JP4019401B2 - 工業用抗菌剤組成物及び抗菌方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工業用抗菌剤組成物及び抗菌方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、紙・パルプ工業における抄紙工程水、各種工業用の冷却水や洗浄水のスライム防止用、重油スラッジ、金属加工油剤、繊維油剤、ペイント、紙用塗工液、ラテックス、糊剤などの防腐用、殺菌用として有用である工業用抗菌剤組成物及び抗菌方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から紙・パルプ工業における抄紙工程や、各種工業における冷却水系統には、細菌や真菌によるスライムが発生し、生産品の品質低下や生産効率の低下などの障害を惹起することが知られている。また、多くの工業製品、例えば、重油スラッジ、金属加工油剤、繊維油剤、ペイント類、各種ラテックス、糊剤などでは、細菌や真菌による腐敗や汚染が発生し、製品を汚損し、商品価値を低下させる。これらの微生物による障害を防止するために、多くの殺菌剤が使用されてきた。
古くは、有機水銀化合物や塩素化フェノール系化合物などが使用されていたが、これらの薬剤は人体や魚介類に対する毒性が強く、環境汚染を引き起こすために使用が規制されるようになり、最近では、比較的低毒性の有機窒素硫黄系化合物、有機ハロゲン系化合物、有機硫黄系化合物が、工業用殺菌剤として汎用されている(防菌防黴剤事典、日本防菌防黴学会、昭和61年発行)。しかし、これらの工業用殺菌剤は、ある種の細菌や真菌に対しては殺菌力が小さく、実系に適用した場合、極めて高濃度の添加が必要となり、経済性が悪いなどの問題があった。
このような問題を解決するため、いわゆる相乗効果を期待して、複数の殺菌剤を組み合わせて使用することが提案されている。例えば、特開昭50−24438号公報には、毒性、刺激性、泡立性などの問題点を解決したスライム防止剤及び産業用資材の腐敗、カビ防止剤として、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドと1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン又は1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテンの併用などが提案されている。しかし、これらの組成物は、改善された殺菌効力を有するものの、実系に適用した場合、その効果は必ずしも満足し得る水準に達していない。
スライムコントロール剤は、工業用抗菌剤に属し、非常に広い用途に用いられているが、従来のスライムコントロール剤の評価方法にも改善すべき課題があった。すなわち、従来からスライムコントロール剤の選定は、薬剤の水中分散菌に対する殺菌効果や、増殖抑制効果を評価することにより行われてきた。しかし、薬剤の水中分散菌に対する効果と、スライムに対する効果が、必ずしも相関しないということが最近明らかになってきた(J.C.Nickel,I.Ruseska,J.B.Wright,J.W.Costerton,Antimicrobial Agents and Chemother.,27(4)619〜624('85),Tobramycin Resistance of Pseudomonas aeruginosa Cells Growing as a Biofilm on Urinary Catheter Material.)。したがって、スライムに対する抗菌剤の効果は、水中分散菌に対してのみならず、水中の壁面に生長するスライムに対しても評価する必要がある。
このような事情のもとに、分散菌に対しても、スライムに対しても、低濃度の添加で有効な工業用抗菌剤が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、紙・パルプ工業における抄紙工程水、各種工業用の冷却水や洗浄水のスライム防止用、重油スラッジ、金属加工油剤、繊維油剤、ペイント、紙用塗工液、ラテックス、糊剤などの防腐用、殺菌用として有用であり、水中の分散菌に対しても、壁面のスライムに対しても効果を発揮する工業用抗菌剤組成物及び抗菌方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、壁面に付着したスライムに対する効果を評価することができるスライム付着モニターを用いて鋭意研究を重ねた結果、公知の殺菌剤である1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンが、水中のBOD成分濃度が高く、スライムが発生しやすい系においてもスライム生成を防止するという特徴を有し、さらに2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド並びに2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン、1,3−ビス(ブロモアセトキシ)プロパン及び1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテンから選ばれる少なくとも1種の化合物と組み合わせることにより、水中の分散菌と壁面のスライムの双方に対して、相乗的に防止効果が発揮されることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドと(B)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン、1,3−ビス(ブロモアセトキシ)プロパン及び1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテンから選ばれる少なくとも1種の化合物と(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンを含有することを特徴とする工業用抗菌剤組成物、
(2)(A)成分と(B)成分との重量比が1:99〜99:1であり、かつ(A)成分と(B)成分の合計量と(C)成分の重量比が1:99〜99:1である第(1)項記載の工業用抗菌剤組成物、及び、
(3)第(2)項記載の工業用抗菌剤組成物を、(A)成分と(B)成分と(C)成分の濃度の合計が0.01〜200mg/リットルとなるように添加することを特徴とする抗菌方法、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の工業用抗菌剤組成物は、(A)成分として、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドを含有し、(B)成分として、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン、1,3−ビス(ブロモアセトキシ)プロパン及び1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテンから選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、(C)成分として、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンを含有する3成分系からなるものである。ここに工業用抗菌剤とは、各種工業用水系用のスライムコントロール剤、工業製品の防腐剤、殺菌・静菌剤を含むものである。
本発明組成物において、(A)成分として用いる2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドは、式[1]で表される化合物である。
【化1】
本発明組成物において、(B)成分として用いる2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールは、式[2]で表される化合物であり、
【化2】
1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタンは、式[3]で表される化合物であり、
【化3】
1,3−ビス(ブロモアセトキシ)プロパンは、式[4]で表される化合物であり、
