JP4023965B2 - 内燃機関の潤滑装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はフィードポンプとスカベンジポンプを備えた内燃機関のドライサンプ式潤滑装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
オイルタンクからエンジン各部へオイルを送って潤滑するためのフィードポンプと、潤滑後エンジン底部へ溜まるオイルをオイルタンクへ送るためのスカベンジポンプを備えたドライサンプ式潤滑装置は公知である(一例として特開平2−9904号)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
バギー車のような荒地や傾斜の急な道路を走行する車両は、地上最低高が確保され且つ重心が低いものでなければならず、その結果、オイルパン等のオイル溜まり構造は制約を受け、大きな凹凸をつけることができない。このためにドライサンプ方式の潤滑を採用して対処しているが、こうすると車体の傾きを考慮に入れてオイル溜まりの構造を決定しなければならず、形状決定についての制約が大きかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願発明に係る内燃機関の潤滑装置は、オイルタンク内の潤滑油を内燃機関の各潤滑部に供給するフィードポンプと、前記内燃機関のオイル溜まりに溜まった潤滑油を前記オイルタンクに戻すスカベンジポンプとを有する内燃機関の潤滑装置において、前記内燃機関のオイル溜まりを複数の区画に分割するとともに、区画された各オイル溜まりに対応して複数個のスカベンジポンプを設け、前記フィードポンプ及び複数個のスカベンジポンプのポンプハウジングは、クランクケースに内蔵されているとともに前記フィードポンプの吐出側油路の油圧を逃すリリーフバルブが一体に設けられているたことを特徴とする。
【0005】
【発明の効果】
オイル溜まりとしてオイルをためる凹部又は区画を複数個設け、これに対応してスカベンジポンプを複数個設けたので条件の異なる複数のオイル溜まりからオイルを吸い上げることができ、車体姿勢が大きく変化しても、いずれかのオイル溜まりとスカベンジポンプの組み合わせによりオイルの吸い上げを維持でき易くなるから、車体の傾きによる油面の影響を最小限に押さえ安定した潤滑油の送給が可能となる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて4輪バギー車に適用された一実施例を説明する。図1は実施例に係る潤滑系統図、図2は実施例の適用された4輪バギー車の車体要部側面図、図3オイルポンプの断面図は、図4はオイルポンプ及びそのオイル通路構造を示す断面図である。
【0007】
まず図2により4輪バギー車の全体構造を概説する。この4輪バギー車は、車体フレーム1の前後へそれぞれ左右一対づつの前輪2及び後輪3を備え、車体フレーム1の中央部にエンジンと変速機を一体に備えたパワーユニット4が支持されている。パワーユニット4はクランク軸5を車体の前後方向へ向けて配置する縦置き形式である。
【0008】
この4輪バギー車は4輪駆動式であり、パワーユニット4の下部にクランク軸5と平行に設けられている出力軸6により、前輪プロペラ軸7を介して前輪2を駆動し、後輪プロペラ軸8を介して後輪3を駆動する。
【0009】
パワーユニット4を構成するクランクケース10の前側は前ケースカバー11で覆われ、後部側は後ケースカバー12で覆われ、これらでパワーユニットケースを構成している。クランクケース10はさらに前ケース10aと後ケース10bとに前後へ分割されている。また、クランクケース10の上部にはシリンダブロック13、シリンダヘッド14及びシリンダヘッドカバー15が取付けられ、シリンダヘッド14の吸気口へは気化器16が接続され、さらにこの気化器16には後方からエアクリーナー17が接続されている。シリンダヘッド14の排気口には排気管18が接続されている。
【0010】
パワーユニット4の前方にはオイルクーラー20が配置され、送り側ホース21を介してクランクケース10に設けられたオイルポンプと通じ、戻り側ホース22を介してクランクケース10内に設けられたオイルポンプと通じている。図中の符号23は冷却ファン、24はハンドル、25は燃料タンク、26は鞍乗り型シートである。
