JP4031789B2 - 高濃度ミネラル液の製造方法およびその製造装置 - Google Patents

高濃度ミネラル液の製造方法およびその製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、海水を原料としてカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分濃度が高いミネラル液を得ることができる、高濃度ミネラル液の製造方法およびその製造装置に関する。
海水には、塩化ナトリウム以外にマグネシウムやカルシウムなどのミネラル成分が多く含まれていることが知られている。
海水からミネラル成分を分離して苦汁等のミネラル液として利用することは従来から行われているが、一般には、製塩の際に副産物として生じる液を利用することが多かった。製塩技術としては、古くは、揚浜式や入浜式等の媒砂式塩田法技術、流下式塩田法技術等の太陽熱と風の自然エネルギーを利用した技術が知られている。その後、生産性を改良した工業化対応技術として、平釜方式、蒸気利用方式、真空式、蒸気圧縮方式等の加熱法による製塩技術が開発され、このときに副産物として生じるミネラル液が多く利用されるようになっている。また、新しい技術として、膜技術を利用した製塩技術も開発されており、例えば、海水から食塩成分を選択的に透過する一価カチオン選択透過性陽イオン交換膜と一価アニオン選択透過性陰イオン交換膜を対とした電気透析装置を使用した高濃度食塩溶液の製造方法が提案されている。
ところで、近年、ミネラル成分を含んだミネラル液が健康維持や体調管理に優れた効果を発揮することが注目されており、多くの文献等でも紹介されている。特に、海洋深層水と呼ばれる海水は、生菌数が少なく、多様なミネラル成分を豊富に含むことから、注目を集めている。そこで、この海水、特に海洋深層水中に含まれるミネラル成分を分離して、例えば食品・飲料用途、食品添加物用途、医療用途、化粧品用途、肥料用途等の各種用途に利用する種々の試みがなされている。
ミネラル液の取得と健康に与える効果との関係はまだ化学的には完全解明されてはいないが、多くの研究機関でこれらの解明に向けた研究が進められており、発明者らも、研究機関との連携のもと、ミネラル液の健康への貢献効果の検討を進めてきた。その結果、海水または海洋深層水から強制的な加熱操作により得られたミネラル液では、ミネラル成分の化学形態が変化してしまうことがあり、その効能が低下もしくは変化したり、各成分の含有量を分析で把握することが困難になったりすることが判った。また、ミネラル液中のナトリウム濃度が充分に低減されていないと、塩分の過剰摂取が健康に悪影響を与えることとなる。したがって、強制的な加熱操作を行うことのない非加熱プロセスによって得られたものであり、かつナトリウム濃度が充分に低減されているミネラル液が、例えば健康促進を意図した機能性食品や飲料等に有効であると考えられる。また、工業的利用の容易さや経済性は勿論のこと、ミネラル成分がもたらす効能を効率よく発揮させることを考慮すると、このようなミネラル成分の濃度が高いほど好ましいことは言うまでもない。
しかし、非加熱プロセスによって、ミネラル成分の濃度が高く、かつナトリウム濃度が低いミネラル液を製造することは、従来の技術では容易なことではなかった。すなわち、前述したような太陽熱を利用した製塩技術や加熱法による製塩技術において副産物として得られるミネラル液は、いずれも加熱されたものである。また、膜技術を利用した製塩技術において得られるミネラル液は、ミネラル成分濃度が低く、その濃度を高めようとすると、マグネシウムやカルシウムなどのミネラル成分とともに硫酸根イオンが濃縮されてしまうために石膏が析出してしまい、却って、得られるミネラル液中のミネラル成分含有量を低下させることにもなるため、高濃度化できないものであった。また、従来、海水を淡水化する技術において利用されていた逆浸透膜を用いて、非加熱プロセスによってミネラル液を製造することも考えられるが、この方法では、海水中のミネラル成分を精々2〜3倍程度までしか高めることができず、しかも、ナトリウムもミネラル成分と同様に濃縮される結果、得られたミネラル液中のナトリウム濃度は高いレベルになってしまう。
さらに、膜技術を利用して、非加熱でナトリウム濃度が低いミネラル液を得る方法としては、1価カチオン選択透過性に優れナトリウムを選択的に脱塩するカチオン交換膜を装着した電気透析装置を用いて海水を処理することによりナトリウムを除去した脱塩水を得、これをミネラル水とする方法(例えば、特許文献1、2および3参照)が提案されている。しかし、このような方法では、ナトリウムとともにマグネシウムやカルシウムなどのミネラル成分の一部も除去されてしまうため、通常の海水よりも若干ミネラル成分濃度が高い程度のミネラル水しか得られなかった。なお、これら技術において、ミネラル成分濃度を増加させるための改良法として、電気透析装置に供給される海水に代えて、逆浸透膜装置あるいは電気透析装置で濃縮した液を供給する方法も提案されている(特許文献3参照)が、逆浸透膜装置や電気透析装置による濃縮工程でマグネシウムやカルシウムなどのミネラル成分とともに硫酸根イオンが濃縮されると石膏が析出してしまうため、濃縮倍率が限られてしまうことになり、やはり、得られるミネラル液のミネラル成分濃度は、高々原料とする海水の2〜3倍程度であった。
特開2001−87762号公報 特開2002−205070号公報 特開2002−292371号公報
