JP4019706B2 - 発酵法による目的物質の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発酵工業に関し、詳しくは微生物を利用した発酵法によりL−アミノ酸等の目的物質を効率よく製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エシェリヒア・コリは、増殖期から定常期に移行する際にタンパク翻訳活性が低下する。この現象は、細胞内リボゾームの2量体化に起因するものと考えられており、リボゾーム2量体化に関与するタンパク質として、55アミノ酸残基からなる分子量6.5kDaの小型のタンパク質であるRMFタンパク質が見出されている(Wada et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.87, 2657-2661, 1990)。
【0003】
RMFタンパク質をコードするrmf遺伝子は、エシェリヒア・コリ染色体の21.8分の位置に存在することが確認された。rmf遺伝子の発現は、細胞が高速度で増殖している対数増殖期には抑制されており、定常期へ移行する際や、低増殖速度のときにその発現が誘導されること、及び、本遺伝子の発現制御は、定常期特異的な遺伝子発現を司ることが知られているσS因子によるものではないことが明らかとなっている(Yamagishi et.al., The EMBO Journal., Vol.12, 625-630, 1993)。また、rmf遺伝子を破壊することによって、表現形としてリボソーム2量体が定常期においても観察されなくなること、及び、定常期の生存率が低下することが、これまでに報告されている(Yamagishi et al., The EMBO Journal, Vol.12, 625-630, 1993)。さらに、本遺伝子を過剰発現させた株は、生育不能となることが報告されており(Wada et al., Biochem. Biophys. Res. Comm., Vol.214, 410-417, 1995)、本遺伝子がエシェリヒア・コリの増殖や定常期の生存に関与する因子であることが強く示唆されている。
【0004】
しかしながら、rmf遺伝子に関して、低増殖速度の条件下における生育の向上や、物質生産性の向上に関する報告はこれまでのところ存在しない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、エシェリヒア属細菌を用いて発酵法により有用物質を生産するに際し、生産効率又は生産速度を向上させることを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、定常期に発現される普遍的な因子を見出し、その遺伝子を改変することで、エシェリヒア属細菌による物質生産を改善させ得ることを見出した。すなわち、DNAアレイ法(H. Tao, C. Bausch, C. Richmond, F. R. Blattner, T. Conway (1999) Journal of Bacteriology, 181, 6425-6440)による遺伝子発現解析技術を効果的に用いることにより、エシェリヒア・コリにおいて定常期に著しい発現の上昇が認められる遺伝子として、rmf遺伝子を同定した。そして、rmf遺伝子を破壊することによって、定常期の生育が向上し、目的物質の生産能が改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
【0007】
(1)エシェリヒア属細菌を培地に培養し、該培地又は菌体中に目的物質を生成蓄積させ、該目的物質を採取する、微生物を利用した目的物質の製造法において、前記エシェリヒア属細菌は細胞内でRMFタンパク質が正常に機能しないことを特徴とする目的物質の製造法。
(2)前記エシェリヒア属細菌は、染色体上のrmf遺伝子が破壊されたことにより、RMFタンパク質が正常に機能しないことを特徴とする(1)の方法。
(3)前記エシェリヒア属細菌はエシェリヒア・コリである(1)又は(2)の方法。
(4)前記目的物質がL−アミノ酸又はタンパク質である(1)〜(3)のいずれかの方法。
(5)L−アミノ酸がL−リジンである(4)の方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いるエシェリヒア属細菌としては、エシェリヒア属に属する微生物であって、目的物質を生産する能力を有するものであれば、特に制限されない。具体的には、例えばナイトハルトらの著書(Neidhardt, F.C. et al., Escherichia coli and Salmonella Typhimurium, American Society for Microbiology, Washington D.C., 1208, table 1)に挙げられるものが利用できる。さらに具体的には、エシェリヒア・コリが挙げられる。
【0009】
