JP4028219B2 - 光学多層膜フィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信装置や光学デバイス等に使用される光学多層膜フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
光学多層膜フィルタは、光学的な屈折率の異なる光学媒質層、例えば誘電体膜を交互に積み重ねて形成され、境界面での反射光の干渉を利用して所定の光学特性を得るものである。現在、単層膜では得られない所望の光学特性を得るために、眼鏡などのガラス上およびプラスチック上への無反射コーティング、ビデオカメラの色分解プリズム、バンドパスフィルタなどの各種光学フィルタ、発光レーザの端面コーティング等に利用されている。また、最近では、広帯域光波長多重通信(高密度波長分割多重(Dense Wavelength Division Multiplexing;DWDM)通信)に用いる合波フィルタや分波フィルタに応用される。
【0003】
光学多層膜フィルタの設計について、図21〜図23を参照して、説明する。図21に示すように、屈折率n0の基板1上に、屈折率n1の透明な光学媒質層12を膜厚d1で形成した単層膜フィルタにおいて、光学媒質層12に光が入射した場合に、特性マトリックス(M)は式(1)のように定義される。
ただし、入射光の波長をλ、入射角を入射面の法線に対しθ、β=2π(n1)(d1)・cos(θ)/λ、r=(n1)・cos(θ)と定義する。
また、iは虚数を示し、m11、m12、m21、m22は、特性マトリックスMの行列成分であり、m11=m22=cos(β)、m12=sin(β)/r、m21=r・sin(β)である。
【0004】
【数1】
【0005】
式(1)において、入射角θが0度の場合には、cos(θ)=1となるため、β=2π(n1)(d1)/λ、r=(n1)となる。
また、入射角θが0度かつ光学膜厚が(n1)(d1)=λ/4の場合は、β=π/2であるので、cos(β)=0、sin(β)=1となる。したがって、m11=m22=0、m12=1/(n1)、m21=(n1)となる。
さらに、入射角θが0度かつ光学膜厚が(n1)(d1)=λ/2の場合は、β=πであるので、cos(β)=−1、sin(β)=0となる。したがって、m11=m22=0、m12=1/(n1)、m21=n1となる。
また、式(1)の特性マトリックス(M)から、反射率係数rおよび透過率係数tは、入射角θが0度の場合にはr=n1であるため、式(2)、(3)となる。
【0006】
【数2】
【0007】
式(2)(3)から、反射率Rは式(4)、透過率Tは式(5)となる。
【0008】
【数3】
【0009】
光学膜厚が(n1)(d1)=λ/2および(n1)(d1)=λ/2の場合には、高い反射率、高い透過率が得られる。
次に、図22に示すような光学多層膜の場合には、全体の特性マトリックスMは、各光学媒質の特性マトリックスをM1,M2,M3、・・・、Mk-1、Mkとした場合に、式(6)となる。但し、全体の特性マトリックスMの行列成分をM11、M12、M21、M22とした。
【0010】
【数4】
【0011】
上記したように、特性マトリックスMにより、式(4)や式(5)と同様に反射率Rと透過率Tを求めることが可能である。
式(6)において、入射光の波長λを設計波長λ0に固定して光学膜厚ndを選択することで、光学フィルタとしての設計が可能となるため、所望のバンドパスフィルタを得ることができる。
【0012】
次に、光波長多重通信(波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing;WDM)通信)に用いる合波フィルタや分波フィルタの要求仕様について、図23の透過特性を参照して、説明する。
バンドパス特性を評価する基準として、一般的には、−0.5dBでのフィルタ透過幅(または透過帯幅)δW(F)と、−25dBでのクロストーク透過幅δW(C)と、挿入損失と、リップル強度とが用いられる。
【0013】
フィルタ透過幅は、光信号が透過するバンドパス信号の幅を示しており、狭いほど規定されたバンド幅の中で多くの信号を通すことが可能となる。
また、クロストーク幅は、混信することなしにバンドパス信号をどれだけ近接させることができるかを示しており、細いほど混信せずにバンドパス信号を並べることができる。つまり、フィルタ透過幅とクロストーク幅がともに狭くなることで、規定されたバンド帯の中で通信に使用できるバンドパス信号が増えることになる。
また、挿入損失とは、バンドパス信号の最大値の値と理想的な透過率100%の強度差を示している。
また、リップルとは、バンドパス信号の最大値付近の部分に透過率が局所的に低下する現象が見られることである。リップルが現れた場合、所望のバンドパス特性が得られないことがある。リップルが発生した場合の信号最大値と局所的透過率低下値との差をリップル強度とする。
理想的なバンドパス特性としては、点線で示した矩形の形状が求められている。
【0014】
現在使用されているバンドパスフィルタの特性としては、−0.5dBでのフィルタ透過幅が2nm以下、−25dBでのクロストーク透過幅が4から8nm程度であるが、既にフィルタ透過幅が1nm以下のバンドパスフィルタの実用化を迎えている。
さらに、次世代の広帯域光波長多重通信(DWDM通信)に用いるバンドパス特性の要求仕様としては、フィルタ特性幅が0.1nm、クロストーク幅が0.2nmから0.8nm、挿入損失が−1dB以下、リップル強度が−0.2dBである。
このため、最適なバンドパスフィルタの設計が求められている。
また、光学多層膜の層数も数十層から数百層と非常に多くなるため、膜厚や膜質の均一性もこれまで以上に高精度なものが要求されるようになっている。
【0015】
多層膜に用いられる薄膜材料として、シリコン(Si)、アモルファスシリコン(a−Si)、水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)、二酸化シリコン(Si2)、五酸化タンタル(Ta2O5)、アルミナ(Al2O3)、二酸化チタン(TiO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化ハフニウム(HfO2)、二酸化ランタン(LaO2)、二酸化セリウム(CeO2)、三酸化アンチモン(Sb2O5)、三酸化インジウム(In2O5)、酸化マグネシウム(MgO)、二酸化ソリウム(ThO2)などの酸化物および二元以上の酸化物、あるいは、シリコン酸窒化物(SiOxNx)、あるいは、シリコン窒化物(SiN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化ハフニウム(HfN)、窒化ランタン(LaN)などの窒化物および二元以上の窒化物、あるいは、フッ素化マグネシウム(MgF2)、三フッ化セリウム(CeF3)、二フッ化カルシウム(CaF2)、一フッ化リチウム(LiF)、六フッ化三ナトリウムアルミニウム(Na3AlF6)などのフッ素化物、あるいは、二元以上のフッ素化物などがある。
【0016】
一般には、これらの薄膜材料のうち屈折率の異なる2種類の材料を選択し、透明基板上に薄膜形成装置を用いて光学多層膜フィルタを作製する。
このような材料を積み重ねて多層膜として形成するために、様々な形成装置および形成方法が試みられている。
その中でスパッタ法(スパッタリング法)は、危険度の高いガスや有毒ガスなどを使用する必要がなく、堆積する膜の表面凹凸(表面モフォロジ)が比較的良好であるなどの理由により、有望な成膜装置・方法の一つになっている。
その中でも、スパッタ法において化学量論的組成の膜を得るための優れた装置・方法として酸素ガスや窒素ガスを供給し、膜中の酸素や窒素が欠落するのを防止する反応性スパッタ装置・方法が有望である。
【0017】
また、スパッタ膜の品質を改善するために、電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance;ECR)と発散磁界を利用して作られたプラズマ流とを基板に照射するとともに、夕一ゲットと接地間に高周波または直流電圧を印加し、上記ECRで発生させたプラズマ流中のイオンをターゲットに引き込み衝突させてスパッタ現象を引き起こすことにより、膜を基板上に堆積させる装置・方法(以下、これをECRスパッタ法という)がある。
ECRスパッタ法の特徴は、例えば、小野地、ジャパニーズジャーナルオブアプライドフィジクス、第23巻、第8号、L534頁、1984年(Jpn.J.Appl.Phys.23,no.8,L534(1984).)に記載されている。
【0018】
一般的に、マグネトロンスパッタ法においては、0.1Pa程度以上のガス圧力でないと安定なプラズマは得られないのに対し、上記ECRスパッタ法では、0.01Pa程度以下の分子流領域のガス圧力で安定なECRプラズマが得られる。
また、ECRスパッタ法は、高周波、または直流電圧により、ECRにより生成したイオンをターゲットに当ててスパッタリングを行うことにより、低い圧力でのスパッタリングが可能である。