前述のように、マグネシウムやカルシウムなどのミネラル成分濃度が充分に高く、ナトリウム濃度が充分に低減されており、しかも非加熱プロセスによって得られたミネラル液は、健康促進を意図した各種用途における適用が期待されているものかかわらず、従来の技術では所望のミネラル液を得ることは困難であった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、海水から、マグネシウムやカルシウムなどのミネラル成分濃度が充分に高く、ナトリウム濃度が充分に低減されたミネラル液を非加熱で得ることができる、ミネラル液の製造方法およびその製造装置を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、まず、逆浸透膜により海水を濃縮し、次に、一価アニオン選択透過性陰イオン交換膜と陽イオン交換膜を対として備える第一の電気透析装置により、得られた濃縮液から二価以上の陰イオンを除去すると同時に陽イオン濃度と一価陰イオン濃度を高め、次いで、一価カチオン選択透過性陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を対として備える第二の電気透析装置により、二価以上の陽イオンは残したまま一価陽イオンのみを選択的に除去することによって、前記課題を一挙に解決することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明にかかる高濃度ミネラル液の製造方法は、海水を逆浸透膜で処理することにより濃縮液(A1)と膜透過液(A2)とに分離する工程(I)と、陽極と陰極の間に一価アニオン選択透過性の陰イオン交換膜と陽イオン交換膜が対として設けられてなる電気透析装置で前記濃縮液(A1)を処理することにより、陽イオン濃度と一価陰イオン濃度が高く二価以上の陰イオン濃度が低い濃縮液(B1)と二価以上の陰イオン濃度が高く陽イオン濃度と一価陰イオン濃度が低い濃縮液(B2)とに分離する工程(II)と、陽極と陰極の間に一価カチオン選択透過性の陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が対として設けられてなる電気透析装置で前記濃縮液(B1)を処理することにより、高濃度ミネラル液である二価以上の陽イオン濃度が高く一価陽イオン濃度が低い濃縮液(C1)と、二価以上の陽イオン濃度が低く一価陽イオン濃度が高い濃縮液(C2)とに分離する工程(III)と、を含む。
本発明にかかる高濃度ミネラル液の製造装置は、海水を濃縮液(A1)と膜透過液(A2)とに分離する逆浸透膜と、陽極と陰極の間に一価アニオン選択透過性の陰イオン交換膜と陽イオン交換膜が対として設けられてなる第一の電気透析装置と、陽極と陰極の間に一価カチオン選択透過性の陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が対として設けられてなる第二の電気透析装置とを備え、前記第一の電気透析装置には前記濃縮液(A1)が供給され、前記第二の電気透析装置には前記第一の電気透析装置による処理で得られる陽イオン濃度および一価陰イオン濃度が高く二価以上の陰イオン濃度が低い濃縮液(B1)が供給される。
本発明によれば、海水から、マグネシウムやカルシウムなどのミネラル成分濃度が充分に高く、ナトリウム濃度が充分に低減されたミネラル液を、非加熱で得ることができる。詳しくは、本発明により得られるミネラル液は、天然ミネラルのイオン組成、すなわち、マグネシウムイオンとカルシウムイオンを主としその他のミネラルイオンを含む組成を高濃度で有し、かつ、生理学的には好ましくないナトリウムイオンはミネラル成分との相互比率において極めて少なくなっているものであり、しかも、非加熱のプロセスで製造されるものであることからミネラル成分の形態変化も起こさないものである。
なお、一般には、ナトリウムイオンも天然ミネラルの1種であるという解釈がなされることもあるが、本明細書においては、「ミネラル」とは、ナトリウムを含まない概念であり、カルシウムとマグネシウムを主とするものとする。
以下、本発明にかかる高濃度ミネラル液の製造方法およびその製造装置について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔高濃度ミネラル液の製造方法〕
本発明の高濃度ミネラル液の製造方法は、以下に詳しく述べる工程(I)工程(II)および工程(III)を必須とするものである。
工程(I)は、海水を逆浸透膜で処理することにより、濃縮液(A1)と膜透過液(A2)とに分離する工程である。該工程(I)は、海水を濃縮する目的で行うものであり、該工程(I)において得られる濃縮液(A1)は、各種イオンの濃度が海水よりも高濃度となっており、該工程(I)において得られる膜透過液(A2)は、各種イオンの濃度が海水よりも低濃度となっている。工程(I)における処理は、具体的には、得られる濃縮液(A1)の濃縮倍率が1.4〜3.0倍となるように行うことが好ましく、2.0〜2.5倍となるように行うことがより好ましい。
前記工程(I)において用いられる逆浸透膜は、海水から淡水を製造する際に用いられる一般的な膜であればよく、例えば、ポリアミド系や酢酸セルロース系等の膜が挙げられるが、分離性能が高く容易に安定運転ができる点では、架橋全芳香族系ポリアミド膜が好ましい。また、前記逆浸透膜は、海水淡水化が可能な程度、具体的には最低でも7MPa以上の耐圧性を有しているものが好ましい。前記逆浸透膜における膜モジュールの形態としては、特に制限はなく、スパイラル型、中空糸膜型、プレート型等が挙げられるが、高圧下での安定運転を考慮すると、スパイラル型モジュールが好ましい。
前記工程(I)において、海水を逆浸透膜で処理する際の処理条件としては、圧力50〜70kg/cm2、処理温度40℃以下の範囲内で適宜設定すればよく、通水流量は、その規模に応じ慣用されている範囲内で適宜設定すればよい。
