JP4023280B2 - モータ制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は交流モータの制御装置に係り、特に同期モータの回転子の磁極位置をセンサレスで検出し、前記交流モータを制御する制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開平7−245981号公報
【特許文献2】
特開平8−149898号公報
同期モータの速度やトルクを高応答に制御するには、モータ回転子の磁極位置に基づいてモータ電流を磁束方向(d軸)とそれに直交する方向(q軸)に座標変換して制御をおこなうベクトル制御が採用されている。その制御をおこなうには、磁極位置を検出するセンサを必須要件として制御を行うことになるため、磁極位置センサは欠かせないものとなっている。しかし、近年、磁極位置を位置センサで検出することなく同期モータを制御する、いわゆる「磁極位置センサレスの制御方式」が種々提案されてきている。
【0003】
同期モータは一般に円筒型と突極型(Ld≠Lq、Ldはd軸方向のインダクタンス、Lqはq軸方向のインダクタンス)に分離でき、そのうち突極型同期モータの磁極位置推定方式は、モータの発生する誘起電圧を用いる方法の他、モータの突極性を用いる方法などがある。
【0004】
例えば先行技術として、前記特許文献1がある。この公報には、モータに交番電圧を印加して、それによって発生するモータ電流を交番電圧に対して平行成分と直交成分方向に分離し、モータ電流の少なくとも一方向の電流成分に基づいて回転子位置を検出する方式が記載されている。
【0005】
また、前記特許文献2がある。この公報の記載は一次巻線の漏れインダクタンスはティース部の磁気飽和の影響を受けて変化する。そこで基本波成分とは別の交流電圧を重畳し、これにより流れる電流と交流電圧の関係から巻線のインダクタンスを計測し、このインダクタンスの変化から磁束を推定している。そして、この推定磁束に応じてインバータの出力電圧/電流を制御することが記載されている。
【0006】
上記従来技術は突極性といったモータの特性に基づいた理論的なものであり、モータ電流を入力して高精度に磁極位置を推定できる有効な方式ではある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では、突極型モータに交番電圧を印加した場合に、印加ベクトルと磁束方向(d軸)とが平行、または直交しているとき以外は、交番電圧の印加ベクトルに対し直交する方向にも電流が発生するといった特性を利用したものである。したがって、上記特性を利用した回転子位置(磁極位置)の検出は、モータ電流により磁気飽和が生じない範囲、すなわち、比較的小電流領域においては有効な方法である。
【0008】
しかしながら、モータ電流により局所的な磁気飽和が生じ、モータ電流方向のインダクタンスが最小となってしまうような大電流領域では、印加ベクトルと磁束方向(d軸)とが平行、または直交している場合においても、交番電圧の印加ベクトルに対し直交する方向にも電流が流れてしまい、上記特性を利用した回転子位置が検出できなくなる可能性がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、大電流によりモータ電流方向に局所的な磁気飽和が生じた場合においても安定に、かつ高精度に回転子位置を推定することが可能な位置推定手段を有するモータ制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題は以下の手段により解決することができる。
突極性を有する交流モータと、前記交流モータに電圧を印加するPWMインバータと、前記PWMインバータを制御するコントローラとを備えたモータ制御装置において、前記コントローラは、前記交流モータの、電流ベクトル方向のモータのインダクタンスと、前記電流ベクトルに対して直交する方向のモータのインダクタンスとを検出し、検出された直交する両方向のモータインダクタンスに基づいて前記交流モータの回転子位置を推定する位置推定手段を備えたことに特徴がある。
