JP4020640B2 - 微生物識別方法および微生物識別装置 - Google Patents

微生物識別方法および微生物識別装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微生物識別方法および微生物識別装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、家庭等から排出される有機系廃棄物(いわゆる生ゴミ)等をコンポスト化(肥料化)する生ゴミ処理機が活発に研究開発されている。生ゴミ処理機では、細菌、原生動物等の微生物群が有機物を分解することにより肥料が作成される。
【0003】
このような生ゴミ処理機によるコンポスト化では、そのコンポスト化過程(有機物分解過程)において、温度等をモニタすることによりコンポスト化の度合いを評価する。そして、その評価に基づき良質な肥料が作成されるように生ゴミ処理機の状態を調節する。
【0004】
しかしながら、より良質な肥料を作成するためには、生ゴミ処理機の内部で機能する微生物群(少なくとも微生物の種類)の情報が必要である。この微生物群の情報は、微生物により生ゴミの分解を良好に制御するためにも必要である。また、作成された肥料の添加により土壌の改良を進める上では、土壌中の微生物群の情報を知ることも重要である。
【0005】
生ゴミ処理機内において、生ゴミに含まれる各種成分は、種類の異なる微生物が共同して分解を進めることによりコンポスト化される。それぞれの細菌はお互いに何らかの関係を維持しており、生ゴミ処理機内において全体的に1つの生態系を構成している。したがって、生ゴミ処理機内の菌叢を調べれば、生ゴミの処理状態をいち早く知ることが可能となる。例えば、活性の高い細菌が生ゴミ処理機内に多く存在するときには生ゴミの処理状態が良好であるのに対し、嫌気性細菌が多くなると生ゴミの処理が進まず、生ゴミ処理機内への空気供給が必要であることなどがわかる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来、微生物群の情報、例えば細菌群の情報を得る方法としては、細菌群に含まれる個々の細菌を単離して生化学検査する方法等が用いられる。しかし、この方法は時間がかかる上に、単離の難しい細菌については調べることが困難であった。
【0007】
一方、DNA分析を行うことにより微生物群の情報を得る方法も考えられる。DNA分析を行うにはDNAを増幅する必要がある。DNAを増幅する方法としてPCR(Polymerase Chain Reaction;ポリメラーゼ連鎖反応)法が用いられている(米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、第4,965,188号、第5,038,852号および第5,333,675号)。このPCR法は、増幅しようとするDNA(鋳型DNA)の両端の塩基配列に相補な塩基配列を有するプライマーおよび耐熱性DNAポリメラーゼを用い、熱変性工程、アニーリング(熱処理)工程および伸長反応工程の3段階からなるサイクルを繰り返すことにより、鋳型DNAとほぼ同じDNA断片を増幅することを可能にするものである。このPCR法を用いると、微量にしか存在しない細菌の1個のDNA中の所定の断片を例えば10万〜100万倍に増幅することができる。
【0008】
しかしながら、このPCR法を用いるためには、鋳型DNAの一領域の少なくとも両端の塩基配列が既知であることが必要である。したがって、従来のPCR法では、生ゴミ処理機の内部で機能する微生物や土壌に存在する微生物の種類および塩基配列が知られていないと、それらの微生物のDNA断片を増幅することはできない。
【0009】
そこで、単一のプライマーで塩基配列の情報なしに一種類のDNAから同時に多数の種類のDNA断片を増幅するRAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)法もしくはAP−PCR(Arbitrarily Primed-Polymerase Chain Reaction) 法が提案されている。これらの方法では、PCRの反応時にプライマーのアニーリング温度を下げ、さらに反応液中のマグネシウムイオン濃度を上げることにより、プライマーの結合時の配列特異性を下げる。すると、プライマーはミスマッチを伴って微生物の染色体DNAに結合し、DNA断片が複製される。
【0010】
これらのRAPD法もしくはAP−PCR法によれば、増幅しようとするDNAの塩基配列の情報がなくても、単一のプライマーにより何らかのDNA断片が多量に増幅される。増幅されたDNA断片をゲル電気泳動法により分離することによりDNAフィンガープリントが得られる。このDNAフィンガープリントを分析することにより微生物の状態を分析することが可能となる。
【0011】
その反面、従来のRAPD法もしくはAP−PCR法を複数の微生物から構成される微生物群に適用する場合、増幅されるDNA断片の種類数が多すぎるために、増幅されたDNA断片と鋳型となった微生物との対応付けが困難となり、微生物群が形成する生態系を把握することが困難となる。また、増幅されたDNA断片から微生物群を構成する微生物を識別することはできない。
【0012】
生ゴミ処理機は、処理槽の温度が例えば30℃以上かつ含水率が例えば40%となるように設定調整を行うとともに、撹拌機能を設けることで処理状態を安定に保つことができる。しかし、適切な微生物測定技術がないため、装置の小型化、悪臭防止、良質な堆肥生成などの機能向上を行うことは困難である。
【0013】
このように、生ゴミ処理機に代表される微生物利用の商品およびシステムでは、内部で活動している微生物の状態、例えば微生物の種類や経時変化等を評価する適切な方法がないため、開発や改良を進める上で大きな障害が生じる。
【0014】
本発明の目的は、微生物群を構成する複数の微生物を同時にかつ容易に識別することが可能な微生物識別方法および微生物識別装置を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
第1の発明に係る微生物識別方法は、識別対象となる微生物を識別する微生物識別方法であって、複数のプライマーを準備し、複数のプライマーの各々を用いて、識別対象となる微生物のDNAに対し、熱変成工程、プライマーのアニーリング工程およびポリメラーゼによる伸長反応工程をこの順序で繰り返し行うポリメラーゼ連鎖反応法を一度に適用することにより、識別対象となる微生物のDNAのDNA断片を増幅するステップと、複数のプライマーの各々を用いて増幅されたDNA断片に対して電気泳動法を適用し、各プライマーに対応する出力信号を得るステップと、出力信号に基づいて各プライマーに対応する波形データを求めるステップと、照合対象となる微生物についての複数のプライマーに対応する出力信号に関する情報が予め記憶されたデータベースを検索し、データベースに記憶された情報に基づいて照合対象となる微生物についての複数のプライマーに対応する波形データを求め、識別対象となる微生物について求められた波形データと照合対象となる微生物について求められた波形データとの相関関係を求めるステップと、相関関係に基づいて識別対象となる微生物を識別するステップとを備え、相関関係を求めるステップは、識別対象となる微生物について求められた波形データの各点における信号出力値および照合対象となる微生物について求められた波形データの対応する各点における信号出力値のうち低い方の信号出力値を選択することによりクリッピング信号CSを求めるステップと、クリッピング信号と照合対象となる微生物について求められた波形データとの相関係数CCを次式により算出するステップとを含み、
【数4】
Figure 0004020640
式(2)において、CS はクリッピング信号CSのi番目の点における信号出力値、a は照合対象となる微生物の波形データのi番目の点における信号出力値であり、nは各波形データにおける点数であり、識別するステップは、相関係数CCに基づいて識別対象となる微生物が照合対象となる微生物であるか否かを判定するステップを含むものである。
【0016】
本発明に係る微生物識別方法によれば、単一の微生物および複数の微生物から構成される微生物群のいずれを識別対象として用いる場合にも、微生物の識別を行うことが可能となり、さらに同定を行うことも可能となる。
【0017】
特に、微生物群を識別対象として用いる場合においては、微生物群を構成する複数の微生物を同時に識別し、さらに同定することが可能となる。このため、微生物群を構成する微生物の種類の数および種類名を明らかにすることが可能となる。
【0018】
本発明の微生物識別方法は、微生物群と微生物群の間の比較に用いることもできる。例えばある生ごみ処理機の微生物群から得られた電気泳動像の輝度分布を示す波形データと別の生ごみ処理機から得られた電気泳動像の輝度分布を示す波形データとを比較することで、個々の微生物の違いを調べなくとも両者の微生物群としての違いを見ることができる。
【0019】
一方、単一の微生物を識別対象として用いる場合においては、識別対象となる微生物とデータベースの照合対象となる微生物との多型を検出することも可能となる。また、識別対象となる微生物と類似した微生物を見いだすこともできる。
【0020】
ここで、この微生物識別方法においては、複数のプライマーの各々を用いて、識別対象となる微生物のDNAに対して一度にポリメラーゼ連鎖反応法を適用し、識別対象となる微生物からDNA断片を増幅してDNA分析を行うので、生化学検査のように微生物を単離および培養する工程が不要となる。このため、容易に識別および同定を行うことが可能になるとともに、単離の困難な微生物の識別および同定も可能になる。また、上記の複数のプライマーを用いたDNAの増幅方法は、塩基配列が未知の識別対象に対して行うことが可能であるため、塩基配列の測定を行うことなく、識別対象となる微生物の識別および同定を行うことができる。
【0021】
さらに、この微生物識別方法においては、複数のプライマーを用いてそれぞれポリメラーゼ連鎖反応法を行い、複数のポリメラーゼ連鎖反応の結果を用いて識別を行うため、諸条件によって個々のポリメラーゼ連鎖反応が良好に進まない場合においても、個々のポリメラーゼ連鎖反応の影響は小さい。このため、良好な識別を安定して行うことが可能となる。
【0028】
既知の塩基配列を有する参照用プライマーを用いて、参照用プライマーの塩基配列に相補な塩基配列を有する参照用DNAに対し、ポリメラーゼ連鎖反応法を適用することにより、参照用DNAのDNA断片を増幅するステップと、参照用プライマーを用いて増幅された参照用DNAのDNA断片に対して電気泳動法を適用し、参照用DNAに対応する出力信号を得るステップと、参照用DNAに対応する出力信号に基づいて識別対象となる微生物に対応する出力信号を補正するステップとをさらに備えてもよい。
【0029】
この場合、参照用プライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応法により、参照用DNAからDNA断片が確実に増幅される。このようにして増幅された参照用DNAのDNA断片の電気泳動像に対応する画像データに基づいて、ポリメラーゼ連鎖反応における参照用DNAのDNA断片の増幅効率を求めることが可能になる。このようにして求めた増幅効率は、識別対象となる微生物のDNA断片においても適用可能である。したがって、求めた増幅効率に基づいて識別対象となる微生物のDNA断片の電気泳動像に対応する画像データを補正し、DNA断片の量を分析することが可能になる。
【0032】
電気泳動像の画像データにおいてバンドの背景の輝度のむらを補正するステップをさらに備えてもよい。
【0033】
データベースには複数種類の微生物についての出力信号に関する情報が記憶されてもよい。
【0049】
出力信号に関する情報は、その出力信号の強度を示す波形データであってもよい。
【0050】
出力信号に関する情報は、その出力信号の強度におけるピークの位置およびピークの高さまたは面積を示すデータであり、相関関係を求めるステップは、出力信号の強度におけるピークの位置およびピークの高さまたは面積を示すデータに基づいて出力信号の強度を示す波形データを求めるステップを含んでもよい。
【0051】
相関関係を求めるステップは、出力信号の強度を示すデータに基づいて出力信号の強度を示す波形データを求めるステップを含んでもよい。
【0052】
相関関係を求めるステップは、識別対象となる微生物について求められた複数のプライマーに対応する波形データを連結し、かつ照合対象となる微生物について求められた複数のプライマーに対応する波形データを連結し、識別対象となる微生物についての連結された波形データと照合対象となる微生物についての連結された波形データとの相関関係を求めるステップを含んでもよい。
【0053】
これにより、識別対象となる微生物について求められた複数のプライマーに対応する波形データと照合対象となる微生物について求められた複数のプライマーに対応する波形データとの相関関係を容易かつ短時間に求めることができる。
【0057】
DNAサイズマーカの出力信号を得るステップと、出力信号に基づいてDNAサイズマーカに対応する出力信号の強度を示す波形データを求めるステップと、DNAサイズマーカに対応する波形データに基づいて識別対象となる微生物に対応する波形データを補正するステップとをさらに備えてもよい。
