以下に、本発明を適用可能な実施の形態が説明される。以下の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。また、説明の明確化のため、以下の記載は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、当業者であれば、以下の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。
実施の形態1.
本実施例において発明者は、半透過型液晶表示装置に含まれる液晶パネルのバックライト側の透明基板の厚さと、バックライトから液晶パネルへ入射するバックライト光の放射成分が当該液晶表示装置の表示輝度に大きく影響することを見出した。更に、外光下での反射輝度を十分に得るための開口径との関係を明らかにした。本発明はそれらを規定することにより半透過型液晶表示装置の表示輝度の向上を図るものである。
初めに、液晶表示装置中におけるマイクロレンズアレイの配置及びマイクロレンズアレイによる光学的効果について説明する。図1は本実施形態にかかる液晶表示装置の断面図を示す図である。本発明の実施の形態1にかかる液晶表示装置は、いわゆる半透過型液晶表示装置である。図1において液晶表示装置は、液晶パネル100、マイクロレンズアレイ200を備えている。液晶パネル100では、2枚の透明基板101、102の間に液晶層103が挟持されている。なお、2枚の透明基板101、102の厚みは500μm、これらの間に挟持された液晶層等の厚みが6μm程度であるが、本図面上ではスケールを変更して表示している。
透明基板101、102は、例えばガラス、ポリカーボネイト、アクリル樹脂等により形成される。液晶パネル100の前面側に配置されている透明基板101の背面側、即ち液晶層103側の面には、カラーフィルタ層104が形成される。カラーフィルタ層104は、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の色表示を行なう3領域により構成される。ブラックマトリクス105はカラーフィルタ層104の各画素間に配置される遮光膜であり、画素間の光漏れを防止し、各画素の色を際立たせる働きをする。
カラーフィルタ層104と液晶層103の間には、透明電極106及び配向膜107が順次積層形成されている。透明電極106は、例えばフォトリソグラフィ法により透明導電性薄膜(ITO:Indium Tin Oxide)から形成される。配向膜107は、例えば高分子材料であるポリイミド(Polyimide)薄膜等の有機薄膜で形成され、液晶層103の液晶分子を所定の方向に揃える役割を果たす。液晶パネル100の背面側に配置されている透明基板102にはTFT素子108が形成され、更に透明電極106、配向膜107が積層形成される。TFT素子108は液晶駆動用のスイッチング素子である。TFT素子108側の透明電極106上には画素電極161及び配線162が形成されており、画素電極161は開口部161a及び反射部161bを有する。
偏光板109は、入射光に対して特定の偏光成分のみを透過させる機能を有する光学部材であって、2枚の透明基板101、102の両側表面に貼り付けられる。スペーサ110は、透明基板101、102間の液晶層103の高さ(セルギャップ)を制御する樹脂粒子で、透明基板101、102間の全範囲に亘り、複数個散在される。
図2に示されるように、画素電極161には、開口部161aと反射部161bとが設けられている。マトリクス状の配線162は、互いに直交する走査配線と信号配線を有している。本実施形態における配線162のピッチは100μmであり、配線162の幅は26μmである。
開口部161aは液晶パネル100に対して透明基板102側から入射する光の通り道となる。即ち、開口部161aを設けることによりバックライト光を液晶層に入射させることができるようになる。反射部161bは透明基板101側から入射する光を反射する反射板の役割を果たす。即ち、透明電極106の一部に反射部161bを形成することにより、残りの部分が開口部161aとなる。
開口部161aは、背面側から入射するバックライト光を通過させるので、これにより画像表示を明るくすることができる。その一方で、開口部161aは前面側から入射する光を反射させることができないため、開口部161aが大きくなればなるほど、バックライト光の利用効率が向上する半面、反射光の利用効率が低減する。即ち、バックライト光の利用効率と反射光の利用効率とは同時に高効率化することが難しい。反射光の利用効率を確保するためには、液晶パネル100の表示部全体の面積に対する開口部161aの面積の割合(以下、開口率とする)は50%以下であることが好ましく、より好適には20%以下である。また、バックライト光の利用のためには開口率が0%となってはならない。図2の例においては開口部161aの直径は35μmであり、開口率は10%である。本発明の実施の形態においては、透明基板102の裏面側にマイクロレンズアレイ200を形成し、バックライト光の利用効率を高めている。
第2の透明基板102の背面側にはマイクロレンズアレイ200が設けられている。マイクロレンズアレイ200はリム201及びマイクロレンズ202を有する。図3は透明基板102、マイクロレンズアレイ200、リム201の配置関係を示す平面図である。
図3に示されるように、リム201は、複数のマイクロレンズ202の周囲を囲む位置に設けられている。リム201はマイクロレンズ202の頂点と同一またはそれよりも高い高さで第2の透明基板102の裏面側の外周縁に沿って途切れることなく形成されている。リム201は後述の偏光板109を平坦性を維持して保持する目的及び後述する製造工程時にマイクロレンズアレイ200を固定する目的で設けられる。リム201は好ましくはマイクロレンズ202と同一材料で構成される。
マイクロレンズ202は、50×10−6m程度の直径若しくは対角線を有し、ガラスや合成樹脂の基板又はフィルム上に配置されている。マイクロレンズ202は、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂又はフォトレジストよりなる。マイクロレンズ202のそれぞれは、液晶パネル100の一画素に対応して設けられている。バックライト光の利用効率を向上するためには、図3に示されるようにマイクロレンズ202が隙間なく充填されていることが好ましい。マイクロレンズ202の底面形状が図3に示されるような六角形であれば、平面上に隙間なくマイクロレンズ202を充填することができる。透明基板102の面積に対するマイクロレンズ202の形成されている領域の割合を充填率とすると、充填率は少なくとも70%以上、更に好ましくは80%である。充填率は、透明基板102の面積以外にも、バックライト光の照射領域、液晶パネル100において画素が形成されている領域及び透明基板102の面上におけるリム201の内側の面積等を基に定義することができる。
液晶パネル100を背面側から図示しないバックライトにより照射した場合、各マイクロレンズ202の焦点、即ちクロスポイントはブラックマトリクス105の開口部近傍又は画素電極161の開口部161a近傍に位置する。即ち、マイクロレンズ202の光軸は、画素電極161の開口部161aと位置決めされている。また、マイクロレンズ202の光軸は、TFT素子108以外の領域であって画素電極161上の開口部161aを通る。
次に図4を用いて、マイクロレンズ202を設けた場合(同図(a))と設けない場合(同図(b))の光学特性の違いについて説明する。図4は1画素分の透明基板102近傍の断面図及びそれを通過する光束を示した模式断面図である。
図4(a)に示されるように、バックライト光は開口部161aを通過するが、反射部161bに遮られる。これに対し、マイクロレンズ202を設けた場合には、図4(b)に示されるように、マイクロレンズ202の焦点が開口部161a近傍に位置するので、バックライト光はマイクロレンズ202によって開口部161aに光が集光され、配線部材に遮られることなく光が通過する。これにより、開口部161aの開口率を10%以下とした場合でもバックライト光の利用効率を高めることができる。
マイクロレンズ202は、レンズの高さが高いほど短焦点となる。本実施形態にかかるマイクロレンズ202の高さは20μmであるが、レンズの最大径及び最適な焦点距離によって適宜選択されるものであり、例えば1μm以上100μm以下の間で選択できる。このように、マイクロレンズ202は開口部161aにそれぞれの中心がアライメントされ、透明基板102上に隙間なく充填されることが好ましい。
実施の形態2.
本実施の形態においては実施の形態1において説明したマイクロレンズアレイ及びマイクロレンズアレイを有する液晶表示装置の製造方法について説明する。尚、実施の形態1と同様の符号を付す構成については実施の形態1と同一又は相当部を示し、説明を省略する。
本実施の形態におけるマイクロレンズアレイの製造工程は、以下に示す工程に分けられる。即ち、レーザー描画を用いて乾板上にマスクパターンを描画し、マスターグレイスケールマスクを作成する第1工程、マスターグレイスケールマスクを介してエマルジョンプレートを露光し、マザーグレイスケールマスクを作成する第2工程、マザーグレイスケールマスク上に露光用マイクロレンズを形成し、レンズ付マザーグレイスケールマスクを作成する第3工程、そして、レンズ付マザーグレイスケールマスクを介して透明基板102上に塗布した光感光性樹脂層を露光し、複数組のマイクロレンズアレイ200を液晶基板上に形成する第4工程、マイクロレンズの形成された液晶基板を分離する第5工程である。
マスターグレイスケールマスクとは、マザーグレイスケールマスクを形成するためのフォトマスクであり、一組のマイクロレンズアレイ200に対応したマスターパターンが形成されてなる。マザーグレイスケールマスクとは複数組のマイクロレンズアレイ200を形成するためのものである。即ち、マスターグレイスケールマスクとはマイクロレンズアレイ200の形成の大元であり、そのマスターパターンには高い精度が要求される。マスターグレイスケールマスクはマザーグレイスケールマスク及びマイクロレンズアレイ200に比べて量産性を要しないため、より高精度なマスクパターンを形成することが可能なレーザー描画を用いて形成される。
マザーグレイスケールマスクとは、1つの液晶パネル100に対応するマイクロレンズアレイ200を形成するためのグレイスケールマスクが複数組形成されたものであり、当該グレイスケールマスクにはマイクロレンズ202に対応するグレイスケールが複数組形成されている。当該グレイスケールを介して露光光を強度変調することにより、光感光性樹脂層をレンズ形状に露光することができる。
レンズ付きマザーグレイスケールマスクとは、マザーグレイスケールマスク上に形成されたグレイスケールに対応して露光用マイクロレンズが形成されたものである。グレイスケールによって強度変調された露光光を、露光用マイクロレンズによって透明基板102上に形成された画素電極161の開口部161aに集光することにより、開口部161aとマイクロレンズ202との光軸を高精度に合わせることができる。
次に、上記の各工程について詳述する。
(1)第1工程(マスターグレイスケールマスクの作成)
初めにマスターグレイスケールマスクの製造方法を説明する。本実施形態にかかるマスターグレイスケールマスクは、ガラス等の透明基板上にフォトエマルジョンを塗布し乾燥させた乾板上にマイクロレンズ202に対応するマスターパターンをレーザー光で直接描画し、当該乾板を現像し定着することにより製造する。ここで、本説明においては、乾板にレーザー光を照射して乾板表面を反応させる際に、照射するレーザー光の強度を変調することによって乾板に含まれるフォトエマルジョンの反応度合いを調節し、乾板表面に所望の濃淡を有するパターンを形成することを描画と定義する。反応度合いが変化するパターンが描画された乾板を現像することにより、本実施形態にかかるマスターグレイスケールマスクが完成する。
図5は乾板430上に、マイクロレンズ202に対応するパターンを描画する際の様子を模式的に示した斜視図であり、乾板430上にパターンを描画する描画装置60が示されている。マイクロレンズ202に対応するパターンを乾板430上に描画する際には、図5に示すような描画装置60を用いる。描画装置60は、描画装置本体61と、レーザーを照射する光源62と、この光源62を移動させるアーム63を備えている。