なお、工程(I)における処理は、多段式で行っても良いし、回分式で行っても良いし、必要に応じて繰り返し行うようにしてもよい。
前記工程(I)において逆浸透膜に供する海水は、取水した海水そのものであってもよいのであるが、工程(I)において逆浸透膜に供する海水には、膜ろ過処理および/または紫外線殺菌処理をあらかじめ施しておくことが好ましい。
前記膜ろ過処理は、取水した海水中の懸濁物質(具体的には、砂粒、SS、細菌、微生物類など)を除去する目的で行うものであり、例えば、限外ろ過膜(UF膜)、精密ろ過膜(MF膜)等の平均孔径0.01〜0.2μm程度の微細孔を有した膜によるろ過処理が挙げられる。前記膜ろ過処理に用いる膜としては、特に制限はなく、一般的には、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン等の膜のように実用化実績のある膜を使用することができる。好ましくは、ポリアクリロニトリルまたはポリフッ化ビニリデンを主成分とする膜がよい。また、前記膜ろ過処理は、長期に渡って安定したろ過性能を発現させ続けるためには、ろ過水逆流洗浄(逆洗)やエアースクラビング洗浄(空洗)等の物理洗浄性機能を備えた膜や膜処理装置を用いて行うことが好ましい。なお、この膜ろ過処理は、工程(I)に先立ち海水に施しておくことが特に好ましいのであるが、これに限定されるわけではなく、本発明の製造方法のなかのいずれの段階において行ってもよい。例えば、後述する工程(III)で得られたミネラル液に対して最終段階で施すようにしても差し支えない。
前記紫外線殺菌処理は、取水した海水中の生菌を殺菌する目的で行うものであり、例えば、紫外線ランプ(UVランプ)を用いて紫外線を照射する処理など、水処理において広く用いられている公知の紫外線殺菌処理法を適用することができる。なお、この紫外線殺菌処理は、工程(I)に先立ち海水に施しておくことが特に好ましいのであるが、これに限定されるわけではなく、本発明の製造方法のなかのいずれの段階において行ってもよい。例えば、後述する工程(III)で得られたミネラル液に対して最終段階で施すようにしても差し支えない。
前記海水としては、海洋深層水を用いることが好ましい。ここで、海洋深層水とは、水深200m以上の深海から取水した海水を言うものとする。
工程(II)は、工程(I)で得られた前記濃縮液(A1)を、陽極と陰極の間に一価アニオン選択透過性の陰イオン交換膜と陽イオン交換膜が対として設けられてなる電気透析装置(以下「第一の電気透析装置」と称することもある。)で処理することにより、陽イオン濃度と一価陰イオン濃度が高く二価以上の陰イオン濃度が低い濃縮液(B1)と二価以上の陰イオン濃度が高く陽イオン濃度と一価陰イオン濃度が低い濃縮液(B2)とに分離する工程である。該工程(II)は、ミネラル成分が高濃度となったときに石膏の析出原因となる硫酸イオンを濃縮液(A1)から低減すると同時に、濃縮液(A1)中に含まれる主に塩化物イオンや他のカチオンの濃度を高めるために行うものであり、濃縮液(B1)がその目的物となる。工程(II)における処理は、具体的には、濃縮液(B1)中の硫酸イオン濃度が1000ppm以下となるように行うことが好ましく、500ppm以下となるように行うことがより好ましい。
前記工程(II)において用いられる第一の電気透析装置は、陽極と陰極の間に一価アニオン選択透過性陰イオン交換膜と陽イオン交換膜を対として備えるものであり、陽極側が陽イオン交換膜で区切られ陰極側が一価アニオン選択透過性陰イオン交換膜で区切られた室(このような室を「濃縮室(b1)」と称する)が存在するように前記両イオン交換膜が配置されてなる。一価アニオン選択透過性陰イオン交換膜と陽イオン交換膜は、1対のみであってもよいが、2対以上が交互に設けられていることが好ましく、したがって、通常は2対以上を備えた装置が用いられる。詳しくは、2対以上の一価アニオン選択透過性陰イオン交換膜と陽イオン交換膜を備えた装置である場合、陽極、陽イオン交換膜、一価アニオン選択透過性陰イオン交換膜、陽イオン交換膜、・・・、一価アニオン選択透過性陰イオン交換膜、陽イオン交換膜、陰極の順で配置される(例えば、n対の一価アニオン選択透過性陰イオン交換膜と陽イオン交換膜を備えた装置である場合には、図1の模式図に示すように配置される)。これにより、陽極側が陽イオン交換膜で区切られ陰極側が一価アニオン選択透過性陰イオン交換膜で区切られた室(濃縮室(b1))と、陽極側が一価アニオン選択透過性陰イオン交換膜で区切られ陰極側が陽イオン交換膜で区切られた室(このような室を「脱塩室(b2)」と称する)と、片側が陽極もしくは陰極と接している室(このような室を「陽極室」もしくは「陰極室」と称する)とが存在することになる。このような第一の電気透析装置において、前記脱塩室(b2)に工程(I)で得られた前記濃縮液(A1)を供給し、陽極と陰極の間に電圧を印加すると、前記濃縮室(b1)内に陽イオン濃度と一価陰イオン濃度が高く二価以上の陰イオン濃度が低い濃縮液(B1)が得られ、前記脱塩室(b2)内に二価以上の陰イオン濃度が高く陽イオン濃度と一価陰イオン濃度が低い濃縮液(B2)が得られる。すなわち、第一の電気透析装置においては、二価以上の陰イオン(硫酸イオンなど)は濃縮室(b1)内に透過せず、一価の陰イオン(主に塩化物イオンなど)やカチオンは濃縮室(b1)内に透過することとなり、濃縮室(b1)内に硫酸イオンの濃度が低くかつミネラル成分濃度が高められた前記濃縮液(B1)が得られるのである。