【0019】
また、ECRスパッタ法では、基板にECRプラズマ流とスパッタされた粒子が照射される。ECRプラズマ流のイオンは、発散磁界により10eVから数10eVのエネルギーに制御される。
また、気体が分子流として振る舞う程度の低圧力で、プラズマを生成・輸送しているために、基板に到達するイオンのイオン電流密度も大きく取れる。したがって、ECRプラズマ流のイオンは、スパッタされて基板に飛来した原料粒子にエネルギーを与えるととも、原料粒子と酸素または窒素との結合反応を促進することとなるために膜質が改善される。
【0020】
ECRスパッタ法は、特に、外部からの加熱をしない室温に近い低い基板温度で、基板上に高品質の膜が形成できることが特徴である。
ECRスパッタ法による高品質な薄膜の堆積については、例えば、天津他、ジャーナルオフバキュームサイエンスアンドテクノロジー、第B17巻、第5号、2222頁、1999年(J.Vac.Sci.Technol.B17,no.5.2222(1999).)に記載されている。
【0021】
また、ECRスパッタ法で堆積した膜の表面モフォロジは、原子スケールのオーダーで平坦である。したがって、ECRスパッタ法は、ナノメーターオーダーの極薄膜からなる多層膜を形成するのに有望な装置・方法である。
【0022】
さらに、ECRスパッタ法では、反応性ガスの分圧を制御することにより、堆積膜の屈折率を精度良く制御することが可能である。この特性を利用することにより、他のスパッタ法では困難な屈折率を任意に調整した堆積膜を形成し、多層膜として形成することが可能となる。
【0023】
図24に、代表的な光学多層膜フィルタの構成例を示す。
光学膜厚nd=λ0/2(2L)のキャビティ層4(2L)と呼ばれる層の上下を、第1の光学媒質層2(光学膜厚nd=λ0/4)と第1の光学媒質層より高い屈折率を有するの第2の光学媒質層3(光学膜厚nd=λ0/4)とにより交互に積層した多層膜で挟んだ構造となっている。キャビティ層4は、第1の光学媒質層2と第2の光学媒質層3とを交互に積層した積層体のうち、所定の位置の層であり、光学膜厚がλ/2の第1の光学媒質層2または第2の光学媒質層3により構成される。図24では、基板上に第1の光学媒質層2と第2の光学媒質層3とを繰り返し21層積層し、この上に2Lのキャビティ層を形成し、さらにその上に第1の光学媒質層2と第2の光学媒質層3とを繰り返し21層積層して全体で43層の多層膜となっている。このような、キャビティ層を1つ持つ層構造を「シングルキャビティ」または「1キャビティ」と呼ぶことが多い。さらに、キャビティ層が2つ、3つ、4つと増えてゆくと、「ダブルキャビティ」または「2キャビティ」、「トリプルキャビティ」または「3キャビティ」、「4キャビティ」と呼ぶ。
【0024】
図24を参照し、第1の光学媒質層2として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta2O5)、第2の光学媒質層3として屈折率が3.25の水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)を用いた場合について詳細に説明する。
ただし、バンドパスフィルタとしての設計波長はλ0=1550nmとした。基板としては、一般的に使用される、BK−7や結晶化ガラス等の基板を用いた。第2の光学媒質層3の光学膜厚dHは119.23nm、第1の光学媒質層2の光学膜厚dLは181.07nm、キャビティ層4の光学膜厚dCは2×dLで362.15nmである。また、図24では、屈折率を層の横幅により、模式的に表した。つまり、第1の光学媒質層2よりも第2の光学媒質層3の横幅が広いのは、屈折率が大きいことを示している。
【0025】
図24に示した光学多層膜フィルタの透過特性を図25に示す。図25(a)は、1400nmから1700nmの波長範囲の特性であり、極めて急峻で半値幅の狭いバンドパス特性が得られている。
また、バンドパスフィルタとしての設計波長λ0近傍での波長特性を図25(b)に示す。フィルタ透過幅は0.1nm以下、挿入損失もなく、リップルもない形状が得られていることがわかる。しかし、バンドパススペクトルの形状は、鋭い三角形の形状であり、−25dBのクロストーク幅が1nm程度となり仕様を大きく越えている。また、図23の透過特性において点線で示した矩形の形状(理想的なバンドパス特性)から外れている。したがって、シングルキャビティでDWDM通信用のフィルタを作製するのは困難であることがわかる。
【0026】
そこで、キャビティ数を増やすことで、バンドパススペクトル形状を矩形にしようとする試みがなされている。図26には、例えば、第1の光学媒質層2として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta2O5)、第2の光学媒質層3として屈折率が3.25の水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)を用い、キャビティ数を2としたダブルキャビティの場合のスペクトル形状を示す。
バンドパスフィルタとしての設計波長はλ0=1550nm、第1の光学媒質層2と第2の光学媒質層3とを交互に19層積層し、この上に2Lのキャビティ層4を形成し、さらにその上に第1の光学媒質層2と第2の光学媒質層3とを交互に39層積層して、さらにこの上に2Lのキャビティ層4を形成し、さらにその上に第1の光学媒質層2と第2の光学媒質層3とを交互に19層積層する。したがって、全体で79層の多層膜となっている。つまり、図24のシングルキャビティの光学多層膜フィルタを直列につなげて、つなぎ目にあたる部分に第1の光学媒質層2を配置した構造となっている。
上記のようにシングルキャビティを直列配置して2以上のキャビティをもつ多層膜構造が一般的に用いられており、ファブリペロー型と呼ばれる。図26(a),(b)のバンドパススペクトル形状を見ると、フィルタ透過幅は約0.1nmを達成しており、−25dBのクロストーク幅も0.24nmとほぼ矩形プロファイルが得られ、挿入損失もほぼ0dBとDWDM用の要求仕様を満たしていることがわかる。しかしながら、リップルが−1.5dBにも及ぶため、要求仕様を満たさない。
【0027】
この現象は、3以上のキャビティでも見られる。図27には、第1の光学媒質層2として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta2O5)、第2の光学媒質層3として屈折率が3.25の水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)を用い、キャビティ数を3としたトリプルキャビティの場合のスペクトル形状を示す。バンドパスフィルタとしての設計波長はλ0=1550nmとした。基板1上に第1の光学媒質層2と第2の光学媒質層3とを交互に19層積層し、この上に2Lのキャビティ層4を形成し、さらにその上に第1の光学媒質層2と第2の光学媒質層3とを交互に39層積層し、さらにこの上に2Lのキャビティ層4を形成し、さらにその上に第1の光学媒質層2と第2の光学媒質層3とを交互に39層積層し、さらにこの上に2Lのキャビティ層4を形成し、さらにその上に第1の光学媒質層2と第2の光学媒質層3とを交互に19層積層する。したがって、全体で119層の多層膜となっている。
バンドパススペクトル形状は、図27(a)、(b)に示すように、フィルタ透過幅は約0.1nmを達成しており、−25dBのクロストーク幅も0.24nmとほぼ矩形プロファイルが得られ、挿入損失もほぼ0dBとDWDM用の要求仕様を満たしていることがわかる。しかしながら、リップルが−2dBにも及び、要求仕様を満たさなくなってしまう。
【0028】
図28には、第1の光学媒質層2として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta2O5)、第2の光学媒質層3として屈折率が3.25の水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)を用い、キャビティ数を4とした4キャビティの場合のスペクトル形状を示す。バンドパスフィルタとしての設計波長はλ0=1550nmとした。基板1上に、第1の光学媒質層2と第2の光学媒質層3とを交互に多層積層し、2Lのキャビティ層4を4層配置して、全体で159層の多層膜となっている。
バンドパススペクトル形状は、図28(a)、(b)に示すように、フィルタ透過幅は約0.1nmを達成しており、−25dBのクロストーク幅も0.2nmとほぼ矩形プロファイルが得られ、挿入損失もほぼ0dBとDWDM用の要求仕様を満たしていることがわかる。しかしながら、リップルが−3dBにも及び、要求仕様を満たさない。
【0029】