【0058】
波形データを補正するステップは、DNAサイズマーカに対応する波形データに基づいて識別対象となる微生物に対応する波形データにおけるピークの位置を補正するステップを含んでもよい。
【0059】
データベースには複数種類の微生物についての出力信号に関する情報が記憶されてもよい。これにより、識別対象となる種々の微生物を識別することができる。
【0068】
第2の発明に係る微生物識別装置は、識別対象となる微生物を識別する微生物識別装置であって、複数のプライマーの各々を用いて、識別対象となる微生物のDNAに対し、熱変成工程、プライマーのアニーリング工程およびポリメラーゼによる伸長反応工程をこの順序で繰り返し行うポリメラーゼ連鎖反応法を一度に適用することにより、識別対象となる微生物のDNAのDNA断片を増幅する増幅手段と、増幅手段により複数のプライマーの各々を用いて増幅されたDNA断片に対して電気泳動法を適用し、各プライマーに対応する電気泳動像を得る電気泳動手段と、電気泳動手段により得られた各プライマーに対応する電気泳動像を画像データに変換する画像データ変換手段と、画像データに基づいて各プライマーに対応する電気泳動像における輝度分布を示す波形データを求める波形データ生成手段と、照合対象となる微生物についての複数のプライマーに対応する電気泳動像に関する情報が予め記憶されたデータベースを検索し、データベースに記憶された情報に基づいて照合対象となる微生物についての複数のプライマーに対応する電気泳動像における輝度分布を示す波形データを求め、識別対象となる微生物について求められた波形データと照合対象となる微生物について求められた波形データとの相関関係を作成する相関関係作成手段と、相関関係作成手段により作成された相関関係に基づいて識別対象となる微生物を識別する識別手段とを備え、相関関係作成手段は、識別対象となる微生物について求められた波形データの各点における信号出力値および照合対象となる微生物について求められた波形データの対応する各点における信号出力値のうち低い方の信号出力値を選択することによりクリッピング信号CSを求める手段と、クリッピング信号と照合対象となる微生物について求められた波形データとの相関係数CCを次式により算出する手段とを含み、
【数5】
Figure 0004020640
式(2)において、CS はクリッピング信号CSのi番目の点における信号出力値、a は照合対象となる微生物の波形データのi番目の点における信号出力値であり、nは各波形データにおける点数であり、識別手段は、相関係数CCに基づいて識別対象となる微生物が照合対象となる微生物であるか否かを判定する手段を含むものである。
【0069】
本発明に係る微生物識別装置によれば、第1の発明に係る微生物識別方法を容易に行うことができる。そのため、単一の微生物および複数の微生物から構成される微生物群のいずれを識別対象として用いる場合にも、微生物の識別を行うことが可能となり、さらに同定を行うことも可能となる。
【0070】
特に、微生物群を識別対象として用いる場合においては、微生物群を構成する複数の微生物を同時に識別し、さらに同定することが可能となる。このため、微生物群を構成する微生物の種類の数および種類名を明らかにすることが可能となる。
【0071】
本発明の微生物識別装置は、微生物群と微生物群の間の比較に用いることもできる。例えばある生ごみ処理機の微生物群から得られた電気泳動像の輝度分布を示す波形データと別の生ごみ処理機から得られた電気泳動像の輝度分布を示す波形データとを比較することで、個々の微生物の違いを調べなくとも両者の微生物群としての違いを見ることができる。
【0072】
一方、単一の微生物を識別対象として用いる場合においては、識別対象となる微生物とデータベースの照合対象となる微生物との多型を検出することも可能となる。また、識別対象となる微生物と類似した微生物を見いだすこともできる。
【0073】
この微生物識別装置においては、複数のプライマーの各々を用いて、識別対象となる微生物のDNAに対して一度にポリメラーゼ連鎖反応法を適用し、識別対象となる微生物からDNA断片を増幅してDNA分析を行うので、生化学検査のように微生物を単離および培養する工程が不要となる。このため、容易に識別および同定を行うことが可能になるとともに、単離の困難な微生物の識別および同定も可能になる。また、上記の複数のプライマーを用いたDNAの増幅方法は、塩基配列が未知の識別対象に対して行うことが可能であるため、塩基配列の測定を行うことなく、識別対象となる微生物の識別および同定を行うことができる。
【0074】
さらに、この微生物識別装置においては、複数のプライマーを用いてそれぞれポリメラーゼ連鎖反応法を行い、複数のポリメラーゼ連鎖反応の結果を用いて識別を行うため、諸条件によって個々のポリメラーゼ連鎖反応が良好に進まない場合においても、個々のポリメラーゼ連鎖反応の影響は小さい。このため、良好な識別を安定して行うことが可能となる。
【0075】
第3の発明に係る微生物識別装置は、識別対象となる微生物を識別する微生物識別装置であって、複数のプライマーの各々を用いて、識別対象となる微生物のDNAに対し、熱変成工程、プライマーのアニーリング工程およびポリメラーゼによる伸長反応工程をこの順序で繰り返し行うポリメラーゼ連鎖反応法を一度に適用することにより、識別対象となる微生物のDNAのDNA断片を増幅する増幅手段と、増幅手段により複数のプライマーの各々を用いて増幅されたDNA断片に対して電気泳動法を適用し、各プライマーに対応する出力信号を得る電気泳動手段と、出力信号に基づいて各プライマーに対応する波形データを求める波形データ生成手段と、照合対象となる微生物についての複数のプライマーに対応する出力信号に関する情報が予め記憶されたデータベースを検索し、データベースに記憶された情報に基づいて照合対象となる微生物についての複数のプライマーに対応する波形データを求め、識別対象となる微生物について求められた波形データと照合対象となる微生物について求められた波形データとの相関関係を作成する相関関係作成手段と、相関関係作成手段により作成された相関関係に基づいて識別対象となる微生物を識別する識別手段とを備え、相関関係作成手段は、識別対象となる微生物について求められた波形データの各点における信号出力値および照合対象となる微生物について求められた波形データの対応する各点における信号出力値のうち低い方の信号出力値を選択することによりクリッピング信号CSを求める手段と、クリッピング信号と照合対象となる微生物について求められた波形データとの相関係数CCを次式により算出する手段とを含み、
【数6】
Figure 0004020640
式(2)において、CS はクリッピング信号CSのi番目の点における信号出力値、a は照合対象となる微生物の波形データのi番目の点における信号出力値であり、nは各波形データにおける点数であり、識別手段は、相関係数CCに基づいて識別対象となる微生物が照合対象となる微生物であるか否かを判定する手段を含むものである。
【0076】
本発明に係る微生物識別装置によれば、第2の発明に係る微生物識別方法を容易に行うことができる。そのため、単一の微生物および複数の微生物から構成される微生物群のいずれを識別対象として用いる場合にも、微生物の識別を行うことが可能となり、さらに同定を行うことも可能となる。
【0077】
特に、微生物群を識別対象として用いる場合においては、微生物群を構成する複数の微生物を同時に識別し、さらに同定することが可能となる。このため、微生物群を構成する微生物の種類の数および種類名を明らかにすることが可能となる。
【0078】
本発明の微生物識別装置は、微生物群と微生物群の間の比較に用いることもできる。例えばある生ごみ処理機の微生物群から得られた出力信号を示す波形データと別の生ごみ処理機から得られた出力信号を示す波形データとを比較することで、個々の微生物の違いを調べなくとも両者の微生物群としての違いを見ることができる。
【0079】
一方、単一の微生物を識別対象として用いる場合においては、識別対象となる微生物とデータベースの照合対象となる微生物との多型を検出することも可能となる。また、識別対象となる微生物と類似した微生物を見いだすこともできる。
【0080】
この微生物識別装置においては、複数のプライマーの各々を用いて、識別対象となる微生物のDNAに対して一度にポリメラーゼ連鎖反応法を適用し、識別対象となる微生物からDNA断片を増幅してDNA分析を行うので、生化学検査のように微生物を単離および培養する工程が不要となる。このため、容易に識別および同定を行うことが可能になるとともに、単離の困難な微生物の識別および同定も可能になる。また、上記の複数のプライマーを用いたDNAの増幅方法は、塩基配列が未知の識別対象に対して行うことが可能であるため、塩基配列の測定を行うことなく、識別対象となる微生物の識別および同定を行うことができる。
【0081】
さらに、この微生物識別装置においては、複数のプライマーを用いてそれぞれポリメラーゼ連鎖反応法を行い、複数のポリメラーゼ連鎖反応の結果を用いて識別を行うため、諸条件によって個々のポリメラーゼ連鎖反応が良好に進まない場合においても、個々のポリメラーゼ連鎖反応の影響は小さい。このため、良好な識別を安定して行うことが可能となる。
【0092】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る微生物識別装置を示す図である。
【0093】
図1に示すように、微生物識別装置は、SSC−PCR増幅・解析装置1、電気泳動イメージ入力部2、解析用コンピュータ3、データベース格納部4および結果表示手段5からなる。
【0094】
SSC−PCR増幅・解析装置1については後述する。電気泳動イメージ入力部2は、例えばCCDカメラおよびスキャナにより構成される。解析用コンピュータ3は、後述する構成を有するパーソナルコンピュータからなる。データベース格納部4はハードディスク装置等からなり、結果表示手段5はディスプレイ等からなる。
【0095】
なお、SSC−PCRとはSingle Strain Counting Polymerase Chain Reactionのことであり、特定の塩基配列を有するプライマーを複数用いて未知の塩基配列を有する微生物群または単一の微生物からDNA断片を連鎖反応的に増幅する反応のことである。なお、SSC−PCRの詳細については後述する。
【0096】
図2は、図1の微生物識別装置を用いた微生物識別方法の一例を示すフローチャートである。
【0097】
図2に示すように、まず図1のSSC−PCR増幅・解析装置1を用いて、後述のSSC−PCR法により、微生物の解析実験を行う(ステップS1)。なお、この解析実験においては、単離した単一の微生物をサンプルとして用いてもよく、また、複数の微生物を含む微生物群をサンプルとして用いてもよい。
【0098】
SSC−PCR法による微生物の解析実験の詳細を図3に示す。まず、図3に示すように、微生物のDNA、ポリメラーゼ連鎖反応用バッファ溶液、プライマー、耐熱性の好熱菌DNAポリメラーゼ、MgCl2 および4種の基質となる5’デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)を所定量ずつ混合し、SSC−PCR用反応溶液を調製する(ステップS1−1)。
【0099】
なお、複数の微生物を含む微生物群をサンプルとして用いる場合においては、複数の微生物のDNAが混合されたものを用いてSSC−PCR用反応溶液を調製する。
【0100】
ここで、DNAポリメラーゼとは、4種の5’デオキシリボヌクレオチド三リン酸を基質とし、鋳型DNAに相補な塩基配列を有するDNA鎖の重合反応を触媒する酵素である。DNAポリメラーゼによるDNA鎖の重合の方向性は5’から3’の方向である。また、プライマーは、DNAポリメラーゼが作用するために不可欠な3’−OH基を末端に有するDNA断片(短鎖オリゴヌクレオチド)である。本発明では、特定の塩基配列および塩基長を有するプライマーを用いる。
【0101】
なお、後述するようにSSC−PCR法においては複数のプライマーを用いるため、各々のプライマーについてSSC−PCR用反応溶液を調製する。なお、各PCR用反応溶液は全て同時に調製するものとする。
【0102】
上記のSSC−PCR用反応溶液の調製と同時に、ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールを調製する(ステップS1−2)。
【0103】
なお、この場合においては、SSC−PCR法において、長さが12塩基対(bp)のプライマーをそれぞれ用いている。それにより、各プライマーにおいては、確率的に412(約107 )に1回DNA断片が出現するように調整することができ、一般に1本のDNAの長さが約107 塩基対といわれている微生物DNAから1種類のDNA断片だけを増幅するように設定することができる。このため、後述するように、増幅されたDNA断片と微生物とを対応させることが可能となる。
【0104】
