JP4033570B2 - 嵩高紙の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クッキングペーパー、ペーパータオル、ティッシュ、掃除用紙製品及び衛生材料等の吸収性基材等に用いられる嵩高紙の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、製造プロセスの点から、厚みや吸水容量、柔らかさを向上させた嵩高紙を製造する試みがなされている。例えば、乾燥前の濡れた繊維シートに吸引によりパターン付けを行い、その後、圧縮させずに熱風中を通過させて中間乾燥し、ヤンキードライヤーにて最終乾燥する嵩高紙の製造方法において、1つの開孔部面積が0.0072mm2 〜2.1mm2 であり、6.45cm2 あたり100〜3600個の開孔部を有する開孔パターン搬送ベルトを用いる方法(特開昭52−21405号公報)や、感光性樹脂を用いた所定の開孔形状部を有する開孔パターン樹脂と、その補強として従来より用いられている抄紙搬送ベルトとを複合化した開孔パターン搬送ベルトを用いる方法(特表平5−506277号公報および特表平5−506893号公報等)が知られている。
【0003】
しかしながら、特開昭52−21405号公報記載の方法は、相対的に長い繊維よりなる針葉樹パルプを開孔部中へ偏向させて低密度突起を形成させることが不可能であった。
【0004】
また、特表平5−506277号公報及び特表平5−506893号公報記載の方法では、開孔部の面積が3mm2 未満だと、吸引により形成される低密度突起の容積が小さいため、十分な厚みや吸水容量、柔らかさを発現させることができない。また、開孔パターン搬送ベルトの樹脂部分が多くの反転ロールやヤンキードライヤー表面と強力な圧力のもとでこすれ合うため、ベルトの寿命の面で問題がある。また、取り外しや交換に多大の時間を要し、通常の紙と、嵩高紙とを交互に製造したり、該嵩高紙のパターン形状を簡単に変更して製造するのは不可能であった。
【0005】
従って、本発明の目的は、厚みが大きく、吸収性が高く、柔らかさに優れ、かつ適度な丈夫さを有する嵩高紙の製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、長期連続操業に対応でき、通常抄紙生産との切り替えや、パターン形状の変更が容易にできる嵩高紙の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特定の開孔パターンネットを備えたパターン付与工程によるパターン付けを、嵩高紙製造プロセスにおける特定の段階において行うことにより、上記目的が達成され得ることを知見した。
【0007】
本発明は、抄紙機の紙層形成工程と、乾燥工程と、両工程の間に行われるパターン付与工程を有し、該パターン付与工程が、吸引部および該吸引部に沿って該パターン付与工程を周回し且つ上記乾燥工程に導かれない開孔パターンネットを備えており、水分率が50〜99重量%の繊維シートを上記紙層形成工程から上記パターン付与工程に移送させ、該繊維シートを上記開孔パターンネット上に保持した状態で吸引して、該繊維シートに該開孔パターンネットに対応するパターン付けをし、次いで上記乾燥工程において乾燥させることによりパターン付けされた嵩高紙を得る嵩高紙の製造方法であって、
上記開孔パターンネットは、1つの開孔部面積が3〜8mm2、開孔部面積率が15〜65%、パターンを形成する構成材の平面方向の最小幅が0.2〜5mm、厚さが0.5〜3.0mm、長手方向の引張強度が20kg/cm以上であることを特徴とする嵩高紙の製造方法を提供することにより上記目的を達成したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の嵩高紙の製造方法の好ましい実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1に示す装置(抄紙機)1は、吸引ドラム34及び該吸引ドラム34の周面の一部に沿って周回する開孔パターンネット31を備えたパターン付与工程を、紙層形成工程と乾燥工程との間に設置した嵩高紙製造装置であり、該装置1は、原料供給部10、紙層形成部20、パターン付与部30、乾燥部40及び巻取部50から構成されている。
