以上説明した従来例においては、光が水平走査部のミラー部の反射面に斜めに入射する。そのため、その入射によって反射面上に形成されるスポットが楕円状を成すことになる。そのスポットの長軸は、光の入射方向に対して平行であり、一方、同じスポットの短軸は、光の入射方向に対して直角である。
上述の従来例においては、水平走査部のミラー部の揺動軸線が、光の入射方向に対して直角である。そのため、そのミラー部上にはスポットが、その揺動軸線に対して直角な方向(以下、「回転半径方向」ともいう。)に細長く延びるように形成されることとなる。
一般に、ミラー部の形状は、そのミラー部に向かって来る光を漏れなく受けるように設計される。また、ミラー部の、回転半径方向における寸法が長いほど、そのミラー部の慣性モーメントが大きくなり、その結果、そのミラー部の走査周波数を増加させることが困難となる。
また、一般に、光が走査される走査面上においては、水平方向に光を走査する水平走査と、水平走査線に対して交差する方向に光を走査する垂直走査とが行われる。その走査面上においては、1回当たりの走査に際し、水平走査は複数回繰り返されるのに対し、垂直走査はそれより少ない数だけ行われる。そのため、一般には、水平走査部の方が垂直走査部より、ミラー部を高速で揺動させること、すなわち、光を高い走査周波数で走査することが要望される。
そのような要望が存在するにもかかわらず、上述の従来例においては、水平走査部のミラー部の揺動軸線が光の入射方向に対して直角に配置されているため、そのミラー部に向かって来る光を漏れなく受け取るためにそのミラー部がそれの回転半径方向に大型化してしまう傾向がある。そのため、この従来例においては、垂直走査部より走査周波数の増加が要望される水平走査部において、光を高い走査周波数で走査することが困難である。
以上説明した事情を背景として、本発明は、光が入射する反射面の揺動により、その入射した光を2次元的に走査する光スキャナおよびそれを備えた画像形成装置において、光の走査速度の高速化と光スキャナの小型化とを実現することが容易である光スキャナの構造を提供することを課題としてなされたものである。
本発明によれば、光が入射する反射面の揺動により、その入射した光を2次元的に走査する光スキャナであって、(a)第1反射面が形成された第1ミラー部を有し、前記第1反射面に斜めに入射した光を前記第1ミラー部の第1揺動軸線まわりの揺動によって第1方向に走査する第1走査部であって、(i)第1固定枠部と、(ii)その第1固定枠部と前記第1ミラー部との間に位置して前記第1揺動軸線に沿って延びるとともに、前記第1固定枠部に前記第1ミラー部を、前記第1揺動軸線まわりに、前記第1固定枠部に対して揺動可能に連結する第1連結部とを有し、かつ、前記第1固定枠部は、前記第1揺動軸線に沿って延びるように前記第1ミラー部と前記第1連結部とが互いに連結されてなる第1揺動部を包囲するものと、(b)当該光スキャナの非作動状態においては前記第1反射面に対して概して平行となるように第2反射面が形成された第2ミラー部を有し、前記第1反射面から前記第2反射面に斜めに入射した光を、前記第2ミラー部の、前記第1揺動軸線と交差する第2揺動軸線まわりの揺動により、前記第1方向と交差する第2方向に走査する第2走査部とを含むものが提供される。
この光スキャナにおいては、前記第1揺動軸線が、当該光スキャナを前記第1反射面および前記第2反射面に対して直角な方向に見た場合に、前記第1反射面に光が入射する方向に対して実質的に平行である。
この光スキャナにおいては、前記第1反射面と前記第2反射面とが、それらの順に、当該光スキャナ内における前記光の進行方向に沿って互いに直列に、かつ、同一平面上に配置されている。
この光スキャナは、さらに、前記第1反射面から出射した光を前記第2反射面に向けて反射する第3反射面を含んている。
この光スキャナにおいては、前記第2ミラー部は、当該光スキャナを前記第2揺動軸線の方向に見た場合に前記第1揺動部とオーバラップする部分を含んでいる。
この光スキャナによれば、第2ミラー部が第1走査部とオーバラップする部分を含まない場合より、第1走査部と第2走査部とを第1揺動軸線の方向に詰めて配置することが容易となる。その結果、この光スキャナを、第1揺動軸線の方向、すなわち、第1ミラー部と第2ミラー部とが並ぶ方向に関して小型化することが、第2ミラー部が第1走査部とオーバラップする部分を含まない場合より容易となる。
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈されるべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきである。
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
(1) 光が入射する反射面の揺動により、その入射した光を2次元的に走査する光スキャナであって、
第1反射面が形成された第1ミラー部を有し、前記第1反射面に斜めに入射した光を前記第1ミラー部の第1揺動軸線まわりの揺動によって第1方向に走査する第1走査部と、
当該光スキャナの非作動状態においては前記第1反射面に対して概して平行となるように第2反射面が形成された第2ミラー部を有し、前記第1反射面から前記第2反射面に斜めに入射した光を、前記第2ミラー部の、前記第1揺動軸線と交差する第2揺動軸線まわりの揺動により、前記第1方向と交差する第2方向に走査する第2走査部と
を含み、
前記第1揺動軸線は、当該光スキャナを前記第1反射面および前記第2反射面に対して直角な方向に見た場合に、前記第1反射面に光が入射する方向に対して実質的に平行である光スキャナ。