【0011】
次に、このパワーユニット4におけるドライサンプ式潤滑系統を説明する。図1に示すように、このパワーユニット4に設けられるオイルポンプ30は、1つのフィードポンプ31と、2つのスカベンジポンプ、すなわちメインスカベンジポンプ32とサブスカベンジポンプ33を有する。
【0012】
フィードポンプ31はオイルタンク34からストレーナ35を介してオイルを吸引し、オイルフィルター36へ吐出する。オイルフィルター36から吐出されたオイルは、エンジン各部の潤滑部へ送られて潤滑する。
【0013】
潤滑後のオイルは、オイル溜まりもしくはクランクケース10の底部等のオイル溜まり37,38へ滴下して溜まりる。オイル溜まり37,38は、高さやクランクケース10内の前後・左右への配置等が異なるように設けられ、車体姿勢がどのように変化してもいずれかのスカベンジポンプからオイルを吸引できるように設定されている。
【0014】
これらのオイル溜まり37,38に溜まったオイルは、メインスカベンジポンプ32、サブスカベンジポンプ33によりそれぞれストレーナ39,40を介して吸引され、それぞれの吐出側より送り側ホース21を介してオイルクーラー20へ送られ、ここで冷却されたオイルは戻り側ホース22を介して再びオイルタンク34へ戻される。オイルタンクはパワーユニット4の外部へ設けてもへ内蔵してもよい。
【0015】
なお、フィードポンプ31の吐出側通路とメインスカベンジポンプ32及びサブスカベンジポンプ33の吐出側通路の間にリリーフバルブ41が設けられ、フィードポンプ31の吐出側通路内における油圧が所定のリリーフ圧を越えたとき、リリーフバルブ41を開いて過剰分を逃がし、メインスカベンジポンプ32及びサブスカベンジポンプ33からの吐出オイルと合わせてオイルクーラー20へ送るようになっている。
【0016】
次に、オイルポンプについて説明する。図3及び図4に示すように、オイルポンプ30はクランクケース10の前ケース10aと後ケース10bの間に設けられ、クランクケース10へ内蔵されている。オイルポンプ30は一体化されているフィードポンプ31、サブスカベンジポンプ33及びメインスカベンジポンプ32が、図示しないチェーンを介してクランク軸と同期回転するスプロケット42を一端に設けた駆動軸43により一緒に駆動されるようになている。
【0017】
すなわち、駆動軸43上にフィードポンプロータ44、サブスカベンジポンプロータ45、メインスカベンジポンプロータ46が軸方向へ並べてそれぞれが一体回転可能に取付けられた。3ロータ並設構造をなし、各ロータ部分は独立したポンプ室に設けられた個別ポンプを構成し、これらの個別ポンプがフィードポンプ31、サブスカベンジポンプ33及びメインスカベンジポンプ32を構成する。
【0018】
オイルポンプ30のポンプハウジングは駆動軸43の軸直交方向へ4分割された第1ブロック47、第2ブロック48、第3ブロック49及び第4ブロック50からなり、通しボルト51で相互に連結一体化されている。第3ブロック49はサブスカベンジポンプ33とメインスカベンジポンプ32の仕切壁を兼ねている。
【0019】
サブスカベンジポンプ33はオイル溜まり38上に溜まったオイルをその上方に設けられストレーナ40から後ケース10b中に形成されたサブスカベンジポンプ吸入口52を介して第4ブロック50に形成されたサブ通路53及びこれに連通するよう第2ブロック48と第3ブロック49の間に形成されたサブ通路54より吸気し、第2ブロック48に形成したサブスカベンジポンプ吐出口55へ吐出する。
【0020】
メインスカベンジポンプ32はオイル溜まり38よりも低いクランクケース10の中央底部のオイル溜まり37上に溜まったオイルをストレーナ39から吸い上げ、後ケース10bに設けられたメインスカベンジポンプ吸入口56より第4ブロック50に形成されたメイン通路57から吸引し、第4ブロック50に形成されたメインスカベンジポンプ吐出口58へ吐出する。
【0021】
サブスカベンジポンプ吐出口55とメインスカベンジポンプ吐出口58はそれぞれ集合吐出通路59と連通し、各スカベンジポンプから吐出されたオイルは、この集合吐出通路59を経て前ケース10a側に形成されたスカベンジポンプ吐出通路60へ送られ、さらに送り側ホース21を介してオイルタンク20へ送り出される。
【0022】