【0009】
上記原料供給部10は、抄紙原料供給ヘッド11を備えており、所定濃度に調製された繊維懸濁液が該抄紙原料供給ヘッド11から上記紙層形成部20へ供給される。
上記紙層形成部20は、紙層形成ベルト21及び該紙層形成ベルト21に隣接して設けられている脱水用の吸引ボックス22を備えている。該紙層形成ベルト21は通常の抄紙機に用いられているワイヤーメッシュベルトから成っている。一方、該吸引ボックス22は、該紙層形成ベルト21上に形成された繊維シート2の脱水をし、下流工程の上記パターン付与部30へ搬送される繊維シート2の水分率を調整している。また、上記紙層形成部20から次に述べるパターン付与部30及び乾燥部40にかけて、搬送ピックアップベルト23が走行しており、上記繊維シート2の安定搬送を可能となしている。吸引ボックス24は、上記紙層形成ベルト21から上記搬送ピックアップベルト23への上記繊維シート2の転送を担っている。
上記パターン付与部30は、吸引ドラム34及びその周面の一部に沿って周回する開孔パターンネット31を備えている。図2(a)及び(b)に示すように、該開孔パターンネット31は、ワイヤーメッシュベルトから構成されている。図1に示すように吸引ボックス37が、上記開孔パターンネット31が吸引ドラム34の周面に沿って走行する部分の内部に配置されており、これにより該開孔パターンネット31を介して、その外側から内側に向けてエアの吸引がされている。また、上記パターン付与部30には、エアーノズル38および弱吸引ボックス39が備えられており、これらによって上記開孔パターンネット31に貼り付いた上記繊維シート2が上記搬送ピックアップベルト23へ再転送されることを容易にしている。
上記乾燥部40は、ドラム状スルー・エアー・ドライヤー(以下、ドライヤーと称す)41を備えており、ドラム周面の外側から内側に向けて熱風が通過するようになされている。上記ドライヤー41の周面には網目状ネット42が配設されている。該ネット42としては熱風の通過に支障のない程度の目開きを有するものが用いられる。また、上記ドライヤー41内部の下端部付近に吸引ボックス43が配設されており、上記パターン付与部30から移送されてきた繊維シート2が上記網目状ネット42上へ転送するのを容易にしている。
上記巻取部50は、製造された嵩高紙3を巻き取るためのワインダー51を具備している。
【0010】
上記装置1について更に詳述すると、上記パターン付与部30において、上記吸引ドラム34の周面の一部に沿って周回する上記開孔パターンネット31は、図2(a)及び(b)に示すように、樹脂製の線状体を織って形成されたネットであり(本実施形態においては平織ネット)、その全面に亘って正方形の開孔部35が多数形成されており、網目状パターンを形成している。
【0011】
ウェット状態の繊維シート2を吸引によりパターン付けするためには、上記開孔パターンネット31及び吸引ボックス34を備えたパターン付与工程を用いることが重要である。該パターン付与工程は、上記装置1における紙層形成工程と乾燥工程との間であればどの位置に設置してもよい。
【0012】
図2(a)及び(b)に示す開孔パターンネット31における開孔部35は1つの面積が3〜8mm2 であり、4〜7mm2 であることが好ましい。該面積が3mm2 に満たないと上記開孔部35中への繊維の偏向が十分でなく、得られる嵩高紙内に良好な低密度突起(後述する低繊維密度領域に相当する)を形成させるに至らない。また、8mm2 を超えると吸引による繊維の脱落が生じ、得られる嵩高紙に穴が開きやすくなり、さらに該嵩高紙内に形成される網目状の高密度領域(後述する高繊維密度領域に相当する)の面積が小さくなり十分な強度を有する嵩高紙が得られなくなる。
