JP4023264B2 - 無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラム - Google Patents

無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の無線局間で相互に通信を行なう無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムに係り、特に、無線ネットワーク上でさまざまなアプリケーションを伝送する無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムに関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、無線伝送路上に誤りが生じてもユーザの知覚的に影響の少ない形でリアルタイム伝送を行なう無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムに係り、特に、アクセス制御に時間がかかるベスト・エフォート型の通信プロトコルを用いた無線伝送路上で、ユーザの知覚的な影響の少ない形でリアルタイム伝送を行なう無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムに関する。
【0003】
【従来の技術】
複数のコンピュータを接続してLAN(Local Area Network)を構成することにより、ファイルやデータなどの情報の共有化、プリンタなどの周辺機器の共有化を図ったり、電子メールやデータ・コンテンツの転送などの情報の交換を行なったりすることができる。
【0004】
従来、光ファイバーや同軸ケーブル、あるいはツイストペア・ケーブルを用いて、有線でLAN接続することが一般的であったが、この場合、回線敷設工事が必要であり、手軽にネットワークを構築することが難しいとともに、ケーブルの引き回しが煩雑になる。また、LAN構築後も、機器の移動範囲がケーブル長によって制限されるため、不便である。そこで、従来の有線方式によるLANの配線からユーザを解放するシステムとして、無線LANが注目されている。この種の無線LANによれば、オフィスなどの作業空間において、有線ケーブルの大半を省略することができるので、パーソナル・コンピュータ(PC)などの通信端末を比較的容易に移動させることができる。
【0005】
近年では、無線LANシステムの高速化、低価格化に伴い、その需要が著しく増加してきている。特に最近では、人の身の回りに存在する複数の電子機器間で小規模な無線ネットワークを構築して情報通信を行なうために、パーソナル・エリア・ネットワーク(PAN)の導入の検討が行なわれている。例えば、IEEE802.11準拠の無線LANシステムが既に実用化されている。
【0006】
さらに、これらローカル・エリア・ネットワーク上でさまざまなアプリケーションを伝送することが求められてきている。中でもゲーム機器の普及やネットワークのブロードバンド化の発展に伴い、リアルタイム性のある動画像情報を無線伝送するという需要が増大すると考えられている。
【0007】
従来からの画像情報の伝送では、伝送路上で誤りが生じた場合に、その誤り部分を所定の時間までに再送することによって訂正し、完全な画像情報を提供する、というベスト・エフォートのプロトコルによる方法が一般に採用されている。
【0008】
さらに、フォワード・エラー・コレクション(FEC)の技術によって、送信する情報に冗長な符号を付加して送信し、伝送路上で誤りが生じても送られてきたデータから誤りを補正して完全な画像情報を提供するという方法も考案されている。
【0009】
これらのプロトコルは、アプリケーションとして、テキスト情報や静止画などの情報をブラウザに表示するWWW(World Wide Web)システムを利用することを主に想定している。このため、伝送路に多少誤りが生じた場合でも、時間をかけて完全なデータを届けることに適したプロトコル設計がなされている。
【0010】
図15には、データ再送処理の実現例(従来例)を模式的に示している。ここでは、IEEE 802.11系のプロトコルで利用される再送制御方法の実施例について示してある
【0011】
まず、通信装置#1から#2へデータを送信する場合に、所定のアクセス制御手順(例えばCSMA/CA(後述))に従ってアクセス制御権が得られた場合に、通信装置#1から#2に対して、データが送信される。一方、通信装置#2は、通信装置#1からのデータを正しく受取れた場合に、所定のタイミングでACKを返送する。
【0012】
ここで、通信装置#1では、所定のタイミングで、通信装置#2からのACKを正しく受け取れない場合に、所定のアクセス制御手順に従い、前回送信したデータを再送する。その後、通信装置#2は、通信装置#1からのデータを正しく受取れた場合に、所定のタイミングでACKを返送する。
【0013】
しかしながら、このようなベスト・エフォート型のプロトコルによる通信が行なわれる場合、伝送路に情報を流すために所定の手続きが必要であるため、リアルタイム性のある動画像情報を無線伝送するためには遅延が生じるという問題がある。
【0014】
また、伝送路上で誤りが生じて再送を行なう場合、その再送手続きに時間がかかってしまっては、リアルタイム性のある動画像情報の伝送には適しているとは言いがたい。
【0015】
また、事前にフォワード・エラー・コレクション(FEC)を行なって送信する方法の場合には、誤り訂正のための冗長な情報を含んでデータ送信することになるので、データ伝送の効率が低下してしまう。
【0016】
また、上述したようなプロトコルでは、伝送路で誤りが生じた場合に時間をかけて完全なデータを届けることを主体に設計されているため、伝送誤りが頻発する無線伝送路上では、リアルタイム性のある動画像情報の伝送には利用することができない。
【0017】
例えば、ゲーム機器のアプリケーションとして、動画像情報をリアルタイムで伝送してディスプレイ画面に表示出力し、それに反応して次の動作の入力信号がユーザより指示されるというユーザ操作環境下では、リアルタイム性のある動画像情報の表示に遅延が生じてしまうと、実際にはユーザの意図しないタイミングで指示が入力されたものと判断されてしまうという不具合が生じかねない。
【0018】
また、無線データ伝送においては、キャリア検出多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)によるアクセス制御を行なうことが一般的である。図16には、CSMA/CAに基づくアクセス制御方式の実現例(従来例)を模式的に示している。
【0019】
まず、データを送信しようとする通信装置#1では、送信に先立ち他の通信装置からの送信の有無を確認し、ここでは、通信装置#3から#4へのデータ送信が行なわれる。この場合、通信装置#1では送信を待機し、通信装置#3から#4への情報送信が完了し、例えば、通信装置#4から#3へ直後のACKの返送が終了した後に、データの送信が開始される。そして、そのデータが正しく届いたかを判断するために、通信装置#2から#1へ直後のACKの返送が行なわれる。
