JP4021216B2 - 流体伝動装置用羽根車 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,トルクコンバータや流体継手を含む流体伝動装置用羽根車に関し,特に,椀状且つ環状のシェルと,このシェルの内側面の定位置に結合される複数枚のブレードと,シェルの内側面にロー付けされてこれらブレードの半径方向内端部を押さえるリテーナプレートと,シェルの内周縁部に溶接される軸又はハブとからなる羽根車の改良に関する。この羽根車は,タービン羽根車やポンプ羽根車を含む。
【0002】
【従来の技術】
従来のかゝる羽根車では,例えば特開昭58−97448号公報に開示されているように,シェルの中心部に形成した嵌合孔を,軸又はハブに形成した嵌合円筒部に嵌合すると共に,シェルの内側面を,軸又はハブに形成した位置決めフランジに押し当てゝ,シェルの外側面と軸又はハブの外周面とで画成された内隅において,シェルと軸又はハブとを溶接している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のものでは,一般にリテーナプレートより肉厚のシェルの外側で,シェルと軸又はハブとの溶接が行われるから,その溶接熱はシェルに吸収され,シェル及びリテーナプレート間のロー材を溶融させることはなく,溶出ロー材によるシェルと軸又はハブ間の溶接不良は回避できるものゝ,流体伝動装置の作動中,その内圧は,シェルと位置決めフランジとを引き離す方向に作用し,その荷重を全て上記溶接部が負担することになるため,その溶接強度は充分に高くする必要がある。
【0004】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,シェルと軸又はハブとの溶接部の荷重負担を軽減しつゝ,羽根車と軸又はハブとの結合強度を充分に確保し得る前記流体伝動装置用羽根車を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために,本発明は,椀状且つ環状のシェルと,このシェルの内側面の定位置に結合される複数枚のブレードと,シェルの内側面にロー付けされてこれらブレードの半径方向内端部を押さえるリテーナプレートと,シェルの内周縁部に溶接される軸又はハブとからなる,流体伝動装置用羽根車において,前記リテーナプレートの,シェルと反対側の内側面に環状の補強板をロー付けし,シェル,リテーナプレート及び補強板の内周に形成した一連の嵌合孔を,軸又はハブに形成した連結円筒部に嵌合すると共に,シェルの外側面を,軸又はハブに形成した位置決めフランジに押し当て,補強板の内側面と連結円筒部の外周面とで画成される内隅で補強板及び連結円筒部相互を溶接し,その溶接熱がシェル,リテーナプレート及び補強板の各間のロー材の溶融に影響しないように補強板の板厚をリテーナプレートのそれより大きく設定したことを第1の特徴とする。
【0006】
この第1の特徴によれば,補強板と連結円筒部との溶接時の熱は,リテーナプレートより板厚が厚く熱容量が大きい補強板に吸収され,シェル,リテーナプレート及び補強板の各間のロー材を溶融させるには至らず,したがって溶出ロー材の,連結円筒部及び補強板間の溶接部への侵入を未然に回避して,良好な溶接部を得ることができる。そして流体伝動装置の作動中,羽根車のシェルが内圧による軸方向外向きの荷重を受けると,その荷重は軸又はハブの位置決めフランジで支承されることになり,しかも位置決めフランジに支承されるシェルの内周縁部は,その内側面にロー付けされたリテーナプレート及び補強板により強固に補強されているから,補強板と連結円筒部との溶接部の荷重負担を大幅に軽減することができる。
【0007】
また本発明は,第1の特徴に加えて,補強板の内側面と連結円筒部の外周面とで画成される内隅に前記溶接による隅肉を形成し,また補強板の外周面に羽根車の内方に向かって小径となるテーパ面を形成し,前記隅肉及びテーパ面を,羽根車内での作動オイルの流れに沿うように配置したことを第2の特徴とする。
【0008】
この第2の特徴によれば,補強板外周のテーパ面と,溶接による隅肉とが羽根車内での作動オイルの流れに沿って並ぶことにより,その作動オイルの整流を確保して,流体伝動効率の向上に寄与し得る。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の一実施例に基づいて以下に説明する。
【0010】
図1は本発明のトルクコンバータの縦断面図,図2は図1の2部拡大図,図3は図2の3部拡大図,図4は図3におけるシールリングの一部を破断した斜視図,図5は図1の5−5線断面図,図6は図1の6部拡大図,図7はポンプ羽根車の製造過程説明図,図8は図1の8部拡大図,図9はタービン羽根車の製造過程説明図,図10は図1の10−10線断面図,図11は図10の11−11線断面図,図12は図1の12−12線断面図,図13は図12の13−13線断面図である。
【0011】
先ず,図1において,自動二輪車,バギー車等の小型車両に搭載される流体伝動装置としてのトルクコンバータTは,入力軸としてのエンジンのクランク軸1と,多段補助変速機の被動ギヤ17との間に介裝される。このトルクコンバータTは,ポンプ羽根車2と,その外周部に外周部を対置させるタービン羽根車3と,それらの内周部間に配置されるステータ羽根車4とを備え,これら三羽根車2,3,4間には作動オイルによる動力伝達のための循環回路Cが画成される。ポンプ羽根車2には,タービン羽根車3の外側面を覆うサイドカバー5が溶接により一体的に連設される。ポンプ羽根車2は,そのハブ2hがクランク軸1にスプライン嵌合されると共に,クランク軸1外周の環状肩部1aと,クランク軸1に螺着されるナット15とで挟持される。こうしてポンプ羽根車2はクランク軸1に固着される。