【0013】
上記開孔部35の面積は、上記開孔パターンネット31における開孔部面積率と関係しており、本発明においては、上記開孔部35の個々の面積を上述の範囲としていると共に開孔部面積率を15〜65%としている。該開孔部面積率が15%に満たないと、上記低密度突起を形成する領域全体の面積が小さくなり、吸収容量が高く、風合いに優れた嵩高紙を得ることができない。該開孔部面積率が65%を超えると、上記高密度領域を形成する領域全体の面積が小さくなり、十分な強度を有する嵩高紙が得られなくなる。上記開孔部面積率は、35〜60%であることが好ましい。尚、本明細書にいう開孔部面積率とは、上記開孔パターンネット31において上記開孔部35が形成されている領域に対して測定された値をいい、例えば上記開孔部35が形成されていない上記開孔パターンネット31の左右両側部は測定対象領域から除外される。
【0014】
上記開孔部35の面積は、上記開孔パターンネット31において該開孔部35を形成する(取り囲む)ネット構成材36〔図2(a)及び(b)参照〕の幅とも関係している。そして本発明においては、上記開孔部35の個々の面積を上述の範囲としていると共に上記構成材36の平面方向(即ち、上記開孔パターンネット31を平面視した場合)の最小幅を0.2〜5mmとしている。該幅が0.2mmに満たないと、得られる嵩高紙内に形成される網目状の高密度領域の線幅が細くなりすぎて、十分な強度を有する嵩高紙が得られない。5mmを超えると、得られる嵩高紙内に形成される網目状の高密度領域の線幅が太くなり過ぎて硬い風合いの紙となってしまう。上記構成材36の平面方向の最小幅は、0.4〜3mmであることが好ましく、0.5〜2mmであることが更に好ましい。尚、本明細書にいう上記構成材の最小幅とは、該構成材の幅が一定でない場合には、該構成材を平面視したときの最狭部の幅をいい、平面視して該構成材の幅が一定の場合には当該幅をいう。
【0015】
また、上記開孔パターンネット31の厚みT〔図2(b)参照〕、換言すれば上記開孔部35の深さは0.5〜3.0mmであり、0.7〜2.5mm、特に1.0〜2.0mmであることが好ましい。上記厚みTが0.5mmに満たないと上記開孔部35中への繊維の偏向が十分でなく、得られる嵩高紙内に良好な低密度突起を形成させるには至らない。3.0mmを超えると上記開孔部35中への繊維の偏向状態が一定となってしまい、さらに高吸引時には得られる嵩高紙に穴が開きやすくなる。
【0016】
上記開孔パターンネット31は抄紙安定性(上記開孔パターンネット31に密着した上記繊維シート2の剥離しやすさ)の面から撥水性であることが好ましい。更に好ましくは、上記開孔パターンネット31は、水に対する接触角が60°以上、特に75°以上の撥水性を有していることが好ましい。このような開孔パターンネットを用いることにより、一旦吸引によるパターン付けによって該開孔パターンネットに貼り付いた繊維シートを他の搬送ベルトに転送させる際に該開孔パターンネットからの剥離性が一層向上し、高速抄紙に一層適したものとなる。上記の撥水性を発現させるために、開孔パターン構造体32の材質が親水性である場合には、撥水コーティング処理することが好ましく、具体的にはテフロン樹脂やウレタン樹脂等で表面処理することが挙げられる。また、上記開孔パターン構造体に、ポリオレフィン系剥離剤、高級脂肪酸系剥離剤または鉱物油系剥離剤等の剥離剤をスプレー添加することによっても剥離性を改善することができる。尚、上記接触角は、協和界面科学社製のCONTACT ANGLEMETER CA-D を用い、温度25℃において、開孔パターン構造体の小片サンプル板(76mm×26mm)に水10マイクロリットルをシリンジにて滴下後、すばやく測定される。
【0017】
