この発明は、例えば携帯電話機やPDA等の携帯端末の第1筐体と第2筐体とを重ね合わせた状態で回転可能に接続するようなヒンジ機構、および携帯端末に関する。
従来、携帯端末の1つである携帯電話機として、表示手段の設けられたカバー筐体と、入力キーが設けられた本体筐体とが折りたたみ開閉可能に接続されている所謂クラムシェルタイプの携帯電話機が提供されている。
このような携帯電話機は、通話機能だけでなく、インターネット機能やメール機能が付加されており、最近ではテレビ放送の電波を受信してテレビ放送を視聴することができるテレビ機能の付加されたタイプも提供されている。
携帯電話機の表示手段は、通常縦長の画面で構成されているが、テレビ放送を視聴する場合には横長の画面が好ましい。このため、携帯電話機としての従来の使いやすさと、テレビ方法の視聴しやすさの両方を確保するためには、表示手段を90度回転可能に構成することが好ましいこととなる。
このように表示手段を90度回転できるものとして、液晶表示部を縦長と横長とに切り替えることのできる折畳み式携帯電話が提案されている(特許文献1参照)。
この折畳み式携帯電話は、第1の筐体3により液晶表示部2を90度回転可能に支持しており、その回転を、第1の筐体3に設けられた左右方向ガイド溝12および上下方向ガイド溝14により、液晶表示部2に設けられた第1ガイドピン13および第2ガイドピン15の移動を規制することによって実現している。
この折畳み式携帯電話には、液晶表示部2が第1の筐体3に対して0°および90°の状態にあるときに安定しやすい構造となっている。この安定しやすい構造は、ヘの字型に湾曲している左右方向ガイド溝12の中央下部にねじりコイルバネ20の一端が接続され、該ねじりコイルバネ20の他端が第1ガイドピン13に接続されていることにより実現されている。つまり、ねじりコイルバネ20により、左右方向ガイド溝12を通る第1ガイドピン13に対して左右方向ガイド溝12の両端に付勢されるような力をかけ、これによって0°および90°の状態での安定を確保している、
しかし、この構造では、ねじりコイルバネ20の弾性特性を充分確保する為にコイル巻数が増えてねじりコイルバネ20の厚みが増加してしまうことになる。しかも、ねじりコイルバネ20は、一端がバネ固定ピン19に軸支され、このバネ固定ピン19を中心に回転移動するため、この回転移動を可能にするための空間を設ける必要が生じる。
このため、ねじりコイルバネ20用の広い空間が必要となり、小型化や薄型化の実現が困難になる。また、ねじりコイルバネ20を小さくすると、弾性特性が十分に確保できなくなって左右方向ガイド溝12の両端へ押付ける力が弱くなる。このため、筐体の0°および90°状態での安定感が不足したり、筐体の繰返し回転動作による耐久性が不足するという問題も発生する。
また、単にねじりコイルバネ20によって常時付勢しているに過ぎないため、例えば回転角度に応じて付勢力のかかり具合を変化させ、利用者の感じる微妙な回転感触を良好にするといった繊細な調整もできない構造である。
さらに、液晶表示部2を摺動可能に固定するガイドプレート16には、第1ガイドピン13と第2ガイドピン15をガイドするための左右方向ガイド溝12と上下方向ガイド溝14とが開口されているために、これらの開口部分でのプレート強度が低下し、強い開操作力を受けた場合や過大な開方向の外力を一瞬でも受けた場合に、その外力はガイドピン13,15を通してガイドプレート16に伝わり、該ガイドプレート16の開口部分に負荷が集中してガイド溝12,14が変形してしまい、破損の原因になる問題を有していた。
具体的には、折畳み式携帯電話が小型化や薄型化されることに伴い、その内蔵部品であるガイドプレート16も小型化(省面積化)および薄型化されることになる。このような条件で製作されるガイドプレート16は、ことに細長く開口するガイド溝12の両端部と、ガイド溝12,14により切り欠かれた開口部分とが強度不足となり、これらのプレート強度が極端に低下することになる。
そして、液晶表示部2を開ききった状態から、さらに開く方向に力が加わった場合、もしくは液晶表示部2を開いた状態で90度回転後に開または閉方向に力が加わった場合に、強度が不足しているガイド溝12,14の部分に負荷が集中して変形するおそれがある。
このようなことからガイドプレート16に補強部材を備えることも考えられるが、この場合は限られた内部スペースに新たな補強部材を効率よく加えることが難しく、また補強部材の増設によりコスト高となってしまう。
この発明は、上述の問題に鑑み、無駄な空間を極力排除して小型コンパクトなヒンジ機構を提供し、利用者の満足度を向上させることを目的とする。
この発明は、携帯端末を構成する本体側筐体と回転側筐体との互いの重ね合わせ対向面にそれぞれ固定される本体側ユニットと回転側ユニットとで構成され、前記本体側筐体と前記回転側筐体を重ね合わせた状態のまま回転可能に接続するヒンジ機構であって、前記本体側ユニットおよび回転側ユニットのいずれか一方のユニットに、前記回転の際にスライド移動する第1スライド体と第2スライド体とを固定して備え、他方のユニットに、前記第1スライド体と第2スライド体とを前記回転の回転面上でそれぞれ異なる方向へスライド許容する第1スライドガイドおよび第2スライドガイドと、前記第1スライド体と第2スライド体のうち少なくとも一方のスライド体に当接するカムと、該カムを前記一方のスライド体へ向けて付勢する付勢手段とを備え、該付勢手段は該カムを介して、前記回転面上で前記一方のスライド体を該一方のスライド体のスライド移動方向と交差する方向へ付勢する構成とし、前記カムにおける前記一方のスライド体との当接辺の形状を、前記一方のスライド体のスライド移動の軌跡に対して少なくとも一部が傾斜のある線形状に形成したヒンジ機構であることを特徴とする。
前記第1スライドガイドおよび前記第2スライドガイドは、直線移動または曲線移動のガイドとなるガイド溝またはレール等で構成することができる。この第1スライドガイドおよび第2スライドガイドは、いずれも直線状に形成する、いずれも曲線状に形成する、あるいは一方を直線状で他方を曲線状に形成することができる。
前記第1スライド体および第2スライド体は、ガイド溝に沿ってスライド移動する突起またはガイド軸、あるいは、レールに沿ってスライド移動するコ字型突起などのレール係合部で構成することができる。
この発明により、無駄な空間を極力排除して小型コンパクトなヒンジ機構を提供し、利用者の満足度を向上させることができる。
ここで、前記当接辺における一方のスライド体のスライド移動の軌跡に対して少なくとも一部が傾斜のある線形状は、上記軌跡に対して平行でない直線形状または上記軌跡に対して平行でない曲線形状に形成することができる。
この態様により、傾斜のある線形状部分で前記一方のスライド体をスライドガイドの任意の方向へ移動させるべく付勢することができる。
この発明の態様として、前記カムにおける前記一方のスライド体との当接辺を、前記一方のスライド体のスライド移動幅と同程度かそれより短い幅に形成することができる。
またこの発明の態様として、前記一方のスライド体を前記第1スライド体とし、前記第1スライドガイドを、前記第2スライド体が前記第2スライドガイドを一端側から他端側の方向へスライド移動する間に、前記第1スライド体が該第1スライドガイドの一端側から他端側の方向へスライド移動した後に折り返して該一端側の方向へ戻り移動するように配置し、前記カムの当接辺が前記第1スライドガイドの前記一端側よりも前記他端側に近接する傾斜形状に該カムの当接辺を形成することができる。
前記第1スライド体が該第1スライドガイドの一端側から他端側の方向へスライド移動した後に折り返して該一端側の方向へ戻り移動する構成は、一端側の端部から他端側へ移動して再度一端側の端部に戻る構成、または一端側と他端側の間の位置から他端側へ移動してから戻り移動して一端側の端部まで移動する構成など、開始位置と終了位置が同じタイプや違うタイプに構成することができる。
これにより、回転の途中までは戻り方向に付勢し、途中からは全回転方向へ付勢することを容易に実現できる。特に、往復するスライド体を付勢することで、カムの大きさを小さくすることができる。
またこの発明の態様として、前記一方のスライド体を前記第2スライド体とし、前記第1スライドガイドを、前記第2スライド体が前記第2スライドガイドを一端側から他端側の方向へスライド移動する間に前記第1スライド体が該第1スライドガイドの一端側から他端側の方向へスライド移動した後に折り返して該一端側の方向へ戻り移動するように配置し、前記カムの当接辺を、両端よりも中央付近が前記第2スライドガイドに近接する傾斜形状に形成することができる。
これにより、回転の途中までは戻り方向に付勢し、途中からは全回転方向へ付勢することを容易に実現できる。特に片道移動のスライド体を付勢することで、回転途中の付勢力のかかり具合をカムの当接辺の形状(若しくはスライド体の形状)によって任意に調整することができる。
またこの発明の態様として、前記カムの当接辺に、前記一方のスライド体をスライド移動の途中位置で安定させる係止部を形成することができる。
これにより、本体側ユニットと回転側ユニットとを回転途中で係止させることができる。
またこの発明は、携帯端末を構成する本体側筐体と回転側筐体との互いの重ね合わせ対向面にそれぞれ固定される本体側ユニットと回転側ユニットとで構成され、前記本体側筐体と前記回転側筐体を重ね合わせた状態のまま回転可能に接続するヒンジ機構であって、前記本体側ユニットおよび回転側ユニットのいずれか一方のユニットに、前記回転の際にスライド移動する第1スライド体と第2スライド体とを固定して備え、他方のユニットに、前記第1スライド体と第2スライド体とを前記回転の回転面上でそれぞれ異なる方向へスライド許容する第1スライドガイドおよび第2スライドガイドを有する固定ガイド板と、前記固定ガイド板に平面対接され、前記第1スライド体と第2スライド体のうち少なくとも一方のスライド体に当接するカム面を有する可動ガイド板と、前記可動ガイド板を前記一方のスライド体に当接する方向へ向けて付勢する付勢手段と、前記固定ガイド板と前記可動ガイド板が変形しないように両ガイド板の前記平面対接状態を維持する複数の変形阻止手段とを備えて構成することができる。
前記変形阻止手段は、固定ガイド板と可動ガイド板との両ガイド板が外力を受けても平面対接状態を維持する2枚重ねの状態を維持する構成であればよく、例えば両ガイド板が離間しないように平面対接させる維持手段を重ね合わせられた両ガイド板の平面上に複数分散配置すれば構成できる。また、変形阻止手段を複数備えることで、両ガイド板の平面対接状態を均一に維持する。
これにより、固定ガイド板と可動ガイド板との2枚のガイド板は重なって1枚の厚板の如く維持される。このため、両ガイド板は強度が高まり、補強されるので両ガイド板に強い外力が加わっても、その外力による変形を阻止できる。
またこの発明の態様として、前記可動ガイド板を、前記第1スライドガイドおよび第2スライドガイドの少なくとも一方の周囲を覆って対接する形状に形成し、前記変形阻止手段を、前記第1スライドガイドおよび第2スライドガイドの少なくとも一方を挟んで両側に配置され、前記固定ガイド板と前記可動ガイド板とをスライド許容して連結するスライド連結部で形成することができる。
前記スライド連結部は変形阻止手段として備えられ、両ガイド板間をスライド許容して連結するので可動ガイド板のスライド動作には支障がなく、スライド許容した状態でスライドガイド部分の変形阻止状態を維持する。
これにより、可動ガイド板がスライドガイド部分を覆うように平面対接して確実に補強することになる。また、スライド連結部がスライドガイド部分をまたいで支持するため、該スライド連結部がスライドガイド部分を確実に補強することになる。