描画装置60は、コンピュータにより構成され、マイクロレンズ202に対応するパターンを描画するための描画データが記憶手段に格納されている。描画装置60は、描画データに従って、アーム63を動かしながら光源62より照射する露光光の強度及び/又は露光時間を変化させ、所望のパターンを乾板430上に描画する。露光強度変調の階調数は例えば4階調以上256階調以下であり、更に好ましくは8階調以上128階調以下であり、更に好ましくは8階調以上24階調以下である。
本実施形態において光源62から照射される露光光のスポット径は0.4μmである。従って、最終的に形成されるマスターパターンは0.4μm程度の光透過率の分解能を有する。乾板430上の全面をプログラムされたパターンに従って露光し終えたら、表面のフォトエマルジョンを現像及び定着することによりマスターグレイスケールマスクが完成する。フォトエマルジョンの現像及び定着には市販の現像液及び定着液を用いることができる。
図6に、完成したマスターグレイスケールマスク600の上面図を示す。図に示すように、マスターグレイスケールマスク600はマイクロレンズ202に対応するパターンであるマスターパターン601を有する。マスターパターン601によって露光光を強度変調し、当該変調された露光光を用いてエマルジョンプレートを露光することにより、エマルジョンプレート上にマイクロレンズ202に対応するグレイスケールを形成することができる。
本実施形態においては、1つのマスターパターン601の最外周において光透過率は略100%であり、マスターパターン601の中心に向かって同心円状に光透過率が減少し、中心において光透過率が略0%となる。また、マスターグレイスケールマスク600においてマスターパターン601が形成されている部分以外の光透過率は略100%である。尚、図6においては、1つのマスターパターン601が正六角形の輪郭で示されている。これは1つのマスターパターンの境界を明確にするためのものであり、実際には1つのマスターパターン601の際外周では光透過率が100%であるため、境界線は存在しない。
ここで、図6には1つのマスターグレイスケールマスク600に対して複数のマスターパターン601が形成された例を示しているが、1つのマスターグレイスケールマスク600に対して1つのマスターパターン601のみを形成しても良い。このように、レーザー光を用いてマスクパターンを描画することにより、高精度なグレイスケールを形成することができると共に、コスト及び生産性に優れた光学部品形成用のグレイスケールマスクを提供することができる。
次に、マスターグレイスケールマスク600の具体的な形成方法及び描画装置60の動作について説明する。光透過率の高いマスターパターン601の外周近傍においては、露光強度を弱く及び/又は露光時間を短くし、逆に光透過率の低いマスターパターン601の中心近傍においては、露光強度を強く及び/又は露光時間を長くする。こうすることにより、マスターパターン601に対応するパターンを、レーザー光を用いて乾板上に直接描画することが可能である。
乾板をレーザー露光することによりパターニングする技術においては、パターンが残るか除去されるかの二択が従来技術において一般的であった。このような技術は主にプリント基板の分野で用いられており、その用途上、パターニングに中間が必要なかったからである。むしろプリント基板という分野においては、パターン有無が明確である方が好ましい。
マスターパターン601のように、位置によって光透過率が段階的若しくは連続的に変化するパターンを形成するためには、専用の感光性プレートを用いるか、レジストを多段階露光してパターンを形成する必要があった。しかしながら、本発明者は乾板を露光するレーザー光の強度を比較的弱いレベルの範囲内で調節することによって、乾板の露光強度を変化させ、乾板上に形成されるパターンに濃度の濃淡即ち光透過率の変化する領域を形成可能であることを見出した。
本実施形態において用いる乾板は、透明基板上にフォトエマルジョンを塗布したものである。ここで用いられる透明基板には、例えばガラス、アスベスト等の無機繊維やポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、アクリル等の有機合成繊維で透明性を有するものが用いられる。フォトエマルジョンは感光性を有する乳剤である。乾板には例えば、コニカミノルタホールディングス株式会社製の乾板、例えばハイレゾリューションプレート(HE−1)等や、富士フィルムグラフィックシステムズ株式会社製の乾板、例えばスーパーマイクロフォトプレート(登録商標)(UM−G)等が用いられる。この様に、専用の乾板ではなく市販されている乾板を用いることにより、コストの低減及び生産性の向上を図ることができる。
レーザー光源にはHeCd(ヘリウム・カドミウム)レーザーやYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザー等が用いられる。これらのレーザーは従来技術において用いられていた電子ビーム等の高エネルギービームよりも光源として安価であるため、コストダウンを図ることができる。また、大気中での露光が可能であるため、真空中での作業が必要となる従来の光源に対して生産性の向上を図ることができる。更には、真空状態を保つことができる空間には限界があるため、従来の光源を用いる場合は大型化が難しかったが、本実施形態にかかるレーザー光源ではその様な空間的制限がないため、大型化も容易である。
これらの光源を用いて乾板を露光する際、そのまま露光すると露光強度が強すぎるために、露光強度に強度変調を加えたとしても表面の乳剤が完全に硬化してしまい、従来のようにパターンが残るか除去されるかの二択にしかならない。光透過率が連続的若しくは段階的に変化するようなパターンを形成するためには、露光強度を15mW前後のごく弱い強度とし、更に露光強度を減衰させる必要がある。露光強度の減衰はアッティネータとの組み合わせにより行う。本実施形態においては、光源と露光対象との間にND(Neutral Density)フィルターを介することにより、露光強度を減衰させる。
本実施形態で用いるNDフィルターには、例えば透明基板上に数種類の金属の合金薄膜を真空蒸着により蒸着したものを用いる。透明基板上に蒸着する金属薄膜の厚さを調節することにより、透過率を制御することができる。本実施形態においては、光源の光強度に対するNDフィルター通過後の光強度の比は0.3×10−4〜1.0×10−4程度である。本実施形態におけるNDフィルター通過後の光強度と光源強度との比は0.38×10−4程度である。NDフィルターには例えばメレスグリオ株式会社製の金属膜NDフィルター等が用いられる。
NDフィルターによる光強度の減衰は光源の光強度との関係により適宜調整される。従って、本発明で用いられるNDフィルターは金属膜NDフィルターに限定されず、NDフィルターにて求められるアッティネーションが低ければ、例えばフィルムタイプのNDフィルタを用いることもできる。
また、上記のように所定パターンを描画するための描画データに従って描画する描画装置60を用いず、手動で光源62又はアーム63を移動し、乾板430の露光を行なうことも可能である。この際、光源62及びアーム63の乾板430に対する位置に応じて、描画装置60が自動的に露光強度若しくは露光時間を調整しても良いし、手動で露光強度若しくは露光時間を調整しても良い。
尚、乾板430上に形成するパターンは中心から外周へ向かって光透過率が徐々に減少、若しくは上昇するのみではなく、例えば、フレネルレンズ形状を形成するためのマスクパターンでも良い。詳細には、マスターパターンの中心から外周へ向かって同心円状に、光透過率の上昇と減少が繰り返されるようなパターンでも良い。また、シリンドリカルレンズや、三角プリズムのように、2次元的な繰り返しパターンを形成するためのパターンであってもよい。
(2)第2工程(マザーグレイスケールマスクの作成)
次に、マザーグレイスケールマスクとその製造方法について説明する。図7にマザーグレイスケールマスク4000を示す。マザーグレイスケールマスク4000にはグレイスケール400が一定の間隔をもって配列されている。一組のグレイスケール400は、液晶パネル100の透明基板102上に形成される1組のマイクロレンズアレイ200に対応するものである。
マザーグレイスケールマスク4000は、透明基板上に複数組のグレイスケール400が形成されてなる。グレイスケール401の単位構成要素であるグレイスケール401は、最終的に形成するマイクロレンズ202のそれぞれに対応したレンズ形成用領域401aを複数有する。レンズ形成用領域401aは、マイクロレンズ202と同一のピッチで配列されている。レンズ形成用領域401a以外の部分には、光透過率が極めて低い若しくはゼロの遮光領域401bが形成されている。
レンズ形成用領域401aでは光透過率が連続的に変化している。レンズ形成用領域401aの外周は六角形の形状を有するが、例えば六角形以外の他の多角形や円形及び楕円形でも良い。更に、レンズ形成用領域401aにおいては同心円状に光透過率が変化し、レンズ形成用領域401aの中心において光透過率が最大となる。
本実施形態においては、遮光領域401bの光透過率は0%であり、レンズ形成用領域401aにおいてレンズ形成用領域401aの外周から中心に向かって同心円状に光透過率が上昇し、レンズ形成用領域401aの中心において光透過率が100%に近い値となる。
エマルジョンプレート450は、透明基板上にフォトエマルジョン(モノクローム写真感光乳剤)を塗布したガラス乾板である。フォトエマルジョンを強度変調した光によって露光し、現像することによって透明基板上にマスクパターンが形成される。エマルジョンプレート450の面積が大きいほど、大面積のマザーグレイスケールマスク4000を製造することができ、より多くのグレイスケール400を一度に形成することができる。
本実施形態におけるエマルジョンプレート450の面積は、例えば360mm×460mmである。エマルジョンプレート450には例えば、コニカミノルタホールディングス株式会社製のハイレゾリューションプレート(HE−1)や、富士フィルムグラフィックシステムズ株式会社製のスーパーマイクロフォトプレート(登録商標)(UM−G)等が用いられる。
アライメント用基板500は、エマルジョンプレート450上においてグレイスケール400を正確な位置に形成するために用いられる。アライメント用基板500はエマルジョンプレート450と重ね合わせて用いるため、好適にはアライメント用基板500とエマルジョンプレート450との平面寸法は等しいが、両者の平面寸法が異なる場合でも、エマルジョンプレート450上においてグレイスケール400形成する位置を調整可能であれば良い。
アライメント用基板500はその表面に領域マーク501が形成されている。領域マーク501はアライメント用基板500面上に所定のピッチで配列されている。領域マーク501は、四角形の枠であり、1組のグレイスケール401を形成する位置を示す。従って、領域マーク501の配列ピッチは、最終的にエマルジョンプレート450上に形成されるグレイスケール400のピッチ、即ちマザーグレイスケールマスク4000上におけるグレイスケール400のピッチとなる。
アライメント用基板500は透明性を有する基板である。ここで、領域マーク501は四角形に限定されるものではなく、1組のグレイスケール400に合わせて適宜変更される。また、領域マーク501は1つのグレイスケール400の全周を囲う必要はなく、マスターグレイスケールマスク600の位置合わせが可能なマークであればよい。マスターグレイスケールマスク600に形成されているマスターパターン601をエマルジョンプレート450に転写することによって、レンズ形成容量域401aを形成する。
図9に1つの領域マーク501とマスターグレイスケールマスク600を拡大した斜視図を示す。図9に示されるように、領域マーク501の四つ角にはアライメントマーク502が設けられている。また、マスターパターン601の四つ角にはアライメントマーク602が設けられている。領域マーク501の平面形状とマスターパターン601の外周の平面形状とは略一致する。また、1つの領域マーク501の四つ角に形成された夫々のアライメントマーク502の配置関係と1つのマスターパターン601の四つ角に形成された夫々のアライメントマーク602の配置関係とは一致する。