この光スキャナにおいては、2つの走査部が光の進行方向に沿って互いに直列に配置され、さらに、それら2つの走査部の2つの反射面が、当該光スキャナの非作動状態においては概して互いに平行となるように配置されている。
したがって、この光スキャナによれば、例えば、2つの反射面に対して直角な方向に関して小型化したり、それら2つの反射面が互いに並ぶ方向に関して小型化することが容易になる。
さらに、この光スキャナにおいては、2つの走査部のうち、光の進行方向に関して上流側に位置する第1走査部につき、それのミラー部の揺動軸線が、当該光スキャナをその第1走査部の反射面に対して直角な方向に見た場合に、その反射面に光が入射する方向に対して実質的に平行であるようにされている。
したがって、この光スキャナによれば、その反射面に斜めに光が入射するためにその反射面上に形成されるスポットが細長く変形させられても、そのスポットの長軸が、その反射面の揺動軸線に対して直角にならずに済む。その結果、そのようなスポットに合わせてそのミラー部の形状を決定しても、ミラー部の、回転半径方向における寸法が、前述の従来例ほどには長くならずに済む。
したがって、本項に係る光スキャナによれば、ミラー部の慣性モーメントの低減化が容易となり、ひいては、ミラー部の走査周波数の増加が容易となる。よって、この光スキャナによれば、走査周波数の増加と光スキャナの小型化とを両立させることが容易となる。
この光スキャナにおいては、当該光スキャナの非作動状態において、第1反射面と第2反射面とが互いに概して平行となるが、それら2つの反射面の具体的なレイアウトとしては、例えば、それら2つの反射面が実質的に同一の平面上に並んで配置されるレイアウトや、隙間を隔てて互いに実質的に平行に対向する2平面上にそれぞれ、完全には正対しないようにして配置されるレイアウト等がある。
本項における「第1揺動軸線」および「第2揺動軸線」は、いずれも、例えば、対応するミラー部に対して平行な軸線として設定したり、対応するミラー部を平行に通過する軸線として設定することが可能である。
(2) 前記第1走査部は、さらに、圧電素子によって前記第1ミラー部を揺動させる第1駆動源を含み、前記第2走査部は、さらに、圧電素子によって前記第2ミラー部を揺動させる第2駆動源を含む(1)項に記載の光スキャナ。
この光スキャナにおいては、2つのミラー部がいずれも、圧電素子を用いた駆動源によって揺動させられる。したがって、この光スキャナによれば、前述の従来例のように、電磁気力または静電気力によってミラー部の揺動を行う場合に比較して、小型にしてミラー部を高速で揺動させることが容易となる。
(3) 前記第1反射面に入射する光は、平行光である(1)または(2)項に記載の光スキャナ。
前記(1)または(2)項に係る光スキャナにおいて、第1反射面に入射する光(以下、単に「入射光」という。)を非平行光、すなわち、拡散光または収束光とした場合には、当該光スキャナ内において光の断面積が、入射光が平行光である場合より増加する傾向が生ずる。そのため、入射光を非平行光とした場合には、平行光である場合より、当該光スキャナ内において光を漏れなく受けることが理想的であるミラー部の面積が増加する傾向が生ずる。この傾向は、ミラー部の大型化、重量増加および慣性モーメント増加を招来する。
これに対し、本項に係る光スキャナにおいては、入射光が平行光とされている。したがって、この光スキャナによれば、入射光が非平行光である場合とは異なり、ミラー部の小型化、重量低減および慣性モーメント低減が容易となり、ひいては、光の走査速度の増加も容易となる。
(4) 前記第1走査部は、前記第2走査部より高い走査周波数で前記光を走査する(1)ないし(3)項のいずれかに記載の光スキャナ。
この光スキャナによれば、前記(1)項に係る光スキャナの、前述の特有のレイアウトに基づく技術的特徴を利用することにより、第1走査部の走査周波数が、第2走査部の走査周波数より増加させられる。
(5) 前記第1走査部は、水平方向に前記光を走査する水平走査を行い、
前記第2走査部は、水平走査線に対して交差する方向に前記光を走査する垂直走査を行う(4)項に記載の光スキャナ。
前述のように、一般に、光が走査される走査面上においては、水平方向に光を走査する水平走査と、水平走査線に対して交差する方向に光を走査する垂直走査とが行われる。その走査面上においては、1回当たりの走査に際し、水平走査は複数回繰り返されるのに対し、垂直走査はそれより少ない数だけ行われる。したがって、この種の走査に際しては、水平走査の方が垂直走査より、走査速度の高速化が要望される。
本項に係る光スキャナにおいては、そのように走査速度の高速化が強く要望される水平走査が、前述のように、第2走査部より高速の走査が容易な第1走査部によって実現される。
(6) 前記第1走査部と前記第2走査部とは、前記第1ミラー部と前記第2ミラー部とのそれぞれの共振現象を利用して前記光を走査する(4)または(5)項に記載の光スキャナ。
この光スキャナによれば、前記(4)または(5)項に係る光スキャナにおける「第1走査部」および「第2走査部」がいずれも、第1ミラー部および第2ミラー部のうち対応するものの共振現象を利用しないで光を走査する場合より、各走査部の走査周波数を増加させることや、実際の走査周波数を安定化させることが容易となる。
(7) 前記第1走査部は、前記第1ミラー部の共振現象を利用して前記光を走査する一方、前記第2走査部は、前記第2ミラー部の共振現象を利用しないで前記光を走査する請求項4または5に記載の光スキャナ。
この光スキャナによれば、前記(4)または(5)項に係る光スキャナにおける「第1走査部」が第1ミラー部の共振現象を利用しないで光を走査する場合より、第1走査部の走査周波数を増加させることや、実際の走査周波数を安定化させることが容易となる。