前記第一の電気透析装置における前記一価アニオン選択透過性陰イオン交換膜としては、二価以上の陰イオン(特に硫酸イオン(SO 2−))よりも一価陰イオン(特に塩化物イオン(Cl))を選択的に透過させる特性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、海水を濃縮して食塩を製造するために使用されている既存の一価アニオン選択透過性陰イオン交換膜などを用いることができる。具体的には、該膜を透過した液中の硫酸イオンと塩化物イオンの比(SO 2−/Cl)を、膜を透過する前の液中の硫酸イオンと塩化物イオンの比(SO 2−/Cl)で割った値、すなわち選択透過率P(SO/Cl)が0.05以下となるものが好ましく、0.01以下となるものがより好ましい。
前記第一の電気透析装置における前記陽イオン交換膜としては、カチオンを透過する特性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、海水濃縮用途以外の一般用として脱塩・濃縮などに従来から使用されている陽イオン交換膜などを用いることができる。具体的には、該膜を透過した液中のカルシウムイオンとナトリウムイオンの比(Ca2+/Na)を、膜を透過する前の液中のカルシウムイオンとナトリウムイオンの比(Ca2+/Na)で割った値、すなわち選択透過率P(Ca/Na)が1.0以上となるものが好ましく、1.2以上となるものがより好ましい。
前記工程(II)において、前記濃縮液(A1)を第一の電気透析装置で処理する際の処理条件としては、処理温度8〜40℃の範囲内で適宜設定すればよく、通水流量は、その規模に応じ慣用されている範囲内で適宜設定すればよい。
なお、工程(II)における処理は、多段式で行っても良いし、回分式で行っても良いし、必要に応じて繰り返し行うようにしてもよい。
工程(III)は、工程(II)で得られた前記濃縮液(B1)を、陽極と陰極の間に一価カチオン選択透過性の陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が対として設けられてなる電気透析装置(以下「第二の電気透析装置」と称することもある。)で処理することにより、高濃度ミネラル液である二価以上の陽イオン濃度が高く一価陽イオン濃度が低い濃縮液(C1)と、二価以上の陽イオン濃度が低く一価陽イオン濃度が高い濃縮液(C2)とに分離する工程である。該工程(III)は、濃縮液(B1)中に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンの濃度の低下を抑制しつつ、主にナトリウムイオンおよびカリウムイオンを低減するために行うものであり、濃縮液(C1)がその目的物である高濃度ミネラル液となる。工程(III)における処理は、具体的には、濃縮液(C1)中のナトリウムイオン濃度が1500ppm以下となるように行うことが好ましく、500ppm以下となるように行うことがより好ましい。
前記工程(III)において用いられる第二の電気透析装置は、陽極と陰極の間に陰イオン交換膜と一価カチオン選択透過性陽イオン交換膜を対として備えるものであり、陽極側が陰イオン交換膜で区切られ陰極側が一価カチオン選択透過性陽イオン交換膜で区切られた室(このような室を「脱塩室(c1)」と称する)が存在するように前記両イオン交換膜が配置されてなる。一価アニオン選択透過性陰イオン交換膜と陽イオン交換膜は、1対のみであってもよいが、2対以上が交互に設けられていることが好ましく、したがって、通常は2対以上を備えた装置が用いられる。詳しくは、2対以上の陰イオン交換膜と一価カチオン選択透過性陽イオン交換膜を備えた装置である場合、陽極、一価カチオン選択透過性陽イオン交換膜、陰イオン交換膜、一価カチオン選択透過性陽イオン交換膜、・・・、陰イオン交換膜、一価カチオン選択透過性陽イオン交換膜、陰極の順で配置される(例えば、n対の一価アニオン選択透過性陰イオン交換膜と陽イオン交換膜を備えた装置である場合には、図2の模式図に示すように配置される)。これにより、陽極側が陰イオン交換膜で区切られ陰極側が一価カチオン選択透過性陽イオン交換膜で区切られた室(脱塩室(c1))と、陽極側が一価カチオン選択透過性陽イオン交換膜で区切られ陰極側が陰イオン交換膜で区切られた室(このような室を「濃縮室(c2)」と称する)と、片側が陽極もしくは陰極と接している室(このような室を「陽極室」もしくは「陰極室」と称する)とが存在することになる。このような第二の電気透析装置において、前記脱塩室(c1)に工程(II)で得られた前記濃縮液(B1)を供給し、陽極と陰極の間に電圧を印加すると、前記脱塩室(c1)内に二価以上の陽イオン濃度が高く一価陽イオン濃度が低い濃縮液(C1)(目的とする高濃度ミネラル液)が得られ、前記濃縮室(c2)内に二価以上の陽イオン濃度が低く一価陽イオン濃度が高い濃縮液(C2)が得られる。すなわち、第二の電気透析装置においては、二価以上の陽イオン(主にカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンなど)は濃縮室(c2)内に透過せず、一価の陽イオン(ナトリウムイオンやカリウムイオンなど)は濃縮室(c2)内に透過することとなり、脱塩室(c1)内にナトリウムイオンの濃度が低くかつミネラル成分濃度が高い濃縮液(C1)が得られるのである。
前記第二の電気透析装置における前記一価カチオン選択透過性陽イオン交換膜としては、ミネラル成分である二価以上の陽イオン(特にカルシウムイオン(Ca2+)やマグネシウムイオン(Mg2+)など)よりも一価陽イオン(特にナトリウムイオン(Na)およびカリウムイオン(K))を選択的に透過させる特性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、海水を濃縮して食塩を製造するために使用されている既存の一価カチオン選択透過性陽イオン交換膜などを用いることができる。具体的には、該膜を透過した液中のカルシウムイオンとナトリウムイオンの比(Ca2+/Na)を、膜を透過する前の液中のカルシウムイオンとナトリウムイオンの比(Ca2+/Na)で割った値、すなわち選択透過率P(Ca/Na)が0.5以下となるものが好ましく、0.1以下となるものがより好ましい。