ここで、ポジティブコントロールとは、後述のDNA断片の増幅反応の一連の工程において生じる誤差を除去するためのコントロール実験に用いる試料である。一般に、DNA断片の増幅反応における増幅効率は、一連の工程において生じる誤差、例えばSSC−PCR用反応溶液の調製時におけるDNAポリメラーゼ、マグネシウム等の濃度の誤差、用いた試薬の活性の度合い、DNA断片増幅時における温度の誤差等により影響を受けると考えられる。このような誤差を除去するために、ポジティブコントロールとして、増幅されるDNA断片の種類が既知で定量可能なDNA断片を増幅するプライマーと、このプライマーに相補な塩基配列を有する鋳型DNAとを含む反応溶液を調製する。ポジティブコントロールにおいて増幅されるDNA断片は、電気泳動法により定量することが可能である。したがって、ポジティブコントロールにおいて増幅されるDNA断片の量から、DNA断片の増幅効率を求めることができる。このようにして求めた増幅効率をもとにして複数種類のSSC−PCR用反応溶液のDNA断片の量を補正することにより、DNA断片の増幅反応の一連の工程において生じる誤差の影響を除去することが可能となる。その結果、増幅されたDNA断片の量的な比較が可能となる。
【0105】
一方、ネガティブコントロールとは、増幅されたDNA断片が分析対象とする微生物群または微生物のものであることを確認するためのコントロール実験に用いる試料である。一般に、細菌等の微生物は空気中等の様々な場所に存在する。このため、SSC−PCR用反応溶液の調製時において反応溶液に微生物が混入する可能性がある。微生物が反応溶液に混入した場合、増幅されたDNA断片が分析対象とする微生物群由来のDNA断片かあるいは混入した微生物由来のDNA断片か判別不可能となる。そのため、ネガティブコントロールとして、プライマーを含むが鋳型DNAを含まないSSC−PCR用反応溶液を調製する。このネガティブコントロールを用いてSSC−PCRおよび電気泳動を行い、ネガティブコントロールの電気泳動像においてはバンドが現れないことを確認する。これにより、増幅されたDNA断片が分析対象である微生物群または微生物由来のものであることが確認できる。
【0106】
なお、ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールに用いるプライマーは、前述のSSC−PCR用反応溶液に用いたプライマーのうちの1つもしくは2つと同じ塩基配列であってもよい。
【0107】
上記のようにしてSSC−PCR用反応溶液を調製した後、SSC−PCR増幅・解析装置1により、DNA断片の増幅反応を行う(ステップS1−3)。
【0108】
図4は、SSC−PCR増幅・解析装置1のDNA断片増幅装置の例を示す模式図である。図4のDNA断片増幅装置は、タイタプレートと呼ばれる支持プレート50により構成される。
【0109】
支持プレート50の上面に複数の孔部51が形成されている。この場合には、複数の孔部51に、前述のプライマーをそれぞれ含むSSC−PCR用反応溶液がプライマーの増幅確率の順に連続的に配置される。また、孔部51aには、前述のネガティブコントロールが配置され、孔部51bには、前述のポジティブコントロールが配置される。
【0110】
このようなDNA断片増幅装置により、各SSC−PCR用反応溶液、ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールにおいて、以下のようなSSC−PCR法によるDNA断片の増幅が同時に行われる。
【0111】
SSC−PCR法では、従来のPCR法と同様に、次の3段階の工程を繰り返し行う。ただし、SSC−PCR法では、未知の塩基配列を有する微生物または微生物群に対して特定の塩基配列を有するプライマーを用いることにより分析可能な量のDNA断片を増幅する。
【0112】
(1)熱変性工程
DNA(初期時)またはDNA断片を加熱変性し、1本鎖(DNA鎖)にする。
【0113】
(2)プライマーのアニーリング工程(プライマーの結合工程)
プライマーがDNA鎖の増幅領域の端に結合するように熱処理を行う。
【0114】
(3)ポリメラーゼによる伸長反応工程(ポリメラーゼによる複製工程)
プライマーを起点としてポリメラーゼによって相補鎖を合成し、2本鎖化する。
【0115】
上記(1)〜(3)の工程を1サイクルとしてこのサイクルを繰り返し行う。第1のサイクルとして、上記反応溶液を例えば94℃で2分間保持する熱変性工程、上記反応溶液を例えば45℃で2分間保持するプライマーのアニーリング工程、および上記反応溶液を例えば72℃で3分間保持するポリメラーゼによる伸長反応工程をこの順序で行う。なお、本サイクルの熱変性工程は、長い完全DNAを1本鎖に完全に分離するために下記サイクルの熱変性工程よりも長めに設定する。
【0116】
引続き、第2のサイクルとして、上記反応溶液を例えば94℃で1分間保持する熱変性工程、上記反応溶液を例えば45℃で2分間保持するプライマーのアニーリング工程および上記反応溶液を例えば72℃で3分間保持するポリメラーゼによる伸長反応工程をこの順序で例えば33回繰り返す。
【0117】
最後に、第3のサイクルとして、上記反応溶液を例えば94℃で1分間保持する熱変性工程、上記反応溶液を例えば45℃で2分間保持するプライマーのアニーリング工程および上記反応溶液を72℃で10分間保持するポリメラーゼによる伸長反応工程をこの順序で行う。なお、本サイクルのポリメラーゼによる伸長反応工程は、最後に複製を完全化するために第1および第2のサイクルのポリメラーゼによる伸長反応工程よりも長めに設定する。
【0118】
ここで、上記第1のサイクル、第2のサイクルの第1回目のサイクル、および第2のサイクルの第2回目のサイクルを図5〜図7を用いて説明する。なお、図は模式的に示しており、DNAの1本鎖等はプライマーと結合する部分の塩基配列を示している。
【0119】
図5〜図7では、GGCTTCGAATCGの塩基配列(配列番号15)を有するプライマーを用いている。なお、Tはチミン、Aはアデニン、Gはグアニン、Cはシトシンを示す。
【0120】
図5(a)に示すように最初、上記反応溶液中には複数の異なる微生物に含まれていた長いDNA(完全DNA)11が存在する。ここでは、1個の完全DNAに着目して説明する。
【0121】
最初に、図5(b)に示すように、第1のサイクルでは、第2および第3のサイクルの熱変性工程より長い熱変性工程を行うことにより、上記の長いDNA1が加熱変性し、2本鎖が互いに離れ、2つの1本鎖(DNA鎖)12a,12bの状態になる。
【0122】
次に、図5(c)に示すように、プライマーのアニーリング工程でプライマー21aがその塩基配列に適合する各1本鎖12a,12bの適合位置に配置(相補な配列)するように結合する。ここで、適合位置とはプライマーの塩基配列から見て結合すべき塩基配列の位置およびプライマーの塩基配列から見て結合すべき塩基配列と類似の塩基配列の位置である。上記SSC−PCR法では、プライマーのアニーリング工程のアニール温度を低く設定することにより、プライマーは、その塩基配列と類似の塩基配列を有するDNA鎖の部分にも結合する。すなわち、プライマーは、その塩基配列に完全に相補な塩基配列を有する1本鎖の位置に結合することができるのみならず、多少のミスマッチを伴って1本鎖に結合することもできる。なお、図5〜図7では、簡単のためにプライマーがその塩基配列から見て結合すべき塩基配列の位置に結合する場合を図示している。
【0123】
続いて、図5(d)に示すように、ポリメラーゼによる伸長反応工程でポリメラーゼによって伸長反応が起こり、1本鎖12a,12bにそれぞれ沿って1本鎖12c,12dが伸長して2本鎖化した鎖13a,13bが形成される。
【0124】
第2のサイクルの1回目のサイクルでは、第1のサイクルで2本鎖化した鎖13a,13bが熱変性工程でそれぞれ1本鎖(DNA鎖)12a,12cおよび1本鎖(DNA鎖)12b,12dとなるが、ここでは、鎖13aから分かれた1本鎖12cに着目して説明する。
【0125】
図6に示すように、熱変性工程で分離した1本鎖12cには次のプライマーのアニーリング工程でプライマー21bが適合位置に配置するように結合する。その後、ポリメラーゼによる伸長反応工程でポリメラーゼによって伸長反応が起こり、1本鎖12eに沿って1本鎖12eが伸長して2本鎖化した鎖13dとなる。
【0126】
その後、図7に示すように、第2のサイクルの第2回目のサイクルでは、上記2本鎖化した鎖13dが熱変性工程でそれぞれ1本鎖12c,12eとなるが、ここでは、鎖13dから分かれた1本鎖12eに着目して説明する。
【0127】
図7に示すように、熱変性工程で分離した1本鎖12eには、次のプライマーのアニーリング工程で、同様に、プライマー21cが適合位置に配置するように結合する。その後、ポリメラーゼによる伸長反応工程でポリメラーゼによって伸長反応が起こり、1本鎖12eに沿って1本鎖12fが伸長して2本鎖化した鎖(DNA断片)13eが形成される。
【0128】
このようにDNA断片が形成され、このDNA断片からDNA断片が形成されるとともに他の同種のDNAからもDNA断片が形成され、同様の反応が連鎖反応的に続くので、この方法によりDNA断片が増幅される。
【0129】
その後、図3に示すように、SSC−PCR用反応溶液、ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールを用いて、電気泳動法により、各反応溶液において増幅されたDNA断片をサイズ(塩基対数)ごとに分画する。このとき、濃度が既知で定量可能なDNAサイズマーカを同時に電気泳動させサイズごとに分画する(ステップS1−4)。
【0130】
さらに、電気泳動法により得られた電気泳動像を蛍光色素で染色し(ステップS1−5)、紫外線照射したときの蛍光像を撮影する(ステップS1−6)。撮影には、例えばCCDカメラを用いる。このようにして得られた電気泳動像において、DNA断片がバンド(帯)として現れる。
【0131】
なお、ここで、ネガティブコントロールの電気泳動像においてバンドが現れない場合、増幅されたDNA断片が分析対象である微生物または微生物群由来のものであることが確認できる。
【0132】
続いて、図2に示すように、撮影した電気泳動像を電気泳動イメージ入力部2(図1)のスキャナで解析用コンピュータ3(図1)に画像データとして取り込み(ステップS2)、画像データに基づいて各プライマーについての電気泳動像の輝度分布(発光強度分布)を示す波形データを生成する(ステップS3)。
【0133】
なお、上記の方法においては、電気泳動像が歪んでいるために輝度分布を示す波形データを正確に生成できない場合がある。したがって、このような電気泳動像の歪みを補正するため、電気泳動像にアフィン変換を含む種々の画像補正を行ってもよい。
【0134】
ところで、上記の方法においては、電気泳動像を染色する際に染色むらが生じるおそれがある。このため、電気泳動像の背景にむらが生じるおそれがある。電気泳動像の背景にむらが生じた場合には、電気泳動像の輝度分布を正確に検出することができない。したがって、生成された波形データの信頼性が低下する。
【0135】
また、SSC−PCR法によりDNA断片を増幅する際において、所定の塩基配列を有する鋳型DNAの適合位置にプライマーが強く結合して配置する場合は、DNA断片の増幅効率が高い。このようなプライマーにより増幅されたDNA断片は、電気泳動像において再現性の高い明瞭なバンドとして現れる。一方、プライマーと鋳型DNAの適合位置との結合が弱い場合、鋳型DNAの適合位置よりも結合が強い他の位置にプライマーが結合する。このように、DNA断片の増幅反応においては競争的に反応が進行するため、プライマーと鋳型DNAとの結合が弱い場合にはDNA断片の増幅効率が低くなる。このような結合の弱いプライマーにより増幅されるDNA断片は、電気泳動像において再現性が低く不明瞭バンドとして現れる。上記のような再現性の低いDNA断片を含むことにより、SSC−PCR法により得られたデータは全体の信頼性が低くなる。
【0136】
そこで、SSC−PCR法により得られたデータの信頼性を向上させるために、解析コンピュータ3(図1)を用いて、以下のような電気泳動像の輝度分布を示す波形データの補正を行う(ステップS4)。
【0137】
図8は波形データの補正の工程の一例を示すフローチャートである。図8に示すように、波形データの補正の工程(ステップS4)は以下の4つの工程(S4−1〜S4−4)から構成される。
【0138】
図8に示す一連の波形データの補正の工程(ステップS4)においては、まず、電気泳動像の背景むらの補正を行う(ステップS4−1)。以下、背景むらの補正工程(ステップS4−1)について説明する。
【0139】
図9(a)は、染色むらが生じたために背景にむらが生じた電気泳動像を示す図である。図9(a)においては、レーンAおよびレーンBにそれぞれ3つのバンド▲1▼〜▲3▼,▲4▼〜▲6▼が表れている。この場合、電気泳動像の対角線左上側の輝度が最も低く右下側が最も高く、レーンA側の輝度がレーンB側の輝度に比べて低くなっている。このため、図9(b)に示す輝度分布において、レーンAおよびレーンBの各バンド▲1▼〜▲6▼に対応するピークのうち、特にレーンBのバンド▲5▼,▲6▼のピークにおいて背景の輝度の影響が大きくなる。このように背景の輝度の影響が大きくなると、正確にバンド▲1▼〜▲6▼に対応する輝度分布のピークを検出することができない。
【0140】