フィードポンプ31は前ケース10aのオイル入り口(図示せず)から第1ブロック47及び第2ブロック48間にに形成されたフィードポンプ吸入口61から吸引し、第1ブロック47及び第2ブロック48に設けられ、フィードポンプ吐出口62及びこれに連通して前ケース10aに設けられたオイルフィルタ連通路63を経てオイルフィルター36へ送られる。
【0023】
図4に明らかなように、オイル溜まり37とオイル溜まり38はクランクケース10の底部において前後方向へ分離し、隔壁28により区画され、メインスカベンジポンプ32はオイル溜まり37から、サブスカベンジポンプ33はオイル溜まり38からそれぞれ別々にオイルを吸い上げる。また、オイル溜まり37がほぼクランクケース10の底部中央で、車体姿勢が通常の場合に最もオイルが溜まり易い場所あるのに対してオイル溜まり38は後方側かつ、図では明らかでないが、左右方向へずれた位置に配設され、車体姿勢が前後や左右へ大きくしたとき、オイルが移動しやすい位置になっている。
【0024】
なお、図3及び4に明らかなように、オイルポンプ30の上部には、フィードポンプ吐出口62と連通するリリーフ室64が第1ブロック47から第4ブロック50にかけて形成され、その中間部である第2ブロック48部分は狭い通路である小径筒部65をなし、この小径筒部65内をリリーフバルブ41が駆動軸43と平行する方向へ液密に摺動自在となっている。
【0025】
リリーフバルブ41は筒状をなし、その中間部にフランジ66が設けられ、リリーフスプリング67に付勢されて小径筒部65の一端部であるシート部68へ押し当てられている。リリーフバルブ41のフランジ66よりフィードポンプ吐出口62側部分に貫通口69が設けられている。但し、この貫通口69は、フランジ66がシート部68へ押し当てられている限り、小径筒部65の内壁によって塞がれリリーフバルブ41内のオイルを貫通口69から逃がさないようになっている。
【0026】
リリーフバルブ41のフランジ66が設けられた中間部はリリーフバルブ41内を左右に区画する隔壁70が設けられ、ここにパイロット穴71が左右を連通して形成されている。またリリーフバルブ41のフィードポンプ吐出口62と反対側端部はリリーフスプリング67の一端に対するバネ受けを兼ねたガイド72の外周にはまり、リリーフバルブ41の図右側端部の開口部はガイド72により閉じられている。
【0027】
フィードポンプ吐出口62へ吐出されるオイルの油圧がリリーフ圧すなわちリリーフスプリング67のセット荷重に打ち勝つと、リリーフバルブ41がリリーフスプリング67を圧縮する方向へ移動し、フランジ66がシート部68から離座し、やがて貫通口69が小径筒部65から抜け出すと第4ブロック50側のリリーフ室64へ連通し、フィードポンプ吐出口62側からリリーフ室64へオイルの一部を逃がすことによりフィードポンプ31の吐出圧を一定レベルに下げる。
【0028】
リリーフ室64はその端部の排出口73がメインスカベンジポンプ吐出口58へ直接連通しており、リリーフ室64へ逃がされたオイルはメインスカベンジポンプ吐出口58へ戻されて、さらに集合吐出通路59においてサブスカベンジポンプ吐出口55及びメインスカベンジポンプ吐出口58からの吐出オイルと一緒になってオイルタンク20側へ送られる。これらの排出口73、メインスカベンジポンプ吐出口58及びサブスカベンジポンプ吐出口55及び集合吐出通路59はいずれも、オイルポンプ30ハウジングとしての意味で一体である部材中に直接形成された通路である。
【0029】
次に、本実施例の作用を説明する。オイルポンプ30は共通軸である駆動軸43上に3つのロータ、すなわちフィードポンプロータ44、サブスカベンジポンプロータ45及びメインスカベンジポンプロータ46を並設することにより、3つのポンプ、すなわちフィードポンプ31、サブスカベンジポンプ33及びメインスカベンジポンプ32を一体化している。
【0030】
したがって、これら3つのポンプを別々に設ける場合と比べて、部品点数を削減し、配管を省略することができ、かつクランクケース10内における配置を集合できるので必要配置スペースを少なくできることにより、スカベンジポンプを大容量化できる。しかもその大容量の割合には全体を小型かつ軽量化し、オイルポンプ30の構造を簡単にして製造を容易にする。
【0031】