前記第二の電気透析装置における前記陰イオン交換膜としては、アニオンを透過する特性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、得られたミネラル液の用途においてミネラル液中の硫酸イオン(SO 2−)濃度に特に制限がない限り、一価アニオン選択透過性の有無に関わらず、一般に用いられる陰イオン交換膜が使用できる。得られたミネラル液の用途においてミネラル液中の硫酸イオン(SO 2−)濃度の上限が制限される場合には、一価アニオン選択透過性を有する陰イオン交換膜を使用すればよい。具体的には、前記陰イオン交換膜は、該膜を透過した液中の硫酸イオンと塩化物イオンの比(SO 2−/Cl)を、膜を透過する前の液中の硫酸イオンと塩化物イオンの比(SO 2−/Cl)で割った値、すなわち選択透過率P(SO/Cl)の値が高い膜であることが好ましい。
前記工程(III)において、前記濃縮液(B1)を第二の電気透析装置で処理する際の処理条件としては、処理温度8〜40℃の範囲内で適宜設定すればよく、通水流量は、その規模に応じ慣用されている範囲内で適宜設定すればよい。
なお、工程(III)における処理は、多段式で行っても良いし、回分式で行っても良いし、必要に応じて繰り返し行うようにしてもよい。
前記工程(III)は、工程(I)で得られた膜透過液(A2)を供給しながら行うことが好ましい。詳しくは、工程(III)においては、処理が進行するにつれて、前記脱塩室(c1)では液量が減少することとなり、他方、前記濃縮室(c2)では徐々に一価の陽イオン(ナトリウムイオンやカリウムイオンなど)の濃度が高くなり、その除去効率が低下することになる。そのため、処理の進行に伴い、前記脱塩室(c1)には減少分だけ補給水を供給することが好ましく、他方、前記濃縮室(c2)にイオン濃度を下げるための希釈水を供給することが好ましい。このとき供給する補給水や希釈水は、各種イオン濃度が低い水でなければならず、純水であることが望ましい。工程(I)で得られた膜透過液(A2)は、極めて低濃度のイオンしか存在しないものであるので、該膜透過液(A2)を前記補給水や希釈水として利用することが可能であり、これにより、補給水用もしくは希釈水用に純水もしくは純水製造装置を用意する必要がなくなり、コストが低減できると同時に、補給水もしくは希釈水自体も原料である海水に由来するものであることから、第3成分の混入がないという安心感を消費者に与えることができるのである。
工程(III)においては、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜からなる一つの対あたりに印加される電圧が、陽極側の陰イオン交換膜と陰極側の陽イオン交換膜とで区切られた室(すなわち、前記脱塩室(c1))における液の電導度から下記式(1)により求められる電圧Vuc以下となるよう、陽極と陰極の間に印加する電圧を制御することが好ましい。これにより、処理が進むにつれて、イオン交換膜表面において水の電気分解が起こり易くなって一価イオンの選択透過性が悪化し、ひいてはイオン交換膜が劣化してしまう、という問題を回避することができる。なお、陽極と陰極の間に印加する電圧の制御は、常時行うことが好ましいが、間歇的に行うようにしてもよい。
電圧Vuc(v)=aκ+bκ+c (1)
ただし、κ:上記の電導度(mS/cm)
a、b、c:任意に設定した電圧を上記の陽極と陰極の間に印加して工程(III)を行う予備処理において、異なる3以上の時点で、上記の室における液の電導度(x)を測定するとともに、上記の陽極と陰極の間に印加する電圧を変化させて電圧値の変化に対応する電流値の変化の関係をグラフ化して該グラフに現れる屈曲点における電圧値(y)を求め、得られた3組以上の電導度(x)と電圧(y)の各値が関係式y=ax+bx+cを満足するように決定される係数である。
前記式(1)において、a、bおよびcで表される係数を決定する際の予備処理は、本発明の製造方法における工程(III)の処理に使用する装置と同じ装置で行う。a、bおよびcの決定方法について以下に詳しく説明する。初め、任意に設定した電圧を陽極と陰極の間に印加して、予備処理を開始する。電圧を印加すると、陽極側の陰イオン交換膜と陰極側の陽イオン交換膜とで区切られた室(すなわち、前記脱塩室(c1))における液の電導度は、処理の進行に伴い低下する。そこで、前記脱塩室(c1)における液の電導度が異なる3以上の時点で、言い換えれば、異なった処理時間で3回以上、次の1)および2)の操作を行う。
1)各時点での電導度(x)を測定する。ここで、1回目に測定した電導度の値をx1、2回目に測定した電導度の値をx2、n回目に測定した電導度の値をxnと仮定すると、x1の値が最も高くなり、xnの値が最も低くなる。
2)上記1)の電導度の測定後、直ちに、陽極と陰極の間に印加する電圧を0vから徐々に上げていき、電圧値の変化に伴い変化する電流値を測定する。そして、このときの電圧と電流の関係をグラフ化する。このグラフは、例えば、図3に示すように、電導度がx1のときには(i)、電導度がx2のときには(ii)、電導度がxnのときには(iii)のようになり、それぞれ屈曲点を有することになるので、この屈曲点における電圧(y)を各電導度ごとに求める(例えば、電導度がx1のときの電圧(y)の値はy1、電導度がx2のときの電圧(y)の値はy2、電導度がxnのときの電圧(y)の値はynとなる)。このようにして得られた3組以上の電導度(x)と電圧(y)の各値(x1とy1、x2とy2、・・・、xnとyn)が関係式y=ax+bx+cを満足するようにa、bおよびcを決定し、これらを前記式(1)の係数a、bおよびcとして採用するのである。