またこの発明の態様として、前記可動ガイド板に、前記第1スライド体と第2スライド体をそれぞれ異なる方向にスライドガイドする前記カム面を備えたスライド孔を設け、前記変形阻止手段は、前記第1スライド体と第2スライド体に、前記スライド孔に抜止め係合するスライド係合部を有する構成とすることができる。
前記スライド孔は、スライド体のスライド移動の軌跡に沿って開口され、該スライド孔にスライド体のスライド係合部を例えば貫通させて係合させればよいので安定確実にスライド許容して係合される。
これにより、回転側ユニットの回転に伴いスライド体がスライドする際は、可動ガイド板のスライド孔にスライド体のスライド係合部が係合状態を保ったままスライドガイドされる。よって、スライド体は可動ガイド板に連結された状態を保ったまま可動ガイド板の板面に沿ってガイドされる。
またこの発明の態様として、前記スライド孔には、前記スライド係合部を可動ガイド板の板面より沈み込ませて係合する段付き係合溝を備えて構成することができる。
これにより、スライド孔に係合されたスライド係合部は段付き係合溝の位置で沈み込み、可動ガイド板の板面より突出しなくなり、可動ガイド板の厚さ方向を短縮してヒンジ機構の薄型化を促進することができる。
またこの発明の態様として、前記変形阻止手段は、前記固定ガイド板に平面対接される可動ガイド板の対接面側に、前記第1スライド体と第2スライド体の少なくとも一方を貫通させないでスライドガイドするスライド溝を設け、前記第1スライド体と第2スライド体の少なくとも一方に前記スライド溝に係合するスライド係合部を形成し、該スライド係合部を前記スライド溝に係合させてスライドガイドする構成とすることができる。
前記スライド溝は、可動ガイド板の対接面側である片面に、所望のスライド形状とスライド長さを有して、例えば断面凹型状などに切り欠いて設けることができる。また、スライド係合部は、抜け止めできる断面T字型状や断面L字型状のような係合段部にして設ければよい。この場合は、スライド体が固定ガイド板のみを貫通して可動ガイド板に至った状態にあり、可動ガイド板のスライド溝の溝幅よりも固定ガイド板の片道ガイド溝の溝幅を小さくすれば、該片道ガイド溝がスライド係合部の係合段部を係止して、両ガイド板の対接面間での溝幅差によって抜け止めできる。
この場合も、回転側ユニットの回転に伴いスライド体がスライドする際は、可動ガイド板のスライド溝にスライド体のスライド係合部が係合状態を保ったままスライドガイドされる。よって、スライド体は可動ガイド板に連結された状態を保ったまま可動ガイド板の板面に沿ってガイドされる。
ことに、両ガイド板の平面対接状態を維持するスライド係合部の突出長さは、両ガイド板を重ね合わせた厚さより短くなるため薄型化を促進できる。よって、ヒンジ機構を構築した場合にカム部材を兼ねた可動ガイド板を固定ガイド板に平面対接させるだけで補強できるためヒンジ機構の小型化や薄型化および低コスト化を図りながら補強できることになる。
またこの発明は、前記ヒンジ機構を備え、前記本体側ユニットと前記回転側ユニットの一方に画像を表示する表示手段を備え、他方に入力操作を許容する入力手段を備えた携帯端末とすることができる。
前記携帯端末は、携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistants)など、携帯型の端末で構成することができる。
前記他方に備える入力手段は、本体側ユニットまたは回転側ユニットに一体的に備える、あるいは、本体側ユニットまたは回転側ユニットに対して開閉可能(例えば折りたたみ開閉可能)に連結されたユニットに備えることができる。
この発明により、表示手段のある回転側ユニットを2軸で回転させる携帯端末を提供できる。特に、回転側ユニットが長方形で90度回転を行う場合に、0度の角度と90度の角度のいずれの角度であっても回転側ユニットを本体側ユニットに近接させることができ、いずれの角度であっても外観が美しい携帯端末を提供できる。
この発明により、無駄な空間を極力排除して小型コンパクトなヒンジ機構を提供し、利用者の満足度を向上させることができる。
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は携帯電話機1を正面側から見た分解斜視図であり、図2は携帯電話機1を背面側から見た分解斜視図であり、図3はヒンジ装置3を正面側から見た斜視図であり、図4はヒンジ装置3を背面側から見た斜視図である。
携帯電話機1は、表示側筐体2と、支持側筐体4とが、ヒンジ装置3によって回転可能に取り付けられて構成されている。
表示側筐体2は、正面側に液晶表示部6が設けられており、支持側筐体4と重ね合わせられる背面側にヒンジ装置3の表示側固定部材10が固定される。
支持側筐体4は、表示側筐体2と重ね合わせられる正面側に凹部7が形成されており、この凹部7にヒンジ装置3の支持側部材20が嵌め込まれて固定される。また、支持側筐体4の下端には枢着部8が設けられている。この枢着部8は、例えば入力キーが配置された入力側筐体(図示省略)が折りたたみ開閉可能に枢着される部分である。この入力側筐体は、表示側筐体2と同程度の大きさに構成し、枢着部8で折りたたむと入力側筐体と表示側筐体2が重なり合う構成となるが、その詳細については説明を省略する。
ヒンジ装置3は、大きく分けて表示側ユニット3aと支持側ユニット3bとで構成される。表示側ユニット3aは、表示側固定部材10により構成される。支持側ユニット3bは、支持側部材20、スライドカム40、コイルバネ49、およびカムカバー50により構成されている。
表示側ユニット3aを構成する表示側固定部材10は、全体が長板状に形成されて背面側に2つのスライド突起11,12が設けられている。このスライド突起11,12は、表示側固定部材10の長手方向に一定距離だけ離間して配置されており、いずれも基部側の円筒形胴部より先端側の円筒形傘部が半径大となるキノコ状に形成されている。また、スライド突起11,12の円筒形胴部および円筒形傘部は、いずれも真円形に形成されており、スライドカム40で付勢されるスライド突起11の方がスライド突起12より半径大に形成されている。これにより、スライド突起11がスライドカム40のカムライン43上を円滑に移動できるようにしている。
支持側ユニット3bを構成する支持側部材20は、正面視略正方形の板状に形成されている。この支持側部材20の上半分の左右略中央に、上下方向に長い直線型の往復ガイド溝21が形成されており、下半分ほぼ全体に上方が凸となる円弧状の片道ガイド溝22が形成されている。この往復ガイド溝21と片道ガイド溝22は、往復ガイド溝21の下端が片道ガイド溝22の中央付近に近接するように、略逆T字(若しくは逆Y字)となるように配置されている。
往復ガイド溝21は、下端から上端まで幅が均等で、挿通されたスライド突起11が安定して上下に一直線にスライド移動できるように構成されている。
片道ガイド溝22は、左端から右端まで幅が均等で、挿通されたスライド突起12が安定して左右に円弧を描いてスライド移動できるように構成されている。
この往復ガイド溝21と片道ガイド溝22にそれぞれ挿通されるスライド突起11,12は、いずれも先端側の円筒形傘部が往復ガイド溝21や片道ガイド溝22の溝幅より大きく、これによって抜け落ちないように抜け止めされている。
支持側部材20の片面(この実施形態では背面側)には、往復ガイド溝21の位置に重ねてスライドカム40がスライド移動するためのステージ23(図2参照)が設けられている。このステージ23は、支持側部材20の片面側を肉薄にした凹部である。これにより、ステージ23上をスライドカム40が往復ガイド溝21に対して近づく方向と離れる方向へ安定して一直線にスライド移動する。
支持側部材20におけるステージ23の左右一方(この実施形態では左側)には、コイルバネ49が収納される孔部24が形成されており、この孔部24の外側辺(往復ガイド溝21から遠い側の辺)には、コイルバネ49を装着するバネ装着突起25,25が上下に配設されている。これにより、バネ装着突起25に装着されたコイルバネ49は、孔部24を伸縮空間として自由に伸縮できる。
スライドカム40は、背面視略E字型の板状に形成されており、ステージ23内でスライド移動できるようにステージ23の幅より小さく形成されている。このスライドカム40の左右外側(往復ガイド溝21から遠い側)には、上述したE字型をなす2つの凹部41が形成されており、該凹部41内に前記コイルバネ49がそれぞれ配置される。これにより、スライドカム40は、コイルバネ49の付勢力を得て、往復ガイド溝21におけるスライド突起11のスライド方向に対して交差する方向へ付勢される。この付勢の方向は、スライド突起11のスライド方向に対して直角の方向か、直角よりも往復ガイド溝21の下端21b側へ向かって斜行する方向となるように構成されていればよく、この実施形態では後者の方向となるように構成されている。
また、スライドカム40には、往復ガイド溝21側にカムライン43が形成されている。このカムライン43は、往復ガイド溝21と同程度の長さを有しており、往復ガイド溝21におけるスライド突起11のスライド方向に対して少し交差する直線形のラインに形成されている。さらに言えば、カムライン43は、スライドカム40が往復ガイド溝21へ向かってスライド移動すると、片道ガイド溝22より遠い上端部43aが下端部43cよりも先に往復ガイド溝21に重なるように配置されている。
スライドカム40を覆うカムカバー50は、前記ステージ23の逆側からスライドカム40を覆うように支持側部材20の背面側に設けられている。このカムカバー50とステージ23の間にスライドカム40が収納されることにより、スライドカム40が抜け落ちることなく安定してスライド移動できる。
図5は回転角度が0度で停止している状態の携帯電話機1の背面図であり、図6は回転角度が45度まで回転している回転途中状態の携帯電話機1の背面図であり、図7は回転角度が90度で停止している状態の携帯電話機1の背面図である。
図5に示すように、0度の状態では、スライド突起11は往復ガイド溝21の下端21bに位置し、スライド突起12は片道ガイド溝22の一端22aに位置している。このとき、スライドカム40に付勢されているスライド突起11は、カムライン43の下端部43cに当接している。従って、スライドカム40によってスライド突起11が往復ガイド溝21の下端21b側に向かって付勢されており、0度の角度で安定して停止している。
図6に示すように、利用者によって支持側筐体4に対して表示側筐体2が回転させられると、スライド突起11は往復ガイド溝21の上端21aへ向かって移動し、スライド突起12は片道ガイド溝22の他端22bへ向かって移動する。この移動の間、スライド突起11はカムライン43の中間部43bに当接する。このため、移動中は常にスライドカム40によって下端21b側へ付勢されることになり、0度に戻ろうとする力が働くことになる。
図示する45度の角度まで回転させられると、スライド突起11は往復ガイド溝21の上端21aに位置し、スライド突起12は片道ガイド溝22の中央付近に位置する。このとき、スライドカム40に付勢されているスライド突起11は、カムライン43の上端部43aに当接している。
図7に示すように、さらに回転されると、スライド突起11は往復ガイド溝21の下端21bへ向かって戻るように移動し、スライド突起12は片道ガイド溝22の他端22bへ向かって移動する。この移動の間、スライド突起11はカムライン43の中間部43bに当接する。このため、移動中は常にスライドカム40によって下端21b側へ付勢されることになり、90度に移行しようとする力が働いて、これ以降は自動的に回転することになる。
