JP4032504B2 - スパッタ装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
この発明は、プラズマ中のイオンによってターゲットをスパッタして基板上に薄膜を形成するスパッタ装置に関し、より具体的には、成膜中に基板に入射するイオンのエネルギーや入射量の制御を可能にして、基板上に形成する薄膜の結晶性向上を可能にする手段に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のスパッタ装置の従来例を図10に示す。図示しない真空排気装置によって真空に排気される成膜室容器2内に、基板10を保持する基板ホルダ8と、ターゲット14を保持した高周波電極12とが、相対向するように配置されている。この成膜室容器2内には、ガス導入管4を経由してガス6が導入される。このガス6は、通常はArガス等の不活性ガスである。成膜室容器2および基板ホルダ8は、電気的に接地されている。高周波電極12には、高周波電源16から整合回路18を経由して、例えば13.56MHzの周波数の高周波電力が供給される。
【0003】
上記ガス6の導入および高周波電力の供給によって、高周波電極12と基板ホルダ8との間で高周波放電が生じてこの高周波放電によってガス6が電離されてプラズマ20が生成される。このプラズマ20中のイオンがターゲット14をスパッタし、ターゲット14から飛び出したスパッタ粒子が基板10に入射堆積して、基板10上に薄膜が形成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記スパッタ装置においては、成膜中は基板10の表面がプラズマ20に曝されるため、プラズマ20中から当該プラズマ20の電位(プラズマポテンシャル)等によって加速されたイオンが、基板10に、成膜中常に、従って多量に入射する。しかもこのプラズマ20から基板10に入射するイオンは、通常は数十eV〜100eV程度のエネルギー幅を持っており、エネルギーの不揃いなイオンが基板10に入射する。このような過多なイオン入射や、エネルギーの不揃いなイオン入射によって、基板10上の薄膜の結晶成長が妨げられたり、膜にダメージ(欠陥)が発生するので、結晶性の良好な薄膜を形成することが困難である。
【0005】
そこでこの発明は、成膜中に基板に入射するイオンのエネルギーや入射量の制御を可能にして、基板上に形成する薄膜の結晶性向上を可能にすることを主たる目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るスパッタ装置の一つは、真空に排気されるものであって接地電位の成膜室容器と、この成膜室容器に絶縁物を介在させて隣接かつ連通していてガスが導入されるプラズマ室容器と、このプラズマ室容器内に当該プラズマ室容器から電気的に絶縁して設けられた高周波電極と、前記プラズマ室容器内に設けられたターゲットと、前記プラズマ室容器と成膜室容器との間を仕切るように設けられていてプラズマ室容器と同電位の多孔電極と、この多孔電極に対向するように前記成膜室容器内に設けられていて基板を保持するものであって接地電位の基板ホルダと、前記高周波電極とプラズマ室容器およびそれと同電位の多孔電極との間に高周波電力を供給して、プラズマ室容器内において高周波放電を生じさせて前記ガスを電離させてプラズマを生成する高周波電源と、前記プラズマ室容器およびそれと同電位の多孔電極に正極性の直流電圧を印加する直流電源とを備えることを特徴としている(請求項1)。
【0007】
上記構成によれば、プラズマ室容器内で生成したプラズマを、プラズマ室容器と成膜室容器との間を仕切る多孔電極によってプラズマ室容器内に実質的に閉じ込めることができるので、成膜室容器内の基板が上記プラズマに曝されるのを防止することができる。これによって、従来例で問題となっていた、エネルギーの不揃いな多量のイオンが基板に入射するのを抑制することができる。
【0008】
一方、プラズマ室容器内で生成したプラズマ中のイオンによって、プラズマ室容器内に設けたターゲットがスパッタされる。ターゲットから叩き出されたスパッタ粒子は、殆どが中性粒子であるので、叩き出されたときの勢いでもって、多孔電極の孔を通過して成膜室容器内の基板に入射堆積して薄膜を形成する。
