JP4024674B2 - 複合ドクターブレード及びその製造方法 - Google Patents

Description

【０００１】
（優先権情報）
本願は、２０００年１０月２６日に出願された米国特許出願第０９／６９７，６９３号の優先権を主張する。この米国特許出願の内容はここに参照することにより全体的に本願に組み込まれる。
【０００２】
（技術分野）
本発明は種々の用途に用いられるドクターブレードに関し、この用途には、製紙における洗浄、クレーピング及び塗工、薄葉紙製造、紙匹変換及び同様な動作が含まれる。
【０００３】
（背景技術）
ドクターブレードは、洗浄、シートへの塗工又はシートの除去の目的で、製紙、薄葉紙製造及び紙匹変換機械中のロールの表面に接触する。従来のドクターブレードの材料には、金属、均質なプラスチック、及び合成繊維及び自然繊維から成る複合積層板が含まれる。
【０００４】
従来のドクターブレードは、典型的には、縁の構造に関して一体式の縁を有している。したがって、ブレードの材料の選択には、縁の摩耗に対して適当な抵抗を提供する材料と、意図した修復モードで有効に動作するために必要な抗張力と降伏強度とを有する材料との間の妥協点に達することが課せられる。この妥協の必要性から、しばしば、縁の摩耗に対する最適の耐性よりも小さい耐性のブレードの材料を選択することが生じる。
【０００５】
ブレードの縁の摩耗が特に問題をはらむ可能性のある多数の修復工程が存在する。例えば、クレーピングと塗工とにおいては、生成する紙製品の品質は、ブレードの縁の外形に直接影響される。ブレードは摩耗し、外形は変形するので、体積強度、抗張力、柔らかさ又はクレープカウントなどの製品の特性が不利益な方向に影響されてしまう。
【０００６】
洗浄動作においては、ブレードの装填は、ブレードの縁の接触領域に直接に関係する。ブレードが摩耗するにつれ、その接触領域が増大し、それに伴って接触圧が減少する。接触圧が減少すると、洗浄効果が減少する場合があり、その場合には、シート中に穴が生じ、シートが切断し、あるいはまたシートの折込が生じたりする場合がある。
【０００７】
過去には、当業者は、より頻繁にブレードを交換することにより上記問題を回避ないしは少なくとも最小にするようにしてきた。しかし、このこともまた、製紙工程の全般的な効率を減少する点において、不利である。
【０００８】
ブレードの寿命を延ばす他の試みとして、イオン窒化工程を用いてブレードの表面を硬化することが存在する。このことは、（キング他の）米国特許第５，７５３，０７６号中に開示されている。また、セラミック摩耗片を用いることも存在する。このことは（ヤマノウチの）米国特許第５，８６３，３２９号中に開示されている。多数の欠点が、イオン窒化工程に随伴している。これらの欠点には、とりわけ、高価な真空容器に対する高い設備投資、長いコイル状のブレード素材のより安い処理とは対照的な個別ブレードのバッチ処理、及び摩耗の影響を受け易い縁領域だけに対してよりも、むしろ、コストを更に増大させる、全ブレード表面に対し制御しないで処理を施すことが含まれる。
【０００９】
セラミックの摩耗片はブレード寿命を有益に伸ばすが、それらの極端な硬さにより、あるロール表面、特にヤンキーロールの鋳鉄表面、に過度の摩耗が生じる可能性がある。このことが、次に、コストのかかるロールの再研磨を頻繁に行なうことを必要とする。セラミック製の先端の尖ったブレードは、ロールの皮膜中に非常に深く侵入し、３０％ほどもブレードの装填圧力を減少させることを必要とする。クレーピング動作においては、この圧力の減少した装填により、薄葉紙特性上に有害な効果が生じる可能性がある。セラミック材料は、また、高価であり、そのようなものとして、高いブレードコストを著しくかつ不利益に増大する。
【００１０】
（発明の開示）
本発明の主たる目的は、縁の摩耗に対して大きな耐性を有する改良されたドクターブレードを提供し、よってより調和したブレード構造を提供し、それにより、生産される紙製品の品質とばらつきを改善することにある。ブレードの摩耗に対する大きな耐性により、また、ブレード交換の頻度が減少し、紙製造工程が全体的に効率化する。
【００１１】
本発明は、複合ドクターブレードであって、ブレードホルダ中に装着するのに適した幅と厚さとを有する形状で、第一の所定の抗張力と降伏強度とを有する鋼製支持帯と、前記支持帯の縁に一体的に接合され、前記第一の所定の抗張力及び降伏強度より高い第二の所定の抗張力及び降伏強度を有する高速度鋼から成る耐摩耗片であって、前記耐摩耗片は、炭化物の偏析がほとんどなく、十分に分散した球状炭化物を有する耐摩耗片と、を備えたことを特徴とする。
