JP4020299B2 - アイアンヘッド - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴルフ用のアイアンヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
コストを下げたり、製造を容易にしたり、重心位置を調節したり、スイートエリアを広げたり、飛距離を伸ばしたりのために、アイアンヘッドはその全体を一体で形成することは殆どなく、一般に、異種金属で形成された2個以上の部品を組み合わせて製造される。その製造には溶接等が使用される。例えば、特開平2001−293115号公報にその開示がある。ヘッド本体の正面側段部に、高価であるが高強度なニッケルベリリウム合金のフェースプレートをレーザー溶接にて接合したヘッド等が開示されている。溶接棒を使用するTIG溶接であれば、ヘッドに及ぼす熱変形が大きく、また、仕上げのための後加工も手数を要するが、レーザー溶接では、一般にそうした熱変形量や後加工の手数も少なくできる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
然しながら、レーザー溶接では、接合境界部において被溶接体間に0.2mm程の隙間があれば、レーザー光がその隙間を通過して裏面側の部位を溶融させる。特に、ヘッド本体の正面側に形成した段差部内にフェースプレートを挿入載置して溶接する場合は、製造精度上、フェースプレート周縁とヘッド本体段差壁との間に、部分的には0.2mm程度の隙間は生じ易い。こうした場合に、ヘッドの裏面側に溶融痕が残れば、裏面とはいえ外観上好ましくなく、商品価値を低下させてしまう。
また、ヘッドの正面側であるフェース面は打球面であるため、表面を滑らかに形成する必要があり、強度の観点から接合部をその周辺部に比べて肉盛り形成することはできない。従って、溶接技術が向上した今日においても、フェースプレート縁部とヘッド本体との溶接部は、一般にフェースプレー自体又はヘッド本体自体の強度よりは低強度である。従って、ヘッドに大きな負荷の作用する打球時に、こうした接合部にはゴルフボールが直接には当らないことが望ましい。
依って本発明は、フェースプレートを溶接した場合の耐久性向上と、ヘッドの熱変形量と溶接跡の後加工の手数を少なくすることを目的とする。
また、これに加えて外観の向上を図ることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み本発明の請求項1では、金属製ヘッド本体に金属製フェースプレートを溶接したアイアンヘッドにおいて、フェースプレートのヒール側縁部とヘッド本体との接合境界ラインはヘッド正面のヒール寄りの位置にあり、この部位はヘッドの上又は下から見た状態で凹形状であり、曲率の関係でゴルフボールが殆ど当ることのできない位置にあり、この接合境界ラインはレーザー溶接によって溶接されており、前記フェースプレートのヒール側縁部を受けるヘッド本体の受部の肉厚がフェースプレートの肉厚以上であると共に、該受部の裏面側にはキャビティが存在することを特徴とするアイアンヘッドを提供する。
【0005】
ヘッドの正面部(フェース面)のヒール寄りの部位は、一般に上又は下から見た状態で凹形状に形成されており、ここの曲率がゴルフボール外郭形状の曲率よりも大きければ、打球時にここにはゴルフボールが殆ど当らない。このため、ヘッド本体にフェースプレートを溶接する場合、ここに接合境界ラインを位置させれば、ボールが殆ど当らないで済み、耐久性が向上する。TIG溶接の場合では溶接ビードを大きく研磨する仕上げ加工を要するが、このように大きな曲率の凹部は一般に機械加工が困難である。このため、仕上げ加工の少ないレーザー溶接によれば困難な後加工の手数を低減できる他、ヘッドの熱変形量を小さくでき、高品質なアイアンヘッドが提供できる。
フェースプレートのヒール側縁部とヘッド本体との接合境界部においては一般に隙間が存在し得るので、レーザー溶接によりヘッド本体の受部の肉厚をフェースプレートの肉厚以上に厚くし、これにより隙間から照射されたレーザー光による溶融の影響が裏面側に至ることを防止でき、外観向上に寄与する。特に、裏面側に凹部が形成されていて、この凹部の形状や寸法によっては機械的な仕上げ加工の困難な場合があるが、こうした場合に、特に好都合である。