そこで、電気泳動像における背景の輝度の影響を補正するために、図9(c)に示すように、画像処理により、レーンAおよびレーンBのバンド▲1▼〜▲6▼を含む矩形領域を除去し、除去した矩形領域の周辺の輝度に基づいて図9(d)に示すように除去した矩形領域の補間を行う。このようにして得られた図9(d)に示す電気泳動像の背景のデータをもとに、下記式(1)に基づいて、背景の輝度の影響を取り除いたバンド▲1▼〜▲6▼に対応する輝度分布の波形データを求める。
【0141】
new =Zmax ・(Z1 −Z0 )/(Zmax −Z0 ) ・・・(1)
なお、式(1)中のZnew は電気泳動像の補正後の輝度分布における輝度値を示しており、Zmax は電気泳動像の輝度分布における最大輝度値を示し、Z0 は電気泳動像の輝度分布における最小輝度値を示し、Z1 は電気泳動像の輝度分布におけるある点の輝度値を示している。(Z1 −Z0 )/(Zmax −Z0 )によりある点の全体に対する相対輝度の割合が得られ、これにZmax を乗算することにより相対輝度が得られる。
【0142】
また、全体的にむらの少ない場合には、各サンプルのレーンの輝度値から対応するネガティブコントロールの輝度値を引き算したり、各レーンに隣接するレーン間隙の輝度値を引き算することによって、補正することも可能である。
【0143】
以上のようにして電気泳動像における背景のむらを補正することにより、背景の輝度の影響を除去して、電気泳動像の輝度分布を示す波形データを正確に生成することが可能となる。
【0144】
図8に示すように、輝度分布を示す波形データにおいて、ポジティブコントロールのバンドの発光強度と量が既知であるDNAサイズマーカのバンドの発光強度とを比較することにより、ポジティブコントロールにおいて増幅されたDNA断片を定量する。さらにこの定量した値を用いてDNA断片増幅反応の増幅効率を求める。この増幅効率に基づいて各SSC−PCR用反応溶液の波形データの輝度を補正する(ステップS4−2)。それにより、DNA増幅反応時における反応条件等の誤差がDNA断片の増幅効率に与える影響が除去される。なお、ここでの発光強度とは、輝度分布におけるピークの高さのことである。
【0145】
また、ポジティブコントロールの定量方法としては、DNA断片精製後に260nmの紫外線吸収量を測定するなどの他の方法を用いることもできる。
【0146】
さらに、定量可能なDNAサイズマーカのバンドの発光強度を基準として用い、複数種類のSSC−PCR用反応溶液に対応する波形データの輝度を補正する。このようにして、電気泳動像の波形データの補正を行う(ステップS4−3)。
【0147】
一般に、エチジウムブロマイド染色時の染色度合いおよび写真撮影時の露光の程度によって、得られる電気泳動像の階調に誤差が生じる。しかしながら、濃度が既知のDNAサイズマーカのバンドの発光強度に基づいて電気泳動像の画像データの階調補正を行うことにより、このような誤差を除去することができる。
【0148】
続いて、DNAサイズマーカの波形データに基づいて以下に示す軸合わせおよび濃度調整を行う(ステップS4−4)。なお、上記のような画像補正は、解析用コンピュータ3(図1)により行う。
【0149】
図10(a),(b)は電気泳動像の例を示す図である。図10(a),(b)において、レーン1,8は、DNAサイズマーカの電気泳動像を示している。また、レーン2〜7およびレーン9〜14は、12種類の各プライマーにおける電気泳動像をそれぞれ示している。
【0150】
なお、上記において、図10(a)はゲルAを用いて電気泳動させた場合の電気泳動像を示しており、図10(b)はゲルBを用いて電気泳動させた場合の電気泳動像を示している。
【0151】
ゲルAおよびゲルBは同一種類のゲルであり、いずれのゲルを用いる場合においても電気泳動の条件は同一とする。また、ゲルA上およびゲルB上で電気泳動させるDNAサイズマーカ(レーン1,8)としては同一のものを用いている。
【0152】
ここで、図10(a)に示されたDNAサイズマーカの電気泳動像(レーン1)と図10(b)に示されたDNAサイズマーカの電気泳動像の(レーン8)とを比較すると明らかなように、同一のDNAサイズマーカを異なるゲル上(この場合はゲルA上およびゲルB上)で電気泳動させる場合においては、同一のものを同一の条件で電気泳動させたにもかかわらず、同一サイズのバンドが各ゲル上においてそれぞれ異なる位置に現れる。
【0153】
このように、電気泳動に用いるゲルが異なると、同一の条件で電気泳動させたにもかかわらず、用いたゲルによりバンドの移動度が異なってくる。このため、異なるゲル間においては、バンドの位置とDNAサイズとの関係が異なる。そこで、本例においては、以下の方法により、異なるゲル間でも波形データの比較が可能となるように、波形データの標準化を行う。この波形データの標準化を軸合わせと呼ぶ。
【0154】
波形データの軸合わせを行う方法としては、DNAサイズマーカの波形データに基づいて所定の変換式のパラメータを決定し、この変換式に基づいて各ゲルごとに波形データを補正する。このような変換式としては、例えば以下の式(2)を用いる。
【0155】
y=m1+log(m2−m3・x)/(m4−m5・x) ・・・(2)
ここで、式(2)中のxは電気泳動のスタート位置からの距離、すなわち泳動距離(画素/1000 )を示しており、yはDNAのサイズを対数値(log(bp))で示している。
【0156】
図11(a)は、図10(a)に示したゲルAについて、DNAサイズマーカの各バンドをプロットしたものである。また、図11(b)は、図10(b)に示したゲルBについて、DNAサイズマーカの各バンドをプロットしたものである。
【0157】
図11(a)および図11(b)の各点のxおよびyの値を用いて最小二乗法により、ゲルAおよびゲルBの各々について各パラメータm1、m2、m3、m4およびm5を求める。この場合においては、例えば下記表1に示すようなパラメータm1、m2、m3、m4およびm5がゲルAおよびゲルBについて求められる。
【0158】
【表1】
Figure 0004020640
【0159】
求めた各パラメータm1〜m5を代入した変換式(2)により表される曲線とDNAサイズマーカの各バンドをプロットした点との相関係数は、ゲルAおよびゲルBともに0.99986となる。図11(a)および(b)に示すように、DNAサイズマーカの各バンドの点はほぼ変換式(2)で表される曲線上にのる。
【0160】
図12(a)は上記の変換式(2)による軸合わせを行う前のDNAサイズマーカの電気泳動像の輝度分布を示す波形データを示す図であり、図12(b)は上記の変換式(2)による軸合わせを行ったのちのDNAサイズマーカの電気泳動像の輝度分布を示す波形データを示す図である。図12において、太線はゲルAにおけるDNAサイズマーカの波形データであり、細線はゲルBにおけるDNAサイズマーカの波形データである。
【0161】
図12(a)に示すように、同一のDNAサイズマーカを用いて同一の条件で電気泳動を行った場合においても、異なるゲル間(ゲルAおよびゲルB)においては、波形データのピーク(バンドに相当)が異なる位置に現れる。これは、前述のように、異なるゲル間(ゲルAおよびゲルB)においては、バンドの移動度に差が生じるためである。
【0162】
そこで、前述の図11に示す方法により、ゲルAおよびゲルBにおいてそれぞれパラメータm1〜m5を求めるとともに、各ゲルにおいて求めたパラメータm1〜m5を代入した変換式(2)に基いて波形データの軸合わせを行う。その結果、図12(b)に示すように、ゲルAおよびゲルBを用いた場合の波形データのピークの位置を一致させることができる。
【0163】
図13(a)は、上記の変換式(2)による軸合わせを行う前のDNAサイズマーカの電気泳動像の輝度分布を示す波形データおよびある細菌についての電気泳動像の輝度分布を示す波形データを示す図である。また、図13(b)は、上記の変換式(2)による軸合わせを行った後のDNAサイズマーカの電気泳動像の輝度分布を示す波形データおよびある細菌についての電気泳動像の輝度分布を示す波形データを示す図である。さらに、図13(c)は、後述する濃度調整を行った後のDNAサイズマーカの電気泳動像の輝度分布を示す波形データおよびある細菌についての電気泳動像の輝度分布を示す波形データを示す図である。
【0164】
図13(a),(b),(c)には、図10(a)に示すゲルAを用いた場合の波形データおよびゲルBを用いた場合の波形データが示される。
【0165】
図13(a)に示すように、ゲルAおよびゲルBを用いて電気泳動を行った場合、DNAサイズマーカおよび細菌の電気泳動像の輝度分布を示す波形データにおいてピークが異なる位置に現れる。
【0166】
そこで、上記の波形データの軸合わせを行うと、図13(b)に示すように、ゲルAおよびゲルBを用いた場合の波形データのピークの位置を一致させることができる。
【0167】
この場合、図11(a),(b)からわかるように、泳動距離の中間付近(軸合わせ前の400付近)では、泳動距離とDNAサイズとの関係が直線に近いが、両端では、泳動距離とDNAサイズとの関係が直線にならず、泳動距離に対するDNAサイズの変化量が増大する。これにより、変換式(2)に基いて波形データの軸合わせを行うと、波形データの両端に近い領域において「引き伸ばし」が起こり、ピークの幅が広くなる。その結果、波形データの両端に近い領域においてピークの面積が大きくなる。このピークの面積は、DNAの濃度に相当する。そこで、軸合わせ前の波形データとピークの面積が等しくなるように、軸合わせ後の波形データのピークの高さを補正する。この補正を濃度調整と呼ぶ。
【0168】
ここで、濃度調整の方法を説明する。上記の軸合わせにおいて変換式(2)のパラメータm1〜m5を確定する。確定したパラメータm1〜m5を代入した変換式(2)をy=f(x)とする。次に、変換式(2)の1次微分(傾き)y’=f’(x)を求める。さらに、変換式(2)の2次微分y”=f(x)を求める。そして、2次微分が0となる変曲点x0を求める。変曲点x0における傾きf’(x0)から各点での引き伸ばし率f’(x)/f”(x0)を求める。波形データの各点での輝度値を引き伸ばし率f’(x)/f”(x0)で割る。これにより、波形データの両端に近い領域においてピークの高さが低減され、図13(c)に示すように、ピークの面積が軸合わせ前と等しくなるように補正される。
【0169】
このようにして、軸合わせおよび濃度調整を行うことにより、ゲルの違いによるバンドの移動度の差を補正することが可能となり、異なるゲル間においても波形データを標準化することが可能となる。
【0170】
なお、上記においては、図11に示すように、各ゲル上のDNAサイズマーカのバンドの泳動距離をxとするとともにDNAサイズの対数値をyとして上記の変換式(2)に基づいて最小二乗法によりパラメータm1〜m5を求める場合について説明したが、波形データの標準化のための変換式は泳動距離とDNAサイズとの関係を近似することができれば、任意の変換式を用いることができる。例えば、平方根、立方根、整関数等を含む式を変換式として用いてもよい。
【0171】
上記のようにしてDNAサイズマーカの波形データの軸合わせおよび濃度調整を行った後、ゲルAおよびゲルB上のレーン2〜7,9〜14の各プライマーの波形データについても、上記と同様の方法により、各ゲルについて求めたパラメータm1〜m5を用いて変換式(2)により軸合わせおよび濃度調整を行う。それにより、異なるゲルを用いて電気泳動を行ったプライマーの全ての波形データを標準化することができる。
【0172】
なお、上記のような波形データの標準化は、解析用コンピュータ3(図1)により行う。
【0173】
図14(a)は図10(a)に示すゲルA上で電気泳動させた6種類のプライマー(レーン2〜7)の波形データを示す図である。また、図14(b)はゲルB上で電気泳動させた6種類のプライマー(レーン9〜14)の波形データを示す図である。なお、波形データにおけるピークの高さはバンド強度に相当する。
【0174】
上記のような波形データの補正を行った後、図2に示すように、複数のプライマーについての波形データを連結する(ステップS5)。例えば、上記のようにして作成した図14(a)に示すレーン2〜7の各プライマーの波形データを連結し、サンプルの微生物の波形データとする。同様に、図14(b)に示すレーン9〜14の各プライマーの波形データを連結し、サンプルの微生物の波形データとする。
【0175】
なお、図1の微生物識別装置の解析用コンピュータ3において、このようにして作成されたサンプルの微生物の波形データは、後述するように、データ格納部4(図1)に格納されたデータベース中の微生物の波形データとの比較に用いられる。
【0176】
次に、上記のようにして作成したサンプルの微生物の波形データに基づいてサンプルの微生物の識別・同定を行う方法について説明する。
【0177】
図15(a)はサンプルの微生物に図2に示すステップS1およびステップS2の工程により得られた電気泳動像の一例を示す図である。
【0178】
なお、図15(a)において、レーン1はDNAサイズマーカMの電気泳動像を示しており、レーン2はプライマーp01における電気泳動像を示しており、レーン3はプライマーp03における電気泳動像を示しており、レーン4はプライマーp04における電気泳動像を示しており、レーン5はプライマーp06における電気泳動像を示しており、レーン6はプライマーp07における電気泳動像を示している。
