JP4033897B2 - 新規トランスフェラーゼ及びアミラーゼ、それらの製造法及び利用、並びに該新規酵素類の遺伝子 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、I−新規トランスフェラーゼ、その製造法及び該酵素を用いたオリゴ糖の製造法、並びに該酵素の遺伝子及びその利用、II−新規アミラーゼ、その製造法及び該酵素を用いたα,α−トレハロースの製造法、並びに該酵素の遺伝子及びその利用に関するものである。
より詳しくは、
I−本発明は、少なくとも還元末端から3つ以上のグルコース残基がα−1,4結合である3糖以上の糖を基質として、その還元末端のα−1,4結合をα−1,α−1結合に転移させる作用を有する新規トランスフェラーゼとその製造法に関し、詳しくは、Sulfolobales目の古細菌、例えばSulfolobus属、Acidianus属等の細菌の産生する上記酵素に関するものである。
また、本発明は、上記の新規酵素を用いたトレハロースオリゴ糖等の新規な製造法に関し、更に詳しくは、原料としてマルトオリゴ糖等を用いた効率的で、かつ高収率な、例えば、グルコシルトレハロース及びマルトオリゴシルトレハロースなどのトレハロースオリゴ糖の製造法に関する。
また、本発明は上記の新規トランフェラーゼをコードするDNA断片及びこのDNA断片の遺伝子工学的な利用に関する。
II−本発明は、少なくとも還元末端から3つ以上の糖がグルコース単位で構成される3糖以上の糖を基質とし、還元末端から加水分解して主に単糖及び/又は2糖を遊離する活性を有する新規アミラーゼとその製造法に関する。詳しくは、本発明は、少なくとも還元末端側の3糖がグルコース単位で構成され、該末端側の1つ目と2つ目のグルコース間の結合がα−1,α−1結合で、該末端側の2つ目と3つ目のグルコース間の結合がα−1,4結合である3糖以上の糖を基質とし、2つ目と3つ目のグルコース間のα−1,4結合を加水分解し、α,α−トレハロースを遊離する主要な活性を有する新規アミラーゼ及びその製造法に関する。該酵素は更に基質の分子鎖中のα−1,4結合をエンド型で加水分解する活性を合わせて有する新規なアミラーゼであって、Sulfolobus属に属する細菌によって産生されうる新規な酵素である。本酵素はデンプン糖工業、繊維工業、食品工業等の産業において有用である。
また、本発明は、上記新規アミラーゼと、上記新規トランスフェラーゼとを組み合わせて作用させることを特徴とするα,α−トレハロースの製造法に関する。詳しくは、デンプン、デンプン分解物、或いはマルトオリゴ糖各単独又はマルトオリゴ糖の混合物を原料として用い、また酵素として本発明の新規トランスフェラーゼとアミラーゼとを用いて高収率でα,α−トレハロースを製造する方法に関する。
また、本発明は上記の新規アミラーゼをコードするDNA断片及びこのDNA断片の遺伝子工学的な利用に関する。
背景技術
I.酵素トランスフェラーゼの背景技術
デンプン、及びマルトオリゴ糖等のデンプン分解物に作用する糖転移酵素については、今までに様々なグルコシルトランスフェラーゼ、及びサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTase)などが見出されている(生物化学実験法25、澱粉・関連糖質酵素実験法、学会出版センター刊、及びBIOINDUSTRY,Vol.9、No.1(1992)39−44など参照)。これらの酵素はグルコシル基をα−1,2、α−1,3、α−1,4、α−1,6位に転移する酵素であるが、α−1,α−1位に転移するような酵素は未だに知られていない。α−1,α−1結合に作用する酵素としては、トレハロース分解酵素であるトレハラーゼがあるが、あくまでトレハロースを唯一の基質とする分解酵素であり、その平衡及び反応速度は分解反応側に偏っている。
ところで近年、オリゴ糖には保湿性、保形性、粘性、褐変防止等の理化学的特性、及び低カロリー性、抗う食性、ビフィズス活性等の生理活性があることが見出されており、それに伴いマルトオリゴ糖、分岐オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖等のオリゴ糖が開発されてきた(甘味料(1989年版)メディカルリサーチ社刊、月刊フードケミカル(1993年2月号)21−29など参照)。
オリゴ糖のうち、還元末端の存在しないオリゴ糖に関しては、還元性を持たないショ糖を骨格とした、フラクトシルトランスフェラーゼにより生産されるフラクトオリゴ糖等がある。またマルトオリゴ糖等のデンプン分解物で、還元末端を持たないオリゴ糖としては、前記CGTaseにより生産されるサイクロデキストリン、α,β−トレハロース(ネオトレハロース)、及び化学合成により還元末端に水素添加したオリゴ糖還元物(オリゴ糖アルコール)等がある。これらの還元末端の存在しないオリゴ糖には、従来の水飴、マルトオリゴ糖にはない、様々な物理化学的特性及び生理活性がある。よって、マルトオリゴ糖においてその還元末端側がα−1,α−1結合を有しているオリゴ糖についてもこのオリゴ糖が還元末端を有さないことから、上記の還元末端を有さないオリゴ糖が持つような物理化学的特性及び生理活性を有することが期待されうる。
ところで、上記したような還元末端側がα−1,α−1結合を有しているマルトオリゴ糖は、α,α−トレハロースにグルコース又はマルトオリゴ糖が結合したトレハロースオリゴ糖であると考えることができる。よって、このようなトレハロースオリゴ糖は、還元末端を有さないオリゴ糖が有する物理化学特性及び生理活性に加えて、更にα,α−トレハロースに見られる様な特徴的な活性(例えば、特表昭63−500562号参照)も有することが期待されうる。
トレハロースオリゴ糖に関しては、自然界では酵母内に痕跡量認められるという報告(Biosci.Biotech.Biochem.,57(7),1220−1221(1993))があるがこれのみであり、また酵素による合成も報告(1994年度日本農芸化学大会、講演要旨集、247)されてはいるが、その方法は原料として高価なトレハロースを用いるものであり、安価な供給は期待できていないのが現状である。
ところで、Lamaらは古細菌の一種であるSulfolobus solfataricus strain MT−4株(DSM 5833株)の菌体抽出液中に耐熱性のデンプン分解活性があることを見出している(Biotech.Forum.Eur.8,4,2−1(1991))。彼らは更に、この活性は、デンプンからトレハロース及びグルコースを生成する活性であるとも報告している。しかしながら上記の報告にはグルコシルトレハロース、マルトオリゴシルトレハロース等のトレハロースオリゴ糖の存在については全く触れられていない。更に上記の菌株以外の古細菌についての検討も全くなされていない。
また、トレハロースオリゴ糖の効率のよい生産のためには、この新規トランスフェラーゼの効率のよい入手法の確立が必要であるといえる。
従って、トレハロースオリゴ糖の大量生産のためには、この新規トランスフェラーゼの更なる大量取得が望まれる。そのためには、これら酵素の遺伝子を取得し、遺伝子工学的にそれを生産することが好ましい。さらに、遺伝子を取得出来れば、蛋白工学の技術を用いて、耐熱性、耐pH性の向上、反応速度が増大された酵素を得ることも期待出来る。しかしながら、このような酵素についての遺伝子クローニングに関する報告は未だなされていない。
本発明は、マルトオリゴ糖等の糖から、代表的にはグルコシルトレハロース及びマルトオリゴシルトレハロース等のトレハロースオリゴ糖を生成する反応の触媒作用を有する新規なトランスフェラーゼと、その製造法、並びに該酵素を用いてマルトオリゴ糖等の原料から効率的、かつ高収率で、代表的には、グルコシルトレハロース、マルトオリゴシルトレハロース等のトレハロースオリゴ糖を製造する新規な方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、古細菌のトレハロース生成活性について鋭意検討した結果、Sulfolobales目に属し、詳しくはSulfolobus属、Acidianus属等に属する広い範囲の古細菌の菌体抽出液が、マルトトリオースを基質としてグルコシルトレハロースを生成することを見出した。この際、デンプンを基質としたLamaらによる活性測定法ではトレハロースとグルコースの生成は確認されたものの、グルコシルトレハロースなどのトレハロースオリゴ糖の生成の確認は非常に困難であることがわかった。また、古細菌の菌体抽出液の精製過程においてLamaらが見出したトレハロースの生成活性は消失されてしまうことも知見し、総じてこのような活性を有する酵素自体の精製及び特定化は実質上不可能であることがわかった。
このような状況下にあって本発明者らは更に研究を重ね、マルトオリゴ糖(例えばマルトトリオース)を基質とし、トレハロースオリゴ糖(例えばグルコシルトレハロース)を生成する活性を指標とする新しい活性測定法を思考するに至り、この測定法を実施したところトレハロースオリゴ糖(例えばグルコシルトレハロース)の検出が容易に可能であることを見出し、更に種々の菌株に関してこの活性を有する酵素の精製を試みたところ、驚くべきことにこうして得られた酵素は、還元末端から3つ以上のグルコース残基がα−1,4結合であるマルトトリオース以上の糖に作用して還元末端のグルコース残基をα−1,α−1に転移させ、グルコシルトレハロースなどのトレハロースオリゴ糖を生産する能力を有する全く新規なトランスフェラーゼであることを知見した。なお、マルトオリゴ糖等の還元末端のグルコース残基がα−1,α−1に転移したトレハロースオリゴ糖の存在は1H−NMR及び13C−NMRにより確認した(実施例I−1、7及び8参照)。
本発明者らは、更に、このような新規酵素を用いることよりマルトオリゴ糖等の糖から、大量に、例えば、グルコシルトレハロース及びマルトオリゴシルトレハロース等のトレハロースオリゴ糖を生産することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明者らは、更に、このような新規酵素の遺伝子を単離し、この遺伝子を利用して組換え新規トランフェラーゼを遺伝子工学的に生産する手法を、今般、確立した。
II.酵素アミラーゼの背景技術
アミラーゼはデンプンを加水分解する酵素の総称であり、その中でα−アミラーゼはα−1,4グルコシド結合をエンド様式で加水分解する活性を持つ酵素である。α−アミラーゼは生物界に広く存在し、ほ乳類においては、消化酵素として、唾液、膵液中に認められる。植物においては、麦芽等に多く認められる。また微生物界においても広く分布しており、特にAspergillus属に属するかび、Bacillus属に属する細菌の産生するα−アミラーゼ等が産業上使用されている(アミラーゼ、中村道徳監修、学会出版センター刊、1986年)。
これらのα−アミラーゼは産業上様々な用途で使用されており、例えば、デンプン糖工業においてはデンプンの液化工程で、また繊維工業では糊抜き工程等で広く用いられており、工業的に大変重要な酵素である。「酵素応用の知識」(小巻利章、幸書房刊、1986年)によれば、デンプンの液化工程で重要なこととして、1)デンプン分子をできるだけ完全に溶かすこと、2)液化生成物が次の糖化工程の目的に対して好都合であること、3)液化生成物が老化しない条件であること、4)経済的見地からできるだけ高濃度(30〜35%)で実施することなどが挙げられている。デンプンの液化工程は例えば、連続恒温液化法、ジェットクッカー法などで実施され、通常α−アミラーゼ含有の、高濃度デンプン乳液を瞬間的に高温(85〜110℃前後)にまで上げ、デンプンが糊化、膨潤しはじめると同時に、α−アミラーゼを作用させて液化している。すなわち、デンプンの液化工程では酵素が作用できるようにデンプンを膨潤させるだけの十分な温度を必要としている。このような分野で使用しうる酵素としては、例えば、上述のAspergillus属に属する麹菌やBacillus属に属する細菌の産生する耐熱性α−アミラーゼが挙げられる。これらの酵素の耐熱性を更に向上させるために、カルシウムを添加する必要がある場合もある。もしデンプンの液化工程で膨潤し、開裂しかけたデンプンミセルがα−アミラーゼの作用を受けずに、ひとたび温度が低下すると、デンプンは再び集まり、α−アミラーゼで液化されにくい新しいミセル(難溶性デンプン)を作ってしまう。その結果、生じた糖液は混濁し、難濾過性となるという問題が知られている。このような事態を防止するために、液化度(DE=Dextrose Equivalent)をある程度高める方法がとられている。しかし酵素法マルトースの製造工程のように、収率を高く維持するためになるべくこのDEを低く(すなわち糖鎖の重合度を高く)保つ必要がある場合もある。従って、デンプンの液化工程後、次工程で酵素を更に作用させる場合、高温を維持したまま作用させうる耐熱性酵素を用いるならば、デンプン濃度が高い場合でも、これを用いて難溶性デンプンを生成させることなく反応を進めることが可能であり、また同時に、微生物汚染の危険も低減させうるために工程管理、衛生管理の面からも有利であるといえる。また、酵素を反復使用するために、固定化してバイオリアクターとして利用する場合には、酵素が高い安定性、特に耐熱性を有することが重要であるといわれている。すなわち、固定化のために比較的高温にさらされることがあるが、耐熱性が低いものでは固定化操作中に失活してしまう恐れがあるからである。以上のことから耐熱性の高い酵素は、例えばデンプンの液化工程などの場合を含め各種の産業において非常に有利に用いることができ、かつ、望まれていると言えよう。
また、近年アミラーゼを含み耐熱性酵素の取得に関しては好熱性、高度好熱性細菌のスクリーニングが広く行われている。その中にはThermococcales目、Pyrococcus属に属する古細菌も対象となっており、α−アミラーゼを産生するとの報告がある(Applied and Environmental Microbiology,1985−1991(1990);特開平6−62869など)。またSulfolobus属に属する古細菌もその対象になっており、耐熱性酵素の単離が報告されている。ここにおいて、Sulfolobus属に属する古細菌とは、分類学上、高度高熱性(温度:55℃〜88℃の範囲で生育)、好酸性(pH:1〜6の範囲で生育)、好気性、硫黄細菌(球菌(不規則):直径0.6〜2μm)として定義される古細菌をいう。よって、Sulfolobus属に属する古細菌がアミラーゼを産生しうるならばこのアミラーゼも耐熱性を有することが期待される。Lamaらは古細菌の一種であるSulfolobus solfataricus strain MT−4株(DSM 5833株)の菌体抽出液に耐熱性のデンプン分解活性があることを見出している(Biotech.Forum.Eur.8,4,2−1(1991))。この文献ではこの活性は、デンプンからα,α−トレハロース及びグルコースを生成する活性であると報告している。しかしながらこの活性物質については部分精製しかしておらず、活性本体についての特定はしていない。また活性の酵素学的諸性質についても全く解明していない。本発明者らの研究によれば(詳細は後述する)、Lamaらがデンプンに作用させた上記菌株由来の活性物質は複数の酵素の混合体であり、これを用いて得られた最終生成物がα,α−トレハロースとグルコースであったのである。
ところで、α−アミラーゼには初期にヨウ素デンプン反応を減少させるという、すなわち、α−1,4グルカンをエンド型に加水分解する活性(液化活性)がある。この液化型アミラーゼにも反応機構上様々な様式がある。すなわち、エンド型で加水分解する活性としては共通しているが、マルトオリゴ糖の分解パターンについて調べてみると、それぞれ特徴があることが知られている。例えば、非還元末端側から特定の位置を認識して加水分解するもの、還元末端側から特定の位置を認識して加水分解するものがあり、また、分解された主生成物がグルコースであるもの、或いはマルトース又はマルトオリゴ糖であるものなどがある。具体的には、すい臓由来のα−アミラーゼは還元末端から2つ目、或いは3つ目のα−1,4結合を加水分解する(澱粉・関連糖質酵素実験法、中村道徳・貝沼圭二、学会出版センター刊、1989年)。また、枯草菌由来のα−アミラーゼは非還元末端から6つ目あるいは還元末端から3つ目のα−1,4結合を加水分解する(酵素応用の知識、小巻利章、幸書房刊、1986年)。このようなα−アミラーゼの反応様式の差異は、各酵素の構造に起因するといわれており、これらの現象の解釈についてはサブサイト理論が提唱されている。また転移活性、縮合活性を持つものや、更にはサイクロデキストリンを生成するような特殊なα−アミラーゼも存在することが認められている。
一方、α,α−トレハロースは、2分子のグルコースがその還元性基どうしでα−1,α−1結合したものであり、自然界の多くの生物、植物、微生物に存在し、生体膜の凍結や乾燥からの細胞保護や、昆虫のエネルギー源等、多くの働きを持つことが知られている。近年、このα,α−トレハロースはタンパク質の凍結や乾燥に対する安定化剤として、医薬品、化粧品、食品等の分野で検討されている(特公平5−81232、特開昭63−500562など)。しかしながら現在までのところ安価な大量生産法が確立していないためか、実際に利用されている例はほとんどない。
従来のα,α−トレハロースの製造法としては、例えば、酵母抽出による方法(特開平5−91890、特開平4−360692など)、酵母による菌体内生産による方法(特開平5−292986、ヨーロッパ特許0451896など)、スクレロチウム(Sclerotium)属、或いはリゾクトニア(Rhizoctonia)属に属する微生物による生産法(特開平3−130084)等が試みられている。ただし、これらの方法では菌体内生産であるために、菌体破砕、夾雑物の除去の為の多段階の精製工程を必要としている。また、アルスロバクター(Arthrobacter)属に属する微生物(Agric.Biol.Chem.,33,No.2,190,1969,Suzuki T,et al)、ノカルディア(Nocardia)属に属する微生物(特開昭50−154485)、グルタミン酸生産菌(フランス特許2671099、特開平5−211882など)を用いた発酵法による菌体外生産の検討もなされている。更にまた、α,α−トレハロースの生合成酵素遺伝子による生産の検討も試みられている(PCT特許93−17093)。これらの方法はいずれもグルコース等の糖源を用い、かつATP、UTPをエネルギーとして必要とする代謝系を利用するものである。よって、培養液からのα,α−トレハロースの繁雑な精製工程を必要としている。また更に、トレハロースホスホリラーゼを用いた方法(特公昭63−60998)、トレハラーゼを用いた方法(特開平7−51063)等の酵素法による生産の検討も試みられているが、酵素の大量生産、酵素の安定性等の問題がある。以上のような従来の方法はいずれも低収量、精製工程の煩雑さ、低生産量、酵素調製の煩雑さ等の問題があり、未だに工業化しうる方法は確立されておらず、よって、より効率の良いα,α−トレハロースの製造法の確立が強く望まれているのが現状である。
α,α−トレハロースは上述のように自然界に広く見出され、古細菌にもその存在が確認されている(System.Appl.Microbiol.10,215.1988)。具体的には、前述したように、Lamaらは古細菌の一種であるSulfolobus solfataricus strain MT−4株(DSM 5833株)の菌体抽出液に耐熱性のデンプン分解活性があることを見出しており、その生成物中にα,α−トレハロースの存在を確認している(前掲Biotech.Forum.Eur.8,4,2−1(1991))。この文献ではこの活性はデンプンからα,α−トレハロース及びグルコースを生成する活性であると報告はしていても、実際には0.33%可溶性デンプンを基質とした場合の例を挙げているのみで、その際生成したα,α−トレハロースの量は極僅かなものであり、しかもα,α−トレハロース:グルコースの生成比は1:2であった。従って大量のグルコースを副生するためにその分離を必要とし、α,α−トレハロースの大量生産法としての目的を達成しうるものでは全くなかったのである。
本発明者等は、前述したように、Sulfolobales目に属する古細菌が、少なくとも還元末端から3つ以上のグルコース残基がα−1,4結合である3糖以上の糖を基質とし、その還元末端のα−1,4結合をα−1,α−1結合に転移させる作用を有するトランスフェラーゼを産生することを見出し、更にこの酵素を用いた、マルトオリゴ糖からのグルコシルトレハロース、マルトオリゴシルトレハロースなどのトレハロースオリゴ糖の製造法を発明した。なお、トレハロースオリゴ糖とは、還元末端側にα−1,α−1結合を有しているマルトオリゴ糖をいう。
また一方、従来知られている各種酵素のうちで、マルトオリゴ糖の還元末端がα−1,α−1結合となったトレハロースオリゴ糖を、そのα−1,α−1結合のとなりのα−1,4結合の位置で特異的に加水分解して収率よくα,α−トレハロースを遊離する作用を有する酵素に関しては、本発明者らの知る限りでは、そのような報告は全くない。すなわち、トレハロースオリゴ糖の還元末端側の2つ目と3つ目のグルコース間のα−1,4結合を特異的に加水分解してα,α−トレハロースを遊離することは従来のアミラーゼでは不可能であった。よって、デンプン又はデンプン分解物分子鎖中のα−1,4結合を加水分解する活性を有すると共に、上記したようなα,α−トレハロース生成反応を触媒しうるアミラーゼを開発し得たならば、α,α−トレハロースの大量生産上益することは多大であろう。
また、α,α−トレハロースの大量生産のためには、この新規アミラーゼの大量取得が望まれる。そのためには、これら酵素の遺伝子を取得し、遺伝子工学的にそれを生産することが好ましい。さらに、遺伝子を取得出来れば、蛋白工学の技術を用いて、耐熱性、耐pH性の向上、反応速度が増大された酵素を得ることも期待出来る。
本発明は、デンプン又はデンプン分解物分子鎖中のα−1,4結合をエンド型で加水分解する活性を有すると共に、マルトオリゴ糖の還元末端がα−1,α−1結合となったトレハロースオリゴ糖の還元末端側の2つ目と3つ目のグルコース間のα−1,4結合を特異的に加水分解してα,α−トレハロースを遊離する反応を触媒しうる新規なアミラーゼを提供すること、及び該酵素を製造する方法を提供すること、並びに該酵素を用いてデンプン、デンプン分解物、或いはマルトオリゴ糖等の安価な原料から効果的、かつ高収率で、α,α−トレハロースを製造する新規な方法を提供することを目的とする。
本発明者らは古細菌のデンプン分解活性について鋭意検討した結果、Sulfolobales目に属し、詳しくはSulfolobus属に属する広い範囲の古細菌の菌体抽出液が、耐熱性のデンプン分解活性を有することを見出した。その際デンプンの分解によって生成する糖は、Lamaらの文献記載におけるのと同様に、主にグルコースとα,α−トレハロースであることを確認した。そこで、更に種々の菌株抽出液についてデンプン分解活性の性質を調べてみたところ、これらの菌株が産生する酵素が、デンプン分解活性やα,α−トレハロース生成活性などの酵素活性の点から液化アミラーゼ、グルコアミラーゼ等のエンド型、エキソ型の各種アミラーゼ、及びトランスフェラーゼなどにより構成されている酵素混合体であることを発見した。しかもその酵素活性は、これらの複数の酵素による活性の相乗作用によるものであることがわかった。更に、個々の酵素を精製しようとした場合、ヨウ素デンプン反応による青色の減少を指標としたLamaらによる活性測定法では感度および定量性が低いためか、総じてこの様な酵素活性を有する酵素の精製は収率の点で低く、しかも操作が非常に困難であることがわかった。また本発明者らの詳細な検討によれば、Lamaらの文献記載の部分精製方法では、蛋白質レベルでは全く精製、単離がなされていないことがわかった。
このような状況下にあって本発明者らは更に研究を重ね、トレハロースオリゴ糖(例えばマルトトリオシルトレハロース)を基質とし、α,α−トレハロースを遊離する活性を指標とする新しい活性測定法を思考するに至り、この測定法を実施したところ、アミラーゼ活性の検出が容易に可能であることを見出し、更に種々の菌株に関してこの活性を有する酵素の精製を試みたところ、最終的にアミラーゼの単離精製に成功するに至った。また、単離精製されたアミラーゼに関して酵素学的な諸性質を調べてみたところ、驚くべきことにこうして得られた酵素は、デンプンまたはデンプン分解物をエンド型で加水分解する活性を有する他に、デンプン分解物またはマルトオリゴ糖などを還元末端側から加水分解して単糖及び/又は2糖を生成する活性を有し、特に還元末端側の1つ目と2つ目のグルコース間の結合がα−1,α−1結合で、該末端側の2つ目と3つ目のグルコース間の結合がα−1,4結合である3糖以上の糖(例えばトレハロースオリゴ糖)との反応性が、それぞれ対応するマルトオリゴ糖と比較して高く、このような3糖以上の糖を基質とし、還元末端側から2つ目と3つ目のグルコース間のα−1,4結合を加水分解してα,α−トレハロースを遊離する活性を合わせて有するという、全く新規な作用機作を有する酵素であることを知見した。
本発明者らは、更に、このような新規酵素の遺伝子を単離し、この遺伝子を利用して組換え新規アミラーゼを遺伝子工学的に生産する手法を、今般、確立した。
発明の開示
I.新規トランスフェラーゼ
本発明は、少なくとも還元末端から3つ以上のグルコース残基がα−1,4結合である3糖以上の糖を基質とし、その還元末端のα−1,4結合をα−1,α−1結合に転移させる作用を有する新規トランスフェラーゼ(以下、本発明の新規トランスフェラーゼ、或いは単に本発明の酵素又は本酵素とも称する)を提供するものである。
本発明は、また、他面において、すべてのグルコース残基がα−1,4結合であるマルトオリゴ糖を基質とし、その還元末端のα−1,4結合をα−1,α−1結合に転移させる作用を有する新規トランスフェラーゼを提供するものである。
本発明は、更に、このような作用をするトランスフェラーゼ産生能を有する細菌を培地に培養し、培養物より、マルトオリゴ糖を基質としトレハロースオリゴ糖を生成する活性を指標とする活性測定法に基づいて、該トランスフェラーゼを単離精製することを特徴とする本発明の新規トランスフェラーゼの製造法を提供するものである。
本発明は、更にまた、本発明の酵素を用い、少なくとも還元末端から3つ以上のグルコース残基がα−1,4結合である3糖以上の糖を基質として作用させ、少なくとも還元末端側の3糖がグルコース単位で構成され、該末端側の1つ目と2つ目のグルコース間の結合がα−1,α−1結合で、該末端側の2つ目と3つ目のグルコース間の結合がα−1,4結合である糖を製造することを特徴とする末端の2糖がα−1,α−1結合である糖の製造法を提供するものである。
本発明はまた更に、本発明の酵素を用い、マルトオリゴ糖各単独又はそれらの混合物を基質として作用させることを特徴とするトレハロースオリゴ糖の製造法を提供するものである。
また、本発明は新規トランスフェラーゼ遺伝子の提供をその目的としている。
また、本発明は前記遺伝子を用いた組換え新規トランスフェラーゼおよびその製造法の提供を目的としている。
さらに本発明は、組換え新規トランスフェラーゼを用いた効率的なグルコシルトレハロース、マルトグルコシルトレハロースなどのトレハロースオリゴ糖の製造法の提供をその目的としている。
よって、本発明によるDNA断片は、少なくとも還元末端から3つ以上のグルコース残基がα-1,4結合である三糖以上の糖を基質とし、その還元末端のα-1,4結合をα-1,α-1結合に転移させる作用を有する新規トランスフェラーゼをコードする遺伝子を含んでなるもの、である。
また、本発明による組換え新規トランスフェラーゼは、上記DNA断片の発現産物である。
さらに、本発明による組換え新規トランスフェラーゼの製造法は、
前記遺伝子で形質転換された宿主細胞を培養し、その培養物中に前記組換え新規トランスフェラーゼを生成させ、これを採取することを含んでなるもの、である。
II.新規アミラーゼ
本発明は、少なくとも還元末端から3つ以上の糖がグルコース単位で構成される3糖以上の糖を基質とし、還元末端側から加水分解して主に単糖及び/又は2糖を遊離する活性を有する新規アミラーゼを提供するものである。
また、本発明は、他面において、少なくとも還元末端側の3糖がグルコース単位で構成され、該末端側の1つ目と2つ目のグルコース間の結合がα−1,α−1結合で、該末端側の2つ目と3つ目のグルコース間の結合がα−1,4結合である3糖以上の糖を基質とし、2つ目と3つ目のグルコース間のα−1,4結合を加水分解し、α,α−トレハロースを遊離する主要な活性を有する新規アミラーゼを提供するものである。
また、更に、本発明は、別の面において、上記したような活性を有すると共に、基質の分子鎖中のα−1,4結合をエンド型で加水分解する活性を合わせ有する新規アミラーゼを提供するものである。
本発明は、更に、上記したような本発明のアミラーゼを産生する能力を有する細菌を培地に培養し、培養物より、トレハロースオリゴ糖を基質としてα,α−トレハロースを生成する活性を指標とする活性測定法に基づいて、該アミラーゼを単離精製することを特徴とする該アミラーゼの製造法を提供するものである。
本発明者らは、上記したような本発明のアミラーゼと、前述した本発明のトランスフェラーゼとを、デンプン、デンプン分解物、及びマルトオリゴ糖等の糖質原料に組み合わせて作用させたところ効率的に、かつ高収率でα,α−トレハロースが生成することを知見した。
よって、本発明は、更にまた、上記したような本発明のアミラーゼとトランスフェラーゼとを組み合わせて用いることを特徴とするα,α−トレハロースの製造法を提供するものである。
また、本発明は新規アミラーゼ、およびその遺伝子の提供をその目的としている。
また、本発明は前記遺伝子を用いた組換え新規アミラーゼおよびその製造法の提供をその目的としている。
さらに本発明は、組換え新規アミラーゼを用いたα,α-トレハロースの製造法の提供をその目的としている。
従って、本発明によるアミラーゼ遺伝子は、
(1)糖鎖中のα-1,4グルコシド結合をエンド型で加水分解する活性、
(2)少なくとも還元末端から3つ以上の糖がグルコース単位で構成され、かつその結合がα-1,4結合である3糖以上の糖を基質とし、還元末端側から加水分解して主に単糖および/または2糖を遊離する活性、および
(3)少なくとも還元末端側の3糖がグルコース単位で構成され、該末端側の1つ目と2つ目のグルコース間の結合がα-1,α-1結合であり、かつ該末端側の2つ目と3つ目のグルコース間の結合がα-1,4結合である3糖以上の糖を基質とし、2つ目と3つ目のグルコース間のα-1,4結合を加水分解し、α,α-トレハロースを遊離する主要な活性を有する新規アミラーゼをコードするDNA配列を含んでなるもの、である。
また、本発明による組換え新規アミラーゼは上記遺伝子の発現産物である。
更に本発明によるα,α-トレハロースの製造法は、
上記組換え新規アミラーゼ、および
少なくとも還元末端から3つ以上のグルコース残基がα-1,4結合である三糖以上の糖を基質とし、その還元末端のα-1,4結合をα-1,α-1結合に転移させる作用を有する新規トランスフェラーゼとを、
少なくとも還元末端から3つ以上のグルコース残基がα-1,4結合である3糖以上の糖と接触させる工程を含んでなるもの、である。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例I−1で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の菌体抽出液による生成物のTSK-gel Amide-80 HPLCによる分析結果を示すグラフである。
図2は、実施例I−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素トランスフェラーゼの温度安定性を示すグラフである。