上記開孔パターンネット31は、基本的に単独で周回するように用いられるので、周回に耐え得るに十分な強度を有していることが必要とされる。この目的のために、開孔パターンネット31の長手方向(周回方向)の引張強度は、20kg/cm以上とされており、好ましくは40kg/cm以上、更に好ましくは60kg/cm以上とされている。該引張強度が20kg/cmに満たないと抄紙機や加工機における開孔パターンネットの安定走行が不能になる。上記引張強度は、引張強度試験機を用いた破断強度の測定から求められ、その条件は試料片の幅10mm、チャック間距離100mm、引張速度60mm/分である。
【0018】
上記開孔パターンネット31としては、上述の範囲の開孔部面積、開孔部面積率、厚さ及び引張強度を有し、且つ構成材の平面方向の最小幅が上述の範囲のものであれば、通常の抄紙・加工用の搬送ベルトとして用いられている線状体の織物からなるプラスチックネットと同様のものを使用できる。またガラス繊維、ケブラー繊維、金属製の糸等から構成されるネットも使用できる。
【0019】
図1に示す装置1を用いた嵩高紙の製造方法について更に説明すると、まず、繊維懸濁液を上記抄紙原料供給ヘッド11から上記紙層形成ベルト21上に供給し、該紙層形成ベルト21上に繊維を堆積させて、ウエット状態の繊維シート(紙層)2を形成する。尚、上記繊維懸濁液の濃度に特に制限は無く、紙層形成工程を安定に行い得る範囲の中から適宜選択することができる。
【0020】
次いで、上記繊維シート2中の水分を上記吸引ボックス22で脱水して、パターン付け前の該繊維シート2の水分率を所定の値とする。該水分率は、該繊維シート2に十分なパターン付けを可能とするために、該繊維シート2の重量(即ち、湿潤状態の重量)の50〜99重量%とし、好ましくは65〜90重量%、更に好ましくは70〜85重量%とする。該水分率が50重量%に満たないと濡れた繊維シート2中の繊維1本1本の自由度が低いため、吸引による繊維構造の再構築が困難となり、99重量%を超えると濡れた繊維シート2の構造維持ができず、搬送することが困難となる。
【0021】
所定の水分率に調整された上記繊維シート2は、上記紙層形成ベルト21から分離すると共に上記開孔パターンネット31上へと移送される。周回する上記開孔パターンネット31の内周に設置された吸引ドラム34においては、該開孔パターンネット31を介して、その外部から内部に向けて上記吸引ボックス37によりエアが吸引されている。従って、上記繊維シート2のうち、上記開孔パターンネット31中の開孔部35上に位置している領域(この領域を「領域A」という)は、上記吸引によって上記開孔部35内に食い込み、上記吸引ボックス37の内部に向けて厚みを増した凸状の形状となる。また、領域Aは、吸引前に比して、構成繊維の繊維密度が低くなった低繊維密度領域となる。
【0022】
一方、上記繊維シート2のうち、上記開孔パターンネット31の構成材36上に位置している部分及びその近傍(この領域を「領域B」という)は、上記吸引によって上記構成材36に押し付けられて圧縮されるので、吸引前に比して、その厚みが若干小さくなると共にその繊維密度が若干大きくなる。即ち、領域Bは、領域Aに対して相対的に高繊維密度領域となる。斯かる高繊維密度領域は、得られる嵩高紙における上記低繊維密度領域に起因する引張強度の低下傾向を抑制する作用を有する。特に、上述の通り、上記開孔パターンネット31は連続した網目状パターンから形成されているので、上記高繊維密度領域も連続した網目状パターンとなり、得られる嵩高紙の引張強度が一層向上する。
【0023】
このようにして、上記開孔パターンネット31が上記吸引ドラム34の周面の一部に沿って走行する間に、上記繊維シート2には、上記開孔パターンネット31の網目状パターンに対応するパターン付けが行われる。
【0024】
上記パターン付与工程における上記吸引ボックス37の吸引力は、上記繊維シート2の坪量や水分率等にもよるが、一般的な範囲としては、−10〜−100kPaであることが好ましく、−25〜−70kPaであることが更に好ましい。