【0179】
図15(b)は、図15(a)に示す各プライマーp01,p03,p04,p06,p07について、図2に示すステップS3からステップS5の工程により得られた波形データを示す図である。図15(b)に示すように、各プライマーp01,p03,p04,p06,p07の波形データが連結されて1つの波形データが作成されている。
【0180】
続いて、図2に示すように、解析用コンピュータ3(図1)を用いて、サンプルの微生物の波形データ(図15(b))に基づいて、データベース格納部4のデータベースを検索する(ステップS6)。
【0181】
以下に、データベース検索(ステップS6)の詳細について、順を追って説明する。
【0182】
図1に示すように、微生物識別装置のデータベース格納部4のデータベースには、生化学検査等により同定された複数の微生物の各々に関して、SSC−PCRのデータ、例えば、複数のプライマーについての波形データおよび電気泳動像の画像データが登録されている。
【0183】
データベースに登録されている微生物の波形データの一例を図16(a)に示す。図16(a)においては、Escherichia coli(大腸菌)(以下、E.coliと略記する)およびBacillus subtilis (枯草菌)(以下、B.sub と略記する)についてのプライマーp01〜p07に関する波形データが示されている。
【0184】
データベース格納部4には、上記に示すE.coli(大腸菌)およびB.sub (枯草菌)以外の微生物についても、上記のような波形データが登録されている。
【0185】
図16(b)は、サンプルの微生物の波形データとの比較のために、データベース格納部4に格納されているE.coli(大腸菌)、B.sub (枯草菌)およびStaphylococcus aureus (黄色ブドウ球菌)(以下、S.aur と略記する)の波形データからプライマーp01,p03,p04,p06,p07に関する波形データを抽出して連結したものである。
【0186】
なお、データベースに一部のプライマーのデータがなかった場合には、ピークなしの波形データとして連結された波形データを作成するか、あるいはサンプルと同じピークを補って連結された波形データを作成する。前者のようにピークなしの波形データとして連結された波形データを作成する場合においては、後述の相関係数が小さくなる。一方、後者のようにサンプルと同じピークを補って連結された波形データを作成する場合においては、後述の相関係数が大きくなる。
【0187】
図16(b)に示すE.coli(大腸菌)、B.sub (枯草菌)およびS.aur (黄色ブドウ球菌)以外のデータベースに登録されている複数の微生物についても、それぞれ図16(b)に示すような連結された波形データを作成する。
【0188】
さらに、図17に示すように、上記において作成した図15(a)に示すサンプルの微生物の波形データと、図16(a)に示すようなデータベース格納部4に格納されている複数の既知の微生物の波形データとを比較し、両者の相関関係を調べる。
【0189】
ここでは、一例として、サンプルの微生物の波形データとE.coli(大腸菌)、B.sub (枯草菌)およびS.aur (黄色ブドウ球菌)の波形データとを比較した場合について説明する。
【0190】
図17に示すように、サンプルの微生物の波形データとE.coli(大腸菌)、B.sub (枯草菌)およびS.aur (黄色ブドウ球菌)の波形データとを比較してサンプルの微生物の波形データと各微生物の波形データとの相関係数を計算する。この例では、E.coli(大腸菌)との間の相関係数は0.568となり、B.sub (枯草菌)との間の相関係数は0.368となり、S.aur (黄色ブドウ球菌)との間の相関係数は0.121となる。相関係数が1に近いほど相関関係が高い。
【0191】
したがって、波形データより求めた相関係数から、サンプルの微生物はE.coli(大腸菌)である確率が最も高い。このように、サンプルの微生物の波形データとデータベース格納部4に格納された各微生物の波形データとを比較することにより、サンプルの微生物を識別することが可能となる。なお、このような相関係数の計算は、解析用コンピュータ3(図1)を用いて行う。
【0192】
最後に、図2に示すように、結果表示手段5(図1)により、微生物の名称を相関係数の高い順に検索結果として表示する(ステップS7)。
【0193】
なお、必要に応じて以下の工程(ステップS8)を設けてもよい。
例えば、図2に示すように、画像データの比較等による確認の工程を設けてもよい。この工程においては、検索結果として表示された微生物がサンプルの微生物と同一であること、あるいはサンプルを構成する微生物の1つであることを以下のような方法により確認する。
【0194】
例えば、サンプルの微生物の電気泳動像の画像データを読み出すとともに、検索された微生物の電気泳動像の画像データをデータベース格納部4から読み出し、両者の電気泳動像の画像データの比較を行ってもよい。また、サンプルの微生物の波形データと検索された微生物の波形データとの相関図を表示することにより、両者の相関の状態を調べてもよい。これらの方法により、検索結果の確認を行うことが可能となる。
【0195】
また、データベースへの登録工程を設けてもよい。この工程は、単一の微生物をサンプルに用いて波形データの検索を行った結果、データベースに同じ微生物の波形データが存在しないことが明らかとなった場合に、このサンプルの微生物に関する波形データを新たにデータベース格納部4のデータベースに登録するものである。それにより、検索可能な微生物の範囲がより広がる。
【0196】
また、パラメータ等を変更して再び検索を行う工程を設けてもよい。この工程においては、例えば、データベース検索の工程(ステップS6)において説明した相関係数の計算方法を変更し、再検索を行う。それにより、サンプルの微生物に適した検索を行って結果を得ることができる。
【0197】
ここで、サンプルに単一の微生物を用いて1種類の微生物が検索された場合においては、サンプルの微生物の波形データと検索された微生物の波形データとの間の不一致ピークが、サンプルの微生物と検索された微生物との区別を可能にする多型(異なる性質)に相当する可能性がある。一方、サンプルが複数の微生物の混合物である場合、サンプルの微生物の波形データと検索された微生物の波形データとの間の不一致ピークは、データベースに登録されていない微生物のバンドである可能性が高い。このように、不一致ピークはサンプルの微生物に関する重要な情報となり得るので、データとして残すことが好ましい。
【0198】
なお、上記においては、各プライマーにおける波形データを連結して1つの波形データを作成しているが、各プライマーにおける波形データを個々に比較してもよい。この場合においては、各プライマーについて相関係数を求めるとともに、求められた各相関係数の平均を求めてサンプルの微生物を識別する。
【0199】
以上のような本発明に係る微生物識別方法によれば、単一の微生物および複数の微生物から構成される微生物群のいずれをサンプルとして用いる場合においても、微生物の識別を行うことが可能となり、さらに同定を行うことも可能となる。
【0200】
特に、微生物群をサンプルとして用いる場合においては、微生物群を構成する複数の微生物を同時に識別し、さらに同定することが可能となる。このため、微生物群を構成する微生物の種類の数および種類名を明らかにすることが可能となる。この方法によれば、100種類程度の微生物を同時に識別することが可能となる。
【0201】
一方、単一の微生物をサンプルとして用いる場合においては、サンプルの微生物とデータベースの微生物との多型を検出することも可能となる。また、サンプルの微生物と類似した微生物を見い出すこともできる。
【0202】
ここで、この微生物識別方法においては、SSC−PCRによりサンプルの微生物(または微生物群)のDNA分析を行うので、生化学検査のように微生物を単離および培養する工程が不要となる。この方法によれば、混在する多数の微生物を数時間で識別することが可能となる。このため、容易に識別および同定を行うことが可能になる。また、このような方法においては、単離が困難な微生物の識別および同定も可能になる。さらに、SSC−PCRは塩基配列が未知のサンプルに対して行うことが可能であるため、塩基配列の測定を行うことなくサンプルの微生物の識別および同定を行うことができる。
【0203】
したがって、この微生物識別方法は全ての微生物に適用可能であり、さらに、この方法によれば、微生物の種の違いだけでなく、株の違いまで検出することが可能となる。
【0204】
さらに、この微生物識別方法においては、複数のプライマーを用いてそれぞれPCR反応を行い、複数のPCR反応の結果を用いて分析を行うため、諸条件によって個々のPCR反応が良好に進まない場合においても、個々のPCR反応の影響は小さい。このため、良好な分析を安定して行うことが可能となる。
【0205】
例えば、上記の微生物識別方法を生ごみ処理機の処理槽内または土壌中から採取した複数の微生物に適用することにより、生ごみ処理機の処理槽内または土壌中の微生物を同定することができる。また、この結果にしたがって生ごみ処理機の処理槽の条件を変えることにより、生ごみの処理を良好に行えるとともに良好な肥料を作製することができる。
【0206】
実際に生ゴミ処理機の菌叢に本発明に上記の微生物識別方法を適用した結果、生ゴミ処理機には約40種類の微生物が存在して菌叢を構成しており、この菌叢は経時的に変化することが明らかとなった。また、処理状態が良好な生ゴミ処理機においては20〜30種類の微生物が処理槽内に定着することが明らかとなった。
【0207】
さらに、このような微生物識別方法は、水銀、砒素、ダイオキシン、環境ホルモン等の有害な汚染物質に汚染された土壌、食品等の発見、およびこれらの汚染状態を知るのに有効である。すなわち、この微生物識別方法により検索された微生物の中に汚染物質に関係のある微生物が含まれている場合には、微生物を採取した土壌等にこの汚染物質が含まれる可能性が示唆される。また、汚染物質に関係のある微生物の存在の程度により、汚染状態が示唆される。
【0208】
大便・唾液・たんなどからの病原性細菌の検出、水質浄化設備などの移動状況の把握なども可能である。
【0209】
図18は図1の解析用コンピュータ3として用いられるパーソナルコンピュータの構成を示すブロック図である。
【0210】
図18のパーソナルコンピュータは、CPU(中央演算処理装置)310、ディスプレイ320、入力装置330、ROM(リードオンリメモリ)340、RAM(ランダムアクセスメモリ)350、記録媒体駆動装置360、スキャナ370および外部記憶装置380を備える。
【0211】
ディスプレイ320は、液晶表示パネル、CRT(陰極線管)等からなり、図1の結果表示手段5として用いられる。入力装置330は、キーボード、マウス等からなり、各種データおよび各種指令を入力するために用いられる。ROM340にはシステムプログラムが記憶される。
【0212】
記録媒体駆動装置360は、CD−ROMドライブ、フロッピィディスクドライブ等からなり、CD−ROM、フロッピィディスク等の記録媒体390に対してデータの読み書きを行う。記録媒体390には、図2の微生物識別方法におけるステップS2〜S8の処理を行う微生物識別プログラムが記録されている。
【0213】
スキャナ370はCCDカメラにより撮影された電気泳動像を画像データとして入力し、外部記憶装置380に格納する。スキャナ370は図1の電気泳動イメージ入力部2として働く。
【0214】
外部記憶装置380は、ハードディスク装置等からなり、記録媒体駆動装置360を介して記録媒体390から読み込まれた微生物識別プログラムを記憶する。また、外部記憶装置380は、上記のデータベースを記憶する。図1のデータベース格納部4は外部記憶装置360により構成される。CPU310は、外部記憶装置380に記憶された微生物識別プログラムをRAM350上で実行する。
【0215】
なお、微生物識別プログラムを記録する記録媒体390として、ROM等の半導体メモリ、ハードディスク等の種々の記録媒体を用いることができる。また、微生物識別プログラムを通信回線等の通信媒体を介して外部記憶装置360にダウンロードし、RAM350上で実行してもよい。この場合、通信媒体が記録媒体に相当する。
【0216】
本実施の形態では、図1のSSC−PCR増幅・解析装置1が増幅手段に相当し、電気泳動イメージ入力部2が画像データ変換手段に相当し、解析用コンピュータ3が波形データ生成手段、相関関係作成手段および識別手段を構成する。
【0217】
なお、データベース格納部4に格納されるデータベースは、照合対象となる微生物について図2のステップS1〜S4の処理を行うことにより作成される。
【0218】
本実施の形態では、データベース格納部4に電気泳動像の輝度分布を示す波形データが格納されているが、データベース格納部4に電気泳動像の輝度分布におけるピークの位置およびピークの高さまたは面積を示すデータを格納してもよい。この場合には、解析用コンピュータ3がデータベース格納部4に格納された電気泳動像の輝度分布におけるピークの位置およびピークの高さまたは面積を示すデータに基づいて電気泳動像の輝度分布を示す波形データを作成し、サンプルの微生物についての電気泳動像の輝度分布を示す波形データと比較して相関係数を計算する。例えば、データベース格納部4に格納された電気泳動像の輝度分布におけるピークの位置およびピークの高さまたは面積に基づいて個々のピークをガウス関数、デルタ関数、矩形等で表現する。