図示する90度の角度まで回転すると、スライド突起11は往復ガイド溝21の下端21bに位置し、スライド突起12は片道ガイド溝22の他端22bに位置する。このとき、スライドカム40に付勢されているスライド突起11は、カムライン43の下端部43cに当接している。
このようにして、0度から45度までは戻ろうとする力が働き、45度を超えるとコイルバネ49の付勢力とスライドカム40の働きによって90度まで自動回転するセミオート回転が実現される。
90度から0度に戻す場合には、上述の動作と全く逆の動作となる。このため、45度までは90度に戻ろうとする力が働き、45度を超えるとコイルバネ49の付勢力とスライドカム40の働きによって0度まで自動で回転するセミオート回転が実現される。
以上の構成および動作により、途中まで回転させればその後は自動で回転するセミオート回転のヒンジ装置3を提供することができる。この回転は、スライド突起11,12を用いた2軸の回転であるため、長方形の表示側筐体2が0度と90度のいずれの状態であっても、下辺が支持側筐体4における枢着部8近傍に位置し、かつ左右対称の長さとすることができる。
利用者は、携帯電話機能を使用するときは0度で、テレビ放送を視聴することは90度で利用するといったことができ、利用者の満足度を向上させることができる。
コイルバネ49は、その場で伸縮するだけで良いため、従来のようにコイルバネ49そのものが回転等するための空間を設ける必要がなく、ヒンジ装置3を小型コンパクトに形成することができる。
スライド突起11を付勢するスライドカム40は、スライド突起11と当接するカムライン43の長さがスライド突起11のスライド移動する往復ガイド溝21の長さと同程度に形成されているため、回転の最初から最後までスライド突起11に常に当接することができる。
また、スライドカム40のスライド方向は、往復ガイド溝21におけるスライド突起11のスライド方向と交差する方向に構成されているため、全体をコンパクトに形成できる。つまり、往復ガイド溝21におけるスライド突起11を下端21bへ向けて付勢するためには、往復ガイド溝21の上端21aから下端21bへ向けて付勢するカムを往復ガイド溝21の上方に設けることもできるが、この配置だと全体が上下方向に長くなる。この実施形態では、スライドカム40のカムライン43を往復ガイド溝21に対して交差するように傾斜させ、このスライドカム40を往復ガイド溝21へ向けて付勢することで、スライド突起11を下端21bへ向けて付勢する作用をコンパクトに実現している。
また、90度の回転中に片道のスライド移動しかしないスライド突起12ではなく、90度の回転中に往復のスライド移動をするスライド突起11をスライドカム40で付勢する構成としたため、スライド突起12を付勢するよりもカムライン43を短く構成でき、スライドカム40の大きさを小さくすることができる。
また、カムライン43がスライド突起11に当接してスライド突起11を付勢するため、カムライン43(またはスライド突起11)の形状を変更するだけで、回転途中での付勢の強度を自由に設定でき、また後述の実施例2,3に示すように0度と90度以外の角度で停止する角度を設定できる。
図8は実施例2のスライドカム140の斜視図であり、図9は実施例2の携帯電話機1が45度で停止した状態の斜視図である。
スライドカム140は、カムライン143における上端を凹状の上端凹部143aに形成し、この上端凹部143aにスライド突起11が当接すると回転停止するように構成されている。
0度から90度までの回転では、実施例1と同様に、スライド突起11がカムライン143の下端部143cから中間部143bを通って上端凹部143aまで移動し、折り返して中間部143bを通って下端部143cまで移動する。またこれと逆の90度から0度の動作も、実施例1と同様である。中間部143bは、一直線ではなく一部に微小の凹部を有する折曲がり形状に形成されている。
その他の構成および動作は、実施例1と同一であるので、同一要素に同一符号を付して詳細な説明を省略する。
以上の構成および動作により、実施例1と同一の効果を奏することができる。また、実施例1では回転停止する角度が0度と90度であったが、実施例2では45度でも回転停止することができる。従って、例えば横向きに寝ている状態の利用者が、支持側筐体4かその下方の入力側筐体を45度傾けて保持し、表示側筐体2を45度回転させると、調度良い角度でくつろいで液晶表示部6を見ることができる。このように、多数の角度で停止できるように構成すると、利用者の種々の利用態様に適合させることができ、利用者の満足度をより向上させることができる。
図10は実施例3のスライドカム240の斜視図であり、図11は実施例3の携帯電話機1が28度で停止した状態の斜視図であり、図12は実施例3の携帯電話機1が65度で停止した状態の斜視図である。
スライドカム240は、カムライン243における上端部243aの少し下方に回転係止凹部243dを形成し、この回転係止凹部243dにスライド突起11が当接すると回転停止するように構成されている。
0度から90度までの回転では、実施例1と同様に、スライド突起11がカムライン243の下端部243cから中間部243bを通って回転係止凹部243dまで移動し、この回転係止凹部243dで一旦停止し、図11に示すように約28度の回転停止状態となる。さらに回転させるとスライド突起11が上端凹部143aまで移動し、折り返して回転係止凹部243dで再度停止して、図12に示すように約65度の回転停止状態となる。さらに回転させるとコイルバネ49の付勢力によって自動的に回転し、中間部243bを通って下端部243cまで移動する。また、90度から0度の動作は、これと全く逆の動作となる。
その他の構成および動作は、実施例1と同一であるので、同一要素に同一符号を付して詳細な説明を省略する。
以上の構成および動作により、実施例1および実施例2と同一の効果を奏することができる。また、実施例1では回転停止する角度が0度と90度であり、実施例2では回転停止する角度が0度と45度と90度であったが、実施例3では0度と28度と65度と90度で回転停止することができる。1つの回転係止凹部243dの追加で回転停止する角度を2つ増加させることができ、多様な回転停止状態を効率よく作成することができる。
図13は携帯電話機301を正面側から見た分解斜視図であり、図14は携帯電話機301を背面側から見た分解斜視図であり、図15は0度状態のヒンジ装置303を正面側から見た斜視図であり、図16は0度状態のヒンジ装置303を背面側から見た斜視図であり、図17は45度回転状態のヒンジ装置303を正面側から見た斜視図であり、図18は45度回転状態のヒンジ装置303を背面側から見た斜視図である。
携帯電話機301は、表示側筐体302と、支持側筐体304とが、ヒンジ装置303によって回転可能に取り付けられて構成されている。
表示側筐体302は、正面側に液晶表示部306が設けられており、支持側筐体304と重ね合わせられる背面側にヒンジ装置303の表示側固定部材310が固定される。
支持側筐体304は、表示側筐体302と重ね合わせられる正面側に凹部307が形成されており、この凹部307にヒンジ装置303の支持側部材320が嵌め込まれて固定される。また、支持側筐体304の下端には枢着部308が設けられている。この枢着部308は、例えば入力キーが配置された入力側筐体(図示省略)が折りたたみ開閉可能に枢着される部分である。この入力側筐体は、表示側筐体302と同程度の大きさに構成し、枢着部308で折りたたむと入力側筐体と表示側筐体302が重なり合う構成となるが、その詳細については説明を省略する。
ヒンジ装置303は、大きく分けて表示側ユニット303aと支持側ユニット303bとで構成される。表示側ユニット303aは、表示側固定部材310により構成される。支持側ユニット303bは、支持側部材320、スライドカム340、コイルバネ349、およびリベット351により構成されている。
表示側ユニット303aを構成する表示側固定部材310は、全体が長板状に形成されて背面側に2つのスライド突起311,312が設けられている。このスライド突起311,312は、表示側固定部材310の長手方向に一定距離だけ離間して配置されており、いずれも基部側の円筒形胴部より先端側の円筒形傘部が半径大となるキノコ状に形成されている。また、スライド突起311,312の円筒形胴部および円筒形傘部は、いずれも真円形に形成されており、スライドカム340で付勢されるスライド突起312の方がスライド突起311より半径大に形成されている。これにより、スライド突起312がスライドカム340のカムライン343上を円滑に移動できるようにしている。
支持側ユニット303bを構成する支持側部材320は、正面視略正方形の板状に形成されている。この支持側部材320の上半分の左右略中央に、上下方向に長い直線型の往復ガイド溝321が形成されており、下半分ほぼ全体に上方が凸となる円弧状の片道ガイド溝322が形成されている。この往復ガイド溝321と片道ガイド溝322は、往復ガイド溝321の下端が片道ガイド溝322の中央付近に近接するように、略逆T字(若しくは逆Y字)となるように配置されている。
往復ガイド溝321は、下端から上端まで幅が均等で、挿通されたスライド突起311が安定して上下に一直線にスライド移動できるように構成されている。
片道ガイド溝322は、左端から右端まで幅が均等で、挿通されたスライド突起312が安定して左右に円弧を描いてスライド移動できるように構成されている。
この往復ガイド溝321と片道ガイド溝322にそれぞれ挿通されるスライド突起311,312は、いずれも先端側の円筒形傘部が往復ガイド溝321や片道ガイド溝322の溝幅より大きく、これによって抜け落ちないように抜け止めされている。
支持側部材320における往復ガイド溝321の左右には、リベット351を装着するリベット装着孔327がそれぞれ配設されている。
支持側部材320における上辺の左右両端部には、背面側へ突出してそこからさらに下方へ突出するバネ装着突起325が左右対称に設けられている。このバネ装着突起325には、上下方向に伸縮するコイルバネ349の上端が装着される。
スライドカム340は、全体が略板状の部材であり、左右両端に、上方へ突出するバネ装着突起341が左右対称に設けられている。このバネ装着突起341には、上下に伸縮するコイルバネ349の下端が装着される。
スライドカム340の上辺中央には、V字型の退避凹部344が形成されている。この退避凹部344は、スライドカム340が上下方向にスライド移動しても、往復ガイド溝321から背面側へ突出するスライド突起311とスライドカム340が接触しないようにするためのものである。
退避凹部344の左右両側には、上下に長いガイド溝342,342が互いに平行に形成されている。このガイド溝342には、背面側からキノコ状のリベット351が挿通され、該リベット351の先端が支持側部材320のリベット装着孔327に固定される。これにより、スライドカム340は、片道ガイド溝322のスライド方向と交差する方向である上下方向へ安定してスライド移動できる。
また、スライドカム340の下辺(片道ガイド溝322側)には、カムライン343が形成されている。このカムライン343は、片道ガイド溝322と同程度の長さを有しており、片道ガイド溝322におけるスライド突起312のスライド方向の湾曲度合いよりもゆるやかな湾曲のラインに形成されている。従って、スライドカム340がコイルバネ349によって下方に付勢されて片道ガイド溝322と重なるとき、山形湾曲の頂点となる中央部343gが最初に重なり、それから両端(一端部343f,他端部343h)へ向かって序所に重なるように配置されている。これにより、スライドカム340のカムライン343は、片道ガイド溝322でスライド移動するスライド突起312を、片道ガイド溝322の中央から側方端へ向かって付勢する。