【0020】
しかしながら、このようなアクセス制御方式においてリアルタイム情報の伝送を行なった場合、データ送信元の無線通信装置の処理として、無線伝送路でのアクセス制御によってアクセス制御待ちが発生し、無線受信先装置で受信したデータに遅延が生じてしまう。この結果、データ受信側におけるリアルタイム情報の再生処理が不連続なるという状態が生じてしまう。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、無線伝送路上に誤りが生じてもユーザの知覚的に影響の少ない形でリアルタイム伝送を行なうことができる、優れた無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することにある。
【0022】
本発明のさらなる目的は、アクセス制御に時間がかかるベスト・エフォート型の通信プロトコルを用いた無線伝送路上で、ユーザの知覚的な影響の少ない形でリアルタイム伝送を行なうことができる、優れた無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、その第1の側面は、無線ネットワーク上でリアルタイム情報の伝送を行なう無線通信システムであって、情報送信元装置では送信可能な最新の情報を送信し、情報受信先装置では所定の出力タイミングまでに受信できた最新の情報を出力する、
ことを特徴とする無線通信システムである。
【0024】
但し、ここで言う「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない。
【0025】
ここで、前記無線ネットワーク上では、例えばCSMA/CA方式などの所定のアクセス制御に従って情報送信が行なわれる。このような場合、前記情報送信元装置はアクセス制御権を獲得した後に最新の情報を送信するようにすればよい。
【0026】
あるいは、前記無線ネットワーク上では帯域予約通信が行なわれる。このような場合、前記情報送信元装置は自己の帯域予約送信時に獲得した最新の情報を送信するようにすればよい。
【0027】
あるいは、前記無線ネットワーク上ではベスト・エフォート方式で情報送信が行なわれる。このような場合、前記情報送信元装置は、前記情報受信先装置から受領確認信号を受け取ったか否かにかかわらず所定時間の経過後に最新の情報を送信するようにすればよい。
【0028】
また、前記情報受信先装置は、所定の出力周期で情報を出力する際に、前記情報送信先装置から送られた最新の受信情報を出力するようにすればよい。
【0029】
したがって、本発明の第1の側面に係る無線通信システムによれば、リアルタイム伝送を行なう場合に、情報送信元装置では送信できる最新のデータを送信し、情報受信先装置では所定の出力タイミングまでに受信できた最新のデータを出力することで、伝送遅延を最小限に抑えることができる。
【0030】
また、本発明の第1の側面に係る無線通信システムによれば、リアルタイム・データの送信を行なう場合に、その無線伝送路でのアクセス制御権を獲得した後に、最新のデータを送信することによって、アクセス制御権を獲得し難い伝送路においても、リアルタイム伝送を行なうことができる。すなわち、無線伝送路におけるアクセス制御権を獲得した場合に、送信バッファに格納された最新の情報を無線送信するリアルタイム・データ送信機能を備えることにより、例えばCSMA/CA方式のランダム・アクセス制御を行なう無線伝送路においてリアルタイム伝送を容易に実現することができる。
【0031】
また、本発明の第1の側面に係る無線通信システムによれば、帯域予約通信を行なってリアルタイム・データの送信を行なう場合に、帯域予約送信時に最新のデータを送信することによって、伝送路に誤りが生じても容易にリアルタイム伝送を行なうことができる。すなわち、リアルタイム伝送を行なう場合に、最新の情報を無線送信するリアルタイム・データ送信機能を備えることによって、帯域予約伝送が行なわれる無線伝送路において、良好にリアルタイム伝送を実現することができる。
【0032】
また、本発明の第1の側面に係る無線通信システムによれば、受信確認信号を返送する再送制御を行なう場合であっても、リアルタイム・データの送信を行なう場合に、所定の時間を経過後に最新のデータを送信することによって、伝送誤り発生時においても、無駄な再送を行なわずに、容易にリアルタイム伝送を行なうことができる。すなわち、リアルタイム伝送を行なう場合に、所定の時間経過後に最新の情報を無線送信するリアルタイム・データ送信機能を備えることにより、受領確認の到来を待たずに所定のタイミングで常に最新のデータを送信することができ、伝送遅延の少ないリアルタイム伝送を実現することができる。
【0033】
すなわち、本発明の第1の側面に係る無線通信システムによれば、所定の出力周期でリアルタイム・データを出力する場合に、情報送信元装置から送られた最新の受信情報をデータとして出力することによって、所定のアクセス制御にかかる時間や、伝送路に誤りが生じた場合など、不安定な無線伝送路においても良好にリアルタイム伝送を行なうことができる。
【0034】
また、本発明の第1の側面に係る無線通信システムによれば、受信側では、情報送信元装置から新たな情報が届かない場合には、前回の情報をデータとして継続して出力することによって、データが途切れることなく出力して、視覚的に連続したリアルタイム伝送を実現することができる。
【0035】
また、無線通信装置が受信した情報を所定の周期で出力するデータ出力手段を備えることによって、リアルタイム・データの受信を行なう場合に、最新の受信情報をデータとして出力することによって、無線伝送路のプロトコルや受信できた情報に依存せずリアルタイム伝送を実現することができる。
【0036】
また、本発明の第2の側面は、無線ネットワーク上で情報送信を行なう無線通信装置又は無線通信方法であって、
リアルタイム伝送が必要な場合に最新の情報を獲得する手段又はステップと、
該最新の情報を前記無線ネットワーク上に情報送信する手段又はステップと、を具備することを特徴とする無線通信装置又は無線通信方法である。
【0037】
ここで、前記情報送信する手段又はステップは所定のアクセス制御に従って情報送信を行なうようにしてもよい。このような場合、前記最新の情報を獲得する手段又はステップはアクセス制御権を獲得した後に最新の情報を獲得するようにすればよい。
【0038】
あるいは、前記情報送信する手段又はステップは帯域予約に従って情報送信を行なうようにしてもよい。このような場合、前記最新の情報を獲得する手段又はステップは当該装置の帯域予約送信時に最新の情報を獲得するようにすればよい。
【0039】
あるいは、前記情報送信する手段又はステップはベスト・エフォート方式に従って情報送信を行なうとともに、情報受信先装置から受領確認信号を受け取ったか否かにかかわらず所定時間の経過後に最新の情報を送信するようにしてもよい。
【0040】