図29は、第1の光学媒質層2として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta2O5)、第2の光学媒質層3として屈折率が3.25の水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)を用い、キャビティ数を5とした5キャビティの場合のスペクトル形状を示す。バンドパスフィルタとしての設計波長はλ0=1550nmとした。基板1上に第1の光学媒質層2と第2の光学媒質層3とを交互に多層積層し、2Lのキャビティ層を5層配置して、全体で199層の多層膜となっている。
バンドパススペクトル形状は、図29(a)、(b)に示すように、フィルタ透過幅は約0.1nmを達成しており、シングルキャビティで広がってしまった−25dBのクロストーク幅も0.2nmとほぼ矩形プロファイルが得られ、挿入損失もほぼ0dBとDWDM用の要求仕様を満たしていることがわかる。しかしながら、リップルが−4dBにも及ぶため、要求仕様を満たさない。
【0030】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、2キャビティ、3キャビティ、4キャビティ、5キャビティで見られたようなリップルが発生する現象は、6以上のキャビティでさらに顕著になる。図30に、キャビティ数に対するフィルタ透過幅/クロストーク幅、および、リップ強度の特性を示す。キャビティ数が増加するにしたがって、クロストーク幅は小さくなって行くのに対し、フィルタ透過幅やリップル強度は大きくなって行くことがわかる。フィルタ透過幅は、層の総数により調整できるが、リップル強度は、調整できない。
【0031】
また、例に示した五酸化タンタル(Ta2O5)と水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)以外、例えば二酸化シリコン(SiO2)と五酸化タンタルの多層膜でも、またその他の多層膜の組み合わせても見られる現象である。
【0032】
上記した通り、0.1nm程度と狭いフィルタ透過幅を実現しながら、狭いクロストーク幅、矩形に近いバンドパス特性を得るとともに、挿入損失とリップルを抑えたバンドパスプロファイルを実現することは困難である。そのため、要求仕様を満たすバンドパス特性を示すフィルタ構造の実現が不可欠となっている。
【0033】
そこで、本発明の目的は、光通信に適応できるバンドパス特性を得ることができる光学多層膜フィルタを提供することである。
【0034】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の光学多層膜フィルタは、キャビティ層の間の第1の光学媒質層のうち少なくとも1層を、第1の光学媒質よりも低い屈折率を有する第3の光学媒質からなる第3の光学媒質層により形成し、さらに、第1の光学媒質層と、第2の光学媒質層と、第3の光学媒質層とを、これらの光学膜厚がそれぞれ、バンドパスフィルタとしての設計波長λに対して、λ/4になるような膜厚で形成し、キャビティ層を、この前記キャビティ層の光学膜厚が、バンドパスフィルタとしての設計波長λに対して、λ/2の整数倍になるような膜厚で形成したことを特徴とする。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
なお、実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0036】
実施の形態1にかかる光学多層膜フィルタは、2キャビティの基本構造を有し、第1のキャビティ層4aと第2のキャビティ層4bの間の第1の光学媒質層2の代わりに、第1の光学媒質層2よりも低い屈折率を有する第3の光学媒質層5を配置した構造である。
【0037】
具体的な構造は、図1に示すように、基板1上に、第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば17層積層されており、その上に第2のキャビティ層4bが形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば15層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば19層積層されている。その上に第1のキャビティ層4aが形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば17層積層されている。したがって、全体で71層の多層膜となっている。
【0038】
基板1としては屈折率1.47の透明基板、第1の光学媒質層2としては屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta2O5)、第2の光学媒質層3としては屈折率が3.25の水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4bとしては第1の光学媒質層2と同様に屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta2O5)、第3の光学媒質層5としては屈折率が1.95の窒化シリコン(Si3N4)、または屈折率が1.63のアルミナ(Al2O3)、または屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO2)、または屈折率が1.37のフッ素化マグネシウム(MgF2)を用いる。
【0039】
それぞれの光学膜厚は、バンドパスフィルタとしての設計波長(以下、設計波長と呼ぶ)をλ0=1550nmとした場合に、第1の光学媒質層2は181.07nm、第2の光学媒質層3は119.23nm、キャビティ層は362.15nmである。また、第3の光学媒質層5は、窒化シリコンでは198.72nm、アルミナでは237.73nm、二酸化シリコンでは261.82nm、フッ素化マグネシウムでは282.85nmである。
【0040】
また、図1においては、第1の光学媒質層2、第2の光学媒質層3、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4b、および第3の光学媒質層5の屈折率を、層の横幅により、模式的に表した。つまり、第1の光学媒質層2より第2の光学媒質層3の横幅が広いのは屈折率が大きいためであり、第3の光学媒質層5の横幅が第1の光学媒質層2の横幅よりも狭いのは屈折率が小さいためである。
【0041】
図2(a)、(b)は、図1に示した光学多層膜フィルタの第3の光学媒質層(LL層)5の屈折率を変化させた場合のフィルタ特性を示す。比較のため第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5に置き換えない2キャビティの基本構成のフィルタ特性も合わせて示す。第3の光学媒質層5に置き換えない場合は、フィルタ透過幅が0.2nm程度、リップルが−1.5dBである。また、第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5に置き換えた場合には、リップルが大きく改善され、フィルタ透過幅も0.1nm程度になることがわかる。
【0042】
図3に、図1に示した光学多層膜フィルタにおける第3の光学媒質層(LL層)5の屈折率を変化させた場合のフィルタ透過幅とクロストーク幅およびリップル強度の変化を示す。図3によれば、第3の光学媒質層5の屈折率を小さくするにしたがって、フィルタ透過幅とクロストーク幅が狭くなるとともに、リップル強度も大きく改善し、屈折率が1.37でリップルがなくなることがわかる。
【0043】
図4に、図1に示した光学多層膜フィルタにおける第3の光学媒質層(LL層)5の位置を変化させた場合のフィルタ透過幅とリップル強度の変化について示す。第3の光学媒質層5により置き換える第1の光学媒質層2の位置は、第1のキャビティ層より基板側に向かって数えたものである。図4によれば、第3の光学媒質層5により置き換える第1の光学媒質層2の位置を変えてもフィルタ透過幅に大きな変化は見られないことがわかる。また、リップル強度については、幾分リップル強度が小さくなる傾向はあるが、その変化量は小さく、キャビティ層間のどの位置の第1の光学媒質層2を置き換えても同様の効果が期待できることがわかる。
【0044】
実施の形態1では、2キャビティ構造において、第1のキャビティ層より基板側に向かって20層目の第1の光学媒質層を第3の光学媒質層に置き換えた構造となっているが、第1と第2のキャビティ層の間のいずれの第1の光学媒質層と置き換えても同様の効果が得られる。
また、実施の形態1では、全層の数が71層であるが、所望のフィルタ幅やクロストーク幅を得るために適宜層数を変化させて光学多層膜フィルタを構成した場合においても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0045】
次に製造方法について説明する。ECRスパッタ装置を用いて、光学多層膜フィルタの製造を行った。図5に電子サイクロトロン共鳴(ECR)装置の概略図を示す。
製造方法を具体的に説明する。まず、容器内を真空にした後、ECRプラズマ源にスパッタガスおよび反応性ガスを導入し適当なガス圧にする。
