JP4019540B2 - 状態記憶装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータににより可動部材を駆動して、可動部材の位置を所望の位置に調整すると共に、その所望の位置を記憶し、可動部材が所望の位置とは異なる任意の位置に調整された後であっても、再度、記憶された所望の位置に可動部材を移動可能な制御手段を備えた状態記憶装置に関するものであり、例えば、車両のメモリシート等に適用される。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両等においては乗員の体型に合わせてシート位置を所望の位置に調整し、その所望のシート位置をメモリ上に記憶させ、体型が異なる別の乗員が乗車し、シート位置を任意な位置に調整した後であっても、再度メモリにシート位置を記憶させた乗員が乗った場合には、所望の位置へのシート調整を再生スイッチによるスイッチ操作1つで行うメモリシートが高級車等で採用されている。これは乗降時のシート調整操作を煩わせることがないようにしたものであり、シート全体を前後に移動させるスライドモータ、シートバックを前後に倒したり起こしたりするリクライニングモータ、シートの前部を上げたり下げたりするフロントバーチカルモータ、シートの後部を上げたり下げたりするリフタ(リアバーチカル)モータ、ヘッドレストの上下の位置調整を行うヘッドレストモータ等を作動させてシート位置を調整し、自分の好みの位置に合わせるようにしたものである。このシートは、乗員に合ったシート位置(シート状態)をメモリ上に記憶した後、専用のスイッチ(再生スイッチ)を押せば、自動的にシートが記憶された位置に動き、乗降時のシート位置調整を容易とするものである。
【0003】
このようなメモリシートは、シートを動かすモータの回転状態から、シート状態を特定するため、位置センサ等の検出機構を設けている。具体的には、トヨタクラウンマジェスタ新型車解説書(1991年10月 トヨタ自動車株式会社発行)の5−64,65頁に示されるように、モータ回転軸(アマーチャー軸)上に磁石を設け、その磁石の回転状態を磁石に対向して設けられたホール素子等で検出し、その信号を検出して制御装置で位置制御を行うようになっている。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】
従来のようなメモリシートにおいてはモータに取り付けられたホール素子からの信号、つまり、回転パルス(モータ1回転につき1パルスを発生)をコントローラにより読み込み、シート位置の位置制御を行っていることから、モータが回転するとモータ回転軸が回転され回転パルスが出力され、そのパルスを基にシートの位置制御が行える。
【0005】
本発明者らは従来のようなホール素子等のセンサを用いずにシートの位置制御および状態記憶が行え、電気回路によりシートを動作させるモータ回転を正確に検出するようにしたものを、特願平10−308391号で提案した。これは、シートを動作させる直流モータに同期した出力を出す電気回路(ローパスフィルタ、微分回路、増幅器等を用いたモータリップルパルス成形回路)を設け、モータの回転に同期したモータリップルパルスに基づきシートの位置制御を行うようにしたものである。
【0006】
従来では、直流モータの出力軸上に取り付けられた磁石と、その回転を検出するホールICからの回転パルスを所定周期(例えば、2ms毎)のメインルーチンで読み込む方法があるが、モータ回転に同期するリップルパルス(例えば、モータ1回転に付き10パルス出力される)によりパルスを読み込もうとすると、パルス時間(パルス周期)が非常に短いもの(例えば、1ms)となり、メインルーチンではエッジ検出が行えず、割込みによるリップルパルスのエッジ検出を行わなければならなくなってしまう。
【0007】
しかしながら、車両においてはドア周辺の各種の制御装置(メータ、ディスプレィ、エアコン、ルーフ、エンジン、チルト&テレスコピック、ポジション、ドア等を制御する制御装置)間はコンパクト化およびハーネス等の低減を図るため、多重通信システムを採用(例えば、セルシオ新型車解説書(1997年7月 トヨタ自動車株式会社発行)の4−14〜17頁参照)している。
【0008】
このような通信においては、通常ではシリアル通信を用いており、この通信用に外部割込みが使用され、占有されてしまっている。このため、更に外部割込みが行えるよう外部割込みが数チャンネル付加された高性能なCPUを用いることが考えられるが、このようなCPUに変更するとコストアップしてしまう。
【0009】