本発明により製造される目的物質としては、エシェリヒア属細菌によって生産され得るものであれば特に制限されない。例えば、L−リジン、L−スレオニン、L−ホモセリン、L−グルタミン酸、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−フェニルアラニン等の種々のL−アミノ酸、タンパク質(ペプチドを含む)、グアニン、イノシン、グアニル酸、イノシン酸等の核酸類、ビタミン類、抗生物質、成長因子、生理活性物質など、従来よりエシェリヒア属細菌により生産されてきたものが挙げられる。また、今までエシェリヒア属細菌によって生産されていないものであっても、本発明を適用することができる。
【0010】
L−リジン生産性のエシェリヒア属細菌としては、L−リジンアナログに耐性を有する変異株が例示できる。このL−リジンアナログは、エシェリヒア属細菌の増殖を阻害するようなものであるが、その抑制はL−リジンが培地中に共存すれば、全体的または部分的に解除されるようなものである。例えば、オキサリジン、リジンハイドロキサメート、S−(2−アミノエチル)−L−システイン(AEC)、γ−メチルリジン、α−クロロカプロラクタム等がある。これらのリジンアナログに耐性を有する変異株は、通常の人工変異操作をエシェリヒア属の微生物に施すことにより得られる。L−リジン製造に用いる菌株として、具体的には、エシェリヒア・コリAJ11442(FERM BP-1543、NRRL B-12185;特開昭56-18596号及び米国特許第4346170号参照)、エシェリヒア・コリ VL611が挙げられる。これらの微生物のアスパルトキナーゼは、L−リジンによるフィードバック阻害が解除されている。
【0011】
その他にも、たとえば後述のL−スレオニン生産菌が挙げられる。L−スレオニン生産菌も、一般的にはそのアスパルトキナーゼのL−リジンによる阻害が解除されているからである。
【0012】
後記実施例においては、エシェリヒア・コリのL−リジン生産菌として、WC196株を用いた。本菌株は、エシェリヒア・コリK-12由来のW3110株にAEC耐性を付与することによって育種されたものである。同株は、エシェリヒア・コリAJ13069株と命名され、平成6年12月6日付で工業技術院生命工学工業技術研究所(現 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM P-14690として寄託され、平成7年9月29日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-5252が付与されている(WO96/17930号国際公開パンフレット参照)。
【0013】
L−スレオニン生産性のエシェリヒア属細菌としては、エシェリヒア・コリ VKPM B-3996(RIA 1867)(米国特許第5,175,107号参照)、MG442株(Gusyatiner et al., Genetika(in Russian), 14, 947-956 (1978)参照)等が挙げられる。
【0014】
L−ホモセリン生産性のエシェリヒア属細菌としては、C600株(Appleyard R.K., Genetics, 39, 440-452 (1954)参照)のLeu+復帰変異株であるNZ10株が挙げられる。
【0015】
L−グルタミン酸生産性のエシェリヒア属細菌としては、AJ12624株(FERM BP-3853)(フランス特許出願公開第2,680,178号参照)、L−バリン耐性株、例えば、エシェリヒア・コリB11、エシェリヒア・コリK-12(ATCC10798)、エシェリヒア・コリB(ATCC11303)、エシェリヒア・コリW(ATCC9637)が挙げられる。
【0016】
L−ロイシン生産性のエシェリヒア属細菌としては、β−2−チエニルアラニン耐性を有する菌株、β−2−チエニルアラニン耐性及びβ−ヒドロキシロイシン耐性を有する菌株(以上、特公昭62-34397号公報)、4−アザロイシン耐性又は5,5,5−トリフルオロロイシン耐性を有する菌株(特開平8-70879号公報)が挙げられる。具体的には、AJ11478株(FERM P-5274)(特公昭 62-34397号参照)が挙げられる。
【0017】
L−イソロイシン生産性のエシェリヒア属細菌としては、エシェリヒア・コリKX141(VKPM B-4781)(欧州特許出願公開第519,113号参照)が挙げられる。
L−バリン生産性のエシェリヒア属細菌としては、エシェリヒア・コリ VL1970(VKPM B-4411)(欧州特許出願公開第519,113号参照)が挙げられる。
L−フェニルアラニン生産菌としては、エシェリヒア・コリ AJ12604(FERM BP-3579)(欧州特許出願公開第 488,424号参照)が挙げられる。
【0018】
また、L−アミノ酸生産能を有するエシェリヒア属細菌は、L−アミノ酸の生合成に関与する遺伝情報を担うDNAを遺伝子組換え技術により導入、増強することによっても、育種することができる。例えば、L−リジン生産菌においては、導入される遺伝子は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アスパルトキナーゼ、ジヒドロジピコリン酸合成酵素、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ、スクシニルジアミノピメリン酸トランスアミナーゼ、スクシニルジアミノピメリン酸デアシラーゼ等、L−リジンの生合成経路上の酵素をコードする遺伝子である。ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、又はアスパルトキナーゼ及びジヒドロジピコリン酸合成酵素のようにL−アスパラギン酸、又はL−リジンによるフィードバック阻害を受ける酵素遺伝子の場合には、かかる阻害が解除された酵素をコードする変異型遺伝子を用いることが望ましい。