【0012】
ステータ羽根車4はAl合金等の軽合金製で,そのハブ4hには,中央の隔壁34を挟んで小径内周面35aと大径内周面35bとが形成されており,その小径内周面35aに圧入された鋼製のスリーブ36が中空のステータ軸7(鋼製)の内端にスプライン結合される。
【0013】
而して,ステータ羽根車4を軽合金製とすることにより,該羽根車4の軽量化を達成すると共に,鋼製の圧入スリーブ36にステータ軸7をスプライン結合することにより,ステータ羽根車4とステータ軸7との結合部の耐久性を高めることができ,即ちステータ羽根車4の軽量化と耐久性の両方を満足させることができる。
【0014】
ところで,鋼製のスリーブ36は,ステータ羽根車4の鋳造時,そのハブ4hに鋳包むこともできるが,上記のようにステータ羽根車4のハブ4hの内周面に圧入する構造を採用すれば,スリーブ36には,ハブ4hへの圧入前の単体の状態で熱処理を自由に施すことが可能であり,ステータ羽根車の鋳造に関係なく,スリーブ36に所望の耐久性を容易に付与することができる。
【0015】
中空のステータ軸7は,クランク軸1に左右一対のラジアルニードルベアリング8,8′を介して支承される。また大径内周面35b内には,ポンプ羽根車2のハブ2hの一部が配置されると共に,そのハブ2hと隔壁34との間にスラスト板付きスラストベアリング9が介裝される。このスラスト板付きスラストベアリング9については後で詳述する。
【0016】
タービン羽根車3は,ステータ軸7を囲繞するタービン軸6の内端に嵌合して溶接され,そのタービン軸6は,ステータ軸7の外周にラジアルボールベアリング10及びラジアルニードルベアリング11を介して相対回転自在に支承される。その際,ラジアルボールベアリング10はタービン軸6の内端側に,ラジアルニードルベアリング11はその外端側にそれぞれ配置される。
【0017】
ステータ羽根車4のハブ4hの小径内周面35aに圧入された鋼製のスリーブ36は,その外端面を上記ハブ4hより突出させており,ラジアルボールベアリング10は,そのインナレース10aを上記スリーブ36の外端面に当接させるように配置され,ステータ羽根車4のハブ4hは,このラジアルボールベアリング10と前記スラスト板付きスラストベアリング9とを介してタービン軸6とポンプ羽根車2のハブ2hとで挟持され,軸方向位置が規定される。
【0018】
こゝで,ラジアルボールベアリング10のインナレース10aは,これとスリーブ36との当接面積を拡大すべく,アウタレース10bよりも厚肉に形成される。
【0019】
而して,ステータ羽根車4に発生するスラスト荷重は,鋼製のスリーブ36を介してラジアルボールベアリング10と,隔壁34を介してスラスト板付きスラストベアリング9に支承されることになり,軽合金製のハブ4hのスラスト荷重に対する耐久性を高めることができる。特に,ラジアルボールベアリング10ではインナレース10aがアウタレース10bよりも厚肉に形成されるので,該ベアリング10の大径化を極力抑えつゝ,インナレース10a及びスリーブ36の当接面積を拡大してそれらの面圧を下げ,スラスト荷重に対する耐久性の向上をより図ることができる。
【0020】
またラジアルボールベアリング10のインナレース10aに当接するスリーブ36の外端面がステータ羽根車4のハブ4hから突出することで,該ハブ4hと該ベアリング10のアウタレース10bとの間には,循環回路Cからの作動オイルの流出を許容する環状油路を画成することができる。
【0021】
またスラスト板付きスラストベアリング9と共にポンプ羽根車2のハブ2hの一部がステータ羽根車4のハブ4hの大径内周面35b内に配置されることで,ポンプ羽根車2のハブ2hの外方突出量を少なくして,トルクコンバータTのコンパクト化に寄与し得る。
【0022】
サイドカバー5には,タービン軸6を囲繞するハブ5hが溶接される。その溶接に際しては,ハブ5hの基端部に形成された段付きのフランジ85の段付き部にサイドカバー5の内周面が嵌合される。そしてこれらサイドカバー5及びフランジ85の外側面には,それらの嵌合面を溝底とする台形又はV字状断面の環状溝86が形成され,この環状溝86でサイドカバー5及びフランジ85が相互にTIG又はMIG溶接される。その溶接部を符号87で示す。このようにして溶接すると,溶接部87がサイドカバー5及びフランジ85に広範囲に及び,溶接強度を高めることができる。
【0023】
このサイドカバー5のハブ5hの内周面とタービン軸6の外周面との間に,一方向クラッチ13とラジアルボールベアリング14とが,前者13をステータ羽根車4側にして軸方向に隣接配置される。また上記ラジアルボールベアリング14の外側に隣接して,前記被動ギヤ17を駆動する出力ギヤ16のハブ16hが結合されると共に,該ハブ16hがサイドカバー5のハブ5hの内周面に相対回転可能に嵌合され,その嵌合面間には第1シール手段48が設けられる。これらの構造を図2を参照しなが次に詳細に説明する。
【0024】