【0009】
また、プラズマ室容器および多孔電極に直流電源から正極性の直流電圧を印加することによって、プラズマ室容器内の電位は接地電位の基板ホルダに対して正電位になるため、プラズマ室容器内のプラズマから多孔電極を通してイオン(正イオン)が引き出されて、基板ホルダ上の基板に照射される。このときの基板に向けてのイオンの加速エネルギーは、プラズマ室容器および多孔電極に直流電源から印加した電圧によって実質的に決まる。
【0010】
従って、基板に入射するイオンのエネルギーは、上記直流電圧の大きさによって簡単に制御することができる。しかも、基板に入射するイオンのエネルギーは、実質的に上記直流電圧の大きさで決まるので、エネルギーの揃ったイオンを基板に入射させることができる。
【0011】
また、基板に入射するイオンの量は、プラズマ室容器内で生成するプラズマ密度を制御する以外に、上記直流電圧の大きさによっても制御することができる。これは、多孔電極を通して引き出されるイオンの量は、当該多孔電極に印加する上記直流電圧の大きさの3/2乗に比例するからである。
【0012】
このようにして、基板に入射するイオンのエネルギーを揃えると共に、当該イオンのエネルギーおよび基板への入射量の制御が可能になり、これによって、基板上に形成される薄膜の結晶化を促進して、薄膜の結晶性を向上させることが可能になる。
【0013】
上記直流電源の代わりに、プラズマ室容器および多孔電極に正極性のパルス電圧を印加するパルス電源を設けても良い(請求項2)。そのようにすれば、イオンが基板に間欠的に照射されるので、パルス電圧のパルス幅や周波数等を制御することによって、イオンのエネルギーを変えることなく、即ちイオンのエネルギーとは独立して、イオンの照射量を制御することが可能になる。これによって、イオンに対する制御性がより向上するので、基板上に形成する薄膜の結晶性向上がより容易になる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明に係るスパッタ装置の一例を示す断面図である。図10の従来例と同一または相当する部分には同一符号を付し、以下においては当該従来例との相違点を主に説明する。
【0015】
このスパッタ装置は、図示しない真空排気装置によって真空(例えば10-5〜10-6Torr程度)に排気される成膜室容器22を備えている。この成膜室容器22は、この例では上面に開口部23を有している。この成膜室容器22は、電気的に接地されており、接地電位にある。
【0016】
成膜室容器22内には、その上記開口部23に向けて、即ち後述する多孔電極30に対向するように、基板10を上面に保持する基板ホルダ8が設けられている。この基板ホルダ8は、導体から成り、かつ電気的に接地されていて、接地電位にある。
【0017】
成膜室容器22の上記開口部23には、環状の絶縁物28を介在させて、プラズマ室容器24が隣接されている。このプラズマ室容器24は、この例では円筒状をしていて、その下面に開口部25を有しており、この開口部25および上記開口部23を通して成膜室容器22に連通している。このプラズマ室容器24内に、ガス導入管26を通して、プラズマ20生成用のガス6が導入される。このガス6は、例えばAr、Kr、Xe、He等の不活性ガスである。ガス6は、プラズマ室容器24内の圧力が例えば10-2〜10-3Torr程度になるように導入される。
【0018】
プラズマ室容器24内に、当該プラズマ室容器24から電気的に絶縁して、高周波電極12が設けられている。40は絶縁物である。この高周波電極12は、この例では板状、より具体的には円板状をしており、プラズマ室容器24内の天井近くに配置されている。この高周波電極12の下面部に、この例では板状、より具体的には円板状のターゲット14が取り付けられている。
【0019】