次に、磁気コイル9によりECRプラズマ源内に0.0875Tの磁場を発生させた後、導波管とモード変換器、石英窓11を通してECRプラズマ源に周波数が2.45GHzのマイクロ波を導入し、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマを生成する(ECR領域8を形成する)。ECRプラズマは、発散磁場により基板1方向にプラズマ流を作る。本実施の形態に示すECRプラズマ源は、導入したマイクロ波電力を一旦分岐してプラズマ源の直前で再び結合させるもので、ターゲット7からの飛散粒子が石英導入窓に付着することを防ぐことで、ランニングタイムを大幅に改善できるものである。ECRプラズマ源と基板1との間にリング状の円形ターゲット7を配置し、ターゲット7に高周波電力10を印加してスパッタリングを行って、基板ホルダー6に取り付けられた基板1上に薄膜を形成する。
【0046】
また、複数のECRプラズマ源と複数のターゲット7を設置し、切り替えてスパッタリングを行うことによって、基板1上に屈折率の異なる複数の堆積膜を多層膜として形成することができる。例えば、実施の形態1においては、2つのECRプラズマ源に、それぞれ、シリコンターゲットとタンタルターゲットを設置し、第1の光学媒質層2として五酸化タンタルを、第2の光学媒質層3としてアモルファスシリコンを、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4bとして五酸化タンタルを形成し、第1の光学媒質層2の代わりに導入する第3の光学媒質層5として二酸化シリコンまたは酸化シリコンを堆積することによって、本発明の光学多層膜フィルタを形成することができる。
【0047】
また、ECRスパッタ装置において、ターゲットにシリコンと純アルミニウムを用い、また、反応性ガスとして酸素ガス、不活性ガスとしてアルゴンを用いて、酸化シリコン薄膜とアルミナ薄膜の成膜を行った。ECRプラズマ源には、供給する反応性ガスの多少に関わらず、プラズマが安定に得られるだけのアルゴンを導入する。
【0048】
上記のようにして基板上に成膜した酸化シリコン膜とアルミナ膜の屈折率の酸素流量依存性を図6に示す。アルゴンガス流量を20sccmとし、酸素ガス流量を0から6sccmの間で変化させ、ECRイオン源に導入するマイクロ波電力を500W、ターゲットに印加する高周波電力を500Wとした。また、基板は加熱していない。尚、屈折率は638nmレーザによるエリプソメータを用いて測定した。
図6によれば、酸化シリコン膜およびアルミナ膜の屈折率は、酸素流量の増加にしたがって、ある酸素ガス流量で急激に減少し、屈折率が化学量論的組成を満たす二酸化シリコンまたはサファイア基板の屈折率になることがわかる。したがって、反応性ガスにより、良好な膜質を保ちながら屈折率を制御できることを示している。具体的には、屈折率を、酸化シリコン膜では1.47から4.2の範囲で、アルミナ膜では1.61から4.3の範囲で制御できることを示している。
【0049】
さらに、二酸化シリコン膜を含む酸化シリコン膜、アルミナ膜のみならず、ECRスパッタ法で形成できる五酸化タンタル、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、二酸化ハフニウム、二酸化ランタン、二酸化セレン、二酸化セリウム、三酸化アンチモン、三酸化インジウム、酸化マグネシウム、二酸化ソリウム等の酸化物、シリコン窒化物、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化ランタン等の窒化物、および、シリコン酸窒化物等の酸窒化物、フッ素化マグネシウム、フッ素化セレン、三フッ化セリウム、二フッ化カルシウム、フッ化リチウム、六フッ化三ナトリウムアルミニウム等のフッ素化物、さらには、堆積時に水素を導入したアモルファスシリコン、あるいは、二元合金の酸化物、二元合金の窒化物などでも反応性ガスの流量(分圧)により、屈折率の制御が可能である。
【0050】
実施の形態2にかかる光学多層膜フィルタは、3キャビティの基本構造を有し、第1のキャビティ層4aと第2のキャビティ層4bの間の第1の光学媒質層2および第2のキャビティ層4bと第3のキャビティ層4cの間の第1の光学媒質層2のうちそれぞれ2層を、第1の光学媒質層2より低い屈折率を有する第3の光学媒質層5により、置換した構造となっている。
【0051】
具体的な構造は、図7に示すように、基板1上に、第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば17層積層されており、その上に第3のキャビティ層4cが形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば15層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば9層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば9層積層されており、その上に第2のキャビティ層4bが形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば7層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば13層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば13層積層されており、その上に第1のキャビティ層4aが形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば17層積層されている。したがって、全体で107層の多層膜となっている。
【0052】
基板1としては屈折率1.47の透明基板、第1の光学媒質層2としては屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta2O5)、第2の光学媒質層3としては屈折率が3.25の水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4b、第3のキャビティ層4cとしては第1の光学媒質層2と同様に屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta2O5)、第3の光学媒質層5としては屈折率が1.95の窒化シリコン(Si3N4)、または屈折率が1.63のアルミナ(Al2O3)、または屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO2)、または屈折率が1.37のフッ素化マグネシウム(MgF2)を用いる。
【0053】
それぞれの光学膜厚は、実施の形態1と同様に、設計波長をλ0=1550nmとした場合に、第1の光学媒質層2は181.07nm、第2の光学媒質層3は119.23nm、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4b、第3のキャビティ層4cはともに362.15nmである。また、第3の光学媒質層5は、窒化シリコンでは198.72nm、アルミナでは237.73nm、二酸化シリコンでは261.82nm、フッ素化マグネシウムでは282.85nmである。
【0054】
また、実施の形態1と同様に、図7において、第1の光学媒質層2、第2の光学媒質層3、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4b、第3のキャビティ層4c、および第3の光学媒質層5の屈折率を、層の横幅により、模式的に表した。つまり、第1の光学媒質層2より第2の光学媒質層3の横幅が広いのは屈折率が大きいためであり、第3の光学媒質層5の横幅が第1の光学媒質層2の横幅よりも狭いのは屈折率が小さいためである。
【0055】
図8(a)、(b)は、図7に示した光学多層膜フィルタの第3の光学媒質層(LL層)5の屈折率を変化させた場合のフィルタ特性を示す。比較のため第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5に置き換えない3キャビティの基本構成のフィルタ特性も合わせて示す。第3の光学媒質層5に置き換えない場合は、フィルタ透過幅が0.25nm程度、リップルが−2dBである。それに対し、第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5に置き換えた場合、リップルが大きく改善され、屈折率が1.37の時にフィルタ透過幅も0.1nm程度になることがわかる。
【0056】
図9に、図7に示した光学多層膜フィルタにおける第3の光学媒質層(LL層)5の屈折率を変化させた場合のフィルタ透過幅とクロストーク幅およびリップル強度の変化を示す。
図9によれば、第3の光学媒質層5の屈折率を小さくするにしたがって、フィルタ透過幅とクロストーク幅が狭くなるとともに、リップル強度も大きく改善し、屈折率が1.37でリップルがほとんどなくなることがわかる。
【0057】