【0019】
また、L−グルタミン酸生産菌においては、導入される遺伝子としては、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、グルタミンシンテターゼ、グルタミン酸シンターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニット酸ヒドラターゼ、クエン酸シンターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ホスホエノールピルビン酸シンターゼ、エノラーゼ、ホスホグリセロムターゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、フルトースビスリン酸アルドラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ等がある。
【0020】
L−バリン生産菌においては、導入される遺伝子としては、例えばilvGMEDAオペロン、好ましくはスレオニンデアミナーゼ活性を発現せず、アテニュエーションが解除されたilvGMEDAオペロンが挙げられる(特開平8-47397号公報参照)。
【0021】
さらに、目的とするL−アミノ酸の生合成経路から分岐して他の化合物を生成する反応を触媒する酵素の活性が低下または欠損していてもよい。例えば、L−リジンの生合成経路から分岐してL−リジン以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素としては、ホモセリンデヒドロゲナーゼがある(WO95/23864号国際公開パンフレット参照)。また、L−グルタミン酸の生合成経路から分岐してL−グルタミン酸以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素としては、αケトグルタール酸デヒドロゲナーゼ、イソクエン酸リアーゼ、リン酸アセチルトランスフェラーゼ、酢酸キナーゼ、アセトヒドロキシ酸シンターゼ、アセト乳酸シンターゼ、ギ酸アセチルトランスフェラーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、1−ピロリンデヒドロゲナーゼ等がある。
【0022】
また、核酸類を産生する能力を有するエシェリヒア属細菌は、例えば、WO99/03988号国際公開パンフレットに詳しい。より具体的には、同パンフレット記載のエシェリヒア・コリFADRaddG-8-3::KQ株(purFKQ,purA−,deoD−,purR−,add−,gsk−)が挙げられる。同株は、イノシン及びグアノシンを生産する能力を有している。この株は、326位のリジン残基がグルタミン残基に置換され、AMP及びGMPによるフィードバック阻害が解除されたPRPPアミドトランスフェラーゼをコードする変異型purFを保持し、サクシニル−AMPシンターゼ遺伝子(purA)、プリンヌクレオシド・フォスフォリラーゼ遺伝子(deoD)、プリン・リプレッサー遺伝子(purR)、アデノシン・デアミナーゼ遺伝子(add)、イノシン−グアノシン・キナーゼ遺伝子(gsk)が破壊されている。同株には、プライベート・ナンバーAJ13334が付与され、1997年6月24日付けで通産省工業技術院生命工学工業技術研究所(現 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、ブタペスト条約に基づいて国際寄託され、受託番号として、FERM BP-5993が付与されている。
【0023】
また、本発明が適用されるタンパク質としては、遺伝子工学的手法によって産生され得るタンパク質であれば特に制限されないが、具体的には酸性フォスファターゼが挙げられる。酸性フォスファターゼを産生するエシェリヒア属細菌としては、後述するモルガネラ・モルガニ NCIMB 10466由来の酸性フォスファターゼ遺伝子を含むプラスミドpMPI501もしくはpMPI505(特開平9-37785号公報、米国特許第6,010,851号)、又は前記遺伝子において92位のグリシン残基がアスパラギン酸残基に、171位のイソロイシン残基がスレオニン残基にそれぞれ置換された変異型酸性フォスファターゼをコードする遺伝子を含むプラスミドpMPI700(Applied and Environmental Microbiology, July 2000, p.2811‐2816 Vol. 66, No. 7)等を保持するエシェリヒア属細菌が挙げられる。また、エシェリヒア・ブラッタエ JCM1650、プロビデンシア・スチュアルティ ATCC29851、エンテロバクター・アエロゲネス IFO12010、クレブシエラ・プランティコラ IFO14939及びセラチア・フィカリア IAM13540等の微生物に由来する酸性フォスファターゼをコードする遺伝子を保持するエシェリヒア属細菌(特開平9-37785号公報、米国特許第6,010,851号)も、好適に使用することができる。