サイドカバー5のハブ5hは,サイドカバー5に溶接された基端から軸方向外方へ先端を延ばしており,その内周面は,基端側の大径内周面37aと,この大径内周面37aの外端に環状段部37cを介して連なる,先端側の小径内周面37bとで段付きに構成され,小径内周面37bの軸方向長さは,大径内周面37aの軸方向長さの2分の1以下と小さく設定される。この段付き内周面は,ハブ5hの基端側から一挙に加工される。大径内周面37aには,その中央部に深い環状係止溝40が,また基端寄りに浅い環状係止溝41が設けられる。
【0025】
またハブ5hの外周面は,基端側の大径部38aと,この大径部38aにテーパー部38cを介して連なる小径部38bとで構成される。
【0026】
一方,サイドカバー5のハブ5hの内側に配置されるタービン軸6は,その先端を上記ハブ5hの外方へ突出させており,このタービン軸6の外周面は,基端側の大径部39aと,この大径部39aに環状段部39cを介して連なる,先端側の小径部39bとで構成され,その環状段部39cは,前記ハブ5hの深い環状係止溝40と略対応する位置に配置される。また環状段部39cの外周縁にはテーパ面49が形成される。
【0027】
ラジアルボールベアリング14のアウタレース14aは,サイドカバー5のハブ5hの大径内周面37aに嵌合されると共に,前記環状段部37cと,深い環状係止溝40に係止される止め環18とで軸方向に挟持され,またそのインナレース14bにはタービン軸6の小径部39bが嵌合され,タービン軸6の環状段部39cと,小径部39bの外端部に嵌合される出力ギヤ16のハブ16hとでインナレース14bは軸方向に挟持される。
【0028】
一方向クラッチ13の環状のリテーナ13aは,サイドカバー5のハブ5hの浅い環状係止溝41に係止され,このリテーナ13aに保持される多数のスプラグ13b,13b…は同ハブ5hの大径内周面37aと,タービン軸6の大径部39aとの間に介裝される。一方向クラッチ13への大径部39aの嵌合に際しては,環状段部39cのテーパ面49がその嵌合を誘導するので,環状段部39cの存在に拘わらず一方向クラッチ13の装着を容易に行うことができる。この一方向クラッチ13は,タービン軸6に逆負荷が作用したとき,タービン軸6とサイドカバー5のハブ5h間を直結すべくオン状態となるように構成されている。
【0029】
再び図1において,ステータ軸7には,出力ギヤ16の外側面に隣接する外筒19が一体に形成され,この外筒19に囲繞される内筒20がクランク軸1にラジアルニードルベアリング24を介して相対回転自在に嵌合され,これら内,外筒20,19間にフリーホイール23が介裝される。内筒20は,その一端にフランジ20aを有しており,このフランジ20aがクランクケース等の固定構造体21に設けられた固定ピン22に係止されると共に,固定構造体21に突設された位置決めストッパ21aに外端面を支承される。そして上記フランジ20aにより外筒19の端面がスラスト板付きスラストベアリング25を介して支承される。
【0030】
ラジアルニードルベアリング24には,内筒20の負荷を考慮して,比較的大径のニードルローラが使用され,このラジアルニードルベアリング24と,その一端側に隣接配置される前記ラジアルニードルベアリング8′との間には,両ベアリング24,8′の干渉を避けるべくワッシャ33が介装される。
【0031】
而して,エンジンの作動により,そのクランク軸1の回転がポンプ羽根車2に伝達され,これを回転すると,トルクコンバータT内の循環回路Cを満たしているオイルは,図1の矢印のように,ポンプ羽根車2→タービン羽根車3→ステータ羽根車4→ポンプ羽根車2と循環しながらポンプ羽根車2の回転トルクをタービン羽根車3に伝達し,タービン軸6から出力ギヤ16を駆動する。このとき,ポンプ羽根車2及びタービン羽根車3間でトルクの増幅作用が生じていれば,それに伴う反力がステータ羽根車4に負担され,ステータ羽根車4は,フリーホイール23のロック作用により固定ピン22に支持される。
【0032】
トルク増幅作用を終えると,ステータ羽根車4は,これが受けるトルク方向の反転により,フリーホイール23を空転させながらポンプ羽根車2及びタービン羽根車3と共に同一方向へ回転するようになる。
【0033】
車両の減速時,逆負荷が駆動ギヤ16からタービン軸6に伝達すると,一方向クラッチ13がオン状態となって,タービン軸6及びサイドカバー5間を直結するので,上記逆負荷はタービン軸6からサイドカバー5へ直接伝達し,そしてポンプ羽根車2からクランク軸1へと伝達するようになる。したがって,タービン羽根車3及びポンプ羽根車2間に滑りを起こさせることがなく,良好なエンジンブレーキ効果を得ることができる。
【0034】
しかも,一方向クラッチ13に隣接するラジアルボールベアリング14は,タービン軸6とサイドカバー5のハブ5hとの間に介裝されて,両者6,ハブ5hの同心性を確保するので,その両者6,ハブ5h間において一方向クラッチ13の多数のスプラグ13b,13b…が受ける荷重の均等化がもたらされ,該クラッチ13の耐久性向上を図ることができる。またラジアルボールベアリング14は,タービン軸6に固着される出力ギヤ16との協働により,タービン軸6とサイドカバー5のハブ5hとを軸方向に連結するので,簡単な構造により,クランク軸1への組み付け前に,トルクコンバータTの組立体を構成することができ,したがってクランク軸1への組み付け時,ポンプ羽根車2のハブ2hをクランク軸1にスラプライン嵌合して,ナット15で固着するのみで,トルクコンバータT全体の軸方向の位置決めを行うことができる。
【0035】
また図2において,タービン軸6及び出力ギヤ16の結合構造を詳細に説明する。
