JP4033999B2 - 防犯用の静電容量センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電容量センサに関し、特に、広い検出領域を容易に形成することができる防犯用の静電容量センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の静電容量センサは、検出電極の面積等を拡大すると、被検出物が接近又は接触していない状態(静的状態)での検出電極の静電容量が増大するため、検出回路のしきい値を変更しなければならないという問題点があった。
【0003】
静電容量センサの検出回路は、静的状態での検出電極の静電容量や被検出物により増加する静電容量に適合するように設計されている。即ち、検出回路に予めしきい値(基準値)を設定し、当該しきい値を越える静電容量の値(電流値)の変化を検出すると、検出信号を出力するように設計されている。しかし、検出電極の面積等を拡大すると、静的状態での検出電極の静電容量も増大するため、上記しきい値を変更しなければならない。
【0004】
上記しきい値の変更は、電気的な定数、即ち、電圧値の変更等を伴う。そして、この電圧値と静的状態における検出電極の静電容量とは、単純な比例関係にならない。故に、しきい値の変更作業は、実際に検出回路を作動させながら調整してゆく時間と手間のかかる作業が必要となる。
【0005】
検出電極の拡大に伴うしきい値の調整の解決を目的としたものではないが、検出電極の拡大に関し、日本国特許公開公報平成8−64365号は、静電容量センサを用いた照明器具の点滅用スイッチを開示している。このスイッチは、スイッチユニット内部に設けた検出回路及び金属板の検出電極と、一方の表面を該検出電極に離間して対向すると共に他方の表面をスイッチユニット表面に露出した金属板の補助電極とを有する。
【0006】
そして、当該公報は、上記の補助電極を設けることにより、検知可能な面積を検出電極の約150%の面積に拡大することが可能であることを開示している。また、補助電極の大きさ、形状、検出電極からの設置距離及び補助電極と検出電極間に挿入される物体の特性により、センサの検出能力が影響を受ける場合には、検出回路の電気的な定数を調整し対処することを開示している。さらに、補助電極と検出電極との間には、プラスチック等の誘電体を介在させることも可能であることも開示している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の静電容量センサは、補助電極と検出電極とを金属板により形成するため、両電極間の静電容量そのものを調整するためには、両電極の金属板の配置関係や大きさを調整する必要があり、調整の自由度が制限されるという問題点があった。また、両電極間を所定距離に維持するために、両電極を形成する各金属板を支持する支持部材が必要であり、製造コストが高価になるという問題点があった。
【0008】
さらに、上記の静電容量センサは、金属板である補助電極を、同じく金属板である検出電極と対向して配置する必要があるため、補助電極と検出電極を隣接して配置しなければならないという問題点があった。さらに、両電極を隣接して配置しなくてはならないため、これら両電極は、外界の湿度や温度等の変化の影響を受けやすいという問題点があった。
【0009】
本発明に係る静電容量センサは、湿度や温度変化にも検出精度を維持すると共に簡素な構成により広い検出領域を容易に形成することができる静電容量センサを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の防犯用の静電容量センサは、(A)所定箇所に設置される検出電極と、この検出電極に電気的に接続する1以上のコンデンサと、このコンデンサと電気的に接続するアース或はアース電極と、(B)前記検出電極に電気的に接続すると共に、該検出電極の静電容量の変化の値を取得する差動増幅器、AC−DC変換器及び基準値に基づいて差動増幅器側からの値を比較する比較器を含む1以上の検出回路とから成る静電容量センサであって、(C)前記検出電極2は、住宅の壁面に幅広く張り付けられ、かつ合成樹脂の基材に導電性物質を混入して形成した導電性合成樹脂製シート、又は住宅を構成し、かつ導電層を有するか又は導電物質が混入されている導電性ガラス板の何れかであり、(D)また前記コンデンサは、第1コンデンサ(8、10)と第2コンデンサ(9、11)とを含み、前記第1コンデンサは、シールド線としてのリード線を介して前記検出電極と離間する前記住宅に設置され、一方、前記第2コンデンサは、第1コンデンサに並列又は直列の何れかに接続された状態でアースされ、(E)さらに、前記検出回路は、前記検出電極の検出領域内に存在する人体を検出対象とし、かつ検出電極と前記アース或はアース電極間における該検出電極の静電容量の変化を検出して検出信号を出力することを特徴とする。