マスターグレイスケールマスク600のアライメントマーク602が設けられた部分の周囲は透明性を有するため、アライメント用基板500に設けられたアライメントマーク502をマスターグレイスケールマスク600を通して視認することができる。
図10はマスターパターン601の反転パターンをエマルジョンプレート450に転写する際の工程を示す断面図である。図示の簡略化のため、図10においては1つのマスターグレイスケールマスク600に1つのマスターパターン601を表示するが、本実施形態においては、図6に示すようにマスターグレイスケールマスク600には複数のマスターパターン601が形成されている。アライメントマーク502とアライメントマーク602とを一致させて位置決めし、図10(a)に示すようにエマルジョンプレート450上にアライメント用基板500を重ね合わせる。
ここで、アライメントマーク502及びアライメントマーク602を用いずとも、領域マーク501とマスターパターン601とを用いて、位置決めするようにしてもよい。即ち、アライメントマーク502及びアライメントマーク602を設けなくても、領域マーク501とマスターパターン601とを位置決めしてもよい。
次に、図10(b)に示すようにマスターグレイスケールマスク600上からエマルジョンプレート450を露光する。露光は365nm付近の波長の垂直偏光された紫外線を100mJのエネルギーで照射する。露光範囲は、マスターパターン601と一致する範囲若しくはマスターパターン601よりも広い範囲である。本実施形態においては、マスターパターン601よりも縦横ともに1mm広い四角形の領域において露光光を照射した。図10(b)中の点線は露光光の光線図である。図中の点線に示されるように、マスターグレイスケールマスク600側から照射された露光光は、マスターパターン601によって強度変調が加えられ、領域マーク501の枠内及びその近傍を通過し、エマルジョンプレート450を露光する。
エマルジョンプレート450を露光する露光光はマスターパターン601によって強度変調が加えられているため、マスターパターン601のパターンに対応した強度でエマルジョンプレート450を露光する。即ち、マスターパターン601の中心部に対応する位置ほど露光強度が弱く、マスターパターン601の外周に近付くにつれて同心円状に露光強度が上昇し、最外周において露光強度が最高となる。エマルジョンプレート450の露光面において、露光に応じて表面に塗布されたフォトエマルジョンが反応し、露光強度に応じて透明性を失う。
従って、図10(b)に示すように、エマルジョンプレート450の透明基板上にマスターパターン601の反転パターンに対応した転写パターン404が形成される。転写パターン404のうち、マスターパターン601を通過した露光光によって形成された部分の転写パターン404aは同心円状に光強度が変化する露光光によって形成された領域である。また、転写パターン404のうち、マスターパターン601の外部を通過した露光光によって形成された部分の転写パターン404bは最高強度で露光された領域である。上記の通り、図10においては1つのマスターグレイスケールマスク600に1つのマスターパターン601を表示しているため、1つのマスターグレイスケールマスク600に対して1つの転写パターン404が形成されるが、実際には1つのマスターグレイスケールマスク600に含まれるマスターパターン601の個数に対応して転写パターン404が形成される。
1つの領域マーク501に対する露光を終えたら、次の領域マーク501に対しても同様にアライメントマーク502とアライメントマーク602を一致させることによって位置決めし、図10(c)に示すようにマスターグレイスケールマスク600側からエマルジョンプレート450を露光し、転写パターン404を形成する。隣接する露光領域が連続するように、露光領域同士が接するか又は重なるようにする。
このように、全ての領域マーク501に対して露光を繰り返すことによって、エマルジョンプレート450上に、アライメント用基板500に設けられた領域マーク501のピッチと同様のピッチで転写パターン404が形成される。全ての領域マーク501に対する露光が完了したら、エマルジョンプレート450を現像することにより、図10(d)に示されるように、転写パターン404aはレンズ形成用領域401aとして、転写パターン404bは遮光領域401bとして定着し、これによってグレイスケール400を有するマザーグレイスケールマスク4000が完成する。
このように、アライメント用基板500を用いて、マスターグレイスケールマスク600をアライメントしながら各領域マーク501を個々に露光することにより、エマルジョンプレート450表面の全面に亘って、高精度にレンズ形成用領域401a及び遮光領域401bを形成することができる。また、アライメント用基板500を用いることによって、エマルジョンプレートにはアライメントマーク502のようなアライメント用のマークを設ける必要がない。従って、専用の感光性プレートではなく、市販の感光性プレートを用いることができ、生産性に優れる。この様な製造方法を用いることにより、所定のマスクパターンが所定のピッチで高精度に配列された大面積のグレイスケールマスク400及びマザーグレイスケールマスク4000を低コストで得ることができる。
この様にして形成されたレンズ形成用領域401aの、透過率分布について説明する。レンズ形成用領域401aを通過した光の光軸方向と垂直な面の座標を、レンズ形成用領域401aの中心を原点とするx及びyで表し、レンズ形成用領域401aを通過した光の光軸方向と垂直な面における光強度分布をZで表すとき、C
nを任意の実数とし、mを任意の自然数とし、k=0、若しくはkを任意の正の実数とすると、光強度Zは、
の条件を満たす。
この式において、kはx、y座標面の原点、即ちレンズ形成用領域401aの中心におけるレンズ形成用領域401a通過後の光強度を表している。hは式(2)に示す通り、原点からの距離である。ここで、式(1)におけるマイナス項である2項目は、式(1)の示す通りC1を係数とする項からCmを係数とする項までの総和である。Cnが表すのはそれぞれのnに対応する項における係数である。例えばZ=k−C1h2とする場合は、m=1であり、Z=k−(C1h2+C2h2+C3h2)とする場合は、m=3である。
式(1)は直接的にはhに依存する式となっており、原点からの距離hとレンズ形成用領域401a通過後の光強度Zとの相関関係を表している。即ち、光強度Zの値はレンズ形成用領域401aの中心からの距離hによって決定されるので、光強度Zは原点から同心円状に変化する。式(1)においてCnがすべて正である場合は、原点から離れる程マイナス項の絶対値が大きくなる。従って光強度Zは原点、即ちレンズ光軸から離れる程弱くなる。これは本実施形態における露光光強度の態様である。hのべき乗数が2n乗、即ち偶数となっているのは、光強度Zに関係する値が原点に対して対称であることを示している。更に、べき乗をとることによって原点から離れる程、値の変化率が大きくなる。従って図11(a)に示したように、原点を光軸とする凸レンズ形状に光強度Zを分布させることができる。
他方、最終的に形成するマイクロレンズが凹形状のレンズである場合には、レンズ形成用領域401aの光透過率が中心において最も低くなり、最外部において最も高くなるようにすれば良い。例えば、式(1)においてCnがすべて負であればその様な態様が可能となる。これにより図11(b)に示したように、原点を光軸とする凹レンズ形状に光強度Zを分布させることができる。ここで、図11に示したグラフが途中で途切れているのは、光強度Zがレンズ形成用領域401aごとに計算されるからである。即ち、x、yはレンズ形成用領域401aの中心から単位マスクの外周に達するまでの有限の値である。
このように光強度Zを定義することによって、Cn及びmの値の操作により所望のレンズ形状を作り出すことが可能となる。尚、上記した式(1)は光強度Zが原点、即ちレンズ光軸からの距離hに依存することを示すものであり、図11に示したような単純増加又は単純減少に限定されるものではない。Cnはnに依存せず、各nの値ごとに設定可能な定数であるので、Cnをそれぞれ独立して設定することにより、レンズ光軸でもレンズ最外周でもない地点に光強度Zの極値を設定することも可能である。また、Cnをnの関数とすることも可能である。
(3)第3工程(レンズ付きマザーグレイスケールマスクの作成)
次に、レンズ付きマザーグレイスケールマスクとその製造方法について説明する。図12は本実施形態におけるレンズ付きマザーグレイスケールマスク460の断面図である。レンズ付きマザーグレイスケールマスク460は、支持基板402の一方の面にグレイスケール401が形成され、他方の面に露光用マイクロレンズ403が形成されている。即ち、本実施形態においては、マザーグレイスケールマスク4000のグレイスケール401が形成された面とは反対側の面に、グレイスケール401にアライメントされて露光用マイクロレンズ403が形成されている。
レンズ付きマザーグレイスケールマスク460を用いて最終的にマイクロレンズ202を形成する際は、強度変調した露光光によって光感光性樹脂層をレンズ形状に露光し、硬化させることにより行う。その際、液晶パネル100の透明基板102上に形成されたTFT素子及び画素電極161の反射部161b等を避け、開口部161aに露光光を集光することによって、透明基板102上に直接マイクロレンズ202を形成することを可能としており、同時に開口部161aとマイクロレンズ202との光軸合わせも行っている。レンズ付きマザーグレイスケールマスク460は露光光を強度変調する機能と、露光光を回路素子の開口部へ集光する機能をもつ。
ここで、本実施形態においては支持基板402のそれぞれ反対面にグレイスケール401と露光用マイクロレンズ403とが形成されているが、これに限定されるものではない。支持基板402上にグレイスケール401が形成され、更にグレイスケール401上に露光用マイクロレンズ403が形成されても良いし、支持基板402上に露光用マイクロレンズ403が形成され、更に露光用マイクロレンズ403上にグレイスケール401が形成されても良い。
図12に示す構造において、露光光はグレイスケール401側から入射する。支持基板402は透明性を有する基板であり、ガラス、ポリカーボネイト、アクリル樹脂等が用いられる。ここで、本実施形態においては、透明基板上にフォトエマルジョンを塗布したエマルジョンプレート450を露光してマザーグレイスケールマスク4000を作成しており、当該マザーグレイスケールマスク4000の透明基板が支持基板402に該当する。
上述したとおり、グレイスケール401は、個々が六角形のレンズ形成用領域401aの集合体である。レンズ形成用領域401aは中心から外周に向かって同心円状に光透過率が連続的に変化する。本実施形態においては、レンズ形成用領域401aの中心において光透過率が最も高くなり(例えば100%)、最外部において最も低くなる(例えば0%)。ここで、レンズ形成用領域401aの最高及び最低の透過率は0%以上100%以下に限定されるものではなく、少なくとも最高の透過率は80%以上、更に好ましくは90%以上であり、最低の透過率は20%以下、更に好ましくは10%以下で適宜調整される。
このようなマスクパターンを通過させることにより露光光に強度変調が加えられる。従って、当該露光光を用いて光硬化性樹脂を露光することにより、光硬化性樹脂をレンズ形状に硬化させることが可能となる。即ち、レンズ形成用領域401aの外周形状及び透過率分布が、最終的に形成されるマイクロレンズ202の形状に反映される。レンズ形成用領域401aの外周形状は六角形以外でも良く、例えば円形や楕円形及び六角形以外の多角形でも良い。例えばテレビ等に用いられるディスプレイの画素形状は縦横比3:1の長方形が主流であるため、マイクロレンズの形状も画素形状と同様に縦横比3:1の長方形で形成することが好ましい。レンズ形成用領域401aの形状が六角形以外の場合においても、中心から同心円状に光透過率が連続的に変化する。