(8) 前記第2反射面の、前記第2揺動軸線の方向における寸法は、前記第1反射面によって走査される光の振れ角をα、当該光スキャナを前記第1反射面および前記第2反射面に対して直角な方向に見た場合に第1反射面の中心と第2反射面の中心とが互いに隔たる距離をdとすると、2・d・tan(α/2)で表わされる寸法以上である(1)ないし(7)項のいずれかに記載の光スキャナ。
この光スキャナによれば、それの第1走査部および第2走査部のレイアウトに従い、第2反射面の、第2揺動軸線の方向における寸法を、第1反射面によって走査される光の振れ角αと、当該光スキャナを第1反射面および第2反射面に対して直角な方向に見た場合に第1反射面の中心と第2反射面の中心とが互いに隔たる距離dとを参酌して設定することが可能となる。
(9) さらに、前記第1走査部と前記第2走査部とを収容するそれらに共通のハウジングを含み、そのハウジングは、光が外部から前記第1反射面に入射するための入口側透過部と、光が前記第2反射面から外部に出射するための出口側透過部とを含む(1)ないし(8)項のいずれかに記載の光スキャナ。
この光スキャナにおいては、第1走査部および第2走査部が、それらに共通のハウジングに収容され、さらに、第1反射面への入射光のために入口側透過部が設けられる一方、第2反射面からの出射光のために出口側透過部が設けられる。
したがって、この光スキャナによれば、ハウジングの遮蔽機能により、入口側透過部または出口側透過部を経由しない限り光が外部から第1走査部および第2走査部に予定外に進入せずに済み、その結果、当該光スキャナによる走査光のS/N比の外乱光による悪化を抑制することが容易となる。
本項における「入口側透過部」および「出口側透過部」は、例えば、ハウジングに開口する穴として形成したり、その開口穴をガラス等、光透過体で充填することによって形成することが可能である。
(10) 前記入口側透過部は、前記出口側透過部より小さい(9)項に記載の光スキャナ。
前記(9)項に係る光スキャナにおいては、第1反射面には、光路が位置的に変化しない光が入口側透過部を透過して入射する一方、第2反射面からは、光路が位置的に変化する光が出口側透過部を透過して出射する。したがって、出口側透過部は、入口側透過部より広い領域において光を透過することが要請される。一方、いずれの透過部についても、不必要に広い領域において光を透過することは、当該光スキャナによる走査光のS/N比の悪化を招来する可能性がある。
このような知見に基づき、本項に係る光スキャナにおいては、入口側透過部が出口側透過部より小さいものとされている。
(11) 前記第1反射面と前記第2反射面とは、それらの順に、当該光スキャナ内における前記光の進行方向に沿って互いに直列に、かつ、同一平面上に配置されており、
当該光スキャナは、さらに、前記第1反射面から出射した光を前記第2反射面に向けて反射する第3反射面を含む(1)ないし(10)項のいずれかに記載の光スキャナ。
この光スキャナによれば、前記(1)ないし(10)項のいずれかに係る光スキャナに従う第1走査部および第2走査部のレイアウトの一態様が提供される。
なお付言するに、前記(1)ないし(10)項のいずれかに係る光スキャナに従う第1走査部および第2走査部のレイアウトの別の態様としては、例えば、第1反射面と第2反射面とが、隙間を隔てて互いに対向する2平面上にそれぞれ、第1反射面から出射した光が別の反射面を経由することなく第2反射面に入射するように配置されるレイアウトが存在する。
(12) 前記第1ミラー部と前記第2ミラー部とは、同一の基板に形成されている(11)項に記載の光スキャナ。
(13) 前記第2ミラー部は、当該光スキャナを前記第2揺動軸線の方向に見た場合に前記第1走査部とオーバラップする部分を含む(11)または(12)項に記載の光スキャナ。
この光スキャナによれば、第2ミラー部が第1走査部とオーバラップする部分を含まない場合より、第1走査部と第2走査部とを第1揺動軸線の方向に詰めて配置することが容易となる。その結果、この光スキャナを、第1揺動軸線の方向、すなわち、第1ミラー部と第2ミラー部とが並ぶ方向に関して小型化することが、第2ミラー部が第1走査部とオーバラップする部分を含まない場合より容易となる。
(14) 前記第2走査部は、さらに、固定枠部と、その固定枠部に前記第2ミラー部を前記第2揺動軸線まわりに揺動可能に連結する連結部とを含み、前記第2ミラー部は、当該光スキャナを前記第1揺動軸線の方向に見た場合に前記連結部とオーバラップする部分を含む(1)ないし(13)項のいずれかに記載の光スキャナ。
この光スキャナによれば、第2ミラー部が連結部とオーバラップする部分を含まない場合より、それら第2ミラー部と連結部とを第2ミラー部の揺動軸線の方向に詰めて配置することが容易となる。その結果、この光スキャナを、第2ミラー部の揺動軸線の方向に関して小型化することが、第2ミラー部が連結部とオーバラップする部分を含まない場合より容易となる。
(15) 光束の走査によって画像を形成する画像形成装置であって、
前記光束を出射する光源と、
(1)ないし(14)項のいずれかに記載の光スキャナであって、前記光源から出射した光束を2次元的に走査して前記画像を形成するものと
を含む画像形成装置。
この画像形成装置によれば、光源から出射した光束の走査周波数の増加と小型化との両立が容易である光スキャナを用いることによって画像を形成することが可能となる。
(16) 前記光スキャナから出射した光束は、リレー光学系を経由することなく、前記画像が形成される画像形成面に入射する(15)項に記載の画像形成装置。
この画像形成装置によれば、光スキャナから出射した光束がリレー光学系を経由して画像形成面に入射する場合に比較し、当該画像形成装置の部品点数の削減または組付作業の簡単化を行うことが容易となる。