【0011】
前記コンデンサについて付言すると、1以上のコンデンサは、パルス信号発生回路3と検出電極2との間に存在する第1コンデンサ8と、この第1コンデンサに対して並列又は直列のいずれかに設けられ第2コンデンサ9とを有すると共に、この第2コンデンサ9はアースされていることを特徴とする(図1に記載の実施例、図2に記載の実施例)。なお、本実施例の静電容量センサの1以上のコンデンサは、パルス信号発生回路と検出電極との間に存在する抵抗7により静電容量の値が調整されている。
【0012】
また、請求項2記載の静電容量センサは、請求項1に於いて、検出回路は、検出電極2とコンデンサ12を介して接続する第1検出回路1Aと、この第1検出回路1Aと絶縁された状態で前記検出電極2に別個のコンデンサ13を介して接続する第2検出回路1Bと か成ることを特徴とする。
【0013】
なお、本実施例では、コンデンサは、その静電容量を可変できるように構成されている。
【0014】
また、住宅の壁面に幅広く張り付けられる導電性合成樹脂製シートは、合成樹脂の基材に導電性物質を混入して形成したものであり、一方、住宅を構成する導電性ガラス板は、その表面に導電層を有するか又は導電物質が混入されているかのいずれかである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に係る第1の実施の形態の静電容量センサを、図1を参照しつつ説明する。この静電容量センサは、検出回路1と、比較的広い面積を有する検出電極2と、第1コンデンサ8と、第2コンデンサ9とから構成されている。この検出回路1は、一連に接続されたパルス信号発生回路3と、差動増幅器4と、AC−DC変換器5と、比較器6と、さらに、パルス信号発生回路3の分枝線に設けた抵抗7とから構成されている。
【0016】
抵抗7には、直列に第1コンデンサ8が接続されており、この第1コンデンサ8の電極8bには、さらにリード線8cを介して検出電極2に接続されている。また、抵抗7には、第1コンデンサ8と並列に第2コンデンサ9が接続されており、さらにこのコンデンサ9の電極9bは、リード線9cを介してアースされている。
【0017】
広い検出領域を形成する検出電極2は、約2m×約2mの面積を有する厚さ0.3mm程度の透明の導電性を有する透明の合成樹脂製のシートである。このシートは、合成樹脂の基材に導電性物質を混入して形成したものであり、鋏等により所望の大きさに切断できる。さらに、このシートの裏面には、感圧粘着層(図示せず)が設けられており、所望の場所(段落0028に記載のように住宅等の壁面)に簡単に貼付することができる。リード線8cとの電気的接続のためには、金属製のクリップ(図示せず)端子等を用いる。
【0018】
本実施の形態において、検出回路1のしきい値は、静的状態における検出電極の静電容量が100pF以上になると検出信号を出力するように設定されている。検出電極2の静電容量値が10,000pFである場合、両コンデンサ8、9の静電容量を夫々50pFにすると、略静的状態における抵抗7からみた静電容量値を100pF弱に減少することができる。第1コンデンサ8と検出電極2は、直列に接続されているため、両者の加算された静電容量値は、50pF弱になるからである。
【0019】
検出電極2に人体等が接触又は接近すると、検出電極2の電荷量は増大し、この電荷は電流となって、リード線8cを介し、電極8bへ到達する。このため、両コンデンサ8、9側の静電容量値(電流値の意味)が上昇し、パルス信号V2は、パルス信号V1に対して遅延する。当該遅延により生じた位相差を差動増幅器4により増幅してV3信号を生成し、さらに、当該V3信号をAC−DC変換器5により直流電圧V4に変換する。最後に、当該V4が所定のしきい値(基準値)以上であれば、比較器6は、検出信号を出力する。従って、検出回路1のしきい値を調整することなく、両コンデンサの容量を計算値通り設定することにより、容易に大容量の検出電極2に対応することが可能となる。
