この発明は、燃焼を終えたリサイクル燃料集合体を収納する放射性物質格納容器の密閉構造に関し、更に詳しくは、密閉手段とこの密閉手段とは異なるシール部材により構成される放射性物質格納容器の密閉構造に関する。
核燃料サイクルの終期にあって燃焼を終えた核燃料集合体を、リサイクル燃料集合体という。リサイクル燃料集合体は、FPなど高放射性物質を含むので熱的に冷却する必要がある。このため、このリサイクル燃料集合体は、原子力発電所内の冷却ピットで所定時間(3〜6ヶ月間)冷却される。その後、放射性物質格納容器であるキャスクに収納され、車両又は船舶で再処理施設に輸送貯蔵される。また、リサイクル燃料集合体は上述のように、高放射性物質であるためこれを収納するキャスクは、この放射性物質がキャスク外部に漏れないようするための密閉構造が必要とされる。
図11は、従来のキャスクの蓋部の構造を示す図である。同図に示すように、キャスク100は、胴本体110と、蓋部120とで構成されている。胴本体110は、リサイクル燃料集合体などの放射性物質を収納するキャビティ111を有する有底円筒状であり、かつ炭素鋼製あるいはステンレス鋼製の鍛造品であり、γ線遮蔽機能を発揮するのに十分な厚みを有している。また、キャビティ111上方の開口部112は、胴本体110の軸方向の断面形状が階段状の形状となっており、段差部113が設けられている。なお114は、中性子を吸収するための中性子遮蔽体である。蓋部120は、一次蓋130および二次蓋140とから構成されている。一次蓋130および二次蓋140は、鋼製の円板状部材であり、それぞれその外周にフランジ部131,141が設けられている。また、二次蓋140には、その内部に中性子を吸収するための中性子遮蔽体142が設けられている。
上記キャスク100にリサイクル燃料集合体などの放射性物質を収納する際には、放射性物質をキャビティ111内に収納し、胴本体110の開口部112内に一次蓋130を取り付け、すなわち胴本体110の段差部113と一次蓋130のフランジ部131との間にガスケット161を介在させて、ボルト151でこの一次蓋130を胴本体110に固定する。そして、胴本体110の開口部112を覆うように、二次蓋140をこの胴本体110に取り付ける、すなわち胴本体110の上面115と二次蓋140のフランジ部141との間にガスケット162を介在させて、ボルト152でこの二次蓋140を胴本体110に固定することで、キャスク100の密閉構造を構成する。つまり、従来では、胴本体110と一次蓋130および二次蓋140との間に、密閉手段であるガスケット161,162を介在させることで、放射性物質格納容器であるキャスク100の密閉の信頼性を確保している。
また、従来は、放射性物質格納容器の密閉構造の信頼性を向上させるために、上記密閉手段に加えてシール部材が溶接により取り付けられた密閉構造が提案されている(例えば、特許文献1)。この密閉構造は、胴本体110(特許文献1では、キャスク10)と一次蓋130(特許文献1では、内蓋36)および二次蓋140(特許文献1では、外蓋38)との間を密閉手段(特許文献1では、Oリング42、52)により密閉し、さらに一次蓋130と胴本体110を固定するボルト161(特許文献1では、ボルト40)の上方、すなわち胴本体110と一次蓋130とで形成されている空間部をシール部材(特許文献1では、シールリング44)で覆い、シール部材とこの胴本体110の上面およびシール部材と一次蓋130の上面を溶接(密封溶接部46、48)する構造である。
ところで、キャスク100が落下等した際には、胴本体110のキャビティ111内に収納された放射性物質は一次蓋130に衝突する。この衝突により一次蓋130は、胴本体110の開口部112内でこの胴本体110の軸方向あるいは径方向に撓んだり、ずれたりする恐れがある。このとき、一次蓋130が胴本体110の径方向に移動する場合は、上記特許文献1にかかる放射性物質格納容器の密閉構造では、シール部材の一方の端部が一次蓋130の上面に溶接されているためシール部材も同様に胴本体110の径方向に移動しようとする。しかし、このシール部材の他方の端部は、胴本体110の上面に溶接されているので、シール部材は移動することができない。従って、シール部材と胴本体110あるいはシール部材と一次蓋130とのいずれかの溶接部には、溶接部をせん断する方向に力がかかり、溶接部がせん断される恐れがある。つまり、放射性物質格納容器であるキャスク100が落下または衝突した際にシール部材と胴本体110またはシール部材と内蓋である一次蓋130との溶接部がせん断されると、放射性物質格納容器の密閉の信頼性が低下する恐れがある。
また、胴本体110のキャビティ111にリサイクル燃料集合体などの放射性物質を収納した後に、一次蓋130および二次蓋140をこの胴本体110に固定するキャスク100の密閉作業は、高放射線下での作業となる。従って、胴本体110の開口部112にシール部材を挿入する作業時間やこのシール部材を溶接する作業時間の短縮、すなわち放射性物質格納容器の密閉作業時間の短縮を図り、作業員の安全性を向上することが必要である。