【化4】
1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテンは、式[5]で表される化合物である。
【化5】
また、本発明組成物において、(C)成分として用いる1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンは、式[6]で表される化合物である。
【化6】
1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンは、従来より、ラテックスペイント、接着剤、金属加工油剤などの防腐剤として用いられている。
【0006】
本発明の工業用抗菌剤組成物において、(B)成分である2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン、1,3−ビス(ブロモアセトキシ)プロパン及び1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテンは、それぞれ1種を単独で用いることができ、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明の工業用抗菌剤組成物において、(A)成分と(B)成分と(C)成分の比に特に制限はないが、(A)成分と(B)成分の重量比が1:99〜99:1であることが好ましく、10:90〜90:10であることがより好ましく、30:70〜75:25であることがさらに好ましい。また、(A)成分と(B)成分の合計量と(C)成分の比に特に制限はないが、(A)成分と(B)成分の合計量と(C)成分の重量比が1:99〜99:1であることが好ましく、50:50〜98:2であることがより好ましく、65:35〜97:3であることがさらに好ましい。(A)成分と(B)成分の重量比を1:99〜99:1とし、さらに(A)成分と(B)成分の合計量と(C)成分の重量比を1:99〜99:1とすることにより、水中の分散菌に対する殺菌性とスライムの付着防止効果をともに向上することができる。
【0007】
本発明の工業用抗菌剤組成物の形態には特に制限はなく、例えば、(A)成分と(B)成分と(C)成分のすべてを含む1剤型とすることができ、あるいは、(A)成分と(B)成分と(C)成分のうちの1成分を含む剤と2成分を含む剤からなる2剤型として別々に添加することもでき、さらには、(A)成分と(B)成分と(C)成分をそれぞれ単独に含む3剤型とすることもできる。これらの中で、(A)成分と(B)成分と(C)成分を含む液状の1剤型抗菌剤は、取り扱いが容易であり、好適に使用することができる。
(A)成分と(B)成分と(C)成分を含む液状の1液型抗菌剤は、(A)成分と(B)成分と(C)成分を有機溶媒に溶解して製剤化することができ、あるいは、(A)成分と(B)成分と(C)成分を含む水性懸濁液として製剤化することもできる。(A)成分と(B)成分と(C)成分を有機溶媒に溶解して製剤化するとき、使用する有機溶媒は、殺菌対象系が製紙工程のプロセス水や工場用冷却水などの各種水系である場合には、有効成分の分散性及び溶解性を考慮して、親水性有機溶媒であることが好ましい。親水性有機溶媒としては、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、2−エチルヘキサノールなどのアルコール類、メチルアセテート、エチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、プロピレンカーボネートなどのエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類などを挙げることができる。
【0008】
(A)成分と(B)成分と(C)成分を含む水性懸濁液として製剤化する場合は、ボールミルや、アトライターなどを用いて(A)成分と(B)成分と(C)成分を湿式粉砕し、水性懸濁液とすることができる。水性懸濁液を製造する場合は、キサンタンガム、ラムザンガム、グアーガムなどの増粘剤や、分散剤としてノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができる。
また、殺菌対象系が重油スラッジ、切削油、油性塗料など油系である場合には、重油、灯油、スピンドル油などの炭化水素系溶媒を用いて、液状の1液型抗菌剤とすることが好ましい。炭化水素系溶媒を用いて1液型抗菌剤とする場合も、前述の各種の界面活性剤などを用いることができる。
本発明の工業用抗菌剤組成物の使用方法には特に制限はなく、紙・パルプ工業における抄紙工程水、各種工業用の冷却水や洗浄水、重油スラッジ、金属加工油剤、繊維油剤、ペイント、紙用塗工液、ラテックス、糊剤などに、適宜添加して用いることができる。添加量には特に制限はなく、対象物、環境条件、使用目的などに応じて選定することができるが、多くの場合、(A)成分と(B)成分と(C)成分の濃度の合計が0.1〜200mg/リットルであることが好ましく、0.1〜50mg/リットルであることがより好ましい。(A)成分と(B)成分と(C)成分の濃度の合計が0.1mg/リットル未満であると、抗菌作用が不足するおそれがある。(A)成分と(B)成分と(C)成分の濃度の合計が200mg/リットルあれば、水中の分散菌に対する殺菌性もスライム防止効果も十分に発揮され、濃度の合計が200mg/リットルを超える量の添加は、通常は不必要である。
本発明の(A)成分と(B)成分と(C)成分とを含有する工業用抗菌剤組成物は、種々の工業用対象系において、顕著に微生物の増殖と付着を防止する働きを示し、特に抄紙工程水用スライムコントロール剤、紙用塗工液や糊剤などの殺菌剤として極めて有用である。
【0009】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、スライム付着防止効果は、下記の方法により評価した。
SUS304製の内径100mm、容積488mlの外部シリンダと、SUS304製の直径36mmの内部シリンダを組み合わせたスライム付着モニター(特開平9−75065号公報に記載のもの。)を用いた。白水又は人工白水を、水温30℃、滞留時間20分となるように連続的に外部シリンダに導き、内部シリンダを255rpmで回転させ、ブルックフィールド式トルクメータ[東機産業(株)、RE500H型]で内部シリンダの回転トルクを測定した。
時間の経過とともに内部シリンダにスライムが付着、生長すると、内部シリンダ表面の摩擦抵抗が増大し、回転トルクの値が上昇する。この原理を利用して、時間を横軸、回転トルクを縦軸にとって、1分ごとに回転トルクの値をパーソナルコンピュータに図示し、回転トルクの値が上昇しはじめる時間をスライム付着開始時間とした。抗菌剤組成物を添加した白水又は人工白水を用いた場合のスライム付着開始時間から、抗菌剤組成物を添加しない白水又は人工白水を用いた場合のスライム付着開始時間を差し引いた値を遅延時間とし、抗菌剤組成物のスライム付着防止効果の指標とした。
【0010】
製造例1
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド12.5重量部、(B)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール7.5重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン5.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物Aを製造した。
製造例2
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド12.5重量部、(B)1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン7.5重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン5.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物Bを製造した。
製造例3