【0036】
出力ギヤ16は,ハブ16hと,このハブ16hの外端部から半径方向に延びるアーム16aと,このアーム16aの外周端からサイドカバー5側にオーバハングするように軸方向に延びる歯付きのリム16rとで構成され,そのハブ16hの内周面にタービン軸6の小径部39bが軽圧入されると共に,ハブ16h及びタービン軸6の外端面において,それらの嵌合面相互がレーザビームにより溶接される。符号42は,そのレーザビーム溶接部を示す。ハブ16hの内周面へのタービン軸6の圧入深さは,ハブ16hがラジアルボールベアリング14のインナレース14bを介して前記環状段部39cに当接することにより,容易且つ正確に規定される。こうしてタービン軸6に出力ギヤ16が結合され,同時にラジアルボールベアリング14のインナレース14bが前記環状段部39cと前記ハブ16hとで軸方向に保持されることになり,その保持構造が簡単になる。
【0037】
ところで,出力ギヤ16のハブ16hへのタービン軸6の圧入は軽圧入であるので,その圧入荷重は比較的小さくて足りる。したがって,中空のタービン軸6を特別厚肉とせずとも,圧入によるタービン軸6の歪みを極力抑えることができる。しかも,その軽圧入部は,レーザビーム溶接部42により全周に亙り強固に結合されるので,軽圧入によるタービン軸6及び出力ギヤ16の結合強度不足を充分に補うことができると共に,軽圧入部のシールをも確実に行うことができる。またレーザビーム溶接は入熱が比較的少ないから,それによる各部の熱歪みの心配もない。
【0038】
この出力ギヤ16において,ハブ16h及びリム16r間には,サイドカバー5のハブ5hの大径部38aと略同径の環状凹部43が画成され,この環状凹部43のリム16r側の隅部43aに丸みが付される。そしてこの環状凹部43内にサイドカバー5のハブ5hの小径部38bが,また環状凹部43外に同ハブ5hの大径部38aがそれぞれ配置される。こうすることにより,出力ギヤ16のリム16rの幅,即ち歯幅を充分に確保しつゝ,トルクコンバータTの軸方向のコンパクト化を図ることができる。また環状凹部43のリム16r側の隅部43aに付される丸みの曲率半径は,サイドカバー5のハブ5hの大径部38aに干渉されることなく,これを充分大きく設定することができるから,該隅部43aでの応力集中を回避して,出力ギヤ16の耐久性向上を図ることができる。
【0039】
次に,図1〜図4によりトルクコンバータTへの給油及び潤滑系,並びにそのシール構造について説明する。
【0040】
先ず図1において,クランク軸1には,その軸心部を通る供給油路31と,この供給油路31から半径方向に延びる入口孔26及び出口孔27とが設けられ,また供給油路31には,入口孔26及び出口孔27間に介入するオリフィス32が形成される。
【0041】
供給油路31は,一端がクランク軸1により駆動されるオイルポンプ30の吐出ポートに接続され,他端はエンジンの潤滑部(図示せず)に接続される。入口孔26は,前記ラジアルニードルベアリング8,ステータ羽根車4のハブ4hにおける隔壁34の放射状油溝44及び大径内周面35bの軸方向油溝45(図11及び図13参照)を介して循環回路Cに連通し,出口孔27は,クランク軸1及びタービン軸6の対向周面間に形成された環状油路29と,ステータ軸7に穿設した横孔28と,前記ラジアルボールベアリング10とを介して循環回路Cに連通する。
【0042】
図2に示すように,出力ギヤ16のハブ16hの外周面は,サイドカバー5のハブ5hの小径内周面37bに相対回転可能に嵌合される。その際,出力ギヤ16のハブ16hの外周面に形成された環状のシール溝46に,小径内周面37bに弾性的に密接するシールリング47が装着される。上記シール溝46及びシールリング47により前記第1シール手段48が構成され,ラジアルボールベアリング14を潤滑したオイルの外部へのリークを防ぐようになっている。
【0043】
シールリング47は,図4に示すように,一つの合口47aを有すると共に,自由状態ではハブ5hの小径内周面37bより大径となる半径方向の張りが付与された弾性リング体で構成され,その合口47aに臨む端面は,該リング47の軸線又は半径線に対して傾斜している。このシールリング47のシール溝46への装着に際しては,合口47aを大きく開いてシールリング47内に出力ギヤ16のハブ16hを挿入し,そして該リング47に対する開き力を解放すれば,該リング47はそれ自体の復元力でシール溝46に装着することができる。
【0044】
またステータ軸7とタービン軸6との対向周面には,前記ラジアルニードルベアリング11の外側において第2シール手段52が設けられる。この第2シール手段52は,前記第1シール手段48と同様に,ステータ軸7の外周面に形成された環状にシール溝50と,このシール溝50に装着されてステータ軸7の内周面に弾性的に密接するシールリング51とで構成され,前記ラジアルニードルベアリング11を潤滑したオイルの外部へのリークを防ぐようになっている。
【0045】
而して,クランク軸1は,その回転中,オイルポンプ30を駆動するので,オイルポンプ30は供給油路31にオイルを圧送し続ける。そのオイルの一部はオリフィス32を通過し,残余は入口孔26を通ってラジアルニードルベアリング8及びスラスト板付きスラストベアリング9を潤滑しながらトルクコンバータT内の循環回路Cに流入して,その内部を満たした後,ラジアルボールベアリング10及びラジアルニードルベアリング11を潤滑し,横孔28,環状油路29及び出口孔27を順次経て,供給油路31の下流側へ流出し,オリフィス32を通過したオイルと合流して,図示しないエンジンの潤滑部に向かう。