【0006
請求項2では、前記フェースプレート周縁とヘッド本体との接合境界ラインは、フェースプレートのヒール側縁部とヘッド本体との接合境界ラインを除き、ヘッドの正面ではなく外周部にある請求項1記載のアイアンヘッドを提供する。
接合のやむを得ない部位、即ち、フェースプレートのヒール側縁部とヘッド本体との接合境界部、以外を、ヘッドの外周部に設けることでここには打球時のボールが当らず、溶接形成されたヘッドの耐久性を可及的に向上させることができる。
【0007】
また、レーザー溶接の種類を、YAGレーザー溶接とすれば、溶け込み部の断面輪郭形状が平行状態となり、フェースプレートに対する熱の影響が、プレートの肉厚の半分のライン(面)に対して対称となるため、プレートが熱変形し難い。また、ロボットの利用範囲が広く、プレートの全周をレーザー溶接するのに好都合である。
COレーザー溶接とすれば、溶け込み部の断面輪郭形状が先細り状態となるため、仮に、上述の受部の裏面側にまで溶融痕が到達したとしても、YAGレーザーの場合よりは外観上見え難くなり、好都合である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態例に基づき、更に詳細に説明する。
図1は本発明に係るアイアンヘッドの正面図であり、図2は矢視線B−Bによる横断面図、図3は矢視線C−Cによる横断面図であり、フェース面に垂直な面で切断した図である。このヘッドは、例えば、チタン又はチタン合金、鉄系金属等の金属材料の鋳造によるヘッド本体10と、ヘッド本体10と異なる金属の、例えば高強度圧延材からなる板状のフェースプレート12とをレーザー溶接して一体化している。ヘッド本体は、この例ではホーゼル部10Kを一体的に有しており、このホーゼル部の根元部付近であって、フェース面Fのヒール部10H寄りの位置において上下方向の境界ラインLHを有するように、フェース面よりも所定量低い段差部が形成されている。
【0009】
その段差の落差はフェースプレート12の肉厚δに一致させており、その段差部の周縁部にはフェースプレートの周縁部を載置させるヒール側受部10U等の受部が形成されている。このヘッド本体とフェースプレートとをレーザー溶接してアイアンヘッドを形成している。その接合境界ラインは、フェースプレートのヒール側縁ではフェース面側に露出しているが、他の接合境界ラインはアイアンヘッドの外周部に位置している。即ち、トップ部10T側はラインLT、ソール部10S側はラインLS、トウ部10TU側はLTUとして図示している。
【0010】
このように接合境界ラインを可及的にフェース面側に露出させず、しかも、フェース面側に位置しているラインLHは、後述の如くボールGBが殆ど当らないため、打撃時の衝撃によっても接合部の破損が防止できる。然しながら、本発明では、フェースプレートの他の周縁の接合ラインがフェース面側に露出していてもよい。
【0011】
図3に示すように、ホーゼル部の根元部付近のヒール部10Hと、ヘッド本体のその他の部分とは、上面視において概ねへの字状に曲がっており、その曲り部ZNの曲率は、ゴルフボールGBの外郭形状の曲率よりも大きく、この部位ZNには通常はボールが当らない。しかし、特殊な場合として、ボールがヘッドの上縁や下縁に当る場合には部位ZNに当り得る。
【0012】
レーザー溶接を行った際に、特にヘッド本体とフェースプレートとの隙間の存在によって、受部に溶融痕が達し、その裏面側に溶融痕が到達すると外観上好ましくない。そこで、受部10Uの肉厚Δはフェースプレートの肉厚δ以上とする。ヘッドは通常のヘッドと同様に、裏面側にバックキャビティBKを設けている。上記受部10Uの裏面側にもキャビティBK’が存在すれば、仮に溶融痕が受部裏面にまで至っていても、視認し難く、外観向上に役立つ。しかし、このキャビティBK’が存在して受部の裏面側を仕上げ研磨し難い場合、外観をより良くするには受部の裏面側にまで溶融痕を至らしめないことが重要である。
【0013】
前述の高強度圧延材の例としては、Ti−15Mo−5Zr−3Al,Ti−15V−3Cr−3Sn−3Al等のβ型チタン合金圧延材、SP700(Ti−4.5Al−3V−2Fe−2Mo)等のα−β型チタン合金圧延材、18Ni−12Co−4.5Mo−1.5Ti−Fe,18Ni−9Co−5Mo−Fe,11Ni−13.5Mo−3Cr−0.2C−Fe,7Ni−12Cr−4Si−0.02C−Fe等の鉄系高強度圧延材等がある。