【0219】
また、データベース格納部4に電気泳動像を示す画像データを格納してもよい。この場合には、解析用コンピュータ3がデータベース格納部4に格納された電気泳動像の画像データに基づいて電気泳動像の輝度分布を示す波形データを作成し、サンプルの微生物についての電気泳動像の輝度分布を示す波形データと比較して相関係数を計算する。
【0220】
一般的に、電気泳動法としては、大きく分けて2種類の方法が知られている。アガロースゲル等の平板ゲルを用いる方法と、ゲルを詰めた細管(キャピラリ)を用いる方法とがある。DNA断片の分離の原理は、いずれの方法でも同じであり、大きな分子はゲル内を移動しにくく、小さな分子ほど移動しやすいことを利用している。
【0221】
平板ゲル法では、一定時間の電気泳動後のDNA断片の移動距離を画像データから測定するのに対して、細管法では、DNA断片が一定距離の細管を通って出てくるまで、あるいは細管中で一定距離を移動するまでの時間をセンサを用いて測定している。なお、平板ゲルを用いてDNA断片が一定距離を移動する時間をセンサにより測定する場合もあり、あるいは細管に沿ってセンサを並べておいてDNA断片の一定時間の移動距離を測定することも可能である。
【0222】
図19は細管型の電気泳動装置を用いた微生物識別装置を示すブロック図である。図19の微生物識別装置が図1の微生物識別装置と異なるのは、電気泳動イメージ入力部2の代わりに電気泳動・信号検出装置2aが設けられている点である。電気泳動・信号検出装置2aは、細管型の電気泳動装置を含む。この電気泳動・信号検出装置2aでは、例えばDNA断片を蛍光色素で染色し、ゲルを詰めた細管に、その色素を励起させる波長の光を発光する発光部とその光を受光する受光部とを対応させて設けることにより、電気泳動法を実行している最中に受光部からDNA断片の移動に応じた出力信号を得ることができる。
【0223】
図20は図19の電気泳動・信号検出装置2aにより得られるセンサ出力波形の一例を示す図である。図20の横軸は、DNA断片の移動時間であり、縦軸はセンサの信号強度である。マーカー1および2は、標準化のために用いられる。DNA断片1〜4は増幅されたDNA断片である。センサの信号強度を示す波形データを標準化することにより、図1の微生物識別装置と同様の方法で微生物の識別を行うことができる。
【0224】
以下の実施例では、平板ゲルを用いて電気泳動を行った結果を画像データとして採取し、その画像データを波形データに加工したが、図19の微生物識別装置を用いる場合には、細管型の電気泳動装置から直接波形データを得ることができる。
【0225】
【実施例】
[実施例1]
実施例1においては、以下に示す16種類の細菌についてSSC−PCR法によりDNAの分析を行い、得られた結果に基づいて波形データを作成した。さらに、この16種類の細菌の波形データを検索用の波形データとしてデータベースに登録した。以下に、詳細について説明する。
【0226】
1.データベースの作成
▲1▼16種類の細菌のDNA分析
ここでは、まず表2に示す16種類の細菌を用意するとともに、各細菌の染色体DNAを調製してSSC−PCR用反応溶液の調製を行った。
【0227】
【表2】
Figure 0004020640
【0228】
なお、各細菌の染色体DNAはCurrent Protocols in Molecular Biology (published by Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience) の2.4.1 〜2.4.2 に記載の“Preparation of Genomic DNA from Bacteria”の方法に従って調製した。
【0229】
次に、上記のようにして調製した反応溶液を用いて、PE Applied Biosystemの PCR System 9700および三洋電機株式会社製DNA増幅器MIR−D40により、以下に示すSSC−PCR法で各細菌についてDNA分析を行った。
【0230】
本実施例のSSC−PCR法においては、16種類のプライマー(配列番号1〜16)を用いた。なお、以下においては、配列番号1のプライマーをP01、配列番号2のプライマーをP02と表し、以下、配列番号3から配列番号16のプライマーまでを同様にしてP03〜P16と表すものとする。
【0231】
本実施例のSSC−PCR法に用いた反応溶液の組成を表3に示す。
【0232】
【表3】
Figure 0004020640
【0233】
表3において、Tris−HClのTrisは、Tris(hydroxymethyl)aminomethane の略である。dNTPmixはdATP(2--デオキシアデノシン-5--三燐酸)、dCTP(2--デオキシシチジン- 5-- 三燐酸) 、dGTP(2--デオキシグアノシン-5--三燐酸) 、dTTP(2--デオキシチミジン-5--三燐酸) の等濃度混合溶液である。反応溶液量は20μLとした。
【0234】
ここでは、16種類の細菌の各々について、プライマーとして配列番号1〜16の各プライマー(P01〜P16)をそれぞれ含む16種類のSSC−PCR用反応溶液を同時に調製した。また、配列番号1のプライマー(P01)とこれに対応する塩基配列を有する鋳型DNAとを含む反応溶液をポジティブコントロールとして、また、配列番号1のプライマー(P01)を含むがDNAを含まない反応溶液をネガティブコントロールとして各細菌の16種類のSSC−PCR用反応溶液と同時に調製した。
【0235】
次に、16種類の細菌の各々について、上記のようにして調製した16種類のSSC−PCR用反応溶液を図4に示すDNA断片増幅装置の孔部51にそれぞれ収納するとともに、孔部51aおよび孔部51bにネガティブコントロールおよびポジティブコントロールをそれぞれ収納した。このDNA断片増幅装置を用いてSSC−PCRを行った。SSC−PCRのサイクルを表4に示す。
【0236】
【表4】
Figure 0004020640
【0237】
続いて、SSC−PCR後の反応溶液、ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールの10μLを1%アガロースゲル電気泳動法で分析した。電気泳動条件は、3.6V/cm定電圧とした。また、この場合においては、増幅されたDNA断片のバンドサイズを測定するために、濃度が既知で定量可能なDNAサイズマーカ(ニッポンジーン株式会社製Smart Ladder)を反応溶液と同時に電気泳動させた。
【0238】
電気泳動後、ゲルをエチジウムブロマイド染色し、波長254nmの紫外線を照射したときのエチジウムブロマイド蛍光像をポラロイドカメラまたはCCDカメラで撮影した。
【0239】
▲2▼各プライマーについての波形データの生成
次に、16種類の細菌の各々について、電気泳動写真をスキャナでコンピュータに取込んだ後、電気泳動像の画像データから、ソフトウェア(Genomic Solutions Advanced Quantifier 1-D Match )を用いて、DNAサイズマーカの電気泳動像の輝度分布を示す波形データ、各プライマーについての電気泳動像の輝度分布を示す波形データ、ポジティブコントロールについての電気泳動像の輝度分布を示す波形データおよびネガティブコントロールについての電気泳動像の輝度分布を示す波形データを生成した。
【0240】
ここでは、ネガティブコントロールの電気泳動像においてバンドが検出されなかった。このことから、現れたバンドはサンプルとして用いた細菌由来のものであることが確認できた。
【0241】
この場合においては、行っていないが、電気泳動像の歪みを補正するためにアフィン変換を行ってもよい。
【0242】
また、ポジティブコントロールのバンドの発光強度をもとにして他のバンドの発光強度を補正してもよい。例えば、測定したポジティブコントロールのバンドの発光強度が70%であった場合、このバンドの発光強度が100%になるように補正するとともに、他のバンドの発光強度も同様の割合で補正する。これにより、DNA断片増幅反応時における反応条件等の誤差がDNA断片の増幅効率に与える影響を除去することができる。
【0243】
また、各々の電気泳動像の画像データにおいて、測定により求めたDNAサイズマーカの1000bpのバンドの発光強度が100%になるような割合で補正するとともに、他のバンドの発光強度についても同様の割合で補正を行ってもよい。このように画像データの階調の補正を行うことにより、各々の画像データにおける階調の誤差を除去することができる。
【0244】
▲3▼各プライマーについての波形データの補正
各プライマーについての波形データに対して図2に示した波形データの補正(ステップS4)を行った。ここでは、図8のステップS4−1の背景むらの補正ならびにステップS4−4の軸合わせおよび濃度調整を行った。
【0245】
なお、前述のように、この場合においては、電気泳動像の画像データの各バンドについてポジティブコントロールのバンドの発光強度をもとにして他のバンドの発光強度を補正することは行わず、また、DNAサイズマーカの発光強度による補正は行わなかった。
【0246】
▲4▼各プライマーについての波形データの連結
細菌ごとに16種類のプライマーP01〜P16についての波形データをデータベースに登録した。そして、細菌ごとに16種類のプライマーP01〜P16についての波形データを連結した。細菌ごとの16種類のプライマーP01〜P16についての連結された波形データを図21に示す。
【0247】
2.単離した単一細菌をサンプルとして用いた場合のデータ検索
ここでは、単一細菌をサンプルとしてを用いた検索をテストするために、単離した細菌E.coli(大腸菌)について前述のSSC−PCRを行ってDNAの分析を再度行い、16種類のプライマーP01〜P16について得られたサンプルの波形データを連結した。
【0248】
サンプルの細菌の16種類のプライマーP01〜P16についての連結された波形データを図22に示す。
【0249】
3.相関係数の計算
この場合においては、図23に示すように、サンプルから作成した波形データとデータベースから作成した16種類の細菌についての波形データとを比較し、相関係数を次式により求めた。
【0250】
a,s =Σan ・Sn /{√(Σan 2)√(ΣSn 2)}
ここで、Ra,s はデータベース中の微生物aとサンプルSの相関係数、an はデータベース中の微生物の波形データのnポイント目の輝度値、Sn はサンプルSの微生物の波形データのnポイント目の輝度値である。
【0251】
なお、相関係数の計算は、本発明者がMicrosoft Visual Basicで作成したソフ3トウェアを用いて行った。上記のようにして相関係数を計算したところ、細菌E.coli K12Ga(大腸菌)の相関係数が最も1に近かった。このように、サンプルの細菌をデータベースから検索することが可能であった。
【0252】
[実施例2]
次に、実施例2においては、実施例1と同様の方法によりEscherichia coli K12 (E.coli K12)およびSalmonella enteritidis GTC 131 (S.enteritidis GTC 131)を含む混合サンプルおよび4種類の細菌について配列番号17のプライマー(プライマーA87)を用いてSSC−PCR法によりDNAの分析を行った。ここで、プライマーA87の塩基配列は、AAGTCGTTTGGGである。
【0253】
得られた結果に基づいて波形データを作成した。4種類の細菌の波形データを検索用の波形データとしてデータベースに登録した。
【0254】
さらに、混合サンプルの波形データとデータベースに登録された図24に示す4種類の細菌の波形データD1,D2,D3,D4との相関係数を求めた。図24には、混合サンプルの波形データS、Escherichia coli K12の波形データD1、Salmonella enteritidis GTC 131の波形データD2、Vibrio chorelae GTC 37の波形データD3およびBacillus subtilis ATCC 6051の波形データD4が示される。
【0255】
本実施例では、まず、次式(1)によりノーマル相関係数を算出した。
【0256】
【数7】
Figure 0004020640
【0257】
上式(1)において、NCはノーマル相関係数であり、Siはサンプルに含まれる細菌の波形データのiポイント目の輝度値、aiはデータベースに登録された波形データのiポイント目の輝度値である。また、nは各波形データのポイント数である。
【0258】
また、以下に示す方法により算出されるクリッピング信号を用いて相関係数を算出した。クリッピング信号を用いて算出される相関係数をクリッピング相関係数と呼ぶ。
【0259】
図25は混合サンプルの波形データとEscherichia coli K12の波形データとのクリッピング信号の算出方法を説明するための図である。
【0260】