【0025】
上記パターン付与工程において所定のパターン付けがされた上記繊維シート2は、次いで乾燥工程としての上記ドライヤー41内に導入され、熱風中を通過することにより乾燥される。この際、通常の抄紙プロセスで一般に行われている圧密化工程は行われない。この理由は、得られる嵩高紙の嵩高性が損なわれないようにするためである。
【0026】
上記ドライヤー41がほぼ一回転する間に上記繊維シートは乾燥されて最終製品である嵩高紙3が得られる。得られた嵩高紙3は、上記巻取部50における上記ワインダー51によって巻き取られる。
【0027】
以上の工程により嵩高紙3が製造されるが、本発明においては、上記吸引ドラム34及び上記開孔パターンネット31を備えたパターン付与工程を乾燥工程の前に設置することにより、従来の嵩高紙の製造方法では得られなかった以下の(1)〜(5)に述べるような利点がある。
(1)上記開孔パターンネット31を乾燥工程内に導くこと無く上記繊維シートのパターン付けができるので、250℃以下の軟化点を有する非耐熱性の材質から成る開孔パターン構造体を使用できる。(2)上記開孔パターンネット31は、吸引ドラム34の周面の一部に沿って周回するのみなのでそれ程長いネットを製造する必要がない。(3)上記開孔パターンネット31を取り替えるだけの簡単な操作で、上記繊維シート2に付与されるパターン形状の変更が容易にできる。(4)上記開孔パターンネット31を乾燥工程内に導かないので、長時間連続使用しても劣化しにくく、その耐用年数が長くなる。(5)上記パターン付与部30全体をを下方へ移動させて上記開孔パターンネット31を繊維シート2の走行パスから外すことで、通常抄紙の生産も容易にでき、通常抄紙の生産との切り替えが簡単である。
【0028】
このようにして得られた嵩高紙の断面の構造を模式的に図3に示す。
図3に示すように、上述の方法で得られた嵩高紙3には、低繊維密度領域4と高繊維密度領域5とが存在している。該低繊維密度領域4は、上記開孔パターンネット31における開孔部35に対応して形成されたものであり、厚みが相対的に大きくなっている。一方、該高繊維密度領域5は上記開孔パターンネット31における開孔部35を取り囲む構成材36に対応して形成されたものであり、厚みが相対的に小さくなっている。その結果、上記嵩高紙3は凹凸形状の構造を有し極めて嵩高となり、厚みが大きくなる。従って、吸収性が高く、柔らかさに優れたものとなる。また、強度の高い上記高繊維密度領域5が連続した網目状パターンとなっているので、上記嵩高紙3は適度な強度も有する。
【0029】
上記嵩高紙3を構成する繊維としては、繊維長10mm以下、特に0.5〜5mmの短繊維が好ましく用いられる。斯かる短繊維としては、針葉樹や広葉樹の化学パルプ、半化学パルプ及び機械パルプ等の木材パルプ、これら木材パルプを化学処理したマーセル化パルプ及び架橋パルプ、麻や綿等の非木材系繊維並びにレーヨン繊維等の再生繊維のようなセルロース系繊維;並びにポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維及びポリアミド繊維のような合成繊維等が挙げられる。これらの繊維のうち、製品のコスト、強度、抄紙適性等の観点から、木材パルプ、非木材パルプ、レーヨン繊維等のセルロース系繊維が好ましい。とりわけ、製品コストの観点から、木材パルプが一層好ましい。これらの短繊維は、上記嵩高紙3を構成する繊維全体に対して50〜100重量%用いられることが好ましく、70〜100重量%用いられることが更に好ましい。
【0030】