また、本発明の第3の側面は、無線ネットワーク上で情報受信を行なう無線通信装置又は無線通信方法であって、
前記無線ネットワークを介して情報受信する手段又はステップと、
受信情報をリアルタイム出力が必要な場合に、所定の出力タイミングにおける最新の受信情報を獲得する手段又はステップと、
該最新の受信情報を出力する手段又はステップと、
を具備することを特徴とする無線通信装置又は無線通信方法である。
【0041】
ここで、前記の情報受信する手段又はステップは、ランダム・アクセス又は帯域予約により情報を受信することができる。
【0042】
また、前記の情報受信する手段又はステップにおいて情報を受信したことに応答して受領確認信号を返送する手段又はステップをさらに備えていてもよい。
【0043】
また、本発明の第4の側面は、無線ネットワーク上で情報送信を行なうための処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ・システムに対し、
リアルタイム伝送が必要な場合に最新の情報を獲得する手順と、
該最新の情報を前記無線ネットワーク上に情報送信する手順と、
実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラムである。
【0044】
また、本発明の第5の側面は、無線ネットワーク上で情報受信を行なう処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ・システムに対し、
前記無線ネットワークを介して情報受信する手順と、
受信情報をリアルタイム出力が必要な場合に、所定の出力タイミングにおける最新の受信情報を獲得する手順と、
該最新の受信情報を出力する手順と、
実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラムである。
【0045】
本発明の第4及び第5の各側面に係るコンピュータ・プログラムは、コンピュータ・システム上で所定の処理を実現するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムを定義したものである。換言すれば、本発明の第4及び第5の各側面に係るコンピュータ・プログラムをコンピュータ・システムにインストールすることによって、コンピュータ・システム上では協働的作用が発揮され、本発明の第2及び第3の各側面に係る無線通信装置又は無線通信方法のそれぞれと同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
【0048】
図1には、本発明が適用される無線ネットワークの構成例を模式的に示している。図示の無線ネットワークは、無線通信装置と無線受信装置を組み合わせて構成される複数の通信装置を利用して構成される。
【0049】
同図に置いて、通信装置#8がネットワークの制御局として機能して無線ネットワーク10を運営し、それ以外の通信装置#1〜#7がこの無線ネットワーク10に接続されている。
【0050】
ここで、通信装置#8は、他の通信装置#1〜#7のすべてと容易に通信することができる状態であり、制御局として相応しい位置に存在している。
【0051】
通信装置#1は、通信装置#2、#7、及び#8と相対的に近い位置に存在するので、これらと容易に情報伝送を行なうことができる。また、通信装置#3並びに#6とは相対的に遠い位置に存在するので、これらとの情報伝送はやや困難な場合があると推測される。また、通信装置#4並びに#5とは距離が離れているため、通信ができない状態にある。
【0052】
同様にして、通信装置#2〜#7のそれぞれに関しても、周辺に存在する他の通信装置との間で距離やその他無線伝送路に応じた通信状態が形成されているものとする。
【0053】
図1に示した無線ネットワーク10では、制御局として動作する通信装置#8の管理下で、所定のスーパーフレーム周期毎にネットワーク動作が規定される。図2には、無線ネットワーク10におけるスーパーフレーム周期の構成を模式的に示している。
【0054】
図示の例では、IEEE802.15.3として標準化されている高速無線パーソナル・エリア・ネットワークに適用されるように規定されたスーパーフレーム構成が示されている。
【0055】
図示のスーパーフレーム周期は、その周期の先頭を示すビーコン(Beacon)が、無線ネットワーク10を構成する制御局となる通信装置#8からほぼ周期的に送信されることで規定される。
【0056】
無線ネットワーク10内に存在する各通信装置#1〜#7は、このビーコンを受信することで無線ネットワーク10を構成することができる。
【0057】
ビーコンに続いて、競合アクセス期間(Contention Access Period:CAP)が配置される。このCAP領域内では、例えば、キャリア検出多重アクセス/衝突回避(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance:CSMA/CA)方式によるアクセス制御に従って情報の送受信が行なわれる。
【0058】
さらに、CAPに続いて、非競合アクセス期間(Contention Free period:CFP)が配置されている。このCFP領域内では、例えば、無線ネットワーク10内の各通信装置#1〜#7に対してギャランティード・タイムスロット(Guaranteed Time Slot:GTS)があらかじめ割り当てられており、情報送信元と受信先を指定した帯域予約通信が行なわれる。
【0059】
図3には、本実施形態に係る無線ネットワーク10で動作可能な無線通信装置の機能構成を模式的に示している。
【0060】
この無線通信装置は、情報伝送を管理し無線ネットワーク10を構成するための処理を行なう制御部30と、当該装置の外部に接続される機器(アプリケーション)との間で情報交換を行なうインターフェース31と、このインターフェース31を介してアプリケーションから届けられた情報を格納する無線送信バッファ32と、無線送信バッファ32に格納された情報を無線送信するためのデータとして符号化して各種信号処理を行なう無線送信部33と、無線送信部33で組み立てられた信号を媒介に送信したり、媒介から信号を受信したりするアンテナ34と、アンテナ34を介して媒体を伝播していた信号を受信しさらに情報として変換する無線受信部35と、この変換された情報を格納し情報を正しく収集してインターフェースに通知する無線受信バッファ36と、通信プロトコルで規定されたアクセス制御に基づいて伝送路の利用可否を判断するアクセス制御部37と、無線通信装置のアドレス情報などを記憶し、一連の動作を示した命令(プログラム・コード)が格納されている情報記憶部38と、所定のタイミングの到来に応答して制御部へ通知をする時計計時部39を備えている。
【0061】
さらに、図示の無線通信装置は、制御局として動作するための機能を備えており、制御局としての動作が必要な場合には適宜制御局として動作し、さもなくば一般の端末局として動作する。このような動作を実現するための実効命令プログラムが情報記憶部38にあらかじめ格納されている。