【0011】
また、前記コントローラは、インダクタンス検出用の電圧信号を前記交流モータに印加し、前記電圧信号によって発生する電流変化に基づいて前記インダクタンスを検出することにある。
【0012】
また、突極性を有する交流モータと、前記交流モータに電圧を印加するPWMインバータと、前記PWMインバータを制御するコントローラとを備えたモータ制御装置において、前記コントローラは、位置検出用の電圧信号を前記交流モータの電流ベクトル方向および前記電流ベクトルに対して直交する方向に印加し、前記電圧信号により発生した前記電流ベクトル方向の電流変化および前記電流ベクトルに対して直交する方向の電流変化を検出し、前記電流ベクトルに対して直交する方向の電流変化と予め設定された基準電流変化との差、あるいは前記電流ベクトルに対して直交する方向の電流変化と前記交流モータの電流ベクトル方向の電流変化との差と予め設定された基準差との差、に基づいて前記交流モータの回転子位置を推定する位置推定手段を備えたことにある。
【0013】
また、前記コントローラは、位置検出用の電圧信号を前記交流モータの電流ベクトル方向、および前記電流ベクトルに対して直交する方向に印加し、前記電圧信号により発生した前記電流ベクトル方向の電流変化と前記電流ベクトルに対して直交する方向の電流変化を検出し、前記電流ベクトルに対して直交する方向の電流変化と予め設定された基準電流変化との差、あるいは前記電流ベクトルに対して直交する方向の電流変化と前記交流モータの電流ベクトル方向の電流変化との比と予め設定された基準比との差、に基づいて前記交流モータの回転子位置を推定する位置推定手段を備えたことに特徴がある。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について図1を用いて説明する。図1は本発明の第1の実施例を示すモータ制御装置の構成図である。まず、モータ制御系の構成を説明する。コントローラ1では、トルク指令Tr*を入力して交流モータ2が指令通りのトルクを発生するように、PWM信号発生部7の出力信号をPWMインバータ3に出力する。このとき、コントローラ1内の電流指令発生部4においては、トルク指令Tr*とモータ速度ωm^を入力し、現在の動作点での最高効率となるような電流指令iq*、id*を決定する。ここで、id*はモータ回転子の磁束方向(d軸)の電流指令、iq*はモータ回転子の磁束方向に直交する方向(q軸)の電流指令である。
【0015】
d−q軸座標は図2に示すような回転座標系であり、静止座標系α-β軸(U−V−W相を2相変換した座標)に対して、モータ角速度ωで回転する座標である。このとき、基準となるα軸からモータの回転子の磁束方向(d軸)までの位相を回転子位置(磁極位置)θとする。図1に示すように、本実施例では電流制御部5において、回転座標d−q軸上での電流制御演算を行い、d−q軸での電圧指令Vdc,Vqcを決定する。このようにd−q軸座標での電流制御を行うことにより、磁束方向の電流とそれに直交する(トルクに作用する)電流をそれぞれ高精度に制御することができ、モータのトルクならびに磁束が制御可能となる。
【0016】
さらに、3相変換部6において、d−q軸からU−V−W相への座標変換を行い、3相の交流電圧指令Vu*、Vv*、Vw*を得る。PWM信号発生部7では交流電圧指令信号Vu*、Vv*、Vw*をPWMインバータ3に印加するためのPWM信号に変換する。また、3相の電流センサ8u、8v、8wから検出されたモータ電流iu、iv、iwをコントローラ1の電流検出部9で取り込み、dq変換部10においてd−q軸の検出電流id^、iq^を演算し、電流制御部5にフィードバックする。以上がモータ制御系の構成であり、一般にベクトル制御と呼ばれる制御方法である。
【0017】
ここで、3相変換部6およびdq変換部10での座標変換式は数式(1)、(2)で表される。前者はd−q軸電圧から3相電圧に変換する演算式、後者は3相電流からd−q軸電流に変換する演算式である。
【0018】
【数1】
Figure 0004023280