上記嵩高紙3をクッキングペーパー、ペーパータオル、ティッシュ等の吸収性基材や洗浄剤等を含浸させて用いる清掃用シートとして用いる場合には、繊維全体に対して上記セルロース系繊維を50〜100重量%含有させることが好ましい。また、これに加えて、湿潤強度を発現させるためにポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂等の湿潤紙力増強剤を添加することも好ましい。かかる湿潤紙力増強剤は、嵩高紙全量に対して一般に0.2〜2.0重量%添加されることが好ましい。また、より高い湿潤強度を発現させるために、上述のポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂にカルボキシメチルセルロース等のアニオン系ポリマーや両性ポリアクリルアミド等の両性ポリマーを適量混合した湿潤紙力増強剤を用いることも好ましい。
【0031】
上記開孔パターンネットとしては、図2(a)及び(b)に示す正方形の開孔部を有するものの他に、長方形またはその他の形状を有する開孔部を有するもの、或いはこれらの形状を任意に組み合わせたもの等を用いることもできる。
また、上記開孔パターンネットを、他のメッシュベルト等と併用してもよい。また、図1に示す装置においては、上記乾燥部40と巻取部50との間にヤンキードライヤーを設置すると共に、該ヤンキードライヤーの出口にクレーピングドクターを並設して、得られる嵩高紙の風合いを一層向上させてもよい。尚、この場合には、上記ドライヤー41における上記繊維シートの乾燥の程度を下げておくことが好ましい。
また、上記実施形態では、抄紙機のライン内で形成されたウエット状態の繊維シートにパターン付けする場合(インラインでのパターン付け)を例にとり説明したが、これに代えて、一旦通常抄紙を行い該通常抄紙により得られた紙を、再湿潤させて上記水分率の繊維シートとなし、次いで上記開孔パターンネットが吸引部に沿って周回するようになされている装置を用いて該繊維シートにパターン付け(オフラインでのパターン付け)をしてもよい。
また、上記嵩高紙の製造方法に関して特に詳述しなかった点については、従来公知の抄紙方法に関する説明が適宜適用される。
【0032】
また、本発明によれば下記のものも併せて提供される。
水分率が50〜99重量%の繊維シートを保持した状態で、吸引によって該繊維シートにパターン付けを行うための、多数の開孔部を有する開孔パターンネットであって、
上記開孔パターンネットは、1つの開孔部面積が3〜8mm2 、開孔部面積率が15〜65%、パターンを形成する構成材の平面方向の最小幅が0.2〜5mm、厚さが0.5〜3.0mm、長手方向の引張強度が20kg/cm以上であることを特徴とする開孔パターンネット。
乾燥工程の前に設置され、且つ吸引部および該吸引部に沿って周回する開孔パターンネットを備えたパターン付与部を具備する嵩高紙製造装置であって、
上記開孔パターンネットは、1つの開孔部面積が3〜8mm2 、開孔部面積率が15〜65%、パターンを形成する構成材の平面方向の最小幅が0.2〜5mm、厚さが0.5〜3.0mm、長手方向の引張強度が20kg/cm以上であることを特徴とする嵩高紙製造装置。
【0033】
【実施例】
以下、実施例により本発明の有効性を例証する。しかしながら、本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
【0034】
〔実施例1〕
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、重量平均繊維長:2.35mm)60重量%および広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、重量平均繊維長:0.74mm)40重量%からなる混合パルプ原料をリファイナーにてカナディアン・スタンダード・フリーネス(CSF)640mlにまで叩解した。このパルプ原料を2重量%に分散したスラリーに、湿潤紙力増強剤としてのポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂WS−570(日本PMC社製)を0.6重量%(対パルプ重量%)、乾燥紙力増強剤および上記ポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂の歩留まり向上剤としてのカルボキシメチルセルロース(WS−A、第一工業製薬)をそれぞれ0.25重量%(対パルプ重量%)添加して抄紙原料とした。調製された抄紙原料を用いて、図1に示す抄紙機を用いて嵩高紙を製造した。尚、図1における紙層形成ベルト21として、縦90メッシュ/インチ×横85メッシュ/インチのポリエステル製1,4−サテン織りベルトを使用した。