本実施の形態2では、3キャビティ構造において、第1のキャビティ層より基板側に向かって14層目と28層目の第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5により置き換え、また第2のキャビティ層より基板に向かって10層目と20層目の第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5に置き換えた構造となっているが、第1のキャビティ層4aと第2のキャビティ層4bの間および第2のキャビティ層4bと第3のキャビティ層4cの間の第1の光学媒質層2のうち、どの2層の第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5と置き換えても同様の効果が得られる。
【0058】
また、実施の形態2では、全層の数が107層であるが、所望のフィルタ幅やクロストーク幅を得るために適宜層数を変化させて光学多層膜フィルタを構成した場合においても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0059】
また、製造方法は、実施の形態1と同様に、ECRスパッタ装置を用いて、2つのECRプラズマ源に、それぞれ、シリコンターゲットとタンタルターゲットを設置し、第1の光学媒質層2として五酸化タンタルを、第2の光学媒質層3としてアモルファスシリコンを、第1キャビティ層4a、第2キャビティ層4b、第3キャビティ層4cとして五酸化タンタルを形成し、第1の光学媒質層2の代わりに導入する第3の光学媒質層5として例えば二酸化シリコンを堆積することによって、形成することが可能である。反応性ガスの流量(分圧)により、屈折率を制御することにより、最適なフィルタ特性を得ることが可能である。
【0060】
実施の形態3にかかる光学多層膜フィルタは、3キャビティの基本構造を有し、第1のキャビティ層4aと第2のキャビティ層4bとの間の第1の光学媒質層2および第2のキャビティ層4bと第3のキャビティ層4cとの間の第1の光学媒質層2のうちそれぞれ1層の第1の光学媒質層2を、第1の光学媒質層2より低い屈折率を有する第3の光学媒質層5により、置換した構造である。
【0061】
具体的な構造は、図10に示すように、基板1上に、3キャビティの基本構造を形成し、第1のキャビティ層から基板側に向かって16層目の第1の光学媒質層2と第2のキャビティ層から基板側に向かって20層目の第1の光学媒質層2とを第3の光学媒質層5に置き換えた構造である。したがって、全体で111層の多層膜となる。
【0062】
基板1としては、屈折率1.47の透明基板、第1の光学媒質層2としては屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta2O5)、第2の光学媒質層3としては屈折率が3.25の水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4b、第3のキャビティ層4cとしては第1の光学媒質層2と同様に屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta2O5)、第3の光学媒質層5としては屈折率が1.95そして、第1の光学媒質層よりも低い屈折を持つ光学媒質層として屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO2)である。第3の光学媒質として、窒化シリコン(Si3N4)、または屈折率が1.63のアルミナ(Al2O3)、または屈折率が1.37のフッ素化マグネシウム(MgF2)を用いてもよい。
【0063】
それぞれの光学膜厚は、実施の形態1と同様に、設計波長をλ0=1550nmとした場合に、第1の光学媒質層2は181.07nm、第2の光学媒質層3は119.23nm、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4b、第3のキャビティ層4cはともに362.15nm、第3の光学媒質層は二酸化シリコンでは261.82nmである。
【0064】
また、実施の形態1と同様に、図10において、第1の光学媒質層2と第2の光学媒質層3、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ4b、第3のキャビティ4c、および第3の光学媒質層5の屈折率を層の横幅により、模式的に示した。
【0065】
図11(a)、(b)に、図10に示した光学多層膜フィルタの第3の光学媒質層(LL層)5を屈折率を1.48を有する二酸化シリコンとした場合のフィルタ特性を示す。比較のために第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5に置き換えない3キャビティ構成のフィルタ特性も合わせて示す。第3の光学媒質層5に置き換えない場合は、フィルタ透過幅が0.15nm程度、リップルが−0.5dBである。それに対し、第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5に置き換えると、リップルが大きく改善され、フィルタ透過幅も0.1nm以下になることがわかる。
【0066】
本実施の形態3では、3キャビティ構造において、第1キャビティ層より基板側に向かって16層目と第2キャビティ層より基板側に向かって20層目の第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5に置き換えた構造の例を示したが、第1のキャビティ層4aと第2のキャビティ層4bとの間、および、第2のキャビティ層4bと第3のキャビティ層4cとの間のいずれの第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5に置き換えても同様の効果が得られる。
【0067】
また、実施の形態3では、全層の数が111層であるが、所望のフィルタ幅やクロストーク幅を得るために適宜層数を変化させて光学多層膜フィルタを構成した場合においても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0068】
また、製造方法は、実施の形態1と同様に、ECRスパッタ装置を用いて、2つのECRプラズマ源に、それぞれ、シリコンターゲットとタンタルターゲットを設置し、第1の光学媒質層2として五酸化タンタルを、第2の光学媒質層3としてアモルファスシリコンを、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4b、第3のキャビティ層4cとして五酸化タンタルを形成し、第1の光学媒質層の代わりに導入する第3の光学媒質層5として例えば二酸化シリコンを堆積することによって、形成することが可能である。反応性ガスの流量(分圧)により、屈折率を制御することにより、最適なフィルタ特性を得ることが可能である。
【0069】
実施の形態4にかかる光学多層膜フィルタは、4キャビティの基本構造を有し、第2のキャビティ層4bと第3のキャビティ層4cとの間の第1の光学媒質層2のうちの5層を、第1の光学媒質層2より低い屈折率を有する第3の光学媒質層5により、置き換えた構造である。
【0070】
具体的な構造は、図12に示すように、基板1上に、第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば21層積層されており、その上に第4のキャビティ層4dが形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に43層積層されており、その上に第3のキャビティ層4cが形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に3層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に5層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に11層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に9層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に5層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に5層積層されており、その上に第2のキャビティ層4bが形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に43層積層されており、その上に第1のキャビティ層4aが形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に21層積層されている。したがって、全体で175層の多層膜となっている。
【0071】
