JP4026229B2 - 光触媒体および照明器具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光触媒体およびこれを用いた照明器具に関する。
【0002】
【従来の技術】
消臭、防汚およびまたは抗菌を行うために、光触媒膜を用いること知られている。
【0003】
光触媒膜は、紫外線照射を受けて、その光エネルギーを吸収すると、光触媒膜を構成して光触媒作用を呈する半導体に電子とホールが生成する。電子とホールは、膜表面にある酸素や水と反応して活性酸素や他の活性なラジカルなどを生じ、有機物からなる汚れや臭いの成分を酸化還元して分解する。
【0004】
近時、光触媒膜の有用性に注目して、建材、照明器具およびランプなど幅広い物品に光触媒膜を形成しようとする動きが活発である。
【0005】
光触媒膜の基体が有機質の場合には、基体が光触媒膜の分解作用によって劣化するという問題がある。
【0006】
そこで、基体が有機質の場合には、基体と光触媒膜との間に酸化ケイ素からなる下地層を介在させて、光触媒膜が直接基体に接触しないようにする。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のこのような構成の光触媒膜は透明性、付着力および平滑性などに問題があり、実用性に欠けることが分かった。
【0008】
本発明は、光透過率が良好であるとともに、光触媒膜の基体に対する付着力および平滑性を向上させた有機質の基体を用いた光触媒体およびこれを用いた照明器具を提供することを主な目的とする。
【0009】
【課題を達成するための手段】
請求項1の発明の光触媒体は、有機質の基体と;基体の表面に形成された二酸化ケイ素および酸化アルミニウムを含含み、二酸化ケイ素に対する酸化アルミニウムの割合SiO :Al が重量比で7:3〜3:7であるとともに酸化アルミニウムの平均粒径が30〜200nmである下地層と;平均粒径20nm以下の酸化チタンを主成分として下地層の表面に形成された凹凸面に入り込んで基体に形成された光触媒膜と;を具備していることを特徴としている。
【0010】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0011】
基体について
基体は、光触媒膜を担持するもので、専ら光触媒膜担持を目的とする部材はもちろんのこと、元来光触媒の担持を目的としない他の機能のために形成されるもの(以下、「機能材」という。)であることを許容する。
【0012】
機能材としては、たとえば天井パネルなどの建築材や、家電機器または照明用器材などさまざまな任意所望の有機質の部材を基体とすることができる。
【0013】
基体の材料としては、合成樹脂、繊維および木材などであることを許容するが、特に透明質合成樹脂が効果的である。
【0014】
下地層について
本発明においては、光触媒膜を直接基体表面に被着しないで、下地層を介して基体に形成する。下地層は、二酸化ケイ素および酸化アルミニウムを含んで構成されている。この構成によると、酸化アルミニウムの粒子が二酸化ケイ素によって結合された状態になって、酸化アルミニウム粒子が下地層の表面に露出するため、光触媒膜を形成する際の有機溶剤との濡れ性が向上する。
【0015】
二酸化ケイ素に対する酸化アルミニウムの割合SiO:Al重量比で7:3〜3:7であり適には6:4〜4:6である。酸化アルミニウムの添加量が少ないと、有機溶剤との濡れ性が悪くなって光触媒膜の付着力が低下するとともに、下地層の平滑性も悪くなる傾向がある。反対に、酸化アルミニウムの添加量が多すぎると、下地層の平滑性が悪くなる。
【0016】
また、酸化アルミニウムの粒径は、平均粒径が30〜200nmである。
【0017】
光触媒膜について
光触媒物質は、400nm以下特に好適には340nm以下の短波長の光の照射を受けると、活性化されて触媒作用を呈する半導体物質である。本発明において、光触媒膜は、主成分が平均粒径20nm以下の酸化チタンである。
【0018】
酸化チタンTiO は、光触媒物質として最も効果的な物質であり、したがって本発明においても光触媒物質として酸化チタンを主成分とするものである。なぜなら、酸化チタンは、光触媒作用が顕著であるとともに、安全で工業的に合理的な価格で、しかも必要量を入手できるので、光触媒物質として、現在最も有望視されているからである。
【0019】
また、酸化チタンには、その結晶構造としてルチル形とアナターゼ形とがある。光触媒作用は、アナターゼ形の方が優れている。
【0020】