(17) 前記光スキャナから出射した光束は、眼の網膜に入射し、それにより、前記画像がその網膜上に投影される(15)または(16)項に記載の画像形成装置。
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に従うヘッドマウント式の網膜走査型ディスプレイ装置(以下、「RSD」という。)10の外観が斜視図で示されている。このRSD10は、光束を観察者の眼の瞳孔を経て網膜上に投影し、その網膜上において光束を走査することにより、その網膜上に画像を直接に投影する。図3には、符号12で眼が示され、符号14で瞳孔が示され、符号15で網膜が示されている。本実施形態においては、網膜15が前記(16)項における「画像形成面」の一例である。
図1に示すように、このRSD10は、観察者の頭部に装着されて使用される装着部16と、その観察者によって携帯される光源ユニット18とを物理的に互いに独立に備えている。それら装着部16と光源ユニット18とは、光伝送手段としてのフレキシブルな光ファイバ20によって互いに光学的に接続されている。光源ユニット18は、例えば、ベルト等の固定具を利用して、観察者の腰や背中において観察者に装着されて使用される。
図1に示すように、装着部16は、眼鏡型であり、通常の眼鏡と同様にして、観察者の鼻と両耳とを利用して頭部に保持される。そのため、装着部16は、観察者の両眼12,12の前方において鼻によって支持されるフレーム30と、頭部の両側において両耳によってそれぞれ支持される左右のアーム32,32とを備えている。それらフレーム30と各アーム32とは、折り畳み可能に互いに連結されている。
RSD10は、両眼12,12の網膜15上にそれぞれ画像を投影する形式である。そのため、装着部16は、両眼12,12のそれぞれについて互いに独立した光学系を備えている。具体的には、各眼12ごとに、光束を走査する走査ユニット40と、その走査された光束を、対応する眼12に入射させて網膜15上に投影する投影具42とを備えている。装着部16は、走査ユニット40において、光ファイバ20に接続されている。すなわち、本実施形態においては、走査ユニット40と光源ユニット18とが光ファイバ20によって互いに光学的に接続されているのである。
図2に示すように、投影具42は、本実施形態においては、走査ユニット40によって走査された光束を反射して網膜15に入射させる反射式とされている。具体的には、この投影具42は、通常の眼鏡における各レンズに類似の形状を有するハーフミラーを用いて構成されている。投影具42においては、観察者に対向する表面が反射面44とされており、図3に示すように、走査ユニット40から反射面44に入射した光束がその反射面44で反射して眼12に入射する。
この反射面44は、楕円の一部を水平軸線まわりに回転させて描かれる回転楕円面として形成されている。この反射面44は、2つの焦点を有しており、図2に示すように、その一方の焦点には、走査ユニット40から光束が出射すべき出射口46が位置し、他方の焦点には、装着部16が頭部に装着された状態で、眼12が位置するように使用される。
投影具42は、上述の反射機能に加えて、投影具42の前方から入射する光を透過して眼12に入射させる透過機能も有している。したがって、観察者は、RSD10から伝送される画像を、投影具42を透過した眼前の実景に重ね合わせて視認することができる。ただし、投影具42をハーフミラーを用いて構成することは本発明を実施するうえに不可欠なことではなく、反射機能は有するが透過機能は有しない光学部品を用いて投影具42を構成することが可能である。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、走査ユニット40および投影具42が両眼12,12についてそれぞれ設けられており、そのため、光源ユニット18および光ファイバ20も両眼12,12についてそれぞれ設けられている。ただし、光源ユニット18については、両眼12,12に共通の1個の光源ユニットとして物理的に構成することが可能である。
図3には、両眼12,12の一方について代表的に、光源ユニット18と、光ファイバ20と、走査ユニット40とが光路図で示されている。
光源ユニット18は、光源部50と集束部52と主制御回路54とを含むように構成されている。光源部50は、RGB方式によって任意の色を再現するために、赤色のレーザビームを発生させるレーザ装置60と、緑色のレーザビームを発生させるレーザ装置62と、青色のレーザビームを発生させるレーザ装置64とを備えている。それらレーザ装置60,62,64から発生するレーザビームの強度は、網膜15上に投影すべき画像を表す画像信号に基づき、各画素ごとに、主制御回路54によって制御される。
これに対し、集束部52は、それら3つのレーザ装置60,62,64から発生した3つのレーザビームを集束させるために設けられており、例えば、各レーザ装置60,62,64ごとに、発生したレーザビームをコリメートするためのコリメートレンズ70,72,74と、ダイクロイックミラー80,82,84とを含むように構成される。この集束部52によって集束されたレーザビームは、収束レンズ90によって収束され、その収束されたレーザビームは、光ファイバ20を通過して走査ユニット40に入射する。
図3に示すように、走査ユニット40は、光ファイバ20から出射したレーザビームをコリメートするためのコリメートレンズ98と、そのコリメートレンズ98から出射したレーザビームを水平走査方向と垂直走査方向とに2次元的に走査する光スキャナ100とを備えている。本実施形態においては、コリメートレンズ98により、レーザビームが平行光として光スキャナ100に入射する。その光スキャナ100から出射したレーザビームは、リレーレンズを経由することなく、投影具42の反射面44に入射し、そこで反射して網膜15上に到達する。リレーレンズは、前記(16)項における「リレー光学系」の一例である。