露光用マイクロレンズ403の材料は光硬化性樹脂であり、詳細にはネガ型フォトレジストである。露光用マイクロレンズ403は、露光用マイクロレンズ403をポジ型フォトレジストや熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂等で形成することも可能である。しかし、露光用マイクロレンズ403は、光学レンズとして用いるため、光分解性や熱可塑性を有しない材料であることが望ましい。さらに露光用マイクロレンズ403を熱硬化性樹脂により形成した場合は当該露光用マイクロレンズ403自体を形成する場合に熱処理が必要となり、他の部材が加熱されることによって変形や変質をもたらすことが懸念される。従って露光用マイクロレンズ403にはネガ型フォトレジストを用いることが好ましい。また、露光用マイクロレンズ403の材料にネガ型フォトレジストを用いるのが好ましい他の理由として、グレイスケール401と露光用マイクロレンズ403とのアライメント精度がある。これについては後述する。
露光用マイクロレンズ403は六角形の単位レンズの集合体である。当該単位レンズの平面形状とレンズ形成用領域401aの平面形状とは略一致している。従ってレンズ形成用領域401aと単位レンズとは同ピッチで配列されている。更には、レンズ形成用領域401aの中心と、単位レンズの光軸とは、略一致している。即ち、露光光が垂直偏光であれば、同じレンズ形成用領域401aで強度変調された露光光は当該レンズ形成用領域401aとアライメントされている単位レンズによって集光される。ここで、露光用マイクロレンズ403に含まれる単位レンズは六角形以外の形状、例えば円形若しくは楕円形でも良いが、平面の充填率を考慮すると多角形であることが好ましい。更には、最終的に形成されるマイクロレンズの形状精度の向上のため、レンズ形成用領域401aと同形状であることが好ましい。
次に、図13を用いて本実施形態にかかるレンズ付きマザーグレイスケールマスク460の製造方法を説明する。まず最初に、マザーグレイスケールマスクの一方の面にネガ型レジスト層を塗布する。すなわち、図13(a)に示されるように、片面にグレイスケール401の形成された支持基板402のもう一方の面にネガ型レジスト層410を塗布する。支持基板402及びグレイスケール401はマザーグレイスケールマスク4000である。ネガ型レジスト層410は例えば紫外線硬化型フォトレジストであり、感光性ゾルゲル樹脂等の透明性及び紫外線硬化性を有するものであればよい。また、フッ素、金属微粒子、錯体等が例示の感光性ゾルゲル樹脂に含有されていてもよい。
次に図13(b)に示されるように、グレイスケール401側からネガ型レジスト層410を露光する。露光は365nm付近の波長の紫外線を3000mJのエネルギーで照射する。図中の点線は露光光の光線図である。図中の点線に示されるように、グレイスケール401側から照射された光は、まずグレイスケール401によって露光光に強度変調が加えられる。詳細には、レンズ形成用領域401aの中心部を最大として同心円状に強度変調が加えられる。
レンズ形成用領域401aによって強度変調の加えられた露光光は支持基板402を通過し、ネガ型レジスト層410を露光する。露光光はレンズ形成用領域401aによって強度変調されているため、レンズ形成用領域401aの中心部を通過した露光光は露光強度が強く、レンズ形成用領域401aの外周部に近い部分を通過した露光光は露光強度が弱くなる。従って図に示されるようにネガ型レジスト層410をレンズ形状に露光することが可能となる。
ネガ型レジスト層410の露光が完了したら、ネガ型レジスト層410を現像することによって未硬化部分を除去する。こうして図13(c)に示すような、レンズ付きマザーグレイスケールマスク460を得ることができる。このように形成された露光用マイクロレンズ403の個々の単位レンズの光軸は夫々のレンズ形成用領域401aの中心と垂直方向に一致する。従って、露光用マイクロレンズ403をネガ型レジスト層410のような光硬化性樹脂で形成することによりグレイスケール401と露光用マイクロレンズ403とのアライメントを容易に行うことができる。また、一括露光が可能なので大型基板による同時多数個成形が可能であり、生産性にも優れている。
上記の説明においては、マザーグレイスケールマスク4000上に露光用マイクロレンズ403を形成したため、完成するレンズ付きマザーグレイスケールマスク460は、1つの液晶パネル100に含まれるマイクロレンズアレイ200を形成するためのグレイスケールマスク400が複数個形成されたものとなる。1つのグレイスケールマスク400上に露光用マイクロレンズを形成すれば、1つの液晶パネル100に含まれるマイクロレンズアレイ200を形成するためのレンズ付きグレイスケールマスクとなる。
(4)第4工程(複数組のマイクロレンズアレイを液晶基板上に形成)
次に図14を用いて、レンズ付きマザーグレイスケールマスク460を用いたマイクロレンズアレイ200の液晶基板上への形成方法について説明する。
図14(a)に示されるように、液晶パネル100の基板である透明基板102の一方の面にはネガ型レジスト層210が塗布されている。ネガ型レジスト層210は図13におけるネガ型レジスト層410と同様のものでも別のものでも良く、透明性及び紫外線硬化性を有するものであればよい。透明基板102の他方の面には、TFT素子108、画素電極161及び配線162が形成されている。
図14(a)に示されるように、TFT素子108等が形成された面と露光用マイクロレンズ403とが対向するように、レンズ付きマザーグレイスケールマスク460及び透明基板102を配置する。この時、図中の一点差線に示すように、レンズ形成用領域401aの中心及び露光用マイクロレンズ403の単位レンズのレンズ光軸は、開口部161aを通る。即ち、レンズ形成用領域401a及び露光用マイクロレンズ403の単位マスクのピッチと、開口部161aのピッチとは一致するように配置される。更に、露光用マイクロレンズ403とTFT素子108等の形成面との距離が、露光用マイクロレンズ403の焦点距離と略一致するように配置される。即ち、露光用マイクロレンズ403によって集光された露光光が回路素子に遮られることなく開口部161aを通過可能なようにレンズ付きマザーグレイスケールマスク460及び透明基板102を配置する。
次に図14(b)に示されるように、レンズ付きマザーグレイスケールマスク460のグレイスケール401側からネガ型レジスト層210を平行光で露光する。露光は365nm付近の波長の紫外線を3000mJのエネルギーで照射する。図中の点線は露光光の光線図である。図中の点線に示されるように、グレイスケール401側から照射された露光光は、まずレンズ形成用領域401aによって強度変調が加えられる。詳細には、レンズ形成用領域401aの中心部を最大として同心円状に露光強度が低下するように強度変調が加えられる。
レンズ形成用領域401aによって強度変調の加えられた露光光は支持基板402を通過し、露光用マイクロレンズ403に入射する。上述の通り、同一のレンズ形成用領域401aで強度変調された露光光はそれに対応する単位レンズに入射する。露光用マイクロレンズ403によって集光された露光光はTFT素子108及び反射部161bに遮られることなく開口部161aを通過し透明基板102に入射する。
開口部161aを通過した露光光は透明基板102を通過してネガ型レジスト層210を露光する。露光光はレンズ形成用領域401aによって強度変調されているため、レンズ形成用領域401aの中心部を通過した露光光は露光強度が強く、レンズ形成用領域401aの外周部に近い部分を通過した露光光は露光強度が弱くなる。従って図に示されるようにネガ型レジスト層210をレンズ形状に露光することが可能となる。このとき、露光用マイクロレンズ403の空気中での焦点距離と、透明基板102の厚さとの光学的距離を一致させると良い。即ち、透明基板102内部の光路長と、露光用マイクロレンズ403からTFT素子108までの空気中における光路長とを一致させると良い。こうすることにより、ネガ型レジスト層210を露光する際の露光光の広がりは露光用マイクロレンズ403の単位レンズの平面形状と同一になる。従って、露光用マイクロレンズ403が支持基板402上に隙間なく充填されている場合には、ネガ型レジスト層210を露光することにより形成されるマイクロレンズを隙間なく形成することができる。
ここで、露光用マイクロレンズ403において隣接する単位レンズ同士が隙間を空けて配置されている場合においても、透明基板102の厚さ又は屈折率、即ち透明基板102内部の光路長を調整することにより、最終的に形成されるマイクロレンズ202を隙間なく形成することが可能である。
ネガ型レジスト層210の露光が完了したら、ネガ型レジスト層210を現像することによって未硬化部分を除去する。こうして図14(c)に示すような、片面にTFT素子108や画素電極161等が形成され、もう一方の面にマイクロレンズ202が形成されたパネル基板を得ることができる。このように形成されたマイクロレンズ202の光軸と開口部161aとは、光軸方向に一致する。従って液晶表示装置にマイクロレンズを搭載する際に重要な、開口部とマイクロレンズとのアライメントを容易に達成することができる。また、一括露光が可能なので大型基板による同時多数個成形が可能であり、生産性にも優れている。
尚、上記の説明においては、レンズ付きマザーグレイスケールマスク460を用いて露光光を強度変調し開口部161aに露光光を集光したが、グレイスケール401と露光用マイクロレンズ403とが別々の部材でも良い。即ち、マイクロレンズ202の形状に対応した平行光を開口部161aに集光できれば良く、その方法は上記の態様に限定されない。
(4)第5工程(マイクロレンズの形成された液晶基板を分離切断)
上記のようにしてマイクロレンズ202が形成された透明基板102に、図1に示されるような他の部品を形成していくことによって、マイクロレンズアレイ200と画素電極161の開口部161aとが高精度にアラインメントされた液晶パネル100が完成する。
より具体的には、マイクロレンズが形成された透明基板が連続的に複数形成された大型基板に図1に示されるような他の部品を形成していくことによって、図15に示されるような液晶パネル100が一定の間隔をもって配列された大型のマザー基板1000が完成する。各液晶パネル100は上述の通り、各部材が透明基板101及び本発明の製造方法によりマイクロレンズが形成された透明基板102によって挟持される形で形成されている。最終的にマザー基板1000を分離切断することにより多数の液晶パネル100を得ることができる。
以上の第1工程から第5工程で説明したように、本発明の実施の形態2にかかるマイクロレンズアレイの製造方法では、マイクロレンズアレイの光軸合わせが容易であり、生産性に優れたマイクロレンズアレイ及び液晶表示装置を提供することができる。
また、上記に説明したようなレンズ付きマザーグレイスケールマスクを用いることによって、マイクロレンズアレイの製造工程における光軸合わせを容易にし、生産性に優れたマイクロレンズアレイを提供することができる。
尚、ここでは、グレイスケール401の反対面側にネガ型レジスト層410を塗布して露光用マイクロレンズ403を形成したが、グレイスケール401上に直接ネガ型レジスト層410を形成し、グレイスケール401の反対面側から露光して露光用マイクロレンズ403を形成してもよい。即ち、レンズ形成用領域401aによって強度変調された露光光が、露光用マイクロレンズ403によって集光される構成であれば良い。
更に、図8、9において説明した本実施の形態にかかるグレイスケールマスクの製造方法では、所定のマスクパターンが所定のピッチで高精度に配列された大面積のグレイスケールマスクを低コストで提供することができる。
更にまた、図5において説明した本実施の形態に係るマスターグレイスケールマスクの製造方法では、高精度なグレイスケールを形成することができると共に、コスト及び生産性に優れた光学部品形成用のグレイスケールマスクを提供することができる。
尚、上記の説明においては、レーザー描画によって作成したものをマスターグレイスケールマスク600として用いたが、レーザー描画によって作成したものをグレイスケールマスク400又はマザーグレイスケールマスク4000として用いても良い。
実施の形態3.