【0019】
【数2】
Figure 0004023280
【0020】
このように、座標変換には回転子位置θが必要となる。従来から、この回転子位置の検出は位置センサが用いられてきた。さらに現在では、システムの低コスト化、高信頼化等を実現するため、位置センサを不要とする位置センサレスシステムが提案されている。このような位置センサレスシステムを実現するための位置推定方式はいくつか方式が考えられる。
【0021】
一般には、誘起電圧が検出(推定)できるモータの中高速域では、誘起電圧に基づく方式が適用される。また、誘起電圧の検出が困難な停止、低速域ではモータの突極性(Ld≠Lq)を利用した方式が適用される。ここで、Ldはd軸方向のインダクタンス、Lqはq軸方向のインダクタンスであり、特にLd<Lqの関係を逆突極性と称する。この逆突極性を有するモータのインダクタンス特性は例えば、図3に示すような特性である。
【0022】
図3は、d、q軸方向でのインダクタンスの大きさを示している(楕円の中心から円周までの距離をインダクタンスの大きさとして示している)。逆突極性の場合、磁束方向のインダクタンスが最小となり、磁束方向に直交する方向のインダクタンスが最大となる。このような突極性を利用して、磁極位置を検出(推定)する場合、モータに位置検出用の電圧信号を印加(重畳)し、それによって発生するモータ電流の変化を検出し、インダクタンスの大きさを計測する。このとき、インダクタンスが最小となる方向が回転子の磁束方向(磁極位置)となる。さらに、逆突極性を有するモータでは、磁束方向かあるいはそれに直交する方向に電圧信号を印加した場合、印加方向に位置誤差を含んでいた場合には、印加方向に直交する方向にも干渉分の電流変化が生じる。この干渉分の電流変化を検出し、印加方向の位置誤差分を推定するという方式もある。
【0023】
しかしながら、上記のような突極性を利用した位置検出が行える場合は、図3に示すようなインダクタンス特性をモータが示す場合に限られる。すなわち、電流による磁気飽和が生じても、回転子の磁束方向(d軸)のインダクタンスか、もしくは磁束方向に直交する方向(q軸)のインダクタンスが最小(または最大)となる場合である。これに対して、電気自動車やハイブリッド車等に用いられている高出力密度のモータでは、大電流を流す高負荷域において電流ベクトルの方向に磁気飽和が生じ、d軸方向のインダクタンスが最小とならない場合がある。このような場合のインダクタンスの分布を図4に示す。
【0024】
図4において、Iは電流ベクトルを示す。図に示すように、電流Iにより磁気飽和が生じており、その方向のインダクタンスが最小となっている。このような特性になっているときは、前述の突極性に基づく位置推定方式を適用した場合、推定される位置は、d軸方向ではなく電流ベクトル方向となる。したがって、正確に磁極位置の推定ができなくなる可能性がある。
【0025】
そこで、このような場合には、以下のような方法で磁極位置の検出(推定)を行う。以下に述べる位置検出方式の基本的な考え方は、磁気飽和を起こしていない方向のインダクタンスと、モータ電流により磁気飽和を生じている方向のインダクタンスをそれぞれ検出し、それら2方向のインダクタンスによって回転子の位置を推定するものである。
【0026】
例えば、電流ベクトルIにより磁気飽和を生じ、その方向のインダクタンスが著しく減少した場合、反対に磁気飽和の影響を最も受けにくい方向は、電流ベクトルIに直交する方向である(図4のY方向)。そこで、基本的には電流ベクトルIに直交する方向のインダクタンスを計測することにより、現在の回転子位置を推定することが可能である。しかしながら、位置推定に必要となるインダクタンスの値は、電圧信号をモータに印加し、それによって発生する電流変化量に基づき計測するため、PWMインバータの入力電圧となるバッテリー電圧Vbの変動により影響を受け,ばらつきが生じることになる。
【0027】