【0062】
無線通信装置は、無線ネットワークに組み込まれていなければ、所定の無線ネットワークに対して参入して動作するか、あるいは自らが制御局となって無線ネットワークを構築するかを判断することができる。
【0063】
制御局として動作している無線通信装置は、制御部30においてビーコン情報を作成し、所定のタイミングに従って無線送信部33からビーコン信号として送信する。そして、このビーコン信号の到達範囲において無線ネットワークを運営する仕組みとなっている。
【0064】
一方、制御局でない無線通信装置は、あらかじめ設定しておいたタイミングに従って、制御局からのビーコン信号を無線受信部35において受信し、そのビーコン情報に従ってパラメータを設定することで、制御局に従属して無線ネットワーク動作を行なうようになっている。
【0065】
データをリアルタイム送信する無線通信装置の場合、ほぼ定期的に所定の周期でインターフェース31でデータを受理し、そのデータを無線送信バッファ32に蓄える。さらに、アンテナ34を介して無線受信部35で受信された信号を基に、伝送路が利用中であるかどうかをアクセス制御部37にて判断する。
【0066】
アクセス制御部37では、伝送路が利用可能中であることを制御部30に通知し、制御部30から無線送信バッファ32に対して送信指示が送られるとともに、無線送信部33を動作させて実際にデータをアンテナ34から送信する。
【0067】
本実施形態に係る無線通信装置は、制御部30から無線送信バッファ32に対して送られる送信指示において、最新のデータを無線送信部33に供給し、アンテナ34より無線送信する構成となっている点が特徴的である。
【0068】
データをリアルタイム受信する無線通信装置側では、所定のアクセス制御に基づいて送られてくるデータを、アンテナ34を介して無線受信部35で受信し、そのデータを無線受信バッファ36に蓄える。
【0069】
無線受信部35は、受信したことを制御部30へ通知する。制御部30では、受信のACK情報を生成して返送するために、無線送信部33にそのACK情報を供給する。その後、アクセス制御部37から指示されたタイミングで、アンテナ34を介してACK情報が無線送信される。
【0070】
ここで、リアルタイム送信をした無線通信装置側では、ACK情報が届かなかったデータは再送されることとして、受信側の無線通信装置では再送されたデータも無線受信バッファ36に蓄えることで、所定の時間までに情報を収集する。
【0071】
そして、無線受信バッファ36に蓄えられたデータは、時間計時部39による所定の時間経過後、インターフェース部31を介して接続される機器(図示しない)にリアルタイムでデータを出力するようになっている。
【0072】
本実施形態に係る無線通信装置では、所定の時間経過後、インターフェース部31を介して出力されるデータが無線受信バッファ36に獲得されなかった場合には、前回出力したデータを継続して利用することで、リアルタイム伝送、特に視覚的に乱れの少ない動画像伝送を実現することができる。
【0073】
図4及び図5には、従来の無線データ伝送方法においてアクセス制御に伴う処理遅延発生状況と、本実施形態に係る情報通信方法によるリアルタイム表示を比較して示している。
【0074】
図中左から右へ向かって、情報供給元装置、無線送信元装置、無線受信先装置、情報表示先装置が接続され、それぞれの装置間を流れるデータが時間(縦方向)の変化とともに示されている。また、図中の左側は情報供給元装置から送られてくるリアルタイム情報を示していて、リアルタイム情報#1〜#8がほぼ周期的に供給される情報を表している。
【0075】
図4では、図2に示すフレーム構成において、例えばCAP(競合アクセス)領域でCSMA/CAによるアクセス制御を用いた場合の無線データ伝送の例が示されている。
【0076】
この場合、無線送信元装置の処理として、無線伝送路でのアクセス制御によってアクセス制御待ちが発生し、無線受信先装置で受信したデータに遅延が生じてしまい、情報表示装置に不連続な表示が行なわれるという状態が現れる。
【0077】
同図に示す例では、情報#4を送信する場合にアクセス制御待ちが生じた状態が表されている。すなわち、情報#4の送信に時間がかかると、それに比例して無線受信先装置でデータが受け取れず、リアルタイム情報の表示に遅延が生じてしまう。
【0078】
さらに、無線受信先装置からACKの返送が直後に行なわれ、無線送信元装置では次の情報#5を送信する。このため、再び所定のアクセス制御に基づいた制御が必要になり、一旦生じた遅延を取り戻すことが困難になる。
【0079】
また、同様にして、無線送信元装置においてアクセス制御のため情報#7の送信に時間がかかると、次の情報#8を送信するために、さらに遅延が生じてしまう。
【0080】
このようにして、長時間のリアルタイム伝送においては、情報表示までに伝送遅延が発生したしまうことが顕著に現れている。つまり、従来からの無線通信プロトコルでは、情報を誤りなく届けるために設計されていることに基因して、遅延が生じてしまい、リアルタイム伝送が困難になっている。
【0081】
一方、図5に示す本発明の実施形態に係る情報通信方法の場合、無線送信元装置の処理として、無線伝送路でのアクセス制御によってアクセス制御待ちが発生しても、常に最新の情報を送信することで、無線受信先装置で受信したデータに遅延を生じることなく、情報表示装置にリアルタイム情報の表示が行なわれる。
【0082】
さらに、無線受信先装置では、リアルタイム・データを送信すべきタイミングにデータがない場合には、前回表示を行なったデータの表示を行なうことで、視覚的に一瞬だけ停止した表示が行なわれる。そして、さらに次のタイミングでは、リアルタイム・データの表示が行なわれる。
【0083】
図5に示す例では、情報#3を送信する場合にアクセス制御待ちが生じているが、アクセス制御権を獲得できた際の最新のデータである情報#3を送信する。この場合、無線受信先装置では、リアルタイム表示を行なう時間を経過しているため、前のデータ(情報#2)を表示する。
【0084】
その後、本来情報#4のリアルタイム表示を行なう時間が到来した場合には、その時点で受信している最新の情報であるデータ(情報#3)を表示する。
【0085】
無線送信元装置では、引き続き、情報#4を送信しようとするものの、アクセス制御待ちが生じた状態になる。そして、情報供給元装置から次のリアルタイム情報#5が届いた後にアクセス制御権が獲得できた場合には、最新のデータ(情報#5)を送信する。
【0086】
また、無線受信先装置では、本来情報#5のリアルタイム表示を行なう時間が到来した場合には、最新の情報であるデータ(情報#5)を表示することができる。
【0087】
同様にして、無線送信元装置で情報#6を送信する場合にもアクセス制御待ちが生じているが、この場合も、無線受信先装置では最新の情報であるデータ(情報#7)を表示することができる。
【0088】
このように、本発明によれば、処理遅延を生じることなく、リアルタイムで表示を行なう無線データ伝送動作が可能である。
