JP4029510B2 - 5−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の製造方法 - Google Patents

5−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、5−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の製造方法に関するものである。5−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸は、写真用薬品、染料、有機顔料等の製造中間体として有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、フェノール類のカルボキシル化反応としてコルベーシュミット反応が知られており、該反応は、フェノール類のアルカリ金属塩に炭酸ガスを注入してカルボキシル化することによりヒドロキシ安息香酸類を製造するものである。特に、米国特許第2,453,105号においては、フェノール類のカリウム塩にハロゲン化ベンゼン中で炭酸ガスを吹き込みカルボキシル化する手法が示されており、フエノール類としてアミノ基を有するナフトールである5−アミノ−1−ナフトールが例示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、米国特許第2,453,105号に記載の方法においては、まずフエノール類と水酸化カリウムとを反応させ、さらに生成した水を系外に除去することによりカリウム塩を得、しかる後にカルボキシル化を行うという煩雑な手順をふむ必要があり、また、近年の環境汚染対策に合致した溶媒回収等の後処理を行う上で面倒なハロゲン化ベンゼンを溶媒として用いる必要があるという点において、十分に満足できるものとは言い難い。さらに、収率においても必ずしも十分とは言い難いものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、5−アミノ−1−ナフトールを、アルカリ金属の炭酸塩および/または燐酸塩の存在下、炭酸ガスによりカルボキシル化する5−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の製造方法を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられるアルカリ金属の炭酸塩および燐酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム等が挙げられる。これらのアルカリ金属の炭酸塩や燐酸塩は、無水物でも水和物でもよく、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0006】
該アルカリ金属の炭酸塩、燐酸塩の使用量は、5−アミノ−1−ナフトール1モルに対して0.5〜2.5モルの割合が好ましい。一般に、アルカリ金属の炭酸塩や燐酸塩の使用量が5−アミノ−1−ナフトールに対して0.5倍モル未満では収率が十分でない場合があり、一方、あまり多量に使用するのは経済的に好ましくない。
【0007】
炭酸ガスによるカルボキシル化反応は、一般に120〜230℃、好ましくは140〜200℃において行われ、5−アミノ−1−ナフトールまたはその溶液中に炭酸ガスを注入することにより行われる。反応温度が低いとカルボキシル化反応の進行が遅いために好ましくなく、一方、反応温度が高過ぎると副反応による不純物生成の増加が見られることから好ましくない。
反応時間は、通常0.5時間以上、10時間以内であるが、反応温度、原料の量やモル比等の種々の条件により変わり得る。
【0008】
該カルボキシル化反応は溶媒を使用せずに行うこともできるが、溶媒を使用する場合は通常、リグロイン、ケロシン、キシレン等の炭化水素の溶媒中で行われる。溶媒の使用量は、5−アミノ−1−ナフトールに対して一般に0.5〜5容量倍程度であり、2〜4容量倍が好ましい。
【0009】
カルボキシル化反応に際して、炭酸ガスの注入および反応は、通常加圧下にて行われ、8〜20kg/cm程度の圧力下で行うのが好ましい。
【0010】
反応終了後は通常の後処理を行う。例えば、反応混合物にアルカリ水溶液を加えて生成する5−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の塩溶液とし、次いで、酸を加えて5−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を析出させ、濾過することにより5−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸が単離される。
尚、本発明の製造方法により得られる5−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸は、純度が高いため、単離、精製することなく、溶液のままで、写真用薬品、染料、有機顔料等の製造に供することもできる。
【0011】
【実施例】
以下に、本発明を実施例にてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
5−アミノ−1−ナフトール31.8gと炭酸カリウム27.6gとを攪拌器付オートクレーブに仕込み、攪拌しながら130℃まで昇温した。同温度にて、炭酸ガスを10kg/cmで圧入し、次いでこの炭酸ガスをパージした。炭酸ガスの注入操作をさらに2回行い(全3回)、その後165〜175℃に保ちながら6時間、炭酸ガスにより内圧を10kg/cmに保持し続けた。
【0012】
その後、オートクレーブを80℃まで冷却し、水150mlを加えて反応生成物を溶解した。得られた溶液に硫酸を加えてpHを約6.5に調整し、析出した固体(未反応の5−アミノ−1−ナフトール)を濾去した。濾液に硫酸を加えてpHを約3に調整し、析出した白色結晶を濾取した。得られた白色結晶を60mlの水で洗浄した後50〜60℃で乾燥して5−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸37.8gを得た。(仕込み5−アミノ−1−ナフトールに対する収率93%)HPLCにより分析した結果、純度99.6%であった。
元素分析値:C65.20%(65.02%)、H4.35%(4.48%)、N6.80%(6.90%)
()内の値は理論値
【0013】
実施例2〜6
実施例1と同様に、炭酸塩、反応温度、反応時間を適宜表1のように変更して5−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を製造した。
【表1】
Figure 0004029510
【0014】
実施例7
5−アミノ−1−ナフトール104.4g、ケロシン300mlおよび炭酸カリウム90.6gを攪拌器付オートクレーブに仕込み、実施例1と同様に10kg/cmで炭酸ガスを圧入し、次いでこの炭酸ガスをパージした。炭酸ガスの注入操作をさらに2回行い(全3回)、その後175〜185℃に保ちながら3時間、炭酸ガスにより内圧を10kg/cmに保持し続けた。その後、オートクレーブを80℃まで冷却し、水860ml、10%水酸化ナトリウム水溶液610gを加えて反応生成物を溶解した。得られた溶液に硫酸を加えてpHを約8に調整し、不溶物を濾去した。上層(有機層)を除去し、水層に硫酸を加えてpHを約3に調整し、析出した白色結晶を濾取した。得られた白色結晶を1リットルの水で洗浄した後50〜60℃で乾燥して5−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸126.6gを得た。(仕込み5−アミノ−1−ナフトールに対する収率95%)HPLCにより分析した結果、純度99.2%であった。
【0015】
参考例
5−アミノ−1−ナフトール31.8gおよび48%水酸化カリウム水溶液23.3gを攪拌器付オートクレーブに仕込み、攪拌しながら100〜110℃で約7時間かて脱水し、さらに110〜130℃、60mmHgの減圧下に3時間かけて脱水した。次いで、実施例1と同様に10kg/cmで炭酸ガスを圧入し、オートクレーブ内を炭酸ガスで置換した後、160〜175℃に保ちながら6時間、炭酸ガスにより内圧を10kg/cmに保持し続けた。その後、実施例1と同様の後処理を行い、5−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸28.4gを得た。(仕込み5−アミノ−1−ナフトールに対する収率70%)
【0016】
上記参考例に示されるように、フェノール類のアルカリ金属塩に炭酸ガスを注入してカルボキシル化する通常の手法においては、5−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の製造に際して必ずしも十分な収率が得られない。
【0017】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、5−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸が高収率、高純度で得られる。

Claims (4)

  1. 無溶媒または炭化水素溶媒存在下、5−アミノ−1−ナフトールを、アルカリ金属の炭酸塩および/または燐酸塩の存在下、炭酸ガスによりカルボキシル化することを特徴とする5−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の製造方法。
  2. 120〜230℃において炭酸ガスによりカルボキシル化する請求項1記載の製造方法。
  3. 炭化水素から選ばれる一種以上の溶媒中でカルボキシル化する請求項1または請求項2記載の製造方法。
  4. アルカリ金属の炭酸塩および/または燐酸塩を、モル数にして5−アミノ−1−ナフトールに対して0.5〜2.5倍量使用する請求項1、請求項2または請求項3記載の製造方法。
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