【0020】
検出電極2を、直射日光を受け温度や湿度の変化の激しい環境に設置せざるを得ない場合でも、リード線8c、9cを介し、両コンデンサ8、9を検出電極2から離間し、温度や湿度の変化の少ない場所に配設することにより、両コンデンサ8、9の温度上昇を最小限に抑えることが可能である。即ち、両コンデンサ8、9内部の誘電体等が温度等の影響を受けることにより引き起こされる両コンデンサ8、9の静電容量の変動を防止することができ、検出回路1の誤動作を防止することができる。
【0021】
さらに、リード線8cは、この部分が外界の電界の変動の影響を受けないようにするために、シールド線とすることが好ましい。また、図1においては、リード線9cは、検出回路1の回路上のアースに接続されているが、適宜、検出電極2周囲の大地に直接アースしても良い。また、本実施の形態においては、検出回路の安定動作のため第2コンデンサを設けたが、回路の安定動作が確保されているのであれば、第2コンデンサは必ずしも必要がない。この場合、第1コンデンサ8は、100pFの容量を有するコンデンサを用いる。
【0022】
次に、本発明に係る第2の実施の形態の静電容量センサを図2を参照しつつ説明する。この静電容量センサは、上記第1の実施の形態の検出回路1を用いている。しかし、第1コンデンサ10と第2コンデンサ11とが、直列に接続されており、検出電極2は、各コンデンサの電極10bと電極11aに接続されている。
【0023】
本実施の形態の回路では、両コンデンサ10、11が直列接続されているため、上記第1の実施の形態のコンデンサ8、9よりも更に小さな容量のコンデンサを用いることができるという利点がある。
【0024】
次に、本発明に係る第3の実施の形態の静電容量センサを図3を参照しつつ説明する。この静電容量センサは、上記第1の実施の形態の検出回路1を用いている。
【0025】
検出電極2は、第1コンデンサ20を介して検出回路1に接続されている。また、検出電極2の裏面側には、検出電極2と対向してアース電極21が配設されている。このアース電極21は、検出電極2と同一の導電性を有する透明の合成樹脂製のシートである。検出電極2とアース電極21は、離間して設けることにより絶縁されているが、透明の絶縁性の合成樹脂製のシート等を間に配設し、両者を絶縁しても良い。
【0026】
本実施の形態では、検出電極2及びアース電極21の間に極めて大きな静電容量が存在するが、第1コンデンサ20が、これら電極と直列に接続されているため、静的状態における抵抗7からみた静電容量値が、略第1コンデンサ20と略同等であるという利点がある。
【0027】
さらに、本実施の形態では、検出領域が検出電極2の表面側(図3においては、検出電極2の上面側)のみに形成される。従って、アース電極21の裏面側(図3においては、アース電極21の下面側)に、人体等が接近等しても、この接近等により増大したアース電極21の電荷は電流となってアースに流れ、検出回路1が検出信号を出力することはない。
【0028】
従って、1枚の板ガラスの表面に透明な導電層を形成し、これを検出電極2とし、また、その裏面に、同様の透明な導電層を形成し、これをアース電極21とした場合、この板ガラスの表面側は、人体等の接触を感知できるが、この板ガラスの裏面側は、電荷量の変動があっても検出信号を出力しない。この建具としての板ガラスは、住宅等の防犯センサに用いることができ、特に、アース電極を室内側に配置した場合には、カーテン等がこの板ガラスに接触しても検出信号を出力しないという利点がある。
【0029】
次に、本発明に係る第4の実施の形態の静電容量センサを図4を参照しつつ説明する。この静電容量センサは、上記第1の実施の形態の検出回路1と略同様の構成を有する第1検出回路1A及び第2検出回路1Bを用いている。
【0030】
第1検出回路1Aは、静電容量の増大を検出する検出回路であり、被検出物が検出電極2に接近又は接触すると検出信号を出力する。一方、第2検出回路1Bは、静電容量の減少を検出する検出回路であり、被検出物が検出電極2から遠ざかって行くと検出信号を出力する。