【００１２】
本発明のこれらの及び他の特徴と利点とを、添付の図面を参照して、これからきわめて詳細に記述する。
【００１３】
（発明を実施するための最良の形態）
最初に図１を参照すると、本発明に係る複合ドクターブレードは全体的に１０で、鋼製支持帯１２を備えるように表され、鋼製支持帯１２は、（図示しない）従来のブレードホルダ中に装着するのに適した幅Ｗａと厚さＴａとを有している。支持帯１２は、所定の抗張力と降伏強度とを有し、例えば、Ｄ６Ａ，６１５０，６１３５，１０９５，１０７５，３０４ＳＳ及び４２０ＳＳから成るグループから選択することができる。
【００１４】
高速度鋼（「ＨＳＳ」）の耐摩耗片１４が、支持帯１２の縁に１６におけるように一体的に接合されている。耐摩耗片１４は、支持帯１２の抗張力と降伏強度より高い抗張力と降伏強度とを有し、約５５Ｒｃから６５Ｒｃの間の硬度を有している。このような材料は、修復用途においてしばしば遭遇する高温の状況で、プラスチックの変形と摩耗とを有利に阻止する。
【００１５】
支持帯１２と耐摩耗片１４とは電子ビーム溶接により接合することが望ましい。耐摩耗片１４は、Ｗａ＋Ｗｂとして測定される全ブレード幅の約０．０２５から０．３３の間の幅Ｗｂを有している。
【００１６】
耐摩耗片１４と支持帯１２とは、図１に示すように、同一の厚さＴａを有していて良い。又は、図２及び図３に示すように、耐摩耗片１４は、支持帯の厚さＴａより厚い厚さＴｂを有するようにしても良い。図２において、より厚い耐摩耗片は支持帯に対して偏っており、平坦な連続する表面を一方の側に形成し、他方の側に段差のある形状を形成している。図３において、耐摩耗片は、中心に位置しており、それによりブレードの両側に段差のある形状を形成している。
【００１７】
耐摩耗片の材料は、モリブデン高速度鋼、タングステン高速度鋼及び中間の高速度鋼から成るグループから選択することが望ましい。これらの高速度鋼は、ＡＳＭ金属ハンドブックの「特性と選択」中の「鉄、鋼、及び高性能合金」（第１巻第１０版、著作権：ＡＳＭ ＩＮＴＥＲＮＡＴＩＯＮＡＬ（１９９０年３月））中で特定される。耐摩耗片１４は、炭化物の偏析がほとんどなく、球状炭化物が十分に分散していることが望ましい。この球状炭化物は、ＡＳＴＭ分粒表に基づく測定で、約３〜６単位、望ましくは約５〜６単位、の粒径を有することが望ましい。
【００１８】
図４を参照すると、本発明に係るドクターブレードを製造する望ましい方法が示されている。この方法は、順次実行される次のステップを備えている。
【００１９】
ａ）ブロック１８において、耐摩耗片１４を支持帯１２に電子ビーム溶接して複合ブレード構造を形成するステップ、
ｂ）ブロック２０において、望ましくは約１３００°Ｆ〜１４５０°Ｆの間の第１の温度まで複合ブレード構造１０を加熱して、この溶接部品を焼きなましし、矯正するステップ、
ｃ）ブロック２２において、約１５００°Ｆ〜２２００°Ｆの間の第２の温度までこの複合構造を再加熱し、耐摩耗片１４を部分的に硬化するステップ、
ｄ）ブロック２４において、この複合構造を焼入れするステップ、及び
ｅ）ブロック２６において、約８５０°Ｆ〜１２００°Ｆの間の第３の温度までこの複合構造を再加熱し、約５５Ｒｃ〜６５Ｒｃの間の範囲内の水準まで耐摩耗片の硬度を減少させるステップ。
【００２０】
他の産業上の用途において十分に硬化した高速度鋼を使用する場合に比して、本発明により部分的に硬化した場合には、耐摩耗性の著しい改善ができながら、ロール表面により融和性のあるより低い硬度レベルが得られ、このことにより、大半の例において、少なくとも２倍の有用なブレード寿命が得られる。支持帯の厚さを一定に保ちながら耐摩耗片の厚さを変えることにより、ブレードホルダを代えることを要せずに、紙の特性の微調整ができる。本発明の複合ブレード素材は、長いコイル状とすることにより、連続的かつ経済的に生産でき、それにより従来のバッチ処理に比較して大きくコストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明に係るドクターブレードの一実施の形態を示す斜視図である。
【図２】 本発明に係るドクターブレードの他の実施の形態を示す図１と同様な斜視図である。
【図３】 本発明に係るドクターブレードの更に他の実施の形態を示す図１と同様な斜視図である。
【図４】 本発明に係るドクターブレードを製造する方法を示すブロックダイアグラムである。