【0089】
また、図6及び図7には、従来の無線データ伝送方法において再送制御に伴う処理遅延発生状況と、本実施形態に係る情報通信方法によるリアルタイム表示を比較して示している。
【0090】
図中左から右へ向かって、情報供給元装置、無線送信元装置、無線受信先装置、情報表示先装置が接続され、それぞれの装置間を流れるデータが時間(縦方向)の変化とともに示されている。また、図中の左側は情報供給元装置から送られてくるリアルタイム情報を示していて、リアルタイム情報#1〜#8がほぼ周期的に供給される情報を表している。
【0091】
図6では、図2に示すフレーム構成において、例えばCFP(非競合アクセス)領域でGTSによる帯域予約通信が行なわれている場合の無線データ伝送の例が示されている。
【0092】
この場合、無線送信元装置の処理として、無線伝送路での誤り発生によって再送処理が発生し、無線受信先装置で受信したデータに遅延が生じてしまい、情報表示先装置に不連続な表示が行なわれるという状態が現れる。
【0093】
同図に示す例では、無線送信先装置から情報#4を送信したときに伝送誤りが生じ、無線受信先装置でこれを受信することができないという状況が発生している。この場合、無線受信先装置からはACKの返送が行なわれず、この結果、無線送信元装置から情報#4の再送が行なわれる。
【0094】
一方、無線受信先装置でもデータを受け取ることができないため、リアルタイム情報の表示のタイミングで表示を行なうことができないという問題が生じる。
【0095】
その後、無線送信元装置から情報#5を送信するタイミングで、情報#4の再送が行なわれることになり、以降、このタイミングのずれは吸収されることなく遅延として残る。
【0096】
さらに、無線受信先装置から無線送信元装置へ情報#6のACKの返送により伝送誤りが生じた場合、これにより無線送信元装置では情報#6の再送が必要と判断し、無用な情報#6の再送を行なってしまう。この場合、再送されてきたため、情報受信先装置では、本来のタイミングで送られてくる情報を得ることができないので、以降の情報伝送にさらに遅延が生じてしまう。
【0097】
このようにして再送処理による遅延が累積されて、リアルタイム伝送を行なうことができない。
【0098】
一方、図7に示す本発明の実施形態に係る情報通信方法の場合、無線送信元装置の処理として伝送路での誤りが発生した場合であっても、必要以上の再送は行なわれない。すなわち、無線送信元装置では常に最新の情報を送信することで、無線受信先装置で受信したデータに遅延を生じることなく、情報表示先装置でリアルタイム情報の表示を行なうことが可能である。
【0099】
図7では、図6に示した例と同様に、情報#4のデータが無線受信先装置に届かない場合と、情報#6のACKが無線送信元装置に届かない場合が示されている。
【0100】
伝送誤りにより、情報#4のデータが無線受信先装置では、本来情報#4のリアルタイム表示を行なう時間が到来した場合には、その時点で受信している最新の情報であるデータ(情報#3)を表示する。
【0101】
無線送信元装置では、引き続き、情報#4を送信しようとするものの、アクセス制御待ちが生じた状態になる。そして、情報供給元装置から次のリアルタイム情報#5が届いた後にアクセス制御権が獲得できた場合には、最新のデータ(情報#5)を送信する。また、無線受信先装置では、本来情報#5のリアルタイム表示を行なう時間が到来した場合には、最新の情報であるデータ(情報#5)を表示することができる。
【0102】
また、無線受信先装置から無線送信元装置へ情報#6のACKの返送により伝送誤りが生じた場合、再送処理が必要以上に起動されることがないので、無線受信先装置では最新の情報であるデータ(情報#7)を表示することができる。すなわち、効率よく無線伝送路を利用することができる。
【0103】
したがって、これらの伝送路で誤りが生じた場合であっても、所定のリアルタイム情報の表示タイミングに情報受信先装置において受信できた常に最新の情報を基に、情報表示先装置でリアルタイム情報の表示を行なうことができる。
【0104】
このように、本発明によれば、伝送路の誤り発生状況にかかわらず、リアルタイム伝送を実現することが可能である。
【0105】
図8には、本実施形態に係るリアルタイム出力コマンドの構成例を示している。
【0106】
同図に示すように、該コマンドは、リアルタイム出力コマンドであることを示すヘッダ情報(Command Header)と、ヘッダ情報の誤りの有無を検出するヘッダ・チェック・シーケンス(Header Check Sequence)と、リアルタイム出力を要求するためのリアルタイム出力要求と、実際に出力を行なうタイミングを記載したりあるタイム出力タイミング情報と、以降に送られてくるデータの形式を記述したデータ形式パラメータと、このフレーム情報の誤りの有無を確認するフレーム・チェック・シーケンス(Frame Check Sequence)で構成されている。
【0107】
また、図9には、実際にリアルタイム出力用のデータとして送られてくる情報であるデータの構成例を示している。
【0108】
同図に示すように、伝送データは、データであることを示すヘッダ情報(Data Header)と、ヘッダ情報の誤りの有無を確認するヘッダ・チェック・シーケンス(Header Check Sequence)と、リアルタイム出力情報であることを識別するリアルタイム・フラグ(RF)と、実際のユーザ・データとしての情報(Data)と、このフレーム情報の誤りの有無を確認するフレーム・チェック・シーケンス(Frame Check Sequence)で構成される。
【0109】
あるいは、図8に示したリアルタイム出力コマンドに記載されたパラメータをこのデータに組み込んで送信するようにしてもよい。
【0110】
図10には、データの受領を確認するために直後に返送されるACKの構成例を示している。
【0111】
図示の通り、ACKフレームは、ACKであることを示すヘッダ情報(ACK Header)と、ヘッダ情報の誤りの有無を確認するヘッダ・チェック・シーケンス(Header Check Sequence)で構成される。
【0112】
データ送信側となる無線通信装置は、図2に示したフレーム構成のスーパーフレーム周期において、CAP領域内でキャリア検出多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)方式によるアクセス制御に従って情報の送信を行なうとともに、CAPに続くCFP領域内であらかじめ割り当てられたギャランティード・タイムスロット(GTS)を利用した帯域予約通信が行なわれる。本実施形態では、無線通信装置は、CFP領域内でGTSを利用したリアルタイム出力を行なうことができる。
【0113】
図11には、本実施形態に係る無線通信装置による無線送信動作の手順をフローチャートの形式で示している。この動作手順は、実際には、制御部30が情報格納部38にあらかじめ格納されている実行命令プログラムを実行するという形態で実現される。
