JP4033977B2 - 走行線状体における被覆層の異常検出方法及びその異常検出装置 - Google Patents

走行線状体における被覆層の異常検出方法及びその異常検出装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、裸の光ファイバなどの線状体に熱硬化型やUV硬化型樹脂などからなる被覆層をコーティングする際、泡などの発生や異物などの混入を的確に検出するようにした走行線状体における被覆層の異常検出方法及びその異常検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、線引き後の光ファイバにあっては、ゴミの付着や傷などの発生を防止するため、コーティング工程を設けて被覆層をコーティングしている。
例えば、上端が昇降自在な支持ロッドで支持された光ファイバ母材(プリフォーム)を加熱炉中に挿入し、当該母材の下方先端から線引きされた裸の光ファイバを線径測定部を通した後、コーティング工程に導き、ソフトな1次被覆とハードな2次被覆などを施している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このようにして得られた光ファイバ素線の長手方向における障害点(異常点)などの検出は、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)などによって行われているが、走行している線状体の被覆層の異常の検出にあたっては、本出願人が、既に走行する光ファイバ素線に光透過性の被覆層をコーティングする工程において、コーティング後の光ファイバ素線の被覆層に測定光を照射すると共に、この光照射による光ファイバ素線の被覆層での散乱光をモニタして、被覆層中における異常の発生を検出するようにした走行線状体における被覆層の異常検出方法を提案してある(特願平06−066697号)。
【0004】
この方法では、測定光を照射する測定光照射部としては、専用の発光素子などからなる光源を用いることもできるが、光ファイバ用の被覆材料として、一般にUV光照射によって硬化するUV硬化型樹脂を用いることが多いため、このUV光照射を行うための被覆層硬化装置(紫外線照射装置)内に組み込まれているUVランプで共用することもできる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような異常検出の光源として、被覆層硬化装置のUVランプなどを共用した場合、次のような問題点があった。
【0006】
(1)被覆層硬化装置と異常を検出する散乱光検出器との距離が光ファイバ素線の紡糸装置のライン構成によって、バラ付くことがあった。この距離がバラ付くと、散乱光検出器を設置した位置まで被覆層中を伝搬してくる散乱光の光強度は当然変わる。しかし、上記従来の装置系では、特にこの距離データを考慮していなかったため、仮に同程度の頻度やサイズの気泡や異物などの異常(欠陥)が被覆層中にあっても、上記距離が変われば、散乱される光強度が異なってしまい、検出精度が低下するという問題があった。
【0007】
(2)被覆層硬化装置の光照射量が変動するという問題もあった。その変動要因としては、UVランプなどの経時的な出力低下やランプ表面の汚れ、さらに、被覆層硬化装置内でUVランプの内側に石英管などを組み込んである場合、この石英管の汚れなどが考えられる。このように光照射量の変動があれば、これを光源として、被覆層を伝搬してくる測定光が気泡などに衝突して起こる散乱光を検出する散乱光検出器の検出精度も低下してしまうこととなる。
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑み、測定光照射部と散乱光検出器との距離や光源の出力変動に影響されることのない走行線状体における被覆層の異常検出方法及びその異常検出装置を提供せんとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、走行する線状体の裸の光ファイバに光透過性のUV硬化樹脂の被覆層をコーティングする工程において、前記コーティング後の線状体被覆層に被覆層硬化装置のUVランプからの測定光を照射すると共に、当該測定光の光強度を、前記被覆層硬化装置の上端開口部付近での値を基準光として、検出する一方、前記測定光照射による線状体被覆層での散乱光の光強度を、前記被覆層硬化装置の上端開口部付近の測定点から既知の距離部分で検出し、当該実測された散乱光の光強度と前記被覆層硬化装置の上端開口部付近の測定点での測定光の光強度との比が所定の値以上変化したとき、前記線状体被覆層中に異常の発生があると判断することを特徴とする走行線状体における被覆層の異常検出方法にある。
【0010】
請求項2記載の本発明は、走行する線状体の裸の光ファイバに光透過性のUV硬化樹脂の被覆層をコーティングする工程において、前記コーティング後の線状体被覆層に測定光を照射する被覆層硬化装置のUVランプからなる測定光照射部と、当該測定光照射部における光強度を、前記被覆層硬化装置の上端開口部付近の測定点での値を基準光として、検出する基準光検出器と、前記光照射による線状体被覆層での散乱光の光強度を、前記被覆層硬化装置の上端開口部付近の測定点から既知の距離部分で検出する散乱光検出器と、前記散乱光の光強度と前記基準光検出器での光強度とを比較して、モニタするコントローラとからなることを特徴とする走行線状体における被覆層の異常検出装置にある。