よって、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、CPUへの演算負荷が少なく、コストアップすることなく正確に位置制御が行えるようにすることを技術的課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために講じた技術的手段は、モータ(11:11a,11b,11c,11d)により可動部材(ST:SC,SB,HD)を駆動して、可動部材の位置を所望の位置に調整すると共に、所望の位置を記憶し、可動部材が所望の位置とは異なる任意の位置に調整された後であっても、再度、記憶された前記所望の位置に可動部材を移動可能な制御手段(1)を備えた状態記憶装置(10)において、モータのモータ回転に同期したパルス出力を行うパルス生成手段(3)と、パルス出力を分周してパルス周期の異なる複数のパルスを生成するパルス分周手段とを設け、前記制御手段は、前記複数のパルスに重み付けを行い、それら重み付けを行った複数のパルスに基づいて前記可動部材の制御を行うことである。
また、前記制御手段は、前記複数のパルスの重み付けをパルス毎に変える。
さらには、前記制御手段は、前記複数のパルスのうち、分周比が大きいパルスに基づいて前記可動部材の制御を行った後、それよりも分周比が小さいパルスに基づいて前記可動部材の制御を行う。
【0011】
これによれば、パルス生成手段からのパルス出力をパルス分周手段により分周を行うことで、パルス生成手段からのパルス出力を分周し、周期の長くなったパルスに基づいて、制御手段では可動部材の位置制御および状態記憶が行え、パルス生成手段から出力されるパルスのパルス周期が非常に短くても、分周により周期が長くなることから、そのパルスが入力されるCPUでは演算負荷が少なくなる。このため、割込みによって短い周期で高速処理を行わなくて良く、割込み機能を付加したCPUは必要なくなることから、コストアップしない。
【0012】
この場合、パルス分周手段(5)は、パルス出力を分周してパルス周期の異なる複数のパルス(1/2,1/4,1/8分周パルス)を生成し、制御手段(1)はこのような複数のパルスに基づき可動部材(ST)の制御を行うようにすれば、パルス周期の異なる複数のパルスに基づいて、簡単な構成により可動部材の正確な位置制御が行える。
【0013】
また、制御手段(1)は、複数パルス(1/2,1/4,1/8分周パルス)に重み付け(S205,211,503,505,507,509)を行うようにすれば、複数パルスの重み付けをパルス毎に変える(モータ位置カウンタを±4(1/8分周パルスのエッジ検出時),±2(1/4分周パルスのエッジ検出時),±1(1/2分周パルスのエッジ検出時)によりカウントする)ことにより、例えば、1/8分周パルスにより可動部材の概略位置を求め、概略位置から実際の位置まで1/4および1/2分周パルスによって、誤差分を補完して可動部材の位置を求めれば、パルスによる誤差を考慮した正確な位置制御が行える。
【0014】
尚、上記の括弧内には、理解を容易にするため、以下で説明する実施例の対応要素番号、または、フローチャートのステップ番号を付記した。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1は状態記憶装置をメモリシート装置10に適用した場合のシステム構成図を示している。この図において制御を司る制御装置1にはバッテリー(BAT)12が接続されている。バッテリー12のプラス端子はイグニッションスイッチ(IGスイッチ)13を介して制御装置1の入力インターフェース(I/F)回路6に接続され、I/F回路6からCPU2に入力されており、IGスイッチ13をオンすることにより、制御装置1にはIG状態を検出して電源(12V)が供給されるようになっている。また、電源はバッテリー12より制御装置内部の電源回路4に入力され、電源回路4により安定化された一定の電圧(5V)がCPU(コントローラ)2に入力される。バッテリー12からの電圧は電源回路4に入力されると共にCPU2に入力され、CPU2はメモリ機能を保持するよう電圧(5V)が供給されており、操作スイッチ7が操作されたときやIGスイッチ13がオンになった場合、スリープ状態(省電力モード)からウェイクアップし、動作を開始する。
【0017】
操作スイッチ7(7a〜7d)はシート状態を調整するスイッチである。この中で、スライドスイッチ7aはシートST全体(図12参照)を車両側に取り付けられた2本のレールに対して前/後にスライドさせるスイッチである。リクライニングスイッチ7bはシートクッションSCに対して回転可能に支持されたシートバックSBを前倒/後倒に倒したり立てたりするスイッチである。また、バーチカルスイッチ7cはシートクッションSCの乗員が座る前部を垂直方向に上/下移動させるスイッチであり、リフタスイッチ7dは乗員が座るシートクッションSCの後部を上/下移動させるスイッチであり、これらのスイッチ7は個々のモータ動作を指示するスイッチとなる。この場合において、これらの操作スイッチ7は上記のものに限定されるものではなく、更には、シートバックSBに対してヘッドレストHDを上/下移動させるヘッドレストスイッチも同様な形態で用いることも可能である。