【0114】
まず、インターフェース31に外部接続される機器(アプリケーション)からデータ送信要求を受理したかどうかを判断する(ステップS1)。
【0115】
ここで、データ送信要求を受理した場合に、そのデータを獲得して、無線送信バッファ32に格納し(ステップS2)、そのデータの種類から、帯域予約伝送が必要であるかどうかを判断する(ステップS3)。そして、帯域予約伝送が必要であれば、既に帯域予約がなされているかどうかを判断する(ステップS4)。
【0116】
ここで、既に帯域予約がなさている場合には、判断ブロックS4の分岐YesよりステップS9に移行し、帯域予約がなされていない場合には、CFPの帯域予約処理を行なってから(ステップS5)、ステップS1に戻る。
【0117】
一方、ステップS1において、データ送信要求を受理していないと判断された場合には、次いで、帯域予約伝送のためにGTS割当てを獲得したかどうかを判断する(ステップS6)。そして、GTS割当てを獲得した場合にのみ、その予約送信GTSの送信設定を行なう(ステップS7)。
【0118】
ステップS6においてGTS割当てを獲得していないと判断された場合、ステップS7において予約送信GTSの設定を行なった後、並びに、ステップS3において帯域予約伝送が必要でないと判断された場合、送信データがあるかどうかを判断する(ステップS8)。
【0119】
ここで、送信データがあれば、予約送信GTSが設定されていて、その送信タイミングが到来したかどうかを判断する(ステップS9)。GTSが到来したときにはステップS11に移行する。また、GTSが到来していない場合には、さらにCAPのアクセス制御権を獲得したかどうかを判断し(ステップS10)、アクセス制御権を獲得した場合にもステップS11に移行する。
【0120】
ステップS11では、リアルタイム伝送が必要であるかどうかを判断する。ここで、リアルタイム伝送が必要であると判断された場合には、最新のデータを獲得して(ステップS12)、そのデータを無線送信する(ステップS14)。また、リアルタイム伝送が不要であれば、順番にデータを獲得して(ステップS13)、そのデータを無線送信する(ステップS14)。
【0121】
このような無線送信後、ステップS8において送信データがないと判断された場合、並びに、ステップS10においてCAPのアクセス制御権を獲得していないと判断された場合には、ステップS1に戻って、データ送信要求の受理の有無を判断して、常に最新のデータを獲得するように上述した一連の処理を繰り返し行なう。
【0122】
また、データ受信側となる無線通信装置は、図2に示したフレーム構成のスーパーフレーム周期において、CAP領域において自己宛てのデータの受信処理を行なう他、CFP領域において自己の予約受信GTSを利用してデータの受信を行なう。また、本実施形態では、無線通信装置は、リアルタイム情報を受信して、これをユーザの知覚的な影響の少ない形でリアルタイム出力することができる。
【0123】
図12には、本実施形態に係る無線通信装置による無線受信動作の手順をフローチャートの形式で示している。この動作手順は、実際には、制御部30が情報格納部38にあらかじめ格納されている実行命令プログラムを実行するという形態で実現される。
【0124】
無線通信装置においてデータの受信を行なう場合、まずCAP領域が到来しているかどうかを判断する(ステップS21)。そして、CAP領域が到来している場合には、データ受信を行なう(ステップS23)。
【0125】
また、CAP領域でない場合には、さらに自己の予約受信GTSが到来しているかどうかを判断して(ステップS22)、予約受信GTSが到来している場合には、同様にデータ受信を行なう(ステップS23)。
【0126】
その後、自局宛データの受信があるかどうかを判断し(ステップS24)、データがあった場合には、リアルタイム出力が必要であるかどうかを判断する(ステップS25)。
【0127】
リアルタイム出力が必要であれば、その出力タイミングの設定を行ない(ステップS26)、そのタイミングの到来を判断する(ステップS28)。
【0128】
また、リアルタイム出力が不要であれば、従来通りの手順に従ってデータを獲得し(ステップS27)、インターフェース31経由で外部機器(アプリケーション)に獲得したデータを出力する(ステップS30)。
【0129】
ここで、ステップS21及びS22において、CAP領域でも自己の予約受信GTS領域のいずれでもないと判断された場合には、ステップS28に進んで、ステップS26において設定したリアルタイム出力のタイミングが到来したかどうかを判断する。
【0130】
この場合、そのタイミングが到来した時点での最新のデータを獲得し(ステップS29)、インターフェース31経由で外部機器(アプリケーション)に獲得したデータを出力する(ステップS30)。
【0131】
そして、インターフェース31経由でデータを出力した後、あるいは、ステップS28においてリアルタイム出力のタイミングが到来していないと判断された場合には、ステップS21に戻り、データの受信処理を繰り返し行なうことで、常に最新のデータを獲得するようにする。
【0132】
図11及び図12に示した例では、無線通信装置は、スーパーフレーム周期においてCAP領域又はCFP領域のいずれかを利用してリアルタイム情報の送受信を行なうように構成されている。但し、本発明の適用範囲は、図2に示すようなスーパーフレーム周期により運営される無線ネットワークに限定されるものではない。例えば、ランダム・アクセスによるアクセス制御のみを行なう無線ネットワークにおいても、本発明に係るリアルタイム伝送処理は同様の作用効果を得ることができる。
【0133】
図13には、本実施形態に係る無線通信装置がランダム・アクセス送信動作を行なう場合の手順をフローチャートの形式で示している。この動作手順は、実際には、制御部30が情報格納部38にあらかじめ格納されている実行命令プログラムを実行するという形態で実現される。
【0134】
まず、インターフェース31に外部接続される機器(アプリケーション)からデータ送信要求を受理したかどうかを判断する(ステップS41)。
【0135】
ここで、データ送信要求を受理した場合に、そのデータを獲得して、無線送信バッファ32に格納する(ステップS42)。
【0136】
さらに、無線伝送路のアクセス制御権を獲得したかどうかを判断し(ステップS43)、アクセス制御権を獲得した場合には、さらに、リアルタイム伝送が必要であるかどうかを判断する(ステップS44)。
【0137】
ここで、リアルタイム伝送が必要であると判断された場合には、最新のデータを獲得して(ステップS45)、そのデータを無線送信する(ステップS47)。また、リアルタイム伝送が不要であれば、順番にデータを獲得して(ステップS46)、そのデータを無線送信する(ステップS47)。
【0138】