図3は、実施例I−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素トランスフェラーゼのpH安定性を示すグラフである。
図4は、実施例I−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素トランスフェラーゼの各温度における反応性を示すグラフである。
図5は、実施例I−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素トランスフェラーゼの反応至適pHを示すグラフである。
図6は、実施例I−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素トランスフェラーゼによる、マルトトリオースからの反応生成物のパターンを示すグラフである。
図7は、実施例I−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素トランスフェラーゼによる、マルトテトラオースからの反応生成物のパターンを示すグラフである。
図8は、実施例I−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素トランスフェラーゼによる、マルトペンタオースからの反応生成物のパターンを示すグラフである。
図9は、実施例I−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素トランスフェラーゼによる、マルトオリゴ糖混合物からの反応生成物のAMINEX HPX-42A HPLCによる分析結果を示すグラフである。
図10は、実施例II−1で得たSulfolobus solfataricus KM1株の粗酵素液を作用させたマルトトリオシルトレハロースからの反応生成物のTSK-gel Amide-80 HPLCによる分析結果を示すグラフである。
図11は、実施例II−1で得たSulfolobus solfataricus KM1株の粗酵素液を作用させた可溶性デンプンからの反応生成物のAMINEX HPX-42A HPLCによる分析結果を示すグラフである。
図12は、実施例II−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素アミラーゼの温度安定性を示すグラフである。
図13は、実施例II−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素アミラーゼのpH安定性を示すグラフである。
図14は、実施例II−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素アミラーゼの各反応温度における反応性を示すグラフである。
図15は、実施例II−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素アミラーゼの反応至適pHを示すグラフである。
図16は、実施例II−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素アミラーゼの各種基質に対する反応性を示すグラフである。
図17は、実施例II−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素アミラーゼを作用させたマルトペンタオース、アミロースDP−17、可溶性デンプンからの反応性生物のAMINEX HPX-42A HPLCによる分析結果を示すグラフである。
図18は、実施例II−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素アミラーゼを作用させたマルトトリオシルトレハロースからの反応性生物のTSK-gel Amide-80 HPLCによる分析結果を示すグラフである。
図19は、実施例II−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素アミラーゼを作用させたマルトペンタオシルトレハロースからの反応生成物のTSK-gel Amide-80 HPLCによる分析結果を示すグラフである。
図20は、実施例II−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素アミラーゼを可溶性デンプンに作用させたときのヨウ素発色の消失及びデンプン加水分解率の経時変化を示すグラフである。
図21は、実施例II−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素アミラーゼを作用させた放射活性ラベル化したマルトペンタオースからの反応生成物の放射活性の経時変化を示すグラフである。
図22は、実施例II−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素アミラーゼを作用させた放射活性ラベル化したマルトトリオシルトレハロースからの反応生成物の放射活性の経時変化を示すグラフである。
図23は、ブタ膵臓由来のα−アミラーゼの各種基質に対する反応性を示すグラフである。
図24は、ブタ膵臓由来のα−アミラーゼを作用させたマルトペンタオシルトレハロースからの反応生成物のTSK-gel Amide-80 HPLCによる分析結果を示すグラフである。
図25は、実施例II−2で得たSulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素アミラーゼ及びトランスフェラーゼを作用させた可溶性デンプンからの反応生成物のAMINEX HPX-42A HPLCによる分析結果を示すグラフである。
図26は、実施例I−12で得られたSulfolobus solfataricus KM1株由来の新規トランスフェラーゼ遺伝子を含むpKT1、pKT11およびpKT21の挿入断片の制限酵素地図を示した図である。
図27は、pKT22プラスミドの構築方法を示した図である。
図28は、マルトトリオースに組換え新規トランフェラーゼを作用させたときの生成物のTSK-gel Amide-80 HPLCによる分析結果を示した図である。
図29は、実施例I−16で得られたSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株由来の新規トランスフェラーゼ遺伝子を含むp09T1の挿入断片の制限酵素地図を示した図である。
図30は、p09T1プラスミドの構築方法を示した図である。
図31は、Sulfolobus solfataricus KM1株とSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株由来の新規トランスフェラーゼのアミノ酸配列の相同性を示した図である。
図32は、Sulfolobus solfataricus KM1株とSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株由来の新規トランスフェラーゼ遺伝子の塩基配列の相同性を示した図である。
図33は、マルトオリゴ糖混合物に組換え新規トランスフェラーゼを作用させたときの生成物のAMINEX HPX-42A HPLCによる分析結果を示した図である。
図34は、Sulfolobus solfataricus KM1株由来の新規アミラーゼ遺伝子を含むpKA1の挿入断片の制限酵素地図を示した図である。
図35は、pKA2の制限酵素地図を示した図である。
図36は、(A)は本発明による組換え新規アミラーゼをマルトトリオシルトレハロースに作用させたときの生成物の分析結果を示した図であり、また(B)は本発明による組換え新規アミラーゼを可溶性デンプンに作用させたときの生成物の分析結果を示した図である。
図37は、本発明による組換え新規アミラーゼを可溶性デンプンに作用させたときのヨウ素発色の消失と、デンプン加水分解率の経時的変化を示すグラフである。
図38は、Sulfolobus acidocaldarius ATCC33909株由来の新規アミラーゼ遺伝子を含むp09A1の挿入断片の制限酵素地図である。
図39は、p09A2よりp09A1の作成方法を示した図である。
図40は、Sulfolobus acidocaldarius ATCC33909株,Sulfolobus solfataricus KM1株由来の新規アミラーゼのアミノ酸配列について相同性を比較した図である。
図41は、Sulfolobus acidocaldarius ATCC33909株,Sulfolobus solfataricus KM1株由来の新規アミラーゼ遺伝子の塩基配列について相同性を比較した図である。
図42は、10%可溶性デンプンに実施例II−19の組換え新規アミラーゼおよび実施例I−20の組換え新規トランスフェラーゼを作用させたときの生成物の分析結果を示した図である。
発明を実施するための最良な形態
微生物の寄託
本発明者らにより自然界から実質的に純粋な形で分離した後述の新菌株KM1株は、平成6年(1994)4月1日に受託番号FERM BP−4626の番号のもとに工業技術院生命工学技術研究所に寄託されている。
本発明による新規トランスフェラーゼ遺伝子を含むプラスミドpKT22(後記する実施例I−14参照)で形質転換された大腸菌株E.coli JM109/pKT22は、平成6年(1994年)10月21日に受託番号FERM BP-4843の番号のもとに、またプラスミドp09T1(後記する実施例I−16参照)で形質転換された大腸菌E.coli JM109/p09T1は平成7年(1995年)5月9日に受託番号FERM BP−5093の番号のもとに工業技術院生命工学技術研究所に寄託されている。
また、本発明による新規アミラーゼ遺伝子を含むプラスミドpKA2(後記する実施例II−19参照)で形質転換された大腸菌株E.coli JM109/pKA2は、平成6年(1994年)10月31日に受託番号FERM BP-4857の番号のもとに、またプラスミドp09A1(後記する実施例II−22参照)で形質転換された大腸菌E.coli JM109/p09A1は平成7年(1995年)5月9日に受託番号FERM BP−5092の番号のもとに工業技術院生命工学技術研究所に寄託されている。
I.新規トランスフェラーゼ
本発明の新規トランスフェラーゼを産生する微生物
本発明において利用されうる古細菌としては、Sulfolobus solfataricus ATCC 35091(DSM 1616)株、Sulfolobus solfataricus DSM 5833株、Sulfolobus solfataricus KM1株(本発明者らにより自然界から実質的に純粋な形で分離した後述の新菌株)、Sulfolobus acidocaldarius ATCC 33909(DSM 639)株、Acidianus brierleyi DSM 1651株等を挙げることができる。
本発明の新規トランスフェラーゼを産生する微生物は、このように、分類学上Sulfolobus及びAcidianus属が属するSulfolobales目に属するかなり広い範囲の古細菌に及ぶと考えられる。ここにおいて、Sulfolobales目とは、分類学上、高度好酸性好熱性、好気性、硫黄細菌(球菌)として定義される古細菌である。Acidianus属に属する上記のAcidianus brierleyi DSM 1651株は以前はSulfolobus brierleyi DSM 1651株として分類されていた菌であり、また、上記のSulfolobus solfataricus DSM 5833株は以前はCaldariella acidophilaと命名されていた菌である。よって、このような事実から、上記の古細菌に遺伝学的に或いは分類学的に近縁であり、かつ同種の酵素を産生しうる菌はすべて本発明において使用できることは言うまでもない。
Sulfolobus solfataricus KM1株
上記において例示した微生物の中で、Sulfolobus solfataricus KM1株は本発明者らが群馬県の温泉から分離した菌株であって、次の様な性質を示すものである。
(1)形態的性質
菌の形、大きさ:球菌(不規則) 直径0.6〜2μm
(2)生育最適条件
pH:3〜5.5の範囲で生育し、最適生育pHは3.5〜4.5
温度:55℃〜85℃の範囲で生育し、最適生育温度は75℃〜80℃
硫黄を代謝できる
(3)好気性、嫌気性の区別:好気性
以上の性質から、Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology Volume 3(1989)に従い菌株の同定を行った結果、本菌株はSulfolobus solfataricusに属する菌株であり、従って本菌株をSulfolobus solfataricus KM1株と命名した。
上記の菌株の培養にあたっては、培地は液体でも固体でもよく、通常は液体培地を用いた振とう培養又は通気撹拌培養が行なわれる。このように、培地は生育に適するものであれば特に限定されず、例えば、American Type Culture Collection(ATCC)発行Catalogue of Bacteria and Phages 18版(1992)及びDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSM)発行Catalogue of Strains 5版(1993)に記載のSulfolobus solfataricus Medium等を好ましく用いることができる。更に糖源としてデンプン、マルトオリゴ糖等を加えてもよい。また、培養条件も上記の生育可能な温度及びpHのもとであれば特に限定されない。
本発明の新規トランスフェラーゼを産生する微生物の培養
本発明の新規トランスフェラーゼ産生のための培養条件は、該トランスフェラーゼを産生しうる範囲内で適宜選択すればよい。液体振とう培養又は通気撹拌培養の場合は各微生物が生育するpH、培養温度で、2日〜7日間の培養が適当である。培地としては、例えば、American Type Culture Collection(ATCC)発行Catalogue of Bacteria and Phages 18版(1992)及びDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSM)発行Catalogue of Strains 5版(1993)に記載のSulfolobus solfataricus Medium等を好ましく用いることができる。更に糖源としてデンプン、マルトオリゴ糖等を加えてもよい。
本発明の新規トランスフェラーゼの精製
上記微生物の産生する本発明の新規トランスフェラーゼの抽出は、まず上記のような培養方法により得られた培養物から公知の方法、例えば遠心分離により菌体を得て、これを適切な緩衝液中に懸濁し、凍結融解、超音波処理、磨砕等により菌体を破砕し、遠心分離またはろ過により該トランスフェラーゼを含有する菌体抽出物を得る。
この菌体抽出物に存在する本発明の新規トランスフェラーゼの精製には、公知の分離、精製法を適当に組み合わせて行うことができる。例えば、塩沈澱及び溶媒沈澱のような溶解性を利用する方法、透析、限外ろ過、ゲルろ過及びSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動のような分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーのような電荷の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーのような特異的親和性を利用する方法、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーのような疎水性の差を利用する方法、更に等電点電気泳動のような等電点の差を利用する方法等が挙げられる。これらの具体的な例は、後述の実施例I−2〜I−5に示すとおりである。最終的にネイティブポリアクリルアミドゲル、SDSポリアクリルアミドゲル或いは等電点電気泳動にて単一バンドを示す酵素を精製酵素として得る。
上記したような各種の精製過程において分離された酵素或いは酵素含有物の活性測定に関しては、Lamaらの方法における活性測定法ではデンプンを基質として行っており、それによれば、トレハロースとグルコースの生成は確認できるものの、トレハロースオリゴ糖の生成は全く検出できず、また、この方法では精製途中においてトレハロース生成活性さえも消失して確認できなくなるという大きな問題があり、酵素活性本体の精製、特定化は実質上不可能であった。ところが、本発明者らにより、マルトオリゴ糖(例えばマルトトリオース)を基質とし、トレハロースオリゴ糖(例えばグルコシルトレハロース)を生成する活性を指標とする新しい活性測定法を採用したところ、初めて目的とする酵素の単離精製が可能となり、ようやくにして、本発明の新規トランスフェラーゼ活性本体の精製及び特定化を実現し得たのである。
本発明の新規トランスフェラーゼの諸性質
本発明の酵素例として、Sulfolobus solfataricus KM1株、Sulfolobus solfataricus DSM 5833株、Sulfolobus acidocaldarius ATCC 33909株、Acidianus brierleyi DSM 1651株の微生物がそれぞれ産生したトランスフェラーゼについてそれらの酵素学的な諸性質を下記の第1表にまとめて示す。なお、表中のデータは、実施例I−6及び7に示した具体例に基づくものである。
Figure 0004033897
註1:経時変化
マルトトリオースを基質として用いた場合、主反応であるグルコシルトレハロースの生成とともに、副反応としてマルトース及びグルコースが等モル生成された。
マルトテトラオース以上の重合度nを持つ糖では、主反応として、還元末端のグルコース単位がα−1,α−1結合した糖が生成され、同様に副反応として等モルずつの重合度(n−1)糖及びグルコースが生成された。
註2:酵素作用/酵素反応様式
還元末端がα−1,4結合でグルコースが3つ結合したマルトトリオース以上の糖の還元末端の糖を、転移によりα−1,α−1で結合させる活性を有する酵素と考えられる。また基質濃度が低い場合、及び長時間反応させた場合等においては、副反応、即ち、グルコースポリマーからグルコースを遊離する活性も有する。この詳細は、実施例I−7の具体例において示す通りである。
以上、本酵素の諸性質を述べたが、酵素作用/酵素反応様式のところで述べたように、本酵素の活性は、還元末端がα−1,4結合でグルコースが3つ結合したマルトトリオース以上の糖の還元末端の糖を、転移によりα−1,α−1で結合させるという活性であり、これは全く新規な酵素活性である。但し、以下の実施例において明らかなように、このような酵素活性以外の本酵素の諸性質に関しては、菌株の属或いは種の違いにより若干の差違がある。
グルコシルトレハロース及びマルトオリゴシルトレハロース等のトレハロースオリゴ糖の製造
本発明は、本酵素を用い、少なくとも還元末端から3つ以上のグルコース残基がα−1,4結合である3糖以上の糖を基質として作用させ、少なくとも還元末端側の3糖がグルコース単位で構成され、該末端側の1つ目と2つ目のグルコース間の結合がα−1,α−1結合で、該末端側の2つ目と3つ目のグルコース間の結合がα−1,4結合である糖を製造することを特徴とする末端の2糖がα−1,α−1結合である糖の製造法を提供するものであるが、該本発明の製造法を、最も典型的な具体例、即ち、グルコシルトレハロース及びマルトオリゴシルトレハロース等のトレハロースオリゴ糖の製造法でもって以下説明する。
本発明におけるグルコシルトレハロース及びマルトオリゴシルトレハロース等のトレハロースオリゴ糖の製造法は、古細菌が産生する本酵素によって、マルトオリゴ糖等の糖から、典型的には、マルトオリゴ糖各単独又はそれらの混合物から、グルコシルトレハロース及びマルトオリゴシルトレハロース等のトレハロースオリゴ糖を製造するものである。従って、古細菌が産生する本酵素がマルトオリゴ糖等の糖に作用可能な様態である限り、本酵素トランスフェラーゼとマルトオリゴ糖等の糖との接触の様態は特に限定されない。具体的には、一般的に、古細菌の菌体或いは菌体破砕物から粗酵素を得、次いで各種精製工程で得られた精製酵素、或いは各種精製手段を経て単離精製された酵素を直接マルトオリゴ糖等の糖に作用させればよい。或いは、上記酵素を常法に準じて担体に固定化し、固定化した酵素としてマルトオリゴ糖等の糖に接触させてもよい。なお、古細菌の複数種から得た二つ以上の本酵素を共存させて、マルトオリゴ糖等の糖と接触させてもよい。
上記の本発明の製造法において代表的な基質原料であるマルトオリゴ糖の混合物は、例えばデンプンをエンド型アミラーゼ、枝切り酵素などによる分解或いは酸分解に処し、少なくとも還元末端から3つ以上のグルコース残基がα−1,4結合であるように適宜分解することにより製造し得る。その際エンド型アミラーゼとしては、例えば、Bacillus属等のバクテリア、Aspergillus属等のかび、麦芽等の植物由来の酵素等が利用できる。また枝切り酵素については、例えば、Bacillus属、Klebsiella属等バクテリア由来のプルラナーゼ、Pseudomonas属由来のイソアミラーゼ等が利用できる。更にこれらの酵素を組み合わせても利用できる。
マルトオリゴ糖等の糖の使用濃度は、用いる糖が溶解されうる範囲であれば、本酵素の比活性、反応温度等を考慮して適宜選択すればよい。0.5〜70%の範囲とするのが一般的であり、好ましくは5〜40%の範囲である。糖と酵素との反応における反応温度及びpH条件は、本酵素トランスフェラーゼの最適条件下で行うことが好ましい。よって、50〜85℃程度、pH3.5〜6.5程度の条件下で行うのが一般的であり、好ましくは60〜80℃、pH4.5〜6.0の範囲である。
生成されたグルコシルトレハロース或いはマルトオリゴシルトレハロース等のトレハロースオリゴ糖を含む反応液は、公知の方法に従い精製することができる。例えば、得られた反応液をイオン交換樹脂により脱塩し、活性炭、イオン交換樹脂(HSO3型)又は陽イオン交換樹脂(Ca型)等を分離剤とするクロマトグラフィーによって目的の糖画分を分離し、又は更に続いて濃縮し、結晶化することにより、高純度のトレハロースオリゴ糖を得ることができる。
新規トランスフェラーゼをコードする遺伝子
本発明によれば、更に上記の新規トランフェラーゼをコードする遺伝子が提供される。
本発明による新規トランスフェラーゼをコードしている遺伝子を含んでなるDNA断片としては、例えば図26または図29に示される制限酵素地図で表されるDNA断片が挙げられる。
このDNA断片は、Sulfolobales目に属する古細菌から得ることが出来、好ましくはSulfolobus属に属する古細菌、より好ましくは後記するSulfolobus solfataricus KM1株、またはSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株から単離することが出来る。Sulfolobus solfataricus KM1株、およびSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株からのその好ましい単離法については、後記する実施例において詳細に説明されている。
このDNA断片を取得可能と思われる起源の具体例としては、さらにSulfolobus solfataricus DSM 5354株、DSM5833株、ATCC35091株、ATCC35092株、Sulfolobus acidocaldarius ATCC49426株、Sulfolobus shibatae DSM5389、Acidianus brierleyi DSM1651株等を挙げることができる。これらの古細菌が、本発明によるDNA断片の起源となりうることは、後記する実施例I−17のハイブリダイゼーション試験において、Sulfolobus solfataricus KM1株由来の新規トランスフェラーゼ遺伝子が、これら古細菌の染色体DNAとハイブリッドを形成すること、さらには、上記したように酵素自体の性質も酷似していることを示していることからも明らかである。更にこの実施例の結果は、本発明による新規トランスフェラーゼ遺伝子が、Sulfolobales目に属する古細菌に特異的に高度に保存されていることを示しているといえる。
本発明の好ましい態様によれば、本発明による新規トランスフェラーゼをコードしている遺伝子の好ましい具体例として、配列番号2または4に示されるアミノ酸配列をコードするDNA配列を含んでなるDNA断片が提供される。さらに、配列番号2に示されるアミノ酸配列をコードするDNA配列の好ましい具体例としては、配列番号1に示される塩基配列の335番から2518番までの塩基配列が挙げられる。配列番号4に示されるアミノ酸配列をコードするDNA配列の好ましい具体例としては、配列番号3に示される塩基配列の816番から2855番までの塩基配列が挙げられる。
一般に、タンパク質のアミノ酸配列が与えられれば、それをコードする塩基配列は、いわゆるコドン表を参照して容易に定まる。よって配列番号2または4に示されるアミノ酸配列をコードする種々の塩基配列を適宜選択することが可能である。従って、本発明において「配列番号2に示されるアミノ酸をコードするDNA配列」とは、配列番号1に示される塩基配列の335番から2518番の配列を有するもの、およびその縮重関係にあるコドンが使用されている以外は同一の塩基配列を有しかつ配列番号2に示されるアミノ酸をコードする塩基配列をも意味するものとする。また「配列番号4に示されるアミノ酸をコードするDNA配列」とは、配列番号3に示される塩基配列の816番から2855番の配列を有するもの、およびその縮重関係にあるコドンが使用されている以外は同一の塩基配列を有しかつ配列番号4に示されるアミノ酸をコードする塩基配列をも意味するものとする。
さらに、後記するように本発明による新規トランスフェラーゼには、配列番号2または4に示されるアミノ酸配列の等価配列をも包含するものである。従って、本発明によるDNA断片には、さらにこの等価配列をコードする塩基配列も包含される。
なお、配列番号1または3に示される塩基配列と相同性を有する配列の存在について、塩基配列データバンク(EMBL)を通じて、配列解析ソフトジェネティックス(ソフトウエア開発)を用いて調べた結果、そのような配列は存在しないことを本発明者らは確認している。
本発明による配列番号1に示される塩基配列の335番から2518番の配列を有するDNA断片、および配列番号3に示される塩基配列の816番から2518番の配列を有するDNA断片は塩基配列が定まっていることから、そのDNA断片を取得する一つの手段は核酸合成の手法に従って製造することである。
またこの配列は、前記したSulfolobales目に属する古細菌、好ましくはSulfolobus solfataricus KM1株、またはSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株から遺伝子工学的な手法を用いて得ることが出来る。例えば、Molecular Cloing:A Laboratory Manual(Sambrook,Maniatisら、Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989))などに記載の手法で好ましく行うことができる。具体的な方法は、後記する実施例に詳細に説明されている。
組換え新規トランスフェラーゼ
上記の通り、新規トランフェラーゼの遺伝子が提供されたことから、本発明によれば、この遺伝子の発現産物である組換え新規トランフェラーゼが提供される。
本発明による組換え新規トランスフェラーゼの好ましい具体例としては、図26または図29に示される制限酵素地図で表されるDNA断片の発現産物が挙げられる。
更に、好ましい具体例としては、配列表の配列番号2または4に示されるアミノ酸配列またはその等価配列を含んでなるポリペプチドが挙げられる。ここで、「その等価配列」とは、配列番号2または4に示されるアミノ酸配列において、いくつかのアミノ酸の挿入、置換または欠失、若しくは両末端への付加がなされたものであって、かつその新規トランスフェラーゼ作用を依然として保持するものをいうものとする。その等価配列における新規トランスフェラーゼ作用の保持とは、その作用を利用した実際の使用態様において、配列番号2または4に示される配列を全て有するポリペプチドと、同一の条件でほぼ同様の利用が可能な程度の活性が維持されていることをいうものとする。このような「等価配列」は具体的に実施例I−18においてSulfolobus solfataricus KM1株、およびSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株の2株の間で新規トランスフェラーゼのアミノ酸配列の相同性がギャップを考慮して計算した場合49%であっても同一の活性が保持されていることからも、配列番号2および4に示される配列を参照すれば、当業者であれば格別の困難性なしに選択し、製造可能であることは明らかである。
後記する実施例I−17において明らかにされているように、配列番号1および3に示される配列を有するDNA断片が、このDNA断片の起源であるSulfolobus solfataricus KM1株、およびSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株以外の他の菌株由来のDNA断片とハイブリッドを形成している。一方、上記したように、これらの菌株から性質の酷似した新規トランスフェラーゼの存在を今般確認した。また後記する実施例I−18において明かにされるように、Sulfolobus solfataricus KM1株とSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株の2株の間で、新規トランスフェラーゼのアミノ酸配列の相同性はギャップを考慮して計算した場合49%である。従って、配列番号2または4に示されるアミノ酸配列とある程度の相同性ある配列において、新規トランスフェラーゼ活性が保持されうることは当業者に明らかであるといえる。
なお、配列番号2および4に示されるアミノ酸配列と相同性を有する配列の存在について、アミノ酸配列データバンク(Swiss prot、およびNBRF-PFB)を通じて、配列解析ソフトジェネティックス(ソフトウエア開発)を用いて調べた結果、そのような配列は存在しないことを本発明者らは確認している。
新規トランスフェラーゼをコードする遺伝子の発現
本発明による新規トランスフェラーゼをコードするDNA断片を、宿主細胞内で複製可能でかつ同遺伝子が発現可能な状態で含むDNA分子、特に発現ベクター、の形態として宿主細胞の形質転換を行えば、宿主細胞において本発明による組換え新規トランスフェラーゼを産生させることができる。
従って、本発明によれば、さらに本発明による新規トランスフェラーゼをコードする遺伝子を含んだDNA分子、特に発現ベクター、が提供される。このDNA分子は、ベクター分子に本発明による新規トランスフェラーゼをコードするDNA断片を組み込むことによって得ることが出来る。本発明の好ましい態様によれば、このベクターはプラスミドである。
この本発明によるDNA分子の作成は前掲のMolecular Cloing:A Laboratory Manualに記載の方法に準じて行うことができる。
本発明において利用されるベクターは、使用する宿主細胞の種類を勘案しながら、ウイルス、プラスミド、コスミドベクターなどから適宜選択することができる。例えば、宿主細胞が大腸菌の場合はλファージ系のバクテリオファージ、pBR,pUC系のプラスミド、枯草菌の場合はpUB系のプラスミド、酵母の場合はYEp、YCp系のベクターが挙げられる。
このプラスミドは形質転換体の選択マーカーを含むのが好ましく、選択マーカーとしては薬剤耐性マーカー、栄養要求マーカー遺伝子を使用することができる。
さらに、本発明による発現ベクターとしてのDNA分子は、新規トランスフェラーゼ遺伝子の発現に必要なDNA配列、例えばプロモーター、転写開始信号、リボゾーム結合部位、翻訳停止シグナル、転写終結信号などの転写調節信号、翻訳調節信号などを有しているのが好ましい。