【0035】
図1に示す抄紙機の抄紙原料供給ヘッド11より上記抄紙原料を0.1重量%に希釈して紙層形成ベルト21上へ供給し、吸引ボックス22で吸引脱水して水分率75重量%の繊維シート2を形成した。次いで繊維シート2を、吸引ドラム34の周面の一部に沿って周回する開孔パターンネット31へ移送し、該吸引ドラム34に備えられた吸引ボックス37により−33kPaで吸引して所定のパターンを付与した。上記開孔パターンネット31としては、図2(a)及び(b)に示される正方形の開孔部形状を有し、1つの開孔部面積3.7mm2 、開孔部面積率46.2%、開孔部を形成する構成材の幅0.9mm、厚み1.8mm、長手方向の引張強度85kg/cmであり、ポリエステル樹脂製のワイヤーを平織りして得られたメッシュベルトを用いた。このメッシュベルトの水に対する接触角は77°であり、該メッシュベルトからの繊維シート2の剥離が良好なようになされている。尚、嵩高紙を製造する際の抄紙速度は150m/minであった。
【0036】
パターン付与された繊維シート2は、弱吸引ボックス39の弱い吸引により搬送ピックアップベルト23へ転送されてドライヤー41へ導入される。該ドライヤー41内で繊維シート2を250℃の熱風を通過させて乾燥し、坪量22g/m2 の嵩高紙3を得た。
【0037】
〔実施例2及び3〕
開孔パターンネット31として表1に示すものを用いる以外は実施例1と同様の操作で坪量22g/m2 の嵩高紙を製造した。
【0038】
〔比較例1〕
実施例1において、吸引ボックス37による吸引を行なわない以外は、実施例1と同様の操作で坪量22g/m2 の紙を製造した。
【0039】
〔比較例2〕
開孔パターンネット31として表1に示すものを用いる以外は実施例1と同様の操作で坪量22g/m2 の紙を製造した。
【0040】
上記実施例および比較例の製造条件を表1にまとめて示す。また、上記実施例および比較例の嵩高紙について、厚み、強度および吸収性を調べるために、平均乾燥厚み(3g/cm2 荷重下、23g/cm2 荷重下)、平均湿潤厚み(3g/cm2 荷重下、23g/cm2 荷重下)、乾燥引張強度(MD、CD)、湿潤引張強度(MD、CD)、単位面積あたりの飽和吸水量を以下の方法にて測定した。その結果を表2に示す。
【0041】
<平均乾燥厚み>
オザキ製作所社製の厚み計(R5−C)を用いて、5cm×5cmの底面を有する75gのアクリル板を一枚の嵩高紙の上に置いて3g/cm2 荷重下の乾燥平均厚みを測定した。また、上記アクリル板の上に更に500gのおもりを載せて23g/cm2 荷重下の平均乾燥厚みを測定した。
【0042】
<平均湿潤厚み>
嵩高紙を7cm×7cmに裁断して大量の水に5秒間浸した後、10秒間水を切ってから平均乾燥厚みの場合と同様にして平均湿潤厚みを測定した。
【0043】
<乾燥引張強度>
嵩高紙を幅25mm、長さ100mmの短冊状に裁断した後、速やかに万能圧縮引張試験機(オリエンティック社製、RTM−25)を用いて、引張速度300mm/min、試験片つかみ間隔50mmの条件で破断時の強度を測定した。なお、表2中、MDは抄紙機の流れ方向の強度を示し、CDはそれに直交する方向の強度を示す。
【0044】
<湿潤引張強度>
嵩高紙を幅25mm、長さ100mmの短冊状に裁断し、大量の水に5秒間浸した後、10秒間水を切ってから、乾燥引張強度と同様の方法で破断時の強度を測定した。
【0045】
<飽和吸水量>
嵩高紙を7cm×7cmに裁断して大量の水に20秒間浸した後、30秒間水を切ってから、嵩高紙に吸収された水の重量(g/49cm2 )を天秤にて測定した。