なお、前記1)および2)の操作は、3つの係数を求めるためには最低3回行えばよいのであるが、より多く行うほど得られる係数a、bおよびcの精度は上がるので、可能な限り多く(具体的には、好ましくは5回以上)行うことが望ましい。また、前記1)および2)の操作を行う時点をどのように設定するか(言い換えれば、どれだけの処理時間のときに前記1)および2)の操作を行うか)については、特に限定されないが、予備処理の開始時点から終了時点(ここで、終了時点とは、Na量が目的とする上限値、すなわち本発明の製造方法で得ようとする高濃度ミネラル液で許容されるNa量、を下回る時点である)までに要する総処理時間に対して均等な間隔で設定することが望ましい。すなわち、例えば前記1)および2)の操作を3つの時点で行う場合には、前記総処理時間を均等な間隔で4分割して、開始時点と終了時点を除いた、第1分割点、第2分割点および第3分割点を上記3つの時点に設定することが望ましい。
本発明の製造方法においては、工程(I)で得られた濃縮液(A1)は、工程(II)に供する前に、陽極と陰極の間に一価カチオン選択透過性の陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が対として設けられてなる電気透析装置(以下「第三の電気透析装置」と称することもある。)で予め処理しておくことが好ましい。この処理は、工程(III)と同様の原理により、濃縮液(A1)中に含まれる主にナトリウムイオンおよびカリウムイオンなどの一価陽イオンを低減する目的で行うものであり、濃縮液(B1)に代えて濃縮液(A1)を処理に供すること以外、前述した工程(III)と同様にして行えばよい。なお、第三の電気透析装置による処理はあくまで予備的なものであるので、該処理における一価陽イオンの低減は、工程(III)と同等のレベルまで行う必要はなく、粗取り程度のレベルまで行えば充分である。
前記第三の電気透析装置については、前述した第二の電気透析装置と同じ構成からなるものであり、各膜の配置の仕方や具体例など、さらに該電気透析装置を用いた処理方法などについては、工程(III)における説明が同じく適用できる。ただし、第三の電気透析装置においては、陰イオン交換膜として一価アニオン選択透過性陰イオン交換膜ではない陰イオン交換膜を採用することが、一価陽イオンとともに硫酸イオンの低減も図ることができる点で、好ましい態様となる。第三の電気透析装置による処理では、脱塩室に生じる濃縮液がその目的物となるのであり、これを続く工程(II)に供することになる。
前記濃縮液(A1)を第三の電気透析装置で処理しておくことにより、予め濃縮液(A1)からナトリウムイオンなどの一価カチオンを粗取りしておくことができるので、ナトリウムイオンの低減を目指した工程(III)の負荷を軽減することができ、その結果、工程(III)において起こりうる濃縮室へのミネラル成分のリークをより少なくすることが可能となり、より高濃度のミネラル液(C1)を得ることができるのである。
本発明の製造方法の好ましい態様において、得られるミネラル液は、カルシウム濃度が1000mg/L以上、マグネシウム濃度が3000mg/L以上、ナトリウム濃度が1500mg/L以下である。本発明の製造方法によれば、前記工程(II)において、硫酸イオンを低減すると同時に、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどのミネラル成分を5〜8倍以上に濃縮でき、さらに、工程(III)において、ナトリウムイオンを充分に低減できるので、最終的に得られる高濃度ミネラル液(すなわち、工程(III)で得られた濃縮液(C1))のカルシウム濃度、マグネシウム濃度およびナトリウム濃度は、容易に前記範囲を満足することとなる。
〔高濃度ミネラル液の製造装置〕
本発明の高濃度ミネラル液の製造装置は、海水を濃縮液(A1)と膜透過液(A2)とに分離する逆浸透膜と、陽極と陰極の間に一価アニオン選択透過性の陰イオン交換膜と陽イオン交換膜が対として設けられてなる第一の電気透析装置と、陽極と陰極の間に一価カチオン選択透過性の陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が対として設けられてなる第二の電気透析装置とを備え、前記第一の電気透析装置には前記濃縮液(A1)が供給され、前記第二の電気透析装置には前記第一の電気透析装置による処理で得られる陽イオン濃度および一価陰イオン濃度が高く二価以上の陰イオン濃度が低い濃縮液(B1)が供給されるものであり、前述した本発明の製造方法に適用しうる製造装置である。
前記逆浸透膜については〔高濃度ミネラル液の製造方法〕の項で述べた工程(I)における説明が適用でき、前記第一の電気透析装置については、〔高濃度ミネラル液の製造方法〕の項で述べた工程(II)における説明が適用でき、前記第二の電気透析装置については、〔高濃度ミネラル液の製造方法〕の項で述べた工程(III)における説明が適用できる。なお、本発明の製造装置には、これら逆浸透膜、第一の電気透析装置および第二の電気透析装置のほかに、前述した本発明の製造方法を実施するための種々の手段、例えば、前記膜ろ過処理や紫外線殺菌処理を行うための手段、前記第三の電気透析装置などを適宜設けることもできる。
以下に、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