図19は回転角度が0度で停止している状態の携帯電話機301の背面図であり、図20は回転角度が40度まで回転している回転途中状態の携帯電話機301の背面図であり、図21は回転角度が60度まで回転している回転途中状態の携帯電話機301の背面図であり、図22は回転角度が90度で停止している状態の携帯電話機301の背面図である。
図19に示すように、0度の状態では、スライド突起311は往復ガイド溝321の下端321bに位置し、スライド突起312は片道ガイド溝322の一端322aに位置している。このとき、スライドカム340に付勢されているスライド突起312は、カムライン343の一端部343fに当接している。従って、スライドカム340によってスライド突起312が片道ガイド溝322の一端部343f側に向かって付勢されており、0度の角度で安定して停止している。
図20に示すように、利用者によって支持側筐体304に対して表示側筐体302が回転させられると、スライド突起311は往復ガイド溝321の上端321aへ向かって移動し、スライド突起312は片道ガイド溝322の他端322bへ向かって移動する。この移動の間、スライド突起312はカムライン343の一端部343fと中央部343gの間に当接する。このため、移動中は常にスライドカム340によって一端部343f側へ付勢されることになり、0度に戻ろうとする力が働くことになる。
図示する40度の角度まで回転させられると、スライド突起311は往復ガイド溝321の上端321aに位置し、スライド突起312は片道ガイド溝322の中央付近に位置する。このとき、スライドカム340に付勢されているスライド突起312は、カムライン343の中央部343gより少し一端部343f側に当接している。
図21に示すように、さらに回転されると、スライド突起311は往復ガイド溝321の下端321bへ向かって戻るように移動し、スライド突起312は片道ガイド溝322の他端322bへ向かって移動する。この移動の間、スライド突起312はカムライン343に当接する。このため、移動中は常にスライドカム340によって一端部343f側または下端321b側へ付勢されることになり、0度または90度に移行しようとする力が働くことになる。
図示する60度の角度まで回転させられると、スライド突起311は往復ガイド溝321の上端321aに位置し、スライド突起312は片道ガイド溝322の中央より少し他端322b側に位置する。このとき、スライドカム340に付勢されているスライド突起312は、カムライン343の中央部343gより少し他端部343h側に当接している。
図22に示すように、さらに回転されると、スライド突起311は往復ガイド溝321の下端321bへ向かって戻るように移動し、スライド突起312は片道ガイド溝322の他端322bへ向かって移動する。この移動の間、スライド突起312はカムライン343に当接する。このため、移動中は常にスライドカム340によって下端321b側へ付勢されることになり、90度に移行しようとする力が働くことになる。
図示する90度の角度まで回転すると、スライド突起311は往復ガイド溝321の下端321bに位置し、スライド突起312は片道ガイド溝322の他端322bに位置する。このとき、スライドカム340に付勢されているスライド突起312は、カムライン343の他端部343hに当接している。
このようにして、0度から45度までは戻ろうとする力が働き、45度を超えるとコイルバネ349の付勢力とスライドカム340の働きによって90度まで自動回転するセミオート回転が実現される。
90度から0度に戻す場合には、上述の動作と全く逆の動作となる。このため、45度までは90度に戻ろうとする力が働き、45度を超えるとコイルバネ349の付勢力とスライドカム340の働きによって0度まで自動で回転するセミオート回転が実現される。
以上の構成および動作により、実施例1〜3と同一の効果を得ることができる。また、0度から90度までの回転動作において片道しかスライドしない片道ガイド溝322をスライドするスライド突起312を付勢することとしたため、スライドカム340のカムライン343の形状を変更するだけで、0度から90度までの回転動作の感触を自由に作成することができる。特に、実施例1〜3では、往復ガイド溝321でスライドするスライド突起111を付勢したため、スライド突起111の行きと帰りにて同一の操作感しか作り出せなかったが、片道ガイド溝322でスライドするスライド突起112をカムライン343で付勢するため、カムライン343の形状を自由に設計することで0度から90度まで自由な操作感を作り出すことができる。
次に、ヒンジ装置503を補強する変形阻止機能を有する構成例について説明する。
図23は携帯電話機501を正面側から見た分解斜視図であり、図24は携帯電話機501を背面側から見た分解斜視図であり、図25は0度状態のヒンジ装置503を正面側から見た斜視図であり、図26は0度状態のヒンジ装置503を背面側から見た斜視図である。
携帯電話機501は、表示側筐体502と、支持側筐体504とが、ヒンジ装置503によって回転可能に取り付けられて構成されている。
表示側筐体502は、正面側に液晶表示部506が設けられており、支持側筐体504と重ね合わせられる背面側にヒンジ装置503の表示側固定部材510が固定される。
支持側筐体504は、表示側筐体502と重ね合わせられる正面側に凹部507が形成されており、この凹部507にヒンジ装置503の支持側部材としての固定ガイド板520が嵌め込まれて固定される。この凹部507の周囲には、一側縁部と下縁部に、固定ガイド板520を確実に固定する縁部溝507aとビス止め孔507bとを有している。また、支持側筐体504の下端には枢着部508が設けられている。この枢着部508は、例えば入力キーが配置された入力側筐体(図示省略)が折りたたみ開閉可能に枢着される部分である。この入力側筐体は、表示側筐体502と同程度の大きさに構成し、枢着部508で折りたたむと入力側筐体と表示側筐体502が重なり合う構成となるが、その詳細については説明を省略する。
ヒンジ装置503は、大きく分けて表示側ユニット503aと支持側ユニット503bとで構成される。表示側ユニット503aは、表示側固定部材510により構成される。支持側ユニット503bは、固定ガイド板520、可動ガイド板540、コイルバネ549、およびリベット551により構成されている。
表示側ユニット503aを構成する表示側固定部材510は、全体が長板状に形成されて背面側に上スライド突起511と下スライド突起512との2つのスライド突起511,512が設けられている。これらのスライド突起511,512は、表示側固定部材510の長手方向に一定距離だけ離間して配置されており、いずれも基部側の円筒形胴部より先端側の円筒形傘部が半径大となるキノコ状に形成されている。また、スライド突起511,512の円筒形胴部および円筒形傘部は、いずれも真円形に形成されており、可動ガイド板540で付勢される下スライド突起512の方が上スライド突起511より半径大に形成されている。これにより、下スライド突起512が可動ガイド板540に開口されているスライド孔545内のカムライン543上を円滑に移動できるようにしている。
支持側ユニット503bを構成する固定ガイド板520は、正面視略正方形の板状に形成されている。この固定ガイド板520の上半分の左右略中央に、上下方向に長い直線型の往復ガイド溝521が形成されており、下半分ほぼ全体に上方が凸となる円弧状の片道ガイド溝522が形成されている。この往復ガイド溝521と片道ガイド溝522は、往復ガイド溝521の下端が片道ガイド溝522の中央付近に近接するように、略逆T字(若しくは逆Y字)となるように配置されている。
往復ガイド溝521は、上端から下端近傍まで幅が均等で下端が先細りする形状に形成され、挿通された上スライド突起511が安定して上下に一直線にスライド移動できるように構成されている。
片道ガイド溝522は、左端から右端まで幅が均等で、挿通された下スライド突起512が安定して左右に円弧を描いてスライド移動できるように構成されている。
この往復ガイド溝521と片道ガイド溝522にそれぞれ挿通される上下のスライド突起511,512は、いずれも先端側の円筒形傘部が往復ガイド溝521や片道ガイド溝522の溝幅より大きく、これによって抜け落ちないように抜け止めされている。
固定ガイド板520における往復ガイド溝521の左右と、片道ガイド溝522の中央部下側には、リベット551を装着するリベット装着孔527がそれぞれ穿孔されている。また、固定ガイド板520における上辺の左右両端部には、背面側へ突出してそこからさらに下方へ突出するバネ装着突起(上バネ座)525が左右対称に設けられている。このバネ装着突起525には、上下方向に伸縮するコイルバネ549の上端が装着される。
さらに、固定ガイド板520の周囲には、一側縁部と下縁部に、前記縁部溝507aに対応し、且つビス止め孔507bとに対応する溝嵌合用の突片部523aとビス挿通孔523bとを有している。そして、固定ガイド板520を支持側筐体504に固定する際に、固定ガイド板520の突片部523aを支持側筐体504の縁部溝507aに嵌め込んだ状態で各ビス挿通孔523bに図示しないビスを挿通し、そのビスをビス止め孔507bに螺着させることで一体に固定する。
可動ガイド板540は、前記固定ガイド板520より一回り小さい正面視略正方形の板状に形成されている。この可動ガイド板540の左右両端に、上方へ突出するバネ装着突起(下バネ座)541が左右対称に設けられている。このバネ装着突起541には、上下に伸縮するコイルバネ549の下端が装着される。
可動ガイド板540の上辺中央には、V字型の退避凹部544が形成されている。この退避凹部544は、可動ガイド板540が上下方向にスライド移動しても、往復ガイド溝521から背面側へ突出する上スライド突起511と可動ガイド板540が接触しないようにするためのものである。
退避凹部544の左右両側には、該可動ガイド板540を貫通する上下に長いガイド溝542,542が互いに平行に形成されている。また、スライド孔545の中央下側にも同様に該可動ガイド板540を貫通する上下に長いガイド溝542が形成されている。これらの各ガイド溝542には、背面側からキノコ状のリベット551が挿通され、該リベット551の先端が固定ガイド板520のリベット装着孔527に固定される。これにより、可動ガイド板540は、片道ガイド溝522のスライド方向と交差する方向である上下方向へ安定してスライド移動できる。
この場合、固定ガイド板520と可動ガイド板540とは平面対接させて配置し、その平面対接状態を維持する構造にすることにより、強度が高まり互いのガイド板520,540が容易に変形しないように補強する変形阻止機能を持たせている。
この変形阻止機能は、リベット551の傘部と固定ガイド板520で可動ガイド板540を挟み込むことで実現している。特に、リベット551は、縦長の往復ガイド溝521の左右両側に配置することで、固定ガイド板520における往復ガイド溝521上下の肉細部が変形することを防止している。つまり、固定ガイド板520が往復ガイド溝521を中心に平面視へ字型に折れ曲がろうとするとき、左右のリベット551の存在により、可動ガイド板540も折り曲げなければ曲がらない。従って、可動ガイド板540の強度を付加して固定ガイド板520を補強できる。
また、横長の片道ガイド溝522の上下両側にリベット551を配置することで、固定ガイド板520における片道ガイド溝522左右の肉細部が変形することを防止している。つまり、固定ガイド板520が片道ガイド溝522を中心に平面視へ字型に折れ曲がろうとするとき、上下のリベット551の存在により、可動ガイド板540も折り曲げなければ曲がらない。従って、可動ガイド板540の強度を付加して固定ガイド板520を補強できる。