【0018】
これらの操作スイッチ7からの信号は、それぞれ制御装置1の入力I/F6に入力され、CPU2のメモリにその状態が入力される。更に、入力I/F6にはメモリシート専用スイッチ8(8a,8b)が入力されている。このメモリシート専用スイッチ8は一度メモリに記憶させた後にメモリシートのシート位置調整を容易とするものであり、メモリに所望のシート状態(シート位置)を記憶させる場合には記憶スイッチ8bと一緒にメモリ再生スイッチを同時に押すことにより、そのときのシート状態がメモリに記憶されるようになっている。
【0019】
この場合、シート毎に操作スイッチ7およびメモリシート専用スイッチ8を設けたり、1つのシートSTにメモリ再生スイッチ8aの数をメモリに記憶させたい状態分追加すれば、運転席、助手席等といったシート場所に応じ、個々の乗員の体型に合うように数パターン記憶される形式をとることも可能である。
【0020】
このように、CPU内のメモリに記憶された状態は、メモリ再生スイッチ8aを押すことにより記憶された場所へのシート位置の再生がなされ、シートがその乗員の体型に合うよう移動する。
【0021】
一方、CPU2の出力側においては、各モータ11を独立して駆動するようリレー9が設けられ、リレー9のコイルにそれぞれ独立してCPU2から信号が出力される構成をとる。モータ11のMT+の端子、MT−の端子はそれぞれリレー9の切替端子に接続されており、CPU2からリレー9のコイルに通電を行うことにより、リレー接点が電磁的に切り換わり、該当するモータ11に電流が流れる。これによって、モータ11はバッテリー12からの電力により駆動されるが、この場合、1つのモータに対して2つずつ設けられた正転用リレーまたは逆転用リレー9の下流側端子9aに接続されて通電方向によりモータ11は正転または逆転し、スライドモータ11a,リクライニングモータ11b,バーチカルフロント(Fr)モータ,リフタモータ11dがそれぞれ独立して駆動される。尚、ここでのモータ制御はどのモータ11(11a〜11d)でも同じ制御方法であり、動かしたいモータ11に接続されたリレー9のコイルに通電を行うことにより、それに該当するモータ11を動かすことが可能である。
【0022】
この構成において、リレー9の切換端子側(切換端子下流側)からはモータ駆動時、モータ11に流れる電流(モータ電流)を検知するよう、モータ電流信号(抵抗Rにより分圧された電圧)が制御装置1の制御回路と共に設けられたモータ回転パルス生成回路3に入力に接続され、モータ回転パルス生成回路3の出力(リップルパルス)は分周制御回路5を介して分周され、パルス周期の長くなったパルスがCPU2の入力ポートに入力されている。
【0023】
そこで、直流モータ11の回転に応じてパルスを出力(リップルパルスを生成)するモータ回転パルス生成回路3を説明する。この回路3は、図2に示されるように内部にスイッチト・キャパシタ・フィルタ(SCF)3a、リップルパルス成形回路3b、パルス発生回路(3c〜3f)から構成されており、パルス発生回路はPLL(フェーズ・ロックト・ループ)3c、分周回路3d、ローパスフィルタ(LPF)3e、加減算回路3fから成り立っている。
【0024】
スイッチト・キャパシタ・フィルタ3aは、基本的には図3の(a)に示されるようにアナログスイッチとコンデンサで構成された回路(スイッチト・キャパシタ回路)をフィルタに応用したものであり、図3の動作説明図に示すように基本的には2個のスイッチとコンデンサから構成され、スイッチS1,S2を周期Tで交互にオン/オフすることにより、電流iが、i=V/(1/fC)で流れる。
【0025】
このことから、スイッチト・キャパシタは抵抗と等価であるとみなせる。これを抵抗とコンデンサより成るCRフィルタに応用した場合((b)参照)には、その回路の遮断周波数fcは2つのスイッチをオン/オフする周波数(スイッチト・キャパシタ・フィルタの場合にはクロック入力)により可変となり、遮断周波数fcは(b)に示されるように表わされる。尚、スイッチト・キャパシタ・フィルタ(SCF)には市販のIC(MF6−50等)を使用しており、このICの遮断周波数fcはfc=fCLK(クロック入力周波数)/N(定数、例えば、定数:50)で表わされる。
【0026】