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、放射性物質格納容器の密閉の信頼性を向上させるとともに、放射性物質格納容器が落下又は衝突した際におけるこの放射性物質格納容器の密閉の信頼性を維持することができること、あるいは密閉作業時間の短縮を図り作業員の安全性を向上することの少なくとも一つを達成できる放射性物質格納容器の密閉構造を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するためにこの発明では、少なくともキャビティ内にリサイクル燃料集合体その他の放射性物質を収納するとともに、前記キャビティの周囲に中性子遮蔽体を設けた胴本体と、前記胴本体に取り付けられた蓋部と、前記胴本体と前記蓋部を密閉する密閉手段とを備える放射性物質格納容器の密閉構造において、前記蓋部は、前記胴本体のキャビティ上方の開口部内に取り付けられる内蓋と、前記内蓋の外側に取り付けられる外蓋とを備え、前記密閉手段とは異なり、かつ少なくとも前記胴本体の径方向に可とう性を有し、前記内蓋が取り付けられた前記胴本体の開口部に挿入されるシール部材をさらに備え、前記シール部材は、前記内蓋を覆い、かつ当該シール部材の端部に前記胴本体の軸方向に延在する腕部を有し、前記腕部が前記胴本体の開口部の内周面に当該胴本体の径方向に付勢された状態で接触し、かつ先端部が当該胴本体に溶接されることで、前記シール部材が前記外蓋と前記内蓋との間に取り付けられることを特徴とする。
この発明によれば、外蓋と内蓋との間に少なくとも胴本体の径方向に可とう性を有する密閉手段とは異なるシール部材が溶接により取り付けられているので、すなわち密閉手段とシール部材とにより胴本体の開口部を密閉しているので、放射性物質格納容器の密閉の信頼性を向上させることができる。また、放射性物質格納容器が落下又は衝突した際にシール部材が胴本体の径方向に移動しても、このシール部材が撓むことでシール部材と胴本体との溶接部の変位量を低減でき、この溶接部がせん断される恐れを少なくでき、上記放射性物質格納容器の密閉の信頼性を維持することができる。さらに、シール部材と胴本体との溶接部の溶接線は1本であり、このシール部材の溶接作業時間を短縮でき、放射性物質格納容器の密閉作業時間の短縮を図れ、作業員の安全性を向上することができる。また、この発明によれば、シール部材は、シール部材の端部に胴本体の軸方向に延在する腕部を有し、腕部の先端部を胴本体に溶接するので、上記放射性物質格納容器の密閉構造における作用効果に加えて、シール部材を溶接する際に、このシール部材の腕部の先端部と胴本体の溶接部を内蓋が取り付けられた胴本体の開口部から視認することができ、シール部材の溶接作業を容易に行うことができ、放射性物質格納容器の密閉作業時間の短縮を図ることができる。また、放射性物質格納容器を開封するためにシール部材を取り外す際に、シール部材と胴本体との溶接部を内蓋が取り付けられた胴本体の開口部から視認することができるので、この溶接部を容易にせん断することができ、シール部材の開封作業を容易に行うことができ、放射性物質格納容器の密閉作業時間の短縮をさらに図れ、作業員の安全性をさらに向上することができる。さらに、この発明よれば、腕部は、胴本体の開口部の内周面および/または内蓋の外周面に胴本体の径方向に付勢された状態で接触しているので、シール部材をリング状の空間部あるいは胴本体の開口部に挿入した際に、この挿入されたシール部材の挿入位置を維持することができる。これにより、シール部材を溶接する際に、このシール部材を挿入位置で保持する保持手段を必要としないので、シール部材の溶接を容易に行うことができ、放射性物質格納容器の密閉作業時間の短縮をさらに図れ、作業員の安全性をさらに向上することができる。
また、この発明では、前記内蓋は、その外周面に前記開口部に設けられた段差部に当接するフランジ部を有し、前記シール部材は、前記内蓋の外周面と前記フランジ部の上面と前記胴本体の開口部の内周面とにより形成されるリング状の空間部に挿入されていることを特徴とする。
これらの発明によれば、この発明によれば、シール部材は、内蓋が取り付けられた胴本体の開口部に挿入され、胴本体に溶接により取り付けられているので、すなわち密閉手段とシール部材とにより胴本体の開口部を密閉しているので、放射性物質格納容器の密閉の信頼性を向上させることができる。また、放射性物質格納容器が落下又は衝突した際にシール部材が胴本体の径方向に移動しても、このシール部材が撓むことでシール部材と胴本体との溶接部の変位量を低減でき、この溶接部がせん断される恐れを少なくでき、上記放射性物質格納容器の密閉の信頼性を維持することができる。さらに、シール部材と胴本体の開口部との溶接部の溶接線は1本となり、このシール部材の溶接作業時間を短縮でき、放射性物質格納容器の密閉作業時間の短縮を図れ、作業員の安全性を向上することができる。
また、この発明では、上記放射性物質格納容器の密閉構造において、前記シール部材は、前記胴本体の軸方向に突出する突出部を有することを特徴とする。