本発明は、光触媒物質として主成分の酸化チタンの他に後述する他の光触媒物質を副成分として含んでいることができる。すなわち、光触媒膜の成分として、WO、LaRhP、FeTiO、Fe、CdFe、SrTiO、CdSe、GaAs、GaP、RuO、ZnO、CdS、MoS、LaRhO、CdFeO3、Bi、MoS、In、CdO、SnOなどの一種または複数種を混合して用いることができる。
【0021】
なお、TiO、WO、SrTiO、Fe、CdS、MoS、Bi、MoS、In、CdOなどは等価電子帯のレドックス・ポテンシャルの絶対値が伝導帯のレドックス・ポテンシャルの絶対値よりも大きいため、酸化力の方が還元力よりも大きく、有機化合物の分解による消臭作用、防汚作用または抗菌作用に優れている。
【0022】
また、上記各物質の中で原料コストの面においては、FeおよびZnOが優れている。
【0023】
さらにまた、本発明において、光触媒物質は、超微粒子の形で用いることができる。超微粒子とは、平均粒径が20nm以下の極めて細かい微粒子をいい、好ましくは微粒子の形状がなるべく球形に近く、しかも粒径のばらつきが少なくて結晶性の良好な微粒子である。
【0024】
さらにまた、本発明において、光触媒膜は、基体が有機質のため、高温での焼成によって下地層を介して基体に付着させる方法を採用することができないので、たとえば光触媒物質の超微粒子の分散液をディップ法、スプレー法などにより基体の下地層の上に塗布し、乾燥後有機質の基体が変質ないし分解しない程度の低温で焼成するなどの方法によって付着させる。
【0025】
なお、必要に応じて有機または無機のバインダーを光触媒物質の分散液に混合することができる。
【0026】
作用について
本発明においては、下地層が二酸化ケイ素および酸化アルミニウムを含み、二酸化ケイ素に対する酸化アルミニウムの割合SiO :Al が重量比で7:3〜3:7であるとともに酸化アルミニウムの平均粒径が30〜200nmであることにより、酸化アルミニウムが下地層の表面に出てくるため、光触媒膜を形成する際の有機溶剤に対する濡れ性が良好で光触媒膜の付着力が向上するとともに、光触媒膜が平均粒径20nm以下の酸化チタンを主成分として下地層の表面に形成された凹凸面に入り込んで基体に形成されていて、平滑性が良好になる。また、光触媒膜の透明性および膜強度も良好である。
【0027】
さらに、光触媒膜の光触媒作用が下地層によって悪影響を受けることもなく、良好な光触媒作用を有している。
【0028】
請求項2の発明の光触媒体は、請求項1記載の光触媒体において、下地層は、酸化アルミニウムが球状の微粒子であることを特徴としている。
【0029】
酸化アルミニウムを球状の微粒子の形で用いることにより、分散性が良好であるとともに、下地層を比較的多孔質にすることができる。下地層が多孔質であると、光触媒膜の付着力を大きくすることができる。
【0030】
請求項の発明の光触媒体は、請求項1または2記載の光触媒体において、光触媒膜は、酸化チタンを主成分とするとともに、二酸化ケイ素およびまたは酸化スズを添加していることを特徴としている。
【0031】
二酸化ケイ素を光触媒膜に添加することにより、光触媒膜の下地層に対する付着強度が向上するとともに、酸化チタン粒子間を結着する作用があるため、光触媒膜の強度が向上する。
【0032】
一方、酸化スズを小量添加すると、理由は定かでないが、光触媒膜の微小クラックの発生が少なくなり、光触媒膜の膜強度が向上する。酸化スズを添加することにより、熱膨張率が下地層や基体のそれに接近するか、結着材として作用するためではないかと考えられる。酸化スズの添加量は、好ましくは光触媒物質に対して0.1〜10重量%である。
【0033】
請求項の発明の照明器具は、合成樹脂製の制光手段を備えた照明器具本体と;照明器具本体の合成樹脂製の制光手段の少なくとも一部を基体として形成された請求項1ないしのいずれか一記載の光触媒体と;を具備していることを特徴としている。
【0034】
本発明において、照明器具は、屋外用および屋内用のいずれでもよい。
【0035】
制光手段は、グローブ、セードおよび透光性カバーなどの一種類または任意の複数種類の組み合わせで用いられていることを許容する。
【0036】
また、制光手段の全体に光触媒膜を形成してもよいが、その一部分に形成してもよい。
【0037】
制光手段は、使用によりばい煙やたばこの脂などの有機物からなる汚れがそこに付着すると、照明器具としての光学性能が低下するが、光触媒膜を形成しておくことにより、汚れが分解されるので、光学性能の低下を抑制することができる。
【0038】