【0011】
請求項3記載の本発明は、基準光検出器又は/及び散乱光検出器に集光用の光ファイバを接続して集光させることを特徴とする請求項2記載の走行線状体における被覆層の異常検出装置にある。
【0012】
【発明の実施の態様】
図1は、本発明に係る走行線状体における被覆層の異常検出方法及びその異常検出装置の一例を示したものである。
【0013】
図中、10は走行線状体としての光ファイバ(光ファイバ以外も可)で、本例では、紡糸された直後の裸の光ファイバ10aにコーティングポット20によって、UV光照射によって硬化する光透過性のUV硬化型樹脂21が被覆層としてコーティングされ、光ファイバ素線10bとして、被覆層硬化装置(紫外線照射装置)30内に導かれ、ここで、内部に設置されたUVランプ31からの紫外線r1 が照射されて、被覆層が硬化されるようになっている。なお、この被覆層は、1次被覆の場合で、通常ソフトなコーティング材料を用い、その後ハードな2次被覆を施すことが多い。本発明では、この2次被覆側にも、勿論同様にして適用することができる。
【0014】
本例では、図1に示すように、光ファイバ素線10bの被覆層11に測定光r1 を照射する測定光照射部を、上記被覆層硬化装置30のUVランプ31で構成し、このUVランプ31の光強度は、例えば被覆層硬化装置30のケース体32の内部に基準光検出器40に接続された検出端41を上端開口部から挿入設置して検出するようになっている。ここで、基準光検出器40の検出端41は、例えば耐熱性の高い集光用の光ファイバで構成してある。
【0015】
このUVランプ31からの照射光r1 は、図2に示すように、測定光として、光ファイバ素線10bの被覆層11中に入射され、伝搬光r2 として、光ファイバ素線10bの上方側に伝搬される。
【0016】
上記測定光照射部の光強度測定点から上方に距離Lだけ離間した部分には、光ファイバ素線10bの被覆層11での散乱光r3 の光強度を検出する散乱光検出器50が設置してある。この散乱光検出器50の光ファイバ素線10bと対峙する側には、好ましくは集光用の光ファイバ51を接続しておくとよい。
【0017】
上記基準光検出器40及び散乱光検出器50からの検出データは、コンピュータなどの必要な電子部品が内蔵されたコントローラ60に入力され、必要な演算や処理が行われるようになっている。
【0018】
このように構成される本発明の被覆層の異常検出装置において、測定対象の光ファイバ素線10bの被覆層11中に気泡や異物などの異常がなかったとすると、測定光照射部の光強度がI0 で、被覆材料の単位長さ当たりの光の吸収率がaで、測定光照射部の光強度測定点と散乱光検出部間の距離がLである場合、基準光検出器40で検出される光強度がI1 、散乱光検出器50の位置における散乱光の理論光強度I2 及び散乱光検出器50で検出される散乱光の理論光強度I3 は、次式で与えられる。
【0019】
1 =A1 0 ・・・(1)
2 =A2 0 -aL ・・・(2)
3 =A3 2 ・・・(3)
ここで、A1 は測定光照射部から発生する光の内で基準光検出器40の検出端41に入射する光の割合、A2 は測定光照射部から発生する光の内で光ファイバの被覆材料に入射して伝搬する光の割合、A3 は光ファイバの被覆材料中を伝搬する光の内で被覆材料中で散乱して散乱光検出器50で検出される光の割合である。
【0020】
したがって、I3 とI1 との比を求めると、
3 /I1 =(A2 ・A3 /A1 )e-aL ・・・(4)
となって、A1 ,A2 ,A3 ,a,Lが一定ならば、この比は一定となる。
【0021】
以上により、実際に散乱光検出器50により検出される光ファイバ素線10bの被覆層11からの散乱光r3 の光強度I3 ′と、基準光検出器40で検出される光強度I1 ′とを比較して、I3 ′/I1 ′の比をとると、測定系に異常がなければ(即ち上記A1 ,A2 ,A3 ,a,Lが一定)、ほぼ一定の値となるはずである。
【0022】
ここで、図2に示すように、光ファイバ素線10bの被覆層11中に気泡や異物などの異常部分12があった場合には、散乱光が増大し、散乱光検出器50の検出端51で受ける光の強度が増大する。即ちA3 が増大する。
したがって、実測されたこの比(I3 ′/I1 ′)がある一定値以上増大したときに、この被覆層11中に異常の発生があると判断できる。これにより、測定光照射部の光照射量が変動しても、結果として、これらの変動要因に影響されることなく、被覆層11中に異常を高精度で判断することが可能となる。
【0023】
また、測定光照射部と散乱光検出器50間の距離Lの変化に影響されずに被覆層11中の異常を判断する方法は、以下の通りである。
この距離LがdLだけ変化した場合には、上記(4)より、比(I3 ′/I1 ′)は、以下の比(I3 ″/I1 ″)となるはずである。
3 ″/I1 ″=I3 ′/I1 ′e-adL ・・・(5)
【0024】