このような無線送信後、ステップS41においてデータ送信要求がないと判断された場合、並びに、ステップS43においてアクセス制御権を獲得していないと判断された場合には、ステップS1に戻って、データ送信要求の受理の有無を判断して、常に最新のデータを獲得するように上述した一連の処理を繰り返し行なう。
【0139】
また、図14には、無線ネットワーク内でランダム・アクセス送信が行なわれる場合における、本実施形態に係る無線通信装置が受信動作を行なうための手順をフローチャートの形式で示している。この動作手順は、実際には、制御部30が情報格納部38にあらかじめ格納されている実行命令プログラムを実行するという形態で実現される。
【0140】
無線通信装置において、無線伝送路上をランダム・アクセスにて受信する場合に、無線データの受信処理を行なう(ステップS61)。
【0141】
その後、自局宛てデータの受信があるかどうかを判断し(ステップS62)、自局宛てデータであれば、そのデータを格納する(ステップS63)。
【0142】
ここで、リアルタイム出力が必要であるかどうかを判断し(ステップS64)、リアルタイム出力が必要であれば、その出力タイミングの設定を行ない(ステップS65)、そのタイミングの到来を判断する(ステップS67)。
【0143】
また、リアルタイム出力が不要であれば、従来通りの手順に従ってデータを獲得し(ステップS66)、インターフェース31経由で外部機器(アプリケーション)に獲得したデータを出力する(ステップS69)。
【0144】
ここで、ステップS62において、自局宛てデータを受信していないと判断された場合には、ステップS67に移行して、リアルタイム出力タイミングが到来したかどうかを判断する。この場合、そのタイミングが到来した時点での最新のデータを獲得して(ステップS68)、インターフェース31経由で外部機器(アプリケーション)にデータを出力する(ステップS69)。
【0145】
そして、インターフェース31経由でデータを出力した後、あるいは、ステップS67においてリアルタイム出力のタイミングが到来していないと判断された場合には、ステップS61に戻り、データの受信処理を繰り返し行なうことで、常に最新のデータを獲得するようにする。
【0146】
[追補]
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、冒頭に記載した特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
【0147】
【発明の効果】
以上詳記したように、本発明によれば、無線伝送路上に誤りが生じてもユーザの知覚的に影響の少ない形でリアルタイム伝送を行なうことができる、優れた無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することができる。
【0148】
また、本発明によれば、アクセス制御に時間がかかるベスト・エフォート型の通信プロトコルを用いた無線伝送路上で、ユーザの知覚的な影響の少ない形でリアルタイム伝送を行なうことができる、優れた無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することができる。
【0149】
本発明に係る無線通信方式によれば、リアルタイム伝送を行なう場合に、情報送信元装置では送信できる最新のデータを送信し、情報受信先装置では所定の出力タイミングまでに受信できた最新のデータを出力することで、伝送遅延を最小限に抑えることができる。
【0150】
また、本発明に係る無線通信方式によれば、リアルタイム・データの送信を行なう場合に、その無線伝送路でのアクセス制御権を獲得した後に、最新のデータを送信することによって、アクセス制御権を獲得し難い伝送路においても、リアルタイム伝送を行なうことができる。すなわち、無線伝送路におけるアクセス制御権を獲得した場合に、送信バッファに格納された最新の情報を無線送信するリアルタイム・データ送信機能を備えることにより、例えばキャリアセンス多重アクセス方式のランダム・アクセス制御を行なう無線伝送路においてリアルタイム伝送を容易に実現することができる。
【0151】
また、本発明に係る無線通信方式によれば、帯域予約通信を行なってリアルタイム・データの送信を行なう場合に、帯域予約送信時に最新のデータを送信することによって、伝送路に誤りが生じても容易にリアルタイム伝送を行なうことができる。すなわち、リアルタイム伝送を行なう場合に、最新の情報を無線送信するリアルタイム・データ送信機能を備えることによって、帯域予約伝送が行なわれる無線伝送路において、良好にリアルタイム伝送を実現することができる。
【0152】
また、本発明に係る無線通信方式によれば、受信確認信号を返送する再送制御を行なう場合であっても、リアルタイム・データの送信を行なう場合に、所定の時間を経過後に最新のデータを送信することによって、伝送誤り発生時においても、無駄な再送を行なわずに、容易にリアルタイム伝送を行なうことができる。すなわち、リアルタイム伝送を行なう場合に、所定の時間経過後に最新の情報を無線送信するリアルタイム・データ送信機能を備えることにより、受領確認の到来を待たずに所定のタイミングで常に最新のデータを送信することができ、伝送遅延の少ないリアルタイム伝送を実現することができる。
【0153】
すなわち、本発明に係る無線通信方式によれば、所定の出力周期でリアルタイム・データを出力する場合に、情報送信元装置から送られた最新の受信情報をデータとして出力することによって、所定のアクセス制御にかかる時間や、伝送路に誤りが生じた場合など、不安定な無線伝送路においても良好にリアルタイム伝送を行なうことができる。
【0154】
また、本発明に係る無線通信方式によれば、受信側では、情報送信元装置から新たな情報が届かない場合には、前回の情報をデータとして継続して出力することによって、データが途切れることなく出力して、視覚的に連続したリアルタイム伝送を実現することができる。
【0155】
また、無線通信装置が受信した情報を所定の周期で出力するデータ出力手段を備えることによって、リアルタイム・データの受信を行なう場合に、最新の受信情報をデータとして出力することによって、無線伝送路のプロトコルや受信できた情報に依存せずリアルタイム伝送を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される無線ネットワークの構成例を模式的に示した図である。
【図2】無線ネットワーク10におけるスーパーフレーム周期の構成を模式的に示した図である。
【図3】無線ネットワーク10で動作可能な無線通信装置の機能構成を模式的に示した図である。
【図4】従来の無線データ伝送方法においてアクセス制御に伴う処理遅延発生状況を例示した図である。
【図5】本発明の実施形態に係る情報通信方法によるリアルタイム表示の例を示した図である。
【図6】従来の無線データ伝送方法において再送制御に伴う処理遅延発生状況を例示した図である。
【図7】本発明の実施形態に係る情報通信方法によるリアルタイム表示の例を示した図である。
【図8】本発明の実施形態に係るリアルタイム出力コマンドの構成例を示した図である。