例えば、図4のインダクタンス特性に対して、バッテリー電圧Vbが減少した場合に計測されるインダクタンス特性は図5のようになる。図5に示すようにVbが減少した場合、検出される電流変化量も小さくなるので、それによって計測されるインダクタンスは真値に対して逆に大きくなる。この入力電圧の変動に対しては、そのときの入力電圧値に対してインバータゲインを調整することにより、ある程度対応することは可能である。しかしながら、回転子位置を推定するためより高精度なインダクタンスの検出が必要となる場合には、さらに磁気飽和を生じている電流ベクトルI方向(図4のX方向)のインダクタンスも計測し、この2つのインダクタンスの大きさにより回転子位置を推定するようにする。
【0028】
これにより高精度な位置推定が可能となる。図1では、位置推定手段11において回転子位置を推定する。本制御システムでは、位置推定手段11により位置検出値θcが出力され、3相変換6およびdq変換10での座標変換演算に用いられる。さらに、モータ速度ωm^は速度演算部12において、位置検出値θcの時間変化率を演算することによって得られる。
【0029】
以下、位置推定手段11の動作について述べる。まず、印加方向切り替え手段13では、d−q軸座標での電流指令id*、iq*を入力し、電流ベクトルIの方向(X軸)、および電流ベクトルIに直交する方向(Y軸)を演算する。さらに、位置推定手段11において、この二つの方向(X,Y)に位置検出用の電圧信号を印加し、この印加した電圧信号により発生した2方向それぞれの電流変化を求める。このうち、電流ベクトルIの方向の電流変化は磁気飽和の影響を受けたインダクタンスにより生じたものであり、さらに電流ベクトルIに直交する方向の電流変化は磁気飽和の影響を受けにくく、モータ本来のインダクタンスによって生じる電流変化となる。
【0030】
位置推定手段11の構成は以下のようになる。図6は位置推定手段の一構成例を示す図である。まず、図1の印加方向切り替え手段13において、電流指令id*、iq*を入力し、電流ベクトルIの方向と電流ベクトルIに直交する方向(X,Y)を演算する。また、実際のモータ電流は電流制御により制御座標上でのid、iqに制御されるため、電流指令の代わりにフィードバック電流値id^、iq^を入力してもよい。そして、電圧信号演算部15において、印加方向切り替え手段13からの印加方向指令XYを受けて、モータに印加する位置推定用の電圧信号vdh、vqhを演算し決定する。
【0031】
ここで、前記電圧信号(vdh、vqh)はモータのインダクタンスを計測するための信号であり、一般には矩形波状のパルス信号である。電圧信号演算部15では、パルスの周波数、振幅を演算する他、印加する方向を印加方向指令X,Y,に応じて交互に切り替えていく。さらに、電流変化演算部16では、検出されたモータ電流iu、iv、iwから、前記電圧信号の印加により発生した電流変化Δiを検出する。本実施例では、電流ベクトルIの方向、電流ベクトルIに直交する方向の2方向(X,Y)に電圧信号を印加しているので、それぞれの方向の電流変化量(電流ベクトル方向Xの電流変化をΔiX, 電流ベクトルに直交する方向Yの電流変化をΔiYとする。)を検出する。
【0032】
図7は、電流変化Δiの検出方法の一例を示している。通常、モータ電流の検出はコントローラに内蔵されたA/D変換器で行われるが、その検出タイミングはPWM搬送波の山の時点か、もしくは谷の時点である。また、山および谷の双方で検出する場合もある。そこで、位置検出用に印加する電圧信号を図7のようにPWM搬送波に同期したものとすると、連続した電流検出値の差分を演算することによりΔiを演算することができる(図7中、Δi1=i▲2▼−i▲1▼、Δi2=i▲3▼-i▲2▼、Δi3=i▲4▼-i▲3▼)。
【0033】
なお、図7に示す電圧信号は例えば、1周期毎に電流ベクトルIの方向(X)と電流ベクトルIに直交する方向(Y)とに、切り替えられる。また、得られる電流変化量は印加電圧以外にも誘起電圧や現在流れている電流の成分も含まれる。これら印加電圧以外の成分を除去するためには、連続する電流変化量(例えば、Δi1とΔi2)の差をとるようにする。このようにすれば、印加電圧のみによる電流変化量を得ることができる。