プラズマ室容器24の開口部25付近には、プラズマ室容器24と成膜室容器22との間を仕切るように、多数の孔(小孔)を有する多孔電極30が設けられている。この多孔電極30は、プラズマ室容器24に電気的に接続されていてプラズマ室容器24と同電位にある。この多孔電極30は、多数の孔を有する板状の電極でも良いし、多数の孔を有する網状のメッシュ電極でも良い。メッシュ電極の方が、開口率を上げやすいので好ましい。
【0020】
高周波電極12とプラズマ室容器24およびそれと同電位の多孔電極30との間に、整合回路18を介して高周波電源16が接続されており、この高周波電源16から高周波電極12とプラズマ室容器24および多孔電極30との間に、例えば13.56MHzの周波数の高周波電力が供給される。これによって、プラズマ室容器24内において高周波放電を生じさせて、ガス6を電離させてプラズマ20を生成することができる。この高周波放電は、上記のようなガス圧では、主として高周波電極12と多孔電極30との間で生じる。
【0021】
更に、プラズマ室容器24およびそれと同電位の多孔電極30とアース(接地電位部)との間に、前者を正極側にしてこの例では直流電源32が接続されており、この直流電源32からプラズマ室容器24および多孔電極30に正極性の直流電圧VD を印加することができる。この直流電圧VD の大きさは、例えば100V〜2000V程度である。
【0022】
このスパッタ装置によれば、プラズマ室容器24内で生成したプラズマ20を、プラズマ室容器24と成膜室容器22との間を仕切る多孔電極30によってプラズマ室容器24内に実質的に閉じ込めることができる。これは、多孔電極30の近傍にイオンシースが形成され、その電位でプラズマ20中のイオンがプラズマ室容器24内側に押し戻され、結果的にプラズマ20が閉じ込められるからである。このプラズマ閉じ込めによって、成膜室容器22内の基板10がプラズマ20に曝されるのを防止することができる。これによって、従来例で問題となっていた、エネルギーの不揃いな多量のイオンが基板10に入射するのを抑制することができる。
【0023】
一方、プラズマ室容器24内で生成したプラズマ20中のイオンによって、プラズマ室容器24内に設けたターゲット14がスパッタされる。ターゲット14から叩き出されたスパッタ粒子36は、殆どが中性粒子であるので、叩き出されたときの勢いでもって、多孔電極30の孔を通過して成膜室容器22内の基板10に入射し堆積して薄膜を形成する。
【0024】
また、プラズマ室容器24および多孔電極30に直流電源32から正極性の直流電圧VD を印加することによって、プラズマ室容器24内の電位は接地電位の基板ホルダ8に対して正電位になるため、プラズマ室容器24内のプラズマ20から多孔電極30を通して正イオン38が引き出されて、基板ホルダ8上の基板10に照射される。このときの基板10に向けてのイオン38の加速エネルギーは、プラズマ室容器24および多孔電極30に直流電源32から印加した直流電圧VD によって実質的に決まる。つまり、プラズマ室容器24および多孔電極30に対してプラズマ20が前述したプラズマポテンシャルを持つとしても、それはプラズマ室容器24内という一つの空間内においての話であり、当該空間から多孔電極30を通してイオン38を引き出した場合、当該イオン38が基板10に対して持つ加速エネルギーは、上記プラズマポテンシャルには殆ど影響されず、多孔電極30と基板ホルダ8との間に印加された加速電圧、即ち上記直流電圧VD に支配され、これによって実質的に決まる。直流電圧VD の大きさが大きくなるほどこの傾向は強まる。
【0025】
従って、基板10に入射するイオン38のエネルギーは、上記直流電圧VD の大きさによって簡単に制御することができる。しかも、基板10に入射するイオン38のエネルギーは、実質的に上記直流電圧VD の大きさで決まるので、エネルギーの揃ったイオン38を基板10に入射させることができる。
【0026】
また、基板10に入射するイオン38の量は、投入高周波電力を制御する等してプラズマ室容器24内で生成するプラズマ20の密度を制御する以外に、上記直流電圧VD の大きさによっても制御することができる。これは、多孔電極30を通して引き出されるイオン38の量は、当該多孔電極30に印加する上記直流電圧VD の大きさの3/2乗に比例するからである。
【0027】