図3に示すように、光スキャナ100には駆動回路110が電気的に接続されている。駆動回路110は、主制御回路54から、光ファイバ20またはそれとは別の経路である電線を経て供給された駆動信号に基づき、光スキャナ100を駆動する。光スキャナ100は、水平走査部120と垂直走査部122とを備えており、それら水平走査部120と垂直走査部122とがそれぞれ駆動回路100によって駆動される。
図4には、光スキャナ100が縦断面図で示されている。光スキャナ100は、振動体124の表面がカバー126によって覆われることによって構成されている。
図5には、振動体124が平面図で示されている。この振動体124は、厚さが100μm程度であるシリコンウェーハを基材として構成されている。その基材にエッチングを施すことにより、第1揺動部130と第2揺動部132とが一体的に振動体124に形成されている。それら第1揺動部130と第2揺動部132とは、互いに平面的に並ぶ姿勢で振動体124に形成されている。すなわち、本実施形態においては、第1揺動部130と第2揺動部132とがプレーナ構造(複数の構造物が平面的に配置される構造)で互いに一体化させられているのである。
第1揺動部130は、光スキャナ100に入射したレーザビームを水平方向に走査するために第1揺動軸線134まわりに揺動するように共振状態で振動させられる。これに対し、第2揺動部132は、第1揺動部130から出射したレーザビームを垂直方向に走査するために第2揺動軸線136まわりに揺動するように共振状態で振動させられる。
図5に示すように、第1揺動部130および第2揺動部132にはそれぞれ、第1反射面140および第2反射面142が、共に、光スキャナ100の非作動状態においては振動体124の面に対して平行な姿勢で平面的に並んで形成されている。第1反射面140は、光スキャナ100内におけるレーザビームの進行方向の上流側に位置する一方、第2反射面142は、下流側に位置している。第2反射面142の中心は、第1反射面140の中心から距離dだけ、第2揺動軸線136に対して直角な方向、すなわち、第1揺動軸線134に対して平行な方向に隔たっている。この光スキャナ100においては、第2反射面142の中心が第1揺動軸線134上に設けられている。
本実施形態においては、第1揺動軸線134が、光スキャナ100に入射するレーザビームの方向に対して平行となるように第1揺動部130に対して設定されている。これに対し、第2揺動軸線136は、光スキャナ100に入射するレーザビームの方向に対して直角となるように第2揺動部132に対して設定されている。その結果、それら第1揺動軸線134と第2揺動軸線136とは、互いに直角となる相対位置関係を有している。
図5に示すように、振動体124は、振動する部分と振動しない部分とを含んでいる。振動する部分は、第1揺動部130および第2揺動部132であり、振動しない部分は、それら第1揺動部130および第2揺動部132を包囲するように配置された固定枠部146である。振動体124は、その固定枠部146においてカバー126に装着される。
図6には、第1揺動部130が拡大されて斜視図で示され、さらに、その第1揺動部130に関連して固定枠部146が部分的に示されている。図6に示すように、第1揺動部130は、第1反射面140が形成された第1ミラー部150を備えている。その第1ミラー部150の両側から一対のはり部152,152が互いに逆向きに延びている。第1揺動部130は、第1ミラー部150が一対のはり部152,152を介して固定枠部146に連結されることによって構成されている。それら一対のはり部152,152は、共に第1揺動軸線134上に位置し、かつ、第1ミラー部150を隔てて互いに対向させられている。
各はり部152においては、第1ミラー部150から1本の第1板ばね部154が延び、さらに、その第1板ばね部154から固定枠部146に向かって2本の第2板ばね部156,156が互いに分岐して延びている。各はり部152においては、2本の第2板ばね部156,156の片面にそれぞれ2個の駆動源160,160が装着されている。
図7に示すように、各駆動源160は、対応する第2板ばね部156に沿って延びている。各駆動源160は、それに対して平行に延びる上部電極162と下部電極164とに圧電素子166が挟まれてサンドイッチ状に構成されている。それら上部電極162と下部電極164とからそれぞれリード線170が延び出し、固定枠部146上の各端子172に接続されている。ただし、図7には、リード線170および端子172が、上部電極162についてのみ代表的に示されている。
このように構成された各駆動源160においては、圧電素子166に電圧が、その圧電素子166の長手方向に対して直角な方向に印加されれば、圧電素子166の長手方向に変位(伸びまたは縮み)が発生し、その変位に伴い、対応する第2板ばね部156に反り(屈曲)が発生する。
本実施形態においては、第1ミラー部150に関して同じ側に位置する2本の第2板ばね部156,156にそれぞれ装着された一対の圧電素子166,166には、互いに逆位相で変位するように電圧が互いに逆位相でそれぞれ印加される。したがって、それら一対の圧電素子166,166により、第1板ばね部154を第1揺動軸線134まわりに同じ向きに回転させる向きのモーメントが第1板ばね部154に発生する。
図6に示すように、第1揺動部130には、全体として4個の駆動源160が用いられているが、それら駆動源160のうち、第1ミラー部150を隔てて互いに正対する2個の駆動源160は、互いに同位相で駆動される。その結果、それら4個の駆動源160はいずれも、第1ミラー部150を第1揺動軸線134まわりに同じ向きに回転させる。