一方、リップルパルス成形回路3bは、図4に示される回路構成から成り立っている。この回路3bは内部に高周波アクティブフィルタ(フィルタ)FL2、第1および第2微分回路DC1,DC2、増幅器AP1、比較器(電圧比較器)CMを備えている。
【0027】
高周波アクティブフィルタFL2は、抵抗R3,R4がオペアンプOP1の非反転入力端子に入力され、反転入力端子には更に抵抗R3,R4の接続点に接続されたコンデンサC2が接続される。また、反転入力端子と抵抗R3,R4の接続点にはコンデンサC3が接続され、出力に対してフィードバックがかけられている。このフィルタFL2は高周波成分の除去を行うもので、例えば、モータ11の最高回転数(例えば、6000rpm)以上のノイズ成分を減衰量を大きくして確実に除去することができ、フィルタFL2により、直流モータの回転信号(リップル周波数)にのるノイズが除去できるローパスフィルタLPFとして機能する。
【0028】
第1微分回路DC1は、ローパスフィルタLPFの出力(b)に接続されており、入力信号を微分して直流成分の減衰を行うものである。第1微分回路DC1はオペアンプOP2の反転入力端子に、抵抗R7とカップリングコンデンサC5が直列接続されている。一方、非反転入力端子には抵抗R5とR6の分圧された電圧が印加され、分圧点にはバイパスコンデンサC4が接続されている。また、反転入力端子とオペアンプOP2の出力との間には抵抗R8とコンデンサC6が並列接続されている。
【0029】
増幅器AP1は、第1微分回路DC1の出力(c)を増幅するものであり、オペアンプOP3の非反転入力端子には抵抗R9,R10が直列接続され、更に非反転入力端子にはコンデンサC9が接続されている。また、反転入力端子と、抵抗R9,R10の接続点にはコンデンサC7が抵抗R11を介して接地された状態で接続されており、オペアンプOP3の出力との間にコンデンサC8および抵抗R12が並列接続されている。
【0030】
第2微分回路DC2は、増幅器AP1の出力(d)を微分して位相を90°シフトさせるものであり、オペアンプOP4の非反転入力端子には増幅器AP1の出力(d)が抵抗R14とコンデンサC11のフィルタを介して接続されている。一方、反転入力端子には抵抗R13とコンデンサC10が直列接続され、更にオペアンプOP4の出力(e)と非反転入力端子の間に抵抗R15とコンデンサC12が並列接続されている。
【0031】
比較器CMは、第2微分回路DC2の出力(e)と増幅回路AP1の出力(d)を比較するものであり、オペアンプOP5の反転入力には抵抗R17を介して増幅回路AP1の出力(d)が接続されており、非反転入力端子には抵抗R16を介して第2微分回路DC2の出力(e)が接続され、更にオペアンプOP5の出力(f)との間には抵抗R18が接続され、出力(f)からリップル周波数に合致した矩形状のパルス出力(リップルパルス)が出力され、このパルス出力(f)が、分周制御回路5に入力される。
【0032】
上記したリップルパルス成形回路3bの各部における出力波形を、図5を参照に簡単に説明すると、まず最初、図1に示すモータ11(11a〜11dのいずれか)に流れる電流は電流に比例した電圧信号(モータ回転信号)に換えられる。この信号には直流モータ特有のリップルがノイズと共にのっている(a波形)。リップルは直流モータ11を用いた場合に発生するもので、その原因は整流子の複数あるセグメントがブラシを通過する際に接続されるコイルの数が回転に伴い変化するために、並列につながるコイルの数が変化し、モータ回転時の抵抗値の変化によってコイルに流れる電流が変化することで発生する。
【0033】
このようなリップルがのった信号をスイッチト・キャパシタ・フィルタ(SCF)3aを通すことによりリップルノイズは除去されるが、スイッチト・キャパシタ・フィルタ3aのクロック入力(クロック周波数fCLK)によるノイズが出力に表れ、その後、ローパスフィルタLPFを通すことにより平滑化/減衰され、b波形のようにノイズ成分が除去される。次に、ローパスフィルタLPFを通過した信号(b波形)を第1微分回路DC1に通すと、信号は微分され直流成分の減衰を行いリップル成分のみの波形、つまり、c波形になる。更に、c波形に対して増幅器AP1を通すとc波形の振幅が増幅されてd波形になり、その後、第2微分回路DC2を通すとc波形に対して位相が90°遅れ、第2微分回路DC2後の波形がe波形となる。次に、増幅器AP1の出力(d波形)と第2微分回路の出力(e波形)を比較器CMで比較することによって、パルス出力(f波形)が得られる。
【0034】