このようにして、基板10に入射するイオン38のエネルギーを揃えると共に、当該イオン38のエネルギーおよび基板10への入射量の制御が可能になり、これによって基板10上に形成される薄膜の結晶化を促進することが可能になる。結晶化が促進されるのは、照射イオンのエネルギーを基板10上に堆積した膜に与えることができるからである。その結果、基板10上に形成する薄膜の結晶性を向上させることが可能になる。
【0028】
上記直流電源32の代わりに、例えば図2に示す例のように、プラズマ室容器24およびそれと同電位の多孔電極30に正極性のパルス電圧VP を印加するパルス電源34を設けても良い。このパルス電圧VP の周波数は、プラズマ20中のイオンが追従できる範囲内にするのが好ましい。具体的には1MHz以下にするのが好ましい。当該周波数の下限は、特にないが、前述した直流電圧印加との差異を出すために、5Hz以上にするのが好ましい。即ち、パルス電圧VP の周波数は、5Hz〜1MHzの範囲内が好ましく、その内でも10Hz〜1kHz程度の範囲内がより好ましい。このような範囲内において、パルス電圧VP の周波数やパルス幅(換言すればデューティ比)、更には波高値を、目的に応じて選定すれば良い。
【0029】
このようなパルス電源34を設けて多孔電極30等にパルス電圧VP を印加すれば、プラズマ20から多孔電極30を通してイオン38が間欠的に引き出され、当該イオン38が基板10に間欠的に照射されるので、パルス電圧VP のパルス幅や周波数等を制御することによって、イオン38のエネルギーを変えることなく、即ちイオン38のエネルギーとは独立して、イオン38の基板10に対する照射量を制御することが可能になる。勿論、前記直流電源32の場合と同様に、パルス電圧VP の波高値制御によるイオン38のエネルギー制御も可能である。これによって、イオン38に対する制御性がより向上するので、基板10上に形成する薄膜の結晶性向上がより容易になる。
【0030】
しかも、イオン38を基板10に間欠的に照射することによって、イオン照射に伴う基板10のチャージアップ(正帯電)を抑制する効果も奏する。これは、イオン照射が中断している期間(サイクル)中に、基板表面の正電荷を逃がしたり中和したりすることが可能になるからである。特に、多孔電極30の下流側付近には、多孔電極30の孔を通り抜けた電子が過剰に存在する電子過剰領域が形成されているので、この領域に基板10を近づけて配置しておけば、イオン照射の中断サイクル中に、この電子過剰領域から電子を、基板表面の正電荷によって基板10に引き込んで中和させることが可能になるので、基板10のチャージアップをより効果的に抑制することが可能になる。
【0031】
基板10のチャージアップを抑制することによって、基板10に入射するイオン38を押し戻す(即ちイオン38のエネルギーを低下させる)作用を抑えることができるので、基板10に目的どおりのエネルギーでイオン38を入射させることが可能になる。また、基板10の表面において放電が生じて基板10やその表面の薄膜に損傷を与えることを防止することも可能になる。特に、基板10が絶縁物の場合や、基板10上に絶縁性の薄膜を形成する場合は、基板10の表面がチャージアップしやすいので、イオン38を上記のようにして間欠的に入射させる効果は著しい。
【0032】
前述した直流電源32とパルス電源34とを直列に接続する等して、直流電圧にパルス電圧を重畳させた電圧をプラズマ室容器24および多孔電極30に印加するようにしても良い。そのようにすれば、イオン38に対する制御性がより向上する。
【0033】
なお、高周波電極12は、例えば図3に示す例のように、多孔電極30側の下面が開いた筒状(例えば円筒状または角筒状)をしていても良い。その場合、前記ガス6は、例えばこの例のようにガス導入管26をこの高周波電極12内にまで挿入する等して、高周波電極12の内側に直接導入するのが好ましい。その場合のプラズマ室容器24と高周波電極12との間の電気絶縁は、例えばガス導入管26を絶縁物で構成すること等によって確保すれば良い(後述する図4の例の場合も同様)。この構造の場合も、前述したようなガス圧では、主として高周波電極12の内面と多孔電極30との間で高周波放電が生じて高周波電極12内にプラズマ20が生成される。このように高周波電極12を筒状にすれば、その内面に多数の、あるいは大面積のターゲット14を取り付けることができるので、多量のスパッタ粒子を発生させることが可能になり、高速成膜が可能になる。