また、両ガイド板520,540の連結部分は、ガイド溝542とリベット551との間でスライド許容して連結するので可動ガイド板540のスライド動作には支障がなく、スライド許容した状態で往復ガイド溝521および片道ガイド溝522の変形阻止状態を維持する。さらに、スライド許容して連結する連結部を、両ガイド板520,540の平面上に複数分散配置することで、両ガイド板520,540の平面対接状態を均一に維持する。
また、可動ガイド板540の下部(片道ガイド溝522側)には、前記片道ガイド溝522と略同形状を有するスライド孔545が開口されており、このスライド孔545の内周面の上面がスライドガイド用のカムライン543として設けられる。
このカムライン543は、片道ガイド溝522と同程度の長さを有しており、片道ガイド溝522における下スライド突起512のスライド方向の湾曲度合いよりも緩やかな湾曲のラインに形成されている。従って、可動ガイド板540がコイルバネ549によって下方に付勢されて片道ガイド溝522と重なるとき、山形湾曲の頂点となる中央部543gが最初に重なり、それから両端(一端部543f,他端部543h)へ向かって徐々に重なるように配置されている。これにより、可動ガイド板540のカムライン543は、片道ガイド溝522でスライド移動する下スライド突起512を、片道ガイド溝522の中央から側方端へ向かって付勢する。
図27は回転角度が0度で停止している状態の携帯電話機501の背面図であり、図28は回転角度が40度まで回転している回転途中状態の携帯電話機501の背面図であり、図29は回転角度が60度まで回転している回転途中状態の携帯電話機501の背面図であり、図30は回転角度が90度で停止している状態の携帯電話機501の背面図である。
図27に示すように、表示側筐体502の回転角度が0度の状態では、上スライド突起511が往復ガイド溝521の下端521bに位置し、下スライド突起512が片道ガイド溝522の一端522aに位置している。このとき、可動ガイド板540に付勢されている下スライド突起512は、カムライン543の一端部543fに当接している。従って、可動ガイド板540によって下スライド突起512が片道ガイド溝522の一端部543f側に向かって付勢されており、0度の角度で停止している。
図28に示すように、利用者によって支持側筐体504に対して表示側筐体502が回転させられると、上スライド突起511は往復ガイド溝521の上端521aへ向かって移動し、下スライド突起512は片道ガイド溝522の他端522bへ向かって移動する。この移動の間、下スライド突起512はカムライン543の一端部543fと中央部543gの間に当接してスライドガイドされる。このため、移動中は常に可動ガイド板540によって一端部543f側へ付勢されることになり、0度に戻ろうとする力が働くことになる。
図示する40度の角度まで回転させられると、上スライド突起511は往復ガイド溝521の上端521aに位置し、下スライド突起512は片道ガイド溝522の中央付近に位置する。このとき、可動ガイド板540に付勢されている下スライド突起512は、カムライン543の中央部543gより少し一端部543f側に当接している。
図29に示すように、さらに回転されると、上スライド突起511は往復ガイド溝521の下端521bへ向かって戻るように移動し、下スライド突起512は片道ガイド溝522の他端522bへ向かって移動する。この移動の間、下スライド突起512はカムライン543に当接してスライドガイドされる。このため、移動中は常に可動ガイド板540によって一端部543f側または下端521b側へ付勢されることになり、0度または90度に移行しようとする力が働くことになる。
図示する60度の角度まで回転させられると、上スライド突起511は往復ガイド溝521の上端521aに位置し、下スライド突起512は片道ガイド溝522の中央より少し他端522b側に位置する。このとき、可動ガイド板540に付勢されている下スライド突起512は、カムライン543の中央部543gより少し他端部543h側に当接している。
図30に示すように、さらに回転されると、上スライド突起511は往復ガイド溝521の下端521bへ向かって戻るように移動し、下スライド突起512は片道ガイド溝522の他端522bへ向かって移動する。この移動の間、下スライド突起512はカムライン543に当接してスライドガイドされる。このため、移動中は常に可動ガイド板540によって下端521b側へ付勢されることになり、90度に移行しようとする力が働くことになる。
図示する90度の角度まで回転すると、上スライド突起511は往復ガイド溝521の下端521bに位置し、下スライド突起512は片道ガイド溝522の他端522bに位置する。このとき、可動ガイド板540に付勢されている下スライド突起512は、カムライン543の他端部543hに当接している。
このようにして、0度から45度までは戻ろうとする力が働き、45度を超えるとコイルバネ549の付勢力と可動ガイド板540の働きによって90度まで自動回転するセミオート回転が実現される。
90度から0度に戻す場合には、上述の動作と全く逆の動作となる。このため、45度までは90度に戻ろうとする力が働き、45度を超えるとコイルバネ549の付勢力と可動ガイド板540の働きによって0度まで自動で回転するセミオート回転が実現される。
以上の構成および動作により、実施例1〜4と同一の効果を得ることができる。また、固定ガイド板520と可動ガイド板540との2枚のガイド板520,540は重なって1枚の厚板の如く維持される。このため、両ガイド板520,540は強度が高まり、補強されるので、両ガイド板520,540に強い外力が加わっても、該両ガイド板520,540の平面対接状態を維持して、その外力による変形を阻止できる。さらに、ヒンジ機構を構築した場合に、カム部材を兼ねた可動ガイド板540を固定ガイド板520に平面対接させるだけで補強できるため、限られた内部スペースに効率よく配設でき、ヒンジ機構の小型化や薄型化および低コスト化を図りながら補強できる。
次に、ヒンジ装置603を補強する変形阻止機能が異なる他の構成例について説明する。
図31は携帯電話機601を正面側から見た分解斜視図であり、図32は携帯電話機601を背面側から見た分解斜視図であり、図33は0度状態のヒンジ装置603を正面側から見た斜視図であり、図34は0度状態のヒンジ装置603を背面側から見た斜視図である。
携帯電話機601は、表示側筐体602と、支持側筐体604とが、ヒンジ装置603によって回転可能に取り付けられて構成されている。
表示側筐体602は、正面側に液晶表示部606が設けられており、支持側筐体604と重ね合わせられる背面側にヒンジ装置603の表示側固定部材610が固定される。
支持側筐体604は、表示側筐体602と重ね合わせられる正面側に凹部607が形成されており、この凹部607にヒンジ装置603の支持側部材としての固定ガイド板620が嵌め込まれて固定される。この凹部607の周囲には、一側縁部と下縁部に、固定ガイド板620を確実に固定する縁部溝607aとビス止め孔607bとを有している。また、支持側筐体604の下端には枢着部608が設けられている。この枢着部608は、例えば入力キーが配置された入力側筐体(図示省略)が折りたたみ開閉可能に枢着される部分である。この入力側筐体は、表示側筐体602と同程度の大きさに構成し、枢着部608で折りたたむと入力側筐体と表示側筐体602が重なり合う構成となるが、その詳細については説明を省略する。
ヒンジ装置603は、大きく分けて表示側ユニット603aと支持側ユニット603bとで構成される。表示側ユニット603aは、表示側固定部材610により構成される。支持側ユニット603bは、固定ガイド板620、可動ガイド板640、コイルバネ649、およびリベット651により構成されている。
表示側ユニット603aを構成する表示側固定部材610は、全体が長板状に形成されて背面側に上スライド突起611と下スライド突起612との2つのスライド突起611,612が設けられている。これらのスライド突起611,612は、表示側固定部材610の長手方向に一定距離だけ離間して配置されており、いずれも基部側の円筒形胴部より先端側の円筒形傘部が半径大となるキノコ状に形成されている。また、スライド突起611,612の円筒形胴部および円筒形傘部は、いずれも真円形に形成されており、可動ガイド板640で付勢される下スライド突起612の方が上スライド突起611より半径大に形成されている。これにより、下スライド突起612が可動ガイド板640に開口されているスライド孔645内のカムライン643上を円滑に移動できるようにしている。
支持側ユニット603bを構成する固定ガイド板620は、正面視略正方形の板状に形成されている。この固定ガイド板620の上半分の左右略中央に、上下方向に長い直線型の往復ガイド溝621が形成されており、下半分ほぼ全体に上方が凸となる円弧状の片道ガイド溝622が形成されている。この往復ガイド溝621と片道ガイド溝622は、往復ガイド溝621の下端が片道ガイド溝622の中央付近に近接するように、略逆T字(若しくは逆Y字)となるように配置されている。
往復ガイド溝621は、上端から下端近傍まで幅が均等で下端が先細りする形状に形成され、挿通された上スライド突起611が安定して上下に一直線にスライド移動できるように構成されている。
片道ガイド溝622は、左端から右端まで幅が均等で、挿通された下スライド突起612が安定して左右に円弧を描いてスライド移動できるように構成されている。
この往復ガイド溝621と片道ガイド溝622にそれぞれ挿通される上下のスライド突起611,612は、いずれも先端側の円筒形傘部が往復ガイド溝621や片道ガイド溝622の溝幅より大きく、これによって抜け落ちないように抜け止めされている。
固定ガイド板620における往復ガイド溝621の左右と、片道ガイド溝622の中央部下側には、リベット651を装着するリベット装着孔627がそれぞれ穿孔されている。また、固定ガイド板620における上辺の左右両端部には、背面側へ突出してそこからさらに下方へ突出するバネ装着突起(上バネ座)625が左右対称に設けられている。このバネ装着突起625には、上下方向に伸縮するコイルバネ649の上端が装着される。
さらに、固定ガイド板620の周囲には、一側縁部と下縁部に、前記縁部溝607aに対応し、且つビス止め孔607bとに対応する溝嵌合用の突片部623aとビス挿通孔623bとを有している。そして、固定ガイド板620を支持側筐体604に固定する際に、固定ガイド板620の突片部623aを支持側筐体604の縁部溝607aに嵌め込んだ状態で各ビス挿通孔623bに図示しないビスを挿通し、そのビスをビス止め孔607bに螺着させることで一体に固定する。
可動ガイド板640は、前記固定ガイド板620より一回り小さい正面視略正方形の板状に形成されている。この可動ガイド板640の左右両端に、上方へ突出するバネ装着突起(下バネ座)641が左右対称に設けられている。このバネ装着突起641には、上下に伸縮するコイルバネ649の下端が装着される。
可動ガイド板640の上部中央には、前記往復ガイド溝621と同形状の一回り大きい縦長の退避溝644が形成されている。この退避溝644は、可動ガイド板640が上下方向にスライド移動しても、往復ガイド溝621から背面側へ突出する上スライド突起611が可動ガイド板640によって規制されないように退避空間を設けたものである。