基板1としては屈折率1.47の透明基板、第1の光学媒質層2としては屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO2)、第2の光学媒質層3として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta2O5)、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4b、第3のキャビティ層4c、第4のキャビティ層4dとしては第1の光学媒質層2と同様に屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO2)、第3の光学媒質層5として屈折率が1.37のフッ素化マグネシウム(MgF2)を用いる。
【0072】
それぞれの光学膜厚は、設計波長をλ0=1550nmとした場合に、第1の光学媒質層2は261.82nm、第2の光学媒質層3は181.07nm、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4b、第3のキャビティ層4c、第4のキャビティ層4dは523.64nm、第3の光学媒質層5は282.85nmである。
【0073】
また、実施の形態1と同様に、図12において、第1の光学媒質層2と第2の光学媒質層3、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4b、第3のキャビティ層4c、第4のキャビティ層4d、および第3の光学媒質層5の屈折率を層の横幅により、模式的に表した。
【0074】
図13(a)、(b)は、図12に示した光学多層膜フィルタにおいて、第2のキャビティ層4bと第3のキャビティ層4cとの間の第1の光学媒質層(L層)2のうち第3の光学媒質層(LL層)5により置き換える層数を変化させた場合のフィルタ透過特性を示す。比較のために第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5により置き換えない4キャビティの基本構成のフィルタ特性も合わせて示す。第3の光学媒質層5に置き換えない場合は、フィルタ透過幅が0.25nm程度、リップルが−1dBである。それに対し、第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5に置き換えた場合、リップルが大きく改善され、第3の光学媒質層5の層数を5枚にした場合には、リップル強度が−0.05dBに改善され、かつ、フィルタ透過幅も0.1nm程度になることがわかる。
【0075】
図14に、図12に示した光学多層膜フィルタにおける、第2のキャビティ層4bと第3のキャビティ層4cとの間に形成される第3の光学媒質層(LL層)5の層数を変えた場合のフィルタ透過幅とクロストーク幅およびリップル強度の変化を示す。
図14により第3の光学媒質層5の層数を増加させるにしたがって、フィルタ透過幅とクロストーク幅が狭くなるとともに、リップル強度も大きく改善し、5層でフィルタ透過幅が0.1nmとなりリップルがなくなることがわかる。
【0076】
また、実施の形態4では、4キャビティ構造において、第2のキャビティ層より基板側に向かって6層目、12層目、22層目、34層目、および40層目の第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5に置き換えた構造となっているが、第2のキャビティ層4bと第3のキャビティ層4cとの間の第1の光学媒質層2のうちどの層を第3の光学媒質層5と置き換えても同様の効果が得られる。
【0077】
また、実施の形態4では、全層数が175層であるが、所望のフィルタ幅やクロストーク幅を得るために適宜層数を変化させて光学多層膜フィルタを構成した場合においても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0078】
また、製造方法は、実施の形態1と同様に、ECRスパッタ装置を用いて、2つのECRプラズマ源に、それぞれ、シリコンターゲットとタンタルターゲットを設置し、第1の光学媒質層2として二酸化シリコンを、第2の光学媒質層3として五酸化タンタルを、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4b、第3のキャビティ層4c、第4のキャビティ層4dとして二酸化シリコンを形成する。また、第1の光学媒質層の代わりに導入する第3の光学媒質層5としてフッ素化マグネシウムを堆積することによって、形成することが可能である。反応性ガスの流量(分圧)により、屈折率を制御することにより、最適なフィルタ特性を得ることが可能である。
【0079】
実施の形態5にかかる光学多層膜フィルタは、4キャビティの基本構造を有し、第1のキャビティ層4aと第2のキャビティ層4bとの間および第2のキャビティ層4bと第3のキャビティ4cとの間の第1の光学媒質層2のうちの1層をそれぞれ第1の光学媒質層2よりも低い屈折率を有する第3の光学媒質層5により置き換えた構造である。
【0080】
具体的構造は、図15に示すように、基板1上に、第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば17層積層されており、その上に第4のキャビティ層4dが形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば37層積層されており、その上に第3のキャビティ層4cが形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば19層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば17層積層されており、その上に第2のキャビティ層4bが形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば19層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば17層積層されており、その上に第1のキャビティ層4aが形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば17層積層されている。したがって、全体で149層の多層膜となっている。
【0081】
基板1としては屈折率1.47の透明基板、第1の光学媒質層2として屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta2O5)、第2の光学媒質層3として屈折率が3.25の水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4b、第3のキャビティ層4c、第4のキャビティ層4dとしては第1の光学媒質層2と同様に屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta2O5)、第3の光学媒質層5として屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO2)を用いる。
【0082】
それぞれの光学膜厚は、設計波長をλ0=1550nmとした場合に、第1の光学媒質層2は181.07nm、第2の光学媒質層3は119.23nm、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4b、第3のキャビティ層4c、第4のキャビティ層4dは362.15nm、第3の光学媒質層は261.82nmである。
【0083】
また、図15においても実施の形態1と同様に、第1の光学媒質層2、第2の光学媒質層3、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4b、第3のキャビティ層4c、第4のキャビティ層4d、および第3の光学媒質層5の屈折率を層の横幅により、模式的に表した。
【0084】
図16は、図15に示した光学多層膜フィルタのフィルタ特性を示す。比較のために、第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層(LL層)5に置き換えない4キャビティの基本構成のフィルタ特性も合わせて示す。第3の光学媒質層5に置き換えない場合は、フィルタ透過幅は0.14nm、クロストーク幅は0.24nm、リップルは−1.5dB程度である。しかし、本実施の形態5における第3の光学媒質層(LL層)5に置き換えた構造では、フィルタ透過幅は0.1nm以下、クロストーク幅も0.2nmと狭くなるとともに、リップルも−0.1dBと問題のない値に改善されており、バンドパス特性が大きく向上している。
【0085】
実施の形態5では、4キャビティ構造において、第1のキャビティ層より基板方向に向かって18層目および第2のキャビティ層より基板方向に向かって18層目の第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5にそれぞれ置き換えた構造となっているが、第1のキャビティ層4aと第2のキャビティ層4bとの間および第2のキャビティ層4bと第3のキャビティ層4cとの間の第1の光学媒質層2のうち、いずれの第1の光学媒質層2とそれぞれ置き換えても同様の効果が得られる。
【0086】