【0034】
位置推定手段11は基準電流変化決定部20において、トルク指令Tr*および速度検出値ωm^を入力し、現在の動作点に応じた電流ベクトルIに直交する方向の基準電流変化ΔiY*を決定する。さらに、電流ベクトルIの方向の基準電流変化ΔiX*も決定する。なお、各動作点における基準電流変化ΔiY*、ΔiX*は事前に計測しておき、テーブルとして記憶し、メモリ部分に格納しておくと演算時間を短縮できる。
【0035】
次に、位置同定部21において、基準電流変化ΔiY*に検出された電流変化ΔiYが一致するように、フィードバック制御を行う。このフィードバック制御の出力を位置推定値θcとすれば、ΔiY*とΔiYが一致したところで、モータの回転子位置θと位置推定値θcが一致することになる。すなわち、回転子位置の推定が可能となる。
【0036】
なお、本発明では電圧信号を印加し、そのときの電流変化に基づいて回転子位置の推定を行っている。よって、PWMインバータ3の直流入力電圧(バッテリーVb)変動により、推定誤差が生じる可能性がある。そこで、この入力電圧変動による位置推定誤差の発生を防ぐために、電流ベクトルI方向の電流変化量であるΔiXもフィードバックする。具体的には電圧変動の影響を除去するために、2方向の電流変化の比(ΔiY/ΔiX)をとり、その基準値(ΔiY/ΔiX)と比較する。その2つの比の差を最小にするように位相の演算を行うことにより、電圧変動の影響を除去することが可能となる。また、2方向の電流変化の差(ΔiY−ΔiX)をとり、その基準値(ΔiY−ΔiX)と比較する。その2つの差の差を最小にするように位相の演算を行うことによっても電圧変動の影響を除去することができる。以上が、位置推定手段11の構成例、およびその動作の説明である。
【0037】
すなわち、前記コントローラは、位置検出用の電圧信号を前記交流モータの電流ベクトル方向、および前記電流ベクトルに対して直交する方向に印加し、前記電圧信号により発生した前記電流ベクトル方向の電流変化および前記電流ベクトルに対して直交する方向の電流変化を検出し、前記電流ベクトルに対して直交する方向の電流変化と予め設定された基準電流変化との差、あるいは前記電流ベクトルに対して直交する方向の電流変化と前記交流モータの電流ベクトル方向の電流変化との比と予め設定された基準比との差、に基づいて前記交流モータの回転子位置を推定する位置推定手段を備えている。
【0038】
なお、このフィードバック制御を行う際、モータの力行と回生とで、出力である位置推定値θcの補償方向(位相の増減)が異なる。そこで、コントローラ1では現在の動作点が力行であるか、もしくは回生であるかを判断し、補償方向を切り替える処理を行う。一例を示すと、図8のような特性である。
【0039】
また、本位置推定方式では電流ベクトルの位相により感度が異なる。最も感度のよい動作点(電流ベクトルの位相)としては、d軸から45°の位相の場合である。モータの効率等を問題にしなければ、d軸から45°の方向に電流ベクトルを制御することが望ましい。本発明によれば、大電流により局所的に磁気飽和が生じた場合でも、正確な回転子の位置推定が可能な位置センサレス制御装置を提供することができる。
【0040】
また、図9は前記図6に対して、電流ベクトル方向のモータのインダクタンスおよび電流ベクトルに対して直交する方向のインダクタンスに基づいてモータの回転子位置を推定検出する場合の位置推定手段11aの構成例を示している。基準インダクタンス決定手段31、電流変化からインダクタンスを演算する手段30、前記基準インダクタンスと、電流変化から求めたインダクタンスに基づいてモータの回転子位置を位置同定手段21aにより推定する構成例である。
【0041】