【0024】
その他、他のL−アミノ酸、タンパク質(ペプチドを含む)、核酸類、又はビタミン類、抗生物質、成長因子、生理活性物質等の有用物質を産生する能力を有するエシェリヒア属細菌であっても、本発明に用いることができる。
【0025】
上記のような目的物質産生能を有するエシェリヒア属細菌の育種において、エシェリヒア属細菌に遺伝子を導入、増強するには、エシェリヒア属細菌細胞内で自律複製可能なベクターに遺伝子を連結して組換えDNAを作製し、それでエシェリヒア・コリを形質転換する方法がある。その他にトランスダクション、トランスポゾン(Berg,D.E.and Berg,C.M., Bio/Technol.1,417,(1983))、Muファージ、(特開平2-109985号)または相同組換え(Experiments in Molecular Genetics,Cold Spring Harbor Lab.(1972))を用いた方法で宿主染色体に目的遺伝子を組み込むこともできる。
【0026】
本発明に用いるエシェリヒア属細菌は、上記のような目的物質を産生する能力を有し、かつ、細胞内でRMFタンパク質が正常に機能しない細菌である。「RMFタンパク質が正常に機能しない」とは、rmf遺伝子の転写又は翻訳が妨げられ、同遺伝子産物であるRMFタンパク質が産生されないか、あるいは産生が低下した状態であってもよいし、産生されるRMFタンパク質に変異が起こり、RMFタンパク質の本来の機能が低下又は消失した状態であってもよい。RMFタンパク質が正常に機能しないエシェリヒア属細菌として、典型的には、染色体上のrmf遺伝子が遺伝子組換え技術により破壊された遺伝子破壊株、及び、染色体上のrmf遺伝子の発現調節配列又はコード領域に変異が生じたことにより、機能を有するRMFタンパク質が産生されないようになった変異株が挙げられる。
【0027】
以下に、染色体上のrmf遺伝子を遺伝子組換え技術により破壊する方法の一例を説明する。rmf遺伝子の一部を欠失し、正常に機能するRMFを産生しないように改変したrmf遺伝子(欠失型rmf遺伝子)を含むDNAでエシェリヒア属細菌を形質転換し、欠失型rmf遺伝子と染色体上のrmf遺伝子との間で組換えを起こさせることにより、染色体上のrmf遺伝子を破壊することができる。このような相同組換えによる遺伝子破壊は既に確立しており、直鎖DNAを用いる方法や温度感受性複製制御領域を含むプラスミドを用いる方法などがあるが、温度感受性複製制御領域を含むプラスミドを用いる方法が確実性の点から好ましい。
【0028】
欠失型rmf遺伝子を、宿主染色体上のrmf遺伝子と置換するには以下のようにすればよい。すなわち、温度感受性複製制御領域と変異型rmf遺伝子とアンピリン等の薬剤に耐性を示すマーカー遺伝子とを挿入して組換えDNAを調製し、この組換えDNAでエシェリヒア属細菌を形質転換し、温度感受性複製制御領域が機能しない温度で形質転換株を培養し、続いてこれを薬剤を含む培地で培養することにより、組換えDNAが染色体DNAに組み込まれた形質転換株が得られる。
【0029】
こうして染色体に組換えDNAが組み込まれた株は、染色体上にもともと存在するrmf遺伝子配列との組換えを起こし、染色体rmf遺伝子と欠失型rmf遺伝子との融合遺伝子2個が組換えDNAの他の部分(ベクター部分、温度感受性複製制御領域及び薬剤耐性マーカー)を挟んだ状態で染色体に挿入されている。したがって、この状態では正常なrmf遺伝子が優性であるので、形質転換株は正常なRMFタンパク質を発現する。
【0030】
次に、染色体DNA上に欠失型rmf遺伝子のみを残すために、2個のrmf遺伝子の組換えにより1コピーのrmf遺伝子を、ベクター部分(温度感受性複製制御領域及び薬剤耐性マーカーを含む)とともに染色体DNAから脱落させる。その際、正常なrmf遺伝子が染色体DNA上に残され、欠失型rmf遺伝子が切り出される場合と、反対に欠失型rmf遺伝子が染色体DNA上に残され、正常なrmf遺伝子が切り出される場合がある。いずれの場合も、温度感受性複製制御領域が機能する温度で培養すれば、切り出されたDNAはプラスミド状で細胞内に保持される。一方、温度感受性複製制御領域が機能しない温度で培養すると、欠失型rmf遺伝子が染色体DNA上に残された場合は、正常なrmf遺伝子を含むプラスミドが細胞から脱落する。したがって、コロニーPCR等により細胞中のrmf遺伝子の構造を確認することによって、染色体DNA上に欠失型rmf遺伝子を保持し、正常なrmf遺伝子が細胞から脱落した株を得ることができる。
【0031】
エシェリヒア属細菌細胞内で機能する温度感受性複製制御領域を有するプラスミドとしては、後記実施例で用いたpMAN997(WO99/03988号国際公開パンフレット参照)が挙げられる。
【0032】
DNAの切断及び連結、形質転換、形質転換株からの組換えDNAの抽出、及びPCR等の一般的な遺伝子組換えに用いられる技術は、当業者によく知られた書籍、例えばモレキュラー・クローニング(Sambrook, J., Fritsch, E.F., Maniatis,T., Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))等に詳述されている。