この発明によれば、シール部材は、胴本体の軸方向に突出する突出部を有するので、放射性物質格納容器が落下又は衝突した際にシール部材が胴本体の径方向に移動しても、シール部材、特にシール部材の突出部が撓み、シール部材と胴本体またはシール部材と内蓋との溶接部の変位量をさらに低減でき、この溶接部がせん断される恐れをさらに小さくでき、上記放射性物質格納容器の密閉の信頼性をさらに維持することができる。
また、この発明では、上記放射性物質格納容器の密閉構造において、前記シール部材が溶接される前記胴本体にリング状の溶接突起部を設けたことを特徴とする。
この発明によれば、シール部材が溶接される胴本体および/または内蓋にリング状の溶接突起部を設けるので、胴本体または一次蓋自体に比べて、胴本体および/または内蓋にシール部材を溶接する溶接個所の熱容量が小さでき、すなわちシール部材の熱容量に近づけることができ、シール部材の溶接を容易に行うことができ、放射性物質格納容器の密閉作業時間の短縮をさらに図れ、作業員の安全性をさらに向上することができる。ここで、溶接突起部は、胴本体や内蓋を切削することで設けても良いし、リング状の部材を胴本体や内蓋に取り付けても良い。
この発明にかかる放射性物質格納容器の密閉構造は、放射性物質格納容器の密閉の信頼性を向上させるとともに、放射性物質格納容器が落下又は衝突した際におけるこの放射性物質格納容器の密閉の信頼性を維持することができるという効果を奏する。また、密閉作業時間の短縮を図り作業員の安全性を向上するという効果を奏する。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、参考例の放射性物質格納容器の軸方向断面図である。ここで、放射性物質格納容器には、キャスクやキャニスタ等が含まれる。同図に示すように、放射性物質格納容器1は、胴本体2と、蓋部3とにより構成されている。胴本体2は、開口部2aを有する中空円筒形状であり、その底部に円板状の底板4が溶接によって取り付けられている。この胴本体2の中空部と底板4とで形成される空間であるキャビティ2b内にリサイクル燃料集合体などの放射性物質Rを装荷する図示しないバスケット等が収納されている。ここで、胴本体2および底板4は、炭素鋼製の鍛造品でありγ線遮蔽機能を発揮するのに十分な厚みを有している。なお、胴本体2の外形に合わせた内部形状を有するコンテナ内に金属ビレットを装入し、胴本体2の内径に合わせた外径を有する穿孔ポンチで、この金属ビレットを熱間拡張成形することによって胴本体2と底板4を一体に成形して良いし、鋳造により製造しても良い。
また、胴本体2の外周部には、外筒5が図示しないアルミニウム板や銅板等の熱の良導材料で形成される複数の伝熱フィンを介して取り付けられている。この伝熱フィンには、キャビティ2b内に収納された放射性物質Rから発生する崩壊熱が胴本体2を介して伝わる。この伝熱フィンに伝わった放射性物質Rからの崩壊熱は、外筒5に伝導された後、外筒5の表面から大気中に放出される。この外筒5と胴本体2との間には、水素を多く含有する高分子材料であるレジン、ポリウレタン、シリコンなどの中性子吸収体6が充填されている。なお、底板4にも同様に中性子吸収体6が封入されている。
蓋部3は、同図に示すように、内蓋である一次蓋7と外蓋である二次蓋8とにより構成されている。この一次蓋7および二次蓋8は、γ線を遮蔽する炭素鋼製またはステンレス鋼製の円板形状である。一次蓋7は、その外周部に胴本体2の開口部2aとキャビティ2bとの間に設けられた段差部2cに当接するフランジ部7aが設けられている。一方、二次蓋8は、その外周部に胴本体2の上面2dに当接するフランジ部8aが設けられ、中性子吸収体6が封入されている。一次蓋7および二次蓋8は、それぞれ複数個のボルト9a、9bで胴本体2に固定されている。なお、8bは、放射性物質格納容器1が落下または衝突した際に、一次蓋7にかかる荷重を二次蓋8に分担させるための荷重伝達機構である荷重用突起である。
放射性物質格納容器1の密閉構造は、密閉手段であるガスケット10a、10bとシール部材12により構成されている。ガスケット10a、10bは、リング状の金属製であり、それぞれ胴本体2と一次蓋7との間および胴本体2と二次蓋8との間に介在されている。
図2は、参考例のシール部材の構成例を示す図であり、同図(a)は図1のA部分拡大図、同図(b)はシール部材の平面図、同図(c)は空間部に挿入される前のシール部材の軸方向断面図である。シール部材12は、同図(b)に示すように、リング状であり、炭素鋼製あるいはステンレス鋼製である。このリング状のシール部材12は、同図(a)に示すように、一次蓋7のフランジ部7aの上方、すなわちこの一次蓋7の外周面とフランジ部7aの上面(ボルト9aの上面も含まれる)と胴本体2の開口部2aの内周面とに形成されるリング状の空間部11に挿入されている。シール部材12は、胴本体2の軸方向の上方に突出部12aと胴本体2の軸方向の下方に突出部12b、12cが設けられている。また、シール部材12の両端部は、胴本体2の軸方向(同図(b)では、上方)に延在する腕部12d、12eが設けられている。すなわち、シール部材12は、その軸方向断面形状が上記空間部11に挿入された状態では、M字を逆にした形状となっている。