プロモーターとしては、挿入断片に含まれる宿主中でも機能することができるプロモーターはもちろんのこと、大腸菌においてはラクトースオペロン(lac)、トリプトファンオペロン(trp)等のプロモーター、酵母ではアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(ADH)、酸性フォスファターゼ遺伝子(PHO)、ガラクトース遺伝子(GAL)、グリセロアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(GPD)等のプロモーターが好ましく用いることができるものとして挙げられる。
ここで、配列番号1に示される塩基配列の1番から2578番までの塩基配列および配列番号3に示される塩基配列の1番から3467番までの塩基配列は、上記の発現に必要な配列を含んでいると思われることから、この配列をそのまま利用するのも好ましい。
また、宿主細胞が枯草菌、酵母の場合には、分泌型ベクターを使用して、菌体外に組換え新規トランスフェラーゼ酵素を分泌することも有利である。
宿主細胞としては、大腸菌の他に、枯草菌、酵母、高等真核生物を用いることができる。枯草菌としては例えばBacilus属に属する微生物を用いることが好ましい。該属には、タンパク質を多く菌体外へ分泌する株が存在することが知られている。従って、分泌型ベクターを用いることにより、培養液中に多量の組換え新規アミラーゼを分泌させることが出来る。さらに培養上清からの精製も容易となるので好ましい。また、該属には菌体外にプロテアーゼをほとんど分泌しない株も知られており、このような株を用いることにより、本発明による組換え新規アミラーゼを効率よく生産することが出来るので好ましい。また、宿主細胞としてグルコアミラーゼを産生しない生物を選択すると、菌体抽出液、または簡単な精製を行った粗酵素の状態で本発明による組換え新規トランスフェラーゼを得て、それをそのまま後記するトレハロースオリゴ糖の製造に用いることができるので、極めて有利である。
前記した形質転換体の産生する組換え新規トランスフェラーゼは、次のようにして得ることが出来る。まず上記の宿主細胞を適切な条件下で培養し、得られた培養物から公知の方法、例えば遠心分離により菌体を得て、これを適切な緩衝液中に懸濁し、凍結融解、超音波処理、磨砕等により菌体を破砕し、遠心分離またはろ過により組換え新規トランスフェラーゼを含有する菌体抽出物を得る。
この菌体抽出物に存在する組換え新規トランスフェラーゼの精製には、公知の分離、精製法を適当に組み合わせて行うことができる。例えば、熱処理のような耐熱性の差を利用する方法、塩沈澱および溶媒沈澱のような溶解性の差を利用する方法、透析、限外ろ過、ゲルろ過およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動のような分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーのような電荷の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーのような特異的親和性を利用する方法、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーのような疎水性の差を利用する方法、更に等電点電気泳動のような等電点の差を利用する方法等が挙げられる。この組換え新規トランスフェラーゼは耐熱性を有するため、熱処理により宿主のタンパク質を変性させることにより、これを沈殿として除去できるため、精製を非常に簡単に行うことができる。
組換え新規トランフェラーゼを用いたトレハロースオリゴ糖の製造
更に本発明によれば、上記の組換え新規トランスフェラーゼを用いた、グルコシルトレハロースおよびマルトオリゴシルトレハロース等のいわゆるトレハロースオリゴ糖の製造法が提供される。
すなわち、本発明による方法は、少なくとも還元末端側の三糖がグルコース単位で構成され、該末端側の1つ目と2つ目のグルコース間の結合がα-1,α-1結合で、該末端側の2つ目と3つ目のグルコース間の結合がα-1,4結合であるトレハロースオリゴ糖の製造法であって、上記組換え新規トランスフェラーゼを、少なくとも還元末端から3つ以上のグルコース残基がα-1,4結合である三糖以上の糖と接触させることを含んでなる。
少なくとも還元末端から3つ以上のグルコース残基がα-1,4結合である三糖以上の糖は特に限定されないが、デンプン、デンプン分解物、マルトオリゴ糖等が挙げられる。ここでデンプン分解物としては、デンプンをエンド型アミラーゼ、枝切り酵素などによる分解または酸分解に付し、少なくとも還元末端から3つ以上のグルコース残基がα-1,4結合であるように適宜分解することにより製造されたものが挙げられる。ここで用いられるエンド型アミラーゼとしては、例えば、Bacillus属等のバクテリア、Aspergillus属等のかび、麦芽等の植物由来の酵素等が利用できる。また枝切り酵素としては、例えばBacillus属、Klebsiella属等バクテリア由来のプルラナーゼ、Pseudomonas属由来のイソアミラーゼ等が利用できる。更にこれらの酵素を組み合わせて利用することも可能である。
本発明による組換え新規トランスフェラーゼと、少なくとも還元末端から3つ以上のグルコース残基がα-1,4結合である三糖以上の糖との接触態様およびその条件は、組換え新規トランスフェラーゼが該糖に作用可能な様態である限り特に限定されない。溶液中で接触させる場合の好ましい態様を示せば次の通りである。すなわち、マルトオリゴ糖等の糖の使用濃度は、用いる糖が溶解されうる範囲であれば、本酵素の比活性、反応温度等を考慮して適宜選択してよいが、0.5〜70%の範囲とするのが一般的であり、好ましくは5〜40%の範囲である。糖と酵素との反応における反応温度およびpH条件は、組換え新規トランスフェラーゼの最適条件下で行うことが好ましい。よって、50〜85℃程度、pH3.5〜6.5程度の条件下で行うのが一般的であり、好ましくは60〜80℃、pH4.5〜6.0の範囲である。
また、組換え新規トランスフェラーゼの精製の程度も適宜選択することができ、形質転換体の菌体破砕物から粗酵素のまま用いることもでき、また、各種精製工程で得られた精製酵素として利用してもよい。さらには各種精製手段を経て単離精製された酵素として用いてもよい。
さらに酵素は、常法に準じて担体に固定化し、固定化した状態で、糖と接触させてもよい。
生成したグルコシルトレハロース、マルトオリゴシルトレハロース等のトレハロースオリゴ糖は、反応液を公知の方法に従い精製することにより得ることが出来る。例えば、得られた反応液をイオン交換樹脂により脱塩し、活性炭、イオン交換樹脂(HSO3型)又は陽イオン交換樹脂(Ca型)等を分離剤とするクロマトグラフィーによって目的の糖画分を分離し、又は更に続いて濃縮し、結晶化することにより、高純度のトレハロースオリゴ糖を得ることができる
II.新規アミラーゼ
本発明の新規アミラーゼを産生する微生物
本発明において利用されうる古細菌としては、Sulfolobus solfataricus KM1株(本発明者らにより自然界から実質的に純粋な形で分離した前述の新菌株)、Sulfolobus solfataricus DSM 5833株、Sulfolobus acidocaldarius ATCC 33909(DSM 639)株等を挙げることができる。
本発明の新規アミラーゼを産生する微生物は、このように、分類学上Sulfolobales目に属するかなり広い範囲の古細菌に及ぶと考えられる。ここにおいて、Sulfolobales目とは、分類学上、高度好熱性(温度:55℃〜88℃の範囲で生育)、好酸性(pH:1〜6の範囲で生育)、好気性、硫黄細菌(球菌(不規則):直径0.6〜2μm)として定義される古細菌である。上記のSulfolobus solfataricus DSM 5833株は以前はCaldariella acidophilaと命名されていた菌である。よって、このような事実から、上記の古細菌に遺伝学的に或いは分類学的に近縁であり、かつ同種の酵素を産生しうる菌、及び該菌の菌株を各種変異剤によって処理して得られる変異株はすべて本発明において使用できることは言うまでもない。
上記において例示した微生物の中で、Sulfolobus solfataricus KM1株は本発明者らが群馬県の温泉から分離した菌株であって、その性質、培養法並びに寄託に関しては、前述において詳しく説明したとおりのものである。
本発明の新規アミラーゼを産生する微生物の培養
本発明の新規アミラーゼ産生のための培養条件は、該アミラーゼを産生しうる範囲内で適宜選択すればよい。液体振とう培養又は通気撹拌培養の場合は各微生物が生育するpH、培養温度で、2日〜7日間の培養が適当である。培地としては、例えば、American Type Culture Collection(ATCC)発行 Catalogue of Bacteria and Phages 18版(1992)及びDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSM)発行Catalogue of Strains 5版(1993)に記載のものを好ましく用いることができる。更に糖源としてデンプン、マルトオリゴ糖等を加えてもよい。
本発明の新規アミラーゼの精製
上記微生物の産生する本発明の新規アミラーゼの抽出は、まず上記のような培養方法により得られた培養物から公知の方法、例えば、遠心分離により菌体を得て、これを適切な緩衝液中に懸濁し、凍結融解、超音波処理、磨砕等により菌体を破砕し、遠心分離又はろ過により該アミラーゼを含有する菌体抽出物を得る。
この菌体抽出物に存在する本発明の新規アミラーゼの精製には、公知の分離、精製法を適当に組み合わせて行うことができる。例えば、塩沈澱及び溶媒沈澱のような溶解性を利用する方法、透析、限外ろ過、ゲルろ過、及びSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動のような分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーのような電荷の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーのような特異的親和性を利用する方法、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーのような疎水性の差を利用する方法、更に等電点電気泳動のような等電点の差を利用する方法等が挙げられる。これらの具体的な例は、後述の実施例II−2〜II−4に示すとおりである。最終的にネイティブポリアクリルアミドゲル、SDSポリアクリルアミドゲル或いは等電点電気泳動にて単一バンドを示す酵素を精製酵素として得る。
上記したような各種の精製過程において分離された酵素或いは酵素含有物の活性測定に関しては、Lamaらの方法における活性測定法ではデンプンを基質として行っており、それによれば、各種アミラーゼが複数存在している状態ではデンプンの分解が検出できるものの、それらのアミラーゼがそれぞれ分離された状態では検出感度、定量性が共に低く、また、この方法では精製途中においてデンプン分解活性はほとんど消失して確認できなくなるという大きな問題があり、酵素活性本体の精製、特定化は実質上不可能であった。ところが、本発明者らにより、トレハロースオリゴ糖(例えばマルトトリオシルトレハロース)を基質とし、α,α−トレハロースとマルトオリゴ糖(例えばマルトトリオース)に分解する活性を指標とする新しい活性測定法を採用したところ、非常に特異性、検出感度、及び定量性が高く、初めて目的とする酵素の単離精製が可能となり、ようやくにして、本発明の新規アミラーゼ活性本体の精製及び特定化を実現し得たのである。
本発明の新規アミラーゼの諸性質
本発明の酵素例として、Sulfolobus solfataricus KM1株、Sulfolobus solfataricus DSM 5833株、及びSulfolobus acidocaldarius ATCC 33909(DSM 639)株の古細菌がそれぞれ産生した新規アミラーゼについてそれらの酵素学的な諸性質を下記の第2表にまとめて示す。なお、表中のデータは、実施例II−5に示した具体例に基づくものである。
Figure 0004033897
註1:経時変化
可溶性デンプンを基質として用いた場合、反応初期にヨウ素デンプン反応が速やかに消失し、引き続き、マルトース、グルコースを主成分として若干量のマルトトリオース、マルトテトラオースを生成するように分解した。
註2:酵素作用/酵素反応様式
本酵素はデンプン、デンプン分解物、及びマルトオリゴ糖を基質とした場合、加水分解反応により主にグルコース、マルトースを生成し、少量のマルトトリオース、マルトテトラオースを生成する。本活性の作用機作についてはこれらの基質に対してエンド型に作用するアミラーゼ活性と共にその還元末端側から主に単糖、2糖を生成する活性を有する。
特に、還元末端側の1つ目と2つ目のグルコース間の結合がα−1,α−1結合で、該末端側の2つ目と3つ目のグルコース間の結合がα−1,4結合である3糖以上の糖(例えばトレハロースオリゴ糖)との反応性が高く、これを基質とした場合、還元末端側から2つ目と3つ目のグルコース間のα−1,4結合を加水分解して反応の初期に特異的にα,α−トレハロースを遊離する活性を有する。
よって、本酵素は新規なアミラーゼであると考えられる。この詳細は、実施例II−5の具体的な例において示す通りである。
以上、本酵素の諸性質を述べたが、第2表及び後述の実施例から明らかなように、酵素活性以外の本酵素の諸性質に関しては、菌株の属或いは種の違いにより若干の差異があるのが認められる。
α,α−トレハロースの製造において用いられるトランスフェラーゼ
本発明のα,α−トレハロースの製造法において使用するトランスフェラーゼとしては、前述のI.新規トランフェラーゼの項において詳説した本発明のトランフェラーゼを用いることができる。具体的には、例えばSulfolobus solfataricus ATCC 35091(DSM 1616)株、Sulfolobus solfataricus DSM 5833株、Sulfolobus solfataricus KM1株、Sulfolobus acidocaldarius ATCC 33909(DSM 639)株、Acidianus brierleyi DSM 1651株等が産生するトランスフェラーゼを挙げることができる。
上記トランスフェラーゼは、例えば、後述する実施例I−2〜I−5に示す方法に従って製造することができる。こうして得られたトランスフェラーゼは後述の実施例I−6において示すような諸性質を有するものである。
α,α−トレハロースの製造
本発明は、本発明の新規アミラーゼとトランスフェラーゼとを用いて、α,α−トレハロースを製造する方法を提供するものであるが、該本発明の製造法を、最も典型的な具体例、即ち、デンプン、デンプン分解物、及びマルトオリゴ糖等の糖原料から、α,α−トレハロースを製造する方法でもって以下説明する。なお、デンプン等に上記の2つの酵素が作用する機構は、多分、以下の通りであると考えられる。すなわち、デンプン、デンプン分解物、或いはマルトオリゴ糖に本発明の新規アミラーゼがそのエンド型活性により、まず作用してこのものをアミロース又はマルトオリゴ糖に分解し、続いて、トランスフェラーゼの作用によって該アミロース又はマルトオリゴ糖の還元末端のα−1,4結合をα−1,α−1結合に転位させ、更に、再び新規アミラーゼが作用してα,α−トレハロースと、重合度を2つ減じたアミロース又はマルトオリゴ糖を生成し、こうして生じたアミロース又はマルトオリゴ糖に上記の反応が繰り返されて、延いては、高収率でα,α−トレハロースが生成されるようになるのではないかと考えられる。
このような作用機構は、還元末端側の1つ目と2つ目のグルコース間の結合がα−1,α−1結合で、該末端側の2つ目と3つ目のグルコース間の結合がα−1,4結合である3糖以上の糖(例えばトレハロースオリゴ糖)に対する反応性が、それぞれ対応するマルトオリゴ糖との反応性に比較して高く、上記の3糖以上の糖の還元末端側の2つ目と3つ目のグルコース間のα−1,4結合を特異的に加水分解してα,α−トレハロースを遊離するという、本発明の新規アミラーゼの特異的な反応様式に起因するものと考えられる。
本発明者らの知る限りでは、従来知られているアミラーゼで、マルトオリゴ糖の還元末端がα−1,α−1結合となったマルトオリゴシルトレハロースを、そのα−1,α−1結合のとなりのα−1,4結合の位置で特異的に加水分解し、収率よくα,α−トレハロースを遊離する活性を有するものはなく、従ってα,α−トレハロースを高い収率で生成することはほとんど不可能であった。
本発明におけるα,α−トレハロースの製造法は、古細菌が産生する本発明のアミラーゼ(本酵素)がデンプン、デンプン分解物、及びマルトオリゴ糖等の糖に作用可能な様態である限り、該アミラーゼ、及びトランスフェラーゼとデンプン、デンプン分解物、及びマルトオリゴ糖等の糖との接触の様態は特に限定されない。具体的には、一般的に、古細菌の菌体或いは菌体破砕物から粗酵素を得、次いで各種精製工程で得られた精製酵素、或いは各種精製手段を経て単離精製された酵素を直接デンプン、デンプン分解物、或いはマルトオリゴ糖等の糖に作用させればよい。或いは、そのようにして得た酵素を担体に固定化し、固定化された酵素としてデンプン、デンプン分解物、或いはマルトオリゴ糖等の糖に接触させてもよい。なお古細菌の複数種から得た二つ以上の本酵素を共存させて、デンプン、デンプン分解物、或いはマルトオリゴ糖等の糖と接触させてもよい。
本発明のα,α−トレハロースの製造法において、上記アミラーゼ、及びトランスフェラーゼの使用量については、いずれも最適範囲内で使用されるべきである。即ち、過剰のアミラーゼは、還元末端がトランスフェラーゼにより作用を受けていないデンプン、デンプン分解物、或いはマルトオリゴ糖に作用してグルコース、マルトースを生成するようになり、一方、過剰のトランスフェラーゼは、同酵素によって生成したマルトオリゴシルトレハロース等のトレハロースオリゴ糖を副反応により分解し、グルコースを生成するようになるからである。
具体的には、アミラーゼ及びトランスフェラーゼの基質に対する濃度は、それぞれ1.5U/ml及び0.1U/ml以上、好ましくはそれぞれ1.5U/ml及び1.0U/ml以上、更に好ましくはそれぞれ15U/ml及び1.0U/ml以上であり、また、アミラーゼ対トランスフェラーゼの濃度比は100〜0.075、好ましくは40〜3である。
デンプン、デンプン分解物、及びマルトオリゴ糖等の糖の使用濃度は、用いる糖が溶解されうる範囲であれば、用いる酵素の比活性、反応温度等を考慮して適宜選択すればよい。0.5〜70%の範囲とするのが一般的であり、好ましくは5〜40%の範囲である。糖と酵素との反応における反応温度及びpH条件は、アミラーゼ、及びトランスフェラーゼの最適条件で行うことが好ましい。よって、50〜85℃程度、pH3.5〜8程度の条件下で行うのが一般的であり、好ましくは60〜75℃、pH4.5〜6.0の範囲である。
また、用いる糖原料が高重合度のデンプン、デンプン分解物等の場合は、補助的に他のエンド型液化アミラーゼを併用することにより、α,α−トレハロースの生成を促進させることができる。更にプルラナーゼ、イソアミラーゼ等の枝切り酵素を用いることもできる。この場合のエンド型アミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ等については、古細菌が産生する酵素である必要はない。よって、特に限定されないが、例えば、Bacillus属等のバクテリア、Aspergillus属等のかび、麦芽等の植物由来のアミラーゼが利用できる。また枝切り酵素については、例えばBacillus属、Klebsiella属等バクテリア由来のプルラナーゼ(耐熱性のプルラナーゼを含む)、Pseudomonas属由来のイソアミラーゼ等が利用できる。更にこれらの酵素どうしを組み合わせても利用できる。
ただし、過剰量のアミラーゼの添加はトランスフェラーゼによって利用されないグルコース、マルトースを生成する可能性がある。また、枝切り酵素においても同様に、過剰量の添加は1,6結合の切断による基質の溶解度の低下を引き起こし、利用されない高粘度の不溶物質(アミロース)を生じるようになる。よって、用いるアミラーゼ及び枝切り酵素等の量は、過剰のグルコース、マルトース、或いは不溶性物質を生成させないように注意して調節する必要がある。例えば、枝切り酵素に関しては、その使用濃度は、本発明のアミラーゼの比活性、反応温度等を考慮し、かつ不溶性物質を生成させない範囲で適宜選択する必要がある。具体的には、40℃にて1hr処理する場合は、基質に対して0.01〜100U/mlの範囲とするのが一般的であり、好ましくは0.1〜25U/mlの範囲である。(枝切り酵素の活性の定義については実施例II−6,13及び14参照。)枝切り酵素を用いる場合は、α,α−トレハロースの生成反応の前に予め基質を枝切り酵素にて前処理する方法、又はα,α−トレハロースの生成反応に際していずれかの段階でアミラーゼ及びトランスフェラーゼと共存させて用いる方法などいずれであってもよい。なお、その際枝切り酵素はいずれかの段階で1回以上組み合わせて用いるのが好ましく、特に初期の段階で1回以上組み合わせて用いるのが好ましい。なお、耐熱性枝切り酵素を用いる場合はα,α−トレハロース生成反応に際していずれかの段階、或いは初期の段階において、1回添加するのみで同様の効果が得られる。
生成されたα,α−トレハロースを含む反応液は、公知の方法に従い精製することができる。例えば、得られた反応液をイオン交換樹脂により脱塩し、活性炭、イオン交換樹脂(HSO 3型)、又は陽イオン交換樹脂(Ca型)等を分離剤とするクロマトグラフィーによって目的の糖画分を分離し、又は更に続いて濃縮し、結晶化することにより、高純度のα,α−トレハロースを得ることができる。
新規アミラーゼをコードする遺伝子
本発明によれば更に上記の新規アミラーゼをコードする遺伝子が提供される。
本発明による新規アミラーゼをコードしている遺伝子を含むDNA断片の具体例としては、図34または図38に示される制限酵素地図で表されるDNA断片が挙げられる。
このDNA断片は、Sulfolobales目に属する古細菌から得ることが出来、好ましくはSulfolobus属に属する古細菌、より好ましくは後記するSulfolobus solfataricus KM1株、またはSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株から単離することが出来る。Sulfolobus solfataricus KM1株、およびSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株からのその好ましい単離法については、後記する実施例において詳細に説明されている。
このDNA断片を取得可能と思われる起源の具体例としては、さらにSulfolobus solfataricus DSM5354株、DSM5833株、ATCC35091株、ATCC35092株 Sulfolobus acidocaldarius ATCC49426株 Sulfolobus shibatae DSM5389株 Acidianus brierleyi DSM1651株等を挙げることができる。これらの古細菌が、本発明によるDNA断片の起源となりうることは、後記する実施例II−24のハイブリダイゼーション試験において、Sulfolobus solfataricus KM1株 およびSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株由来の新規アミラーゼ遺伝子が、これら古細菌の染色体DNAとハイブリッドを形成すること、さらには、上記したように酵素自体の性質も酷似していることを示していることからも明らかである。更にこの実施例の結果は、本発明による新規アミラーゼ遺伝子が、Sulfolobales目に属する古細菌に特異的に高度に保存されていることを示しているといえる。
本発明の好ましい態様によれば、本発明による新規アミラーゼをコードしている遺伝子の好ましい具体例として、配列番号6または8に示されるアミノ酸配列をコードするDNA配列を含んでなるDNA断片が提供される。さらに、配列番号6に示されるアミノ酸配列をコードするDNA配列の好ましい具体例としては、配列番号5に示される塩基配列の642番から2315番までの塩基配列が、また配列番号8のアミノ酸配列をコードするDNA断片の好ましい具体例として配列番号7に示される塩基配列の1176番から2843番が挙げられる。
一般に、タンパク質のアミノ酸配列が与えられれば、それをコードする塩基配列は、いわゆるコドン表を参照して容易に定まる。よって配列番号6または8に示されるアミノ酸配列をコードする種々の塩基配列を適宜選択することが可能である。従って、本発明において「配列番号6に示されるアミノ酸配列をコードするDNA配列」とは、配列番号5に示される塩基配列の642番から2315番の配列を有するもの、およびその縮重関係にあるコドンが使用されている以外は同一の塩基配列を有しかつ配列番号6に示されるアミノ酸をコードする塩基配列をも意味するものとする。また「配列番号8に示されるアミノ酸配列をコードするDNA配列」とは、配列番号7に示される塩基配列の1176番から2843番の配列を有するもの、およびその縮重関係にあるコドンが使用されている以外は同一の塩基配列を有しかつ配列番号8に示されるアミノ酸をコードする塩基配列をも意味するものとする。
さらに、後記するように本発明による新規アミラーゼには、配列番号6または8に示されるアミノ酸配列の等価配列をも包含するものである。従って、本発明によるDNA断片には、さらにこの等価配列をコードする塩基配列も包含される。
そしてさらに、本発明による新規アミラーゼには、配列番号6に示されるアミノ酸配列のN末端に更にMetが付加した配列が包含される。よって、本発明による新規アミラーゼを含むDNA断片には、配列番号5に示される塩基配列の639番から2315番の配列を有するものが包含される。
なお、配列番号5および7に示される塩基配列と相同性を有する配列の存在について、塩基配列データバンク(EMBL)を通じて、配列解析ソフトジェネティックス(ソフトウエア開発)を用いて調べた結果、そのような配列は存在しないことを本発明者らは確認している。
本発明による配列番号5に示される塩基配列の639番または642番から2315番の配列を有するDNA断片、または配列番号7に示される塩基配列の1176番から2843番の配列を有するDNA断片は塩基配列が定まっていることから、そのDNA断片を取得する一つの手段は核酸合成の手法に従って製造することである。
またこの配列は、前記したSulfolobales目に属する古細菌、好ましくはSulfolobus solfataricus KM1株、またはSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株から遺伝子工学的な手法を用いて得ることが出来る。例えば、Molecular Cloing:A Laboratory Manual(Sambrook,Maniatisら、Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989))などに記載の手法で好ましく行うことができる。具体的な方法は、後記する実施例に詳細に説明されている。
組換え新規アミラーゼ
上記の通り、新規アミラーゼの遺伝子が提供されたことから、本発明によれば、この遺伝子の発現産物である組換え新規アミラーゼが提供される。
本発明による組換え新規アミラーゼの好ましい具体例としては、図34または図38に示される制限酵素地図で表されるDNA断片の発現産物が挙げられる。
更に、好ましい具体例としては、配列表の配列番号6または8に示されるアミノ酸配列またはその等価配列を含んでなるポリペプチドが挙げられる。ここで、「その等価配列」とは、配列番号6または8に示されるアミノ酸配列において、いくつかのアミノ酸の挿入、置換、または欠失、若しくは両末端への付加がなされたものであって、かつその上記した新規アミラーゼ活性を依然として保持するものをいうものとする。その等価配列における新規アミラーゼ活性の保持とは、その活性を利用した実際の使用態様において、配列番号6または8に示される配列を全て有するポリペプチドと、同一の条件でほぼ同様の利用が可能な程度の活性が維持されていることをいうものとする。このような「等価配列」は具体的に実施例II−23においてSulfolobus solfataricus KM1株とSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株の2株の間で、新規アミラーゼの相同性がアミノ酸配列レベルでギャップを考慮して計算した場合59%であっても、同一の活性が保持されていることからも、配列番号6または8に示される配列を参照すれば、当業者であれば格別の困難性なしに選択し、製造可能であることは明らかである。
さらに、本発明の別の態様によれば、この配列番号6に示されるアミノ酸配列のN末端にMetが更に付加されたアミノ酸配列が更に提供される。本発明による新規アミラーゼはその天然型において配列番号6に示される配列を有していた。しかしながら、後記するように単離されたその遺伝子情報から、その配列を利用して遺伝子組換えの手法により新規アミラーゼを得た場合、配列番号6のアミノ酸配列のN末端に更にMetが付加したものが得られることがわかる。更にこの配列が新規アミラーゼ活性を有することは明らかであり、よって、このMetが付加したアミノ酸配列も本願発明に包含される。
後記する実施例II−24において明らかにされているように、配列番号7に示される1393番から2116番までの配列を有するDNA断片が、このDNA断片の起源であるSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株またはSulfolobus solfataricus KM1株以外の他の菌株由来のDNA断片とハイブリッドを形成している。一方、上記したように、これらの菌株から性質の酷似した新規アミラーゼの存在を今般確認した。また後記する実施例II−23において明らかにされるように、Sulfolobus solfataricus KM1株とSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株の2株の間で、新規アミラーゼのアミノ酸配列の相同性はギャップを考慮して計算した場合59%である。従って、配列番号6または8に示されるアミノ酸配列とある程度の相同性ある配列において、新規アミラーゼ活性が保持されうることは当業者に明らかであるといえる。
なお、配列番号6および8に示されるアミノ酸配列と相同性を有する配列の存在について、アミノ酸配列データバンク(Swiss prot、およびNBRF-PFB)を通じて、配列解析ソフトジェネティックス(ソフトウエア開発)を用いて調べた結果、そのような配列は存在しないことを本発明者らは確認している。
新規アミラーゼをコードする遺伝子の発現
本発明による新規アミラーゼをコードするDNA断片を、宿主細胞内で複製可能でかつ同遺伝子が発現可能な状態で含むDNA分子、特に発現ベクター、の形態として宿主細胞の形質転換を行えば、宿主細胞において本発明による新規アミラーゼを産生させることができる。
従って、本発明によれば、さらに本発明による新規アミラーゼをコードする遺伝子を含んだDNA分子、特に発現ベクター、が提供される。このDNA分子は、ベクター分子に本発明による新規アミラーゼをコードするDNA断片を組み込むことによって得ることが出来る。本発明の好ましい態様によれば、このベクターはプラスミドである。