【0046】
また循環回路C内のオイルの一部は,ポンプ羽根車2及びタービン羽根車3の外周部の対向間隙からサイドカバー5側へも移り,一方向クラッチ13及びラジアルボールベアリング14の潤滑に供される。また前記環状油路29に入ったオイルの一部は,クランク軸1及びステータ軸7間の隙間を通ってラジアルニードルベアリング8′,24及びフリーホイール23を潤滑する。
【0047】
ところで,一方向クラッチ13及びラジアルボールベアリング14を潤滑したオイルは,タービン軸6と出力ギヤ16のハブ16hとの軽圧入部及び環状のレーザビーム溶接部42とにより阻止され,またサイドカバー5及び出力ギヤ16の両ハブ5h,16h間の第1シール手段48に阻止されることにより,外部にリークすることはない。
【0048】
特に,第1シール手段48は,出力ギヤ16のハブ16hの外周面に形成した環状のシール溝46と,このシール溝46に装着されて,サイドカバー5のハブ5hの小径内周面37bに弾力的に密接するシールリング47とで構成されるので,シールリング47は,サイドカバー5と共に回転することで発生する遠心力に作用より拡径しようとして,前記小径内周面37bに対する密接力を増加させることになる。またトルクコンバータT内の油圧がシールリング47の内側面を押圧して,該リング47をシール溝46の外方内側面に密接させる。その結果,トルクコンバータTの高速回転時,上昇する内部油圧のリークを効果的に防ぐことができる。
【0049】
またシールリング47は,一つの合口47aを有すると共に,半径方向外方への張りが付与された弾性リング体で構成されるので,前記合口47aを広げることにより,出力ギヤ16のハブ16hのシール溝46への装着を容易に行うことができ,しかもシールリング47の前記小径内周面37bに対する密接力をサイドカバー5のハブ5h及び出力ギヤ16の回転数の上昇に応じて確実に増加させることができる。
【0050】
さらにシールリング47の合口47aに臨む端面を,該リング47の軸線又は半径線に対して傾斜させたことで,該合口47aからの作動オイルのリークを極力抑えることができる。
【0051】
またサイドカバー5のハブ5hの内周面は,ラジアルボールベアリング14及び一方向クラッチ13の装着に供される基端側の大径内周面37aと,先端側の小径内周面37bとで段付きに構成されるので,この段付き内周面全体を,その一端側から一挙に加工することが可能となり,工数が削減され,コストの低減に寄与し得る。
【0052】
しかも前記大径内周面37a及び小径内周面37b間の環状段部37cは,前記ラジアルボールベアリング14のアウタレース14aの軸方向保持に利用されるので,その保持構造が簡単であり,コストの更なる低減を図ることができる。
【0053】
その上,前記小径内周面37bと,それに相対回転可能に嵌合する出力ギヤ16のハブ16hとの間に第1シール手段48が設けられることで,第1シール手段48の小径化が可能となり,第1シール手段48の負荷が軽減し,その耐久性を高めることができる。
【0054】
クランク軸1及びタービン軸6間に介装された第2シール手段52も,第1シール手段48と同様なシール機能を発揮して,ラジアルニードルベアリング11を潤滑したオイルの外部へのリークを効果的に防ぐことができる。
【0055】
また基端側の大径部38aと先端側の小径部38bとで構成されるサイドカバー5のハブ5hは,負荷に対応した合理的な肉厚を持つことになり,軽量化と強度の両面を満足させることができる。
【0056】
次に,図1,図5〜図7においてポンプ羽根車2を詳細に説明する。
【0057】
ポンプ羽根車2は,椀状且つ環状のシェル2s,このシェル2sの内側面の定位置にロー付けされる多数枚のブレード2b,2b…,シェル2sの内側面にロー付けされてこれらブレード2b,2b…の半径方向内端部を押さえるリテーナプレート2r,全ブレード2b,2b…の中間部相互を連結するコア2c及び,シェル2sの内周縁部に溶接されるハブ2hから構成される。 シェル2sには,周方向に並ぶ多数の位置決め凹部55,55…が形成されており,各凹部55に,各ブレード2bの半径方向内端に形成された位置決め突起56が係合される。
【0058】
一方,リテーナプレート2rは,その外周縁部で全ブレード2b,2b…の各位置決め突起56を位置決め凹部55側に押し付けるように配置される。またこのリテーナプレート2rには,各ブレード2bが係合する位置決め用の切欠き57,57…が設けられる。
【0059】
また各ブレード2bには,コア2cとの対向縁に位置決め突起58が形成されており,この位置決め突起58が係合する位置決め孔59がコア2cに穿設される。
【0060】
シェル2s,ブレード2b,2b…群及びリテーナプレート2rのシェル2sへのロー付けに際しては,先ず,図7(A)に示すようにシェル2s上の定位置にブレード2b,2b…群及びリテーナプレート2rをセットしてから,リテーナプレート2rの内周端寄りの一側面に隆起させた環状又は環状配列の突起60をシェル2sの内側面に抵抗溶接して,リテーナプレート2rをシェル2sに仮止めし,この状態でロー付けを実施する。こうすることによりロー付け作業を容易且つ正確に行うことができる。
【0061】