【0046】
【表1】
Figure 0004033570
【0047】
【表2】
Figure 0004033570
【0048】
表1及び表2に示す結果から明らかなように、特定の開孔パターンネットを用いて特定の方法により得られた嵩高紙(実施例1〜3)は、比較例の紙に比べて厚みが大きく、吸収性が高く、かつ適度な強度を有していることが分かる。
【0049】
【発明の効果】
以上、詳述した通り、本発明の嵩高紙の製造方法によれば、厚みが大きく、吸収性が高く、柔らかさに優れ、かつ適度な強度を有する嵩高紙が得られる。
また、本発明の嵩高紙の製造方法においては、上記開孔パターンネットを乾燥工程内に導くこと無く上記繊維シートのパターン付けができるので、非耐熱性の材質から成る開孔パターン構造体を使用できる。
また、上記開孔パターンネットが吸引部に沿って周回するのみなのでそれ程長いネットを製造する必要がない。
また、本発明の嵩高紙の製造方法においては、上記開孔パターンネットを取り替えるだけの簡単な操作で、パターン形状の変更が容易にできる。
また、上記開孔パターンネット31を乾燥工程内に導かないので、長時間連続使用しても劣化しにくく、その耐用年数が長くなる。
更に、パターン付与工程を移動させて繊維シートの走行パスから外すだけで、通常抄紙の生産も容易にでき、通常抄紙の生産との切り替えが簡単である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の嵩高紙の製造方法に好ましく用いられる装置を示す模式図である。
【図2】 図2(a)は、開孔パターンネットの要部を拡大して示す平面図であり、図2(b)は、図2(a)におけるI−I線断面図である。
【図3】 本発明の嵩高紙の製造方法によって得られた嵩高紙の断面の構造を示す模式図である。
【符号の説明】
1 嵩高紙製造装置
2 繊維シート
3 嵩高紙
4 低繊維密度領域
5 高繊維密度領域
10 原料供給部
20 紙層形成部
30 パターン付与部
31 開孔パターンネット
34 吸引ドラム
35 開孔部
36 構成材
37 吸引ボックス
40 乾燥部
41 ドラム状スルー・エアー・ドライヤー
50 巻取部

Claims (4)

  1. 抄紙機の紙層形成工程と、乾燥工程と、両工程の間に行われるパターン付与工程を有し、該パターン付与工程が、吸引部および該吸引部に沿って該パターン付与工程を周回し且つ上記乾燥工程に導かれない開孔パターンネットを備えており、水分率が50〜99重量%の繊維シートを上記紙層形成工程から上記パターン付与工程に移送させ、該繊維シートを上記開孔パターンネット上に保持した状態で吸引して、該繊維シートに該開孔パターンネットに対応するパターン付けをし、次いで上記乾燥工程において乾燥させることによりパターン付けされた嵩高紙を得る嵩高紙の製造方法であって、
    上記開孔パターンネットは、1つの開孔部面積が3〜8mm2、開孔部面積率が15〜65%、パターンを形成する構成材の平面方向の最小幅が0.2〜5mm、厚さが0.5〜3.0mm、長手方向の引張強度が20kg/cm以上であることを特徴とする嵩高紙の製造方法。
  2. 上記パターン付与工程から上記乾燥工程にかけて搬送ピックアップベルトを走行させ、
    上記パターン付与工程においてパターン付与された上記繊維シートを、上記搬送ピックアップベルトへ転送させ更に該搬送ピックアップベルトから上記乾燥工程へ導入する請求項1記載の嵩高紙の製造方法。
  3. パターン付けされた上記繊維シートを、熱風中を通過させて圧密化することなく乾燥させる、請求項1又は2に記載の嵩高紙の製造方法。
  4. 上記開孔パターンネットは、水に対する接触角が60゜以上の撥水性を有している、請求項1〜3の何れかに記載の嵩高紙の製造方法。
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