この本発明によるDNA分子の作成は前掲のMolecular Cloing:A Laboratory Manualに記載の方法に準じて行うことができる。
本発明において利用されるベクターは、使用する宿主細胞の種類を勘案しながら、ウイルス、プラスミド、コスミドベクターなどから適宜選択することができる。例えば、宿主細胞が大腸菌の場合はλファージ系のバクテリオファージ、pBR、pUC系のプラスミド、枯草菌の場合はpUB系のプラスミド、酵母の場合はYEp、YCp系のベクターが挙げられる。
このプラスミドは形質転換体の選択マーカーを含むのが好ましく、選択マーカーとしては薬剤耐性マーカー、栄養要求マーカー遺伝子を使用することができる。
さらに、本発明による発現ベクターとしてのDNA分子は、新規アミラーゼ遺伝子の発現に必要なDNA配列、例えばプロモーター、転写開始信号、リボゾーム結合部位、翻訳停止シグナル、転写終結信号などの転写調節信号、翻訳調節信号などを有しているのが好ましい。
プロモーターとしては、挿入断片に含まれる宿主中でも機能するこどができるプロモーターはもちろんのこと、大腸菌においてはラクトースオペロン(lac)、トリプトファンオペロン(trp)等のプロモーター、酵母ではアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(ADH)、酸性フォスファターゼ遺伝子(PHO)、ガラクトース遺伝子(GAL)、グリセロアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(GPD)等のプロモーターが好ましく用いることができるものとして挙げられる。
ここで、配列番号5に示される塩基配列の1番から2691番までの塩基配列および配列番号7に示される塩基配列の1番から3600番までの塩基配列は大腸菌において新規アミラーゼを効率よく発現させる。よって、この配列番号5および7に示される塩基配列は、少なくとも大腸菌における発現に必要な配列を含んでいると思われることから、この配列をそのまま利用するのも好ましい。
また、宿主細胞が枯草菌、酵母の場合には、分泌型ベクターを使用して、菌体外に新規アミラーゼを分泌することも有利である。
宿主細胞としては、大腸菌の他に、枯草菌、酵母、高等真核生物を用いることができる。枯草菌としては例えばBacilus属に属する微生物を用いることが好ましい。該属には、タンパク質を多く菌体外へ分泌する株が存在することが知られている。従って、分泌型ベクターを用いることにより、培養液中に多量の組換え新規アミラーゼを分泌させることが出来る。さらに培養上清からの精製も容易となるので好ましい。また、該属には菌体外にプロテアーゼをほとんど分泌しない株も知られており、このような株を用いることにより、本発明による組換え新規アミラーゼを効率よく生産することが出来るので好ましい。また、宿主細胞としてグルコアミラーゼを産生しない生物を選択すると、菌体抽出液、または簡単な精製を行った粗酵素の状態で本発明による組換え新規アミラーゼを得て、それをそのまま後記するα,α-トレハロースの製造に用いることができるので、極めて有利である。
前記した形質転換体の産生する組換え新規アミラーゼは、次のようにして得ることが出来る。まず上記の宿主細胞を適切な条件下で培養し、得られた培養物から公知の方法、例えば遠心分離により菌体を得て、これを適切な緩衝液中に懸濁し、凍結融解、超音波処理、磨砕等により菌体を破砕し、遠心分離またはろ過により組換え新規アミラーゼを含有する菌体抽出物を得る。
この菌体抽出物に存在する組換え新規アミラーゼの精製には、公知の分離、精製法を適当に組み合わせて行うことができる。例えば、熱処理のような耐熱性の差を利用する方法、塩沈澱および溶媒沈澱のような溶解性の差を利用する方法、透析、限外ろ過、ゲルろ過およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動のような分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーのような電荷の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーのような特異的親和性を利用する方法、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーのような疎水性の差を利用する方法、更に等電点電気泳動のような等電点の差を利用する方法等が挙げられる。この組換え新規アミラーゼは耐熱性を有するため、熱処理により宿主のタンパク質を変性させることにより、これを沈澱として除去できるため、精製を非常に簡単に行うことができる。
組換え体を用いたα,α-トレハロースの製造
本発明によれば、上記の組換え新規アミラーゼと、前記した組換え新規トランスフェラーゼを用いた、α,α-トレハロースの製造法が提供される。
α,α-トレハロースの製造法の好ましい態様によれば、本発明による組換え新規アミラーゼと、組換え新規トランスフェラーゼは同時にデンプン、デンプン分解物、マルトオリゴ糖等の糖と、混合され、接触されてよい。また、組換え新規トランフェラーゼ及び組換え新規アミラーゼのいずれか一方を天然由来の酵素に置き換えることも好ましい。
デンプン、デンプン分解物、マルトオリゴ糖等の糖の使用濃度は、用いる糖が溶解されうる範囲であれば、本酵素の比活性、反応温度等を考慮して適宜選択されて良いが、0.5〜70%の範囲とするのが一般的であり、好ましくは5〜40%の範囲である。糖と酵素との反応における反応温度及びpH条件は本発明による組換え新規アミラーゼ、および組換え新規トランスフェラーゼの最適条件で行うことが好ましい。よって50〜85℃程度、pH3.5〜8程度が一般的であり、好ましくは60〜75℃、pH4.5〜6.0の範囲である。
また高重合度のデンプン、デンプン分解物等の糖においては、補助的にエンド型液化アミラーゼ、枝切り酵素を用いることによりα,α-トレハロースの生成を促進させることができる。このようなエンド型液化アミラーゼとしては、例えば、Bacillus属等のバクテリア、Aspergillus属等のかび、麦芽等の植物由来の酵素等が利用できる。また枝切り酵素については例えばBacillus属、Klebsiella属等バクテリア由来のプルラナーゼ、Pseudomonas属由来のイソアミラーゼ等が利用できる。更にこれらの酵素を組み合わせて使用することも可能である。
ただし、過剰量のエンド型液化アミラーゼの添加は新規トランスフェラーゼによって利用されないグルコース、マルトースを生成する。またプルラナーゼにおいても同様に過剰量の添加はα-1,6結合の切断による基質の溶解度の低下を引き起こし利用されない高粘度の不溶物を生じる。よってこの際に用いるエンド型液化アミラーゼおよびプルラナーゼの量は過剰のグルコース、マルトース、または不溶物を生成しないよう調節されるのが好ましい。
また、プルラナーゼを用いる場合は、基質をあらかじめプルラナーゼにて前処理する方法、またはα,α-トレハロースの生成反応に際していずれかの段階で組換え新規アミラーゼおよび新規トランスフェラーゼとを共存させて用いる方法のいずれであってもよい。
生成されたα,α-トレハロースは、反応液を公知の方法に従い精製することによって得ることが出来る。例えば、得られた反応液をイオン交換樹脂により脱塩し、活性炭、イオン交換樹脂(HSO3型)、または陽イオン交換樹脂(Ca型)等を分離剤とするクロマトグラフィーによって目的の糖画分を分離し、または更に続いて濃縮し、結晶化させることにより、高純度のα,α-トレハロースを得ることができる。
以下に、具体的な実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例に制限されないことは言うまでもない。
実施例I−1 古細菌のグルコシルトレハロース生成活性
下記の第3表に示す菌株についてグルコシルトレハロース生成活性を調べた。方法としては、各菌株の培養菌体を超音波破砕処理、遠心分離を行い、その上清に基質であるマルトトリオースを最終的に10%となるように加え、60℃で24時間反応後、100℃で5分間加熱処理して反応を停止させた後、生成したグルコシルトレハロースを、以下に示す条件のHPLC分析法により測定した。
カラム: TOSOH TSK-gel Amide-80(4.6×250mm)
溶媒 : 75%アセトニトリル
流速 : 1.0ml/min
温度 : 室温
検出器: 示差屈折計
酵素活性は、マルトトリオースを1時間に1μmolのグルコシルトレハロースに変換する酵素活性を1ユニットとして示した。但し、第3表においては菌体g当りの活性として示した。
そのHPLCチャートは図1(B)に示す通りである。図に示すように、主反応物はHPLCチャート上ではアノマーのない一本のピークとして、未反応基質よりやや遅れて現れた。なお、この主生成物をTSK-gel amide-80 HPLC columnにて分取し、1H−NMR、13C−NMRにより解析の結果、グルコシルトレハロースであることを確認した。化学式は以下の通りである。
Figure 0004033897
その結果、Sulfolobales目に属する菌株の細胞抽出液はグルコシルトレハロース生成活性、即ち、本酵素トランスフェラーゼ活性を有することがわかった。
Figure 0004033897
実施例I−2 Sulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素トランスフェラーゼの精製
Sulfolobus solfataricus KM1株を、2g/リットルの可溶性デンプン及び2g/リットルの酵母エキスを含むAmerican Type Culture Collection(ATCC)発行Catalogue of Bacteria and Phages 18版(1992)に記載の培地番号1304の培地で75℃、3日間培養した。遠心分離により集菌し、−80℃にて保存した。菌体の収率は3.3g/リットルであった。
上記のようにして得られた菌体200gを5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)400mlに懸濁し、0℃で15分間、超音波破砕処理により溶菌し、次に遠心分離を行い上清溶液を得た。これに硫安を60%飽和となるように加えた。
遠心分離して得られた沈澱を1Mの硫安、5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)に溶解し、同緩衝液にて平衡化した疎水クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel Phenyl-TOYOPEARL 650S 800ml)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、次に600mlの1M〜0M硫安の線状勾配で標的トランスフェラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
次いで同緩衝液にて平衡化したイオン交換クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel DEAE-TOYOPEARL 650S 300ml)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、引き続き900mlの0M〜0.3M食塩の線状勾配で標的トランスフェラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き0.15Mの食塩、5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
次に脱塩濃縮液をゲル濾過クロマトグラフィー(カラム:Pharmacia HiLoad 16/60 Superdex 200pg)に載せ、同緩衝液にて標的トランスフェラーゼを溶出した。活性画分をを限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
次に脱塩濃縮液に1Mとなるよう硫安を溶解し、同緩衝液にて平衡化した疎水クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel Phenyl-5PW HPLC)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、次いで30mlの1M〜0M硫安の線状勾配で標的トランスフェラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)にて洗浄、脱塩した。
次に同緩衝液にて平衡化したイオン交換クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel DEAE 5PW HPLC)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、次いで30mlの0M〜0.3M食塩の線状勾配で標的トランスフェラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮した。
最終的にネイティブポリアクリルアミドゲル、SDSポリアクリルアミドゲル、及び等電点電気泳動にて単一バンドを示す精製酵素を得た。
なお、活性測定は、実施例I−1と同様に行った。
各精製ステップにおける総酵素活性、総蛋白量、比活性を以下の第4表に示す。
Figure 0004033897
実施例I−3 Sulfolobus solfataricus DSM5833株由来の本酵素トランスフェラーゼの精製
Sulfolobus solfataricus DSM5833株を、2g/リットルの可溶性デンプン及び2g/リットルの酵母エキスを含むAmerican Type Culture Collection(ATCC)発行Catalogue of Bacteria and Phages 18版(1992)に記載の培地番号1304の培地で75℃、3日間培養した。遠心分離により集菌し、−80℃にて保存した。菌体の収率は1.7g/リットルであった。
上記のようにして得られた菌体56gを5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)100mlに懸濁し、0℃で15分間、超音波破砕処理により溶菌し、次に遠心分離を行い上清溶液を得た。
次に上清溶液に1Mとなるよう硫安を溶解し、1Mの硫安、5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて平衡化した疎水クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel Phenyl-TOYOPEARL 650S 200ml)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、次いで600mlの1M〜0M硫安の線状勾配で標的トランスフェラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)にて洗浄、脱塩した。
次に同緩衝液にて平衡化したイオン交換クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel DEAE-TOYOPEARL 650S 300ml)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、次いで900mlの0M〜0.3M食塩の線状勾配で標的トランスフェラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
次に脱塩濃縮液に1Mとなるよう硫安を溶解し、同緩衝液にて平衡化した疎水クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel Phenyl-TOYOPEARL 650S 200ml)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、次いで600mlの1M〜0M硫安の線状勾配で標的トランスフェラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き0.15Mの食塩、5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
次に脱塩濃縮液をゲル濾過クロマトグラフィー(カラム:Pharmacia HiLoad 16/60 Superdex 200pg)に載せ、同緩衝液にて標的トランスフェラーゼを溶出した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き25mM ビス-トリスHCl緩衝液(pH6.7)にて透析した。
次に同緩衝液にて平衡化したクロマトフォーカシング(カラム:ファルマシアMono P HR/5/20)に通した。サンプルを注入後、直ちに10%ポリバッファー74HCl(pH5.0ファルマシア社製)にて標的トランスフェラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き25mM ビス-トリスHCl緩衝液(pH6.7)にて透析した。
さらに同様の条件にてクロマトフォーカシングを行い、標的トランスフェラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
最終的にネイティブポリアクリルアミドゲル、SDSポリアクリルアミドゲル、及び等電点電気泳動にて単一バンドを示す精製酵素を得た。
なお、活性測定は、実施例I−1と同様に行った。
各精製ステップにおける総酵素活性、総蛋白量、比活性を以下の第5表に示す。
Figure 0004033897
実施例I−4 Sulfolobus acidocaldarius ATCC 33909株由来の本酵素トランスフェラーゼの精製
Sulfolobus acidocaldarius ATCC 33909株を、2g/リットルの可溶性デンプン及び2g/リットルの酵母エキスを含むAmerican Type Culture Collection(ATCC)発行 Catalogue of Bacteria and Phages 18版(1992)に記載の培地番号1304の培地(pH3.0)で75℃、3日間培養した。遠心分離により集菌し、−80℃にて保存した。菌体の収率は2.9g/リットルであった。
上記のようにして得られた菌体92.5gを5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)200mlに懸濁し、0℃で15分間、超音波破砕処理により溶菌し、次いで遠心分離を行い上清溶液を得た。
次に上清溶液に1Mとなるよう硫安を溶解し、1Mの硫安、5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて平衡化した疎水クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel Phenyl-TOYOPEARL 650S 400ml)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、次いで600mlの1M〜0M硫安の線状勾配で標的トランスフェラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)にて洗浄、脱塩した。
次に同緩衝液にて平衡化したイオン交換クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel DEAE-TOYOPEARL 650S 300ml)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、次いで900mlの0M〜0.3M食塩の線状勾配で標的トランスフェラーゼを溶離した。活性画分を限外憾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
次に脱塩濃縮液に1Mとなるよう硫安を溶解し、同緩衝液にて平衡化した疎水クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel Phenyl-TOYOPEARL 650S 200ml)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、次いで600mlの1M〜0M硫安の線状勾配で標的トランスフェラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き0.15Mの食塩、5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
次に脱塩濃縮液をゲル濾過クロマトグラフィー(カラム:Pharmacia HiLoad 16/60 Superdex 200pg)に載せ、同緩衝液にて標的トランスフェラーゼを溶出した。活性画分をを限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き25mM ビス-トリスHCl緩衝液(pH6.7)にて透析した。
次に同緩衝液にて平衡化したクロマトフォーカシング(カラム:ファルマシアMono P HR/5/20)に通した。サンプルを注入後、直ちに10%ポリバッファー74HCl(pH5.0 ファルマシア社製)にて標的トランスフェラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き25mM ビス-トリスHCl緩衝液(pH6.7)にて透析した。
さらに同様の条件にてクロマトフォーカシングを行い、標的トランスフェラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
最終的にネイティブポリアクリルアミドゲル、SDSポリアクリルアミドゲル、及び等電点電気泳動にて単一バンドを示す精製酵素を得た。
なお、活性測定は、実施例I−1と同様に行った。
各精製ステップにおける総酵素活性、総蛋白量、比活性を以下の第6表に示す。
Figure 0004033897
実施例I−5 Acidianus brierleyi DSM 1651株由来の本酵素トランスフェラーゼの精製
Acidianus brierleyi DSM 1651株を、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSM)発行Catalogueof Strains 5版(1993)に記載の培地番号150の培地で70℃、3日間培養した。遠心分離により集菌し、−80℃にて保存した。菌体の収率は0.6g/リットルであった。
上記のようにして得られた菌体12gを5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)120mlに懸濁し、0℃で15分間、超音波破砕処理により溶菌し、次いで遠心分離を行い上清溶液を得た。
次に上清溶液に1Mとなるよう硫安を溶解し、1Mの硫安、5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて平衡化した疎水クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel Phenyl-TOYOPEARL 650S 200ml)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、次いで600mlの1M〜0M硫安の線状勾配で標的トランスフェラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)にて洗浄、脱塩した。
次に同緩衝液にて平衡化したイオン交換クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel DEAE-TOYOPEARL 650S 300ml)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、次いで900mlの0M〜0.3M食塩の線状勾配で標的トランスフェラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き0.15Mの食塩、5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
次に脱塩濃縮液をゲル濾過クロマトグラフィー(カラム:Pharmacia HiLoad 16/60 Superdex 200pg)に載せ、同緩衝液にて標的トランスフェラーゼを溶出した。活性画分をを限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き25mM ビス-トリスHCl緩衝液(pH6.7)にて透析した。
次に同緩衝液にて平衡化したクロマトフォーカシング(カラム:ファルマシアMono P HR5/20)に通した。サンプルを注入後、直ちに10%ポリバッファー74HCl(pH5.0 ファルマシア社製)にて標的トランスフェラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
最終的にネイティブポリアクリルアミドゲル、SDSポリアクリルアミドゲル、及び等電点電気泳動にて単一バンドを示す精製酵素を得た。
なお、活性測定は、実施例I−1と同様に行った。
各精製ステップにおける総酵素活性、総蛋白量、比活性を以下の第7表に示す。
Figure 0004033897
実施例I−6 本酵素トランスフェラーゼの諸性質の検討
実施例I−2で得られた精製酵素の酵素学的諸性質を測定した。
(1)分子量
ネイティブな状態での精製酵素の分子量測定は、ゲル濾過クロマトグラフィー(カラム:Pharmacia HiLoad 16/60 Superdex 200pg)により行った。マーカータンパク質として分子量200,000;97,400;68,000;43,000;29,000;18,400;14,300のものを用いた。
その結果、該トランスフェラーゼの分子量は54,000であった。
ゲル濃度6%のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により分子量測定を行った。マーカータンパク質として分子量200,000;116,300;97,400;66,300;55,400;36,500;31,000;21,500;14,400のものを用いた。
その結果、該トランスフェラーゼの分子量は76,000であった。
ゲル濾過クロマトグラフィーとSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量の測定値に相違が見られたが、これは多分、ゲル濾過カラムの充填剤とタンパク質との間に何らかの相互作用が働くためではないかと考えられる。よって、ゲル濾過による分子量の値は本酵素のネイティブな状態での分子量を示しているとは必ずしもいえない。
(2)等電点
アガロースゲル等電点電気泳動の結果、等電点は6.1であった。
(3)安定性
得られた精製酵素の各温度、各pHにおける安定性を、それぞれ図2、図3に示す。測定は、pH3〜5の間はグリシン塩酸系緩衝液を、pH4〜6の間は酢酸ナトリウム系緩衝液を、pH5〜8の間は燐酸ナトリウム系緩衝液を、pH8〜9の間はトリス塩酸系緩衝液を、pH9〜10の間は炭酸水素ナトリウム系緩衝液を、pH11〜13の間はKCl−NaOH系緩衝液をそれぞれ用いた。
本酵素は85℃で6時間の処理で安定であり、またpH4.0〜10.0の室温6時間の処理で安定であった。
(4)反応性
得られた精製酵素の各温度、各pHにおける反応性を、それぞれ図4、図5に示す。測定は、pH3〜5の間はグリシン塩酸系緩衝液(□)を、pH4〜5.5の間は酢酸ナトリウム系緩衝液(●)を、pH5〜7.5の間は燐酸ナトリウム系緩衝液(△)を、pH8〜9の間はトリス塩酸系緩衝液(◇)をそれぞれ用いた。本酵素は60〜80℃付近に反応最適温度、pH5.0〜6.0付近に反応最適pHを有する。
(5)各種活性化剤、阻害剤の影響
実施例I−1のグルコシルトレハロース生成活性の測定法において以下の第8表に示す物質を基質と共に添加し、それぞれの場合の活性測定を実施例I−1と同様に行い、活性化又は阻害の有無を調べた。その結果、銅イオン、SDSにて阻害を受けることがわかった。糖関連酵素ではカルシウムイオンによって活性化される場合が多く認められるが、本酵素ではカルシウムイオンによっては活性化されない。
Figure 0004033897
(6)基質特異性
本精製酵素を以下の第9表に示す基質に作用させて、α−1,α−1転移体の生成の有無を調べた。なお、活性測定は実施例I−1と同様に行った。
Figure 0004033897
その結果、本精製酵素に関しては、マルトトリオース、(G3)〜マルトヘプタオース(G7)からトレハロースオリゴ糖の生成が確認された。また、α−1,6結合を還元末端から1つ目〜4つ目、又は2つ目に有するイソマルトトリオース、イソマルトテトラオース、イソマルトペンタオース、パノースに対してはいずれも反応しなかった。
なお、実施例I−3〜I−5で得たSulfolobus solfataricusDSM 5833株、Sulfolobus acidocaldarius ATCC 33909株、Acidianus brierleyi DSM 1651株由来の各精製酵素についても同様の方法により酵素学的性質を調べ、その結果を前記した第1表に示した。
実施例I−7 マルトオリゴ糖からのグルコシルトレハロース及びマルトオリゴシルトレハロースの製造
基質を100mMのマルトトリオース(G3)〜マルトヘプタオース(G7)とし、実施例I−2で得られた精製酵素13.5Units/ml(マルトトリオースを基質として作用させたときの酵素活性)をそれぞれ作用させ、対応するα−1,α−1転移体を生成させた。各生成物の分析法は実施例I−1の方法により行い、その収率及び酵素活性を調べた。なお、第10表中での酵素活性は、各マルトオリゴ糖を1時間に1μmolの対応するα−1,α−1転移体に変換する酵素活性を1ユニットとして示した。結果は以下の第10表に示した通りである。
Figure 0004033897
表の結果より、基質はG5の時、最も活性が高く、G3のおよそ8倍を示した。また、収率はG3の場合44.6%であるが、G4以上では63.5〜73.1%であった。
また、G3、G4、及びG5を基質として得られた反応生成物の組成を調べたところその結果は、それぞれ図6〜8に示した通りであった。
すなわち、マルトトリオースを基質として用いた場合、主反応であるグルコシルトレハロースの生成とともに、副反応として等モルずつのマルトース及びグルコースが生成された。
マルトテトラオース以上の重合度nを持つ糖を基質として用いた場合では、主反応としてまず還元末端のグルコース単位がα−1,α−1結合した重合度nの糖が生成され、同様に副反応として等モルずつの重合度(n−1)糖及びグルコースが生成された。さらにこれらの糖の反応が進むと、二次的に、重合度(n−1)糖から同様の反応が進んだ(なお、図7、8において3糖又は4糖と示した糖にはそれぞれ、未反応のマルトトリオース又はマルトテトラオースと、二次的に同様の反応が進み、その末端がα−1,α−1結合した糖が含まれている)。また、重合度(n+1)以上の糖、すなわち分子間の転移体の生成は認められなかった。なお、副反応である加水分解は鎖長がG4以上になると少なくなることが認められた。
これらの主反応物の例として、基質G3、G4、及びG5からの主生成物である3糖、4糖、及び5糖をTSK-gel amide-80 HPLC columnにて分取し、1H−NMR、13C−NMRにより解析を行った。その結果、いずれも還元末端のグルコース残基1個がα−1,α−1で結合した構造を示し、それぞれグルコシルトレハロース(α−D−マルトシル α−D−グルコピラノシド)、マルトシルトレハロース(α−D−マルトトリオシル α−D−グルコピラノシド)、及びマルトトリオシルトレハロース(α−D−マルトテトラオシル α−D−グルコピラノシド)であることを確認した。これらの化学式はそれぞれ以下の通りである。