シール部材12の空間部11に挿入する前の形状は、同図(c)に示すように、その腕部12d、12eの先端部12f、12gの幅d1が、シール部材12を挿入する空間部11の幅d2よりも広い形状、すなわち、その軸方向断面形状がW字の形状である。従って、胴本体2および一次蓋7の製作公差により、空間部11の幅d1が不均一な場合においても、シール部材12の突出部12a、12b、12cが撓むことで、シール部材12を空間部11に容易に挿入することができる。また、空間部11に挿入されたシール部材12の腕部12d、12eは、それぞれ胴本体2の開口部2aの内周面と一次蓋7の外周面に付勢された状態で接触する。これにより、シール部材12は、空間部11に挿入された挿入位置を維持することができ、シール部材12を溶接する際にこのシール部材12を挿入位置で保持する保持手段を必要とせず、シール部材12の溶接作業を容易に行うことができる。また、空間部11に挿入されたシール部材12の先端部12f、12gは、胴本体2の開口部2aの内周面と一次蓋7の外周面に接触した状態を維持できるので、シール部材12の溶接作業を容易に行うことができる。また、腕部12d、12eの先端部12f、12gは、一次蓋7が取り付けられた胴本体2の開口部2aから視認することができ、シール部材12の溶接作業を容易に行うことができる。さらに、シール部材12は、リング状であり、且つ空間部11に容易に挿入することができるので、製作に高い精度が要求されず、このシール部材12の製造コストを低減することができる。
胴本体2の開口部2aの内周面と一次蓋7の外周面には、腕部12d、12eの先端部12f、12gが接触する位置に、それぞれ溶接用突起部2e、7bが切削加工などにより設けられている。シール部材12は、このシール部材12の腕部12dの先端部12fと胴本体2の溶接用突起部2eと、腕部12eの先端部12gと溶接用突起部7bとを溶接することで、シール部材12は胴本体2と一次蓋7との間に取り付けられている。このシール部材12の溶接は、例えば、TIG溶接、レーザ溶接などにより行われる。また、胴本体2の溶接用突起部2eおよび一次蓋7の溶接用突起部7bは、胴本体2または一次蓋7自体に比べて熱容量が小さいので、すなわちシール部材12の先端部12f、12gの熱容量に近づくので、シール部材12の溶接を容易に行うことができる。
一次蓋7が撓んだり、ずれることで、この一次蓋7が胴本体2の径方向に移動すると、図2(a)に示すシール部材12が挿入されている空間部11の幅d1が変位する(長くなったり、短くなったりする)。シール部材12の腕部12d、12eの幅は、空間部11の幅d1の変位に追従して変位するが、このシール部材12の突起部12a、12b、12cが撓むことで、上記変位量を吸収される。従って、シール部材12と胴本体2および一次蓋7との溶接部Sの変位量を低減することができる。これにより、放射性物質格納容器1が落下又は衝突した際にシール部材12が胴本体2の径方向に移動しても、この溶接部がせん断される恐れを少なくできる。
なお、シール部材12の腕部12d、12eの長さを図3(a)に示すように、同一の長さとしても良い。これにより、放射性物質格納容器1が落下又は衝突した際に、一次蓋7の胴本体2の径方向の移動による空間部11の幅の変位に追従して変位するが、このシール部材12の突起部12a、12b、12cが撓むことで、上記変位量を吸収し、且つシール部材12と胴本体2および一次蓋7との溶接部Sの変位量が均一にすることができるので、この溶接部Sのいずれかの変位量が大きくなることを防止でき、この溶接部がせん断される恐れをさらに少なくできる。これにより、放射性物質格納容器1が落下又は衝突した際にシール部材12が胴本体2の径方向に移動しても、この放射性物質格納容器1の密閉の信頼性をさらに維持することができる。また、一次蓋7が胴本体2の径方向に移動する量がわずかである場合は、図3(b)に示すように、シール部材12のその軸方向断面形状をシール部材12の成形が容易な形状、すなわち突出部12a、12b、12cがないU字形状としても良い。この場合は、シール部材12の空間部11に挿入する前の形状が、その腕部12d、12eの先端部12f、12gの幅が、シール部材12を挿入する空間部11の幅よりも広い形状であることが好ましい。
放射性物質格納容器1を上記のような密封構造とすることにより、放射性物質格納容器1の密閉の信頼性を向上させることができるとともに、放射性物質格納容器1が落下又は衝突した際にシール部材12が胴本体2の径方向に移動しても、この放射性物質格納容器1の密閉の信頼性を維持することができる。
図4は、シール部材の他の構成例を示す図である。同図(a)に示すように、シール部材12´は、シール部材12と同様にリング状の空間部11に挿入されている。シール部材12´は、胴本体2の近傍にこの胴本体2の軸方向の下方に突出部12bが設けられている。また、シール部材12´の胴本体2側の端部は、胴本体2の軸方向(同図(a)では、上方)に延在する腕部12dが設けられている。胴本体2の開口部2aの内周面と一次蓋7の外周面には、シール部材12´の腕部12dの先端部12fと一次蓋7側の端部12hのそれぞれが接触する位置に、溶接用突起部2e、7b´が切削加工などにより設けられている。シール部材12´は、このシール部材12´の腕部12dの先端部12fを胴本体2の溶接用突起部2eに、端部12hを溶接用突起部7b´に溶接することで、胴本体2と一次蓋7との間に取り付けられている。