上記ロー付け後,図7(B)に示すように,リテーナプレート2rの,前記突起60の溶接部付近までの内周端部をシェル2sの内側面と共に切削して,リテーナプレート2rに,シェル2sの内周面より大径の逃がし孔61が形成される。
【0062】
一方,ハブ2hの外周面には,大径部62と,この大径部62の外端に環状段部63を介して連なる小径嵌合部64とが形成されており,その小径嵌合筒部64がシェル2sの内周面に嵌合されながら,大径部62が逃がし孔61に挿入されると共に,環状段部63にシェル2sの内側面が押し付けられる。シェル2s及びハブ2hの外側面には,それらの嵌合部を溝底とした断面台形又はV字状の環状溝65が形成され,この環状溝65においてシェル2s及びハブ2hの嵌合部が全周に亙りTIG又はMIG溶接される。このとき形成される溶接部66は,環状溝65を埋めると共に,シェル2sの内側面が当接するハブ2hの環状段部63に達している。
【0063】
図示例では,上記環状溝65は,底面をハブ2h及びシェル2sの嵌合面からシェル2s側に延ばした台形の断面形状とされる。このようにすると,環状溝65の溝底が比較的広い範囲でがシェル2sの内側面に近接することになり,環状溝65での溶接時,比較的少ない入熱により溶接部66をハブ2hの環状段部63まで確実に到達させることができる。
【0064】
而して,ロー付け後の切削によりシェル2sの露出した内側面からはロー材67が確実に排除されるので,その後,ハブ2h及びシェル2sの溶接により,溶接部66がシェル2sの内側面が当接するハブ2hの環状段部63に達しても,その溶接部66にロー材が溶出,混入するような事態は起こらず,溶接不良率が激減し,ロー付け作業が容易であることゝ相俟って,製造能率の向上を図ることができる。
【0065】
しかも,ハブ2h及びシェル2sの溶接部66は,環状溝65を埋めると共に,シェル2sの内側面が当接するハブ2hの環状段部63に到達することで,シェル2sの内周端部全体がハブ2hに溶接されることになり,その溶接強度を大幅に高めることができる。
【0066】
次に,図1,図8及び図9においてタービン羽根車3を詳細に説明する。
【0067】
タービン羽根車3は,ポンプ羽根車3と同様に,椀状且つ環状のシェル3s,このシェル3s,このシェル3sの内側面の定位置にロー付けされる多数枚のブレード3b,3b…,シェル3sの内側面にロー付けされてこれらブレード3b,3b…の半径方向内端部を押さえるリテーナプレート3r,全ブレード3b,3b…の中間部相互を連結するコア3c,リテーナプレート3rの背面にロー付けされる補強板70及び,この補強板70に溶接されるタービン軸6から構成され,その溶接熱がシェル3s,リテーナプレート3r及び補強板70の各間のロー材67の溶融に影響しないように補強板70の板厚はリテーナプレート3rのそれより大きく設定される。
【0068】
シェル3s,リテーナプレート3r及びコア3cの構造は,ポンプ羽根車2のそれと基本的に同一であるので,その説明は省略する。
【0069】
シェル3s,ブレード3b,3b…,リテーナプレート3r及び補強板70を相互にロー付けする際には,先ず,図9(A)に示すようにシェル3s上の定位置にブレード3b,3b…群及びリテーナプレート3rを配置すると共に,リテーナプレート3rの背面に補強板70を重ねる。同時に,リテーナプレート3rの内周端寄りの両側面に形成された環状又は環状配列の突起71,72をシェル3s及び補強板70の各側面に抵抗溶接して,リテーナプレート3r及び補強板70をシェル3sに仮止めし,この状態でロー付けを実施する。
【0070】
上記ロー付け後,図9(B)に示すように,シェル3s,リテーナプレート3r及び補強板70の内周端部を,前記突起71,72の溶接部付近まで切削して,そこに嵌合内周面73が形成される。また補強板70の外周面には,タービン羽根車3の内方に向かって小径となるテーパ面70aが形成される。
【0071】
一方,タービン軸6の内端部には,図8に示すように,前記ラジアルボールベアリング10を囲繞する連結円筒部74と,この連結円筒部74の根元から半径方向外方に延びる位置決めフランジ75とが形成され,前記嵌合内周面73に連結円筒部74が嵌合されると共に,シェル3sが位置決めフランジ75へ押し付けられ,この状態で,連結円筒部74の外周面と補強板70の外側面との内隅で連結円筒部74及び補強板70が全周に亙りTIG又はMIG溶接され,その結果,上記内隅に溶接による隅肉76が形成される。
【0072】
その溶接の際に発生する熱は,リテーナプレート3rより板厚が厚く熱容量が大きい補強板70に吸収され,シェル3s,リテーナプレート3r及び補強板70の各間のロー材67を溶融させるには至らず,したがって溶出ロー材の,連結円筒部74及び補強板70間の溶接部への侵入を未然に回避して,良好な溶接部を得ることができる。
【0073】
而して,トルクコンバータTの作動中,タービン羽根車3のシェル3s及びタービン軸6には,その内圧により軸方向外向きの荷重が作用するが,タービン軸6はボールベアリング14により軸方向外方への移動を拘束されているから,シェル3sの荷重は,タービン軸6の位置決めフランジ75で支承されることになる。しかも,位置決めフランジ75に支承されるシェル3sの内周縁部は,その内側面にロー付けされたリテーナプレート3r及び補強板70により強固に補強されているから,補強板70及び連結円筒部74間の溶接部の荷重負担を大幅に軽減することができる。
【0074】