また、2つのメインスカベンジポンプ32とサブスカベンジポンプ33を設けることにより、クランクケース10の底部のうち前後方向中央部のオイル溜まり37と後部のオイル溜まり38とに異なる位置から別々にオイルを吸い上げるので、車体姿勢の変化に対応して各部いずれかのオイル溜まり37,38から常時オイルを吸い上げでき、安定した潤滑ができる。
【0032】
特に、オイル溜まり37と別個の後方側に位置するオイル溜まり38からサブスカベンジポンプ33でオイルを吸い上げたので、急坂登坂時などの車体前部が上がった状態でも、オイル溜まり37側が油面変動により、メインスカベンジポンプ32で吸い上げにくくなってもオイル溜まり38側は隔壁28のコーナー部へ移動したオイルが溜まりやすいので、サブスカベンジポンプ33はこのような状態でも効果的に潤滑できる。したがって、クランクケース10の底部を車体姿勢の変化に適用してオイルを集めやすい特別な工夫をしなくても、メインスカベンジポンプ32とサブスカベンジポンプ33の配置を適合させることで容易にオイルの吸い上げを最適状態にできるから、クランクケース10の底部に対する設計の自由度が高くなり、クランクケース10の底部に対する必要な最低地上高を維持しつつ低重心化を図ることが容易になる。したがって、ドライサンプ式潤滑構造を採用した4輪バギー車などの不整地走行車両に好適となる。
【0033】
また、リリーフバルブ41の排出口73をメインスカベンジポンプ吐出口58と同一の第4ブロック50中にて直接連通接続させて形成できるので、配管の必要がなくなり構造を簡単化できる。
【0034】
なお、本願発明は上記実施例に限定されず、種々に応用・変形が可能であり、例えばフィードポンプ31側を複数ロータにすることができ、さらにはフィードポンプ及びスカベンジポンプ双方を複数づつ設けることができる。また、ドライサンプ式であれば、4輪バギー車に限らず他の車両に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る潤滑系統図
【図2】実施例の適用された4輪バギー車の車体要部側面図
【図3】実施例に係るオイルポンプの断面図
【図4】オイルポンプ及びそのオイル通路構造を示す断面図
【符号の説明】
パワーユニット4、オイルクーラー20、オイルタンク34、クランクケース10、オイルポンプ30、駆動軸43、フィードポンプロータ44、サブスカベンジポンプロータ45、メインスカベンジポンプロータ46、フィードポンプ31、サブスカベンジポンプ33、メインスカベンジポンプ32、オイル溜まり38、オイル溜まり37、メインスカベンジポンプ吸入口56、サブスカベンジポンプ吐出口55、メインスカベンジポンプ吐出口58、メイン通路57、フィードポンプ吸入口61、フィードポンプ吐出口62、リリーフバルブ41、排出口73
Claims (4)
- オイルタンク内の潤滑油を内燃機関の各潤滑部に供給するフィードポンプと、前記内燃機関のオイル溜まりに溜まった潤滑油を前記オイルタンクに戻すスカベンジポンプとを有する内燃機関の潤滑装置において、
前記内燃機関のオイル溜まりを複数の区画に分割するとともに、区画された各オイル溜まりに対応して複数個のスカベンジポンプを設け、
前記フィードポンプ及び複数個のスカベンジポンプのポンプハウジングは、クランクケースに内蔵されているとともに前記フィードポンプの吐出側油路の油圧を逃すリリーフバルブが一体に設けられていることを特徴とする内燃機関の潤滑装置。 - 前記複数個のスカベンジポンプは一つのオイルポンプの駆動軸上に平行に配置された複数のロ一タより構成され、
前記ポンプハウジングは、前記ロータをそれぞれ収納するポンプ室が形成された複数のブロックと、該複数のブロックの問に配置され前記ポンプ室を仕切る仕切壁とから構成されることを特徴とする請求項1に記載した内燃機関の潤滑装置。 - 前記オイル溜まりから前記スカベンジポンプに連通する通路は、前記ブロックと仕切壁とから構成されることを特徴とする請求項2に記載した内燃機関の潤滑装置。
- 前記内燃機関は、4輪バギー車にクランク軸を車体の前後方向へ向けて配置され、前記オイル溜まりの一方は前記クランクケースの底部中央に配置されるとともに、前記オイル溜まりの他方は前記内燃機関の後方側かつ左右方向へずれた位置に配設されていることを特徴とする請求項1乃至3記載の内燃機関の潤滑装置。
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