Figure 0004033897
以上の結果から、本発明の酵素はグルコースがα−1,4で結合したマルトトリオース以上のグルコースポリマーの還元末端を、転移によりα−1,α−1で結合させる活性を有する酵素であると結論される。また、副反応として、糖転移酵素によく観察されるように、水分子を受容体として加水分解反応し、還元末端側の結合1個を切断してグルコース1分子を遊離することもわかった。
実施例I−8 マルトオリゴ糖混合物からのグルコシルトレハロース、マルトオリゴシルトレハロースの製造
実施例I−2で得られた精製酵素10Units/mlを用い、基質を可溶性デンプン(ナカライテスク社製、特級品)のα−アミラーゼ分解物(ヨウ素デンプン反応を示さずオリゴ糖にまで分解されたもの:なおここにおいて用いられたα−アミラーゼは、Sigma社製のA-0273 アスペルギルス・オリゼ由来のもの)とし、グルコシルトレハロース及び各種のマルトオリゴシルトレハロースの製造を試みた。反応液は以下に示す条件下のHPLC分析法により分析を行った。
カラム: BIORAD AMINEX HPX-42A(7.8×300mm)
溶媒 : 水
流速 : 0.6ml/min
温度 : 85℃
検出器: 示差屈折計
図9にそのHPLCによる分析チャートを示した(A)。なお対照として、本酵素トランスフェラーゼを添加しない場合のHPLCチャートを示した(B)。その結果、反応生成物のオリゴ糖類は還元末端がα−1,α−1に転移されるため、対照のアミラーゼのみによる生成物よりも各々保持時間が短いオリゴ糖類を生じた。これらの反応物の例として、実施例I−7の場合と同様に3糖、4糖、及び5糖をそれぞれ分取し、1H−NMR、13C−NMRにより解析を行ったところ、いずれも還元末端のグルコース残基1個がα−1,α−1で結合した構造を示し、それぞれグルコシルトレハロース(α−D−マルトシル α−D−グルコピラノシド)、マルトシルトレハロース(α−D−マルトトリオシル α−D−グルコピラノシド)、及びマルトトリオシルトレハロース(α−D−マルトテトラオシル α−D−グルコピラノシド)であることを確認した。これらの化学式はそれぞれ以下の通りである。
Figure 0004033897
以下の実施例II−1〜II−14(比較例II−1〜II−2及び参考例II−1〜II−4を含む)において用いた下記の試薬或いは原料は、いずれも下記の製造元から入手したものである。
α,α−トレハロース:Sigma社製
可溶性デンプン:ナカライテスク社製、特級品
Klebsiella pneumoniae由来プルラナーゼ:和光純薬製、165-15651
パインデックス#1及びパインデックス#3:松谷化学製
マルトース(G2):和光純薬製
マルトトリオース(G3)、マルトテトラオース(G4)、マルトペンタオース(G5)、マルトヘキサオース(G6)、マルトヘプタオース(G7)、及びアミロース DP−17:林原バイオケミカル製
アミロペクチン:ナカライテスク社製、特級品
イソマルトース:和光純薬製
イソマルトトリオース:和光純薬製
イソマルトテトラオース:生化学工業製
イソマルトペンタオース:生化学工業製
パノース:東京化成工業製
実施例II−1 古細菌のトレハロースオリゴ糖分解活性、及びデンプン液化活性の測定
下記の第11表に示す菌株について活性を調べた。方法としては各菌株の培養菌体を超音波破砕処理、遠心分離を行い、その上清を粗酵素液として、これに基質であるマルトトリオシルトレハロースを最終的に10mMとなるように加え、60℃、pH5.5(50mM酢酸ナトリウム緩衝液)で反応後、100℃で5分間加熱処理して反応を停止させた後、生成したα,α−トレハロースを、以下に示す条件のHPLC分析法により測定した。
カラム: TOSOH TSK-gel Amide-80(4.6×250mm)
溶媒 : 72.5%アセトニトリル
流速 : 1.0ml/min
温度 : 室温
検出器: 示差屈折計
トレハロースオリゴ糖分解活性は、マルトトリオシルトレハロースから1時間に1μmolのα,α−トレハロースを遊離する酵素活性を1Unitとして示した。但し、第11表においては菌体g当りの活性として示した。また、マルトトリオシルトレハロースの調製は、50mM酢酸(pH5.5)を含む10%マルトペンタオースにSulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼを10Units/mlとなるように添加して60℃で24hr反応させた後、上記条件のTSK-gel Amide-80 HPLC columnにより分取することによって行った。なお、Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼの活性は、マルトトリオースを基質としてpH5.5、60℃で1時間に1μmolのグルコシルトレハロースを生成する酵素活性を1Unitと定義する。
そのHPLCチャートは図10に示す通りである。図に示すように、HPLCチャート上ではアノマーのないα,α−トレハロースと同一の保持時間を示すピークと、マルトトリオースと同一の保持時間を示すピークが現れた。なお、はじめの生成物をTSK-gel amide-80 HPLC columnにて分取し、1H−NMR、13C−NMRにより解析の結果、α,α−トレハロースであることを確認した。
また、上記と同じ粗酵素液(上清)を用いて、2%可溶性デンプンを含む100mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)0.5mlに該上清を適宜希釈して0.5ml加え、60℃にて反応を行った。経時的にサンプリングを行い、このサンプルに2倍量の1N塩酸を加えて反応を停止した。次いで2/3倍量の0.01%ヨウ素を含む0.1%ヨウ化カリウム溶液を加え、更に1.8倍量の水を加えた。最後に620nmの吸光を測定し、その経時変化から活性を測定した。
反応後生成する糖の分析は、100℃で5分間処理して反応を停止させた後、以下に示す条件下HPLC分析法により測定した。
カラム: BIO-RAD AMINEX HPX-42A(7.8×300mm)
溶媒 : 水
流速 : 0.6ml/min
温度 : 85℃
検出器: 示差屈折計
デンプン分解活性は、デンプン-ヨウ素複合体の青紫色による620nmの吸光を10分に10%減少させる酵素量を1Unitと定義した。但し、第11表においては菌体g当たりの活性として示した。
Figure 0004033897
Sulfolobus solfataricus KM1株由来の粗酵素液による反応生成物のAMINEX HPX-42A HPLCによる分析結果は図11に示す通りであった。
以上の結果、Sulfolobus属に属する菌株の細胞抽出液はトレハロースオリゴ糖を分解し、α,α−トレハロースを遊離する活性及び、デンプンを加水分解して主に単糖及び2糖を遊離する活性を有することがわかった。
実施例II−2 Sulfolobus solfataricus KM1株由来の本酵素アミラーゼの精製
Sulfolobus solfataricus KM1株を、2g/リットルの可溶性デンプン及び2g/リットルの酵母エキスを含むAmerican Type Culture Collection(ATCC)発行 Catalogue of Bacteria and Phages 18版(1992)に記載の培地番号1304の培地で75℃、3日間培養した。遠心分離により集菌し、−80℃にて保存した。菌体の収率は3.3g/リットルであった。
上記のようにして得られた菌体200gを5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)400mlに懸濁し、0℃で15分間、超音波破砕処理により溶菌し、次いで遠心分離を行い上清溶液を得た。これに硫安を60%飽和となるように加えた。
遠心分離して得られた沈澱を1Mの硫安、5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)に溶解し、同緩衝液にて平衡化した疎水クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel Phenyl-TOYOPEARL 650S 800ml)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、次に600mlの1M〜0M硫安の線状勾配で標的アミラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)にて洗浄、脱塩した。
次に同緩衝液にて平衡化したイオン交換クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel DEAE-TOYOPEARL 650S 300ml)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、引き続き900mlの0M〜0.3M食塩の線状勾配で標的アミラーゼを溶離した。活性画分を限外漉過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き0.15Mの食塩、5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
次に脱塩濃縮液をゲル濾過クロマトグラフィー(カラム:Pharmacia HiLoad 16/60 Superdex 200pg)に載せ、同緩衝液にて標的アミラーゼを溶出した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き25mMビス−トリス塩酸緩衝液(pH6.3)にて洗浄、脱塩した。
次にこの脱塩濃縮液を、同緩衝液にて平衡化したクロマトフォーカシング(カラム:Pharmacia Mono P HR5/20)に載せ、10%Polybuffer 74(Pharmacia製、塩酸にてpH4.0に調製したもの)で標的アミラーゼを溶出した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)にて洗浄、脱塩した。
次にこの脱塩濃縮液に4分の1量のサンプルバッファー(62.5mMトリス塩酸緩衝液(pH6.8)、10%グリセロール、2%SDS、0.0125%ブロモフェノールブルー)を加え、10%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)(装置:BIO-RADプレップセル モデル491)にて標的アミラーゼを溶離した。活性画分を分取し限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
最終的にネイティブポリアクリルアミドゲル、SDSポリアクリルアミドゲル、及び等電点電気泳動にて単一バンドを示す精製酵素を得た。
なお、この精製における活性測定には、基質としてマルトトリオシルトレハロースを用い、その他の方法は実施例II−1において示したTSK-gel Amide-80のHPLC分析法と同様にして行った。
各精製ステップにおける総酵素活性、総蛋白量、比活性を以下の第12表に示す。
Figure 0004033897
実施例II−3 Sulfolobus solfataricus DSM5833株由来の本酵素アミラーゼの精製
Sulfolobus solfataricus DSM5833株を、2g/リットルの可溶性デンプン及び2g/リットルの酵母エキスを含むAmerican Type Culture Collection(ATCC)発行Catalogue of Bacteria and Phages 18版(1992)に記載の培地番号1304の培地で75℃、3日間培養した。遠心分離により集菌し、−80℃にて保存した。菌体の収率は1.2g/リットルであった。
上記のようにして得られた菌体25gを5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)50mlに懸濁し、0℃で15分間、超音波破砕処理により溶菌し、次いで遠心分離を行い上清溶液を得た。
この上清溶液に硫安を1Mとなるように加え、1Mの硫安、5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて平衡化した疎水クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel Phenyl-TOYOPEARL 650S 100ml)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、次いで300mlの1M〜0M硫安の線状勾配で標的アミラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)にて洗浄、脱塩した。
次に同緩衝液にて平衡化したイオン交換クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel DEAE-TOYOPEARL 650S 100ml)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、次いで300mlの0M〜0.3M食塩の線状勾配で標的アミラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き0.15Mの食塩、5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
次に脱塩濃縮液をゲル濾過クロマトグラフィー(カラム:Phamacia HiLoad 16/60 Superdex 200pg)に載せ、同緩衝液にて標的アミラーゼを溶出した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き25mMビス−トリス−イミノジ酢酸緩衝液(pH7.1)にて洗浄、脱塩した。
次にこの脱塩濃縮液を同緩衝液にて平衡化したクロマトフォーカシング(カラム:Pharmacia Mono P HR5/20)に載せ、10%Polybuffer 74(Pharmacia製、イミノジ酢酸にてpH4.0に調製したもの)で標的アミラーゼを溶出した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き25mMビス−トリス−イミノジ酢酸緩衝液(pH7.1)にて洗浄、脱塩した。
次にこの脱塩濃縮液を、同緩衝液にて平衡化したクロマトフォーカシング(カラム:Phamacia Mono P HR5/20)に載せ、10%Polybuffer 74(Pharmacia製、イミノジ酢酸にてpH4.0に調製したもの)で標的アミラーゼを溶出した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き0.15Mの食塩、5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
次に脱塩濃縮液をゲル濾過クロマトグラフィー(カラム:TSK-gel G3000SW HPLC)に載せ、同緩衝液にて標的アミラーゼを溶出した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
最終的にネイティブポリアクリルアミドゲル、SDSポリアクリルアミドゲル、及び等電点電気泳動にて単一バンドを示す精製酵素を得た。
なお、この精製における活性測定には、基質としてマルトトリオシルトレハロースを用い、その他の方法は実施例II−1において示したTSK-gel Amide-80のHPLC分析法と同様にして行った。
各精製ステップにおける総酵素活性、総蛋白量、比活性を以下の第13表に示す。
Figure 0004033897
実施例II−4 Sulfolobus acidocaldarius ATCC33909株由来の本酵素アミラーゼの精製
Sulfolobus acidocaldarius ATCC33909株を、2g/リットルの可溶性デンプン及び2g/リットルの酵母エキスを含むAmerican Type Culture Collection(ATCC)発行 Catalogue of Bacteria and Phages 18版(1992)に記載の培地番号1304の培地で75℃、3日間培養した。遠心分離により集菌し、−80℃にて保存した。菌体の収率は2.7g/リットルであった。
上記のようにして得られた菌体25gを5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)50mlに懸濁し、0℃で15分間、超音波破砕処理により溶菌し、次いで遠心分離を行い上清溶液を得た。
この上清溶液に硫安を1Mとなるように加え、1Mの硫安、5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて平衡化した疎水クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel Phenyl-TOYOPEARL 650S 100ml)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、次いで300mlの1M〜0M硫安の線状勾配で標的アミラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)にて洗浄、脱塩した。
次に同緩衝液にて平衡化したイオン交換クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel DEAE-TOYOPEARL 650S 100ml)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、次いで300mlの0M〜0.3M食塩の線状勾配で標的アミラゼーを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き0.15Mの食塩、5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
次に脱塩濃縮液をゲル濾過クロマトグラフィー(カラム:Pharmacia HiLoad 16/60 Superdex 200pg)に載せ、同緩衝液にて標的アミラーゼを溶出した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
次に脱塩濃縮液に1Mとなるよう硫安を溶解し、同緩衝液にて平衡化した疎水クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel Phenyl-5PW HPLC)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、次に30mlの1M〜0M硫安の線状勾配で標的アミラーゼを溶離した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き25mMビス−トリス−イミノジ酢酸緩衝液(pH7.1)にて洗浄、脱塩した。
次にこの脱塩濃縮液を、同緩衝液にて平衡化したクロマトフォーカシング(カラム:Pharmacia Mono P HR5/20)に載せ、10%Polybuffer 74(Pharmacia製、イミノジ酢酸にてpH4.0に調製したもの)で標的アミラーゼを溶出した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄、脱塩した。
最終的にネイティブポリアクリルアミドゲル、SDSポリアクリルアミドゲル、及び等電点電気泳動にて単一バンドを示す精製酵素を得た。
なお、この精製における活性測定には、基質としてマルトトリオシルトレハロースを用い、その他の方法は実施例II−1において示したTSK-gel Amide-80のHPLC分析法と同様にして行った。
各精製ステップにおける総酵素活性、総蛋白量、比活性を以下の第14表に示す。
Figure 0004033897
実施例II−5 本酵素アミラーゼの諸性質の検討
実施例II−2で得られた精製酵素の酵素学的諸性質を測定した。
(1)分子量
ゲル濃度6%のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により分子量測定を行った。マーカータンパク質として分子量200,000;116,300;97,400;66,300;55,400;36,500;31,000;21,500;14,400のものを用いた。
その結果、該アミラーゼの分子量は61,000であった。
(2)等電点
アガロースゲル等電点電気泳動の結果、等電点は4.8であった。
(3)安定性
得られた精製酵素の各温度、各pHにおける安定性を、それぞれ図12、図13に示す。酵素活性の測定は、実施例II−1においてマルトトリオシルトレハロースを用いた測定法に準じて行ない、pH3〜5の間はグリシン塩酸系緩衝液を、pH4〜6の間は酢酸ナトリウム系緩衝液を、pH5〜8の間は燐酸ナトリウム系緩衝液を、pH8〜9の間はトリス塩酸系緩衝液を、pH9〜10の間は炭酸水素ナトリウム系緩衝液を、pH11〜13.5の間はKCl−NaOH系緩衝液をそれぞれ用いた。
本酵素は85℃で6時間の処理で安定であり、またpH3.5〜10.0の室温6時間の処理で安定であった。
(4)反応性
得られた精製酵素の各温度、各pHにおける反応性を、それぞれ図14、図15に示す。酵素活性の測定は、実施例II−1においてマルトトリオシルトレハロースを用いた測定法に準じて行ない、pH2〜4の間はクエン酸ナトリウム系緩衝液(□)を、pH4〜5.5の間は酢酸ナトリウム系緩衝液(●)を、pH5〜7.5の間は燐酸ナトリウム系緩衝液(△)を、pH8〜9の間はトリス塩酸系緩衝液(◇)をそれぞれ用いた。
本酵素は70〜85℃付近に反応最適温度、pH4.5〜5.5付近に反応最適pHを有する。
(5)各種活性化剤、阻害剤の影響
実施例II−1のマルトトリオシルトレハロース分解活性測定法において以下の第15表に示す物質を基質と共に添加し、それぞれの場合の活性測定を実施例II−1と同様に行い、活性化又は阻害の有無を調べた。その結果、銅イオン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)によって阻害を受けることがわかった。但し、SDSによる阻害については透析、限外濾過などの方法でSDSを除去することにより、酵素活性が回復した。糖関連酵素ではカルシウムイオンによって活性化される場合が多く認められるが、本酵素ではカルシウムイオンによっては活性化されない。
Figure 0004033897
(6)基質特異性
本精製酵素25.0Units/ml(マルトトリオシルトレハロースを基質として作用させたときの酵素活性)を以下の第16表に示す10mMの基質(アミロペクチン、可溶性デンプンについては2.8%)に作用させ、分解性及び分解生成物の分析を行った。各種マルトオリゴ糖、アミロース DP−17、アミロペクチン、可溶性デンプン、各種イソマルトオリゴ糖、及びパノースについては単糖+2糖の生成活性を指標として、また、各種トレハロースオリゴ糖、アミロース DP−17α−1,α−1転移体(アミロース DP−17の還元末端側の、1つ目と2つ目のグルコース残基間の結合がα−1,α−1であるオリゴ糖)についてはα,α−トレハロースの生成活性を指標として、マルトース及びα,α−トレハロースについてはグルコースの生成活性を指標として実施例II−1に示したTSK-gel Amide-80 HPLCによる分析法で分析を行った。
なお、第16表中での酵素活性は、各々単糖及び2糖を1時間に1μmol遊離する酵素活性を1Unitとして示した。
結果は以下の第16表及び図16〜19に示した通りである。
Figure 0004033897
註:グルコシルトレハロース、マルトシルトレハロース、マルトテトラオシルトレハロース、マルトペンタオシルトレハロース及びアミロースDP-17,α-1,α-1転移体は、いずれも実施例II−1におけるマルトトリオシルトレハロースの調製法に準じて製造したものである。
マルトペンタオース、アミロース DP−17、可溶性デンプンからの反応生成物のAMINEX HPX-42A HPLCによる分析結果は、それぞれ図17のA、B、Cに、また、マルトトリオシルトレハロース、マルトペンタオシルトレハロースからの反応生成物のTSK-gel Amide-80 HPLCによる分析結果は、それぞれ図18、図19に示す。
その結果、本精製酵素に関しては、還元末端側のグルコース残基がα−1,α−1結合したマルトトリオシルトレハロース等のトレハロースオリゴ糖に、極めてよく作用し、α,α−トレハロースと重合度が2つ減少した対応するマルトオリゴ糖を生成することが確認された。またマルトース(G2)〜マルトヘプタオース(G7)、アミロース、可溶性デンプンからは、主としてグルコース又はマルトースを遊離することが確認された。しかしながらα−1,α−1結合であるα,α−トレハロースに反応せず、また、すべての結合がα−1,6結合であるイソマルトース、イソマルトトリオース、イソマルトテトラオース及びイソマルトペンタオース、又は、α−1,6結合を還元末端から2つ目に有するパノースに対しても反応しなかった。
(7)エンド型アミラーゼ活性
本精製酵素200Units/ml(マルトトリオシルトレハロースを基質として作用させたときの酵素活性)による、可溶性デンプンに作用させた時のヨウ素発色の消失、及び単糖及び2糖の生成量から求めたデンプン加水分解率の経時変化を、実施例II−1に示したデンプン分解活性測定法、及びAMINEX HPX-42A HPLCによる分析法により分析を行った。
その結果、図20に示した様に、本精製酵素に関してはヨウ素反応呈色度が50%消失した時点での加水分解率は3.7%と低く、従ってエンド型アミラーゼの性質を示すことが確認された。
(8)作用機作の検討
ウリジンジホスホグルコース[グルコース-6-3H]、及びマルトテトラオースにグリコーゲンシンターゼ(ウサギ骨格筋由来、Sigma社製G-2259)を作用させ、非還元末端のグルコース残基を3Hで放射能ラベル化したマルトペンタオースを合成させ、分取精製した。次にこの放射能ラベル化した10mMのマルトペンタオースを基質とし、Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼ10Units/ml(マルトトリオースを基質として作用させたときの酵素活性)を添加し、60℃、3hr作用させ、非還元末端のグルコース残基を3Hで放射能ラベル化したマルトトリオシルトレハロースを合成させ、分取精製した。(なお、この生成物にグルコアミラーゼ(Rhizopus由来、生化学工業製)を作用させ、グルコースとα,α−トレハロースに完全に分解させた。これらを薄層クロマトグラフィーにて分取し、それぞれ液体シンチレーションカウンターで放射能を測定したところ、α,α−トレハロース画分に放射活性は見られず、グルコース画分に放射活性が認められ、よって、非還元末端のグルコース残基が放射能ラベル化されていることを確認した。)
以上のように調製した非還元末端のグルコース残基を3Hで放射能ラベル化したマルトペンタオース、及び非還元末端のグルコース残基を3Hで放射能ラベル化したマルトトリオシルトレハロースを基質として、これらに実施例II−2で得られた精製酵素をそれぞれ50Units/ml及び5Units/ml作用させ、反応前、及び60℃、0.5、1及び3時間後にサンプリングを行った。この反応物を薄層クロマトグラフィー(Kieselgel 60メルク社製、溶媒:ブタノール−エタノール−水=5:5:3)で展開した。得られた各糖に相当するところを分取し、液体シンチレーションカウンターで放射能を測定した。その結果をそれぞれ図21、及び図22に示す。図21、22より明らかなように、マルトペンタオースを基質とした場合、加水分解産物であるグルコース、マルトース画分には放射活性は見られず、マルトテトラオース、マルトトリオース画分に放射活性が認められた。またマルトトリオシルトレハロースを基質とした場合、加水分解産物であるα,α−トレハロース画分には放射活性は見られず、マルトトリオース画分に放射活性が認められた。
よって、本精製酵素の作用機作はエンド型に作用するアミラーゼ活性と共に、還元末端側から主に単糖、2糖を生成する活性を有するものであることがわかった。
なお、実施例II−3、4で得たSulfolobus solfataricus DSM5833株、及びSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株由来の各精製酵素にういても同様の方法により酵素学的諸性質を調べ、その結果を前記した第2表に示した。
比較例II−1 膵臓α−アミラーゼによる各種オリゴ糖の分解性と分解生成物の分析
ブタ膵臓由来α−アミラーゼは、マルトオリゴ糖を還元末端から2糖または3糖単位で加水分解することが知られている(澱粉・関連糖質酵素実験法P135、中村道徳、貝沼圭二、学会出版センター)。そこで、本発明の新規アミラーゼの比較例としてブタ膵臓由来α−アミラーゼ(Sigma社製、A-6255)1Units/ml(デンプンを基質として、pH6.9、20℃において3分間に1mgのマルトースに相当する還元糖を生成する酵素量を1Unitとする)を以下の第17表に示す10mMの基質にpH6.9、20℃にて作用させ、分解性及び分解生成物の分析を行った。酵素活性は2糖+3糖の生成活性を指標として、実施例II−1に示したTSK-gel Amide-80 HPLC分析法で分析を行った。
なお、第17表中での酵素活性は、各オリゴ糖を1時間に1μmol遊離する酵素活性を1Unitとして示した。
結果は以下の第17表及び図23、24に示した通りである。
Figure 0004033897
註:グルコシルトレハロース、マルトシルトレハロース、マルトテトラオシルトレハロース及びマルトペンタオシルトレハロースは、いずれも実施例II−1におけるマルトトリオシルトレハロースの調製法に準じて製造したものである。
マルトペンタオシルトレハロースからの反応生成物のTSK-gel Amide-80 HPLCによる分析結果を図24に示す。
その結果、膵臓アミラーゼはマルトテトラオース(G4)〜マルトヘプタオース(G7)からマルトースあるいはマルトトリオースと重合度が2つまたは3つ減少した対応するマルトオリゴ糖を生成するが、還元末端側のグルコース残基がα−1,α−1結合したグルコシルトレハロース、マルトオリゴシルトレハロース等のトレハロースオリゴ糖からはα,α−トレハロースを遊離しない上、反応性が低いことが確認された。
実施例II−6 可溶性デンプン、及び各種デンプン分解物からのα,α−トレハロースの製造
実施例II−2で得られた本精製酵素150Units/ml、及びSulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼ10Units/mlを用い、基質を、可溶性デンプン(ナカライテスク社製、特級品);デンプン分解物として、Klebsiella pneumoniae由来のプルラナーゼ(和光純薬製)25Units/mlで40℃、1hrの条件の下で予めα−1,6結合を分解しておいた可溶性デンプン;また別のデンプン分解物として、Bacillus amylolichefaciens由来のα-アミラーゼ(ベーリンガーマンハイム社製)12.5Units/mlで30℃、2.5hrの条件の下で予め部分分解しておいた可溶性デンプン;パインデックス#1;パインデックス#3(ともに松谷化学製);G3〜G7マルトオリゴ糖各単独;及びアミロースDP−17(いずれも林原バイオケミカル製)として、それぞれ最終濃度10%、60℃、pH5.5の条件下で約100hr反応させ、用いた酵素の相乗作用を利用したα,α−トレハロースの製造を試みた。
反応液は基質を可溶性デンプンとした場合を例として、実施例II−1に示したAMINEX HPX42A HPLC分析法による分析を行った。