以上、第1揺動部130の構成を説明したが、図5に示すように、第2揺動部132の構成も基本的には第1揺動部130と共通する。すなわち、第2揺動部132においては、第2反射面142が形成された第2ミラー部180が、それの両側から互いに逆向きに、かつ、共に第2揺動軸線136に沿って延びる一対のはり部182,182を介して固定枠部146に連結されているのである。各はり部182においては、第2ミラー部180から1本の第1板ばね部184が固定枠部146に向かって延び、その第1板ばね部184から2本の第2板ばね部186,186が互いに分岐して延びて固定枠部146に至っている。
第2揺動部132についても、各はり部182において、2本の第2板ばね部186,186の片面にそれぞれ2個の駆動源190,190が装着されている。図5には、第2揺動部132が4個の駆動源190が装着されている状態で平面図で示されている。各駆動源190は、図示しないが、駆動源160と同様に、対応する第2板ばね部186に沿って延びる上部電極と下部電極とに圧電素子が挟まれてサンドイッチ状に構成されている。各駆動源190は、第1揺動部130の第1ミラー部150を揺動させる原理と同じ原理に従い、第2揺動部132の第2ミラー部180を揺動させる。
本実施形態においては、網膜15上に投影すべき画像の1フレームが、複数本の水平走査線と、それらと交差する複数本の垂直走査線であって水平走査線より少数であるものとによって構成される。ただし、それら走査線のすべてが可視化されるとは限らず、必要に応じて帰線消去処理が施される。そのため、水平走査においては、レーザビームを高速で、すなわち、高い周波数で走査することが必要であるのに対し、垂直走査においては、レーザビームを低速で、すなわち、低い周波数で走査することが必要である。一方、各第1ミラー部150,180の、各揺動軸線134,136まわりの慣性モーメント(=mr2)が大きいほど、各ミラー部150,180の走査周波数を低下させることが容易である。
したがって、本実施形態においては、図5に示すように、垂直走査用の第2揺動部132の第2ミラー部180の方が、水平走査用の第1揺動部130の第1ミラー部150より、揺動軸線134,136に対して直角な方向(回転半径方向)における寸法が大きくなるように設計されている。
図5に示すように、本実施形態においては、揺動軸線134,136の方向における寸法も、垂直走査用の第2揺動部132の第2ミラー部180の方が、水平走査用の第1揺動部130の第1ミラー部150より大きくなるように設計されている。第2揺動部132の、第2揺動軸線136の方向における寸法Lの設定については、後に詳述する。
図4には、カバー126が側面断面図で示されている。カバー126は、板部200の周縁から縦壁部202が延びるように構成されている。図8には、カバー126が平面図で示されている。カバー126は、外部からレーザビームが入射することを可能にするために入口側透過部204を備えており、一方、レーザビームが外部に出射することを可能にするために出口側透過部206を備えている。本実施形態においては、それら入口側透過部204および出口側透過部206がいずれも、内部が充填されていない中空穴として形成されている。入口側透過部204は、カバー126の一端側における板部200に設けられ、一方、出口側透過部206は、カバー126の他端側における板部200および縦壁部202に設けられている。
本実施形態においては、第1揺動部130には入口側透過部204を経てレーザビームが斜めに、かつ、鋭角的に入射する一方、第2揺動部132からは出口側透過部206を経てレーザビームが斜めに、かつ、鋭角的に出射する。
図4および図8に示すように、板部200の両面のうち第1揺動部130および第2揺動部132に対向する裏面に固定ミラー210が装着されている。この固定ミラー210は、定位置に固定状態で装着される。図4に示すように、固定ミラー210は、第1ミラー部150から第2ミラー部180に延びる経路の略中間位置に配置されている。固定ミラー210は、それの第3反射面212により、第1ミラー部150から鋭角的に出射したレーザビームを第2ミラー部180に向かって鋭角的に反射する。
図9には、レーザビームが光スキャナ100に入射してから出射するまでに辿る光路が平面図で示されている。平行光として入射したレーザビームは、第1ミラー部150によって水平方向(図9においては上下方向)に走査される。そのように走査されたレーザビームは、固定ミラー210で反射した後、第2ミラー部180に入射する。その入射したレーザビームは、第2ミラー部180により、垂直方向に(図9の紙面に対して直角な平面内において)走査される。
第1ミラー部150によるレーザビームの振れ角をαとし、第1ミラー部150の第1反射面140の中心と第2ミラー部180の第2反射面142の中心との距離をdとすれば、第2反射面142の、第2揺動軸線136の方向における寸法Lは、
2・d・tan(α/2)
なる値以上の値を有するように設定される。
図9に示すように、本実施形態においては、入口側透過部204を透過すべきレーザビームの光路は、光スキャナ100による走査中、位置的に変化しないのに対し、出口側透過部206を透過すべきレーザビームの光路は、光スキャナ100の走査中、扇状の図形を描くように位置的に変化する。