本実施の形態は、実施の形態2の第1及び第2工程の変形例である。実施の形態2においては、透明基板102上に凸型のマイクロレンズ202を形成する方法を説明したが、本実施形態においては、透明基板102上に凹型のマイクロレンズ202を形成する例を説明する。
本実施形態においては、前実施の形態2において用いたグレイスケールマスク400とは逆の透過率のパターンを有するグレイスケールマスクを用いる。即ち、レンズ形成用領域401aの外周において最も透過率が高く、レンズ形成用領域401aにおいては同心円状に光透過率が変化し、レンズ形成用領域401aの中心において光透過率が最低となる。
本実施形態においては、図7の遮光領域401bに対応する領域(透過領域401cとする)の光透過率は略100%であり、レンズ形成用領域401aにおいてレンズ形成用領域401aの外周から中心に向かって同心円状に光透過率が低下し、レンズ形成用領域401aの中心において光透過率が0%に近い値となる。
このようなグレイスケールマスク400が形成されたマザーグレイスケールマスク4000を用いてレンズ付きマザーグレイスケールマスク460を作成し、実施の形態2において説明した方法でマイクロレンズアレイを形成する場合、凹型のレンズを形成することができる。また、ネガ型レジスト層ではなく、ポジ型レジストを用いる場合は、実施の形態2の場合とは反対側から、当該レンズ付きマザーグレイスケールマスク460を介してネガ型レジスト層210を露光することにより、凸型のレンズを形成することも可能である。
次に、図16を用いて本実施形態にかかるグレイスケールマスク400及びマザーグレイスケールマスク4000の製造方法を具体的に説明する。エマルジョンプレート450の上にアライメント用基板800を配置し、アライメント用基板800の上にマスターグレイスケールマスク900を配置する。
本実施の形態におけるアライメント用基板800は四角形の開口部801を有する。開口部801はアライメント用基板800面上に所定のピッチで配列されている。開口部801はエマルジョンプレート450上にグレイスケールを形成する際に露光光が通過する。また、開口部801の配列ピッチが、最終的にエマルジョンプレート450上に形成されるグレイスケールマスク400のピッチとなる。アライメント用基板800は遮光性を有する基板であり、光透過率は0%である。ここで、開口部801の形状は四角形に限定されるものではなく、形成すべき1つのグレイスケールマスク400に含まれるグレイスケール400に合わせて適宜変更される。
マスターグレイスケールマスク900は、グレイスケールのマスクパターンを転写可能なマスターパターン901が形成されたマスクである。マスターパターン901はマスターグレイスケールマスク900面上において光透過率が連続的に変化する領域である。本実施形態にかかるマスターパターン901は六角形の外周形状を有する。更に、マスターパターン901の領域内においては同心円状に光透過率が変化し、中心部において光透過率が最高となる。マスターパターン901が複数に亘って形成されている領域の外周はアライメント用基板800に形成されている開口部801の形状と略同一の外周形状を有する。また、マスターグレイスケールマスク900においてマスターパターン901が形成されている部分以外は透明性を有する。
本実施形態においては、マスターパターン901の最外周において光透過率は0%であり、マスターパターン901の中心に向かって同心円状に光透過率が上昇し、中心において光透過率が略100%となる。また、マスターグレイスケールマスク900においてマスターパターン901が形成されている領域以外は光透過率が略100%である。
尚、この例におけるマスターグレイスケールマスク900は、グレイスケールマスク400の1つに相当するものであるが、これに限らず、例えばマイクロレンズ202の1つに相当するもの、即ち、マスターパターン901が1つだけ形成されたものでも良く、また複数のグレイスケールマスク400に相当するものであってもよい。マスターグレイスケールマスク900がグレイスケールマスク400の1つに相当するものである場合、アライメント用基板800の開口部801は、グレイスケールマスク400の外周形状に沿った形状となる。
図17に1つの開口部801とマスターグレイスケールマスク900を拡大した斜視図を示す。図17に示されるように、開口部801の四つ角にはアライメントマーク802が設けられている。また、マスターパターン901の四つ角にはアライメントマーク902が設けられている。また、1つの開口部801の四つ角に形成されたアライメントマーク802の夫々の配置関係と1つのマスターパターン901の四つ角に形成されたアライメントマーク902の夫々の配置関係とは一致する。
上記のようなアライメント用基板800及びマスターグレイスケールマスク900を用いて、図10で説明したようにエマルジョンプレート450を露光することにより、実施の形態3のグレイスケールマスク400とは逆の光透過率のパターンを有するグレイスケールマスクを得ることができる。即ち、マスターグレイスケールマスク900側から照射された露光光は、マスターパターン901によって強度変調が加えられ、開口部801を通過しエマルジョンプレート450を露光する。
エマルジョンプレート450を露光する露光光はマスターパターン901によって強度変調が加えられているため、マスターパターン901の反転パターンに対応した強度でエマルジョンプレート450を露光する。即ち、マスターパターン901の中心部に対応する位置ほど露光強度が強く、マスターパターン901の外周に近付くにつれて同心円状に露光強度が低下し、マスターパターン901の最外周では露光強度が0となる。また、アライメント用基板800の開口部801外部に対応する位置ではアライメント用基板800によって露光光が遮られるため、露光強度は0となる。
従って、エマルジョンプレート450上の開口部801に対応する位置に、マスターパターン901の反転パターンに対応した転写パターンが形成される。1つの開口部801に対する露光を終えたら、次の開口部801に対しても同様にアライメントマーク802とアライメントマーク902とをアライメントし、マスターグレイスケールマスク900側からエマルジョンプレート450を露光し、転写パターンを形成する。
このように、全ての開口部801に対して露光を繰り返すことによって、エマルジョンプレート450上に、アライメント用基板800に設けられた開口部801のピッチと同様のピッチで転写パターンが形成される。全ての開口部801に対する露光が完了したら、エマルジョンプレート450を現像することにより、転写パターンはレンズ形成用領域401aとして定着する。また、露光光が遮られた部分は実施の形態3における遮光領域401bに対応する透過領域401cとしてそれぞれ定着し、グレイスケールマスクが完成する。このように、マスターグレイスケールマスク900のマスターパターン901を、中心から外周へ向かって連続的に光透過率が減少するような構成とすることによって、中心から外周へ向かって徐々に光透過率が上昇するレンズ形成用領域401aを有するグレイスケールマスクを製造することができる。
以上説明したように、本発明の実施の形態4によればマスターマスクのマスターパターンを調整することにより、様々なパターンを有するグレイスケールマスクを提供することができる。本実施の形態におけるアライメント用基板は、四角形の開口部801を有するアライメント用基板800を用いたが、実施の形態2で用いたアライメントマークの施されたアライメント用基板500を用いても良いし、実施の形態2において本実施の形態3で用いたアライメント用基板800を用いても良い。
尚、マスターマスクのマスターパターンは中心から外周へ向かって光透過率が徐々に減少、若しくは上昇するのみではなく、例えば、フレネルレンズ形状を形成するためのマスクパターンでも良い。詳細には、マスターパターンの中心から外周へ向かって同心円状に、光透過率の上昇と減少が繰り返されるようなパターンでも良い。また、シリンドリカルレンズや、三角プリズムのように、2次元的な繰り返しパターンを形成するためのパターンであってもよい。
実施の形態4.
本実施の形態は、実施の形態2の第3工程であるレンズ付きマザーグレイスケールマスクの変形例である。本発明の実施の形態4にかかるレンズ付きマザーグレイスケールマスクは、実施の形態3のレンズ付きマザーグレイスケールマスクに位置固定機能を付加したものである。尚、実施の形態1乃至4と同様の符号を付す構成については同一又は相当部を示し、説明を省略する。図18は本実施形態にかかるレンズ付きマザーグレイスケールマスク461を示した断面図である。図に示されるように、本実施形態にかかるレンズ付きマザーグレイスケールマスク461は露光用マイクロレンズ403が形成された面に位置決め部材420を備える。
位置決め部材420は透明性を有する基板であり、例えばガラス、ポリカーボネイト、アクリル樹脂等により形成される。また、位置決め部材420は、露光用マイクロレンズ403のレンズ高さと同じか又はそれよりも高い凸部421を有する。当該凸部421の頂部と支持基板402の面とが接着されることによって、位置決め部材420と支持基板402が固定される。位置決め部材420の厚さは露光用マイクロレンズ403の焦点距離と略一致している。
次に図19を用いて本実施形態にかかるレンズ付きマザーグレイスケールマスク461を用いたマイクロレンズ202の製造方法について説明する。透明基板102のTFT素子108及び透明電極106(以下、回路素子とする)の形成された面とは反対の面に、ネガ型レジスト層210が形成されている。まず図19(a)に示されるように位置決め部材420と回路素子とが対向するように、レンズ付きマザーグレイスケールマスク461と透明基板102とを接触させ、固定することによって、重ね合わせる。このとき、グレイスケール401のレンズ形成用領域401aの中心及び露光用マイクロレンズ403の光軸と回路素子の開口部161aとをアライメントする。
位置決め部材420の厚さは露光用マイクロレンズ403の焦点距離と略一致する。従って図19(b)に示されるように位置決め部材420をTFT素子108にアライメントして重ねることによって、自動的に露光用マイクロレンズ403の焦点は開口部161aにアライメントされる。
本実施の形態では、位置決め部材420の厚さ(以下、t2とする)は透明基板102の厚さ(以下、t1とする)と略同一であり、更に位置決め部材420の屈折率(以下、n2とする)と透明基板102の屈折率(以下、n1とする)も等しい。即ち位置決め部材420は透明基板102と同一の厚さで、同一の材料により製造されている。ここで、位置決め部材420及び透明基板101の厚さに対して回路素子の厚さは無視できる程度のオーダーである。露光用マイクロレンズ403に含まれる単位レンズのレンズ光軸は、透明基板102に形成された回路素子の開口部161aと一致している。更に露光用マイクロレンズ403に含まれる単位レンズの焦点距離はt2と略同一である。すなわち、露光用マイクロレンズ403の焦点は回路素子の開口部161a近傍に位置する。
尚、図1、図3に示されるリム201を形成する場合はグレイスケール401の最外郭に最大の透過率を有する一定領域を設ければよい。この時の透過率が円形マスクパターンの円の中心と同一であれば、パターニングされるマイクロレンズ202の高さとリム201の高さが同一となる。
図19(b)に示されるようにグレイスケール401側からネガ型レジスト層210の露光を行なう。図19(b)では、露光光の挙動を矢印で示している。365nm付近の波長の紫外線を3000mJのエネルギーで照射することによって露光を行なう。グレイスケール401側から照射された光は、まずレンズ形成用領域401aによって強度変調が加えられる。詳細には、レンズ形成用領域401aの中心部を最大として放射状に強度変調が加えられる。
レンズ形成用領域401aによって強度変調の加えられた光は露光用マイクロレンズ403に入射する。前述の通り、露光用マイクロレンズ403の焦点は透明基板102に形成された回路素子の開口部161aにアライメントされている。従って露光光は回路素子に遮られることなく透明基板102へ入射する。
回路素子を通過した露光光は透明基板102を通過してネガ型レジスト層210を露光する。ここで、前述の通り位置決め部材420の厚さ及び屈折率と、透明基板102の厚さ及び屈折率とは同一である。従って回路素子の開口部近傍で収束された露光光は、ネガ型レジスト層210付近で露光用マイクロレンズ403に含まれる単位レンズの径と同一の径を有する。更に、レンズ形成用領域401aによる強度変調によって径の中心ほど高強度の光となっている。即ち、レンズ形成用領域401aを通過した露光光のうち、円の中心が一番高強度でネガ型レジスト層210を露光し、円の外周に向かうに従って同心円状に低強度による露光となる。その結果、所望のレンズパターンを有するようにネガ型レジスト層210を露光することができる。