また、未反応の基質をグルコアミラーゼにて分解後、実施例II−1に示したTSK-gel Amide-80 HPLC分析法による分析を行い、生成したα,α−トレハロースの収率を調べた。
なお、本発明の新規アミラーゼの活性は、実施例II−1と同様に、マルトトリオシルトレハロースから1時間に1μmolのα,α−トレハロースを遊離する酵素活性を1Unitとして示した。
Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼの活性は、マルトトリオースを基質としてpH5.5、60℃で1時間に1μmolのグルコシルトレハロースを生成する酵素活性を1Unitとして示した。
プルラナーゼの活性は,プルランを基質としてpH6.0、30℃で1分間に1μmolのマルトトリオースを生成する酵素活性を1Unitとして示した。
その結果は以下の第18表に示した。
Figure 0004033897
可溶性デンプンからの反応生成物のAMINEX HPX42A HPLCによる分析結果は図25に示す。
その結果、可溶性デンプンを基質とした場合、37.0%の収率にてα,α−トレハロースを生成した。また各種デンプン分解物ではプルラナーゼにてα−1,6結合を加水分解した可溶性デンプンを基質とした場合、62.1%、全ての結合がα−1,4結合である各種マルトオリゴ糖、及びアミロース DP−17ではそれぞれ36.4〜67.1%、及び83.5%であった。これらの結果は、α−1,4結合の直鎖が長い基質を用いるほど最終製品のα,α−トレハロースの収率が高いことを示している。
実施例II−7 可溶性デンプンからの各種酵素濃度におけるα,α−トレハロースの製造
実施例II−2で得られた本精製酵素、及びSulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼを用い、基質を、Klebsiella pneumoniae由来のプルラナーゼ(和光純薬製)25Units/mlで40℃、1hrの条件下で前処理した可溶性デンプンとし、該基質(最終濃度10%)に第19表に示した濃度の酵素をそれぞれ添加して60℃、pH5.5にて約100hr反応させて、これら酵素の相乗作用を利用したα,α−トレハロースの製造を試みた。反応液は未反応の基質をグルコアミラーゼにて分解後、実施例II−1に示したTSK-gel Amide-80 HPLC分析法により分析を行い、生成したα,α−トレハロースの収率を調べた。
なお、本発明の新規アミラーゼの活性は、実施例II−1と同様に、マルトトリオシルトレハロースから1時間に1μmolのα,α−トレハロースを遊離する酵素活性を1Unitとして示した。
Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼの活性は、マルトトリオースを基質としてpH5.5、60℃で1時間に1μmolのグルコシルトレハロースを生成する酵素活性を1Unitとして示した。
プルラナーゼの活性は,プルランを基質としてpH6.0、30℃で1分間に1μmolのマルトトリオースを生成する酵素活性を1Unitとして示した。
その結果は以下の第19表に示した。
Figure 0004033897
表の結果より、α,α−トレハロースの収率は、トランスフェラーゼ20Units/ml、アミラーゼ150Units/mlのとき最大となり、65.1%に達したことがわかる。
比較例II−2 他の生物起源のアミラーゼを用いたα,α−トレハロースの製造
本発明の新規アミラーゼの比較として、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis及びAspergillusoryzae由来のアミラーゼ(それぞれ、生化学工業製100200、Sigma製A-3403、及びA-0273:いずれも60℃にて活性を有する)を用い、Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼとの併用において、基質をKlebsiella pneumoniae由来のプルラナーゼ(和光純薬製)25Units/mlで40℃、1hrの条件下で前処理した可溶性デンプン(最終濃度10%)として、該基質に、第20表に示した濃度の酵素をそれぞれ添加し、60℃、pH5.5にて約100hr反応させ、これら酵素の相乗作用を利用したα,α−トレハロースの製造を試みた。反応液は未反応の基質をグルコアミラーゼにて分解後、実施例II−1に示したTSK-gel Amide-80 HPLC分析法により分析を行い、生成したα,α−トレハロースの収率を調べた。
なお、アミラーゼの酵素活性は、実施例II−1と同様の条件にて反応させて、デンプン-ヨウ素複合体の青紫色による620nmの吸光を10分間に10%減少させる酵素量を1Unitとして示した。
Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼの活性は、マルトトリオースを基質としてpH5.5、60℃で1時間に1μmolのグルコシルトレハロースを生成する酵素活性を1Unitとして示した。
プルラナーゼの活性は,プルランを基質としてpH6.0、30℃で1分間に1μmolのマルトトリオースを生成する酵素活性を1Unitとして示した。
その結果は以下の第20表に示した。
Figure 0004033897
表の結果より、他の生物起源のアミラーゼを用いても、α,α−トレハロースを生成することはできるが、いずれも収率は、本発明の新規酵素を用いた場合よりも低いことがわかった。
実施例II−8 アミロース DP−17からの各種酵素濃度におけるα,α−トレハロースの製造
実施例II−2で得られた本精製酵素、及びSulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼを用い、基質を、アミロース DP−17(林原バイオケミカル製)(最終濃度10%)として、該基質に、第21表に示した濃度の酵素をそれぞれ添加し、60℃、pH5.5にて約100hr反応させ、これら酵素の相乗作用を利用したα,α−トレハロースの製造を試みた。反応液は未反応の基質をグルコアミラーゼにて分解後、実施例II−1に示したTSK-gel Amide-80 HPLC分析法により分析を行い、生成したα,α−トレハロースの収率を調べた。
なお、本発明の新規アミラーゼ活性は、実施例II−1と同様に、マルトトリオシルトレハロースから1時間に1μmolのα,α−トレハロースを遊離する酵素活性を1Unitとして示した。
Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼの活性は、マルトトリオースを基質としてpH5.5、60℃で1時間に1μmolのグルコシルトレハロースを生成する酵素活性を1Unitとして示した。
その結果は以下の第21表に示した。
Figure 0004033897
表の結果より、直鎖状のα−1,4結合からなるアミロース DP−17を基質とした場合にはα,α−トレハロースの収率は、トランスフェラーゼ10Units/ml、アミラーゼ150Units/mlのとき最大となり、83.4%に達したことがわかる。
実施例II−9 各種可溶性デンプン濃度におけるα,α−トレハロースの製造
実施例II−2で得られた本精製酵素、及びSulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼを用い、基質を可溶性デンプンとし、該基質の最終濃度5%、10%、20%、及び30%のものに、第22表に示した濃度の酵素をそれぞれ添加し、60℃、pH5.5にて約100hr反応させ、これらの酵素の相乗作用を利用したα,α−トレハロースの製造を試みた。この際、反応途中、0hrから96hrの間、0hrも含めて12hr毎に合計9回、5Units/mlとなるようプルラナーゼ(Klebsiella pneumoniae由来品、和光純薬製)を添加し、40℃、1hrの条件下で処理した。
反応液は未反応の基質をグルコアミラーゼにて分解後、実施例II−1に示したTSK-gel Amide-80 HPLC分析法により分析を行い、生成したα,α−トレハロースの収率を調べた。
なお、本発明の新規アミラーゼの活性は、実施例II−1と同様に、マルトトリオシルトレハロースから1時間に1μmolのα,α−トレハロースを遊離する酵素活性を1Unitとして示した。
Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼの活性は、マルトトリオースを基質としてpH5.5、60℃で1時間に1μmolのグルコシルトレハロースを生成する酵素活性を1Unitとして示した。
プルラナーゼの活性は,プルランを基質としてpH6.0、30℃で1分間に1μmolのマルトトリオースを生成する酵素活性を1Unitとして示した。
その結果は以下の第22表に示した。
Figure 0004033897
表の結果より、基質の可溶性デンプンの濃度を5〜30%と変化させた場合でも、アミラーゼ及びトランスフェラーゼ濃度を最適条件の下で使用することにより、α,α−トレハロースの収率を、いずれも70%以上とすることができることがわかる。
実施例II−10 各種プルラナーゼ処理を含む可溶性デンプンからのα,α−トレハロースの製造
実施例II−2で得られた本精製酵素、及びSulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼを用い、基質を、可溶性デンプン(最終濃度10%)として、該基質に第23表に示した濃度の酵素をそれぞれ添加し、60℃、pH5.5にて約120hr反応させ、これら酵素の相乗作用を利用したα,α−トレハロースの製造を試みた。この際、反応途中24hr後に1回(a)、48hr後に1回(b)、72hr後に1回(c)、96hr後に1回(d)、24hrから96hrの間、24hr毎に合計4回(e)、0hrから96hrの間、0hrも含めて12hr毎に合計9回(f)、及び0hrから12hrの反応初期段階に、0hrも含めて3hr毎に合計5回、その後は24hrから96hrの間、12hr毎に合計7回(g)の条件の下で表中に示した濃度となるようにプルラナーゼ(Klebsiella pneumoniae由来品)を添加し、いずれの場合にも添加後40℃、1hrの条件の下でプルラナーゼ処理をした。
反応液は未反応の基質をグルコアミラーゼにて分解後、実施例II−1に示したTSK-gel Amide-80 HPLC分析法により分析を行い、生成したα,α−トレハロースの収率を調べた。
なお、本発明の新規アミラーゼの活性は、実施例II−1と同様に、マルトトリオシルトレハロースから1時間に1μmolのα,α−トレハロースを遊離する酵素活性を1Unitとして示した。
Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼの活性は、マルトトリオースを基質としてpH5.5、60℃で1時間に1μmolのグルコシルトレハロースを生成する酵素活性を1Unitとして示した。
プルラナーゼの活性は,プルランを基質としてpH6.0、30℃で1分間に1μmolのマルトトリオースを生成する酵素活性を1Unitとして示した。
その結果は以下の第23表に示した。
Figure 0004033897
表の結果より、反応途中にプルラナーゼ処理を導入することにより収率を向上させることができ、しかも、複数回にわたって該処理をする方法、或いは反応初期段階で複数回にわたって該処理をする方法において、α,α−トレハロースの収率を一段と向上させることができることがわかった。トランスフェラーゼ10Units/ml、アミラーゼ150Units/ml、プルラナーゼ処理方法(g)、プルラナーゼ5Units/mlの条件下でα,α−トレハロースの収率は最大となり、80.9%に達した。
実施例II−11 各種アミロース DP−17濃度及び各種反応温度におけるα,α−トレハロースの製造
実施例II−2で得られた本精製酵素、及びSulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼを、それぞれ320Units/g−基質、及び20Units/g−基質となるように添加し、基質をアミロースDP−17として、第24及び25表に示した基質濃度及び反応温度において、それぞれ約100hr反応させ、これら酵素の相乗作用を利用したα,α−トレハロースの製造を試みた。
反応液は未反応の基質をグルコアミラーゼにて分解後、実施例II−1に示したTSK-gel Amide-80 HPLC分析法により分析を行い、生成したα,α−トレハロースの収率及び反応速度を調べた。
なお、本発明の新規アミラーゼの活性は、実施例II−1と同様に、マルトトリオシルトレハロースから1時間に1μmolのα,α−トレハロースを遊離する酵素活性を1Unitとして示した。
Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼの活性は、マルトトリオースを基質としてpH5.5、60℃で1時間に1μmolのグルコシルトレハロースを生成する酵素活性を1Unitとして示した。
その結果は以下の第24及び25表に示した。
なお、第24表中の反応速度は、1時間に1μmolのα,α−トレハロースを遊離する速度を1Unitとして示した。
Figure 0004033897
Figure 0004033897
表の結果より、反応温度を40〜80℃に上げると温度依存的に反応速度は増加することがわかった。また、低温(40〜50℃)では基質濃度を高濃度(30〜40%)とすると不溶化し、収率が著しく低下するが、高温にすると基質が溶解し、収率も高く維持できた。収率は75.1%に達した。
本実施例の結果から、耐熱性の高い本発明のアミラーゼを用いることにより、高温、高濃度仕込を可能とし、経済的にも、ハンドリングの容易さの観点からも有利なα,α−トレハロースの製造法を提供し得ることが理解される。
実施例II−12 各種可溶性デンプン濃度及び各種反応温度における、耐熱性プルラナーゼを用いたα,α−トレハロースの製造
実施例II−2で得られた本精製酵素、Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼ、及び市販耐熱性プルラナーゼ(デブランチングエンザイム アマノ(Bacillus sp.由来品、天野製薬社製);なお、疎水クロマトグラフィーTOSOH TSK-gel Phenyl-TOYOPEARL 650Sにより、混在するグルコアミラーゼ活性及びα−アミラーゼ活性を除去した)を、それぞれ1280Units/g−基質、80Units/g−基質、及び32Units/mlとなるように添加し、基質を可溶性デンプンとして、第26及び27表に示した基質濃度及び反応温度において、それぞれ約100hr反応させ、これら酵素の相乗作用を利用したα,α−トレハロースの製造を試みた。
反応液は未反応の基質をグルコアミラーゼにて分解後、実施例II−1に示したTSK-gel Amide-80 HPLC分析法により分析を行い、生成したα,α−トレハロースの収率及び反応速度を調べた。
なお、本発明の新規アミラーゼの活性は、実施例II−1と同様に、マルトトリオシルトレハロースから1時間に1μmolのα,α−トレハロースを遊離する酵素活性を1Unitとして示した。
Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼの活性は、マルトトリオースを基質としてpH5.5、60℃で1時間に1μmolのグルコシルトレハロースを生成する酵素活性を1Unitとして示した。
プルラナーゼの活性はプルランを基質としてpH5.5、60℃で1分間に1μmolのマルトトリオースを生成する酵素活性を1Unitとして示した。
その結果は以下の第26及び27表に示した。
なお、第26表中の反応速度は、1時間に1μmolのα,α−トレハロースを遊離する速度を1Unitとして示した。
Figure 0004033897
Figure 0004033897
なお、耐熱性プルラナーゼを添加しない以外は基質濃度10%、反応温度60℃において、上記の条件下で反応させたところ、反応収率は35.0%であった。
表の結果より、耐熱性プルラナーゼは反応にあたり一度添加するのみで収率向上効果が得られ、反応温度を40〜60℃に上げると温度依存的に反応速度は増加することがわかった。また、低温(40〜50℃)では基質濃度を高濃度(20〜30%)とすると不溶化し、収率が著しく低下するが、高温(60℃)にすると基質が溶解し、収率も高く維持できた。収率は、74.1%に達した。
実施例II−13 イソアミラーゼ処理を含む可溶性デンプンからのα,α−トレハロースの製造
実施例II−2で得られた本精製酵素、及びSulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼを用い、基質を可溶性デンプン(最終濃度10%)として、該基質にそれぞれ1280Units/g−基質、及び80Units/g−基質となるように添加し、60℃、pH5.0にて約100hr反応させ、これら酵素の相乗作用を利用したα,α−トレハロースの製造を試みた。この際、0hrから12hrの反応初期段階に、0hrも含めて3hr毎に合計5回、その後は24hrから96hrの間、24hr毎に合計3回の条件の下でイソアミラーゼ(Pseudomanas amyloderamosa由来品、生化学工業)を第28表に示した濃度となるように添加し、いずれの場合にも添加後40℃、1hrの条件の下でイソアミラーゼ処理をした。
反応液は未反応の基質をグルコアミラーゼにて分解後、実施例II−1に示したTSK-gel Amide-80 HPLC分析法により分析を行い、生成したα,α−トレハロースの収率を調べた。
なお、本発明の新規アミラーゼの活性は、実施例II−1と同様に、マルトトリオシルトレハロースから1時間に1μmolのα,α−トレハロースを遊離する酵素活性を1Unitとして示した。
Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼの活性は、マルトトリオースを基質としてpH5.5、60℃で1時間に1μmolのグルコシルトレハロースを生成する酵素活性を1Unitとして示した。
イソアミラーゼの活性は、1%可溶性モチゴメデンプン0.5mlに0.5M酢酸緩衝液pH3.5を0.1ml、酵素液0.1mlを混合して40℃で反応させ、アミロース−ヨウ素複合体の青紫色による610nmの吸光度を1cm幅のセルで測定し(澱粉、関連糖質酵素実験法、中村道徳、貝沼圭二、学会出版センター刊、1989年)、1時間に0.1増加させる酵素量を1Unitと定義した。
そ結果は以下の第28表に示した。
Figure 0004033897
表の結果より、プルラナーゼ(Klebsiella pneumoniae由来品)の場合と同様に、反応途中にイソアミラーゼ処理を導入することにより収率を向上させることができ、α,α−トレハロースの収率は、75.7%に達した。
実施例II−14 Sulfolobus solfataricus KM1株由来枝切り酵素処理を含む可溶性デンプンからのα,α−トレハロースの製造
実施例II−2で得られた本精製酵素、Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼ、及びSulfolobus solfataricus KM1株の枝切り酵素(参考例II−3の方法に準じて菌体抽出液より分離精製したもの)を、それぞれ1280Units/g−基質、80Units/g−基質、及び下表中に示す濃度となるように添加し、基質を可溶性デンプン(最終濃度10%)として、60℃、pH5.5として、約100hr反応させ、これら酵素の相乗作用を利用したα,α−トレハロースの製造を試みた。
反応液は未反応の基質をグルコアミラーゼにて分解後、実施例II−1に示したTSK-gel Amide-80 HPLC分析法により分析を行い、生成したα,α−トレハロースの収率を調べた。
なお、本発明の新規アミラーゼの活性は、実施例II−1と同様に、マルトトリオシルトレハロースから1時間に1μmolのα,α−トレハロースを遊離する酵素活性を1Unitとして示した。
Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼの活性は、マルトトリオースを基質としてpH5.5、60℃で1時間に1μmolのグルコシルトレハロースを生成する酵素活性を1Unitとして示した。
Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製枝切り酵素の活性は、1%可溶性モチゴメデンプン0.5mlに0.5M酢酸緩衝液pH5.0を0.1ml、酵素液0.1mlを混合して60℃で反応させ、アミロース−ヨウ素複合体の青紫色による610nmの吸光度を1cm幅のセルで測定し、1時間に0.1増加させる酵素量を1Unitと定義した。
その結果は以下の第29表に示した。
Figure 0004033897
表の結果より、耐熱性プルラナーゼ(デブランチングエンザイム アマノ、Bacillus sp.由来品)の場合と同様に、Sulfolobus solfataricus KM1株由来の枝切り酵素は反応にあたり一度添加するのみで収率を向上させることができ、α,α−トレハロースの収率は、69.8%に達した。
参考例II−1 各種アミロース DP−17濃度及び各種反応温度におけるトランスフェラーゼによる転移オリゴ糖の製造
Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼを、20Units/g−基質となるように添加し、基質をアミロースDP−17として、第30及び31表に示した基質濃度及び反応温度において、それぞれ約100hr反応させ、還元末端側のグルコース残基がα−1,α−1結合した対応のトレハロースオリゴ糖を生成させた。
生成した還元末端側のグルコース残基がα−1,α−1結合した対応のトレハロースオリゴ糖は、ジニトロサリチル酸法(澱粉・関連糖質酵素実験法、中村道徳・貝沼圭二、学会出版センター刊、1989年)によりその還元末端量を測定し、その減少量より収率及び反応速度を調べた。
Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製トランスフェラーゼの活性は、マルトトリオースを基質としてpH5.5、60℃で1時間に1μmolのグルコシルトレハロースを生成する酵素活性を1Unitとして示した。
その結果は以下の第30及び31表に示した。
なお、第30表中の反応速度は、1時間に1μmolのα,α−トレハロースを遊離する速度を1Unitとして示した。
Figure 0004033897
Figure 0004033897
表の結果より、反応温度を40〜80℃に上げると温度依存的に反応速度は増加することがわかった。また、低温(40〜50℃)では基質濃度を高濃度(特に40%)とすると不溶化し、収率が著しく低下するが、高温にすると基質が溶解し、収率も高く維持できた。モル収率は76.6%に達した。
参考例II−2 アミロース DP−17の水に対する溶解度の測定
アミロース DP−17を5、10、20、30、40%(w/vol)溶液となるように加熱溶解した後、35、40、50、60、70、80℃の高温槽に入れ、経時的にサンプリングし、生じた不溶物を濾過して得られた上清溶液中のアミロース DP−17濃度を求め、平衡となった濃度を飽和点として溶解度を求めた。
その結果は以下の第32表に示した。
Figure 0004033897
参考例II−3 Sulfolobus solfataricus KM1株由来枝切り酵素の精製
Sulfolobus solfataricus KM1株を、2g/リットルの可溶姓デンプン及び2g/リットルの酵母エキスを含むAmerican Type Culture Collection(ATCC)発行Catalogue of Bacteria and Phages 18版(1992)に記載の培地番号1304の培地で75℃、3日間培養した。遠心分離により集菌し、−80℃にて保存した。菌体の収率は3.3g/リットルであった。
上記のようにして得られた菌体82gを5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)400mlに懸濁させ、0℃で15分間、超音波破砕処理により溶菌し、次いで遠心分離を行い上清溶液を得た。
この上清溶液に硫安を1Mとなるように加え、1Mの硫安、5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて平衡化した疎水クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel Phenyl-TOYOPEARL 650S 800ml)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、素通り画分中に標的枝切り酵素を回収した。上清溶液中に含まれているアミラーゼ、トランスフェラーゼ、及びグルコアミラーゼはカラム充填剤Phenyl-TOYOPEARL 650Sに保持、吸着されるので、標的枝切り酵素とは分離された。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)にて洗浄し、脱塩した。
次いで同緩衝液にて平衡化したイオン交換クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel DATE-TOYOPEARL 650S 300ml)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、引き続き900mlの0M〜0.3M食塩の線状勾配で標的枝切り酵素を溶出した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、次いで0.15Mの食塩、5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)にて洗浄し、脱塩した。
この脱塩濃縮液をゲル濾過クロマトグラフィー(カラム:Pharmacia HiLoad 16/60 Superdex 200pg)に載せ、同緩衝液にて標的枝切り酵素を溶出した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き25mMビス−トリス−イミノジ酢酸緩衝液(pH7.1)にて洗浄し、脱塩した。
この脱塩濃縮液を同緩衝液にて平衡化したクロマトフォーカシング(カラム:Pharmacia Mono P HR5/20)に載せ、10% Polybuffer 74(Pharmacia製、イミノジ酢酸にてpH4.0に調整したもの)で標的枝切り酵素を溶出した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、引き続き10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)にて洗浄し、脱塩した。
この脱塩濃縮液を同緩衝液にて平衡化したイオン交換クロマトグラフィー(カラム:TOSOH TSK-gel DATE 5PW HPLC)に通した。カラムを同緩衝液にて洗浄し、次いで30mlの0M〜0.3M食塩の線状勾配で標的枝切り酵素を溶出した。活性画分を限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮し、標的枝切り酵素の部分精製品(液状品)を得た。
なお、上記の精製法における標的枝切り酵素の検出は、基質として5%可溶性デンプンを用い、Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製アミラーゼ及び精製トランスフェラーゼのそれぞれ2Unis/ml及び32Units/mlを被検液と共に添加し、pH5.5、60℃にて反応させ、被検液の無添加の場合との比較においてα,α−トレハロース生成量が増加する活性を指標として行った。
上記の精製法によって得られたSulfolobus solfataricus KM1株由来の部分精製枝切り酵素の活性は、1%可溶性モチゴメデンプン0.5mlに0.5M酢酸緩衝液pH5.0を0.1ml、酵素液0.1mlを混合して60℃で反応させ、アミロース−ヨウ素複合体の青紫色による610nmの吸光度を1cm幅のセルで測定し、1時間に0.1増加させる酵素量を1Unitと定義した。
以上の精製操作により部分精製された枝切り酵素の比活性は495Units/mgであった。
参考例II−4 Sulfolobus solfataricus KM1株由来枝切り酵素の諸性質の検討
参考例II−3で得られた部分精製枝切り酵素の酵素学的諸性質を測定した。
(1)作用及び基質特異性
以下の第33表に示す基質及び各活性測定法を用いて、各基質に対する反応性及び作用を調べた。
ジニトロサリチル酸法(澱粉・関連糖質酵素実験法、中村道徳・貝沼圭二、学会出版センター刊、1989年)は、α−1,6結合の加水分解反応による還元末端量の増加を定量する方法である。
ヨウ素呈色法は参考例II−3と同様に行い、α−1,6結合の加水分解反応による直鎖状アミロースの増加を、アミロース−ヨウ素複合体の青紫色による610nmの吸光度増加によって定量する方法である。
液体クロマトグラフィーによる分解生成物の分析(HPLC法)は、実施例II−1に示したBio-Rad AMINEX HPX-42A HPLC分析法により行い、生じるオリゴ糖を調べた。
Figure 0004033897
上記の結果から明らかなように、本枝切り酵素は、1)プルラン及び各種デンプンより、還元末端を生じさせ、2)各種デンプンのヨウ素量色度を増加させ、また、3)プルランよりマルトトリオースを生じさせうる。更にまた、4)実施例II−14に示したように、可溶性デンプンを基質として用い、Sulfolobus solfataricus KM1株由来の精製アミラーゼ及び精製トランスフェラーゼと共に反応させた場合、本枝切り酵素を添加しない場合に比べて著しくα,α−トレハロース生成量を増加させる。よって、これらの事実から本酵素はデンプンやプルランのα−1,6結合を加水分解することが理解される。
(2)安定性
得られた部分精製酵素の各温度での3時間処理における安定性を第34表に示す。
Figure 0004033897
本酵素は60℃で3時間の処理で73.3%の残存活性があった。
(3)反応性
得られた部分精製酵素の各pH及び各温度における反応性を、それぞれ第35及び36表に示す。測定は、pH3〜5の間はグリシン塩酸系緩衝液を、pH4〜5.5の間は酢酸ナトリウム系緩衝液を、pH5〜7.5の間は燐酸ナトリウム系緩衝液をそれぞれ用いた。
Figure 0004033897
Figure 0004033897
本酵素は60〜65℃付近に反応最適温度、pH4.0〜5.5付近に反応最適pHを有する。
(4)等電点
クロマトフォーカーシングにより分離された枝切り酵素画分のpH測定の結果、等電点は4.4であった。
(5)各種活性化剤及び阻害剤の影響
以下の第37表に示す物質を基質と共に添加し、それぞれの場合の活性測定を参考例II−3と同様に行い、活性化又は阻害の有無を調べた。その結果、銅イオンにより阻害を受けることがわかった。糖関連酵素ではカルシウムイオンによって活性化される場合が多く認められるが、本酵素はカルシウムイオンによっては活性化されない。
Figure 0004033897
実施例I−9 Sulfolobus solfataricus KM1株由来の新規トランスフェラーゼの部分アミノ酸配列の決定
実施例I−2で得られた精製酵素の部分アミノ酸配列の決定は岩松(生化学 63、139(1991))らの方法により行った。すなわち、精製された新規トランスフェラーゼを、泳動用緩衝液(10%グリセロール、2.5%SDS、2%2-メルカプトエタノール、62mMトリス塩酸緩衝液(pH6.8))に懸濁し、SDSポリアクリルアミド電気泳動に供した。泳動後、当該酵素をゲルよりポリビニリデンジフロリド(PVDF)膜(ProBlot、(アプライド、バイオシステムズ社))に、エレクトロブロッティング(ザルトブロットIIs型(ザルトリウス社))を160mAで1時間行った。