工程(I);室戸岬の海洋深層水を原料とし、これを、海水淡水化用の逆浸透膜(東レ(株)製「SU810」)を用いて圧力6.4MPa、処理温度13℃の条件で該膜を透過する膜透過液の回収率が33%となるように処理して、表1に示す組成の濃縮液(A1)と、淡水である膜透過液(A2)を得た。該濃縮液(A1)は、原料の海洋深層水と比較して全ての成分(各種イオン)が約1.6倍に濃縮されたものであり、前記逆浸透膜による処理性能は、通常のレベルであると言える。
工程(II);第一の電気透析装置として、電気透析槽(旭硝子エンジニアリング(株)製「CH−O型」;有効面積=0.021m/対、有効対数=10対)に、陽イオン交換膜として旭硝子(株)製「セレミオンCMV」(選択透過率P(Ca/Na)=1.2)を組み込み、一価アニオン選択透過性陰イオン交換膜として旭硝子(株)製「セレミオンASV」(選択透過率P(SO/Cl)=0.01))を組み込んだものを用い、工程(I)で得られた濃縮液(A1)を処理温度20℃、電流密度1.8A/dmで30時間処理して、表1に示す組成の濃縮液(B1)および濃縮液(B2)を得た。得られた濃縮液(B1)は、そのミネラル成分濃度が濃縮液(A1)の約4〜6倍(原料の海洋深層水に対しては約7〜11倍)に濃縮されたものであるにもかかわらず、硫酸イオン(SO 2−)が約17分の1に抑えられているため、石膏等の析出は全く起こらなかった。
工程(III);第二の電気透析装置として、電気透析槽(旭硝子エンジニアリング(株)製「CH−O型」;有効面積=0.021m/対、有効対数=10対)に、一価カチオン選択透過性陽イオン交換膜換膜として旭硝子(株)製「セレミオンCSV」(選択透過率P(Ca/Na)=0.2)を組み込み、陰イオン交換膜として旭硝子(株)製「セレミオンAMV」(選択透過率P(SO/Cl)=0.6)を組み込んだものを用い、工程(II)で得られた濃縮液(B1)を処理温度20℃で12時間処理して、表1に示す組成の濃縮液(C1)および濃縮液(C2)を得、得られた濃縮液(C1)を高濃度ミネラル液とした。
なお、処理に際しては、処理が進行するにつれて濃縮液(C1)が生じるところの脱塩室の液量は減少したので、該減少分だけ工程(I)で得られた膜透過液(A2)を補給水として供給し、他方、濃縮液(C2)が生じるところの濃縮室には工程(I)で得られた膜透過液(A2)を希釈水として供給した。
また、処理に際しては、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜からなる一つの対あたりに印加される電圧が、陽極側の陰イオン交換膜と陰極側の陽イオン交換膜とで区切られた室(すなわち、前記脱塩室(c1))における液の電導度から前述の式(1)により求められる電圧Vuc以下となるよう、陽極と陰極の間に印加する電圧を常時制御した。なお、前述の式(1)における係数a、bおよびcは、前述の通りにして、予め行った予備処理において5組の電導度(x)と電圧(y)の各値を求め、得られた5組の電導度(x)と電圧(y)の各値が関係式y=ax+bx+cを満足するようにして決定された係数であって、a=0.00012、b=−0.015、c=0.51である。
得られた高濃度ミネラル液(濃縮液(C1))のミネラル成分濃度は、原料である海洋深層水の約5〜7倍の高濃度を維持したものであった。
表1に各工程の処理で得られた濃縮液もしくは膜透過液の液量と組成を示す。
Figure 0004031789
〔実施例2〕
工程(I);室戸岬の海洋深層水を原料とし、実施例1の工程(I)と同様にして処理し、表2に示す組成の濃縮液(A1)と、淡水である膜透過液(A2)を得た。該濃縮液(A1)は、原料の海洋深層水と比較して全ての成分(各種イオン)が約1.6倍に濃縮されたものであり、前記逆浸透膜による処理性能は、通常のレベルであると言える。
次に、第三の電気透析装置として、電気透析槽(旭硝子エンジニアリング(株)製「CH−O型」;有効面積=0.021m/対、有効対数=10対)に、一価カチオン選択透過性陽イオン交換膜換膜として旭硝子(株)製「セレミオンCSV」(選択透過率P(Ca/Na)=0.2)を組み込み、陰イオン交換膜として旭硝子(株)製「セレミオンAMV」(選択透過率P(SO/Cl)=0.6)を組み込んだもの用い、上記で得られた濃縮液(A1)を処理温度20℃、電流密度2.0A/dmで28時間処理して、表2に示す組成の濃縮液(A1’)とおよび濃縮液(A2’)を得た。得られた濃縮液(A1’)は、濃縮液(A1)よりも液量が減少しており、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンの濃度は低下しているが、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどのミネラル成分の濃度は逆に上昇したものであった。
工程(II);工程(I)で得られた濃縮液(A1’)を、処理時間を30時間から8時間に変更したこと以外は実施例1の工程(II)と同様にして処理し、表2に示す組成の濃縮液(B1)および濃縮液(B2)を得た。得られた濃縮液(B1)は、そのミネラル成分濃度が濃縮液(A1)の約4〜6倍(原料の海洋深層水に対しては約7〜11倍)に濃縮されたものであるにもかかわらず、硫酸イオン(SO 2−)が約17分の1に抑えられているため、石膏等の析出は全く起こらなかった。
工程(III);工程(II)で得られた濃縮液(B1)を、工程(I)で得られた膜透過液(A2)で1.5倍に希釈したのち、処理時間を12時間から5時間に変更したこと以外は実施例1の工程(III)と同様にして処理し、表2に示す組成の濃縮液(C1)および濃縮液(C2)を得、得られた濃縮液(C1)を高濃度ミネラル液とした。