【0033】
また、機能を有するRMFタンパク質が産生されないようになった変異株は、エシェリヒア属細菌を紫外線照射またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常変異処理に用いられている変異剤によって処理することによって、取得することができる。
【0034】
上記のようにして得られる、目的物質生産能を有し、かつ、細胞内でRMFタンパク質が正常に機能しないエシェリヒア属細菌を培地に培養し、該培地又は菌体中に目的物質を生成蓄積させ、該目的物質を採取することにより、目的物質を製造することができる。本発明においては、上記の性質を有するエシェリヒア属細菌を用いることにより、目的物質の生産速度又は生産効率を向上させることができる。これは、rmf遺伝子に関するエシェリヒア属細菌野生株は、培養の定常期にrmf遺伝子が発現し、タンパク翻訳活性が低下するのに対し、正常なRMFタンパク質が正常に機能しない株では、タンパク翻訳活性の低下が防止又は低減されるためであると推定される。
【0035】
本発明においてエシェリヒア属細菌の培養に使用する培地は、使用する菌株又は目的物質の種類に応じて、従来より用いられてきた周知の培地を用いてかまわない。つまり、炭素源、窒素源、無機イオン及び必要に応じその他の有機成分を含有する通常の培地である。本発明を実施するための特別な培地は特に必要とされない。
【0036】
炭素源としては、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フラクトースやでんぷんの加水分解物などの糖類、グリセロールやソルビトールなどのアルコール類、フマール酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸類等を用いることができる。
【0037】
窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。
【0038】
有機微量栄養源としては、ビタミンB1、L−ホモセリン、L−チロシンなどの要求物質または酵母エキス等を適量含有させることが望ましい。これらの他に、必要に応じて、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。
【0039】
培養は、使用する菌株に応じて従来より用いられてきた周知の条件で行ってかまわない。例えば、好気的条件下で16〜120時間培養を実施するのがよく、培養温度は25℃〜45℃に、培養中pHは5〜8に制御する。尚、pH調整には無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、更にアンモニアガス等を使用することができる。
【0040】
培養終了後の培地又は菌体からの目的物質の採取は、本願発明において特別な方法が必要とされることはない。すなわち、目的物質の採取は、従来より周知となっているイオン交換樹脂法、沈澱法その他の方法を、目的物質の種類に応じて組み合わせることにより実施できる。また、菌体中に蓄積した目的物質の採取は、菌体を物理的又は酵素的に破壊し、目的物質に応じて菌体抽出液又は膜画分から採取することができる。尚、目的物質によっては、目的物質を菌体中に存在したままの状態で、微生物触媒等として利用することもできる。
【0041】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【0042】
【実施例1】
エシェリヒア・コリ菌体からの全RNAの抽出とDNAマクロアレイによる解析
エシェリヒア・コリ野生株W3110株を、1L容小型ジャーファーメンターを用いて、MS培地(グルコース20g/L、KH2PO4 1g/L、MgSO4 1g/L、酵母エキス2g/L、(NH3)2SO4)16g/Lを含む培地300ml中で、37℃で培養した。培養は、150ml/分の流量で通気を行い、溶存酸素濃度が5%以上になる様に攪拌数を制御しながら行った。また、培地のpHは6.8で一定になるようにアンモニア水をフィードすることにより調整し、培地のグルコースが枯渇した後は、グルコース500g/L溶液を培養液中のグルコース濃度が0.1〜10 g/Lの範囲になるようにフィードした。
【0043】
一方、W3110株を、E-100培地(20 mM NH4Cl、2 mM MgSO4、40 mM NaHPO4、30 mM KH2PO4、0.01 mM CaCl2、0.01 mM FeSO4、0.01 mM MnSO4、5 mM クエン酸、50 mMグルコース、2 mMチアミン塩酸塩、2.5g/L カザミノ酸(Difco社製)、250 mM MES-NaOH(pH6.8))を含む培地50mlを入れた500ml容坂口フラスコを用いて、37℃、120 rpmで往復振とう培養した。
【0044】