本発明ではパルス出力(リップルパルス)の波形をフィードバックし、リップルパルスの周波数がスイッチト・キャパシタ・フィルタ3aの遮断周波数fcとなるような回路構成としている。つまり、PLL3cに入力されるリップルパルス(f波形)の周波数fpに対し、スイッチト・キャパシタ・フィルタ3aの出力の遮断周波数の関係式(fc=fCLK/N)の定数N(=50)に基づき最適な遮断周波数となる周波数(例えば、60fp)をPLL3cは出力するようにしている。PLL3cの出力(周波数:60fp)は、入力周波数fpに対して分周回路3dにより60分周され、分周回路3dはPLL3cに対して周波数fpを出力する。つまり、PLL3cに入力されたリップルパルスの周波数fpに基づき最適な遮断周波数fcが得られるように発振が制御され、分周回路3dの出力信号の位相制御がなされる。このことから、スイッチト・キャパシタ・フィルタ3aの遮断周波数fcはモータ11のパルス出力(リップルパルス)の状態に基づきリニアに変化するものとなる。
【0035】
更に、PLL3cにはパルス発生回路の起動時にPLL3cからの出力を安定化させるため、LPF3e,加減算回路3fが付加されている。パルス発生回路の起動時に加減算回路3fにモータ11を駆動するバッテリー電圧Vbを外部信号として与えることで、PLL3cの発振を初期状態で一定の電圧レベルに保持し、発振が安定となった定常時にはPLL3cに入力されるリップルパルスに依存する発振を行う構成をとっている。この構成により、PLL3cのLPF3eに対する信号gはリップルパルスfと分周回路3dからの信号jの位相差に比例した信号が表れ、リップルパルスfに分周回路3dからの出力jを合わせ込むように、位相制御が行われる。
【0036】
そこで、図2の構成をとり、パルス出力(リップルパルス)をフィードバックし、スイッチト・キャパシタ・フィルタ3aの遮断周波数fcをリップルパルス周波数に基づきリニアに変化させることで、パルス出力(f波形)は、リップルがのった電流波形に対して誤差成分が含まれないところで正確に切り換わり、誤差成分ののらない安定した波形を得ることができる。このようにして得られるモータ回転に同期した正確なリップルパルスを基に制御がなされるようにする。具体的に、CPU2ではこの入力されたリップルパルスの切り換わるタイミング(ここでは、立ち下がりエッジを検出)で出力されるパルスが分周制御回路5に入力される。
【0037】
そこで、分周制御回路5について説明すると、この分周制御回路5はモータ作動に連動するスイッチングを行うモータ作動連動SW回路5a、操作スイッチ7(7a〜7d)のいずれかの操作開始に1パルスだけクリア出力(Lo出力)を出すクリア出力回路5b、モータ作動連動SW回路5aの出力が入力され、クリア出力回路5bの出力がクリア端子に入力された分周回路5c、より成り立っている。モータ作動連動SW回路5aの出力は操作SW7がオンのときにはモーt回転に伴うリップルパルスに完全同期しており、そのモータ回転に同期するパルスを分周回路5cに通すことで、リップルパルスの周期が1/2,1/4,1/8分周になって出力がなされ、このような分周された出力がCPU2の入力ポートに入力されている。
【0038】
つまり、上記した構成のモータ回転パルス生成回路3は、直流モータ11の回転に同期して、正確にパルス出力を行うことができるため、正確な位置制御を伴うメモリシート装置(メモリシート)10に適用できる。
【0039】
そこで、一実施形態として、メモリシートについて処理について図6以降のフローチャートを参照して説明する。
【0040】
車両においては、車両キー(図示せず)をキーシリンダ(図示せず)に差し込み車両キーを回すと、イグニッションスイッチ13がオンされ、CPU2はウェイクアップし、制御装置1はCPU2のROMの中に記憶された図6に示されるプログラム(メインルーチン 2msec毎)を実行する。この場合、CPU2がスリープ状態のとき(省電力モードのとき)であっても、バックアップ電源が供給されメモリに記憶が可能であるものとする。
【0041】
メインルーチンではまず最初にステップS101においてイニシャル(初期設定)が行われる。このイニシャルではROMおよびRAMのチェック、メモリクリア、必要な定数のメモリ設定、およびシステムが正常に動作するかのチェックがなされる。ここで、CPU2に電源が投入されたときの各々のモータ11のモータ位置が初期値(初期位置)として記憶される。その後、ステップS102においてマニュアル処理を行う。
【0042】
マニュアル処理(図7参照)では、ステップS201において、最初に操作スイッチ7のいずれかが乗員により操作されオンされたかが判定される。尚、ここでは、操作スイッチ7(7a〜7d)により、その操作スイッチ7に該当するモータ11(11a〜11d)が駆動されるという4つのモータ制御はどれも同じであるため、個々のモータ11a〜11dについてはそれぞれの説明を省略し、一般化したモータ制御の説明を行うものとする。