図25(a)はEscherichia coli K12およびSalmonella enteritidis GTC 131を含む混合サンプルの波形データSを示し、図25(b)はEscherichia coli K12の波形データD1を示す。図25(a)の波形データSおよび図25(b)の波形データD1を重ね合わせると、図25(c)のようになる。
【0261】
次に、CSi=min(Si,D1i)によりクリッピング信号CSを求める。ここで、Siは波形データSのiポイント目の輝度値、D1iは波形データD1のiポイント目の輝度値である。iは任意の整数である。また、min(Si,D1i)は波形データSのiポイント目の輝度値および波形データD1のiポイント目の輝度値のうち低い方の輝度値を選択することを意味する。CSiはクリッピング信号CSのiポイント目の輝度値である。このようにして求めたクリッピング信号CSを図25(d)に示す。
【0262】
図26は混合サンプルの波形データとSalmonella enteritidis GTC 131の波形データとのクリッピング信号の算出方法を説明するための図である。
【0263】
図26(a)はEscherichia coli K12およびSalmonella enteritidis GTC 131を含む混合サンプルの波形データSを示し、図26(b)はSalmonella enteritidis GTC 131の波形データD2を示す。図26(a)の波形データSおよび図26(b)の波形データD2を重ね合わせると、図26(c)のようになる。
【0264】
次に、CSi=min(Si,D2i)によりクリッピング信号CSを求める。ここで、Siは波形データSのiポイント目の輝度値、D2iは波形データD2のiポイント目の輝度値である。また、min(Si,D2i)は波形データSのiポイント目の輝度値および波形データD2のiポイント目の輝度値のうち低い方の輝度値を選択することを意味する。CSiはクリッピング信号CSのiポイント目の輝度値である。このようにして求めたクリッピング信号CSを図26(d)に示す。
【0265】
次に、次式(2)によりクリッピング相関係数を算出した。
【0266】
【数8】
Figure 0004020640
【0267】
上式(2)において、CCはクリッピング相関係数であり、CSiはクリッピング信号のiポイント目の輝度値、aiはデータベースに登録された波形データのiポイント目の輝度値である。また、nは各波形データのポイント数である。
【0268】
ここでは、図25(b)のEscherichia coli K12の波形データD1および図25(d)のクリッピング信号CSを用いて上式(2)から混合サンプルの波形データSとEscherichia coli K12の波形データD1とのクリッピング相関係数CCを求めた。また、図26(b)のSalmonella enteritidis GTC 131の波形データD2および図26(d)のクリッピング信号CSを用いて上式(2)から混合サンプルの波形データSとSalmonella enteritidis GTC 131の波形データD2とのクリッピング相関係数CCを算出した。
【0269】
比較のために、同様の方法で混合サンプルの波形データSと図24のVibrio chorelae GTC 37の波形データD3とのクリッピング相関係数CCを算出し、混合サンプルの波形データSと図24のBacillus subtilis ATCC 6051の波形データD4とのクリッピング相関係数CCを算出した。
【0270】
表5に混合サンプルの波形データSとEscherichia coli K12の波形データD1、Salmonella enteritidis GTC 131の波形データD2、Vibrio chorelae GTC 37の波形データD3およびBacillus subtilis ATCC 6051の波形データD4とのノーマル相関係数NCおよびクリッピング相関係数CCの算出結果を示す。
【0271】
【表5】
Figure 0004020640
【0272】
表5に示すように、混合サンプルの波形データSとEscherichia coli K12の波形データD1とのノーマル相関係数NCおよびクリッピング相関係数CCならびに混合サンプルの波形データSとSalmonella enteritidis GTC 131の波形データD2とのノーマル相関係数NCおよびクリッピング相関係数CCは、混合サンプルの波形データSとVibrio chorelae GTC 37の波形データD3とのノーマル相関係数NCおよびクリッピング相関係数CCならびに混合サンプルの波形データSとBacillus subtilis ATCC 6051の波形データD4とのノーマル相関係数NCおよびクリッピング相関係数CCに比べて高くなっている。
【0273】
この結果から、混合サンプルには、Escherichia coli K12およびSalmonella enteritidis GTC 131が含まれていることがわかる。
【0274】
また、クリッピング相関係数CCはノーマル相関係数NCに比べて高くなっている。例えば、例えば、0.5のクリッピング相関係数CCを判定のしきい値とすることにより、混合サンプルに含まれている異なる種類の細菌の各々を高精度で識別することができる。
【0275】
[実施例3]
次に、実施例3においては、実施例1と同様の方法により6種類の細菌についてプライマーA87を用いてSSC−PCR法によりDNAの分析を行った。得られた結果に基づいて波形データを作成した。6種類の細菌の波形データを検索用の波形データとしてデータベースに登録した。さらに、データベースに登録された図27に示す6種類の細菌の波形データE1〜E6同士のノーマル相関係数およびクリッピング相関係数を求めた。
【0276】
図27には、Escherichia coli K12の波形データE1、Escherichia coli GTC 837 (EAggEC)の波形データE2、Escherichia coli GTC 1062 (ETEC)の波形データE3、Salmonella enteritidis GTC 131 の波形データE4、Vibrio chorelae GTC 37の波形データE5およびBacillus subtilis ATCC 6051の波形データE6が示される。ここで、Escherichia coli(大腸菌)の後のK12 、GTC 837およびGTC 1062は異なる株を表している。
【0277】
図28に上記の6種類の細菌の波形データE1〜E6同士のノーマル相関係数およびクリッピング相関係数の算出結果を示す。図28の横軸は、Escherichia coli K12 (E.coli K12)、Escherichia coli GTC 837 (E.coli GTC 837)、Escherichia coli GTC 1062 (E.coli GTC 1062)、Salmonella enteritidis GTC 131 (S.enteritidis GTC 131)、Vibrio chorelae GTC 37 (V.chorelae GTC 37)およびBacillus subtilis ATCC 6051 (B.subtilis ATCC 6051)であり、棒グラフは横軸の各細菌の波形データと6種類の細菌の波形データE1〜E6とのノーマル相関係数およびクリッピング相関係数を示す。例えば、黒で塗りつぶされた棒グラフは、Escherichia coli K12の波形データE1と6種類の細菌の波形データE1〜E6とのノーマル相関係数およびクリッピング相関係数を示す。
【0278】
同じ細菌の波形データ同士のノーマル相関係数およびクリッピング相関係数は、いずれも1.0となっている。
【0279】
また、Escherichia coliの異なる株の波形データ同士のクリッピング相関係数は0.5以上となっている。これに対して、Escherichia coliの各株の波形データとSalmonella enteritidis GTC 131、Vibrio chorelae GTC 37およびBacillus subtilis ATCC 6051の波形データとのノーマル相関係数およびクリッピング相関係数は低くなっている。したがって、大腸菌の各株を識別することができるとともに、大腸菌とサルモネラ菌、ビブリオ菌および枯草菌とを区別することができる。
【0280】
[実施例4]
次に、実施例4においては、実施例1と同様の方法によりEscherichia coli(大腸菌)の6種類の株についてプライマーA87を用いてSSC−PCR法によりDNAの分析を行った。得られた結果に基づいて波形データを作成した。6種類の株の波形データを検索用の波形データとしてデータベースに登録した。
【0281】
図29には、Escherichia coliの6種類の株JCM1649、IFO 3301 (K12)、BL21、GIFU 11097 (EIEC)、GTC 1062(ETEC) およびGTC 1059 (EHEC)の波形データを示す。
【0282】
また、図29に示すように、データベースに登録されたEscherichia coliの6種類の株の波形データを混合することによりEscherichia coliの6種類の株が混合された波形データを作成し、検索用の波形データとしてデータベースに登録した。
【0283】
さらに、データベースに登録されたEscherichia coliの6種類の株が混合された波形データとデータベースに登録されたEscherichia coliの6種類の株の各々の波形データとのノーマル相関係数NCおよびクリッピング相関係数CCを算出した。図29にノーマル相関係数NCおよびクリッピング相関係数CCの算出結果を示す。
【0284】
図29に示すように、Escherichia coliの6種類の株が混合された波形データとEscherichia coliの6種類の株の各々の波形データとのクリッピング相関係数CCはほぼ1となっている。したがって、同じ大腸菌の異なる複数の株を含むサンプルから個々の株を識別することができる。
【0285】
また、実施例1と同様の方法により図30に示すEscherichia coliの4種類の株のサンプルおよびShigellaの4種類のサンプルについてプライマーA87を用いてSSC−PCR法によりDNAの分析を行った。得られた結果に基づいて波形データを作成した。Escherichia coliの4種類の株の波形データおよびShigellaの4種類の株の波形データを検索用の波形データとしてデータベースに登録した。
【0286】
図30には、Escherichia coliの4種類の株JM109、GTC 837 (EAggEC)、IFO 3366およびIFO 13500の波形データおよびShigellaの4種類の血清boydii GTC 779、flexneri GTC 780、sonnei GTC 781およびdysenteriae GTC 786の波形データが示される。ここで、Shigellaの後のboydii、flexneri、 sonneiおよびdysenteriaeは種名を表し、GTC 779、GTC 780、GTC 781およびGTC 786は株を表す。
【0287】
さらに、データベースに登録された図29に示したEscherichia coliの6種類の株が混合された波形データと図30に示したEscherichia coliの4種類の株の波形データおよびShigellaの4種類の波形データとのノーマル相関係数NCおよびクリッピング相関係数CCを算出した。
【0288】
図30に、Escherichia coliの6種類の株が混合された波形データとEscherichia coliの4種類の株の波形データおよびShigellaの4種類の波形データとのノーマル相関係数NCおよびクリッピング相関係数CCの算出結果を示す。
【0289】
図30に示すように、Escherichia coliの6種類の株が混合された波形データとEscherichia coliの異なる4種類の株の各々の波形データとのクリッピング相関係数CCは1に近くなっている。したがって、データベースに登録された大腸菌の複数の株が混合された波形データを用いて同じ大腸菌の異なる株を検出することも可能である。
【0290】
また、Escherichia coliの6種類の株が混合された波形データとShigellaの4種類の各々の波形データとのクリッピング相関係数CCも1に近くなっている。したがって、データベースに登録された大腸菌の複数の株が混合された波形データを用いて生物学的に近縁関係にある赤痢菌を検出することも可能である。
【0291】
【配列表】
Figure 0004020640
Figure 0004020640
Figure 0004020640
Figure 0004020640
Figure 0004020640
Figure 0004020640
Figure 0004020640

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る微生物識別装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明に係る微生物識別方法の一例を示すフローチャートである。
【図3】図2の微生物識別方法に用いるSSC−PCR法の一例を示すフローチャートである。
【図4】図3のSSC−PCR法に用いるDNA断片増幅装置の例を示す模式図である。