Claims (13)

1. 複合ドクターブレードであって、
   ブレードホルダ中に装着するのに適した幅と厚さとを有する形状で、第一の所定の抗張力と降伏強度とを有する鋼製支持帯と、
   前記支持帯の縁に一体的に接合され、前記第一の所定の抗張力及び降伏強度より高い第二の所定の抗張力及び降伏強度を有する高速度鋼から成る耐摩耗片であって、前記耐摩耗片は、炭化物の偏析がほとんどなく、十分に分散した球状炭化物を有する耐摩耗片と、
   を備えたことを特徴とする複合ドクターブレード。
2. 請求項１に記載のドクターブレードであって、前記耐摩耗片は、電子ビーム溶接により前記支持帯に接合されることを特徴とするドクターブレード。
3. 請求項１に記載のドクターブレードであって、前記耐摩耗片は、全ブレード幅の０．０２５〜０．３３の間の幅を有することを特徴とするドクターブレード。
4. 請求項１に記載のドクターブレードであって、前記耐摩耗片の厚さは、前記支持帯の厚さより厚いことを特徴とするドクターブレード。
5. 請求項４に記載のドクターブレードであって、前記耐摩耗片の厚さは、前記支持帯の厚さの２倍よりは厚くないことを特徴とするドクターブレード。
6. 請求項１に記載のドクターブレードであって、前記耐摩耗片の材料は、モリブデン高速度鋼、タングステン高速度鋼から成るグループから選択されることを特徴とするドクターブレード。
7. 請求項１に記載のドクターブレードであって、前記耐摩耗片は、十分に分散した、３μm〜６μmの範囲の粒径を有する球状炭化物を有することを特徴とするドクターブレード。
8. 請求項７に記載のドクターブレードであって、前記球状炭化物は、５μm〜６μmの範囲の粒径を有することを特徴とするドクターブレード。
9. 請求項１に記載した複合ドクターブレードを製造する方法であって、
   ａ）前記耐摩耗片を前記支持帯に電子ビーム溶接して複合構造を形成するステップと、
   ｂ）前記複合構造を第１の温度まで加熱して、該複合構造を焼きなましし、矯正するステップと、
   ｃ）前記複合構造を第２の温度まで加熱した後、前記耐摩耗片を焼入れして部分的に硬化するステップと、
   ｄ）前記複合構造を第３の温度まで再加熱して、焼き戻しして前記耐摩耗片の硬度を特定の範囲内のレベルまで減少させるステップと
   を備えたことを特徴とする方法。
10. 請求項９に記載の方法であって、前記ステップ（ｂ）における前記第１の温度は、１３００°Ｆ〜１４５０°Ｆの間にあることを特徴とする方法。
11. 請求項９に記載の方法であって、前記ステップ（ｃ）における前記第２の温度は、１５００°Ｆ〜２２００°Ｆの間にあることを特徴とする方法。
12. 請求項９に記載の方法であって、前記ステップ（ｄ）における前記第３の温度は、８５０°Ｆ〜１２００°Ｆの間にあることを特徴とする方法。
13. 請求項２、３、４、６のいずれか１項に記載のドクターブレードであって、前記耐摩耗片は、５５Ｒｃ〜６５Ｒｃの間の硬度を有することを特徴とするドクターブレード。

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