エシェリヒア・コリ菌体から全RNAを抽出するため、増殖曲線が対数増殖期、及び定常期に、ジャーファーメンターからは約1ml、フラスコからは約10mlの培養液を、それぞれサンプリングした。サンプリングした培養液は直ちに氷上にて冷却した後、冷却遠心機にて10,000g、2分間遠心分離を行い、培養液上清を除去した。回収した菌体から、QIAGEN社のRNeasy kitを用い、添付のプロトコールによって全RNAを回収した。得られた全RNAは、アガロースゲル電気泳動にて、分解されることなく回収されていることを確認し、260nmの吸光度を測定することにより、RNA濃度を定量した。得られた全RNAは、-80℃にて密閉保存し、DNAマクロアレイを用いた遺伝子発現解析に供した。
【0045】
得られた20μgの全RNAを鋳型とし、dATP、dGTP、及びdTTPを各1mM、及び9.25 MBqの[α-32P]dCTPを基質として用い、Promega社のReverse Transcription Kitを用いて逆転写反応を行い、対数増殖期及び定常期のラベルされたcDNAを得た。
【0046】
得られたcDNAをプローブとして、Sigma-Genosys社のPanorama E. coli Gene Arraysマクロアレイメンブレンを用いて、プロトコールに従ってハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション終了後、メンブレンを洗浄した。洗浄後のメンブレンを密閉し、富士フィルム社製イメージングプレートに48時間、密着させ、感光させた。感光させたイメージングプレートを、富士フィルム社製フルオロイメージングアナライザーFLA-3000Gにより読み取った。得られた読取り画像を、DNAアレイ画像解析システムAIS(イメージングリサーチ社製)を用いて、各スポットの濃度を定量し、発現比率として換算することで、対数増殖期及び定常期の遺伝子発現プロファイルのデータを取得した。
【0047】
得られたDNAアレイデータより、対数増殖期には発現レベルが低いが、定常期には発現レベルが上昇するような遺伝子群を、エシェリヒア・コリ全遺伝子の中から選択した。対数増殖期の発現比率に対する定常期の発現比率の比を、ジャーファーメンター及びフラスコ培養から得られたそれぞれについて算出した。それぞれの培養における発現比率の増加割合を掛け合せた値が高いものから上位20個を抽出した。この中で、機能既知の遺伝子の中でその数値の最も高いものとしてrmf遺伝子を抽出した。増殖速度とrmf遺伝子の発現比率の変化を表1に示した。ジャーファーメンター及びフラスコ培養いずれにおいても、定常期に著しい発現の上昇が認められる遺伝子であることが明らかとなった。
【0048】
【表1】
【0049】
【実施例2】
エシェリヒア・コリのrmf遺伝子の破壊とL−リジン生産への効果
エシェリヒア・コリのrmf遺伝子の破壊は、クロスオーバーPCR(Link, A.J., Phillips, D., Church, G.M., J. Bacteriol., Vol.179. 6228-6237, 1997参照)によって行った。
【0050】
rmf遺伝子のN末端のコード領域約600bp及びその上流域を含む約1kbpの領域を増幅するプライマーとして配列番号1及び2に示すオリゴヌクレオチド(プライマー1、2)、rmf遺伝子のC末端のコード領域約600bp及びその下流域を含む約1kbpの領域を増幅するプライマーとして配列番号3及び4に示すオリゴヌクレオチド(プライマー3、4)を合成した。プライマー2と3は、相補的な共通の配列を一部に有しており、増幅産物がこの部分で連結されるとrmf遺伝子ORF内の一部が欠損するような設計となっている。
【0051】
プライマー1、2、及びプライマー3、4の組み合わせで、常法により調製した野生株W3110株のゲノムDNAを鋳型として一回目のPCR反応を行った。この際、プライマー1と2、及びプライマー4と3のモル比は、10:1にて行った。得られた一回目のPCR産物を鋳型として、プライマー1と4を用いて二回目のPCRを行った。二回目のPCRによって構築された欠損型rmf遺伝子を有するDNA断片を、Promega社製のクローニングベクターキットpGEMT-easyに、プロトコールに従ってクローニングし、組換えベクターpGEM-Rを得た。
【0052】
pGEMdRをEcoRIにより切断し、欠損型となったrmf遺伝子を含むDNA断片を得た。この切断断片と、同酵素にて切断し精製した温度感受性プラスミドpMAN997(WO99/03988号国際公開パンフレット参照)とを、DNA ligation Kit Ver.2(宝酒造(株))を用いて連結した。尚、前記pMAN997は、pMAN031(J. Bacteriol., 162, 1196 (1985))とpUC19(宝酒造(株))のそれぞれのVspI-HindIII断片を繋ぎ換えたものである。
【0053】
上記の連結反応液で、エシェリヒア・コリJM109コンピテント細胞(宝酒造(株))を形質転換し、アンピシリン(明治製菓(株))を25 μg/ml含むLB寒天プレート(LB+アンピシリン)にまき、30℃で培養し、アンピシリン耐性コロニーを選択した。コロニーを25μg/mlのアンピシリンを含むLB培地で30℃にて試験管培養し、Wizard Plus Miniprep(Promega社)を用いて細胞からプラスミドを抽出した。それらのプラスミドをEcoRIで切断し、目的長断片を含むプラスミドを、rmf破壊用プラスミドpMANΔrmfとした。