【0043】
ステップS201において操作スイッチ7がON(オン)されていない場合(メモリシートの要求無)には、ステップS206においてモータ11の動作を停止させ、ステップS207において操作スイッチ7がオンからオフに切り換わったかが判定される。ここで、操作スイッチ7の操作が終了した(オンからオフに切り換わった)場合にのみ、後述するステップS208のパルスカウント処理を行い、この処理を終了する。
【0044】
一方、ステップS201において操作スイッチ7がオンの場合(メモリシートの要求有)にはステップS202で今後は押されている操作スイッチ7の状態からモータ11を正転指示(正転要求)しているのか、逆転指示(逆転要求)しているのかが判定される。このモータ11の正転/逆転指示は、シートの状態を前後移動/前倒後倒/上下移動させる方向により、車両において車両設計時に予め設定されているものであり、ここで、正転指示されている場合にはステップS203においてモータ11に正転を行う出力を出し、該当するモータ11に接続されたリレー9のコイルに通電することにより、モータ11を正転駆動させる。
【0045】
次のステップS204においては、モータ回転パルス生成回路3の出力からリップルパルスのエッジ入力があったか否かが判定される。ここで、エッジが入力されない場合にはこの処理を終了するが、リップルパルスのエッジが入力された場合にはステップS205において、モータ位置を記憶しているモータ位置カウンタの値を重み付けしてインクリメント(+4)し、これをモータ現在位置として記憶する。
【0046】
一方、ステップS202において操作スイッチ7が操作され逆転指示されている場合には、ステップS209でモータ11に逆転を行う出力を出し、該当するモータ11に接続されたリレー9のコイルに通電することによりモータ11を逆転動作させる。
【0047】
次のステップS210においては、同じくモータ回転パルス生成回路3の出力からリップルパルスのエッジ入力があったか否かが判定される。ここでエッジが入力されない場合にはこの処理を終了するが、リップルパルスのエッジが入力された場合にはステップS211において、モータ位置を記憶しているモータ位置カウンタの値を逆転していることから重み付けを行いデクリメント(−4)し、これをモータ現在位置として記憶する。
【0048】
次に、ステップS208に示すパルスカウント処理について図10を参照して説明する。上記したマニュアル処理ではリップルパルスのエッジに基づき生成された1/8分周パルスによって、モータ11により動作する可動部材STの位置(概略位置)を求める。しかし、ここで求めた位置は誤差分を含んでいるので、その誤差を1/4および1/2分周パルスを用いて補完し、位置精度を向上させる。ここでは、モータ11が正転または逆転状態から停止したとき分周回路5cにより出力される1/4および1/2分周パルスの状態がHiかLoかにより、モータ現在位置に重み付けを行って、リップルパルスの周期による誤差を補完するものである。
【0049】
そこで、ステップS501では、まず、操作スイッチ7の状態からモータ11の正転動作を停止(正転要求を停止)したのか、逆転動作を停止(逆転要求を停止)したのかが判定される。この場合、モータ11の正転作動停止/逆転作動停止とは、操作スイッチ7のスイッチ状態がオンからオフになった(操作されなくなった)状態を示し、正転作動停止した場合、ステップS502においてモータ動作停止時の分周回路5cから1/4分周出力がHi状態であるかが判定される。この信号がHiでない場合には、重み付けを行わずステップS504に移るが、Hi状態のときにはステップS503においてモータ位置を記憶するモータ位置カウンタの現在のモータ位置に重み付け(+2)を行い、それをモータ位置カウンタの値として記憶する。
【0050】
次の、ステップS504では今度モータ動作停止時の分周回路5cから1/2分周出力がHi状態であるかが判定される。この信号がHiでない場合には、重み付けを行わずこの処理を終了するが、Hi状態のときにはステップS505においてモータ位置を記憶するモータ位置カウンタの現在のモータ位置に重み付け(+1)を行い、それをモータ位置カウンタの値として記憶する。
【0051】
一方、逆転停止の場合も正転停止の場合と同様、ステップS506においてモータ動作停止時の分周回路5cから1/4分周出力がHi状態であるかが判定される。この信号がHiでない場合には、重み付けを行わずステップS508に移るが、Hi状態のときにはステップS503においてモータ位置を記憶するモータ位置カウンタの現在のモータ位置に重み付け(−2)を行い、それをモータ位置カウンタの値として記憶する。
【0052】