【図5】SSC−PCR法における第1のサイクル中の過程を示す模式図である。
【図6】SSC−PCR法における第2のサイクルの1回目のサイクル中の過程を示す模式図である。
【図7】SSC−PCR法における第2のサイクルの2回目のサイクル中の過程を示す模式図である。
【図8】図2の微生物識別方法に用いる波形データの補正の工程を示すフローチャートである。
【図9】電気泳動像における背景むらの補正を示す模式図である。
【図10】異なるゲルを用いた電気泳動像の例を示す図である。
【図11】異なるゲルを用いた場合の泳動距離とDNAサイズとの変換式を説明するための図である。
【図12】電気泳動像の輝度分布を示す波形データの軸合わせを説明するための図である。
【図13】電気泳動像の輝度分布を示す波形データの軸合わせおよび濃度調整を説明するための図である。
【図14】図10の電気泳動像から生成された波形データを示す図である。
【図15】異なるプライマーを用いた電気泳動像の一例および連結された波形データの一例を示す図である。
【図16】データベースに登録された細菌ごとの波形データおよびデータベースから抽出されて連結された波形データの一例を示す図である。
【図17】サンプルから作成された波形データおよびデータベースから作成された波形データを示す図である。
【図18】図1の解析用コンピュータとして用いられるパーソナルコンピュータの構成を示すブロック図である。
【図19】細管型の電気泳動装置を用いた微生物識別装置のブロック図である。
【図20】図19の細管型の電気泳動装置により得られるセンサ出力波形の一例を示す図である。
【図21】データベースから作成された連結された波形データを示す図である。
【図22】サンプルから作成された連結された波形データを示す図である。
【図23】データベースから作成された波形データとサンプルから作成された波形データとの比較による相関係数の計算を説明するための図である。
【図24】実施例2における混合サンプルおよび4種類の細菌の波形データを示す図である。
【図25】混合サンプルの波形データとEscherichia coli K12の波形データとのクリッピング信号の算出方法を説明するための図である。
【図26】混合サンプルの波形データとSalmonella enteritidis GTC 131の波形データとのクリッピング信号の算出方法を説明するための図である。
【図27】実施例3における6種類の細菌の波形データを示す図である。
【図28】6種類の細菌同士のノーマル相関係数およびクリッピング相関係数の算出結果を示す図である。
【図29】実施例4における大腸菌の6種類の株の波形データおよびこれらの波形データが混合された波形データを示す図である。
【図30】大腸菌の4種類の株および赤痢菌の4種類の波形データを示す図である。
【符号の説明】
1 SSC−PCR増幅・解析装置
2 電気泳動イメージ入力部
3 解析用コンピュータ
4 データベース格納部
5 結果表示手段
11 DNA
12a,12b,12c,12d,12e 1本鎖
13a,13b,13c,13d,13e 2本鎖
21a,21b,21c プライマー
50 支持プレート
51,51a,51b 孔部

Claims (11)

  1. 識別対象となる微生物を識別する微生物識別方法であって、
    複数のプライマーを準備し、前記複数のプライマーの各々を用いて、識別対象となる微生物のDNAに対し、熱変成工程、プライマーのアニーリング工程およびポリメラーゼによる伸長反応工程をこの順序で繰り返し行うポリメラーゼ連鎖反応法を一度に適用することにより、前記識別対象となる微生物のDNAのDNA断片を増幅するステップと、
    前記複数のプライマーの各々を用いて増幅されたDNA断片に対して電気泳動法を適用し、各プライマーに対応する出力信号を得るステップと、
    前記出力信号に基づいて各プライマーに対応する波形データを求めるステップと、
    照合対象となる微生物についての複数のプライマーに対応する出力信号に関する情報が予め記憶されたデータベースを検索し、前記データベースに記憶された情報に基づいて前記照合対象となる微生物についての複数のプライマーに対応する波形データを求め、前記識別対象となる微生物について求められた前記波形データと前記照合対象となる微生物について求められた前記波形データとの相関関係を求めるステップと、
    前記相関関係に基づいて前記識別対象となる微生物を識別するステップとを備え、
    前記相関関係を求めるステップは、
    前記識別対象となる微生物について求められた前記波形データの各点における信号出力値および前記照合対象となる微生物について求められた前記波形データの対応する各点における信号出力値のうち低い方の信号出力値を選択することによりクリッピング信号CSを求めるステップと、
    前記クリッピング信号と前記照合対象となる微生物について求められた前記波形データとの相関係数CCを次式により算出するステップとを含み、
    Figure 0004020640
    式(2)において、CS は前記クリッピング信号CSのi番目の点における信号出力値、a は前記照合対象となる微生物の波形データのi番目の点における信号出力値であり、nは各波形データにおける点数であり、
    前記識別するステップは、前記相関係数CCに基づいて前記識別対象となる微生物が前記照合対象となる微生物であるか否かを判定するステップを含むことを特徴とする微生物識別方法。
  2. 前記出力信号に関する情報は、前記出力信号の強度を示す波形データであることを特徴とする請求項1記載の微生物識別方法。
  3. 前記出力信号に関する情報は、前記出力信号の強度におけるピークの位置およびピークの高さまたは面積を示すデータであり、
    前記相関関係を求めるステップは、前記出力信号の強度におけるピークの位置およびピークの高さまたは面積を示すデータに基づいて出力信号の強度を示す波形データを求めるステップを含むことを特徴とする請求項1記載の微生物識別方法。
  4. 前記相関関係を求めるステップは、前記出力信号の強度を示すデータに基づいて出力信号の強度を示す波形データを求めるステップを含むことを特徴とする請求項1記載の微生物識別方法。
  5. 既知の塩基配列を有する参照用プライマーを用いて、前記参照用プライマーの塩基配列に相補な塩基配列を有する参照用DNAに対し、前記ポリメラーゼ連鎖反応法を適用することにより、前記参照用DNAのDNA断片を増幅するステップと、
    前記参照用プライマーを用いて増幅された前記参照用DNAのDNA断片に対して電気泳動法を適用し、前記参照用DNAに対応する出力信号を得るステップと、
    前記参照用DNAに対応する出力信号に基づいて前記識別対象となる微生物に対応する出力信号を補正するステップとをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微生物識別方法。
  6. DNAサイズマーカの出力信号を得るステップと、
    前記出力信号に基づいてDNAサイズマーカに対応する出力信号の強度を示す波形データを求めるステップと、
    前記DNAサイズマーカに対応する波形データに基づいて前記識別対象となる微生物に対応する波形データを補正するステップとをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の微生物識別方法。
  7. 前記データベースには複数種類の微生物についての前記出力信号に関する情報が記憶されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の微生物識別方法。
  8. 前記相関関係を求めるステップは、前記識別対象となる微生物について求められた複数のプライマーに対応する前記波形データを連結し、かつ前記照合対象となる微生物について求められた複数のプライマーに対応する前記波形データを連結し、前記識別対象となる微生物についての連結された波形データと前記照合対象となる微生物についての連結された波形データとの相関関係を求めるステップを含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の微生物識別方法。
  9. 前記波形データを補正するステップは、前記DNAサイズマーカに対応する波形データに基づいて前記識別対象となる微生物に対応する波形データにおけるピークの位置を補正するステップを含むことを特徴とする請求項6記載の微生物識別方法。
  10. 識別対象となる微生物を識別する微生物識別装置であって、
    複数のプライマーの各々を用いて、識別対象となる微生物のDNAに対し、熱変成工程、プライマーのアニーリング工程およびポリメラーゼによる伸長反応工程をこの順序で繰り返し行うポリメラーゼ連鎖反応法を一度に適用することにより、前記識別対象となる微生物のDNAのDNA断片を増幅する増幅手段と、
    前記増幅手段により前記複数のプライマーの各々を用いて増幅されたDNA断片に対して電気泳動法を適用し、各プライマーに対応する電気泳動像を得る電気泳動手段と、
    前記電気泳動手段により得られた各プライマーに対応する前記電気泳動像を画像データに変換する画像データ変換手段と、
    前記画像データに基づいて各プライマーに対応する前記電気泳動像における輝
    度分布を示す波形データを求める波形データ生成手段と、
    照合対象となる微生物についての複数のプライマーに対応する電気泳動像に関する情報が予め記憶されたデータベースを検索し、前記データベースに記憶された情報に基づいて前記照合対象となる微生物についての複数のプライマーに対応する電気泳動像における輝度分布を示す波形データを求め、前記識別対象となる微生物について求められた前記波形データと前記照合対象となる微生物について求められた前記波形データとの相関関係を作成する相関関係作成手段と、
    前記相関関係作成手段により作成された相関関係に基づいて前記識別対象となる微生物を識別する識別手段とを備え
    前記相関関係作成手段は、
    前記識別対象となる微生物について求められた前記波形データの各点における信号出力値および前記照合対象となる微生物について求められた前記波形データの対応する各点における信号出力値のうち低い方の信号出力値を選択することによりクリッピング信号CSを求める手段と、
    前記クリッピング信号と前記照合対象となる微生物について求められた前記波形データとの相関係数CCを次式により算出する手段とを含み、
    Figure 0004020640
    式(2)において、CS は前記クリッピング信号CSのi番目の点における信号出力値、a は前記照合対象となる微生物の波形データのi番目の点における信号出力値であり、nは各波形データにおける点数であり、
    前記識別手段は、前記相関係数CCに基づいて前記識別対象となる微生物が前記照合対象となる微生物であるか否かを判定する手段を含むことを特徴とする微生物識別装置。
  11. 識別対象となる微生物を識別する微生物識別装置であって、
    複数のプライマーの各々を用いて、識別対象となる微生物のDNAに対し、熱変成工程、プライマーのアニーリング工程およびポリメラーゼによる伸長反応工程をこの順序で繰り返し行うポリメラーゼ連鎖反応法を一度に適用することにより、前記識別対象となる微生物のDNAのDNA断片を増幅する増幅手段と、
    前記増幅手段により前記複数のプライマーの各々を用いて増幅されたDNA断片に対して電気泳動法を適用し、各プライマーに対応する出力信号を得る電気泳動手段と、
    前記出力信号に基づいて各プライマーに対応する波形データを求める波形データ生成手段と、
    照合対象となる微生物についての複数のプライマーに対応する出力信号に関する情報が予め記憶されたデータベースを検索し、前記データベースに記憶された情報に基づいて前記照合対象となる微生物についての複数のプライマーに対応する波形データを求め、前記識別対象となる微生物について求められた前記波形データと前記照合対象となる微生物について求められた前記波形データとの相関関係を作成する相関関係作成手段と、
    前記相関関係作成手段により作成された相関関係に基づいて前記識別対象となる微生物を識別する識別手段とを備え
    前記相関関係作成手段は、
    前記識別対象となる微生物について求められた前記波形データの各点における信号出力値および前記照合対象となる微生物について求められた前記波形データの対応する各点における信号出力値のうち低い方の信号出力値を選択することによりクリッピング信号CSを求める手段と、
    前記クリッピング信号と前記照合対象となる微生物について求められた前記波形データとの相関係数CCを次式により算出する手段とを含み、
    Figure 0004020640
    式(2)において、CS は前記クリッピング信号CSのi番目の点における信号出力 値、a は前記照合対象となる微生物の波形データのi番目の点における信号出力値であり、nは各波形データにおける点数であり、
    前記識別手段は、前記相関係数CCに基づいて前記識別対象となる微生物が前記照合対象となる微生物であるか否かを判定する手段を含むことを特徴とする微生物識別装置。
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