JP4019644B2 - 浄水方法,浄水装置および浄水システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水道水の浄水に係わり、特に既設の鉛給水管の浄水方法,浄水装置,および浄水システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、給水人口5万人以上の水道事業体において、その77%にあたる事業体(3580万戸)で鉛管が使用されているとの調査結果が公表されている。この鉛管(内周面)から水道水に溶融した鉛(Pbイオン)は、浄水器等で捕集することは極めて困難であり、その鉛が健康に対して大きく影響すると指摘され、特に乳幼児等が摂取してしまうと脳障害を引き起こす恐れがある。このような理由により、鉛に関する水質基準値が平成15年には現行の50μg/lから10μg/l(約1080nM)に強化されることになっている。
【0003】
なお、鉛管の使用タイプとしては、公道の配水管分岐点から家庭などの水道水の消費者側(以下、宅地と称する)の蛇口までを使用しているもの、または公道の配水管分岐点から宅地内メータ周りまで使用のもの、あるいはメータ周りにのみ使用のものと種々の使用タイプが存在している。
【0004】
一方、水道局では、水資源の有効活用の一環として漏水防止対策を最重点施策の一つとして積極的に取り組んでいるが、漏水の95%以上は、お客さまの所有物である宅地内の給水管で発生しており、その殆どが鉛管から成っている。このため、鉛管から成る給水管(以下、鉛給水管と称する)での鉛の溶出対策、漏水防止対策として、宅地内の水道メータまでの鉛給水管を、ステンレス管や塩化ビニール管に取り替える材質改善工事を実施し、漏水の未然防止や健康維持に努めている。
【0005】
図4は、一般的に知られている配水管(例えば、道路側)から水道メータ(例えば、宅地側)までの給水設備の一例を示したものである。図4において、符号41は地中(道路)に敷設された水道水用の配水管を示すものであり、その配水管41は鉛給水管42や弁45を介して分岐され、他端は水道水の消費者である家庭などの宅地にまで配管されて、止水栓43,メータ44等を備えた計量ボックス46を介して蛇口(図示省略)等に接続される。前記鉛給水管42としては、一般的に直径が13mmと20mmのものが知られており、その長さは平均で約6m程度の配管(容量が約2リットルの配管)が使用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記のように地中に敷設された鉛給水管をステンレス管や塩化ビニール管等と取り替えるには、非常に困難な作業を必要とし莫大な費用がかかってしまう問題がある。そのため、前記の問題を解決する手段として、鉛給水管内の鉛を除去する方法が考えられる。しかし、カラム型電解セル(詳細を後述する)を用い、そのカラム型電解セル内にて鉛給水管内の有機塩素化合物等(例えば、トリハロメタン)を転化(例えば、メタンと水素ガス)する方法については種々検討されているが、鉛給水管内の鉛等の物質を除去する方法については現在具体的な手段が無い。
【0007】
図5は、一般的なカラム型電解セル(符号10)の概略構成図を示すものである。図5において、符号11は管状の周壁に微細な孔(図示省略)が複数個穿設され、絶縁性を有し隔膜としての多孔質セパレータ(ガラス管)を示すものである。そのセパレータ11の内周側には、その長さ方向に対してカーボン繊維(または活性炭)を密に充填することにより作用電極12が構成される。なお、前記カーボン繊維には、亜鉛,パラジウム,銅等の特殊金属を担持したものが用いられる。
【0008】
前記セパレータ11は略管状の密閉容器13内に構成され、その密閉容器13の両端にはOリング14a,14bを介して絶縁性の封止部材13a,13bが密接に支持される。前記作用電極12の一端側からは、カーボンから成り例えば針状のカーボン電極12aが前記封止部材13aを貫通して挿入される。前記密閉容器13内におけるセパレータ11の外周面には、Pt等の金属線を複数回巻回することにより対電極15が形成され、その対電極15は密閉容器13の外周側に導出される。
【0009】
前記封止部材13a,13bには、それぞれ被処理液用の流入口16a,流出口16bが形成され、図中の白抜き矢印で示すように被処理液(例えば、水道水)がカラム型電解セル10内に流入し、前記作用電極12に沿ってセパレータ11内を通過して流出するように構成されている。前記セパレータ11の外周面と密閉容器13の内周面との間に形成された液槽17には対電極液(電解液)17aが充填され、その対電極液17a中に前記セパレータ11,対電極15が浸漬される。また、前記対電極液17a中には、前記密閉容器13を貫通して参照電極18が挿入される。