得られた高濃度ミネラル液(濃縮液(C1))のミネラル成分濃度は、原料である海洋深層水の約10倍の高濃度を維持したものであった。
表2に各工程の処理で得られた濃縮液もしくは膜透過液の液量と組成を示す。
Figure 0004031789
〔比較例1〕
工程(I);室戸岬の海洋深層水を原料とし、実施例1の工程(I)と同様にして処理し、表3に示す組成の濃縮液(A1)と、淡水である膜透過液(A2)を得た。該濃縮液(A1)は、原料の海洋深層水と比較して全ての成分(各種イオン)が約1.6倍に濃縮されたものであり、前記逆浸透膜による処理性能は、通常のレベルであると言える。
工程(III);工程(II)を行うことなく、工程(I)で得られた濃縮液(A1)を、処理時間を12時間から5時間に変更したこと以外は実施例1の工程(III)と同様にして処理し、表3に示す組成の濃縮液(C1)および濃縮液(C2)を得た。
得られた濃縮液(C1)は、ナトリウムイオンの濃度は低下しているものの、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどのミネラル成分の濃度は原料である海洋深層水の2倍に満たないものであった。
表3に各工程の処理で得られた濃縮液もしくは膜透過液の液量と組成を示す。
Figure 0004031789
本発明にかかる高濃度ミネラル液の製造方法およびその製造装置は、例えば食品・飲料用途、食品添加物用途、医療用途、化粧品用途、肥料用途等の各種用途において好適に利用することができ、特に、健康促進を意図した機能性食品や飲料等に好ましく用いることができる。
本発明において用いられる第一の電気透析装置の一形態を示す模式図である。 本発明において用いられる第二の電気透析装置の一形態を示す模式図である。 式(1)中の係数a、bおよびcの決定方法を説明するグラフである。

Claims (7)

  1. 海水を逆浸透膜で処理することにより濃縮液(A1)と膜透過液(A2)とに分離する工程(I)と、
    陽極と陰極の間に一価アニオン選択透過性の陰イオン交換膜と陽イオン交換膜が対として設けられてなる電気透析装置で前記濃縮液(A1)を処理することにより、陽イオン濃度と一価陰イオン濃度が高く二価以上の陰イオン濃度が低い濃縮液(B1)と二価以上の陰イオン濃度が高く陽イオン濃度と一価陰イオン濃度が低い濃縮液(B2)とに分離する工程(II)と、
    陽極と陰極の間に一価カチオン選択透過性の陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が対として設けられてなる電気透析装置で前記濃縮液(B1)を処理することにより、高濃度ミネラル液である二価以上の陽イオン濃度が高く一価陽イオン濃度が低い濃縮液(C1)と、二価以上の陽イオン濃度が低く一価陽イオン濃度が高い濃縮液(C2)とに分離する工程(III)と、
    を含む、高濃度ミネラル液の製造方法。
  2. 工程(I)で得られた濃縮液(A1)は、工程(II)に供する前に、陽極と陰極の間に一価カチオン選択透過性の陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が対として設けられてなる電気透析装置で予め処理しておく、請求項1に記載の高濃度ミネラル液の製造方法。
  3. 工程(III)は、工程(I)で得られた膜透過液(A2)を供給しながら行う、請求項1または2に記載の高濃度ミネラル液の製造方法。
  4. 工程(III)においては、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜からなる一つの対あたりに印加される電圧が、陽極側の陰イオン交換膜と陰極側の陽イオン交換膜とで区切られた室における液の電導度から下記式(1)により求められる電圧Vuc以下となるよう、陽極と陰極の間に印加する電圧を制御する、請求項1から3までのいずれかに記載の高濃度ミネラル液の製造方法。
    電圧Vuc(v)=aκ+bκ+c (1)
    ただし、κ:上記の電導度(mS/cm)
    a、b、c:任意に設定した電圧を上記の陽極と陰極の間に印加して工程(III)を行う予備処理において、異なる3以上の時点で、上記の室における液の電導度(x)を測定するとともに、上記の陽極と陰極の間に印加する電圧を変化させて電圧値の変化に対応する電流値の変化の関係をグラフ化して該グラフに現れる屈曲点における電圧値(y)を求め、得られた3組以上の電導度(x)と電圧(y)の各値が関係式y=ax+bx+cを満足するように決定される係数である。
  5. 得られるミネラル液が、カルシウム濃度1000mg/L以上、マグネシウム濃度3000mg/L以上、ナトリウム濃度1500mg/L以下のものである、請求項1から4までのいずれかに記載の高濃度ミネラル液の製造方法。
  6. 前記海水として海洋深層水を用いる、請求項1から5までのいずれかに記載の高濃度ミネラル液の製造方法。
  7. 海水を濃縮液(A1)と膜透過液(A2)とに分離する逆浸透膜と、陽極と陰極の間に一価アニオン選択透過性の陰イオン交換膜と陽イオン交換膜が対として設けられてなる第一の電気透析装置と、陽極と陰極の間に一価カチオン選択透過性の陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が対として設けられてなる第二の電気透析装置とを備え、前記第一の電気透析装置には前記濃縮液(A1)が供給され、前記第二の電気透析装置には前記第一の電気透析装置による処理で得られる陽イオン濃度および一価陰イオン濃度が高く二価以上の陰イオン濃度が低い濃縮液(B1)が供給される、高濃度ミネラル液の製造装置。
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