pMANΔrmfを用いて、エシェリヒア・コリWC196株を形質転換した。WC196株は、AEC耐性のエシェリヒア・コリのL−リジン生産菌であり、プライベート番号AJ13069として、工業技術院生命工学工業技術研究所(現 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM P-14690として寄託され、平成7年9月29日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-5252が付与されている(WO96/17930号国際公開パンフレット参照)。
【0054】
形質転換株をLB+アンピシリンプレートで30℃で培養し、アンピシリン耐性のコロニーを選択した。選択したコロニーを30℃で一晩液体培養した後、10-3希釈してLB+アンピシリンプレートにまき、42℃でアンピシリン耐性コロニーを選択した。この段階では、pMANΔrmfは染色体DNAに組み込まれている。
【0055】
次に、選択したコロニーをLB+アンピシリンプレートに塗り広げ、30℃で培養した後、適当量の菌体をLB培地2mlに懸濁し、42℃で4〜5時間震とう培養した。10-5希釈した培養液をLBプレートにまき、得られたコロニーのうち数百コロニーをLBプレートとLB+アンピシリンプレートに植菌し、生育を確認することで、アンピシリン感受性又は耐性を確認した。アンピシリン感受性株は、染色体DNAから、pMANΔrmfのベクター部分、及びもともと染色体DNA上に存在していた正常なrmf遺伝子又は欠失型rmf遺伝子が脱落している。アンピシリン感受性株の数株についてコロニーPCRを行い、目的どおりrmf遺伝子が欠失型に置換されている株を選択した。このようにして、エシェリヒア・コリのL−リジン生産菌WC196より、rmf遺伝子破壊株WC196Δrmf株を取得した。
【0056】
rmf遺伝子破壊株WC196Δrmf株と、その親株であるWC196株を、20mM NH4Cl、2mM MgSO4、40mM NaHPO4、30mM KH2PO4、0.01mM CaCl2、0.01mM FeSO4、0.01mM MnSO4、5mM クエン酸、50mM グルコース、2mM チアミン塩酸塩、2.5g/L カザミノ酸(Difco社)、250mM MES-NaOH(pH6.8)を含む培地で、200 ml容バッフルつき三角フラスコを用いて培養した。培養開始時の培養液量は20 mlとし、回転速度144rpmで回転振とうし、37℃で培養を行った。培地、容器等は全てオートクレーブ滅菌を行った後に供した。
【0057】
培養液中の菌体濃度、グルコース濃度、及びL−リジン蓄積を経時的に測定した。菌体濃度は適当倍率に水で希釈した培養液を用い、600nmの濁度を分光光度計(ベックマン社)で測定することにより調べた。グルコース濃度、及びL−リジン濃度は、遠心分離により除菌した培養液上清を適当倍率に水で希釈した後に、バイオテックアナライザー(サクラ精器)により測定した。結果を図1〜3に示す。また、培養17時間後の後のL−リジン蓄積と残糖の値を示した。
【0058】
その結果、rmf遺伝子破壊株は、生育(図1)、糖消費速度(図2)、L−リジン生産速度(図3)のいずれにおいても、対照株に比較して向上することが認められた
【0059】
【表2】
【0060】
【実施例3】
エシェリヒア・コリのrmf遺伝子の破壊とタンパク質生産への効果
(1)rmf遺伝子破壊株への酸性フォスファターゼ過剰発現プラスミドの導入と発現
【0061】
実施例2で得られたrmf遺伝子破壊株WC196Δrmf株、及びその親株であるWC196を、変異型酸性フォスファターゼ遺伝子を含むプラスミドpMPI700で形質転換し、WC196/pMPI700株、及び WC196Δrmf/pMPI700株を得た。前記変異型酸性フォスファターゼは、ヌクレオシド−5’−燐酸エステル生成活性(燐酸転移活性)を維持したまま、5’−ヌクレオチダーゼ活性(燐酸エステル加水分解活性)が低下した変異酵素であり、92位のグリシン残基がアスパラギン酸残基に、171位のイソロイシン残基がスレオニン残基にそれぞれ置換されている。pMPI700は、以下のようにして得られたプラスミドである(Applied and Environmental Microbiology, July 2000, p.2811‐2816 Vol. 66, No. 7)。
【0062】
モルガネラ・モルガニ NCIMB 10466由来の酸性フォスファターゼ遺伝子を含むプラスミドpMPI501(特開平9-37785号公報、米国特許第6,010,851号)を鋳型として、エラープローンPCRにより同遺伝子にランダム変異を導入した。変異が導入された酸性フォスファターゼ遺伝子断片(EcoRI-HindIII)をpUC18に導入し、得られた組換えプラスミドでE. coli JM109を形質転換した。形質転換体から、E. coli (pMPI501)と同等のリン酸転移活性を有し、5’−ヌクレオチダーゼ活性が低下した形質転換体が1株得られ、JM109 (pMPI600)と名付けた。この株が保持するプラスミドpMPI600を用いて、同様にして再度ランダム変異導入を行い、プラスミドpMPI700を得た。