ネガ型レジスト層210の露光が完了したら、レンズ付きマザーグレイスケールマスク461を回路素子の形成された透明基板102から取り外し、ネガ型レジスト層210を現像することによってマイクロレンズアレイ200の形成された透明基板102を得ることができる。当該透明基板102に図1に示されるような他の部品を形成していくことによって、マイクロレンズアレイ200とTFT素子108及びその他の開口部とが高精度にアラインメントされた液晶表示装置が完成する。
尚、図19において、透明基板102と露光用基板300との厚さ及び屈折率は同一でなくともよく、透明基板102と露光用基板300との光路長が同一であればよい。即ち、t1×n1=t2×n2が成り立てばよい。これは、露光用マイクロレンズ403の口径と、露光光がネガ型レジスト層210に達した状態における径が同一になっていればよいからであり、光路長が同一であればそれも成り立つからである。
また、透明基板102内部における光路長と、露光用基板300内部における光路長とは完全に一致していなくてもよい。露光光が透明基板102と露光用基板300との境界、即ち透明基板102に形成された回路素子近傍に達した状態におけるスポット径が、少なくとも回路素子の開口部よりも小さければ露光強度には影響しないからである。従って少なくとも0.75<(t1×n1)/(t2×n2)<1.25の関係を満たせばよい。
更に、レンズ形成用領域401aのマスクパターンを四角形にすれば、ネガ型レジスト層210には四角形のレンズパターンが得られることになる。四角形のレンズパターンは動画対応のレンズに使われ、例えば液晶テレビなどに適用される。
本実施形態においてはネガ型レジストを用いてマイクロレンズを形成したが、ネガ型ではなくポジ型を用いてもよい。その場合、レンズが形成される面は透明基板102上ではなく他の基板上であってもよい。
以上説明したように、位置決め部材420によって、透明基板102上にマイクロレンズ202を形成する工程において、レンズ付きマザーグレイスケールマスク461の位置固定を容易に行うことが可能となる。
尚、図20に示すように、位置決め部材420における露光用マイクロレンズ403とは反対の面に遮光パターン302を設けることができる。これにより、光の拡散による光強度の揺らぎを抑制し、より高精度なレンズパターンを得ることができる。遮光パターン302は光を遮断する遮光部分と光を透過させる開口部分とを有し、当該開口部分は露光用マイクロレンズ403に含まれる単位レンズのレンズ光軸と垂直方向で一致している。
図20に示す矢印は、この遮光パターン302を有する位置決め部材420を用いて図19と同様に露光を行なった場合の、位置決め部材420を通過する露光光の軌跡を示している。図に示される通り、露光用マイクロレンズ403に対して垂直に入射する光以外は遮光パターン302の遮光部分によって遮光され、透明基板102側へ透過できない。従ってネガ型レジスト層210を露光するのは垂直光のみとなり、拡散による光強度の揺らぎを抑制し、より高精度なレンズパターンを得ることができる。
尚、レンズ付きマザーグレイスケールマスク461における位置決め部材420の固定方法及び形態は図18に示す態様に限定されるものではない。例えば、支持基板402上に露光用マイクロレンズ403のレンズ高さ以上の高さを有するリムを設け、当該リムによって支持基板402と位置決め部材420を接着しても良い。当該リムは支持基板402上に露光用マイクロレンズ403を形成する際に同一の材料によって同時に形成可能である。
また、位置決め部材420の接着点は凸部421や上記のリムに限定されず、露光用マイクロレンズ403の頂点において接着されても良い。更には、露光用マイクロレンズ403と位置決め部材420との隙間に樹脂材料を充填して硬化させることにより接着してもよい。
更に、位置決め部材420の表面、即ち回路素子と重ね合わせられる面において、図21(a)に示されるように凹部423を設けても良い。当該凹部423を設けることにより、透明基板102へのマイクロレンズ202形成工程において、図21(b)に示すようにTFT素子108に位置決め部材420が接触することがなくなる。これにより、製造工程におけるTFT素子108の破損を低減し、歩留まりの向上を図ることができる。
他方、位置決め部材420を用いずに図22(a)に示されるように、露光用マイクロレンズ403のレンズ高さ以上の高さを有するリム424を設けることによりレンズ付きマザーグレイスケールマスク460を固定することも可能である。この場合は、リム424の高さ(t3)を露光用マイクロレンズ403の空気中における焦点距離と略一致させることにより、上記と同様の効果を得ることができる。
図22(b)に示す通り、透明基板102と露光用マイクロレンズ403はリム424の高さ、即ちt3だけ離れて配置されることとなり、透明基板102と露光用マイクロレンズ403との間には空気層が設けられる。ここで重要なのはt3とt1との関係である。空気層における光路長と、透明基板102における光路長が略同一となるようにt3を調整する必要があるからである。即ちt3=t1×n1の関係が成り立つ必要がある。
更に露光用マイクロレンズ403の焦点距離もt3と略同一になっている。即ち、露光用マイクロレンズ403の焦点は空気層と透明基板102との境界近傍である。また、レンズ形成用領域401aの中心、露光用マイクロレンズ403に含まれる単位レンズのレンズ光軸と、透明基板102に形成された配線部材の開口部161aとが垂直方向に一致している。
このような方法によってマイクロレンズ202を形成する場合、透明基板102の回路素子が形成された面に他の部材を接触させる必要がなく、回路素子の形成された面は空気層に面する。従って、回路素子と他の部材との接触によって回路素子を傷つけてしまう虞がなく、歩留まりの向上を図ることができる。尚、上記説明においては、透明基板102上に形成されたTFT素子108及び透明電極106を回路素子と定義したが、回路素子にはこれらの両方が含まれなくとも、どちらか一方だけでも良い。また、画素電極161等、他の部品が含まれても良い。
実施の形態5.
本実施の形態は、実施の形態2の第4工程である複数組のマイクロレンズアレイを液晶基板上に形成する方法の変形例である。本実施形態においてはグレイスケールマスクによる強度変調ではなく、所望形状の凹部を有する金型等のスタンパを用いてマイクロレンズ202を形成する例を説明する。
図23に示されるように、透明基板102の前面側には露光用基板300が配置されている。露光用基板300の透明基板102とは反対側の面には、露光用マイクロレンズ301が形成されている。透明基板102の背面側には、光硬化性樹脂211が充填されたスタンパ220が配置されている。スタンパ220は、形成すべきマイクロレンズ202の形状を転写可能な形状の凹部を有する型であり、例えばNi金型である。光硬化性樹脂211は主に紫外線硬化樹脂であり、アクリル系樹脂等の透明性を有する樹脂である。
露光用基板300側から光硬化性樹脂211の露光を行なう。露光は365nm付近の波長の紫外線を3000mJのエネルギーで照射する。図24は露光光の光線図を示したものである。露光光は開口部161aを通過し透明基板102に入射した後、スタンパ220内の光硬化性樹脂211を露光する。
本実施形態においてはスタンパ220を用いているので、実施の形態1のようにグレイスケールマスク400を用意する必要がない。また、露光用基板300側からの露光光がTFT素子108等の配線部材に遮られることなくスタンパ220まで到達すればよいので、実施の形態1のように露光用基板300と透明基板102との光路長を調整する必要がない。
実施の形態6
本実施の形態においては実施の形態2乃至6において説明した製造方法を用いて製造されたマイクロレンズアレイ及びマイクロレンズアレイを有する液晶表示装置について説明する。
まず、従来用いられていた材料をリフローすることによってマイクロレンズ202を形成する方法と比較して本発明の実施の形態で説明したマイクロレンズ202の形状について説明する。
マイクロレンズ202の底面が六角形のような多角形の形状を有する場合に、従来のリフローを用いる方法(以下、単にリフロー法とする)は、レンズの曲率半径を一定にすることが難しいという問題がある。リフロー法を用いる場合、レンズの曲率半径はレンズ中心の頂点とレンズ外周により決定される。レンズ底面形状が真円の場合は、任意の径方向でレンズの曲率半径が同一となるが、その他の場合、例えば本実施形態のような六角形の場合はレンズ中心とレンズ外周とを結ぶ線分の長さが径方向によって異なるためレンズの曲率半径が異なる。マイクロレンズを透明基板102上に隙間なく配置し、バックライト光の利用効率を更に高める目的では、マイクロレンズの底面形状は多角形、即ち中心から外周への距離が一定ではない形状であることが好ましく、例えば長方形である。従って、マイクロレンズ202の形成においてはリフローを用いることは好ましくない。
図25を用いてレンズ底面形状が正六角形の場合について説明する。図25(a)に示されるように、レンズ底面形状が上面視で正六角形の場合は、その中心を通り対向する頂点を結ぶ線分Pが最大径となり、中心を通り対向する辺の中心とを結ぶ線分Qが最小径となる。線分Qの長さは線分Pの長さに対して約87%となる。リフロー法の場合、線分Pにおけるレンズ断面は、図25(b)に示したように形成され、線分Qにおけるレンズ断面は図25(c)の実線に示したように形成される。図25(c)に示されるように線分Pと線分Qとの径方向ではレンズ断面の曲率半径の違いが生じる。この曲率半径の違いにより、線分Pと線分Qとの径方向では焦点が異なってしまう。焦点が定まらない場合、マイクロレンズ202に入射した光を1点に集光することができず、結果的に開口部161aへ効率良くバックライト光を集光できない。
本発明の実施の形態では、線分Qでのレンズ断面を図25(d)に示されるような構造とした。即ち、線分Qでのレンズ断面の曲率半径を線分Pの曲率半径と同じにし、端部を垂直に切り欠いてそのレンズ幅を線分Qの長さとしている。このようなレンズ形状であれば径方向によって曲率半径が異なるようなことがない。図25(b)及び図25(d)に示されるようにマイクロレンズ202の最大の曲率半径と最小の曲率半径とは一致していることが好ましいが、少なくとも最小の曲率半径が最大の曲率半径の80%以上、更に好ましくは82%以上更に好ましくは90%以上であることが好ましい。尚、本実施形態においては図25(b)及び図25(d)に示されるように最大の曲率半径と最小の曲率半径とは一致している。
更に、マイクロレンズ202のレンズ曲率の安定性を評価するもう一つの指針として、レンズの真球度がある。レンズの真球度を評価するrms(root mean square)値は次の式(1)の通り表すことができる。
図26はマイクロレンズの真球度につき測定したグラフである。レンズの真球度はレンズ中心を通る各断面に対して、最小二乗法でフィッティングをかけた真球曲線とのずれ量をその差分の面積から求めたrms値で評価したものである。この値が小さいほど、レンズ曲率がより真球に近く曲率が安定しているということになる。マイクロレンズの真球度、即ちrms値は0.005以上0.2以下であることが好ましく、更に好適には0.005以上0.15以下である。本実施形態にかかるマイクロレンズのrms値は0.04である。
図27に本実施形態にかかるマイクロレンズ202の斜視図を示す。図27(a)は本実施形態にかかるマイクロレンズ202の斜視図であり、レンズ表面を示す弧は点線で示されている。図27(a)に示されるように、本実施形態にかかるマイクロレンズ202において、対向する頂点を結ぶ線分はレンズ底面まで弧が到達し、レンズ中心を通り対向する辺を結ぶ線分ではレンズ外周に到達した時点で弧が途切れる形状になる。図27(b)は図27(a)に示したレンズを隙間なく配置した斜視図である。
上記の通り、図27に示したような構成を有するマイクロレンズは、リフロー法を用いて形成することは難しい。従って本実施形態にかかるマイクロレンズ202は2P(Photo−Polymer)法や、グレイスケールマスクを用いた露光による形成方法で形成することが好ましい。2P法の場合は、所望の曲面形状を転写可能な型が形成されたスタンパに光硬化性樹脂を充填し、透明基板102に対して当該スタンパを押圧し、スタンパに形成された型内の光硬化性樹脂を露光し硬化させることによってマイクロレンズ202の形状を形成する。グレイスケールマスクを用いた露光方法では、透明基板102上に形成されたネガ型レジストを、所望のマスクパターンが形成されたグレイスケールマスクを通して露光することによりネガ型レジストを所望形状に硬化させる。