このシール部材12´の端部12hが開口部11に挿入されないので、シール部材12´をこの開口部11に挿入する際に、腕部12dの先端部12fと胴本体2の溶接用突起部2eとの位置を合わせるだけで、シール部材12´の空間部11に対する挿入位置を設定することができる。また、シール部材12´の溶接は、腕部12dの先端部12fと胴本体2の溶接用突起部2eから行うのが良い。これにより、シール部材12´を空間部11の挿入位置に保持することができる。なお、溶接用突起部7b´の高さは、その上面に溶接されるシール部材12´の端部12hの上面が一次蓋7の上面を越えない高さに設定されている。これは、一次蓋7が胴本体2の軸方向に移動して二次蓋8と接触した際に、シール部材12´の端部12hと溶接用突起部7b´との溶接部Sが二次蓋8の下面に接触して損傷しないようにするためである。
この放射性物質格納容器1の密封構造は、シール部材12の代わりにシール部材12´を空間部11に挿入され、このシール部材12´を胴本体2と一次蓋7とに溶接した点を除けば、図1に示す放射性物質格納容器1と同様である。放射性物質格納容器1が落下又は衝突した際に、一次蓋7が胴本体2の径方向に移動し、シール部材12´の端部12hと腕部12dとの幅が、空間部11の幅の変位に追従して変位しても、このシール部材12´の突起部12bが撓むことで、上記変位量を吸収する。従って、シール部材12´と胴本体2および一次蓋との溶接部Sのいずれについても、この溶接部Sの変位量を低減できる。これにより、放射性物質格納容器1が落下又は衝突した際にシール部材12´が胴本体2の径方向に移動しても、この溶接部Sがせん断される恐れがない。従って、放射性物質格納容器1を上記のような密封構造とすることにより、放射性物質格納容器1の密閉の信頼性を向上させることができるとともに、放射性物質格納容器1が落下又は衝突した際にシール部材12´が胴本体2の径方向に移動しても、この放射性物質格納容器1の密閉の信頼性を維持することができる。
ここで、放射性物質格納容器1の密閉状態は、一次蓋7と二次蓋8との間の圧力を監視することで行うが、この圧力を正確に検知するためには一定量の容積が必要である。上記シール部材12´では、その下部、すなわちシール部材12´の下面と一次蓋7のフランジ7aの上面との間の空間の容積を大きくできるので、この空間内で圧力を検知すれば、放射性物質格納容器1の密閉状態の監視を的確に行うことができる。なお、同図(b)に示すように、一次蓋7の溶接用突起部7b´を設けずに、シール部材12´の一次蓋7側の端部をこの一次蓋7自体に直接溶接しても良い。これにより、シール部材12´と一次蓋7との溶接部を強固なものとすることができる。
上記参考例では、蓋部3が内蓋である一次蓋7と外蓋である二次蓋8とで構成される放射性物質格納容器1の密閉構造について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、内蓋を二重構造とした放射性物質格納容器にも用いることができる。図5は、内蓋を二重構造とした放射性物質格納容器の密閉構造の構成例を示す図である。この放射性物質格納容器1´が図1に示す放射性物質格納容器1と異なる点は、内蓋を一次蓋7と支持蓋13との二重構造にした点である。この放射性物質格納容器1´の蓋部3は、一次蓋7と二次蓋8と支持蓋13により構成されている。支持蓋13は、一次蓋7および二次蓋8と同様にγ線を遮蔽する炭素鋼製またはステンレス鋼製の円板形状であり、その外周部に胴本体2の開口部2aの段差部2cの下側、すなわちキャビティ2b側に設けられた段差部2fに当接するフランジ部13aが設けられている。支持蓋13は、複数個のボルト9cで胴本体2に、一次蓋7と間隙2gを設けた状態で固定されている。
この放射性物質格納容器1´の密封構造は、図1に示す放射性物質格納容器1と同様に、胴本体2と一次蓋7との間および胴本体2と二次蓋の間に介在されている密閉手段であるガスケット10a、10bと、空間部11に挿入され胴本体2と一次蓋7とに溶接されたシール部材12とにより構成されている。図5に示す放射性物質格納容器1´が落下や衝突し、胴本体2のキャビティ2b内に収納された図示しない放射性物質が支持蓋13に衝突することで、支持蓋13が胴本体2の開口部2a内でこの胴本体2の軸方向あるいは径方向に撓んだり、ずれたりしても、支持蓋13からの荷重は間隙2gがあるため一次蓋7に分担されない。つまり、支持蓋13が胴本体2の径方向に移動しても、一次蓋7は支持蓋13の移動に追従して移動しないので、一次蓋7が自重で撓んだり、ずれたりしない限り、この一次蓋7の空間部11に挿入され、溶接されているシール部材12は、胴本体2の径方向の変位を生じない。従って、放射性物質格納容器1´を上記のような密封構造とすることにより、放射性物質格納容器1´の密閉の信頼性を向上させることができるとともに、放射性物質格納容器1´が落下又は衝突した際に支持蓋13が移動しても、シール部材12が胴本体2の径方向に移動しないので、この放射性物質格納容器1´の密閉の信頼性をさらに維持することができる。