【0010】
以上示したように構成されたカラム型電解セルを用い、カーボン電極12aを介し作用電極12側を負極として、作用電極12と対電極15との間に電圧を印加すると共に、流入口16aから被処理液を流入することにより、その被処理液を作用電極12のカーボン繊維と接触させて電気化学的に分解処理することができる。
【0011】
本発明は、前記課題に基づいて成されたものであり、有機塩素化合物処理用のカラム型電解セルを応用し、鉛給水管内等の水質を改善する浄水方法,浄水装置および浄水システムを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するために、請求項1記載の発明は浄水装置において、管状で絶縁性およびイオン導電性を有するセパレータと、そのセパレータの外周部に形成され対電極液中に浸漬された対電極と、セパレータの内周側に配置された作用電極と、により電解セルを構成する。そして、前記作用電極を正極として、その作用電極と対電極との間に電位を印加すると共に、前記セパレータの一端側から被処理液を流入し、前記被処理液中の被処理対象物である電気化学的活性物質のみを対電極液中に移動させ、その対電極液を前記電解セルの外周側に循環することにより、前記被処理液を浄水することを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記電解セルとは別途に貯蔵タンクを設け、その貯蔵タンクにより前記の循環された対電極液中の被処理対象物を捕集することを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は浄水システムにおいて、管状で絶縁性およびイオン導電性を有するセパレータと、そのセパレータの外周部に形成され対電極液中に浸漬された対電極と、セパレータの内周側に配置された作用電極と、から成る電解セルを構成した浄水部を給水管の一部に接続する。そして、前記給水管内の被処理水を前記浄水部におけるセパレータの一端側から流入し、その流入した被処理水を循環用配管により前記給水管に帰還およびモニタにより水質を測定する。また、前記のモニタによる測定結果に応じて、前記電解セルの作用電極を正極とし、その作用電極と対電極との間に電位を印加すると共に、前記セパレータ内にて被処理液中の被処理対象物である電気化学的活性物質のみを対電極液中に移動させ、その対電極液を前記電解セルの外周側に循環することにより、前記被処理液を浄水することを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記浄水部において、電解セルとは別途に貯蔵タンクを設け、その貯蔵タンクにより前記の循環された対電極液中の被処理対象物を捕集することを特徴とする。
【0017】
前記のイオン導電性を有するセパレータとしては、多孔質のセパレータが用いられ、例えばナフィオン(デュ・ポン社製の全フッ素化イオノマー;以下、省略)等のイオン交換膜や、バイコールガラス(コーニング社製のガラス;以下、省略)等のガラス質のものを用いることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態における給水管の浄水方法,浄水装置および浄水システムを、図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
本実施の形態では電気化学反応の原理に基づいて、図5に示したようなカラム型電解セルを応用して浄水装置を構成し、その浄水装置を鉛給水管の一部に設置して、その鉛給水管内の電気化学的活性物質(例えば、Pbイオン等の被処理対象物)を取り出して捕集および処理すことにより、鉛給水管内の水質を低コスト,高効率で容易に改善することを検討したものである。
【0020】
図1は、本実施の形態における浄水装置の概略構成図を示すものである。なお、図5に示すものと同様なものには同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。図1において、符号19,20は、それぞれカラム型電解セル10の密閉容器13を貫通するように設けられた配管を示すものであり、その配管19,20およびポンプ19a,貯蔵タンク21を介して、液槽17内の対電極液を循環させることができる。
【0021】
セパレータ11には例えばナフィオン等のイオン交換膜やバイコールガラス等のガラス質を用い、そのセパレータ11の外周面にPt等の電極材料を蒸着またはコーティング(および焼き付け)して、セパレータ11の外周面を複数回巻回するように対電極15を形成する。対電極液17aには、例えば0.2モルのNaCl,K2SO4等の電解液を用いる。貯蔵タンク21には、例えば電気化学反応により金属イオンを金属に変換し、捕集および貯蔵することできるものを用いる。
