ層とからなり、前記コア層を導波する導波光のエバネッセント光が前記ギャップ層を介して前記記録層に達するように構成されているホログラム媒体にホログラムを記録するホログラム記録方法であって、
前記ホログラム媒体の各層が下方から上方に積層されているとして、物体光を該ホログラム媒体の上方あるいは下方のいずれか一方から照射し、かつ記録用参照光をいずれかのコア層の端面から該コア層に入射する記録露光を行う過程と
を有することを特徴とするホログラム記録方法。 - 前記物体光と前記記録用参照光とを照射する記録露光に先立って、予備加熱光を、前記記録用参照光を入射する前記コア層の端面から該コア層に入射する過程を有することを特徴とする請求項4記載のホログラム記録方法。
- 光を導波させる少なくとも1つのコア層と、前記コア層を挟むように配置された少なくとも2つのクラッド層と、前記コア層と前記クラッド層との境界に設けられ、光照射による温度上昇によって吸収係数もしくは屈折率が変化する少なくとも1つの記録層と、前記記録層と前記コア層との間に設けられ、前記コア層より低い屈折率を有するギャップ層とからなり、前記コア層を導波する導波光のエバネッセント光が前記ギャップ層を介して前記記録層に達するように構成されているホログラム媒体にホログラムを記録するホログラム記録方法であって、
物体光と記録用参照光とを照射する記録露光に先立って、もしくは記録露光と同時に、予備加熱光をいずれかのコア層の端面から該コア層に入射する過程と、前記ホログラム媒体の各層が下方から上方に積層されているとして、前記物体光を該ホログラム媒体の上方あるいは下方のいずれか一方から照射し、かつ前記記録用参照光を該ホログラム媒体の上方あるいは下方のいずれか一方から照射する記録露光を行う過程と
を有することを特徴とするホログラム記録方法。 - 前記記録露光を行う過程において、前記物体光および前記記録用参照光を、
それぞれ、該ホログラム媒体内での進行方向と前記コア層の法線とのなす角度θが、前記クラッド層の屈折率をncladとして、
sinθ<1/nclad
となるように照射することを特徴とする請求項4または6記載のホログラム記録方法。 - 光を導波させる少なくとも1つのコア層と、前記コア層を挟むように配置された少なくとも2つのクラッド層と、前記コア層と前記クラッド層との境界に設けられ、光照射による温度上昇によって吸収係数もしくは屈折率が変化する少なくとも1つの記録層と、前記記録層と前記コア層との間に設けられ、前記コア層より低い屈折率を有するギャップ層とからなり、各層が下方から上方に積層されているホログラム媒体に対して、物体光を該ホログラム媒体の上方あるいは下方のいずれか一方から照射し、かつ記録用参照光を該ホログラム媒体の上方あるいは下方のいずれか一方から照射する記録露光を行うことで前記記録層に記録されたホログラムを、再生するホログラム再生方法であって、
前記記録露光時の前記物体光および前記記録用参照光の波長に比べて、自由空間における波長が長い再生用参照光を、いずれかのコア層の端面から該コア層に入射し、前記色素層に記録されているホログラムの再生像を得る過程を有することを特徴とするホログラム再生方法。
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