【図9】実際にデータとして送られてくる情報であるデータの構成例を示した図である。
【図10】データの受領を確認するために直後に返送されるACKの構成例を示した図である。
【図11】本発明の実施形態に係る無線通信装置による無線送信動作の手順を示したフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態に係る無線通信装置による無線受信動作の手順を示したフローチャートである。
【図13】本発明の実施形態に係る無線通信装置による無線送信動作の手順を示したフローチャートである。
【図14】本発明の実施形態に係る無線通信装置による無線受信動作の手順を示したフローチャートである。
【図15】データ再送処理の実現例(従来例)を模式的に示した図である。
【図16】CSMA/CAに基づくアクセス制御方式の実現例(従来例)を模式的に示した図である。
【符号の説明】
30…制御部
31…インターフェース
32…無線送信バッファ
33…無線送信部
34…アンテナ
35…無線受信部
36…無線受信バッファ
37…アクセス制御部
38…情報記憶部
39…時計計時部

Claims (13)

  1. 無線ネットワーク上でリアルタイム情報の伝送を行なう無線通信システムであって、
    情報送信元装置は、情報供給元装置からリアルタイム情報を受け取って送信バッファに格納するリアルタイム情報受取手段と、リアルタイム情報を送信するためのアクセス制御権を獲得するアクセス制御権獲得手段と、前記アクセス制御権獲得手段がアクセス制御権を獲得できた際に前記送信バッファに格納されている最新のリアルタイム情報を送信するリアルタイム情報送信手段を備え、
    情報受信先装置では所定の出力タイミングまでに受信できた最新の情報を出力する、
    ことを特徴とする無線通信システム。
  2. 前記情報受信先装置は、所定の出力周期で情報を出力する際に、前記情報送信先装置から送られた最新の受信情報を出力する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
  3. 無線ネットワーク上で情報送信を行なう無線通信装置であって、
    情報供給元装置からリアルタイム情報を受け取って送信バッファに格納するリアルタイム情報受取手段と、
    リアルタイム情報を送信するためのアクセス制御権を獲得するアクセス制御権獲得手段と、
    前記アクセス制御権獲得手段がアクセス制御権を獲得できた際に前記送信バッファに格納されている最新のリアルタイム情報を送信するリアルタイム情報送信手段と
    を具備することを特徴とする無線通信装置。
  4. 前記アクセス制御権獲得手段は所定のアクセス制御に従ってアクセス制御権の獲得を行ない、
    前記リアルタイム情報送信手段はアクセス制御権を獲得した後に最新の情報を送信する、
    ことを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
  5. 前記アクセス制御権獲得手段は帯域予約に従ってアクセス制御権の獲得を行ない、
    前記リアルタイム情報送信手段は当該装置の帯域予約送信時に最新の情報を獲得する、
    ことを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
  6. 前記リアルタイム情報送信手段はベスト・エフォート方式に従って情報送信を行なうとともに、情報受信先装置から受領確認信号を受け取ったか否かにかかわらず所定時間の経過後に最新の情報を送信する、
    ことを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
  7. 無線ネットワーク上で情報送信を行なう無線通信方法であって、
    情報供給元装置からリアルタイム情報を受け取って送信バッファに格納するリアルタイム情報受取ステップと、
    リアルタイム情報を送信するためのアクセス制御権を獲得するアクセス制御権獲得ステップと、
    前記アクセス制御権獲得ステップにおいてアクセス制御権を獲得できた際に前記送信バッファに格納されている最新のリアルタイム情報を送信するリアルタイム情報送信ステップと
    を具備することを特徴とする無線通信方法。
  8. 請求項3に記載の無線通信装置から無線ネットワーク上で送信される情報の受信を行なう無線通信装置であって、
    前記無線ネットワークを介して情報受信する手段と、
    受信情報をリアルタイム出力が必要な場合に、所定の出力タイミングにおける最新の受信情報を獲得する手段と、
    該最新の受信情報を出力する手段と、
    を具備することを特徴とする無線通信装置。
  9. 前記の情報受信する手段は、ランダム・アクセス又は帯域予約により情報を受信する、
    ことを特徴とする請求項8に記載の無線通信装置。
  10. 前記の情報受信する手段において情報を受信したことに応答して受領確認信号を返送する手段をさらに備える、
    ことを特徴とする請求項8に記載の無線通信装置。
  11. 請求項3に記載の無線通信装置から無線ネットワーク上で送信される情報の受信を行なう無線通信方法であって、
    前記無線ネットワークを介して情報受信するステップと、
    受信情報をリアルタイム出力が必要な場合に、所定の出力タイミングにおける最新の受信情報を獲得するステップと、
    該最新の受信情報を出力するステップと、
    を具備することを特徴とする無線通信方法。
  12. 無線ネットワーク上で情報送信を行なうための処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ・システムに対し、
    情報供給元装置からリアルタイム情報を受け取って送信バッファに格納するリアルタイム情報受取手順と、
    リアルタイム情報を送信するためのアクセス制御権を獲得するアクセス制御権獲得手順と、
    前記アクセス制御権獲得手順を実行することによりアクセス制御権を獲得できた際に前記送信バッファに格納されている最新のリアルタイム情報を送信するリアルタイム情報送信手順と
    を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラム。
  13. 請求項3に記載の無線通信装置から無線ネットワーク上で送信される情報の受信を行なう処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ・システムに対し、
    前記無線ネットワークを介して情報受信する手順と、
    受信情報をリアルタイム出力が必要な場合に、所定の出力タイミングにおける最新の受信情報を獲得する手順と、
    該最新の受信情報を出力する手順と、
    を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラム。
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