退避溝644の左右両側には、該可動ガイド板640を貫通する上下に長いガイド溝642,642が互いに平行に形成されている。また、スライド孔645の中央下側にも同様に該可動ガイド板640を貫通する上下に長いガイド溝642が形成されている。これらの各ガイド溝642には、背面側からキノコ状のリベット651が挿通され、該リベット651の先端が固定ガイド板620のリベット装着孔627に固定される。これにより、可動ガイド板640は、片道ガイド溝622のスライド方向と交差する方向である上下方向へ安定してスライド移動できる。
この場合、固定ガイド板620と可動ガイド板640とは平面対接させて配置し、その平面対接状態を維持する構造にすることにより、強度が高まり互いのガイド板620,640が容易に変形しないように補強する変形阻止機能を持たせている。
この変形阻止機能は、リベット651の傘部と固定ガイド板620で可動ガイド板640を挟み込むことで実現している。特に、リベット651は、縦長の往復ガイド溝621の左右両側に配置することで、固定ガイド板620における往復ガイド溝621上下の肉細部が変形することを防止している。つまり、固定ガイド板620が往復ガイド溝621を中心に平面視へ字型に折れ曲がろうとするとき、左右のリベット651の存在により、可動ガイド板640も折り曲げなければ曲がらない。従って、可動ガイド板640の強度を付加して固定ガイド板620を補強できる。
また、横長の片道ガイド溝622の上下両側にリベット651を配置することで、固定ガイド板620における片道ガイド溝622左右の肉細部が変形することを防止している。つまり、固定ガイド板620が片道ガイド溝622を中心に平面視へ字型に折れ曲がろうとするとき、上下のリベット651の存在により、可動ガイド板640も折り曲げなければ曲がらない。従って、可動ガイド板640の強度を付加して固定ガイド板620を補強できる。
また、両ガイド板620,640の連結部分は、ガイド溝642とリベット651との間でスライド許容して連結するので可動ガイド板640のスライド動作には支障がなく、スライド許容した状態で往復ガイド溝621および片道ガイド溝622の変形阻止状態を維持する。さらに、スライド許容して連結する連結部を、両ガイド板620,640の平面上に複数分散配置することで、両ガイド板620,640の平面対接状態を均一に維持する。
また、可動ガイド板640の下部(片道ガイド溝622側)には、前記片道ガイド溝622と略同形状を有するスライド孔645が開口されており、このスライド孔645の内周面の上面がスライドガイド用のカムライン643として設けられる。
このカムライン643は、片道ガイド溝622と同程度の長さを有しており、片道ガイド溝622における下スライド突起612のスライド方向の湾曲度合いよりも緩やかな湾曲のラインに形成されている。従って、可動ガイド板640がコイルバネ649によって下方に付勢されて片道ガイド溝622と重なるとき、山形湾曲の頂点となる中央部643gが最初に重なり、それから両端(一端部643f,他端部643h)へ向かって徐々に重なるように配置されている。これにより、可動ガイド板640のカムライン643は、片道ガイド溝622でスライド移動する下スライド突起612を、片道ガイド溝622の中央から側方端へ向かって付勢する。
図35は0度状態のヒンジ装置603を示す背面図であり、図36は図35のA−A線矢視断面図である。
前記可動ガイド板640に開口されているスライド孔645には、前記下スライド突起612を可動ガイド板640の板面より沈み込ませて係合する段付き係合溝646を形成している。この段付き係合溝646はスライド孔645の開口部分より広幅に、該開口部分に沿って階段状に切り欠いて段付き形成したものである。
また、この段付き係合溝646に係合される下スライド突起612は、表示側固定部材610より突出した該下スライド突起612の先端部が段付き係合溝646により沈み込んで係合する大径部613と、スライド孔645を挿通する中径部614と、固定ガイド板620の片道ガイド溝622を挿通する小径部615とをこの順に有する段付き突起により形成される。
よって、スライド孔645に下スライド突起612を係合させた場合、スライド孔645に係合された下スライド突起612は可動ガイド板640の板面より突出しなくなり、可動ガイド板640の厚さ方向を短縮してヒンジ機構の薄型化を図ることができる。なお、上スライド突起611は、その頭部が退避溝644の内部に納まるので、該上スライド突起611も可動ガイド板640の板面より突出することはない。
また、前記スライド孔645と同様に、前述した補強用のガイド溝642についても各ガイド溝642に段付き係合溝646を形成し、該段付き係合溝646にリベット651の段付き軸部を係合させて設けることができる。この場合も、ガイド溝642にリベット651を係合させた場合、ガイド溝642に係合されたリベット651は可動ガイド板640の板面より突出しなくなり、可動ガイド板640の厚さ方向の短縮を図ることができる。
図37は回転角度が0度で停止している状態の携帯電話機601の背面図であり、図38は回転角度が40度まで回転している回転途中状態の携帯電話機601の背面図であり、図39は回転角度が60度まで回転している回転途中状態の携帯電話機601の背面図であり、図40は回転角度が90度で停止している状態の携帯電話機601の背面図である。
図37に示すように、表示側筐体602の回転角度が0度の状態では、上スライド突起611が往復ガイド溝621の下端621bに位置し、下スライド突起612が片道ガイド溝622の一端622aに位置している。このとき、可動ガイド板640に付勢されている下スライド突起612は、カムライン643の一端部643fに当接している。従って、可動ガイド板640によって下スライド突起612が片道ガイド溝622の一端部643f側に向かって付勢されており、0度の角度で停止している。
図38に示すように、利用者によって支持側筐体604に対して表示側筐体602が回転させられると、上スライド突起611は往復ガイド溝621の上端621aへ向かって移動し、下スライド突起612は片道ガイド溝622の他端622bへ向かって移動する。この移動の間、下スライド突起612はカムライン643の一端部643fと中央部643gの間に当接してスライドガイドされる。このため、移動中は常に可動ガイド板640によって一端部643f側へ付勢されることになり、0度に戻ろうとする力が働くことになる。
図示する40度の角度まで回転させられると、上スライド突起611は往復ガイド溝621の上端621aに位置し、下スライド突起612は片道ガイド溝622の中央付近に位置する。このとき、可動ガイド板640に付勢されている下スライド突起612は、カムライン643の中央部643gより少し一端部643f側に当接している。
図39に示すように、さらに回転されると、上スライド突起611は往復ガイド溝621の下端621bへ向かって戻るように移動し、下スライド突起612は片道ガイド溝622の他端622bへ向かって移動する。この移動の間、下スライド突起612はカムライン643に当接してスライドガイドされる。このため、移動中は常に可動ガイド板640によって一端部643f側または下端621b側へ付勢されることになり、0度または90度に移行しようとする力が働くことになる。
図示する60度の角度まで回転させられると、上スライド突起611は往復ガイド溝621の上端621aに位置し、下スライド突起612は片道ガイド溝622の中央より少し他端622b側に位置する。このとき、可動ガイド板640に付勢されている下スライド突起612は、カムライン643の中央部643gより少し他端部643h側に当接している。
図40に示すように、さらに回転されると、上スライド突起611は往復ガイド溝621の下端621bへ向かって戻るように移動し、下スライド突起612は片道ガイド溝622の他端622bへ向かって移動する。この移動の間、下スライド突起612はカムライン643に当接してスライドガイドされる。このため、移動中は常に可動ガイド板640によって下端621b側へ付勢されることになり、90度に移行しようとする力が働くことになる。
図示する90度の角度まで回転すると、上スライド突起611は往復ガイド溝621の下端621bに位置し、下スライド突起612は片道ガイド溝622の他端622bに位置する。このとき、可動ガイド板640に付勢されている下スライド突起612は、カムライン643の他端部643hに当接している。
このようにして、0度から45度までは戻ろうとする力が働き、45度を超えるとコイルバネ649の付勢力と可動ガイド板640の働きによって90度まで自動回転するセミオート回転が実現される。
90度から0度に戻す場合には、上述の動作と全く逆の動作となる。このため、45度までは90度に戻ろうとする力が働き、45度を超えるとコイルバネ649の付勢力と可動ガイド板640の働きによって0度まで自動で回転するセミオート回転が実現される。
以上の構成および動作により、実施例1〜5と同一の効果を得ることができる。また、段付き係合溝646に下スライド突起612が係合することで、該下スライド突起612は可動ガイド板640の板面より突出しなくなり、可動ガイド板640の厚さ方向を短縮してヒンジ機構の薄型化を促進できる。さらに、補強用の各ガイド溝642についても、ここに係合される各リベット651の頭部が可動ガイド板640の板面より突出しないように沈み込ませて構成している。このため、両ガイド板620,640を平面対接した場合に連結用の上下のスライド突起611,612や分散配置された3個のリベット651が薄型化を阻害することはない。
次に、ヒンジ装置703を補強する変形阻止機能の一部である退避溝744の部分の他の構成例について説明する。
図41は0度状態のヒンジ装置703を示す背面図であり、図42は図41のA−A線矢視断面図である。ここで、実施例7の可動ガイド板740は実施例6の可動ガイド板640と比較して、可動ガイド板740の退避溝744に表示側固定部材710の上スライド突起711が係合する係合構造の部分のみが異なり、他は同じであるため、同一の部分の説明についてはその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
前記可動ガイド板740に開口されている退避溝744には、該可動ガイド板740の背面側に、前記上スライド突起711を可動ガイド板740の板面より沈み込ませて係合する段付き係合溝746を形成している。この段付き係合溝746は退避溝744の開口部分より広幅に、該開口部分に沿って階段状に切り欠いて段付き形成したものである。
また、この段付き係合溝746に係合される上スライド突起711は、表示側固定部材710より突出した該上スライド突起711の先端部が段付き係合溝746により沈み込んで係合する大径部713と、退避溝744を挿通する中径部714と、固定ガイド板720の往復ガイド溝721を挿通する小径部715とをこの順に有する段付き突起により形成される。
よって、退避溝744に上スライド突起711を係合させた場合、退避溝744に係合された上スライド突起711は抜け止めされるだけでなく、段付き係合溝746の位置で沈み込み、可動ガイド板740の板面より突出しなくなり、可動ガイド板740の厚さ方向を短縮してヒンジ機構の薄型化を図ることができる。なお、下スライド突起712および各リベット751についても実施例6で既述したように可動ガイド板740を段付き係合による同様な構成でスライド支持することになる。この結果、上スライド突起711と下スライド突起712および各リベット751との全ての突起が可動ガイド板740の板面より突出しなくなるとともに、表示側固定部材710と固定ガイド板720および可動ガイド板740との連結性を高めることができる。