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド12.5重量部、(B)1,3−ビス(ブロモアセトキシ)プロパン7.5重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン5.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物Cを製造した。
製造例4
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド12.5重量部、(B)1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン7.5重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン5.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物Dを製造した。
製造例1〜4において製造した工業用抗菌剤組成物A〜Dは、(A)成分と(B)成分の重量比が62.5:37.5であり、(A)成分と(B)成分の合計量と(C)成分の重量比が8:2である。
【0011】
製造例5
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド12.5重量部、(B)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール10.0重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン2.5重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物Eを製造した。
製造例6
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド12.5重量部、(B)1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン10.0重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン2.5重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物Fを製造した。
製造例7
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド12.5重量部、(B)1,3−ビス(ブロモアセトキシ)プロパン10.0重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン2.5重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物Gを製造した。
製造例8
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド12.5重量部、(B)1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン10.0重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン2.5重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物Hを製造した。
製造例5〜8において製造した工業用抗菌剤組成物E〜Hは、(A)成分と(B)成分の重量比が55.6:44.4であり、(A)成分と(B)成分の合計量と(C)成分の重量比が9:1である。
【0012】
製造例9
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド15.0重量部、(B)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール7.5重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン2.5重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物Iを製造した。
製造例10
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド15.0重量部、(B)1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン7.5重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン2.5重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物Jを製造した。
製造例11
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド15.0重量部、(B)1,3−ビス(ブロモアセトキシ)プロパン7.5重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン2.5重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物Kを製造した。
製造例12
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド15.0重量部、(B)1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン7.5重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン2.5重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物Lを製造した。
製造例9〜12において製造した工業用抗菌剤組成物I〜Lは、(A)成分と(B)成分の重量比が66.7:33.3であり、(A)成分と(B)成分の合計量と(C)成分の重量比が9:1である。
【0013】
製造例13
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド10.0重量部、(B)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール10.0重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン5.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物Mを製造した。
製造例14
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド10.0重量部、(B)1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン10.0重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン5.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物Nを製造した。
製造例15
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド10.0重量部、(B)1,3−ビス(ブロモアセトキシ)プロパン10.0重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン5.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物Oを製造した。
製造例16
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド10.0重量部、(B)1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン10.0重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン5.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物Pを製造した。