【0031】
両検出回路1A、1Bは、夫々、コンデンサ12、13を介して検出電極2に接続されている。しかし、検出電極2を共用しているにもかかわらず、両コンデンサ12、13により、両検出回路1A、1Bは、互いに絶縁されているため、両回路間の電気的な干渉が低減されている。このため、各検出回路1A、1Bは、他の検出回路の影響をほとんど受けることなく、夫々、安定した動作を行うことができる。
【0032】
上記の各実施の形態の検出回路1は、説明のために、比較的簡単な構成を有する検出回路として例示したものであり、静電容量の変動を検出できる公知の検出回路であれば、アナログ/デジタルの何れの動作方法を採るものであっても適用できる。
【0033】
さらに、上記の各実施の形態の検出電極2やアース電極21は、本発明の所期の目的(簡素な構成により広い検出領域を容易に形成する)を達成するためには、その形態は問わないということではなく、シート状(請求項1の特定要件)、あるいは、板状(請求項4の特定要件)であり、かつ導電性を有するものであることが必要である。また、1以上のコンデンサは、第1コンデンサ(8、10、20)は絶対条件であり、一方、第2コンデンサ(9、11)は、前述したように(段落0021)、検出回路1の安定動作のために設けたものであるから、必須要件ではない。さらに、第1及び第2コンデンサは、その静電容量を可変できるようにしたものであっても良い。例えば、複数の小容量のコンデンサを切り替え可能に並列に設け、適宜、その容量を可変できるようにし、検出電極の静電容量の大小に合わせて静的状態の静電容量を調整可能にすることができる。なお、第1及び第2コンデンサ8、9(10、11)の静電容量を調整する抵抗7はあった方が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の静電容量センサの説明図である。
【図2】本発明に係る第2の実施の形態の静電容量センサの説明図である。
【図3】本発明に係る第3の実施の形態の静電容量センサの説明図である。
【図4】本発明に係る第4の実施の形態の静電容量センサの説明図である。
【符号の説明】
1…検出回路、1A…第1検出回路、1B…第2検出回路、2…検出電極、3…パルス信号発生回路、4…差動増幅器、5…AC−DC変換器、6…比較器、7…抵抗、8、10、20…第1コンデンサ、9、11…第2コンデンサ、12、13…コンデンサ、21…アース電極。
Claims (2)
- (A)所定箇所に設置される検出電極と、この検出電極に電気的に接続する1以上のコンデンサと、このコンデンサと電気的に接続するアース或はアース電極と、(B)前記検出電極に電気的に接続すると共に、該検出電極の静電容量の変化の値を取得する差動増幅器、AC−DC変換器及び基準値に基づいて差動増幅器側からの値を比較する比較器を含む1以上の検出回路とから成る静電容量センサであって、(C)前記検出電極2は、住宅の壁面に幅広く張り付けられ、かつ合成樹脂の基材に導電性物質を混入して形成した導電性合成樹脂製シート、又は住宅を構成し、かつ導電層を有するか又は導電物質が混入されている導電性ガラス板の何れかであり、(D)また前記コンデンサは、第1コンデンサ(8、10)と第2コンデンサ(9、11)とを含み、前記第1コンデンサは、シールド線としてのリード線を介して前記検出電極と離間する前記住宅に設置され、一方、前記第2コンデンサは、第1コンデンサに並列又は直列の何れかに接続された状態でアースされ、(E)さらに、前記検出回路は、前記検出電極の検出領域内に存在する人体を検出対象とし、かつ検出電極と前記アース或はアース電極間における該検出電極の静電容量の変化を検出して検出信号を出力することを特徴とする防犯用の静電容量センサ。
- (F)請求項1に於いて、検出回路は、検出電極2とコンデンサ12を介して接続する第1検出回路1Aと、この第1検出回路1Aと絶縁された状態で前記検出電極2に別個のコンデンサ13を介して接続する第2検出回路1Bとか成ることを特徴とする防犯用の静電容量センサ。
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