次に、可動ガイド板840と下スライド突起812とのスライド構造が異なる他の構成例について説明する。
図43は0度状態のヒンジ装置803を示す背面図であり、図44は図43のA−A線矢視断面図である。ここで、実施例8の可動ガイド板840は実施例6の可動ガイド板640と比較して、可動ガイド板840に形成されたスライド溝845に表示側固定部材810の下スライド突起812が係合する係合構造の部分のみが異なり、他は同じであるため、同一の部分の説明についてはその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
前記可動ガイド板840に形成されるスライド溝845は、該可動ガイド板840の背面側に、実施例6のスライド孔645と同じスライド形状とスライド長さとスライド開口幅とを有する断面凹型状に切り欠いて設けたものである。
また、このスライド溝845に係合される下スライド突起812は、表示側固定部材810より突出した該下スライド突起812の先端部がスライド溝845に挿入して係合される大きさの大径部813と、基端部が固定ガイド板820の片道ガイド溝822を挿通する小径部814とを有する断面T字型状の段付き突起により形成される。
この場合、可動ガイド板840のスライド溝845の溝幅よりも固定ガイド板820の片道ガイド溝822の溝幅を小さく構成する。これにより、片道ガイド溝822が下スライド突起812の大径部813を係止して、両ガイド板820,840の対接面間での溝幅差により抜け止めしている。
よって、スライド溝845に下スライド突起812を係合させた場合、スライド溝845に係合された下スライド突起812は抜け止めされる。また、スライド溝845が可動ガイド板840を貫通しない構成のため、可動ガイド板840自体の強度が高まり、ひいては固定ガイド板820の補強を高めることができる。このほか、可動ガイド板840の厚さ方向を短縮する場合にも支障にならず、ヒンジ機構の薄型化を図ることができる。
次に、ヒンジ装置903の往復ガイド溝921を補強する他の構成例について説明する。
図45(A)は0度状態のヒンジ装置903を正面側から見た斜視図であり、図45(B)は0度状態のヒンジ装置903を背面側から見た斜視図であり、図46(A)は90度状態のヒンジ装置903を正面側から見た斜視図であり、図46(B)は90度状態のヒンジ装置903を背面側から見た斜視図である。
ヒンジ装置903は、大きく分けて表示側ユニット903aと支持側ユニット903bとで構成される。表示側ユニット903aは、表示側固定部材910により構成される。支持側ユニット903bは、固定ガイド板920、可動ガイド板940、コイルバネ949、およびリベット951により構成されている。
表示側ユニット903aを構成する表示側固定部材910は、全体が長板状に形成されて背面側に上スライド突起911と下スライド突起912との2つのスライド突起911,912が設けられている。これらのスライド突起911,912は、表示側固定部材910の長手方向に一定距離だけ離間して配置されており、いずれも基部側の円筒形胴部より先端側の円筒形傘部が半径大となるキノコ状に形成されている。また、スライド突起911,912の円筒形胴部および円筒形傘部は、いずれも真円形に形成されており、可動ガイド板940で付勢される下スライド突起912の方が上スライド突起911より半径大に形成されている。これにより、上スライド突起911が可動ガイド板940に開口されているスライド孔945内のカムライン943上を円滑に移動できるようにしている。
支持側ユニット903bを構成する固定ガイド板920は、正面視略正方形の板状に形成されている。この固定ガイド板920の上半分の左右中央近くに、上下方向に長い直線型の往復ガイド溝921が形成されており、下半分ほぼ全体に上方が凸となる円弧状の片道ガイド溝922が形成されている。この往復ガイド溝921と片道ガイド溝922は、往復ガイド溝921の下端が片道ガイド溝922の中央付近に近接するように、略逆T字(若しくは逆Y字)となるように配置されている。
往復ガイド溝921は、下端から上端まで幅が均等で、挿通された上スライド突起911が安定して上下に一直線にスライド移動できるように構成されている。
片道ガイド溝922は、左端から右端まで幅が均等で、挿通された下スライド突起912が安定して左右に円弧を描いてスライド移動できるように構成されている。
この往復ガイド溝921と片道ガイド溝922にそれぞれ挿通される上下のスライド突起911,912は、いずれも先端側の円筒形傘部が往復ガイド溝921や片道ガイド溝922の溝幅より大きく、これによって抜け落ちないように抜け止めされている。
固定ガイド板920における往復ガイド溝921の左右と、片道ガイド溝922の中央部下側には、リベット951を装着するリベット装着孔927がそれぞれ開口されている。
前記固定ガイド板920の上部の左右一側には、コイルバネ949を横向きに収納させる開口部924を上下に平行して開口している。該開口部924内の外側辺(往復ガイド溝921から遠い側の辺)には内側辺(往復ガイド溝921から近い側の辺)に向けて突出するバネ装着突起925が設けられている。該バネ装着突起925には、左右方向に伸縮するコイルバネ949の一端が装着される。これにより、コイルバネ949は固定ガイド板920に形成されているバネ装着突起925を基点に、横長の開口部924を伸縮空間として自由に伸縮許容されている。
可動ガイド板940は、前記固定ガイド板920より小さい正面視略長方形の板状に形成され、この可動ガイド板940が前記固定ガイド板920の背面側の上半分中央に横長状態に平面対接されて取り付けられる。この可動ガイド板940の一方の縦辺側(バネ装着突起925と対向する側)に、前記バネ装着突起925と相対向して突出するバネ装着突起941が設けられている。このバネ装着突起941には、左右に伸縮するコイルバネ949の他端が装着され、該コイルバネ949は両側のバネ装着突起925,941間で軽く圧縮された状態に介在されている。よって、可動ガイド板940はコイルバネ949の付勢力を得て、往復ガイド溝921を交差する方向に付勢される。
可動ガイド板940の左右中央には、前記往復ガイド溝921と略同形状を有して一回り大きく、さらに往復ガイド溝921より直線の向きを僅かに傾斜させたスライド孔945を形成している。このスライド孔945の内周面のバネ側面が、上スライド突起911に対するスライドガイド用のカムライン943(後述)として設けられている。
ところで、前記固定ガイド板920と可動ガイド板940とは、平面対接させて配置し、その平面対接状態を維持する構造にすることにより、強度が高まり互いのガイド板920,940が容易に変形しないように補強する変形阻止機能を持たせている。
この変形阻止機能は、リベット951の傘部と固定ガイド板920で可動ガイド板940を挟み込むことで実現している。特に、リベット951は、縦長の往復ガイド溝921の左右両側に配置(例えば、左右一側の上下に2個と、左右他側の上下中央部に1個との合計3個を千鳥状に配置)することで、固定ガイド板920における往復ガイド溝921上下の肉細部が変形することを防止している。つまり、固定ガイド板920が往復ガイド溝921を中心に平面視へ字型に折れ曲がろうとするとき、左右のリベット951の存在により、可動ガイド板940も折り曲げなければ曲がらない。従って、可動ガイド板940の強度を付加して固定ガイド板920を補強できる。また、往復ガイド溝921に対する強度が高まることに伴い、その下部側の横長の片道ガイド溝922に対する強度も同時に高まる。
また、可動ガイド板940には、該可動ガイド板940を横方向にスライド許容して各リベット951毎に挿通させる横長のガイド溝942を開口している。これらのガイド溝942は、可動ガイド板940の背面側にリベット951の傘部を可動ガイド板940の板面より沈み込ませた状態に抜止め係合させる段付き係合溝946を形成している。この段付き係合溝946はスライド孔945の開口部分より広幅に、該開口部分に沿って階段状に切り欠いて段付き形成したものである。
また、ガイド溝942にリベット951を係合させた場合、ガイド溝942の段付き係合溝946に係合されたリベット951の傘部は可動ガイド板940の板面より突出しなくなり、可動ガイド板940の厚さ方向を短縮してヒンジ機構の薄型化を図ることができる。
前記ガイド溝942には、背面側からキノコ状のリベット951が挿通され、該リベット951の先端が固定ガイド板920のリベット装着孔927に固定される。これにより、可動ガイド板940は往復ガイド溝921のスライド方向と交差する左右方向へ安定してスライド移動する。
前記カムライン943は、スライド孔945の内周面のうち、コイルバネ949側に近い側の内面がカムラインとして設けられている。このカムライン943は、往復ガイド溝921と同程度の長さを有しており、往復ガイド溝921における上スライド突起911のスライド方向に対して少し交差する直線形のラインとなる。
従って、上スライド突起911の上動に伴いカムライン943を介して可動ガイド板940はコイルバネ949を圧縮する方向に可動する。これにより、可動ガイド板940のカムライン943は、往復ガイド溝921でスライド移動する上スライド突起911を、往復ガイド溝921の下端から上端へ向かって付勢する。
図47は回転角度が0度で停止している状態の携帯電話機901の背面図であり、図48は回転角度が45度まで回転している回転途中状態の携帯電話機901の背面図であり、図49は回転角度が90度で停止している状態の携帯電話機901の背面図である。
図47に示すように、表示側筐体902の回転角度が0度の状態では、上スライド突起911が往復ガイド溝921の下端921bに位置し、下スライド突起912が片道ガイド溝922の一端922aに位置している。このとき、可動ガイド板940に付勢されている上スライド突起911は、カムライン943の下端943aに当接している。従って、可動ガイド板940によって上スライド突起911が往復ガイド溝921の上端943bに向かって付勢されており、0度の角度で停止している。
図48に示すように、利用者によって支持側筐体904に対して表示側筐体902が回転させられると、上スライド突起911は往復ガイド溝921の上端921aへ向かって移動し、下スライド突起912は片道ガイド溝922の他端922bへ向かって移動する。この移動の間、上スライド突起911はカムライン943の下端943aと上端943bとの間に当接してスライドガイドされる。このため、移動中は常に可動ガイド板940によって下端943a側へ付勢されることになり、0度に戻ろうとする力が働くことになる。
図示する45度の角度まで回転させられると、上スライド突起911は往復ガイド溝921の上端921aに位置し、下スライド突起912は片道ガイド溝922の中央付近に位置する。
図49に示すように、さらに回転されると、上スライド突起911は往復ガイド溝921の下端921bへ向かって戻るように移動し、下スライド突起912は片道ガイド溝922の他端922bへ向かって移動する。この移動の間、上スライド突起911はカムライン943に当接してスライドガイドされる。このため、移動中は常に可動ガイド板940によって下端921b側へ付勢されることになり、90度に移行しようとする力が働くことになる。
図示する90度の角度まで回転すると、上スライド突起911は往復ガイド溝921の下端921bに位置し、下スライド突起912は片道ガイド溝922の他端922bに位置する。
このようにして、0度から45度までは戻ろうとする力が働き、45度を超えるとコイルバネ949の付勢力と可動ガイド板940の働きによって90度まで自動回転するセミオート回転が実現される。