すなわち、前記コントローラは、前記交流モータの電流ベクトル方向のモータインダクタンスと、前記電流ベクトルに対して直交する方向のモータインダクタンスとを検出し、前記電流ベクトル方向のモータインダクタンスと前記電流ベクトルに対して直交する方向のモータインダクタンスとに基づいて前記交流モータの回転子位置を推定する位置推定手段を備えている。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、大電流により局所的に磁気飽和が生じた場合でも、正確な回転子の位置推定が可能な位置センサレスモータ制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例を示すモータ制御装置の構成図である。
【図2】 回転座標系(d−q軸)と静止座標系(α−β軸)との関係を示す図である。
【図3】 モータのインダクタンス特性を示す図である。
【図4】 モータ電流ベクトル方向に磁気飽和が生じた場合のインダクタンスの分布を示す図である。
【図5】 モータ電流ベクトル方向に磁気飽和が生じた場合のインダクタンスの分布を示す図である。
【図6】 位置推定手段の一構成例を示す図である。
【図7】 電流変化Δiの検出方法の一例を示す図である。
【図8】 回生あるいは力行時における電流変化に対する回転子位置θCの傾向を示す図である。
【図9】 回転子位置をインダクタンスから求める場合の構成例を示す図である。
【符号の説明】
1;コントローラ 2;交流モータ 3;PWMインバータ 4;電流指令発生 5;電流制御部 6;3相変換部 7;PWM信号発生部 8u、8v、8w;電流センサ 9;電流検出部 10;dq変換部 11;位置推定手段 12;速度演算部 13;印加方向切り替え手段 15;電圧信号演算部 16;電流変化演算部 20;基準電流変化決定部 21;位置同定部。

Claims (4)

  1. 突極性を有する交流モータと、前記交流モータに電圧を印加するPWMインバータと、前記PWMインバータを制御するコントローラとを備えたモータ制御装置において、前記コントローラは、前記交流モータの、電流ベクトル方向のモータのインダクタンスと、前記電流ベクトルに対して直交する方向のモータのインダクタンスとを検出し、検出された直交する両方向のモータインダクタンスに基づいて前記交流モータの回転子位置を推定する位置推定手段を備えたことを特徴とするモータ制御装置。
  2. 請求項1において、前記コントローラは、インダクタンス検出用の電圧信号を前記交流モータに印加し、前記電圧信号によって発生する電流変化に基づいて前記インダクタンスを検出することを特徴とするモータ制御装置。
  3. 突極性を有する交流モータと、前記交流モータに電圧を印加するPWMインバータと、前記PWMインバータを制御するコントローラとを備えたモータ制御装置において、前記コントローラは、位置検出用の電圧信号を前記交流モータの電流ベクトル方向および前記電流ベクトルに対して直交する方向に印加し、前記電圧信号により発生した前記電流ベクトル方向の電流変化および前記電流ベクトルに対して直交する方向の電流変化を検出し、前記電流ベクトルに対して直交する方向の電流変化と予め設定された基準電流変化との差および前記電流ベクトルに対して直交する方向の電流変化と前記交流モータの電流ベクトル方向の電流変化との差と予め設定された基準差との差、に基づいて前記交流モータの回転子位置を推定する位置推定手段を備えていることを特徴とするモータ制御装置。
  4. 突極性を有する交流モータと、前記交流モータに電圧を印加するPWMインバータと、前記PWMインバータを制御するコントローラとを備えたモータ制御装置において、前記コントローラは、位置検出用の電圧信号を前記交流モータの電流ベクトル方向および前記電流ベクトルに対して直交する方向に印加し、前記電圧信号により発生した前記電流ベクトル方向の電流変化と前記電流ベクトルに対して直交する方向の電流変化を検出し、前記電流ベクトルに対して直交する方向の電流変化と予め設定された基準電流変化との差および前記電流ベクトルに対して直交する方向の電流変化と前記交流モータの電流ベクトル方向の電流変化との比と予め設定された基準比との差、に基づいて前記交流モータの回転子位置を推定する位置推定手段を備えたことを特徴とするモータ制御装置。
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