なお、図6に示すように、シール部材12を胴本体2と支持蓋13との間、すなわち支持蓋13の外周面とフランジ部13aの上面(ボルト9cの上面も含まれる)と胴本体2の開口部2aの内周面とに形成されるリング状の空間部14に挿入し、溶接により取り付けても良い。この放射性物質格納容器1´の密封構造は、図1に示す放射性物質格納容器1と同様に、胴本体2と一次蓋7との間および胴本体2と二次蓋の間に介在されている密閉手段であるガスケット10a、10bと空間部14に挿入され胴本体2と支持蓋13とに溶接されたシール部材12とにより構成されている。放射性物質格納容器1´が落下又は衝突した際にこの支持蓋13が胴本体2の径方向に移動し、シール部材12の腕部12d、12eの幅が空間部14の幅の変位に追従して変位しても、このシール部材12の突起部12a、12b、12cが撓むことで、上記変位量を吸収する。従って、シール部材12と胴本体2および支持蓋13との溶接部Sのいずれについても、この溶接部Sの変位量を低減することができる。これにより、放射性物質格納容器1´が落下又は衝突した際にシール部材12が胴本体2の径方向に移動しても、この溶接部Sがせん断される恐れを少なくできる。従って、放射性物質格納容器1´を上記のような密封構造とすることにより、放射性物質格納容器1´の密閉の信頼性を向上させることができるとともに、放射性物質格納容器1´が落下又は衝突した際にシール部材12が胴本体2の径方向に移動しても、この放射性物質格納容器1´の密閉の信頼性を維持することができる。
ここで、上記放射性物質格納容器1´、1´のシール部材12を図3(a)に示すような腕部12d、12eの長さを同一の長さとしたシール部材12や図3(b)に示すような突出部12a、12b、12cがない成形が容易な形状としてもよい。また、シール部材12の代わりにシール部材12´を用いても良い。
〔第一実施形態〕
図7は、第一実施形態の放射性物質格納容器の軸方向断面図である。図7に示す第一実施形態の放射性物質格納容器20は、図1に示す参考例の放射性物質格納容器1とその基本的構成は同一であるので説明は省略する。この放射性物質格納容器20が、図1に示す放射性物質格納容器1と異なる点は、内蓋である一次蓋7と外蓋である二次蓋8との間に、シール部材15を設けた点にある。この放射性物質格納容器30の密閉構造は、密閉手段であるガスケット10a、10bとシール部材15により構成されている。
図8は、第一実施形態のシール部材の構成例を示す図であり、同図(a)は図7のB部分拡大図、同図(b)はシール部材の平面図、同図(c)は空間部に挿入される前のシール部材の軸方向断面図である。シール部材15は、同図(b)に示すように、円板状であり、炭素鋼製あるいはステンレス鋼製である。この円板状のシール部材15は、同図(a)に示すように、一次蓋7と二次蓋8との間で、かつ一次蓋7の上面を覆うように胴本体2の開口部2aに挿入されている。シール部材15は、その端部近傍に胴本体2の軸方向の上方に突出部15aが設けられている。また、シール部材15の端部は、胴本体2の軸方向(同図(b)では、上方)に延在する腕部15bが設けられている。
シール部材15の開口部2aに挿入する前の形状は、同図(c)に示すように、その腕部15bの先端部15cの幅d3が、シール部材15を挿入する開口部2aの幅d4よりも広い形状である。従って、シール部材15の製作公差により、先端部15cの幅d4が不均一な場合においても、シール部材15の突出部15aが撓むことで、シール部材15は開口部2aに容易に挿入することができる。また、開口部2aに挿入されたシール部材15の腕部15bは、胴本体2の開口部2aの内周面に付勢された状態で接触する。これにより、シール部材15は、開口部2aに挿入された挿入位置を維持することができ、シール部材15を溶接する際にこのシール部材15を挿入位置で保持する保持手段を必要とせず、シール部材15の溶接作業を容易に行うことができる。また、開口部2aに挿入されたシール部材15の先端部15cは、胴本体2の開口部2aの内周面に接触した状態を維持できるので、シール部材15の溶接作業を容易に行うことができる。また、腕部15bの先端部15cは、胴本体2の開口部2aから視認することができ、シール部材15の溶接作業を容易に行うことができる。
胴本体2の開口部2aの内周面には、腕部15bの先端部15cが接触する位置に、溶接用突起部2eが切削加工などにより設けられている。シール部材15は、このシール部材15の腕部15bの先端部15cと胴本体2の溶接用突起部2eとを溶接することで、一次蓋7と二次蓋8との間に取り付けられている。このシール部材15の溶接は、例えば、TIG溶接、レーザ溶接などにより行われる。また、胴本体2の溶接用突起部2eは、胴本体2自体に比べて熱容量が小さいので、すなわちシール部材15の先端部15cの熱容量に近づくので、シール部材15の溶接を容易に行うことができる。さらに、シール部材15と胴本体2との溶接部Sは一箇所、つまり溶接部Sの溶接線は1本であるので、このシール部材15の溶接作業時間を短縮できる。また、溶接部Sが一箇所なので、シール部材15の溶接部Sをせん断し、このシール部材15を胴本体2の開口部2aから取り外す作業を短時間で行うことができる。