また、実施の形態5では、全総数が149層であるが、所望のフィルタ幅やクロストーク幅を得るために適宜層数を変化させて光学多層膜フィルタを構成した場合においても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0087】
さらに、実施の形態5では、4キャビティの基本構造において、第1のキャビティ層4aと第2のキャビティ層4bとの間および第2のキャビティ層4bと第3のキャビティ層4cとの間にそれぞれ第3の光学媒質層5を配置した構造であるが、多層膜の層構造を調整することにより、それ以外のキャビティ層間に第3の光学媒質層5を配置しても同様の効果が得られる。
【0088】
また、製造方法は、実施の形態1と同様に、ECRスパッタ装置を用いて、2つのECRプラズマ源に、それぞれ、シリコンターゲットとタンタルターゲットを設置し、第1の光学媒質層2として五酸化タンタルを、第2の光学媒質層3としてアモルファスシリコンを、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4b、第3のキャビティ層4c、第4のキャビティ層4dとして五酸化タンタルを形成し、第1の光学媒質層の代わりに導入する第3の光学媒質層5として例えば二酸化シリコンを堆積することによって、形成することが可能である。反応性ガスの流量(分圧)により、屈折率を制御することにより、最適なフィルタ特性を得ることが可能である。
【0089】
実施の形態6にかかる光学多層膜フィルタは、5キャビティの基本構造を有し、第1のキャビティ層4aと第2のキャビティ層4bとの間の第1の光学媒質層2のうちの2層、第2のキャビティ層4bと第3のキャビティ層4cとの間の第1の光学媒質層2のうち3層、第3のキャビティ層4cと第4のキャビティ層4dとの間の第1の光学媒質層2のうち3層、および第4のキャビティ層4dと第5のキャビティ層4eとの間の第1の光学媒質層2のうち2層を、第1の光学媒質層1より低い屈折率を有する第3の光学媒質層5で置き換えた構造である。
【0090】
具体的な構造は、図17に示すように、基板1上に、第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば17層積層されており、その上に第5のキャビティ層4eが形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば11層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば11層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば11層積層されており、その上に第4のキャビティ層4dが形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば7層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば7層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば7層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば11層積層されており、その上に第3のキャビティ層4cが形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば7層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば7層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば7層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば11層積層されており、その上に第2のキャビティ層4bが形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば11層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば11層積層されており、その上に第3の光学媒質層5が形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば11層積層されており、その上に第1のキャビティ層4aが形成されている。その上に第2の光学媒質層3と第1の光学媒質層2とが交互に例えば17層積層されている。したがって、全体で179層の多層膜となっている。
【0091】
基板1としては屈折率1.47の透明基板、第1の光学媒質層2としては屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta2O5)、第2の光学媒質層3として屈折率が3.25の水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4b、第3のキャビティ層4c、第4のキャビティ層4d、第5のキャビティ層4eとしては第1の光学媒質層2と同様に屈折率が2.14の五酸化タンタル(Ta2O5)、第3の光学媒質層5としては屈折率が1.95の窒化シリコン(Si3N4)、または屈折率が1.63のアルミナ(Al2O3)、または屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO2)、または屈折率が1.37のフッ素化マグネシウム(MgF2)を用いる。
【0092】
それぞれの光学膜厚は、設計波長をλ0=1550nmとした場合に、第1の光学媒質層2は181.07nm、第2の光学媒質層3は119.23nm、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4b、第3のキャビティ層4c、第4のキャビティ層4d、第5のキャビティ層4eは362.15nm、第3の光学媒質層5は窒化シリコンでは198.72nm、アルミナでは237.73nm、二酸化シリコンでは261.82nm、フッ素化マグネシウムでは282.85nmである。
【0093】
また、図17においては、実施の形態1と同様に、第1の光学媒質層2、第2の光学媒質層3、第1のキャビティ層4a、第2のキャビティ層4b、第3のキャビティ層4c、第4のキャビティ層4d、第5のキャビティ層4e、および第3の光学媒質層5の屈折率を層の横幅で模式的に表した。
【0094】
図18(a)、(b)は、図17に示した光学多層膜フィルタにおいて、第3の光学媒質層(LL層)5を屈折率が1.48の二酸化シリコン(SiO2)とした場合に、第2のキャビティ層4bと第3のキャビティ層4cとの間および第3のキャビティ層4cと第4のキャビティ層4dとの間の第1の光学媒質層(L層)2のうちのそれぞれ1層を第3の光学媒質層(LL層)5に置き換えた場合(2層置き換え)と、第1のキャビティ層4aと第2のキャビティ層4bとの間の第1の光学媒質層2のうち1層、第2のキャビティ層4bと第3のキャビティ層4cとの間の第1の光学媒質層2のうち2層、第3のキャビティ層4cと第4のキャビティ層4dの間の第1の光学媒質層2のうち2層、第4のキャビティ層4dと第5のキャビティ層4eの間の第1の光学媒質層2のうち1層をそれぞれ第3の光学媒質層5に置き換えた場合(6層置き換え)と、第1のキャビティ層4aと第2のキャビティ層4bとの間の第1の光学媒質層2のうち2層、第2のキャビティ層4bと第3のキャビティ層4cの間の第1の光学媒質層2のうち3層、第3のキャビティ層4cと第4のキャビティ層4dとの間の第1の光学媒質層2のうち3層、第4のキャビティ層4dと第5のキャビティ層4eとの間の第1の光学媒質層2のうち2層を第3の光学媒質層5に置き換えた場合(10層置き換え)のフィルタ特性を示す。比較のために第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5に置き換えない5キャビティの基本構成のフィルタ特性も合わせて示す。第3の光学媒質層5に置き換えない場合には、フィルタ透過幅が0.4nm程度、リップルが−4dBである。それに対し、第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5に置き換えた場合、リップルが大きく改善され、第3の光学媒質層5の層数を10層にした場合にはリップルがなくなり、かつ、フィルタ透過幅も0.1nm程度になることがわかる。
【0095】
図19(a)、(b)に、図17に示した光学多層膜フィルタ(10層置き換え)において、第3の光学媒質層(LL層)5の屈折率を変化させた場合のフィルタ特性を示す。比較のために第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5に置き換えない5キャビティの基本構成のフィルタ特性も合わせて示す。第3の光学媒質層5に置き換えない場合は、フィルタ透過幅が0.4nm程度、リップルが−4dBである。それに対し、第1の光学媒質層2を第3の光学媒質層5に置き換えた場合、リップルが大きく改善し、屈折率を1.37の媒質により置き換えた場合には、リップルが−0.2dB以下に抑えられるとともに、フィルタ透過幅も0.1nm程度になることがわかる。