次の、ステップS508では今度モータ動作停止時の分周回路5cから1/2分周出力がHi状態であるかが判定される。この信号がHiでない場合には、重み付けを行わずこの処理を終了するが、Hi状態のときにはステップS509においてモータ位置を記憶するモータ位置カウンタの現在のモータ位置に重み付け(−1)を行い、それをモータ位置カウンタの値として記憶して重み付け処理を行う。
【0053】
そこで、図11ではリップルパルス成形回路3bから出力されるリップルパルスと分周制御回路5の各部における信号状態のタイミングチャートおよび一定周期(2ms)のメインルーチンの処理タイミングを示している。この図から、操作スイッチ7の操作によるモータオン状態からオフ状態までの間、リップルパルスでは17パルス出力されている。カウント動作開始時にクリア出力回路5bによりカウンタをクリア(1パルスLo出力)し、分周されたパルス出力を基に正確にリップルパルスを生成できる。つまり、この例ではこの期間、1/8分周パルス(リップルパルス4個分の周期)のエッジ入力(立ち上がり/立ち下がりエッジ)が4個入力され、モータオフ時(モータSWオフ状態)には1/2分周パルス(リップルパルスと同じ周期)のみHi出力になっている。これを基に、パルス数は各分周パルスの和(1/2,1/4,1/8分周パルスの和=4×4+0×2+1×1)で求められ、17という値が求まる。つまり、これは元のリップルパルスのパルス数(17パルス)と一致することから分周パルスによっても正確にパルスの再現が可能であることがわかる。
【0054】
このように、分周回路5cによる分周出力を用いることで、リップルパルスを直接用いてモータ状態を検出するより、CPU側の演算負荷が軽くなる。また、この場合、外部割込み機能を必要としないので、通信機能への影響および、CPUの高性能化は必要なくなる。更に、モータ停止時の分周出力により位置補正を行うので、パルス分解能への影響はない。尚、この場合、分周パルスに基づく重み付けとして±4,±2,±1を用いたがこれに限定されず、また、分周周波数もまたこれに限定されないものとする。
【0055】
次に、メインルーチンのステップS103のメモリ再生処理を図8のステップにより行う。ステップS301ではメモリ再生スイッチ8aがオン(押されたか)が判定され、このスイッチ8aが押されていない場合にはステップS314に移るが、メモリ再生スイッチ8aが乗員により押された場合にはシート位置の簡単な自動調整が必要とみなし、ステップS302を行う。ステップS302ではイグニッションスイッチ13がオンされているかが判定され、イグニッションスイッチ13がオンされていない場合にはステップS301と同じようにステップS314に移るが、イグニッションスイッチ13がオンされている場合には、次にモータ現在位置の比較がなされる。このモータ現在位置の比較はモータ11の正転/逆転によりインクリメント/デクリメントを行うモータ位置カウンタの値によりメモリに記憶されたメモリ値と比較されるものであって、モータ現在位置がメモリ値より小さい場合には、ステップS304でモータ11を正転させるが、モータ現在位置がメモリ値以上になった場合にはステップS309でモータ11を逆転させる。
【0056】
以下のステップS305〜S308の処理と、ステップS310〜S313の処理は基本的には同じであり、ここではリップルパルスのエッジ入力が入った場合にはモータ位置カウンタをモータ正転時にはインクリメント(+4)し、逆転時にがデクリメント(−4)することで現在のモータ状態をカウンタの状態で記憶する方法をとっている。その後、所定時間(例えば、0.5sec以内にエッジ入力があったか否かを検出し、その期間にパルス入力がない場合にはモータロックと判定するモータロック判定がなされ、エッジが所定時間内に検出された場合には、今度はモータ現在位置がメモリに記憶されたメモリ値と一致するかが判定される。ここで、メモリ値とモータ現在位置とが一致しないない場合には、まだメモリ位置までシートSTの状態が動いていないことからステップS303に戻り、ステップS303からの同じ処理を繰り返しメモリされた位置(±4)になるまで位置調整を行うが、モータ現在位置がメモリ値と一致した場合にはステップS314に移り、ステップS314ではモータ11の動作を停止させる。
【0057】
その後、メインルーチンのステップS104においてメモリ記憶を行う。このメモリ記憶は図9に示されるように、ステップS401においてメモリ記憶スイッチ8bが押されたかが判定され、メモリ記憶スイッチ8bが押されていれば、メモリ記憶の要求有として、今度はメモリ再生スイッチ8aが押されているかが判定される。つまり、ステップS401,S402ではメモリ記憶スイッチ8bとメモリ再生スイッチ8aが同時に押されている場合にのみステップS403でCPU内のメモリにそのときのシート状態が記憶されるようになっている。