また、制光手段に接触した空気中の臭い物質を分解したり殺菌することにより、室内の脱臭、殺菌を行うこともできる。
【0039】
さらに、照明器具をたとえば冷蔵庫、エアコンディショナー、空気清浄装置などに収納できる大きさおよび構造にして、これらの機器に配設することにより、脱臭または殺菌手段とすることもできる。
【0040】
以上の説明から理解できるように、制光手段に光触媒膜を形成するので、光触媒膜は透明性の良好なものが好適である。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0042】
図1は、本発明の光触媒体の第1の実施形態を示す概念的要部拡大断面図である。
【0043】
各図において、1は基体、2は下地層、3は光触媒膜である。
【0044】
基体1は、透明なポリカーボネート樹脂から構成されている。
【0045】
下地層2は、酸化ケイ素および酸化アルミニウムが重量比で50:50の割合の混合して構成されており、透明性で多孔質な被膜である。
【0046】
この下地層2は、ポリシロキサンをエタノールに溶解させた溶液にBET法による測定で平均粒径約40nmの二酸化ケイ素および同じく約37nmの酸化アルミニウムの球状微粒子を分散させた塗布液を調整して、基体1の表面に塗布し、約80℃で加熱乾燥して形成したものである。
【0047】
光触媒膜2は、BET法による測定で平均粒径約7nmの酸化チタンの超微粒子を下地層2の上に結着させて形成されている。この光触媒膜3は、下地層2の表面に形成された凹凸面に入り込み、かつ下地層2に密着している。
【0048】
本実施形態による光触媒体は、以下の比較例と比較して表1に示すように優れた作用を有している。
【0049】
比較例1:下地層を備えていない以外は本実施形態と同一仕様である。
【0050】
比較例2:二酸化ケイ素のみの下地層を備えた以外は本実施形態と同一仕様である。
【0051】
比較例3:二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを重量比で8:2の割合で混合した下地層を備えている以外は本実施形態と同一仕様である。
【0052】
比較例4:二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを重量比で2:8の割合で混合した下地層を備えている以外は本実施形態と同一仕様である。
【0053】
なお、表中「濡れ性」とは、光触媒膜形成の際の有機溶剤に対する下地層の濡れ性を意味する。「付着力」とは、光触媒膜の下地層に対する付着力を意味する。「平滑性」とは、光触媒膜の平滑性を意味する。「膜強度」とは、光触媒膜の強度を意味する。「光触媒効果」とは、光触媒膜の性能を意味する。
【0054】
また、評価点の○印は、良好で問題がないことを示し、△印はやや不良であることを示し、×印は不良であることを示し、−印は測定していないことを示している。
【0055】
【表1】
サンプル 濡れ性 付着力 平滑性 膜強度 光触媒効果
比較例1 × × × × −
比較例2 △ △ △ △ ○
比較例3 △ △ △ △ ○
本実施形態 ○ ○ ○ ○ ○
比較例4 ○ ○ △ ○ ○
さらに、本実施形態は、透過率が85%であったの対して比較例2は80%であった。
【0056】
次に、本発明の光触媒体の第2の実施形態として光触媒膜に酸化スズを0.5重量%添加した光触媒体を得た。本実施形態における光触媒膜の鉛筆法による硬度テストを行った結果、5Hであった。これに対して、前記比較例2は3Hであった。なお、透過率は本実施形態が85%であった。
【0057】
図2は、本発明の照明器具の一実施形態における街路用照明器具を示す中央断面正面図である。
【0058】
図において、21は照明器具本体、22は半球状グローブ、23は支持アーム24は支持リング、25半球状反射板、26はランプソケット、27は高圧放電ランプである。
【0059】
照明器具本体21は、支柱取付部21a、グローブ支承座21bおよびランプソケット取付部21cを備えている。
【0060】
支柱取付部21aは、筒状をなしていて、支柱(図示しない。)の先端に外側から挿入して装着される。そして、支柱に固着するための押しねじ21a1を備えている。
【0061】
グローブ支承座21bは、支柱取付部21aの先端に同軸的に一体形成されており、半球状グローブ22の下側に位置する頂部を支承するとともに、支持アーム23の下端部を固定している。また、グローブ支承座21bの中心部には、半球状グローブ22の頂部内に突出するように起立縁21b1が一体に形成されて半球状グローブ22内に侵入した水が支柱内に流入するのを防止している。