図28に本実施形態にかかる液晶表示装置と、比較例及び従来例にかかる液晶表示装置とについて、輝度、コントラスト、レンズ真球度及びレンズ曲率一定性について比較した表を示す。ここで、レンズ真球度は式(1)に表すrms値とし、レンズ曲率一定性は、レンズの最小の曲率半径の最大の曲率半径に対する割合とする。また、比較に用いるマイクロレンズは円形及び四角形であるが、この様なマイクロレンズは上記の2P法若しくはグレイスケールマスクを用いた露光による形成方法により形成可能である。
本実施形態にかかる液晶表示装置は円形レンズの場合を実施例A、4角形レンズの場合を実施例Bとする。比較例として、ネガ型レジストをリフローで形成した円形マイクロレンズを有する液晶表示装置を比較例C、同じ製法により形成した4角形マイクロレンズを有する液晶表示装置比較例Dとする。従来例としてマイクロレンズを配さず、配線部材内の電極が全て透明電極で形成された液晶表示装置を従来例E、同じく画素電極の中央に直径35μmの透明電極を設け、残りを反射電極としたものを従来例Fとする。
マイクロレンズを用いなかった従来例において、従来例Eは太陽光下では画面が白く光り、コントラストが不十分だった。従来例Fは太陽光下でのコントラストは良好であったものの、室内使用時での輝度が低く、鮮明さが損なわれた。実施例A及びBは太陽光下でも視認性に優れ、室内での使用でも十分な輝度が得られ鮮明に表示された。それに対し比較例C及びDはレンズの真球度が低く、集光率が低下したため室内での使用時には暗さが目立ち鮮明な表示が損なわれた。
次に、液晶パネル100のバックライト側の透明基板102の厚さと、バックライトから液晶パネル100へ入射するバックライト光の放射成分とが、マイクロレンズによる光学的効果に与える影響について説明する。図29は液晶表示装置にバックライトユニット70を組み合わせた状態を示す模式断面図である。図29に示されるように本実施形態にかかるバックライトユニット70はバックライト光源71、導光板72及びプリズムシート73を有する。従来のバックライトユニットにおいては、更に拡散シートを有することが多かったが、本実施形態においてはマイクロレンズアレイ200によって図2に示される開口部161aに集光された光が、開口部161a通過後は発散するため拡散シートと同様の効果を得ることができる。従って拡散シートが不要となる分、バックライトユニット70の小型化及びコストの低減を図ることが可能となる。
バックライト光源71はバックライトユニット70の発光部であり、その発光体には白色LEDが4灯若しくは2灯用いられることが多い。バックライトユニット70はエッジライト型のバックライトユニットであり、バックライト光源71はバックライトユニット70の側面に配置される。ここで、バックライト光源71に用いる発光体は白色LEDに限定されず、例えば赤、青、緑それぞれの光を発光するLEDの光を混合して白色光を作り出しても良い。また、冷陰極管を用いても良い。バックライト光源71にLEDを用いることにより、色再現性を向上することができる。
導光板72は側面に配置されたバックライト光源71の光をプリズムシート73側に導く。本実施形態にかかる導光板72は三角溝の形成されたローレット導光板である。導光板72は主にアクリル系樹脂で形成される。
プリズムシート73は導光板72によって液晶パネル100側に導かれた光を更に液晶パネル100に対して略垂直な光に偏向する。図30はプリズムシート73による垂直偏向の態様を示す模式図である。本実施形態にかかるプリズムシート73は図30(a)に示すように扇形、即ち凸曲面を有するプリズムが配列された集光型プリズムシートである。通常の三角形のプリズムとは異なり、弧面で偏光することによってより高精度に垂直偏向し、バックライト光の光強度分布をより垂直成分の強い分布とすることが可能である。プリズムシート73には、例えば三菱レイヨン株式会社製の輝度向上用プリズムシート、ダイヤアート(登録商標)が用いられる。当該プリズムシート73を用いて垂直偏向を行なった場合も光は多少の放射成分を有するが、導光板72の三角溝と当該プリズムシート73のプリズム頂角を調整することによって、光が有する放射成分の放射角を制御することが可能である。
図30(a)に示した方式以外にも図30(b)に示されるように、三角形のプリズムをその頂点が導光板と対向するように配置し、以って垂直に偏向しても良い。この場合も、導光板の三角溝とプリズムシート73に含まれる当該プリズムの三角形の頂角を調整することによって、垂直偏向の放射角を制御することができる。更に、図30(c)に示されるように2枚のプリズムが互いに90°の角度で交差するように配置されていてもよい。
図1に示した構成を有する液晶表示装置においては、透明基板102の厚さ及びバックライトユニット70から液晶パネル100へ入射する光の放射成分が、当該液晶表示装置の表示輝度に大きな影響を及ぼす。図31に透明基板102の厚さとマイクロレンズ202へ入射するバックライト光の入射角との関係を示す。ここで、放射角θはそのままマイクロレンズ202へのバックライト光の入射角θと定義できる。図31(a)は透明基板102の厚さがt1の場合に、マイクロレンズ202に角度θだけ傾いて入射した光が反射部161bに遮られる場合を示している。この場合の、マイクロレンズ202による集光点の光軸からのずれ量をs1とすると、s1はs1=t1・θ/nとなる。従って、t1の値が小さいほど、s1も小さい値となる。
透明基板102の厚さを薄くした場合の態様を図31(b)に示す。図31(b)は透明基板102の厚さがt2の場合に、マイクロレンズ202に角度θだけ傾いて入射した光が開口部161aを通過する場合を示している。但し、t2はt1よりも小さい値とする。上記のようにマイクロレンズ202の集光点のずれ量s2はs2=t2・θ/nとなる。t2はt1よりも小さい値であるため、図31(b)に示すようにs2はs1よりも小さい値となる。このように、透明基板102を薄くすることによって入射光が開口部161aを通過する割合を向上させることができる。
また、マイクロレンズ202への入射前の角度θは、バックライトユニット70から液晶パネル100へ入射するバックライト光の放射成分の角度に相当する。従ってバックライト光の放射成分の角度はマイクロレンズ202への入射角度θとして光軸からのずれ量に影響を及ぼし、当該θが小さいほど光軸からのずれ量が小さくなる。
図32は、図29に示した本実施形態にかかるバックライトユニットについて、プリズムシート73から照射される光の放射角θと輝度比の関係を示すグラフである。図32において、実線と破線は放射角θの方向が直交している。実線はバックライト光源71や導光板72の長手方向の放射角を示し、破線は短手方向の放射角を示す。図32に示すようにバックライト光源71の光強度はガウス分布を有する。この例において用いたプリズムシート73は、図30(b)に示した構成を有する。
図32に示すように、本実施の形態において用いたバックライトユニットは、垂直成分を中心に左右に光強度が漸次減少していく光を出射する。このバックライト光の強度分布は大まかにはガウス分布とみなすことができる。この光強度分布において、最大強度すなわち垂直成分の強度に対して、20%の強度を示す角度までを考慮すれば、バックライト光の全エネルギーの90%以上を利用しているとみなすことができる。すなわち、レンズによる集光特性は該20%の光強度を有する放射角の範囲を想定すれば、十分にその効果を規定することができる。なお、バックライトユニットの構成によっては、垂直成分に対して左右非対称になる場合もあるが、例えば+5°、−30°などのように極端に非対称である場合を除き、左右の20%の光強度を有する放射角の平均値を、放射角として定義しても差し支えない。
図32に示すように、本実施形態で使用するプリズムシート73を用いた場合に、より光強度が中心に集まっている。従って、より放射成分が少なく光の利用効率の向上を図ることができる。更に、このような光の強度分布を考えれば、光の放射成分全てを集光する必要はなく、垂直成分から一定の角度範囲の放射成分を集光することが出来れば、十分な光の利用効率の向上を図ることができる。本実施形態においては中心輝度の20%の輝度になる角度を光の放射角と定義づける。
ここで、図32に示すグラフはプリズムシート73及び導光板72の一態様による測定結果であり、上述したようにプリズムシート73のプリズムの頂角及び導光板72の三角溝を調整することによって、放射角を調整することが可能である。
バックライト光の放射角θと、透明基板102の厚さとが決まれば、図31で説明した計算方法を用いてマイクロレンズ202によって集光された光が画素電極161に到達した際の光のスポット径が求まる。図33は透明基板102の厚さが300μmの場合における、放射角θごとのスポット径を円で示した図である。円Qは放射角θが8°の場合であり、円Rは放射角θが15°の場合である。ここで、マイクロレンズ202と開口部161aとの中心は一致しているものとする。
図33においては、画素電極161の寸法は横が50μmであり、縦が150μmである。また、開口部161aは横が30μmであり、縦が62μmである。従って、画素開口率は25%程度である。図に示すようにバックライト光の放射成分によって、開口部161aに対しスポット径がはみだしている。但し、この場合において光強度が円Q又は円Rに一様に分布しているわけではなく、前述した通り中心部分に光強度のピークを持つ。その分布をガウス分布と仮定した。
光の放射成分の分布は図32に示したようにガウス分布となる。従って、図31に示した放射角θと透明基板102の厚さをパラメータとし、横軸をスポット半径とし、中心部の光強度を1に規格化してy=exp(A×x2)の式でガウス近似を行なうと、図34に示したようなグラフを描くことができる。ここで、Aは中心輝度を1に規格化する規格化定数である。図34に示したグラフは、一つのマイクロレンズ202によって集光される光が画素電極161に到達した時の、レンズ光軸からの距離に対する光強度分布を表す。上述したように、光の放射成分のうち中心輝度の20%に達する角度を放射角と定義した。即ち、マイクロレンズ202にて集光される前の光束の最外部の輝度が中心輝度の20%である。マイクロレンズ202による集光後は図34に示されるように、マイクロレンズ202の集光効果により、集光前の光束の最外部に該当する部位の光強度は限りなく0に近づき、又は0になる。
図34のパラメータが示す通り、透明基板102の厚さが厚いほど、又、バックライト光の放射角θが小さいほど、より光強度が中心に集まり、光束の広がり(スポット径)の小さいシャープな分布となる。図34に示した夫々のグラフを、スポット半径=0μmを軸として一周分積分すると、一つのマイクロレンズ202によって集光される光の強度(以後、I1とする)が求まるが、図34のグラフは中心光強度1として規格化されているため、一周積分によって求められた値I1は夫々のパラメータ毎の光強度分布を示すのみであり、パラメータの異なるグラフを比べることはできない。
他方、1つのマイクロレンズ202に入射する光の強度は、単位面積当りのバックライト光強度をI0とすると、150×50×I0と表すことが出来る。ここで、計算の簡易化の為にI0=1とする。I1に対して、中心強度1としての規格化を解除し、上記のI0に対応させるための係数をkとすると、k×I1=150×50×I0とすることができる。
このような計算で夫々のパラメータについて係数kを求め、図34のグラフに示す夫々のパラメータに該当する係数kを乗算することにより、レンズ光軸からの距離に対する光強度分布を表す図35のグラフを描くことができる。図35は、1つのマイクロレンズ202によって集光される光が画素電極161に到達した時の光強度分布を示しており、図31に示す放射角θ及び透明基板102の厚さtがパラメータとなっている。また、係数kによって規格化は解除されているので、夫々のパラメータ毎の相対的な光強度を表してもいる。但し、光強度はバックライト光の単位面積当りの光強度I0=1が前提となっているため、無次元である。図に示される通り、放射角が小さいほど、又、透明基板102の厚さが薄いほど、レンズ光軸付近に光強度が集中していることがわかる。
即ち、図33に示されるような、マイクロレンズ202によって集光された光が画素電極161に到達した際の光のスポット径全てが開口部161aに含まれる必要はなく、スポットとして示される円の半径の半分程度が開口部161aに含まれれば、光の利用効率の向上を見込むことができる。