それら入口側透過部204と出口側透過部206との間における光路の違いに着目することにより、本実施形態においては、入口側透過部204が出口側透過部206より小さくされており、しかも、入口側透過部204も出口側透過部206も、製造ばらつき、温度変化等を考慮し、実用上必要なマージンは見込むがそれ以外のマージンは見込まない最小の大きさを有するように設計されている。その結果、外乱光や塵埃がそれら入口側透過部204および出口側透過部206を経て光スキャナ100内に進入することが制限されている。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、第1揺動部130と、カバー126のうちその第1揺動部130に関連する部分と、その第1揺動部130に関連する4個の駆動源160と、駆動回路110のうちそれら駆動源160を駆動するための部分とが互いに共同して水平走査部120を構成している。さらに、第2揺動部132と、カバー126のうちその第2揺動部132に関連する部分と、その第2揺動部132に関連する4個の駆動源190と、駆動回路110のうちそれら駆動源190を駆動するための部分とが互いに共同して垂直走査部122を構成している。
前述のように、本実施形態においては、水平走査部120および垂直走査部122のうち、レーザビームの進行方向に関して上流側に位置する水平走査部120につき、それの第1揺動軸線134が、光スキャナ100を水平走査部120の第1反射面140に対して直角な方向に見た場合に、その第1反射面140にレーザビームが入射する方向に対して平行であるようにされている。第1揺動軸線134は、その入射方向に対して完全に平行であることは不可欠ではなく、実質的に平行であれば足りる。
したがって、本実施形態によれば、第1反射面140に斜めにレーザビームが入射するためにその第1反射面140上に形成されるスポットが細長く変形させられても、そのスポットの長軸が、その第1反射面140の第1揺動軸線134に対して直角にならずに済む。その結果、そのようなスポットに合わせて第1ミラー部150の形状を決定しても、第1ミラー部150の、回転半径方向における寸法が、前述の従来例ほどには長くならずに済む。
したがって、本実施形態によれば、第1ミラー部150の慣性モーメントの低減化が容易となり、ひいては、第1ミラー部150の走査周波数の増加が容易となる。よって、本実施形態によれば、走査周波数の増加と小型化とを両立させることが容易となる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、水平走査部120が前記(1)項における「第1走査部」の一例を構成し、垂直走査部122が同項における「第2走査部」の一例を構成し、レーザビームが同項における「光」の一例を構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、第1揺動部130を駆動する4個の駆動源160がそれぞれ前記(2)項における「第1駆動源」の一例を構成し、第2揺動部132を駆動する4個の駆動源190がそれぞれ同項における「第2駆動源」の一例を構成し、カバー126が前記(9)項における「ハウジング」の一例を構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、第1反射面140および第2反射面142が前記(11)における「第1反射面および第2反射面」の一例を構成し、固定ミラー210の第3反射面212が同項における「第3反射面」の一例を構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、光源ユニット18が前記(15)項における「光源」の一例を構成し、走査ユニット40が同項における「光スキャナ」の一例を構成し、レーザビームが同項における「光束」の一例を構成しているのである。
なお付言するに、本実施形態においては、第1ミラー部150も第2ミラー部180も、共振現象を利用してレーザビームを走査するように設計されているが、第1ミラー部150は共振現象を利用するが、第2ミラー部180は共振現象を利用しないで、それぞれレーザビームを走査する態様で本発明を実施することが可能である。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態と共通する要素が多く、異なる要素は光スキャナに関するもののみであるため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
図10には、本実施形態に従う光スキャナ230が分解斜視図で示されている。この光スキャナ230は、カバー232と振動体234とを含んでいる。
カバー232は、第1実施形態におけるカバー126と共通の構成を有しており、板部200と縦壁部202とによって構成され、さらに、入口側透過部204と出口側透過部206とが形成されている。
これに対し、振動体234は、水平走査部236と垂直走査部238とを備えている。
水平走査部236は、第1実施形態における水平走査部120と共通の構成を有しており、図11に示すように、第1揺動軸線134まわりに揺動させられる第1揺動部130を備えている。第1揺動部130は、第1反射面140が形成された第1ミラー部150を含んでいる。第1揺動軸線134は、光スキャナ230に入射するレーザビームに対して平行に設定されている。
第1ミラー部150は、一対のはり部152,152であって、それぞれ、1本の第1板ばね部154と互いに並列する2本の第2板ばね部156,156とにより構成されるものを介して固定枠部240に揺動可能に連結されている。この水平走査部236の4本の第2板ばね部156にそれぞれ4個の駆動源160が装着されている。水平走査部236は、第1実施形態における水平走査部120と同じ原理に従ってレーザビームを水平方向に高速で走査する。