転写後、当該酵素の転写された部分の膜を切りとり、約300μ1還元用緩衝液(6Mグアニジン塩酸、0.5Mトリス塩酸緩衝液(pH3.5)、0.3%EDTA、2%アセトニトリル)に浸し、これに1mgのジチオスレイトールを加え、アルゴン下で60℃/約1時間の還元を行った。これに2.4mgモノヨード酢酸を0.5N水酸化ナトリウム液10μlに溶かしたものを加え、遮光下で20分間撹拌した。PVDF膜を取り出し、2%アセトニトリルで十分洗浄した後、0.1%SDS中で5分間撹拌した。次に、PVDF膜を水で軽く洗浄後、0.5%ポリビニルピロリドン−40、100mM酢酸に浸し30分放置した。この後PVDF膜を水で軽く洗浄し、約1mm四方に切断した。これを消化用緩衝液(8%アセトニトリル、90mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0))に浸し、Achromobacter Protease I(和光純薬社)を1pmol加え、室温で15時間消化した。この消化物をC8カラム(日本ミリポアリミテッド社、μ-Bondashere 5C8、300A、2.1x150mm)を用いた逆相HPLCにより分離し、10数種のペプチド断片を得た。ペプチドの溶出溶媒としては、A溶媒(0.05%トリフルオロ酢酸)、B溶媒(0.02%トリフルオロ酢酸を含む2-プロパノール/アセトニトリル 7:3)を用い、B溶媒に関し2〜50%の直線濃度勾配で0.25ml/分の流速で40分間溶出させた。得られたペプチド断片について、気相ペプチドシーケンサー(アプライド バイオシステム社 モデル470型)を用いた自動エドマン分解法によりアミノ酸配列を決定した。
またAchromobacter Protease Iで消化されたペプチド断片を更にAsp-Nにより2次消化し、得られたペプチド断片について上記の条件で同様に分離しアミノ酸配列を決定した。
その結果、部分アミノ酸配列は下記の通りであった。
Figure 0004033897
実施例I−10 Sulfolobus solfataricus KM1株染色体DNAの調製
Sulfolobus solfataricus KM1株の菌体は実施例I−2の方法に従って得た。
この菌体の1gに25%スクロース、1mg/mlリゾチーム、1mMEDTA、150mMNaClを含む50mMのトリス塩酸緩衝液(pH8.0)10mlを加え懸濁し、室温にて30分放置した。これに10% SDS 0.5ml、及び10mg/mlプロテイナーゼK(和光純薬社製)0.2mlを加え、50℃で2時間放置した。次にこの溶液をフェノール/クロロホルムで抽出し、水相をとりこれをエタノール沈殿させた。沈殿してきたDNAを滅菌したガラス棒で巻きとり、これを70%エタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。最終的に1.5mgの染色体DNAが得られた。
実施例I−11 部分アミノ酸配列に基づくDNAプローブの作成およびPCR法によるプローブの確認
実施例I−9により決定されたSulfolobus solfataricus KM1株由来新規トランスフェラーゼの部分アミノ酸配列の情報をもとにオリゴヌクレオチドDNAプライマーをDNA合成装置(アプライドバイオシステムズ社製モデル381)によって作成した。その配列は下記の通りであった。
Figure 0004033897
このDNAプライマーを各々100pmolおよび実施例I−10で調製されたSulfolobus solfataricus KM1株の染色体DNA100ngを用いてPCR法を実施した。PCR装置はパーキンエルマー社製、GeneAmp PCRシステムモデル9600を用い、1サイクルを94℃で30秒、50℃で1分および72℃で2分で行い、サイクル数30回および総液量100μlで実施した。
得られた反応液10μ1を1%アガロース電気泳動により分析した。その結果約1.2kbの長さを持つDNA断片が特異的に増幅された。
このPCR産物の末端を平滑化し、pUC118のHincII部位にサブクローニングした。このプラスミドの挿入断片のDNA配列をアプライド・バイオシステムズ社製、DNAシークエンサ/GENESCAN モデル373Aを用いて決定した。その結果、実施例I−9で得られたアミノ酸配列に相当するDNA配列が見いだされた。
実施例I−12 Sulfolobus solfataricus KM1株由来新規トランスフェラーゼ遺伝子のクローニング
実施例I−10で調製されたSulfolobus solfataricus KM1株の染色体DNA100μgを制限酵素Sau3Alで部分消化した。反応液をスクロース密度勾配を用いて超遠心で5〜10kbのDNA断片を分離精製した。一方、プラスミドベクターpUC118をBamHIで消化し、アルカリホスファターゼにより末端を脱リン酸化したものと、上記5〜10kbの長さを持つSulfolobus solfataricus KM1株の染色体DNA断片をT4DNAリガーゼにより連結(ライゲーション)した。この挿入断片を含むpUC118プラスミドベクターを含んだ混合液を用いて、E.coli JM109細胞を形質転換した。これを50μg/mlアンピシリンを含むLB寒天プレート培地に蒔きコロニーを形成させ、DNAライブラリーを作成した。
このDNAライブラリーにおける新規トランスフェラーゼ遺伝子を含む組換えプラスミドのスクリーニングは、PCR法により以下のように行った。
まず、コロニーをかき取りTE緩衝液に懸濁した。これを100℃にて5分間処理し菌体を破砕し、実施例I−11に記載の方法でPCR法を実施した。
次いで得られたPCR反応液10μlを1%アガロース電気泳動により分析し、約1.2kbの長さを持つDNA断片が増幅されてくるクローンを陽性クローンとした。
その結果、600個の形質転換体から1個の陽性クローンを得た。そこから抽出されたプラスミドを解析したところ約8kbの挿入断片を有していた。このプラスミドを「pKT1」と称した。
更に挿入断片を制限酵素Sau3AIで部分消化し、上記の方法と同様にPCR法を実施して、挿入断片を縮小化した。その結果約3.8kbおよび約4.5kbの挿入断片を有するプラスミドを保持する形質転換体を得た。これらのプラスミドをそれぞれ「pKT21」、「pKT11」と称した。
これらのプラスミドの挿入断片の制限酵素地図は図26に示される通りであった。
なお、以上の実施例で使用された制限酵素としては、全て市販品(宝酒造株式会社より購入)を利用した。
実施例I−13 Sulfolobus solfataricus KM1株由来新規トランスフェラーゼ遺伝子のDNA配列の決定
実施例I−12で得られたプラスミドpKT11、pKT21中の挿入断片の共通部分のDNA塩基配列を決定した。
まず、このプラスミドDNAを宝酒造社製、キロシークエンス用デレーションキットを用いて、デレーションプラスミドを作成した。次いでこのプラスミドの挿入断片のDNA配列をパーキンエルマージャパン社製、PRISM,Sequenase Dye Primer Sequencingキット、Taq Dye DeoxyTM Terminator Cycle Sequencing Kitおよびアプライド バイオシステムズ社製、DNAシークエンサ/GENESCAN モデル373Aを用いて決定した。
共通配列中のSphI−pKT21の末端間(図26のA,B間)の塩基配列およびそこから推定されるアミノ酸配列は配列番号1および2に示される通りであった。
このアミノ酸配列中に実施例I−9で得られた部分アミノ酸配列に相当する配列が全て認められた。このアミノ酸配列は長さが728個で、推定分子量82kDaのタンパク質をコードしているものと考えられた。この分子量はSulfolobus solfataricus KM1株由来新規トランスフェラーゼの精製酵素をSDS−PAGEにかけることによって得られた分子量の値にほぼ一致した。
実施例I−14 形質転換体における新規トランスフェラーゼの発現
実施例I−12で得られたpKT21についてSphIおよびXbaIで切断し、同酵素で切断したpUC119(宝酒造社製)に連結したものをpKT22とした。図27にその手段を示した。pKT22に挿入された新規トランスフェラーゼ遺伝子を含む断片中、マルチクローニングサイトを除く塩基配列は、配列番号1の塩基番号1〜2578の配列であった。
このプラスミドを含む形質転換体の新規トランスフェラーゼ活性を次のように調べた。まず、形質転換体を100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地で37℃で、1晩培養した。遠心分離により集菌し、−80℃にて保存した。菌体の収率は10g/リットルであった。
上記のようにして得られた菌体10gを5mMのEDTAを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)40mlに懸濁し、0℃で3分間、超音波破砕処理により溶菌し、次いで遠心分離を行い上清溶液を得た。これを75℃で30分間熱処理し、再度遠心を行い、限外濾過膜(分子量カット13000)にて濃縮して、粗酵素液(6Unit/ml)として、基質であるマルトトリオースを最終的に10%となるように加えた。pH5.5(50mM 酢酸ナトリウム)で、60℃で24時間反応させた後、100℃で5分間加熱処理して反応を停止させた。生成したグルコシルトレハロースを実施例I−1におけるのと同様のHPLC分析法により測定した。
HPLC分析の結果は図28に示される通りであった。主反応物はHPLCチャート上ではアノマーのない一本のピークとして、未反応基質よりやや遅れて現れた。また、この主生成物をTSK-gel amide-80 HPLC columnにて分取し、1H−NMR、13C−NMRにより解析の結果、グルコシルトレハロースであることを確認した。
この結果、形質転換体はSulfolobus solfataricus KM1株由来の新規トランスフェラーゼ活性を有することがわかった。またJM109にpUC119のみを入れた形質転換体からは新規トランスフェラーゼ活性は検出されなかった。
実施例I−15 Sulfolobus acidocaldarius ATCC 33909株由来の新規トランスフェラーゼの部分アミノ酸配列の決定
実施例I−4で得られた新規トランスフェラーゼの部分アミノ酸配列の決定は実施例I−9に記載される方法に従って行った。以下に決定された部分アミノ酸配列を示す。
Figure 0004033897
実施例I−16 Sulfolobus acidocaldarius ATCC33909株来の新規トランスフェラーゼのクローニング
Sulfolobus acidocaldarius ATCC33909株の染色体DNAは実施例I−4の方法に従って得た菌体より実施例I−10の方法に従って得た。上記染色体DNAをSau3AIで部分消化した後、EMBL3 BamHI切断アーム(STRATAGENE社製)に、T4DNAリガーゼにより連結(ライゲーション)した。パッケージングはSTRATAGENE社製 GigapackII Goldを用いて行った。上記ライブラリーを大腸菌LE392に37℃15分間感染させた後、NZY寒天プレート培地に播種し、37℃で約8から12時間程度培養して、プラークを形成させた。約2時間、4℃で保存した後、ナイロンメンブレン(アマシャム社製,Hybond N+)へDNAを吸着させた。2xSSPEで軽く洗浄した後、80℃で2時間ベーキングを行った。プローブは実施例I−14で得られたpKT22のEcoRI−XbaI断片(配列番号1の824番より2578番へ対応する)を用い、アマシャム社製 メガプライムDNA標識システムを用いて32pで標識した。
ハイブリダイセーションの条件は6xSSPE、0.5%SDSで60℃オーバーナイトでおこなった。洗浄は2xSSPE、0.5%SDSで、室温10分、2回行った。
約5000クローンからスクリーニングを開始して8個の陽性クローンを得た。このクローンより約7.6kbpのBamHI断片を得て、これをpUC118の上記サイトへ挿入した。このプラスミドを「p09T3」と称する。さらに上記クローンの挿入断片をSau3AIで部分消化し、得られた約6.7kbpの断片をpUC118のBamHIサイトへ挿入した。このプラスミドを「p09T2」と称する。このプラスミドより約3.8kbpのXbaI断片についてpUC118の上記サイトへ挿入した。このプラスミドを「p09T1」と称する。このプラスミドの挿入断片の制限酵素地図を図29に示す。またその作成方法を図30に示す。上記p09T1について新規トランスフェラーゼをコードしている領域を中心に実施例I−13の方法に従って塩基配列の決定を行った。決定された塩基配列およびそこさら推定されるアミノ酸配列は配列番号3および4に示される通りである。このアミノ酸配列中に実施例I−15で得られた部分アミノ酸配列に相当する配列が全て認められた。このアミノ酸配列は長さが680個で、推定分子量80.1kDaのタンパク質をコードしているものと考えられた。この分子量はSulfolobus acidocaldarius ATCC 33909株由来新規トランスフェラーゼの精製酵素をSDS−PAGEにかけることによって得られた分子量の値にほぼ一致した。またプラスミドp09T1を含む形質転換体について実施例I−14の方法に従って新規トランスフェラーゼ活性を確認した。
実施例I−17 Sulfolobus solfataricus KM1株由来の新規トランスフェラーゼ遺伝子と他の生物種の染色体DNAとのハイブリダイゼーション試験
Sulfolobus solfataricus DSM 5833株、Sulfolobus shibatae DSM 5389株、E.coli JM109株の染色体DNAを実施例I−10に準じた方法で得て、これを制限酵素PstIおよびEcoRIで消化した。
この消化物を1%アガロースゲル電気泳動にて分離し、アマシャムジャパン社製、Hybond−Nにサザンプロッティングした。このメンブレンに実施例I−12で得られたpKT21の約2.6kbpのSphI、XbaI断片(配列番号1に示される配列に対応、図26におけるA〜B間の範囲に対応)を、ベーリンガーマンハイム社製、DIGシステムキットによって標識し、これを用いてハイブリダイゼーションを行った。
条件はハイブリダイゼーション:5xSSC、40℃、2時間、洗浄:2xSSC(0.1%SDSを含む)、40℃、5分、2回 0.1xSSC(0.1%SDSを含む)、40℃、5分、2回であった。
その結果、SphI、XbaI断片は、Sulfolobus solfataricus DSM 5833株については約5.9kbpの断片と、Sulfolobus shibatae DSM 5389株については約5.0kbpおよび約0.8kbpの断片とそれぞれハイブリッドを形成した。一方、ネガティブコントロールであるE.coli JM109株については、ハイブリッドの形成は観察されなかった。
さらにSulfolobus solfataricus KM1株、DSM5354株、DSM5833株、ATCC35091株,ATCC35092株、Sulfolobus acidocaldarius ATCC33909株、ATCC49426株、Sulfolobus shibatae DSM5389株、Acidianus brierleyi DSM1651株 E.coli JM109株の染色体DNAを実施例I−10方法に準じて得、制限酵素HindIII、XbaI、EcoRVで消化した。
この消化物を1%アガロースゲル電気泳動にて分離し、アマシャムジャパン社、Hybond−N+にプロッティングした。このメンブレンに配列番号1の1880番より2257番の領域(378bp)をPCRにて増幅し、実施例I−16の方法に従って32Pで標識し、これを用いてハイブリダイゼーションを行った。
条件はハイブリダイゼーション:6xSSPE、0.5%SDSで60℃、オーバーナイトで、洗浄:2xSSPE、0.1%SDSで室温、10分、2回行った。
その結果、Sulfolobus solfataricus KM1株、DSM5354株、DSM5833株、ATCC35091株,ATCC35092株、Sulfolobus acidocaldarius ATCC33909株、ATCC49426株、Sulfolobus shibatae DSM5389株、Acidianus brierleyi DSM1651株について、それぞれ約4.4kbp、3.7kbP、3.7kbp、0.8kbp、3.9kbp、0.8kbp、0.8kbp、4.4kbp、2.1kbpの部位でハイブリッドを形成することが判明した。一方JM109のゲノムDNAについては結合が観察されなかった。
また配列番号1、2、3および4の範囲に含まれるアミノ酸配列、塩基配列と相同性を有する配列が存在しないことを、アミノ酸配列データーバンク(Swiss prot、及びNBRF−PDB)、塩基配列データーバンク(EMBL)から、配列解析ソフト ジェネティックス(ソフトウエアー開発)を用いて確認した。よってこの新規トランスフェラーゼ遺伝子はSulfolobales目に属する古細菌に特異的に高度に保存されていることがわかった。
実施例I−18 Sulfolobus solfataricus KM1株 および Sulfolobus acidocaidariusu ATCC33909株由来の新規トランスフェラーゼの塩基配列、アミノ酸配列の比較
配列番号2のKM1株由来の新規トランスフェラーゼのアミノ酸配列と配列番号4のATCC33909株由来の新規トランスフェラのアミノ酸配列とを、また配列番号1のKM1株由来の新規トランスフェラーゼの塩基配列と配列番号3のATCC33909株由来の新規トランスフニラーゼの塩基配列とを配列解析ソフト,ジェネティックス(ソフトウエアー開発)を用いてギャップを考慮した解析を行った。アミノ酸配列についての結果を図31に、塩基配列についての結果を図32に示した。それぞれの図中上段にATCC33909株の配列を、下段にKM1株の配列を示し、中段の(*)は両者で一致する配列を、また(.)は両者で性質の似たアミノ酸配列であることを示す。相同性はアミノ酸配列レベルで49%、塩基配列レベルで57%であった。
実施例I−19 形質転換体由来組換え新規トランスフェラーゼを用いたマルトオリゴ糖混合物からのトレハロースオリゴ糖の製造
可溶性デンプン(ナカライテスク社製、特級品)のα−アミラーゼ分解物であってヨウ素デンプン反応を示さずオリゴ糖にまで分解されたもの(α−アミラーゼは、Sigma社製のA-0273アスペルギルス・オリゼ由来のものを用いた)を基質とした。
実施例I−14で得た粗酵素液、および上記基質を用いて、実施例I−14の反応条件に従いグルコシルトレハロースおよび各種のマルトオリゴシルトレハロースの製造を試みた。反応液の分析は以下に示す条件のHPLC分析法により行った。
カラム: BIORAD AMINEX HPX-42A(7.8×300mm)
溶媒 : 水
流速 : 0.6ml/min
温度 : 85℃
検出器: 示差屈折計
図33(A)にHPLCによる分析の結果を(B)に組換え新規トランスフェラーゼを添加しない場合のHPLC分析の結果を示した。その結果、反応生成物のオリゴ糖類は対照のアミラーゼのみによる生成物よりも各々保持時間が短かった。また、基質マルトトリオース(G3)、マルトテトラオース(G4)およびマルトペンタオース(G5)(いずれも林原バイオケミカル社製)からの主生成物である3糖、4糖および5糖をTSK-gel amide-80 HPLC collumnにて分取し、1H−NMR、13C−NMRにより解析を行った。その結果、いずれも還元末端のグルコース残基1個がα-1,α-1で結合した構造を示し、それぞれグルコシルトレハロース(α-D-マルトシル α-D-グルコピラノシド)、マルトシルトレハロース(α-D-マルトトリオシル α-D-グルコピラノシド)およびマルトトリオシルトレハロース(α-D-マルトテトラオシル α-D-グルコピラノシド)であることが確認された。
実施例I−20 形質転換体由来組換え新規トランスフェラーゼを用いたグルコシルトレハロースおよびマルトオリゴシルトレハロースの製造
基質を100mMのマルトトリオース(G3)〜マルトヘプタオース(G7)(いずれも林原バイオケミカル社製)とし、実施例I−14で得られた粗酵素液を凍結乾燥した後、50mM酢酸ナトリウム溶液(pH5.5)に懸濁し、濃縮酵素とした。この濃縮酵素12.7Unit/ml(マルトトリオースを基質として作用させたときの酵素活性)をそれぞれの基質に作用させ、対応するα-1,α-1転移体を生成させた。各生成物の分析法は実施例I−1の方法に従って行い、その収率および酵素活性を調べた。結果は第38表に示される通りであった。なお、第38表中での酵素活性は、マルトオリゴ糖を1時間に1μmolの対応するα-1,α-1転移体に変換する酵素活性を1Unitとして示した。
Figure 0004033897
実施例II−15 Sulfolobus solfataricusKM1株由来の新規アミラーゼの部分アミノ酸配列の決定
実施例II−2で得られた精製酵素の部分アミノ酸配列の決定は岩松ら(生化学63、139(1991))の方法により、またN末端アミノ酸配列の決定はMatsudaira T(J.Biol.Chem.262,10035-10038(1987))の方法により行った。
まず精製された新規アミラーゼを、泳動用緩衝液(10%グリセロール、2.5%SDS、2%2−メルカプトエタノール、62mMトリス塩酸緩衝液(pH6.8))に懸濁し、SDSポリアクリルアミド電気泳動に供した。泳動後、当該酵素をゲルよりポリビニリデンジフロリド(PVDF)膜(ProBlot、アプライドバイオシステムズ社製)に、160mAで1時間エレクトロブロッティング(ザルトブロットIIs型、ザルトリウス社製)することにより転写を行った。
転写した後、当該酵素の転写された部分の膜を切りとり、約300μl還元用緩衝液(6Mグアニジン塩酸、0.5Mトリス塩酸緩衝液(pH3.5)、0.3% EDTA、2%アセトニトリル)に浸し、これに1mgのジチオスレイトールを加え、アルゴン下で60℃/約1時間の還元を行った。これに2.4mgモノヨード酢酸を0.5N水酸化ナトリウム液10μlに溶かしたものを加え、遮光下で20分間攪拌した。PVDF膜を取り出し、2%アセトニトリルで十分洗浄した後、0.1%SDS中で5分間攪拌した。次いで、PVDF膜を水で軽く洗浄した後、0.5%ポリビニルピロリドン−40を含む100mM酢酸に浸し30分間放置した。この後PVDF膜を水で軽く洗浄し、約1mm四方に切断した。N末端アミノ酸配列についてはこの切断した膜を直接気相シークエンサーで分析した。部分アミノ酸配列についてはこの切断した膜を消化用緩衝液(8%アセトニトリル、90mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0))に浸し、Achromobacter Protease I(和光純薬工業社製)を1pmol加え、室温で15時間かけて消化した。この消化物をC8カラム(日本ミリポアリミテッド社製、μ−Bondashere 5C8、300A、2.1X 150mm)を用いた逆相HPLCにより分離し、10数種のペプチド断片を得た。ペプチドの溶出溶媒としては、A溶媒(0.05%トリフルオロ酢酸)およびB溶媒(0.02%トリフルオロ酢酸を含む2−プロパノール/アセトニトリル 7:3)を用い、溶出はB溶媒に関し2〜50%の直線濃度勾配で0.25ml/分の流速で40分間溶出させることにより行った。得られたペプチド断片についてのアミノ酸配列の決定は、気相ペプチドシーケンサー(アプライドバイオシステムズ社製、モデル470型)を用いた自動エドマン分解法により行った。
決定されたN末端アミノ酸配列および部分アミノ酸配列は下記の通りであった。
Figure 0004033897
実施例II−16 Sulfolobus solfataricus KM1株染色体DNAの調製
Sulfolobus solfataricus KM1株を、2g/リットルの可溶性デンプンおよび2g/リットルの酵母エキスを含むAmerican Type Culture Collection(ATCC)発行 Catalogue of Bacteria and Phages 18版,1992に記載の培地番号1304の培地で、75℃で3日間培養した。遠心分離により集菌し、−80℃にて保存した。菌体の収率は3.3g/リットルであった。
この菌体1gに25%スクロース、1mg/mlリゾチーム、1mMEDTAおよび150mMNaClを含む50mMのトリス塩酸緩衝液(pH8.0)10mlを加えて懸濁し、室温にて30分間放置した。これに10%SDS0.5mlおよび10mg/mlプロテイナーゼK(和光純薬工業社製)0.2mlを加え、37℃で2時間放置した。次にこの溶液をフェノール/クロロホルムで抽出し、エタノール沈澱させた。沈澱したDNAを滅菌したガラス棒で巻きとり、これを70%エタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。最終的に1.5mgの染色体DNAが得られた。
実施例II−17 Sulfolobus solfataricus KM1株由来新規アミラーゼ遺伝子の活性染色法による発現クローニング
実施例II−16で調製されたSulfolobus solfataricus KM1株の染色体DNA 100μgを制限酵素Sau3AIで部分消化した。反応液をショ糖密度勾配遠心分離法を用いて分画し、5〜10kbのDNA断片を分離精製した。一方プラスミドベクターpUC118(宝酒造社製)をBamHIで消化し、アルカリホスファターゼにより末端を脱リン酸化し精製したものと、上記5〜10kbの染色体DNA断片をT4DNAリガーゼにより連結(ライゲーション)した。この挿入断片を含んだpUC118プラスミドベクターを含んだ混合液を用いて、大腸菌JM109細胞(宝酒造社製)を形質転換した。これを50μg/mlアンピシリンを含むLB寒天プレート培地に播種しコロニーを形成させて、DNAライブラリーを作成した。
Sulfolobus solfataricus KM1株由来新規アミラーゼ遺伝子を含む組換えプラスミドを有する形質転換体のスクリーニングは活性染色法により行った。
まず、得られた形質転換体を濾紙にレプリカし、LB寒天培地上にてコロニーを形成させ、この濾紙を1mg/mlリゾチーム(生化学工業社製)、1mM EDTAを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)溶液に浸し30分間放置した。次いで1%Triton−X100溶液に30分間浸して、溶菌させ、60℃で1時間熱処理して、宿主由来の酵素を失活させた。この処理した濾紙を0.2%可溶性デンプンを含む寒天プレートにのせて60℃にて一晩反応を行った。反応させたプレートをヨウ素の蒸気下に置いてデンプンを発色させ、ハローを形成したコロニーを陽性クローンとした。その結果、6000個の形質転換体から5個の陽性クローンを得た。そこからプラスミドを抽出したところ最も挿入断片の短いものは約4.3kbの挿入断片を有していた。
そこでこの挿入断片を更に制限酵素BamHIで消化し、更に上記の方法と同様にして、挿入断片を縮小化した。その結果3.5kbの挿入断片を有するプラスミドを保持する形質転換体を得た。このプラスミドを「pKA1」と称した。
このプラスミドの挿入断片の制限酵素地図は図34に示される通りであった。
実施例II−18 Sulfolobus solfataricus KM1株由来新規アミラーゼ遺伝子のDNA配列の決定
実施例II−17で得られたプラスミドpKA1中の挿入断片の(後記するpKA2に対応する領域の)DNA塩基配列を決定した。
まず、このプラスミドDNAを宝酒造社製、キロシークエンス用デレーションキットを用いて、デレーションプラスミドを作成した。次いでこのプラスミドの挿入断片のDNA配列をパーキンエルマージャパン社製、PRISM,Sequenase Dye Primer Sequencingキット、Taq DyeDeoxyTM Terminator Cycle Sequencing kit およびアプライド バイオシステムズ社製、DNAシークエンサ/GENESCAN モデル373Aを用いて決定した。
塩基配列およびそれから推定されるアミノ酸配列は配列番号5および6に示される通りであった。
このアミノ酸配列中に実施例II−15で得られた部分アミノ酸配列全てが認められた。このアミノ酸配列は長さが558個で、推定分子量64.4kDaのタンパク質をコードしているものと考えられた。この分子量はSulfolobus solfataricus KM1株由来アミラーゼの精製酵素のSDS−PAGEによる分子量の測定値61.0kDaにほぼ一致した。
実施例II−19 形質転換体における組換え新規アミラーゼの発現
実施例II−17で得られたpKA1について制限酵素PstIで部分消化したものをpKA2とした。図35はその制限酵素地図を示したものである。pKA2を含む形質転換体の活性は次のようにして調べた。まず上記形質転換体を100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地で37℃で一晩培養した。遠心分離により集菌した菌体を1gあたり4mlのpH5.5(50mM酢酸ナトリウム緩衝液)へ懸濁し、超音波破砕処理および遠心分離を行ない、その上清を70℃で1時間熱処理し、宿主のアミラーゼを失活させた。遠心分離により沈澱物を除去し、限外濾過膜(分子量カット13,000)で濃縮したものを粗酵素液として、以下の実験に用いた。
(1)基質特異性
前記粗酵素液35.2Units/ml(ここで1Unitとは、マルトトリオシルトレハロースを基質として作用させたときの酵素活性で、反応条件は実施例II−1に従い、1時間にマルトトリオシルトレハロースからα,α-トレハロースを1μmol生成する活性として定義した)を、以下の第39表に示す10mMの基質(アミロペクチン、可溶性デンプンについては3.0%)に作用させ、分解性及び分解生成物の分析を行った。各種マルトオリゴ糖、アミロースDP−17、アミロペクチン、可溶性デンプン、各種イソマルトオリゴ糖、及びパノースについては単糖+2糖の生成活性を指標として、また、各種トレハロースオリゴ糖、アミロースDP−17α−1,α−1転移体(アミロースDP−17の還元末端側の、1つ目と2つ目のグルコース残基間の結合がα−1,α−1であるオリゴ糖)についてはα,α−トレハロースの生成活性を指標として、マルトース及びα,α−トレハロースについてはグルコースの生成活性を指標として実施例II−1に示したTSK-gel Amide-80 HPLCによる分析法で分析を行った。
なお、表中での酵素活性は、各々単糖及び2糖を1時間に1μmol遊離する酵素活性を1Unitとして示した。
結果は以下の第39表に示される通りであった。
Figure 0004033897
マルトトリオシルトレハロースからの反応生成物の実施例II−1の条件に従って行ったTSK-gel Amide-80 HPLCによる分析結果は図36(A)に示される通りであった。また、可溶性デンプンからの反応生成物を、以下の条件で行ったAMINX HPX-42A HPLCによる分析結果は図36(B)に示される通りであった。
カラム:AMINEX HPX-42A(7.8 X 300mm)
溶媒 :水
流速 :0.6ml/min
温度 :85℃
検出器:示差屈折計
以上の結果より、本酵素に関しては還元末端側のグルコース残基がα−1,α−1結合したマルトトリオシルトレハロース等のトレハロースオリゴ糖に、極めてよく作用し、α,α−トレハロースと重合度が2つ減少した対応するマルトオリゴ糖を生成することが確認された。またマルトース(G2)〜マルトペンタオース(G5)、アミロース、可溶性デンプンからは、主としてグルコースまたはマルトースを遊離することが確認された。しかしながらα,α−トレハロース、イソマルトース、イソマルトトリオース、イソマルトテトラオース、イソマルトペンタオース、およびパノースに対してはいずれも反応しなかった。