この様に、バックライト光はマイクロレンズ202によって集光されてもなお、光の放射成分によって図35に示されるような強度分布を有する。図35に示されるグラフを縦軸を軸として一周積分することにより、1つのマイクロレンズ202によって集光されるバックライト光の光強度を求めることができる。ここで、図33に示されるように、画素電極161の開口部161aは横が30μmであり、縦が62μmである。従って、横方向には30μmまで、縦方向には62μmまでの、放射成分が開口部161aを通過し、最終的にバックライト光として利用されることとなる。
最終的に開口部161aを通過し、バックライト光として利用される光の強度(以後、I2とする)を求めるためには、図35の横軸を開口部161aの開口径(以下、φとする)の半分の値、即ち開口半径φ/2で区切り、当該区切られた範囲までを上記のように一周積分することによって求めることができる。
ここで、開口部161aは長方形であり、中心からの距離が一定ではないため、図35の横軸の積分範囲が一定に定まらない。従って、開口部161aを通過し、バックライト光として利用される光強度を求めるためには、例えば開口部161aの辺の短辺方向の長さを用いることができる。また、開口部161aの短辺方向と長辺方向との中間の値を用いることもできる。更には、開口部161aの中心部から開口部161aの外周までの平均の長さを求め、それをφ/2とすることも出来る。具体的には、長方形であれば(長辺+短辺)/2で求まり、正五角形以上の正多角形又は楕円であれば(短軸+長軸)/2で求めることができる。本実施形態においては、開口部161aに入る最大円の半径をφ/2とする。
本実施形態においては、図35の横軸を区切る範囲は開口部161aの横の長さ30μmと縦の長さ62μmの中間点とする。即ち、横の長さ30μmと縦の長さ62μmの平均は46μmなので、その半分の23μmまでの範囲についてスポット径=0μmを軸として一周積分する。
ここで、バックライト光はマイクロレンズ202及び透明基板102に入射した際に、入射前と入射後との屈折率の違いにより入射角θに影響を受ける。バックライト光がマイクロレンズ202及び/又は透明基板102に入射する前の領域の屈折率を1、入射後の屈折率をn、即ち入射前と入射後との屈折率の比をnとする。本実施形態においてはマイクロレンズ202及び透明基板102への入射前は大気中であり、入射後の屈折率を1.52とする。
上記のようにして求めたI2をI1で割ることによって光の利用効率Eを求めることができる。上記の各要素、入射角θ(rad)、透明基板102の厚さt(μm)、開口部161aの開口径φ(μm)、マイクロレンズ202及び透明基板102の屈折率nを用い、マイクロレンズ202によって集光された光のスポット半径と開口部161aの開口径φとの比を表すパラメータを定数Pとすると、P=(φ・n)/(θ・t)で表すことができる。
図36に、パラメータPが依存する各数値によるパラメータP(下段)及びそれに対応する光の利用効率Eの値(上段)を示す。また、パラメータPを横軸に、光の利用効率Eを縦軸にとったプロットを図37に示す。ここで、光の利用効率Eは、バックライト光の光強度に対する開口部161aを通過したバックライト光の光強度の割合である。従って、最高値は1であり、これはバックライト光が反射部161bにまったく遮られず、マイクロレンズ202によって集光されて開口部161aを通過する場合を示す。また、マイクロレンズ202を用いない場合は、画素電極161の開口率がそのまま光の利用効率Eとなる。
図36から、放射角θ、透明基板102の厚さtの値が夫々小さい程、また、開口径φの値が大きい程、即ちパラメータPの値が大きいほど光の利用効率Eが高いことがわかる。マイクロレンズ202の効果を好適に発揮させるためには、光の利用効率Eを規定すれば良い。現状の半透過型液晶表示装置の開口率は25%程度であるから、マイクロレンズ202を用いない場合は光の利用効率Eは0.25程度である。従って、本実施形態においてはそれ以上の光の利用効率を規定すれば従来の半透過型液晶表示装置よりも高い輝度を得ることができる。Eが0.5以上あれば、現状の装置の略倍以上の明るさを有する非常に高性能の装置を得ることができる。ここで、開口率が50%であれば、0.5以上の光の利用効率を確保できることは言うまでもない。
ここで、図36においては、光の利用効率Eが0.5以上のセルに網掛けを付している。また、同一の基板厚み及び同一の放射角において、複数の異なる開口率で光の利用効率が1.0を示している場合は、開口率が最も低いデータのセルにのみ網掛けを付している。更に、同一の基板厚み及び同一の開口率において、複数の異なる放射角で光の利用効率が1.0を示している場合は、放射角が最も低いデータのセルにのみ網掛けを付している。
具体的に、光の利用効率Eを0.5程度に規定して説明する。図36において、光の利用効率が0.5以上で且つ0.5程度であるデータが太枠で囲われている。それらの値に対応するパラメータPの中で最も低い値は透明基板の厚さtが300μm、入射角θが15°、開口率が20%における0.852であり、Eは0.53である。従って、光の利用効率Eが0.5以上であることを規定するためには、パラメータPの値は0.8以上であることが好ましく、より好適には0.85以上に規定すればよい。
光の利用効率Eの最大値は1、即ちバックライト光を損失なく利用した状態である。図37に示されるように、パラメータPの値が1.7程度で光の利用効率Eは1に達する。即ち、パラメータPの値がそれ以上高くなるように各部材を設計しても、光学的効果は向上しない。しかしながら、パラメータPの値を向上するためには、透明基板102の厚さtを薄くし、放射角θを狭くし、又は開口径φを広くする必要がある。
本実施形態においては、透明基板102の厚さtを100μmから600μmの範囲で計算している。透明基板102の厚みが100μm未満である場合は、液晶パネル100の強度を確保することが難しく、歩留まりの劣化や、液晶表示装置の強度の低下を招く。また、透明基板102の厚みが600μm以上の場合は液晶表示装置の小型化の要求に反する。より好適には、透明基板102の厚さtは200μm以上400μm以下である。これにより、半透過型液晶表示装置の薄型化と透明基板強度確保の双方を実現することができる。
入射角θを小さくするためには、より高いコリメート性能が必要となり、技術面で難しい。放射角θは好ましくは5°以下であるが、5°以上10°以下の範囲であれば容易に実現可能である。また、開口径φを広くすると反射光の利用効率が下がり、半透過型液晶表示装置としての性能が低下してしまう。これらのことより、パラメータPの値の上限を規定することにより、マイクロレンズ202による光学的効果を発揮させると同時に、半透過型液晶表示装置を設計する上で、不要な設計条件の限定を避け、より好適な設計条件を導き出すことができる。
具体的に、光の利用効率Eを1以下に規定して説明する。図36において、光の利用効率が1である中で比較的パラメータPの値が低いものが二重枠で囲われている。それらの値に対応するパラメータPの中で最も低い値は透明基板の厚さtが300μm、入射角θが8°、開口率が24%における1.7418である。従って、光の利用効率Eが1以下であることを規定するためには、パラメータPの値は2以下であることが好ましく、より好適には1.75以下に規定すればよい。
図37のグラフが示す通り、パラメータPの値に対する光の利用効率Eの値はパラメータPの値が1.2程度までは大きく変化し、それ以降、変化が緩やかになりながら1に達する。従って、パラメータPの値が1.2程度になるまでは、透明基板102の厚さtを薄くし、放射角θを狭くすることは、大きな光学的効果の向上を生むが、パラメータPの値が1.2以上になると、t及びθの値の変化に対する光学的効果の向上が小さくなることがわかる。上記の通り、透明基板102の厚さtを薄くすることは、液晶表示装置の強度低下につながり、放射角θをより狭くすることは技術的に難しいため、図36、及び図37から大きな光学的効果を得られる範囲を導き出すことによって、より効率的な液晶表示装置の設計及び製造を行うことができる。
以上のことから、パラメータPの値に対して最適な各数値の値を導き出すと、例えば、透明基板102の厚さtが300μmであって入射角θが8°であれば、開口径φが30μm、即ち開口率が9%であっても、0.8以上の光の利用効率Eを得ることができる。従来技術における半透過型液晶表示装置においては、開口率が9%であれば光の利用効率Eは0.09となり、バックライト光の利用効率が大きく低下してしまうため、このような低い開口率は現実的ではなかった。しかしながら、本実施形態による半透過型液晶表示装置においては開口率が9%であっても、0.8の光の利用効率Eを実現することができる。
図36を参照すれば、透明基板の厚さtが薄く(例えば300μm以下)、入射角θが狭ければ(例えば5°以下)、開口率を9%よりも更に低くしても0.5以上の光の利用効率を得ることができることがわかる。従って、たとえば開口率を5%とすれば、反射光の利用効率を95%にすることができると共に、マイクロレンズアレイ200の効果によって高いバックライト光の利用効率を確保することができる。このように、透明基板102の厚さt、入射角θ、屈折率n、開口径φを要素とするパラメータPを定義することによって、最適な半透過型液晶表示装置の設計条件を容易に導き出すことができる。
以上説明したように、本発明の実施の形態1にかかる液晶表示装置では、マイクロレンズアレイによる光学的効果を発揮させ、光の利用効率の向上を図った液晶表示装置及びその製造方法を提供することができ、少なくとも50%以上の光の利用効率を得ることができる。
尚、本実施の形態においては説明したパラメータPを用いて、半透過型液晶表示装置における最適な寸法を導き出すシステムを構築することができる。このようなシステムは、少なくとも条件入力部、計算部、結果表示部及び制御部を有する。条件入力部において、放射角θ、屈折率n、開口径φ及び透明基板の厚みtを入力すれば、計算部がパラメータPを用いてバックライト光の利用効率Eを計算し、結果表示部が利用効率Eの計算結果を表示する。これらの処理を制御部が制御する。
また、所望のバックライト光の利用効率Eを入力し、上記のパラメータPを決定する数値のうち判明している数値を入力することによって、判明していない数値の最適な値を計算することも可能である。
実施の形態7.
本実施の形態においては実施の形態1において説明したバックライトユニットの他の態様を説明する。本実施形態にかかるバックライトユニットは面状光源を有する直下型バックライトユニットである。尚、実施の形態1と同様の符号を付す構成については実施の形態11と同一又は相当部を示し、説明を省略する。
図38は本実施形態にかかるバックライトユニット80を示す模式断面図である。本実施形態にかかるバックライトユニット80は透明基板81、隔壁82、金属電極83、有機EL材料84、透明電極85、透明基板86及びマイクロレンズ87を有する。透明基板81、86は例えばガラス、ポリカーボネイト、アクリル樹脂等により形成される。透明基板81上には隔壁82が形成され、当該隔壁82に沿って金属電極83が形成される。更に金属電極83の上から隔壁82で仕切られた内部に有機EL材料84が注入される。
透明基板86上には透明電極85が形成され、当該透明電極85と有機EL材料84とが接触するように透明基板86を隔壁82に対して配置し、有機EL材料84を封止する。更に、個々の隔壁82のピッチに合わせ、透明基板86の外側にマイクロレンズ87を形成する。マイクロレンズ87の焦点は透明基板86の厚さと略等しく形成される。マイクロレンズ87は透明基板86とは別の透明基板に2P法で形成し、隔壁82のピッチとアライメントして接着しても良い。この場合、マイクロレンズ87の焦点は当該マイクロレンズ87が形成された基板の厚さと透明基板86の厚さとの和となる。
次にバックライトユニット80の動作を説明する。金属電極83と透明電極85との間に電圧をかけると有機EL材料84が発光する。個々の隔壁82内部で発光した光は透明電極85及び透明基板86を通過してマイクロレンズ87に入射する。マイクロレンズ87の焦点は透明基板86の厚さに略等しいので、マイクロレンズ87を通過することによって隔壁82内部で発光した光は平行光になる。マイクロレンズ87側に液晶パネル100を組み合わせることによって、液晶パネル100にバックライト光として平行光を照射することができる。
以上説明したように、本発明の実施の形態2にかかる液晶表示装置では、好適に垂直偏光されたバックライト光を発光するバックライトユニットを有する液晶表示装置を提供することができる。
尚、図38においては、発光素子として有機EL材料が用いられているが、これに限定されるものではない。例えばカーボンナノチューブを用いてフィールドエミッション型の発光パネルとしても本実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。