本実施形態においては、水平走査部236が、第1揺動部130と、固定枠部240のうちその第1揺動部130を包囲する部分と、4個の駆動源160とによって構成されている。
これに対し、垂直走査部238は、第1実施形態における垂直走査部122と基本的な構成に関しては共通するが、特にミラー部の形状に関しては相違する。
図11に示すように、垂直走査部238は、第1揺動軸線134に対して直角な第2揺動軸線136まわりに揺動させられる第2揺動部250を備えている。第2揺動部250は、第2反射面252が形成された第2ミラー部254を含んでいる。第2ミラー部254は、第1実施形態における第2ミラー部180とは異なり、第2揺動軸線136に関して非対称な形状を有している。
具体的には、第2ミラー部254には、第2揺動軸線136に関する両側のうち水平走査部236に近い側において、切欠部258が形成されている。この切欠部258には、水平走査部236の、第1揺動軸線134の方向における両端部のうち垂直走査部238に近い端部が部分的に進入している。その結果、第2ミラー部254は、それを第2揺動軸線136の方向において見た場合に水平走査部236とオーバラップするオーバラップ部260を、水平走査部236を隔てて互いに対向する2位置にそれぞれ備えている。
一方、水平走査部236も垂直走査部238も、共振状態においてレーザビームを走査するように設計し、かつ、垂直走査部238の走査周波数を水平走査部236の走査周波数より低くするためには、一般に、第2ミラー部254の慣性モーメントを第1ミラー部150の慣性モーメントより増加させることが必要である。また、第2ミラー部254の慣性モーメントは、その第2ミラー部254の回転半径方向における寸法すなわち幅寸法が大きいほど大きい。
さらに、本実施形態においては、上述のように、第2ミラー部254が、第2揺動軸線136の方向において水平走査部236とオーバラップさせられており、水平走査部236と垂直走査部238とをそれらが並ぶ方向において詰めて配置することが容易となっている。すなわち、光スキャナ230の長手寸法(第1揺動軸線134に対して平行な長手方向における寸法)が、水平走査部236の最大長さ寸法と垂直走査部238の最大長さ寸法とを単純に足し算した値より短くて済むのである。
したがって、本実施形態によれば、光スキャナ230の長手寸法を垂直走査部238の走査周波数および第2ミラー部254の幅寸法の割に短くすることが容易となる。光スキャナ230をそれの長手方向に関して小型化することが容易となるのである。
図11に示すように、第2ミラー部254の、第2揺動軸線136の方向における両縁から一対のはり部264,264が互いに逆向きに延びている。それら一対のはり部264,264は、第2ミラー部254を固定枠部240に、第2揺動軸線136まわりに揺動可能に連結している。
各はり部264は、第2揺動軸線136に沿って延びる第1板ばね部270と、その第1板ばね部270に対してオフセットした位置においてそれと平行に延びる第2板ばね部272とを備えている。第1板ばね部270は、第2ミラー部254と固定枠部240とを互いに連結する。一方、第2板ばね部272は、第1板ばね部270を、それの途中から半径方向外向きに延び出た延出部274において、固定枠部240に連結する。
各はり部264においては、第2板ばね部272に駆動源280が装着されている。駆動源280は、水平走査部236における駆動源160と共通する構成を有している。本実施形態においては、第2揺動軸線136に対してオフセットされた一対の第2板ばね部272,272にそれぞれ装着された一対の駆動源280,280が互いに同位相で駆動される。それにより、第2板ばね部272が、延出部274との連結位置において、第2板ばね部272の面に対して直角な方向に変位させられる。その変位は、延出部274により、第2揺動軸線136まわりの回転モーメントに変換され、それにより、第2ミラー部254が第2揺動軸線136まわりに揺動させられる。
前述のように、垂直走査部238の走査周波数を水平走査部236の走査周波数より低下させるためには、第2ミラー部254の慣性モーメントを増加させることが望ましい。そのためには、第2ミラー部254の回転半径方向における寸法(横寸法)を長くすることが効果的であり、さらに、第2ミラー部254の第2揺動軸線136の方向における寸法(縦寸法)を長くすることも効果的である。
一方、第2ミラー部254の縦寸法が長いほど、光スキャナ230の幅寸法(横寸法)が長くなる傾向がある。
これに対し、本実施形態においては、図11に示すように、第2ミラー部254が、第2揺動軸線136に対して直角な方向において各はり部264とオーバラップするオーバラップ部284を有している。すなわち、光スキャナ230の幅寸法が、第2ミラー部254の最大縦寸法と、一対のはり部264の合計縦寸法とを単純に足し算した値より短くて済むのである。
したがって、本実施形態によれば、第2ミラー部254の縦寸法の割に光スキャナ230の横寸法が短くて済み、光スキャナ230をそれの横方向に関して小型化することが容易となる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、オーバラップ部260が前記(13)項における「第1走査部とオーバラップする部分」の一例を構成し、はり部264が前記(14)項における「連結部」の一例を構成し、オーバラップ部284が同項における「連結部とオーバラップする部分」の一例を構成しているのである。
以上、本発明のいくつかの実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[課題を解決するための手段]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。