(2)エンド型アミラーゼ活性
前記粗酵素液150Unit/ml(活性単位は上記(1)と同様)を可溶性デンプンに作用させた。実施例II−1に示したデンプン分解活性測定法と同様の条件でヨウ素発色の消失を測定し、また上記(1)に示した基質特異性を決定する際の条件のHPLC分析法の条件に従って単糖、および2糖の生成量を測定した。これらからデンプン加水分解率を求めた。
その経時変化は図37に示される通りであった。図から、ヨウ素反応呈色度が50%消失した時点でのデンプンの加水分解率は4.5%と低く、従って本粗酵素はエンド型アミラーゼの性質を示すことが確認された。
(3)作用機作の検討
ウリジンジホスホグルコース[グルコース-6-H]、およびマルトテトラオースにグリコーゲンシンターゼ(ウサギ骨格筋由来、Sigma社製G-2259)を作用させ、非還元末端のグルコース残基をHで放射能ラベルしたマルトペンタオースを合成し、これを分取精製した。
次にこの放射能ラベルした10mMのマルトペンタオースを基質とし、前記実施例I−20で得られた組換え新規トランスフェラーゼ(10Unit/ml:活性単位は実施例I−1に従った)を添加し、60℃、3時間作用させ、非還元末端のグルコース残基をHで放射能ラベルしたマルトトリオシルトレハロースを合成し、これを分取精製した。なお、この生成物にグルコアミラーゼ(Rhizopus由来、生化学工業社製)を作用させ、グルコースとα,α−トレハロースに完全に分解した。これらを薄相クロマトグラフィーにて分取しそれぞれ液体シンチレーションカウンターで放射能を測定したところ、α,α−トレハロース画分に放射活性は見られず、グルコース画分に放射活性が回収され、非還元末端のグルコース残基が放射能ラベルされている事を確認した。
以上のように調製した、非還元末端のグルコース残基がHで放射能ラベルされたマルトペンタオース、および非還元末端のグルコース残基がHで放射能ラベルされたマルトトリオシルトレハロースを基質として、これに上記粗酵素液をそれぞれ30Units/ml及び10Units/ml作用させた。反応前、および60℃、3時間後に反応物をサンプリングした。この反応物を薄相クロマトグラフィー(Kieselgel 60メルク社製、溶媒;ブタノール:エタノール:水=5:5:3)で展開した。得られた各糖に相当するところを分取し液体シンチレーションカウンターで放射能を測定したところ、マルトペンタオースを基質とした場合、加水分解産物であるグルコース、マルトース画分には放射活性は見られず、マルトテトラオース、マルトトリオース画分に放射活性が回収された。またマルトトリオシルトレハロースを基質とした場合、加水分解産物であるα,α−トレハロース画分には放射活性は見られず、マルトトリオース画分に放射活性が回収された。
以上の結果より、本組換え新規アミラーゼの作用機作はエンド型に作用するアミラーゼ活性と共に、還元末端側から主に単糖、2糖を生成する活性を有することが確認された。
なお、以上の実施例で用いた試薬の入手先は、それぞれα,α−トレハロース:Sigma社、マルトース(G2):和光純薬社、マルトトリオース〜マルトペンタオース(G3〜G5):林原バイオケミカル社、アミロースDP17:林原バイオケミカル社、イソマルトース:和光純薬社、イソマルトトリオース:和光純薬社、イソマルトテトラオース:生化学工業社、イソマルトペンタオース:生化学工業社、パノース:東京化成社、アミロペクチン:ナカライテスク社である。
実施例II−20 Sulfolobus acidocaldarius ATCC33909株由来新規アミラーゼの部分アミノ酸配列の決定
実施例II−4で得た精製酵素の部分アミノ酸配列の決定は実施例II−15に記載される方法に従って行った。部分アミノ酸配列は下記の通りであった。
Figure 0004033897
実施例II−21 Sulfolobus acidocaldarius ATCC33909株 新規アミラーゼ 部分アミノ酸配列に基づくDNAプローブの作成
実施例II−20により決定された部分アミノ酸配列の情報を基にオリゴヌクレオチドDNAプライマーをDNA合成装置(アプライドバイオシステムズ社モデル381)によって作成した。その配列は下記の通りであった。
Figure 0004033897
このプライマーを各々100pmolおよび実施例II−4の方法に従って得た菌体より実施例II−16の方法に従って調製されたSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株の染色体DNA約100ngを用いてPCRを行った。PCR装置はパーキンエルマー社製Gene Amp PCRシステム モデル9600を用い、1サイクル94℃30秒、54℃30秒、72℃30秒で行いサイクル数30回および総液量100μlで実施した。約830bpの増幅断片をpT7 Blue T−Vector(Novagen社製)へサブクローニングした。このプラスミドの挿入断片の塩基配列を決定したところ実施例II−20で得られたアミノ酸配列に相当する配列が見いだされた。
実施例II−22 Sulfolobus acidocaldarius ATCC33909株由来新規アミラーゼ遺伝子のクローニング
Sulfolobus acidocaldarius ATCC33909株の染色体DNAは実施例II−4の方法に従って得た菌体より、実施例II−16の方法に従って得た。上記染色体DNAを制限酵素Sau3AIで部分消化した後,EMBL3 BamHI切断アーム(STRATAGENE社製)にT4DNAリガーゼにより連結(ライゲーション)した。パッケージングはSTRATAGENE社製,GigapackII Goldを用いて行った。上記ライブラリーを大腸菌LE392に37℃15分感染させた後、NZY寒天プレート培地に播種し、37℃で約8から12時間程度培養して、プラークを形成させた。約2時間、4℃で保存した後、ナイロンメンブレン(アマシャム社製、Hybond N+)へDNAを吸着させた。2xSSPEで軽く洗浄した後80℃2時間ベーキングを行った。プローブは実施例II−21のPCR断片を用い、アマシャム社製 メガプライムDNA標識システムを用いて32Pで標識した。
ハイブリダイセーションの条件は6xSSPE、0.5%SDSで65℃オーバーナイトで行った。洗浄は2xSSPE、0.1%SDSで、室温10分、2回行った。
約8000クローンからスクリーニングを開始して17個の陽性クローンを得た。このクローンより約5.4kbpのBamHI断片を得て、これをpUC118の上記サイトへ挿入した。得られたプラミドをp09A2と命名した。このプラスミドDNAをさらに制限酵素SacIで消化したものをp09A1とする。p09A1の挿入断片の制限酵素地図を図38に、またp09A1の作成方法を図39に記す。上記p09A1についてPharmacia社製,double−strand Nested Delation Kitを用いてデレーションプラスミドを作成した。実施例II−18の方法に従って新規アミラーゼの構造遺伝子の領域を中心にDNA配列を決定した。これらのDNA配列およびそこから推定されるアミノ酸配列は配列番号7および配列番号8にそれぞれ示される通りであった。
このアミノ酸配列中に実施例II−20で得られた部分アミノ酸配列に相当する配列が全て認められた。このアミノ酸配列は長さが556個で、推定分子量64.4kDaのタンパク質をコードしているものと考えられた。この分子量はSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株由来新規アミラーゼの精製酵素をSDS−PAGEにかけることによって得られた分子量の値にほぼ一致した。またプラスミドp09A1を含む形質転換体について実施例II−19の方法に従って新規アミラーゼ活性を確認した。
実施例II−23 KM1株とATCC33909株の上記酵素のアミノ酸配列、塩基配列の相同性について
配列番号6のKM1株由来の新規アミラーゼのアミノ酸配列と、配列番号8のATCC33909株由来の新規アミラーゼのアミノ酸配列とを、また配列番号5のKM1株由来の新規アミラーゼの塩基配列と、配列番号7のATCC33909株由来の新規アミラーゼの塩基配列とを、配列解析ソフト、ジェネティックス(ソフトウエアー開発)を用いてギャップを考慮してそれぞれ解析した。アミノ酸配列についての結果を図40に、塩基配列についての結果を図41に示す。それぞれの図中下段にKM1株の配列を、上段にATCC33909株の配列結果を示し、中段の(*)は両者で一致する配列をまた中段の(.)は両者で性質の似たアミノ酸を示す。相同性はアミノ酸レベルで約59%、塩基配列レベルで64%であった。
実施例II−24 Sulfolobus solfataricus KM1株 および Sulfolobus acidocaldariusATCC33909株由来新規アミラーゼ遺伝子の他の生物種の染色体DNAとのハイプリダイゼーション試験
Sulfolobus solfataricus DSM5833株、Sulfolobus shibatae DSM 5389株、Acidianus brierleyi DSM 1651株、E.coli JM109株の染色体DNAを実施例II−16の方法に準じて制限酵素Hind IIIで消化した。
この消化物を1%アガロースゲル電気泳動にて分離し、アマシャムジャパン社製、Hybond−Nにサザンブロッティングした。このメンブレンにプラスミドpKA1の約1.9kbpのPstI断片(配列番号5の1番から1845番までの配列に対応する)をベーリンガーマンハイム社製、DIGシステムキットによって標識し、これを用いてハイブリダイゼーションを行った。
条件はハイブリダイゼーション:5xSSC、40℃、3時間、洗浄:2xSSC(0.1%SDSを含む)、40℃、5分、2回 0.1xSSC(0.1%SDSを含む)、40℃、5分、2回であった。
その結果、PstI断片は、Sulfolobus solfataricus DSM 5833株については約13.0kbpの断片と、Sulfolobus shibatae DSM 5389株については約9.8kbpの断片と、Acidianus brierleyi DSM 1651株については約1.9kbpの断片とハイブリッドを形成した。一方、ネガティブコントロールであるE.coli JM109株については、ハイブリッドの形成は観察されなかった。
またSulfolobus solfataricus KM1株、DSM5354株、DSM5833株、ATCC35091株、ATCC35092株、Sulfolobus acidocaldarius ATCC33909株、ATCC49426株、Sulfolobus shibatae DSM5389株、Acidianus brierleyi DSM1651株、E.coli JM109株の染色体DNAを実施例II−16の方法に従って得、制限酵素XbaI,HindIII,EcoRVで消化した。この消化物を1%アガロースゲル電気泳動にて分離し、アマシャム社製、Hybond N+にサザンブロッティングした。このメンブレンに配列番号7番の1393番より2121番の領域(実施例II−22で得られたp09A1より制限酵素EcoT22IとEcoRVで消化し、ゲルから回収した)をプローブとして実施例II−22の方法に従い32Pによって標識し、これを用いてハイブリダイゼーションを行った。条件はハイブリダイゼーション6xSSPE、0.5%SDS、60℃でオーバーナイトで行った。洗浄は2xSSPE、0.1%SDSで室温10分、2回行った。その結果Sulfolobus solfataricus KM1株、DSM5354株、DSM5833株、ATCC35091株、ATCC35092株 Sulfolobus acidocaldarius ATCC33909株、ATCC49426株 Sulfolobus shibatae DSM5389株 Acidianus brierleyi DSM1651株の染色体DNAはそれぞれ約3.6kbp,1.0kbp,0.9kbp、0.9kbp、1.0kbp、0.9kbp、0.9kbp、1.4kbp、0.9kbpの部位でハイブリッドを形成した。一方E.coli JM109株の染色体DNAとはハイブリッドを形成しなかった。また配列番号5、6、7、および8の範囲内に含まれるアミノ酸配列、塩基配列と相同性を有する配列が存在しないことをアミノ酸データーバンク(Swiss prot,及びNBRF−PDB)、塩基配列データーパンク(EMBL)から、配列解析ソフト、ジェネティックス(ソフトウエアー開発)を用いて確認した。よってこの新規アミラーゼ遺伝子はSulfolobales目に属する古細菌に特異的に高度に保存されていることがわかった。
実施例III−1 組換え新規アミラーゼおよび組換え新規トランスフェラーゼを用いたα,α−トレハロースの製造
実施例II−19で得られた粗精製組換え新規アミラーゼおよび実施例I−20で得られた濃縮組換え新規トランスフェラーゼ並びに10%可溶性デンプン(ナカライテスク社製、特級品)を用い、プルラナーゼを補助的に添加して、α,α−トレハロースの製造を試みた。反応は以下のように行った。
まず10%可溶性デンプンを0.5〜50Unit/mlのプルラナーゼ(Klebsiella pneumoniae由来:和光純薬社製)で、40℃で1時間処理した後、上記組換え新規トランスフェラーゼ(10Unit/ml)と、上記組換え新規アミラーゼ(150Unit/ml)とを添加し、pH5.5、60℃で100時間反応させた。次いで反応液を100℃で5分間加熱処理して反応を停止し、未反応の基質をグルコアミラーゼにて分解した。その後、実施例II−1に示す条件のHPLC分析法により測定した。
TSK-gel Amide-80 HPLCによる分析結果は図42に示される通りであった。
ここで、組換え新規アミラーゼの酵素活性は1時間に1μmolのα,α-トレハロースをマルトトリオシルトレハロースから遊離する活性を1Unitとして示した。組換え新規トランスフェラーゼの酵素活性はマルトトリオースを1時間に1μmolのグルコシルトレハロースに変換する活性を1Unitとして示した。プルラナーゼの酵素活性の定義は、pH6.0、30℃で1分間にプルランから1μmolのマルトトリオースを生成する酵素量を1Unitとして示した。
プルラナーゼの添加量50Unit/mlの際α,α-トレハロースの収率は67%であった。この値は、組換え新規アミラーゼが、Sulfolobus solfataricus KM1株由来精製新規アミラーゼを上記条件で作用させた場合とほぼ同様の収率を与えることを示している。
産業上の利用可能性
本発明の新規な精製法に基づく酵素製造法により得られるマルトオリゴ糖等の糖に作用してグルコシルトレハロース及びマルトオリゴシルトレハロースなどのトレハロースオリゴ糖等を生成する能力を有する新規トランスフェラーゼを用いることにより、マルトオリゴ糖等の原料を用いて効率的で、かつ高収率にグルコシルトレハロース及びマルトオリゴシルトレハロースなどのトレハロースオリゴ糖等を製造する新規な方法を提供することができる。
本発明の新規アミラーゼを、本発明の新規トランスフェラーゼと組み合わせて用いることにより、デンプン、デンプン分解物、及びマルトオリゴ糖等の糖質原料から効率的に、かつ高収率にα,α−トレハロースを製造する新規な方法を提供することができる。
配 列 表
配列番号:1
配列の長さ:2578
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:Genomic DNA
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
配列番号:2
配列の長さ:728
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:タンパク質
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
配列番号:3
配列の長さ:3467
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:Genomic DNA
起源
生物:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC 33909株
配列
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
配列番号:4
配列の長さ:680
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:タンパク質
起源
生物:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC 33909株
配列
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
配列番号:5
配列の長さ:2691
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:Genomic DNA
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
配列番号:6
配列の長さ:558
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:タンパク質
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
配列番号:7
配列の長さ:3600
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:Genomic DNA
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
配列番号:8
配列の長さ:556
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:タンパク質
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
Figure 0004033897
配列番号:9
配列の長さ:6
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:10
配列の長さ:6
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:11
配列の長さ:5
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:12
配列の長さ:5
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:13
配列の長さ:7
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:14
配列の長さ:7
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:15
配列の長さ:10
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:16
配列の長さ:12
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:17
配列の長さ:9
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:18
配列の長さ:11
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:19
配列の長さ:12
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:20
配列の長さ:7
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:21
配列の長さ:4
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:22
配列の長さ:7
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:23
配列の長さ:8
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:24
配列の長さ:7
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:25
配列の長さ:7
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:26
配列の長さ:5
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:27
配列の長さ:7
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:28
配列の長さ:18
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004033897
配列番号:29
配列の長さ:20
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004033897
配列番号:30
配列の長さ:8
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:31
配列の長さ:9
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:32
配列の長さ:8
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:33
配列の長さ:6
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:34
配列の長さ:11
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:35
配列の長さ:5
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:36
配列の長さ:13
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:37
配列の長さ:8
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:38
配列の長さ:10
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:39
配列の長さ:10
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:40
配列の長さ:9
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:41
配列の長さ:8
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:42
配列の長さ:5
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:43
配列の長さ:6
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:44
配列の長さ:14
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:45
配列の長さ:10
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:N端フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:46
配列の長さ:7
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:47
配列の長さ:7
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:48
配列の長さ:19
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物:Sulfolobus solfataricus
株名:KM1
配列
Figure 0004033897
配列番号:49
配列の長さ:5
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:50
配列の長さ:17
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:51
配列の長さ:9
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:52
配列の長さ:9
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:53
配列の長さ:10
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:54
配列の長さ:7
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:55
配列の長さ:14
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:56
配列の長さ:7
配列の型:アミノ酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源:Sulfolobus acidocaldarius
株名:ATCC33909
配列
Figure 0004033897
配列番号:57
配列の長さ:18
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004033897
配列番号:58
配列の長さ:24
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004033897

Claims (10)

  1. 配列番号9〜27から選ばれる1つ以上の配列を有するSulfolobus solfataricus KM1(FERM BP-4626)株から得られる、少なくとも還元末端から3つ以上のグルコース残基がα−1,4結合である3糖以上の糖を基質とし、その還元末端のα−1,4結合をα−1,α−1結合に転移させる作用を有する新規トランスフェラーゼであって、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法による分子量が74000〜76000であり、且つ、下記の理化学的性質を有する上記酵素:
    (1)至適pH:5.0〜6.0
    (2)至適温度:60〜80℃
    (3)安定pH:4.0〜10.0
    (4)温度安定性:85℃で6時間の処理により91%以上残存
    (5)等電点電気泳動法による等電点:6.1
    (6)反応阻害:5mM CuSO4で100%阻害される。
  2. 配列番号30〜44から選ばれる1つ以上の配列を有するSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株から得られる、少なくとも還元末端から3つ以上のグルコース残基がα−1,4結合である3糖以上の糖を基質とし、その還元末端のα−1,4結合をα−1,α−1結合に転移させる作用を有する新規トランスフェラーゼであって、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法による分子量が74000〜76000であり、且つ、下記の理化学的性質を有する上記酵素:
    (1)至適pH:4.5〜5.5
    (2〉至適温度:70〜80℃
    (3)安定pH:4.0〜10.0
    (4)温度安定性:80℃で6時間の処理により90%以上残存
    (5)等電点電気泳動法による等電点:5.6
    (6)反応阻害:5mM CuSO4で100%阻害される。
  3. 配列番号9〜27から選ばれる1つ以上の配列を有するSulfolobus solfataricus KM1(FERM BP-4626)株から得られる、すべてのグルコース残基がα−1,4結合であるマルトオリゴ糖を基質とし、その還元末端のα−1,4結合をα−1,α−1結合に転移させる作用を有する新規トランスフェラーゼであって、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法による分子量が74000〜76000であり、且つ、下記の理化学的性質を有する上記酵素:
    (1)至適pH:5.0〜6.0
    (2)至適温度:60〜80℃
    (3)安定pH:4.0〜10.0
    (4)温度安定性:85℃で6時間の処理により91%以上残存
    (5)等電点電気泳動法による等電点:6.1
    (6)反応阻害:5mM CuSO4で100%阻害される。
  4. 配列番号30〜44から選ばれる1つ以上の配列を有するSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株から得られる、すべてのグルコース残基がα−1,4結合であるマルトオリゴ糖を基質とし、その還元末端のα−1,4結合をα−1,α−1結合に転移させる作用を有する新規トランスフェラーゼであって、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法による分子量が74000〜76000であり、且つ、下記の理化学的性質を有する上記酵素:
    (1)至適pH:4.5〜5.5
    (2〉至適温度:70〜80℃
    (3)安定pH:4.0〜10.0
    (4)温度安定性:80℃で6時間の処理により90%以上残存
    (5)等電点電気泳動法による等電点:5.6
    (6)反応阻害:5mM CuSO4で100%阻害される。
  5. 請求項1または3に記載のトランスフェラーゼ産生能を有するSulfolobus solfataricus KM1(FERM BP-4626)株細菌を培地に培養し、培養物より、マルトオリゴ糖を基質としてトレハロースオリゴ糖を生成する活性を指標とする活性測定法に基づいて、該トランスフェラーゼを単離精製することを特徴とする請求項1または3に記載のトランスフェラーゼの製造法。
  6. 請求項2または4に記載のトランスフェラーゼ産生能を有するSulfolobus acidocaldarius ATCC33909株細菌を培地に培養し、培養物より、マルトオリゴ糖を基質としてトレハロースオリゴ糖を生成する活性を指標とする活性測定法に基づいて、該トランスフェラーゼを単離精製することを特徴とする請求項2または4に記載のトランスフェラーゼの製造法。
  7. 請求項1、2、3または4に記載の酵素を用い、少なくとも還元末端から3つ以上のグルコース残基がα−1,4結合である3糖以上の糖を基質として作用させ、少なくとも還元末端側の3糖がグルコース単位で構成され、該末端側の1つ目と2つ目のグルコース間の結合がα−1,α−1結合で、該末端側の2つ目と3つ目のグルコース間の結合がα−1,4結合である糖を製造することを特徴とする末端の2糖がα−1,α−1結合である糖の製造法。
  8. マルトオリゴ糖各単独またはそれらの混合物を基質として用いる、請求項7に記載の製造法。
  9. トレハロースオリゴ糖を製造する、請求項8に記載の製造法。
  10. トレハロースオリゴ糖がグルコシルトレハロースまたはマルトオリゴシルトレハロースである、請求項9に記載の製造法。
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