また厚肉の補強板70の外周面に形成された,タービン羽根車3の内方に向かって小径となるテーパ面70aと上記隅肉76とは,タービン羽根車3内での作動オイルの流れに沿って並ぶことになるため,その作動オイルの整流を確保して,流体伝動効率の向上に寄与し得る。
【0075】
次に,図10及び図11において,ポンプ羽根車2及びステータ羽根車4の両ハブ2h,4h間に介装される前記スラスト板付きスラストベアリング9について詳細に説明する。
【0076】
このスラスト板付きスラストベアリング9は,軸線を放射状に向けて環状に配列された多数のニードルローラ78,78…と,これらニードルローラ78,78…を保持する多数の窓79a,79a…を持った環状のリテーナ79と,ニードルローラ78,78…群の一側面を支承する鋼板製で環状のスラスト板80とからなっている。そのスラスト板80には,リテーナ79の内周面に回転自在に嵌合する円筒部80aが一体に形成されており,この円筒部80aの先端縁部を半径方向外方にかしめて,リテーナ79の外側面に対向する複数の抜け止め爪80bが形成される。こうして,スラスト板付きスラストベアリング9には,その一要素としてスラスト板80が一体に組み込まれる。このスラスト板80の外周には1又は複数の回り止め片80cが一体に突設される。
【0077】
このスラスト板付きスラストベアリング9の,ポンプ羽根車2及びステータ羽根車4の両ハブ2h,4h間への装着に際しては,先ず,ステータ羽根車4のハブ4hの大径内周面35b内に,スラスト板80を先頭にして軸方向油溝45に回り止め片80cを合わせつゝ,スラスト板付きスラストベアリング9を挿入して,スラスト板80をハブ4hの隔壁34に当接させる。次にポンプ羽根車2のハブ2hの内端に形成された小径短軸部2haを上記ベアリング9の円筒部80aに遊嵌してニードルローラ78,78…群を同ハブ2hの内端面に当接させる。
【0078】
このようにステータ羽根車4のハブ24内に一旦挿入したスラスト板付きスラストベアリング9は,リテーナ79を脱落させることなく,ポンプ羽根車2及びステータ羽根車4の両ハブ2h,4h間に的確に介装することができ,組み付け性が極めて良好であり,またスラスト板80の装着忘れをも防ぐことができる。しかもリテーナ79及びスラスト板80は,スラスト板80の円筒部80aにより同心関係に保持されるので,円筒部80aをポンプ羽根車2のハブ2hの小径短軸部2haに嵌合するだけで,スラスト板80及びリテーナ79を共に同ハブ2hに対して同心状に位置決めすることができ,位置決め構造の簡素化を図ることができる。
【0079】
而して,ポンプ羽根車2及びステータ羽根車4の相対回転時には,スラスト板80がステータ羽根車4のハブ4hと一体回転しながら,ニードルローラ78,78…からのスラスト荷重を直接受け止め,軽合金製のハブ4hの摩耗を防ぐことができる。また上記軸方向油溝45は回り止め片80cに対応する回り止め溝の役目をも果たすことになる。
【0080】
次に,図1,図12及び図13により,フリーホイール23外周の外筒19端面と,フリーホイール23内周の内筒20のフランジ20aとの間に介装される前記スラスト板付きスラストベアリング25について詳細に説明する。
【0081】
このスラスト板付きスラストベアリング25も,前記スラスト板付きスラストベアリング9と同様に,軸線を放射状に向けて環状に配列された多数のニードルローラ81,81…と,これらニードルローラ81,81…を保持する多数の窓82a,82a…を持った環状のリテーナ82と,ニードルローラ81,81…群の一側面を支承する鋼板製で環状のスラスト板83とからなっている。そのスラスト板83には,リテーナ82の外周面に相対回転可能に嵌合する円筒部83aが一体に形成されており,この円筒部83aの先端縁部を半径方向内方にかしめて,リテーナ82の外側面に対向する複数の抜け止め爪83bが形成される。こうして,スラスト板付きスラストベアリング25には,その一要素としてスラスト板83が一体に組み込まれる。
【0082】
このスラスト板83は,その内径をリテーナ82のそれより小として形成され,これによりリテーナ82及びスラスト板83間に環状に段差部25aが形成され,スラスト板83は,内筒20の外周に遊嵌するようになっている。一方,内筒20のフランジ20aの,スラスト板付きスラストベアリング25に対向する側面には,上記段差部25aに受容される環状の誤装着防止突起20bが形成される。
【0083】
而して,スラスト板付きスラストベアリング25を正しく取り付けるには,先ずニードルローラ81,81…をフランジ20aに向けた姿勢でスラスト板83を内筒20の外周に嵌合し,次いでリテーナ82をフランジ20aの誤装着防止突起20bの外周に嵌合すればよく,リテーナ82及びスラスト板83間の段差部25aに誤装着防止突起20bを受容させつゝニードルローラ81,81…群をフランジ20aの定位置に当接させることができる。したがって,若し,スラスト板付きスラストベアリング25の取り付け向きが正規の向きと反対である場合には,スラスト板83が誤装着防止突起20bと干渉することで,スラスト板付きスラストベアリング25はフランジ20aから浮いた状態となり,これにより容易に誤装着と判別することができる。
【0084】
スラスト板付きスラストベアリング25を内筒20に正しく取り付けた後は,そのスラスト板83の外側面に外筒19の端面を衝き当てることにより,スラスト板付きスラストベアリング25はフランジ20aと外筒19との間に介装される。そして,外筒19及び内筒20の相対回転時には,スラスト板83が,これに当接する外筒19と共に回転しながら,ニードルローラ81,81…からのスラスト荷重を直接受け止め,外筒19の小面積の端面の摩耗を防ぐことができる。