【0096】
図20に、図17に示した光学多層膜フィルタ(10層置き換え)において、第3の光学媒質層(LL層)5の屈折率に対するフィルタ透過幅とクロストーク幅およびリップル強度の変化について示す。図20によれば、第3の光学媒質層5の屈折率を低くするにしたがって、フィルタ透過幅とクロストーク幅が狭くなることがわかる。さらに、リップル強度も大きく改善し、第3の光学媒質層5の屈折率が1.48以下の場合に、フィルタ透過幅が0.1nmとなるとともにリップルが許容範囲となることがわかる。
【0097】
本実施の形態6では、5キャビティ構造において、第1のキャビティ層4aより基板方向に向かって12層目と24層目、第2のキャビティ層4bより基板方向に向かって8層目と16層目と24層目、第3のキャビティ層4cより基板方向に向かって8層目と16層目と24層目、および第4のキャビティ層4dより基板方向に向かって12層目と24層目を第3の光学媒質層5に置き換えた構成について示したが、第1のキャビティ層4aと第2のキャビティ層4bとの間の第1の光学媒質層2のうちのいずれかの2層、第2のキャビティ層4bと第3のキャビティ層4cとの間のうちのいずれかの3層、第3のキャビティ層4cと第4のキャビティ層4dとの間のうちのいずれかの3層、および第4のキャビティ層4dと第5のキャビティ層4eとの間のうちのいずれかの2層をそれぞれ第3の光学媒質層5と置き換えても同様の効果が得られる。
【0098】
また、実施の形態6では、全層数が179層であるが、所望のフィルタ幅やクロストーク幅を得るために、適宜層数を変化させて光学多層膜フィルタを構成した場合においても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0099】
また、製造方法は、実施の形態1と同様に、ECRスパッタ装置を用いて、2つのECRプラズマ源に、それぞれ、シリコンターゲットとタンタルターゲットを設置し、第1の光学媒質層2として五酸化タンタルを、第2の光学媒質層3としてアモルファスシリコンを、第1のキャビティ層4a、第1のキャビティ層4b、第3のキャビティ層4c、第4のキャビティ層4d、第5のキャビティ層4eとして五酸化タンタルを形成し、第1の光学媒質層の代わりに導入する第3の光学媒質層5として例えば二酸化シリコンを堆積することによって、形成することが可能である。反応性ガスの流量(分圧)により、屈折率を制御することにより、最適なフィルタ特性を得ることが可能である。
【0100】
また、実施の形態1から実施の形態6では、2キャビティと3キャビティと4キャビティと5キャビティの構造について示したが、6キャビティなど、それ以外のキャビティの構造についても多層膜の層構造と、適切な第3の光学媒質層5の屈折率を選択することにより、同様の効果が得られる。
さらに、実施の形態1から実施の形態6では、各キャビティ層の光学膜厚をバンドパスフィルタとしての設計波長λに対して、λ/2となる膜厚とした場合についてのみ示したが、各キャビティ層の光学膜厚がλ/2の整数倍となる膜厚であれば同様の効果が得られ、この条件を満たすよう膜厚を厚くすることでフィルタ透過幅をより狭くすることができる。
【0101】
【発明の効果】
本発明によれば、フィルタ特性の形状を調整し、またリップルをなくすことにより、光通信に適応できるバンドパス特性を有する光学多層膜フィルタを得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1にかかる光学多層膜フィルタの構造を示す断面図である。
【図2】 (a)は実施の形態1にかかる光学多層膜フィルタのフィルタ特性を示す説明図、(b)は(a)の縦軸の範囲を拡大した図である。
【図3】 実施の形態1にかかる光学多層膜フィルタにおける第3の光学媒質層の屈折率に対するフィルタ透過幅/クロストーク幅およびリップル強度の変化を示す説明図である。
【図4】 実施の形態1にかかる光学多層膜フィルタにおける第3の光学媒質層の位置に対するフィルタ透過幅およびリップル強度の変化を示す説明図である。
【図5】 電子サイクロトロン共鳴(ECR)装置の概略図である。
【図6】 電子サイクロトロン共鳴(ECR)を用いて作製した膜の特性を示す図である。
【図7】 実施の形態2にかかる光学多層膜フィルタの構造を示す断面図である。
【図8】 (a)は実施の形態2にかかる光学多層膜フィルタのフィルタ特性を示す説明図、(b)は(a)の縦軸の範囲を拡大した図である。
【図9】 実施の形態2にかかる光学多層膜フィルタにおける第3の光学媒質層の屈折率に対するフィルタ透過幅/クロストーク幅およびリップル強度の変化を示す説明図である。
【図10】 実施の形態3にかかる光学多層膜フィルタの構造を示す断面図である。
【図11】 (a)は実施の形態2にかかる光学多層膜フィルタのフィルタ特性を示す説明図、(b)は(a)の縦軸の範囲を拡大した図である。
【図12】 実施の形態4にかかる光学多層膜フィルタの構造を示す断面図である。
【図13】 (a)は実施の形態4にかかる光学多層膜フィルタのフィルタ特性を示す説明図、(b)は(a)の縦軸の範囲を拡大した図である。
【図14】 実施の形態4にかかる光学多層膜フィルタにおける第3の光学媒質層の層数に対するフィルタ透過幅/クロストーク幅およびリップル強度の変化を示す説明図である。
【図15】 実施の形態5にかかる光学多層膜フィルタの構造を示す断面図である。
【図16】 実施の形態5にかかる光学多層膜フィルタのフィルタ特性を示す説明図である。
【図17】 実施の形態6にかかる光学多層膜フィルタの構造を示す断面図である。
【図18】 (a)は実施の形態6にかかる光学多層膜フィルタのフィルタ特性を示す説明図、(b)は(a)の縦軸の範囲を拡大した図である。
【図19】 (a)は実施の形態6にかかる光学多層膜フィルタのフィルタ特性を示す説明図、(b)は(a)の縦軸の範囲を拡大した図である。
【図20】 実施の形態6にかかる光学多層膜フィルタにおける第3の光学媒質層の屈折率に対するフィルタ透過幅/クロストーク幅およびリップル強度の関係を示す説明図である。
【図21】 光学多層膜フィルタの原理を説明するための説明図である。
【図22】 光学多層膜フィルタを説明するための説明図である。
【図23】 光学多層膜フィルタの特性における性能を示す説明図である。
【図24】 光学多層膜フィルタの構造を説明するための図である。
【図25】 (a)は多層膜フィルタの透過特性を示す図、(b)は(a)の横軸の範囲を縮小した図である。
【図26】 (a)は従来のダブルキャビティの多層膜フィルタの透過率特性を示す説明図、(b)は(a)の縦軸の範囲を拡大した図である。
【図27】 (a)は従来のトリプルキャビティの多層膜フィルタの透過率特性を示す説明図、(b)は(a)の縦軸の範囲を拡大した図である。
【図28】 (a)は従来の4キャビティの多層膜フィルタの透過率特性を示す説明図、(b)は(a)の縦軸の範囲を拡大した図である。
【図29】 (a)は従来の5キャビティの多層膜フィルタの透過率特性を示す説明図、(b)は(a)の縦軸の範囲を拡大した図である。
【図30】 従来の光学多層膜フィルタにおけるキャビティ数に対するフィルタ透過幅/クロストーク幅およびリップル強度の関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1…基板、2…第1の光学媒質層、3…第2の光学媒質層、4…キャビティ層、4a…第1のキャビティ層、4b…第2のキャビティ層、4c…第3のキャビティ層、4d…第4のキャビティ層、4e…第5のキャビティ層、5…第3の光学媒質層、6…基板ホルダ、7…ターゲット、8…ECR領域、9…磁気コイル、10…高周波電力、11…石英窓、12…光学媒質層、13…第1の光学媒質層、14…第2の光学媒質層、15…第3の光学媒質層、16…第k−1の光学媒質層、17…第kの光学媒質層。
Claims (1)
- 第1の光学媒質からなる複数の第1の光学媒質層と、第1の光学媒質層より高い屈折率を有する第2の光学媒質からなる複数の第2の光学媒質層とを交互に積層した複数の積層体を、前記第1の光学媒質層または前記第2の光学媒質層からなるキャビティ層を介して接続したマルチキャビティ構成を有する光学多層膜フィルタにおいて、
前記キャビティ層の間の前記第1の光学媒質層のうち少なくとも1層を、前記第1の光学媒質よりも低い屈折率を有する第3の光学媒質からなる第3の光学媒質層により形成したものであり、
前記第1の光学媒質層と、前記第2の光学媒質層と、前記第3の光学媒質層とは、これらの光学膜厚がそれぞれ、バンドパスフィルタとしての設計波長λに対して、λ/4となる膜厚を有し、
前記キャビティ層は、この前記キャビティ層の光学膜厚が、バンドパスフィルタとしての設計波長λに対して、λ/2の整数倍となる膜厚を有する
ことを特徴とする光学多層膜フィルタ。
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