【0022】
図1に示したように構成された浄水装置において、まずカーボン電極12aを介して作用電極12側を正極とし、その作用電極12と対電極15との間に所定の電位(例えば、0.8〜16V程度)を印加すると共に、流入口16aから被処理液を流入する。その際、セパレータに穿設された孔には、対電極液や水(被処理液)は通過しないが、金属イオンにおいては通過する。
【0023】
そのため、前記作用電極12と対電極15との間に所定の電位を印加することにより、前記被処理液が作用電極12のカーボン繊維に沿って通過する際に、例えば被処理液中のPbイオン(被処理対象物)はセパレータ11の各孔(図示省略)を介して対電極液17a中に移動する。その移動したPbイオンは、配管19,ポンプ19aを介して対電極液17aと共に貯蔵タンク20に対して循環され、その貯蔵タンク20内に鉛が捕集および貯蔵される。そして、対電極液17aだけを再び前記液槽内へ循環する。
【0024】
以上示したように動作する浄水装置を鉛給水管の一部に設置して浄水システム(一例を図3に基づいて後述する)を構成することにより、例えば鉛給水管内の水道水に溶出したPbイオンのみを取り出し、そのPbイオンを貯蔵タンク内に貯蔵することができる。すなわち、水道水中の被処理対象物のみを鉛給水管の外側(例えば、地表)に取り出して除去および処理することができるため、その水道水を低コストで容易に浄水することが可能となる。
【0025】
なお、図2の概略構成図(図1と同様であるため説明を省略)に示すように、カラム型電解セル10における対電極液17a中に対して、密閉容器13を貫通して参照電極18を挿入することにより、作用電極と対電極との間に対して電気化学反応により適した電位を印加することができるため、被処理対象物の除去を効率良く行うことができる。
【0026】
図3の概略構成図は、前記浄水装置を用いた浄水システムの一例を示すものである。なお、図1,4に示すものと同様なものには同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。図3において、符号22は浄水装置10およびソレノイドバルブ等の開閉バルブS1(流入口16a側),S2(流出口16b側)を備えた浄水部であり、鉛給水管42の一部(例えば、計量ボックス46付近や計量ボックス46内)に接続する。符号23は、前記浄水部22におけるカラム型電解セル10と開閉バルブS2との間に接続されポンプ等(図示省略)を備えた循環用配管であり、その循環用配管23を介して鉛給水管42内の水道水が前記カラム型電解セル10に循環される。
【0027】
符号24は前記循環用配管23に接続されたモニタを示すものであり、前記カラム型電解セル10から循環用配管23に循環する水道水の鉛濃度を測定するものである。そのモニタ24に供給された水道水は、前記循環用配管23に帰還または排出(ドレーン)しても良い。符号S3は屋内における開閉バルブを示すものであり、符号25は鉛給水管42内の水道水を屋内側へ直接供給するバイパス用配管を示すものである。前記のカラム型電解セル10,循環用配管23,各開閉バルブS1〜S3,モニタ24の動作は、所望の制御装置(図示省略)等により制御する。
【0028】
次に、図3に示した浄水システムにおける動作を説明する。まず、利用者が水道水を殆ど利用しない時間帯(例えば、夜間(午後10時〜午前6時))においては、開閉バルブS1,S2は開状態で開閉バルブS3は閉状態であり、鉛給水管42内の水流が無い状態となるため、鉛給水管42内にて水道水に鉛が溶出し、そのPbイオン濃度が時間経過と共に高くなる。このPbイオン濃度は、モニタ24により測定することができる。
【0029】
前記のPbイオン濃度が水質基準値の範囲を超えた場合、開閉バルブS1は開状態で開閉バルブS2,S3を閉状態にして、循環用配管23を介してカラム型電解セル10に水道水を循環させると共に、そのカラム型電解セル10を動作させて作用電極14と対電極15との間に所定の電位を印加させる。
【0030】
これにより、カラム型電解セル10を通過する水道水中のPbイオンが除去され、カラム型電解セル10付近における鉛給水管42内のPbイオン濃度が低減されると共に、鉛給水管42内の各部分においてPbイオン濃度差が生じる。Pbイオンは鉛給水管42内にて拡散するため、時間経過に伴って鉛給水管42内全体のPbイオン濃度が低減する。
【0031】