90度から0度に戻す場合には、上述の動作と全く逆の動作となる。このため、45度までは90度に戻ろうとする力が働き、45度を超えるとコイルバネ949の付勢力と可動ガイド板940の働きによって0度まで自動で回転するセミオート回転が実現される。
以上の構成および動作により、前記実施例と同様な補強効果を得ることができる。また、固定ガイド板920に開口されている縦長の往復ガイド溝921に対しては、その左右両側でガイド溝942とリベット951とからなる複数の連結部分で補強できる。さらに、往復ガイド溝921の部分を、可動ガイド板940で覆うように固定ガイド板920に平面対接して、該往復ガイド溝921が可動ガイド板940によって補強されるため、2枚重ねの状態が維持されて、往復ガイド溝921の部分での固定ガイド板920の変形を確実に阻止できる。
[参考例]
図50(A)は変形阻止機能を具備していないヒンジ装置Hを正面側から見た斜視図であり、図50(B)は図50(A)のヒンジ装置Hが背面側から外力Pを受けて変形した状態を正面側から見た斜視図であり、図50(C)は図50(A)のヒンジ装置Hが正面側から外力Pを受けて変形した状態を正面側から見た斜視図である。
ここで、変形阻止機能を具備していないヒンジ装置Hについて一考すると、このヒンジ装置Hが携帯電話機などに組み込まれた場合、ヒンジ装置Hが非常に強い外力Pを受けると変形してしまうことがある。
例えば、実施例5と同じ構成の固定ガイド板520と表示側固定部材510との組み合わせを用いた場合、図50(A)に示すヒンジ装置Hが、図50(B)に示すように、背面側から強い外力Pを受けると、固定ガイド板520の下部に横方向に長く切り欠いて開口された片道ガイド溝522の部分を境に上半分が正面側に折れ曲がるように傾いて変形してしまう。
また、図50(A)に示すヒンジ装置Hが、図50(C)に示すように、正面側から強い外力Pを受けると、片道ガイド溝522の部分を境に上半分が背面側に折れ曲がるように傾いて変形してしまう。
このほか、往復ガイド溝521についても、該ヒンジ装置Hの横方向から外力を受けた場合は、図示しないが往復ガイド溝の部分を境に左右半分が折れ曲がるように傾いて変形してしまう。
このような変形発生状態では、上下のスライド突起511,512が引っ掛かって安定したスライド動作が得られなくなる不具合が発生し、回転操作不能となる。よって、変形阻止機能を備えて固定ガイド板520を補強すれば、前記不具合の発生を解消することができる。
なお、以上の各実施形態では、スライドカム40、140,240,340および可動ガイド板540,640,740,840,940は一直線に直線移動する構成としたが、円弧を描いてスライド移動する構成にしてもよい。この場合、スライド幅方向の一端を軸支し、他端をバネなどの付勢手段で付勢する構造にするとよい。この場合でも、上述した各実施例と同一の効果を奏することができる。
また、回転角度を係止するために上端凹部143aや回転係止凹部243dを設けたが、スライドカム40、140,240,340で付勢されるスライド突起11,312を外周の一部を切り欠くなどして真円ではない形状とし、これによって回転角度を係止する構成としてもよい。このようにスライド突起11,312に係止部を形成しても、回転角度を適宜の角度で係止することができる。
また、0度から90度への回転動作やこれと反対の回転動作といった一動作の間に往復運動するスライド突起11,311,511,611,711,911は、0度の位置と90度回転位置で同じ位置にくるように設計したが、0度の位置と90度回転位置が異なる位置となるように設計してもよい。この場合も、上述した各実施形態と同一の作用効果を得ることができる。
また、カムライン43,143,243,343の長さは、往復ガイド溝21また片道ガイド溝322と同程度の長さに形成したが、往復ガイド溝21また片道ガイド溝322の長さより短い一定の幅長さに形成してもよい。この場合は、スライド突起11,311,511,611,711,911がスライド移動する全移動範囲のうち一部の移動範囲で付勢することができる。
また、実施例4のヒンジ装置303において、スライド突起311を付勢するように実施例1のスライドカム40、コイルバネ49、ステージ23、およびカムカバー50を設けてもよい。この場合、スライド突起311,312の両方をスライドカム40,340でそれぞれ付勢でき、より強い付勢力を得ることや、より複雑な付勢調整を行うことができる。
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の携帯端末は、実施形態の携帯電話機1,301,501,601,901に対応し、
以下同様に、
回転側筐体は、表示側筐体2,302,502,602,902に対応し、
ヒンジ機構は、ヒンジ装置3,303,503,603,703,803,903に対応し、
本体側ユニットは、支持側ユニット3b,303b,503b,603b,903bに対応し、
回転側ユニットは、表示側ユニット3a,303a,503a,603a,903aに対応し、
本体側筐体は、支持側筐体4,304,504,604,904に対応し、
表示手段は、液晶表示部6,306,506,606に対応し、
第1スライド体は、スライド突起11,311および上スライド突起511,611,711,911に対応し、
第2スライド体は、スライド突起12,312および下スライド突起512,612,712,812,912に対応し、
第1スライドガイドは、往復ガイド溝21,321,521,621,721,921に対応し、
第1スライドガイドの一端側から他端側へスライド移動した後に折り返しは、上端21a,321a,521a,621a,921aおよび下端21b,321b,521b,621b,921bに対応し、
第2スライドガイドは、片道ガイド溝22,322,522,622,822,922に対応し、
第2スライドガイドの一端側および他端側は、一端22a,322a,522a,622a,922aおよび他端22b,322b,522b,622b,922bに対応し、
カムは、スライドカム40,140,240,340および可動ガイド板540,640,740,840,940に対応し、
当接辺およびカム面は、カムライン43,143,243,343,543,643,943に対応し、
付勢手段は、コイルバネ49,349,549,649,949に対応し、
係止部は、上端凹部143aおよび回転係止凹部243dに対応し、
入力手段は、支持側筐体4,304,504,604に折りたたみ開閉可能に取り付けられた入力側筐体に設けられた入力キーに対応し、
変形阻止手段は、リベット551,651,751,951に対応し、
スライド係合部は、リベット551,651,751,951の頭部に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。例えば、リベットと可動ガイド板との係合に際して、実施例ではリベット551,651,951の傘部と、長孔のガイド溝542,642,942とを係合させる例を示したが、これに限らず、リベットの一傘部と可動ガイド板に形成される直線状の片側段差部とを係合させても実現することができる。
携帯電話機を正面側から見た分解斜視図。
携帯電話機を背面側から見た分解斜視図。
ヒンジ装置を正面側から見た斜視図。
ヒンジ装置を背面側から見た斜視図。
0度で停止している状態の携帯電話機の背面図。
45度まで回転している回転途中状態の携帯電話機の背面図。
90度で停止している状態の携帯電話機の背面図。
実施例2のスライドカムの斜視図。
実施例2の携帯電話機が45度で停止した状態の斜視図。
実施例3のスライドカムの斜視図。
実施例3の携帯電話機が28度で停止した状態の斜視図。
実施例3の携帯電話機が65度で停止した状態の斜視図。
実施例4の携帯電話機を正面側から見た分解斜視図。
実施例4の携帯電話機を背面側から見た分解斜視図。
実施例4の0度状態のヒンジ装置を正面側から見た斜視図。
実施例4の0度状態のヒンジ装置を背面側から見た斜視図。
実施例4の45度回転状態のヒンジ装置を正面側から見た斜視図。
実施例4の45度回転状態のヒンジ装置を背面側から見た斜視図。
実施例4の0度状態の携帯電話機の背面図。
実施例4の40度状態の携帯電話機の背面図。
実施例4の60度状態の携帯電話機の背面図。
実施例4の90度状態の携帯電話機の背面図。
実施例5の携帯電話機を正面側から見た分解斜視図。
実施例5の携帯電話機を背面側から見た分解斜視図。
実施例5の0度状態のヒンジ装置を正面側から見た斜視図。
実施例5の0度状態のヒンジ装置を背面側から見た斜視図。
実施例5の0度状態の携帯電話機の背面図。
実施例5の40度状態の携帯電話機の背面図。
実施例5の60度状態の携帯電話機の背面図。
実施例5の90度状態の携帯電話機の背面図。
実施例6の携帯電話機を正面側から見た分解斜視図。
実施例6の携帯電話機を背面側から見た分解斜視図。
実施例6の0度状態のヒンジ装置を正面側から見た斜視図。
実施例6の0度状態のヒンジ装置を背面側から見た斜視図。
実施例6の0度状態のヒンジ装置を示す背面図。
図35のA−A線矢視断面図。
実施例6の0度状態の携帯電話機の背面図。
実施例6の40度状態の携帯電話機の背面図。
実施例6の60度状態の携帯電話機の背面図。
実施例6の90度状態の携帯電話機の背面図。
実施例7の0度状態のヒンジ装置を示す背面図。
図41のA−A線矢視断面図。
実施例8の0度状態のヒンジ装置を示す背面図。
図43のA−A線矢視断面図。
(A)は実施例9の0度状態のヒンジ装置を正面側から見た斜視図、(B)は実施例9の0度状態のヒンジ装置を背面側から見た斜視図。
(A)は実施例9の90度状態のヒンジ装置を正面側から見た斜視図、(B)は実施例9の90度状態のヒンジ装置を背面側から見た斜視図。
実施例9の0度状態の携帯電話機の背面図。
実施例9の45度状態の携帯電話機の背面図。
実施例9の90度状態の携帯電話機の背面図。
(A)は参考例の変形阻止機能を具備していないヒンジ装置を正面側から見た斜視図、(B)は参考例のヒンジ装置が背面側から外力を受けて変形した状態を正面側から見た斜視図、(C)は参考例のヒンジ装置が正面側から外力を受けて変形した状態を正面側から見た斜視図。
符号の説明
1,301,501,601…携帯電話機
2,302,502,602,902…表示側筐体
3,303,503,603,703,803,903…ヒンジ装置
3a,303a,503a,603a,903a…表示側ユニット
3b,303b,503b,603b,903b…支持側ユニット
4,304,504,604…支持側筐体
6,306,506,606…液晶表示部
11,12,311,312,511,512,611,612,711,
712,812,911,912…スライド突起
21,321,521,621,721,921…往復ガイド溝
21a,321a,521a,621a,921a…上端
21b,321b,521b,621b,921b…下端
22,322,522,622,822,922…片道ガイド溝
22a,322a,522a,622a,922a…一端
22b,322b,522b,622b,922b…他端
40,140,240,340…スライドカム
540,640,740,840,940…可動ガイド板
43,143,243,343,543,643,943…カムライン
49,349,549,649,949…コイルバネ
143a…上端凹部
243d…回転係止凹部
542,642,942…ガイド溝
551,651,751,951…リベット
545,645,945…スライド孔
646,746,946…段付き係合部
845…スライド溝