【0062】
ランプソケット支持部21cは、ランプソケット26を起立縁21b1に囲まれるように配設する。
【0063】
半球状グローブ22は、透明なポリカーボネート樹脂を成形してほぼ半球状に形成され、頂部が下側に位置するようにグローブ支承部21bに支承されるとともに、半径方向の対称位置にアーム収納溝22aが形成されている。そして、半球状グローブ22の外面には、本発明の光触媒体の第1の実施形態と同様仕様の光触媒膜が形成されている。
【0064】
支持アーム23は、金属製で、半球状グローブ22のアーム収納溝22a内外面が半球状グローブ22の外面と面一になるよう収納されている。
【0065】
支持リング24は、金属製で、支持アーム23の上端に固定されるとともに、上面に反射板支承座24aを備えている。
【0066】
半球状反射板25は、金属製で、ほぼ半球状に形成され、その開口縁が支持リング24の反射板支承座24aに載置された状態でねじ25aによって支持リング24に固定されている。
【0067】
高圧放電ランプ27は、メタルハライド放電ランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどの中から所望の種類が選択されてランプソケット26に装着される。
【0068】
そうして、半球状グローブ22および半球状反射板25は、全体としてほぼ真球状の包囲体を形成する。
【0069】
半球状グローブ22の外面には、光触媒膜が形成されているので、ばい煙などの汚れが付着しても、高圧放電ランプから発生して半球状グローブ22を透過した400nm以下の短波長の光によって光触媒膜が活性化されて、汚れを分解してセルフクリーニングを行うので、長期間にわたって高い透過率を維持することができる。
【0070】
【発明の効果】
請求項1ないし3の各発明によれば、有機質からなる基体に二酸化ケイ素および酸化アルミニウムを含み、二酸化ケイ素に対する酸化アルミニウムの割合SiO :Al が重量比で7:3〜3:7であるとともに酸化アルミニウムの平均粒径が30〜200nmである下地層を形成し、その上に平均粒径20nm以下の酸化チタンを主成分として下地層の表面に形成された凹凸面に入り込んで基体に光触媒膜を形成したことにより、基体が光触媒膜によって劣化することなく、光触媒膜を形成する際の有機溶剤に対する濡れ性が良好で光触媒膜の付着強度が向上するとともに光触媒膜の平滑性が良好で、しかも光触媒膜の透明性および膜強度も良好な光触媒体を提供することができる。
【0071】
請求項2の発明によれば、加えて下地層の酸化アルミニウムが球状の微粒子であることにより、分散性が良好で下地層を多孔質にして光触媒膜の付着強度を一層向上させるとともに、光触媒膜の平滑性をさらに向上した光触媒体を提供することができる。
【0072】
請求項の発明によれば、加えて光触媒膜に二酸化ケイ素およびまたは酸化スズを添加したことにより、付着力が良好で、光触媒膜の膜強度が大きい光触媒体を提供することができる。
【0073】
請求項の発明によれば、請求項1ないしの効果を有する照明器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光触媒体の第1の実施形態の概念的要部拡大断面図
【図2】 本発明の照明器具の一実施形態における街路用照明器具を示す中央断面正面図
【符号の説明】
1…基体
2…下地層
3…光触媒膜

Claims (4)

  1. 有機質の基体と;
    基体の表面に形成された二酸化ケイ素および酸化アルミニウムを含み、二酸化ケイ素に対する酸化アルミニウムの割合SiO :Al が重量比で7:3〜3:7であるとともに酸化アルミニウムの平均粒径が30〜200nmである下地層と;
    平均粒径20nm以下の酸化チタンを主成分として下地層の表面に形成された凹凸面に入り込んで基体に形成された光触媒膜と;
    を具備していることを特徴とする光触媒体。
  2. 下地層は、酸化アルミニウムが球状の微粒子であることを特徴とする請求項1記載の光触媒体。
  3. 光触媒膜は、酸化チタンを主成分とするとともに、二酸化ケイ素およびまたは酸化スズを添加していることを特徴とする請求項1または2記載の光触媒体。
  4. 合成樹脂製の制光手段を備えた照明器具本体と;
    照明器具本体の合成樹脂製の制光手段の少なくとも一部を基体として形成された請求項1ないしのいずれか一記載の光触媒体と;
    を具備していることを特徴とする照明器具。
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