そして、前記鉛給水管42内のPbイオン濃度において、モニタ24による測定結果が水質基準値の範囲内に十分達した後、カラム型電解セル10の動作を停止し開閉バルブS1,S2は開状態で開閉バルブS3は閉状態にして、モニタ24により鉛給水管42内の鉛濃度を測定および監視できる状態にする。
【0032】
前記のように浄水システムを動作させることにより、利用者は常に安全な水道水(例えば、金属イオン濃度が10μg/l)を利用することができる。
【0033】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲内で多様な変形及び修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形及び修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0034】
例えば、カラム型電解セルにおける作用電極と対電極との間に印加する電位を所望の値に設定することにより、鉛給水管内の水道水中のPbイオン等に限らず、公道の配水管から流入する不純物,種々の電気化学的活性物質(例えば、金属イオン)を除去することができる。
【0035】
また、貯蔵タンクの容量,給水管の容量および鉛等が溶出する度合い,対電極液における被処理対象物(金属イオン等)の捕集能力の持続性,浄水装置にて起こり得る電気化学反応の度合い等を考慮することにより、貯蔵タンク内が被処理対象物によって満たされるまでの時間,対電極液を交換する必要な時期,カラム型電解セル等に必要な電気量(例えば、乾電池)および動作時間等を算出することができ、浄水装置および浄水システムにおけるメンテナンス性,効率性の向上が可能となる。
【0036】
【発明の効果】
以上のとおり本発明によれば、被処理対象物(電気化学的活性物質)の処理を給水管内ではなく給水管外で行うことができるため、その給水管内の水質を高効率,低コストで容易に改善することができる。ゆえに、常に水質基準値に適応した水道水を利用者に対して供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態における浄水装置の概略構成図。
【図2】本実施の形態における参照電極を用いた浄水装置の概略構成図。
【図3】本実施の形態における浄水システムの概略構成図。
【図4】一般的な給水設備(配水管から水道メータ)の概略構成図。
【図5】一般的なカラム型セルの概略構成図。
【符号の説明】
10…カラム型電解セル
11…セパレータ(多孔質)
12…作用電極
12a…カーボン電極
13…密閉容器
15…対電極
17a対電極液
18…参照電極
21…貯蔵タンク
22…浄水部
23…循環用配管
24…モニタ
25…バイパス用配管
S1〜S3…バイパス用配管
Claims (4)
- 管状で絶縁性およびイオン導電性を有するセパレータと、そのセパレータの外周部に形成され対電極液中に浸漬された対電極と、セパレータの内周側に配置された作用電極と、により電解セルを構成し、
前記作用電極を正極として、その作用電極と対電極との間に電位を印加すると共に、前記セパレータの一端側から被処理液を流入し、前記被処理液中の被処理対象物である電気化学的活性物質のみを対電極液中に移動させ、その対電極液を前記電解セルの外周側に循環することにより、前記被処理液を浄水することを特徴とする浄水装置。 - 前記電解セルとは別途に貯蔵タンクを設け、その貯蔵タンクにより前記の循環された対電極液中の被処理対象物を捕集することを特徴とする請求項1記載の浄水装置。
- 管状で絶縁性およびイオン導電性を有するセパレータと、そのセパレータの外周部に形成され対電極液中に浸漬された対電極と、セパレータの内周側に配置された作用電極と、から成る電解セルを構成した浄水部を給水管の一部に接続し、
前記給水管内の被処理水を前記浄水部におけるセパレータの一端側から流入し、その流入した被処理水を循環用配管により前記給水管に帰還およびモニタにより水質を測定すると共に、
前記のモニタによる測定結果に応じて、前記電解セルの作用電極を正極とし、その作用電極と対電極との間に電位を印加すると共に、前記セパレータ内にて被処理液中の被処理対象物である電気化学的活性物質のみを対電極液中に移動させ、その対電極液を前記電解セルの外周側に循環することにより、前記被処理液を浄水することを特徴とする浄水システム。 - 前記浄水部には、電解セルとは別途に貯蔵タンクを設け、その貯蔵タンクにより前記の循環された対電極液中の被処理対象物を捕集することを特徴とする請求項3記載の浄水装置システム。
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