製造例13〜16において製造した工業用抗菌剤組成物M〜Pは、(A)成分と(B)成分の重量比が50:50であり、(A)成分と(B)成分の合計量と(C)成分の重量比が8:2である。
【0014】
参考例1
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド15.0重量部、(B)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール10.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物aを製造した。
参考例2
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド15.0重量部、(B)1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン10.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物bを製造した。
参考例3
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド15.0重量部、(B)1,3−ビス(ブロモアセトキシ)プロパン10.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物cを製造した。
参考例4
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド15.0重量部、(B)1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン10.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物dを製造した。
参考例5
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド15.0重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン10.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物eを製造した。
参考例1〜4において製造した工業用抗菌剤組成物a〜dは、(A)成分と(B)成分を含有するが、(C)成分を含有しないものであり、参考例5において製造した工業用抗菌剤組成物eは、(A)成分と(C)成分を含有するが、(B)成分を含有しないものである。
【0015】
参考例6
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド25.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物fを製造した。
参考例7
(B)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール25.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物gを製造した。
参考例8
(B)1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン25.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物hを製造した。
参考例9
(B)1,3−ビス(ブロモアセトキシ)プロパン25.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物iを製造した。
参考例10
(B)1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン25.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物jを製造した。
参考例11
(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン25.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を配合して、工業用抗菌剤組成物kを製造した。
参考例6において製造した工業用抗菌剤組成物fは、(A)成分のみを含有するものであり、参考例7〜10において製造した工業用抗菌剤組成物g〜jは、(B)成分のみを含有するものであり、参考例11において製造した工業用抗菌剤組成物kは、(C)成分のみを含有するものである。
【0016】
実施例1及び比較例1においては、人工白水を用いてスライム防止効果を評価した。人工白水(pH7.0、30℃)は、デンプンを栄養源としてBOD100mg/リットルとなるように調製し、この人工白水を培地とした複数の細菌種からなる集殖培養液を1×107CFU/mlとなるように連続添加した。抗菌剤組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量が、系内で10mg/リットル又は20mg/リットルを毎回15分間維持するように、1日に3回、すなわち8時間ごとに間欠注入した。この人工白水に、抗菌剤組成物を添加することなく試験した場合、スライム付着開始時間は10時間であった。
実施例1
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド12.5重量部、(B)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール7.5重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン5.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を含有する工業用抗菌剤組成物Aを、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量が系内で10mg/リットルを15分間維持するように注入したとき、スライム付着開始時間は33時間であり、したがって遅延時間は23時間であった。また、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量が系内で20mg/リットルを15分間維持するように注入したとき、スライム付着開始時間は51時間であり、したがって遅延時間は41時間であった。
工業用抗菌剤組成物Bを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は25時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は40時間であった。
工業用抗菌剤組成物Cを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は24時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は40時間であった。
工業用抗菌剤組成物Dを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は22時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は38時間であった。
工業用抗菌剤組成物Eを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は22時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は39時間であった。
工業用抗菌剤組成物Fを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は22時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は36時間であった。
工業用抗菌剤組成物Gを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は21時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は38時間であった。