【0085】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えばタービン羽根車3におけるシェル3sとタービン軸6との結合構造は,ポンプ羽根車2におけるシェル2s,とハブ2hとの結合構造にも適用可能である。また各部の抵抗溶接は,図示例のような突起を用いたプロジェクション溶接に代えて,突起を用いないスポット溶接とすることもできる。
【0086】
【発明の効果】
以上のように本発明の第1の特徴によれば,椀状且つ環状のシェルと,このシェルの内側面の定位置に結合される複数枚のブレードと,シェルの内側面にロー付けされてこれらブレードの半径方向内端部を押さえるリテーナプレートと,シェルの内周縁部に溶接される軸又はハブとからなる,流体伝動装置用羽根車において,前記リテーナプレートの,シェルと反対側の内側面に環状の補強板をロー付けし,シェル,リテーナプレート及び補強板の内周に形成した一連の嵌合孔を,軸又はハブに形成した連結円筒部に嵌合すると共に,シェルの外側面を,軸又はハブに形成した位置決めフランジに押し当て,補強板の内側面と連結円筒部の外周面とで画成される内隅で補強板及び連結円筒部相互を溶接し,その溶接熱がシェル,リテーナプレート及び補強板の各間のロー材の溶融に影響しないように補強板の板厚をリテーナプレートのそれより大きく設定したので,補強板と連結円筒部との溶接時には,シェル,リテーナプレート及び補強板の各間からの溶出ロー材の,連結円筒部及び補強板間の溶接部への侵入を未然に回避して,良好な溶接部を得ることができる。そして流体伝動装置の作動中,羽根車のシェルが内圧による軸方向外向きの荷重を受けると,その荷重は軸又はハブの位置決めフランジで支承されることになり,しかも位置決めフランジに支承されるシェルの内周縁部は,その内側面にロー付けされたリテーナプレート及び補強板により強固に補強されているから,補強板と連結円筒部との溶接部の荷重負担を大幅に軽減することができる。
【0087】
また本発明は,第1の特徴に加えて,補強板の内側面と連結円筒部の外周面とで画成される内隅に前記溶接による隅肉を形成し,また補強板の外周面に羽根車の内方に向かって小径となるテーパ面を形成し,前記隅肉及びテーパ面を,羽根車内での作動オイルの流れに沿うように配置したので,羽根車内で作動オイルの整流を確保し,流体伝動効率の向上に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトルクコンバータの縦断面図。
【図2】図1の2部拡大図。
【図3】図2の3部拡大図。
【図4】図3におけるシールリングの一部を破断した斜視図。
【図5】図1の5−5線断面図。
【図6】図1の6部拡大図。
【図7】ポンプ羽根車の製造過程説明図。
【図8】図1の8部拡大図。
【図9】タービン羽根車の製造過程説明図。
【図10】図1の10−10線断面図。
【図11】図10の11−11線断面図。
【図12】図1の12−12線断面図。
【図13】図12の13−13線断面図。
【符号の説明】
T・・・・・・流体伝動装置(トルクコンバータ)
3・・・・・・羽根車(タービン羽根車)
3b・・・・・ブレード
3r・・・・・リテーナプレート
3s・・・・・シェル
5h・・・・・サイドカバーのハブ
6・・・・・・軸(タービン軸)
67・・・・・ロー材
70・・・・・補強板
70a・・・・テーパ面
73・・・・・嵌合孔
74・・・・・連結円筒部
75・・・・・位置決めフランジ
76・・・・・隅肉
Claims (2)
- 椀状且つ環状のシェル(3s)と,このシェル(3s)の内側面の定位置に結合される複数枚のブレード(3b)と,シェル(3s)の内側面にロー付けされてこれらブレード(3b)の半径方向内端部を押さえるリテーナプレート(3r)と,シェル(3s)の内周縁部に溶接される軸(6)又はハブとからなる,流体伝動装置用羽根車において,
前記リテーナプレート(3r)の,シェル(3s)と反対側の内側面に環状の補強板(70)をロー付けし,シェル(3s),リテーナプレート(3r)及び補強板(70)の内周に形成した一連の嵌合孔(73)を,軸(6)又はハブに形成した連結円筒部(74)に嵌合すると共に,シェル(3s)の外側面を,軸(6)又はハブに形成した位置決めフランジ(75)に押し当て,補強板(70)の内側面と連結円筒部(74)の外周面とで画成される内隅で補強板(70)及び連結円筒部(74)相互を溶接し,その溶接熱がシェル(3s),リテーナプレート(3r)及び補強板(70)の各間のロー材(67)の溶融に影響しないように補強板(70)の板厚をリテーナプレート(3r)のそれより大きく設定したことを特徴とする,流体伝動装置用羽根車。 - 請求項1記載の流体伝動装置用羽根車において,
補強板(70)の内側面と連結円筒部(74)の外周面とで画成される内隅に前記溶接による隅肉(76)を形成し,また補強板(70)の外周面に羽根車(3)の内方に向かって小径となるテーパ面(70a)を形成し,前記隅肉(76)及びテーパ面(70a)を,羽根車(3)内での作動オイルの流れに沿うように配置したことを特徴とする,流体伝動装置用羽根車。
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