放射性物質格納容器20が落下又は衝突した際に、一次蓋7が撓んだり、ずれることで、この一次蓋7は胴本体2の軸方向あるいは径方向に移動する場合がある。一次蓋7が胴本体2の径方向だけに移動した場合は、シール部材15は一次蓋7に固定されていないため、このシール部材15が一次蓋7に接触していても胴本体2の径方向に対する変位量は少ない。一次蓋7が胴本体2の軸方向と径方向に移動した場合は、まず、一次蓋7がシール部材15を介して二次蓋8の荷重用突起部8bに衝突する。この際、シール部材15は、一次蓋7と二次蓋8との間に密着するので、シール部材15の胴本体の径方向に対する変位量は、一次蓋7が移動した際の変位量に追従する。上記いずれの場合においても、シール部材15の突起部15aが撓むことで、上記変位量を吸収する。従って、シール部材15と胴本体2との溶接部Sの変位量を低減することができる。これにより、放射性物質格納容器20が落下又は衝突した際にシール部材15が胴本体2の径方向に移動しても、この溶接部Sがせん断される恐れを少なくできる。
なお、上記実施形態例では、放射性物質格納容器20が落下または衝突した際に、一次蓋7にかかる荷重を二次蓋8に分担させるため荷重伝達機構として、二次蓋8に荷重用突起8bを設けたが、図9(a)に示すように、シール部材15の上面に荷重用突起15dを設けても良い。また、図9(b)に示すように、荷重用突起15dは、シール部材15の下側に設けても良い。
放射性物質格納容器20を上記のような密封構造とすることにより、放射性物質格納容器20の密閉の信頼性を向上させることができるとともに、放射性物質格納容器20が落下又は衝突した際にシール部材12が胴本体2の径方向に移動しても、この放射性物質格納容器20の密閉の信頼性を維持することができる。
図10は、参考例の放射性物質格納容器の要部断面図である。図10に示す参考例の放射性物質格納容器30は、図1に示す参考例の放射性物質格納容器1とその基本的構成は同一であるので説明は省略する。この放射性物質格納容器30が、図1に示す放射性物質格納容器1と異なる点は、蓋部3を覆うシール部材16を設けた点にある。この放射性物質格納容器30の密閉構造は、密閉手段であるガスケット10a、10bとシール部材16とにより構成されている。
シール部材16は、円板部16aと外周部16bとから構成され、その軸方向断面形状が凹状であり、炭素鋼製あるいはステンレス鋼製である。このシール部材16は、放射性物質格納容器30に一次蓋7と二次蓋8が取り付けられた状態で、蓋部3、すなわち二次蓋8の外周面を覆うように被せられている。シール部材16の外周部16bの下端部には、胴本体2の径方向に延在する腕部16cが設けられている。シール部材16は、このシール部材16の腕部16cの先端部16dと外筒5とを溶接することで、蓋部3を覆うように取り付けられている。なお、シール部材16が取り付けられた放射性物質格納容器30は、輸送時に図示しない緩衝体が蓋部3を覆うように、すなわちシール部材16を覆うように取り付けられている。ここで、外筒5は、胴本体2自体に比べて熱容量が小さいので、すなわちシール部材16の先端部16cの熱容量に近づくので、シール部材16の溶接を容易に行うことができる。さらに、シール部材16と外筒5との溶接部Sは一箇所、つまり溶接部Sの溶接線は1本であるので、このシール部材16の溶接作業時間を短縮できる。また、溶接部Sが一箇所なので、この溶接部Sをせん断することで、このシール部材16を胴本体2に設けられた外筒5から取り外す作業を短時間で行うことができる。また、腕部16cの先端部16dは、放射性物質格納容器30の上方から視認することができ、シール部材16の溶接作業を容易に行うことができる。
放射性物質格納容器30が落下又は衝突した際に、一次蓋7が撓んだり、ずれることで、一次蓋7が胴本体2の軸方向と径方向に移動した場合は、まず、一次蓋7がシール部材15を介して二次蓋8の荷重用突起部8に衝突する。一次蓋7の荷重は、一次蓋7が二次蓋8に衝突することで二次蓋8が分担するため、この二次蓋8も胴本体2の軸方向と径方向に移動する。シール部材16の外周部16bは、二次蓋8の外周面に密着しているので、シール部材16の胴本体2の径方向に対する変位量は、二次蓋8が移動した際の変位量に追従する。シール部材16は、シール部材16の外周部16bと腕部16cとの接合部16eが撓むことで、上記変位量を吸収する。従って、シール部材16と外筒5との溶接部Sの変位量を低減することができる。これにより、放射性物質格納容器20が落下又は衝突した際にシール部材16が胴本体2の径方向に移動しても、この溶接部Sがせん断される恐れを少なくできる。
放射性物質格納容器30を上記のような密封構造とすることにより、放射性物質格納容器30の密閉の信頼性を向上させることができるとともに、放射性物質格納容器30が落下又は衝突した際にシール部材16が胴本体2の径方向に移動しても、この放射性物質格納容器30の密閉の信頼性を維持することができる。