【0063】
pMPI501が含む酸性フォスファターゼ遺伝子断片をさらにサブクローニングにより短縮したDNA断片を含むプラスミドpMPI505をエシェリヒア・コリJM109に保持させた株はAJ13143と命名され、この株は、ブタペスト条約に基づく国際寄託機関である日本国茨城県に所在の通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に1996年2月23日付で既に寄託されており、その受託番号FERM BP-5422が付与されている。pMPI501に代えてpMPI505を用いても、pMPI700と同様のプラスミドを取得することができる。
【0064】
WC196/pMPI700株、及び WC196Δrmf/pMPI700株を、アンピシリン100μg/mlを含むLB培地にて500mL容坂口フラスコを用いて培養した。培養開始時の培養液量は50mLとし、回転速度120rpmで往復振とうし、37℃で培養を行った。培地、容器等は全てオートクレーブ滅菌を行った後に供した。このとき、培養液中の菌体濃度を測定した。菌体濃度は適当倍率に水で希釈した培養液を用い、600nmの濁度を分光光度計(ベックマン社)で測定した。また、経時的に菌体を含む培養液を採取し、遠心分離により集菌した後に、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、20分間の超音波破砕を行い、再度遠心分離を行い上清を粗酵素液としてタンパク質濃度、酸性フォスファターゼ酵素活性測定に供した。粗酵素液中のタンパク質濃度はブラッドフォード法により測定した。
【0065】
酵素活性は、次のようにして測定した。100mM MES/KOH緩衝液(pH6.0)中にて、基質として10mM p−ニトロフェニルリン酸を用い、30℃で酵素反応を行った。粗酵素液を添加後、1分後に2規定のKOHを反応液量の1/5量添加して反応を停止し、遠心分離した後に上清中に生成したp−ニトロフェノールリン酸を定量した。生成p−ニトロフェノールリン酸の定量は、分光光度計(ベックマン社)で410nmの吸光度を測定することにより行った。また、p−ニトロフェノールリン酸のモル吸光係数は17.52 mM-1・cm-1として、酵素活性の計算を行った。結果を表3に示す。また、培養中の各菌株の生育(OD600)を、図4に示す。
その結果、rmf遺伝子破壊株は、生育、比活性、培養液あたりの全活性のいずれにおいても対照株に比較して向上することが認められた(表3)。
【0066】
【表3】
【0067】
更に、上記粗酵素液を15% ポリアクリルアミドゲルにてSDSゲル電気泳動を行い、サイプロオレンジ(バイオラッド社)にて染色し、染色したゲルイメージを富士フィルム社製フルオロイメージングアナライザーFLA-3000Gにより読取り、得られた読取り画像を画像解析ソフトウエアImageGaugeを用いて各スポットの濃度を定量することにより、目的とする酵素タンパク質の発現の確認、並びに発現量の比較を行った。その結果、目的とするバンドが検出され、その濃度は比活性をよく反映するものであった(図5)。
【0068】
【発明の効果】
本発明により、エシェリヒア属細菌を用いてL−アミノ酸、タンパク質、核酸系物質等の有用物質を生産する際に、生産速度又は生産効率を向上させることができる。
【0069】
【配列表】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【図面の簡単な説明】
【図1】 WC196Δrmf株の生育パターンを示す図。2コロニーずつ、各実験区ごとn=3で実施した結果を示す。エラーバーは標準誤差を示す。(以下の図でも同様)
【図2】 WC196Δrmf株の糖消費パターンを示す図。
【図3】 WC196Δrmf株のリジン蓄積パターンを示す図。
【図4】 WC196Δrmf株に酸性フォスファターゼ遺伝子を導入したWC196Δrmf/pMPI700株及び対照株の生育を示す図。
【図5】 WC196Δrmf/pMPI700株及び対照株の粗酵素液のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で観察された酸性フォスファターゼのバンドの染色強度を示す図。
Claims (4)
- エシェリヒア属細菌を培地に培養し、該培地又は菌体中にL−アミノ酸を生成蓄積させ、該L−アミノ酸を採取する、微生物を利用したL−アミノ酸の製造法において、前記エシェリヒア属細菌は細胞内でRMFタンパク質が正常に機能しないことを特徴とするL−アミノ酸の製造法。
- 前記エシェリヒア属細菌は、染色体上のrmf遺伝子が破壊されたことにより、細胞内でRMFタンパク質が正常に機能しないことを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記エシェリヒア属細菌はエシェリヒア・コリである請求項1又は2に記載の方法。
- L−アミノ酸がL−リジンである請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
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