【0034】
また、例えば図4に示す例のように、高周波電極12の背面に複数の磁石42を配置して、高周波電極12の内側に、電界と磁界とが直交する領域を形成して、いわゆるマグネトロン放電を生じさせるようにしても良い。そのようにすれば、より効率良く高密度のプラズマ20を生成することができるので、ターゲット14に対するスパッタ効率がより向上し、成膜速度をより高めることが可能になる。この場合の各磁石42は、熱による減磁を防止するために、水冷にするのが好ましい。
【0035】
【実施例】
図1および図2に示した装置を用いて、基板10上にシリコン薄膜を150nmの厚さに形成した。その場合、ターゲット14にはシリコンターゲットを用い、基板10はガラス基板とし、当該ガラス基板を400℃に加熱しながら、ガス6としてArガスを5mTorrまで導入し、高周波電源16から13.56MHzの高周波電力を供給して、プラズマ20を発生させた。投入高周波電力は100Wとした。多孔電極30には、直径1mmのワイヤを5mmの間隔で網状にしたメッシュ電極を用いた。
【0036】
比較のために、図5に示すように、直流電源もパルス電源も設けずに、プラズマ室容器24および多孔電極30を接地した装置を用いて、上記と同様の条件でガラス基板上にシリコン薄膜を150nmの厚さに形成した。
【0037】
上記のようにして形成したシリコン薄膜の結晶状態をラマン分光によって測定した。それによって得られたラマンスペクトルを図6〜図9にそれぞれ示す。
【0038】
図6は、図5に示した装置を用いて、プラズマ室容器24および多孔電極30を接地した場合のラマンスペクトルであり、ラマンシフト480cm-1付近がやや高いなだらかなスペクトルが得られている。これは、シリコン薄膜がアモルファス状であることを示している。
【0039】
図7は、図1に示した装置を用いて、プラズマ室容器24および多孔電極30に+200Vの直流電圧VD を印加した場合のラマンスペクトルであり、ラマンシフト520cm-1を中心にピークが出現しており、これはシリコン薄膜が多結晶シリコン(p−Si)化していることを示している。即ち、直流電圧印加によって、シリコン薄膜の結晶性が促進されていることが分かる。
【0040】
図8は、図1に示した装置を用いて、プラズマ室容器24および多孔電極30に+300Vの直流電圧VD を印加した場合のラマンスペクトルであり、図6の結果に近くなって、シリコン薄膜がアモルファス化している。これは、上記図7および後述する図9の結果と比較すると、大きなエネルギーのイオンが基板に入射過多になったからであると考えられる。
【0041】
図9は、図2に示した装置を用いて、プラズマ室容器24および多孔電極30に+300Vのパルス電圧VP を印加した場合のラマンスペクトルであり、ラマンシフト520cm-1を中心に大きなピークが出現しており、シリコン薄膜の結晶性がより促進されていることが分かる。これは、基板にイオンをパルス状に入射させることによって、連続入射の場合(図8)よりも、イオンの輸送比(イオン/スパッタ粒子の比)がシリコンの結晶化により適したものになったからであると考えられる。
【0042】
【発明の効果】
この発明は、上記のとおり構成されているので、次のような効果を奏する。
【0043】
請求項1記載の発明によれば、プラズマ室容器内にプラズマを閉じ込めることができるので、成膜室容器内の基板がプラズマに曝されるのを防止することができる。しかも、基板には、前記直流電圧によって多孔電極を通して一定のエネルギーで引き出したイオンを入射させることができる。その結果、基板に入射するイオンのエネルギーを揃えると共に、当該イオンのエネルギーおよび基板への入射量の制御が可能になり、これによって、基板上に形成される薄膜の結晶化を促進して、薄膜の結晶性を向上させることが可能になる。