以上のように、参考例によれば、外蓋と内蓋との間に少なくとも胴本体の径方向に可とう性を有する密閉手段とは異なるシール部材が溶接により取り付けられているので、すなわち密閉手段とシール部材とにより胴本体の開口部を密閉しているので、放射性物質格納容器の密閉の信頼性を向上させることができる。また、放射性物質格納容器が落下又は衝突した際にシール部材が胴本体の径方向に移動しても、このシール部材が撓むことでシール部材と胴本体との溶接部の変位量を低減でき、この溶接部がせん断される恐れを少なくでき、上記放射性物質格納容器の密閉の信頼性を維持することができる。さらに、シール部材と胴本体との溶接部の溶接線は1本であり、このシール部材の溶接作業時間を短縮でき、放射性物質格納容器の密閉作業時間の短縮を図れ、作業員の安全性を向上することができる。
また、参考例によれば、シール部材は、シール部材の端部に胴本体の軸方向に延在する腕部を有し、腕部の先端部を胴本体に溶接するので、シール部材を溶接する際に、このシール部材の腕部の先端部と胴本体の溶接部を内蓋が取り付けられた胴本体の開口部から視認することができ、シール部材の溶接作業を容易に行うことができ、放射性物質格納容器の密閉作業時間の短縮を図ることができる。また、放射性物質格納容器を開封するためにシール部材を取り外す際に、シール部材と胴本体との溶接部を内蓋が取り付けられた胴本体の開口部から視認することができるので、この溶接部を容易にせん断することができ、シール部材の開封作業を容易に行うことができ、放射性物質格納容器の密閉作業時間の短縮をさらに図れ、作業員の安全性をさらに向上することができる。
また、参考例によれば、腕部は、胴本体の開口部の内周面および/または内蓋の外周面に胴本体の径方向に付勢された状態で接触しているので、シール部材をリング状の空間部あるいは胴本体の開口部に挿入した際に、この挿入されたシール部材の挿入位置を維持することができる。これにより、シール部材を溶接する際に、このシール部材を挿入位置で保持する保持手段を必要としないので、シール部材の溶接を容易に行うことができ、放射性物質格納容器の密閉作業時間の短縮をさらに図れ、作業員の安全性をさらに向上することができる。
また、参考例によれば、シール部材は、胴本体の軸方向に突出する突出部を有するので、放射性物質格納容器が落下又は衝突した際にシール部材が胴本体の径方向に移動しても、シール部材、特にシール部材の突出部が撓み、シール部材と胴本体またはシール部材と内蓋との溶接部の変位量をさらに低減でき、この溶接部がせん断される恐れをさらに小さくでき、上記放射性物質格納容器の密閉の信頼性をさらに維持することができる。
また、参考例によれば、シール部材が溶接される胴本体および/または内蓋にリング状の溶接突起部を設けるので、胴本体または一次蓋自体に比べて、胴本体および/または内蓋にシール部材を溶接する溶接個所の熱容量が小さでき、すなわちシール部材の熱容量に近づけることができ、シール部材の溶接を容易に行うことができ、放射性物質格納容器の密閉作業時間の短縮をさらに図れ、作業員の安全性をさらに向上することができる。
また、参考例によれば、少なくとも胴本体の径方向に可とう性を有する密閉手段とは異なるシール部材で蓋部を覆い、シール部材の端部を胴本体に設けた中性子遮蔽体を覆う外筒に溶接より取り付けるので、すなわち密閉手段とシール部材とにより胴本体の開口部を密閉しているので、放射性物質格納容器の密閉の信頼性を向上させることができる。また、放射性物質格納容器が落下又は衝突した際にシール部材が胴本体の径方向に移動しても、このシール部材が撓むことで、シール部材と胴本体の外筒との溶接部の変位量を低減でき、この溶接部がせん断される恐れを少なくでき、上記放射性物質格納容器の密閉の信頼性を維持することができる。さらに、シール部材は、胴本体と蓋部を密閉手段により密閉した後に胴本体の外筒に溶接により取り付けるので、すでに高放射線下の作業ではないので、作業員の安全性を向上することができる。
参考例の放射性物質格納容器の軸方向断面図である。
参考例のシール部材の構成例を示す図であり、同図(a)は図1のA部分拡大図、同図(b)はシール部材の平面図、同図(c)は空間部に挿入される前のシール部材の軸方向断面図である。
シール部材の他の構成例を示す図である。
シール部材の他の構成例を示す図である。
内蓋を二重構造とした放射性物質格納容器の密閉構造の構成例を示す図である。
内蓋を二重構造とした放射性物質格納容器の密閉構造の構成例を示す図である。
第一実施形態の放射性物質格納容器の軸方向断面図である。
第一実施形態のシール部材の構成例を示す図であり、同図(a)は図7のB部分拡大図、同図(b)はシール部材の平面図、同図(c)は空間部に挿入される前のシール部材の軸方向断面図である。
シール部材の他の構成例を示す図である。
参考例の放射性物質格納容器の軸方向断面図である。
従来のキャスクの蓋部の構造を示す図である。
符号の説明
1,1´ 放射性物質格納容器
2 胴本体
3 蓋部
4 底板
5 外筒
6 中性子遮蔽体
7 内蓋
8 外蓋
9a〜c ボルト
10a,b ガスケット
11 空間部
12,12´ シール部材
12a〜c 突出部
12d,e 腕部
13 支持蓋
14 空間部
15 シール部材
16 シール部材
20 放射性物質格納容器
30 放射性物質格納容器