したがって、コントローラ60のメモリーに演算式(5)を入力しておき、比(I3 ′/I1 ′)の初期設定値として、I3 ′/I1 ′の変化の上限値を入力しておけば、実際に検出器から測定されたI3 ″及びI1 ″がコントローラ60に入力されたときに、この値が上記(5)の値を越えたときに異常の出力をするように設定すればよい。距離Lが変化した場合には、その変化の値dLでコントローラ60の演算式(5)を修正することにより、距離Lの変化を打ち消すことができる。
【0025】
また、他の方法として、以下の方法でもよい。コントローラ60のメモリーに演算式(5)と共に、比(I3 ′/I1 ′)には初期値ではなく、以前に測定された実測値(例えば常に直前に測定された実測値)が更新されながら入力されるようにして、実測値の比(I3 ″/I1 ″)が、この以前の実測値の比(I3 ′/I1 ′)から、所定の変化の上限以上に変化したときに異常の出力をするように設定すればよい。
【0026】
なお、実際の操業にあたっては、図2に示すように、光ファイバ素線10bの被覆層11中に気泡や異物などの異常部分12があって、上記の比(I3 ′/I1 ′)がある一定値以上増大したときには、コントローラ60によって警報音を発したり、その他の必要な処理を行わせるようにすればよい。また、上記一定値としては、例えば本発明者等の試験によると、上記比(I3 ′/I1 ′)が通常の状態から、3倍〜10倍程度に増大したときを目安とすればよい。
【0027】
また、上記実施の態様では、基準光検出器40や散乱光検出器50が一個だけ用いた場合であるが、より高精度での検出を行うためには、検出器本体や少なくとも検出器本体に接続された集光部を、被覆層硬化装置30や光ファイバ素線10bの外周の複数箇所に均等に配置するとよい。
また、上記実施の態様では、光の測定光照射部として、被覆層硬化装置30のUVランプ25を共用するものであったが、本発明の場合、これに限定されず、通常の発光ランプや、特定波長の光を発する専用の発光素子などからなる光源を使用することもできる。
【0028】
【発明の効果】
このように本発明によれば、走行線状体における被覆層の異常検出方法及びその異常検出装置によると、線状体被覆層での散乱光の光強度を検出するだけでなく、線状体被覆層に測定光を照射する測定光照射部における光強度をも検出し、実測された散乱光の光強度と測定光の光強度との比が所定の値以上変化したとき、線状体被覆層中に異常の発生があると判断する方法及び装置であるため、光ファイバ素線の紡糸装置のライン構成によって、被覆層硬化装置などの測定光照射部と異常を検出する散乱光検出器との距離にバラ付きがあったり、或いは、被覆層硬化装置のUVランプなどの経時的な出力低下やランプ表面の汚れ、さらには被覆層硬化装置内の石英管などの汚れなどによって、光照射量が変動しても、これらの要因に影響されることなく、高精度で被覆層中の異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る走行線状体における被覆層の異常検出方法を実施するための異常検出装置の要部を示した部分縦断図である。
【図2】 図1の装置における走行線状体の被覆層の光の伝送状態を示した概略説明図である。
【符号の説明】
10 走行線状体(光ファイバ)
10a 裸の光ファイバ
10b 光ファイバ素線
20 コーティングポット
21 UV硬化型樹脂
30 被覆層硬化装置(紫外線照射装置)
31 UVランプ
40 基準光検出器
50 散乱光検出器
60 コントローラ
1 測定光
2 伝搬光
3 散乱光

Claims (3)

  1. 走行する線状体の裸の光ファイバに光透過性のUV硬化樹脂の被覆層をコーティングする工程において、前記コーティング後の線状体被覆層に被覆層硬化装置のUVランプからの測定光を照射すると共に、当該測定光の光強度を、前記被覆層硬化装置の上端開口部付近での値を基準光として、検出する一方、前記測定光照射による線状体被覆層での散乱光の光強度を、前記被覆層硬化装置の上端開口部付近の測定点から既知の距離部分で検出し、当該実測された散乱光の光強度と前記被覆層硬化装置の上端開口部付近の測定点での測定光の光強度との比が所定の値以上変化したとき、前記線状体被覆層中に異常の発生があると判断することを特徴とする走行線状体における被覆層の異常検出方法。
  2. 走行する線状体の裸の光ファイバに光透過性のUV硬化樹脂の被覆層をコーティングする工程において、前記コーティング後の線状体被覆層に測定光を照射する被覆層硬化装置のUVランプからなる測定光照射部と、当該測定光照射部における光強度を、前記被覆層硬化装置の上端開口部付近の測定点での値を基準光として、検出する基準光検出器と、前記光照射による線状体被覆層での散乱光の光強度を、前記被覆層硬化装置の上端開口部付近の測定点から既知の距離部分で検出する散乱光検出器と、前記散乱光の光強度と前記基準光検出器での光強度とを比較して、モニタするコントローラとからなることを特徴とする走行線状体における被覆層の異常検出装置。
  3. 基準光検出器又は/及び散乱光検出器に集光用の光ファイバを接続して集光させることを特徴とする請求項2記載の走行線状体における被覆層の異常検出装置。
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