【0058】
尚、ここでは、モータ回転パルス生成回路3をメモリシートを制御する制御装置1に適用した場合について説明を行ってきたが、これに限定されるものではなく、可動部材の状態をメモリ上で記憶し、記憶後に再度、記憶された状態まで可動部材を動かす装置に適用することが可能である。
【0059】
また、リップルパルスに基づき分周回路5cにより分周されたパルスを生成するとき、モータ作動連動SW回路5aおよびクリア出力回路5bを用いたが、CPU2によりそれに代わる信号出力を出し、リップルパルスを分周回路5cのクロック入力に入力し、CPU2からのそれに代わる信号出力を分周回路5cのクリア端子およびラッチ端子に入力すれば、モータ作動連動SW回路5aおよびクリア出力回路5bは必要なくなり、回路が更に簡略化できる。
【0060】
【効果】
本発明によれば、パルス生成手段からのパルス出力をパルス分周手段により分周を行うことで、パルス生成手段からのパルス出力を分周し、周期の長くなったパルスに基づいて、制御手段では可動部材の位置制御および状態記憶が行え、パルス生成手段から出力されるパルスのパルス周期が非常に短くても、分周により周期が長くなることから、そのパルスが入力されるCPUでは演算負荷が少なくなる。このため、割込みによって短い周期で高速処理を行わなくて良く、割込み機能を付加したCPUは必要なく、コストアップしないものとなる。
【0061】
この場合、パルス周期の異なる複数のパルスに基づいて、簡単な構成により可動部材の正確な位置制御が行える。
【0062】
また、複数パルスの重み付けをパルス毎に変えることにより、誤差分を補完して可動部材の位置を求めれば、パルスによる誤差を考慮した正確な位置制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態における状態記憶装置の構成図である。
【図2】 本発明の一実施形態におけるモータ回転パルス生成回路および分周制御回路の回路ブロック図ある。
【図3】 本発明の一実施形態におけるモータ回転パルス生成回路のスイッチト・キャパシタ・フィルタの動作説明する説明図である。
【図4】 図2に示すリップルパルス成形回路の電気回路図である。
【図5】 図4の各点における波形を示したタイミングチャートである。
【図6】 本発明の一実施形態における制御装置の処理を示すフローチャートである。
【図7】 図6に示すマニュアル処理のフローチャートである。
【図8】 図6に示すメモリ再生処理のフローチャートである。
【図9】 図6に示すメモリ記憶処理のフローチャートである。
【図10】 図7に示すパルスカウント処理のフローチャートである。
【図11】 図2の各点に示すタイミングチャートである。
【図12】 本発明の一実施形態におけるシートの動作を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 制御装置
2 CPU
3 モータ回転パルス生成回路(パルス生成手段)
5 分周制御回路(パルス分周手段)
7 操作スイッチ(スイッチ部材)
8 メモリスイッチ(スイッチ部材)
10 状態記憶装置
11 直流モータ(モータ)
BAT バッテリー(電力供給源)
ST シート(可動部材)
SC シートクッション(可動部材)
SB シートバック(可動部材)
Claims (3)
- モータにより可動部材を駆動して、該可動部材の位置を所望の位置に調整すると共に、該所望の位置を記憶し、前記可動部材が前記所望の位置とは異なる任意の位置に調整された後であっても、再度、記憶された前記所望の位置に前記可動部材を移動可能な制御手段を備えた状態記憶装置において、
前記モータのモータ回転に同期したパルス出力を行うパルス生成手段と、該パルス出力を分周してパルス周期の異なる複数のパルスを生成するパルス分周手段とを設け、
前記制御手段は、前記複数のパルスに重み付けを行い、それら重み付けを行った複数のパルスに基づいて前記可動部材の制御を行うことを特徴とする状態記憶装置。 - 前記制御手段は、前記複数のパルスの重み付けをパルス毎に変えることを特徴とする請求項1に記載の状態記憶装置。
- 前記制御手段は、前記複数のパルスのうち、分周比が大きいパルスに基づいて前記可動部材の制御を行った後、それよりも分周比が小さいパルスに基づいて前記可動部材の制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の状態記憶装置。
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