【0014】
これらの高強度圧延材によるフェースプレートでは、溶接の熱影響が小さく、弾性率が上昇し難い。また、伸びや強度が小さくなり難い。従って、フェース部が撓み易く、変形に強く、高反発性を有してボールの飛距離がでると共に、強度が強い。
【0015】
また、フェースプレートをヘッド本体に接合させた従来のヘッドにおいて、一般にフェースプレートの後ろ側にあるヘッド本体開口部のヒール側は開口幅が小さいため、トウ側と比べてヒール側の反発性は低い。しかし、接合をレーザー溶接とすることで、溶接熱の接合境界部以外の他部への影響は、他の溶接手法等と比較して小さくでき、その意味でヘッドの形状安定や強度の安定が得られ、また、直接ゴルフボールが当らない為にヒール側受部10Uを小さくできる。その結果、受部10Uの幅寸法Lを4mm以下と小さく形成できる。これにより、フェースプレート周縁部を拘束する部位の大きさ(幅)が小さくなり、これによりヒール側の反発性が向上する。また、ヒール側のスイートエリアが拡大する。
【0016】
また、接合をレーザー溶接とすることで、溶接熱の接合境界部以外の他部への影響は、他の溶接手法等と比較して小さくでき、その意味でヘッドの形状安定や強度の安定が得られ、フェースプレートの肉厚を薄くできる。その結果、反発性が向上する。具体的には、1.5〜2.8mmの肉厚δとすることができる。更には、ヘッド重量を一定とすれば、フェースプレートを薄くできることで、その軽量化に寄与する分をヘッドの周辺部に分散させてスイートエリアを拡大できる。
【0017】
図4はレーザー溶接をCOレーザー方式とした場合の溶け込み部YKを模式的に図示したものである。図示の如く、溶け込み部の断面輪郭形状が先細り状態となるため、仮に受部の裏面側にまで溶融痕が到達したとしても、下記のYAGレーザーの場合よりは外観上見え難くなり、好都合である。
図5はレーザー溶接の種類をYAGレーザー方式とした場合であり、溶け込み部YK’の断面輪郭形状が平行状態となり、フェースプレートに対する熱の影響が、プレートの肉厚中央ライン(面)に対して対称となるため、プレートが熱変形し難い。また、ロボットの利用範囲が広く、プレートの全周をレーザー溶接するのに好都合である。
【0018】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明によれば、フェースプレートを溶接した場合の耐久性向上と、ヘッドの熱変形量と溶接跡の後加工の手数を少なくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明に係るアイアンヘッドの正面図である。
【図2】 図2は図1の矢視線B−Bによる横断面図である。
【図3】 図3は図1の矢視線C−Cによる横断面図である。
【図4】 図4はCOレーザー溶接による場合の説明図である。
【図5】 図5はYAGレーザー溶接による場合の説明図である。
【符号の説明】
10 ヘッド本体
10U ヒール側受部
12 フェースプレート
F フェース面
LH ヒール側接合境界ライン

Claims (2)

  1. 金属製ヘッド本体に金属製フェースプレートを溶接したアイアンヘッドにおいて、フェースプレートのヒール側縁部とヘッド本体との接合境界ラインはヘッド正面のヒール寄りの位置にあり、この部位はヘッドの上又は下から見た状態で凹形状であり、曲率の関係でゴルフボールが殆ど当ることのできない位置にあり、この接合境界ラインはレーザー溶接によって溶接されており、
    前記フェースプレートのヒール側縁部を受けるヘッド本体の受部の肉厚がフェースプレートの肉厚以上であると共に、該受部の裏面側にはキャビティが存在する
    ことを特徴とするアイアンヘッド。
  2. 前記フェースプレート周縁とヘッド本体との接合境界ラインは、フェースプレートのヒール側縁部とヘッド本体との接合境界ラインを除き、ヘッドの正面ではなく外周部にある請求項1記載のアイアンヘッド。
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