【0044】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同様の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、パルス電源を設けてプラズマ室容器および多孔電極にパルス電圧を印加することによって、イオンが基板に間欠的に照射されるので、パルス電圧のパルス幅や周波数等を制御することによって、イオンのエネルギーとは独立して、イオンの照射量を制御することが可能になる。これによって、イオンに対する制御性がより向上するので、基板上に形成する薄膜の結晶性向上がより容易になる。
【0045】
しかも、イオンを基板に間欠的に照射することによって、イオン照射に伴う基板のチャージアップを抑制することが可能になり、それによって、基板に目的どおりのエネルギーでイオンを入射させることが可能になる。また、基板の表面において放電が生じて基板やその表面の薄膜に損傷を与えることを防止することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るスパッタ装置の一例を示す断面図である。
【図2】この発明に係るスパッタ装置の他の例を示す断面図である。
【図3】プラズマ室容器周りの他の例を示す断面図である。
【図4】プラズマ室容器周りの更に他の例を示す断面図である。
【図5】直流電源もパルス電源も設けずに、プラズマ室容器を接地した比較例を示す断面図である。
【図6】図5に示す装置を用いて、プラズマ室容器および多孔電極を接地した状態でガラス基板上にシリコン薄膜を形成したときの当該シリコン薄膜のラマンスペクトルの測定結果の一例を示す図である。
【図7】図1に示す装置を用いて、プラズマ室容器および多孔電極に+200Vの直流電圧を印加した状態でガラス基板上にシリコン薄膜を形成したときの当該シリコン薄膜のラマンスペクトルの測定結果の一例を示す図である。
【図8】図1に示す装置を用いて、プラズマ室容器および多孔電極に+300Vの直流電圧を印加した状態でガラス基板上にシリコン薄膜を形成したときの当該シリコン薄膜のラマンスペクトルの測定結果の一例を示す図である。
【図9】図2に示す装置を用いて、プラズマ室容器および多孔電極に+300Vのパルス電圧を印加した状態でガラス基板上にシリコン薄膜を形成したときの当該シリコン薄膜のラマンスペクトルの測定結果の一例を示す図である。
【図10】従来のスパッタ装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
6 ガス
8 基板ホルダ
10 基板
12 高周波電極
14 ターゲット
16 高周波電源
20 プラズマ
22 成膜室容器
24 プラズマ室容器
28 絶縁物
30 多孔電極
32 直流電源
34 パルス電源
Claims (2)
- プラズマ中のイオンによってターゲットをスパッタして基板上に薄膜を形成するスパッタ装置において、真空に排気されるものであって接地電位の成膜室容器と、この成膜室容器に絶縁物を介在させて隣接かつ連通していてガスが導入されるプラズマ室容器と、このプラズマ室容器内に当該プラズマ室容器から電気的に絶縁して設けられた高周波電極と、前記プラズマ室容器内に設けられたターゲットと、前記プラズマ室容器と成膜室容器との間を仕切るように設けられていてプラズマ室容器と同電位の多孔電極と、この多孔電極に対向するように前記成膜室容器内に設けられていて基板を保持するものであって接地電位の基板ホルダと、前記高周波電極とプラズマ室容器およびそれと同電位の多孔電極との間に高周波電力を供給して、プラズマ室容器内において高周波放電を生じさせて前記ガスを電離させてプラズマを生成する高周波電源と、前記プラズマ室容器およびそれと同電位の多孔電極に正極性の直流電圧を印加する直流電源とを備えることを特徴とするスパッタ装置。
- 前記直流電源の代わりに、前記プラズマ室容器およびそれと同電位の多孔電極に正極性のパルス電圧を印加するパルス電源を備える請求項1記載のスパッタ装置。
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