工業用抗菌剤組成物Hを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は20時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は35時間であった。
工業用抗菌剤組成物Iを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は26時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は48時間であった。
工業用抗菌剤組成物Jを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は25時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は45時間であった。
工業用抗菌剤組成物Kを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は25時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は44時間であった。
工業用抗菌剤組成物Lを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は27時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は46時間であった。
工業用抗菌剤組成物Mを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は22時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は40時間であった。
工業用抗菌剤組成物Nを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は21時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は39時間であった。
工業用抗菌剤組成物Oを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は26時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は38時間であった。
工業用抗菌剤組成物Pを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は24時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は37時間であった。
【0017】
比較例1
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド15.0重量部、(B)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール10.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を含有する工業用抗菌剤組成物aを、(A)成分及び(B)成分の合計量が系内で10mg/リットルを15分間維持するように注入したとき、スライム付着開始時間は25時間であり、したがって遅延時間は15時間であった。また、(A)成分及び(B)成分の合計量が系内で20mg/リットルを15分間維持するように注入したとき、スライム付着開始時間は35時間であり、したがって遅延時間は25時間であった。
工業用抗菌剤組成物bを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は11時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は23時間であった。
工業用抗菌剤組成物cを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は15時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は24時間であった。
工業用抗菌剤組成物dを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は12時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は21時間であった。
工業用抗菌剤組成物eを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は14時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は29時間であった。
工業用抗菌剤組成物fを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は13時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は20時間であった。
工業用抗菌剤組成物gを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は10時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は15時間であった。
工業用抗菌剤組成物hを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は9時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は12時間であった。
工業用抗菌剤組成物iを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は10時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は13時間であった。
工業用抗菌剤組成物jを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は9時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は13時間であった。
工業用抗菌剤組成物kを、15分間維持濃度10mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は5時間であり、15分間維持濃度20mg/リットルとなるように注入したとき、遅延時間は7時間であった。
実施例1の結果を第1表に、比較例1の結果を第2表に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
第1〜2表に見られるように、添加した工業用抗菌剤組成物の有効成分の濃度が同じであっても、(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、(B)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン、1,3−ビス(ブロモアセトキシ)プロパン又は1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンの3成分を含有する本発明の工業用抗菌剤組成物を注入した実施例1の方が、2成分又は1成分のみを含有する工業用抗菌剤組成物を注入した比較例1よりも遅延時間が明らかに長く、スライムの付着防止に対して、3成分間の顕著な相乗効果が発現していることが分かる。
【0021】
実施例2〜5及び比較例2〜6においては、製紙工場の白水について、スライム付着防止効果を評価した。白水として、製紙工場の板紙抄造機より採取した白水(pH5.5、用水原単位15m3/T、BOD1,200mg/リットル、細菌構成:バチルス属、シュードモナス属、フラボバクテリウム属、アルカリゲネス属菌主体)を用い、抗菌剤組成物を、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量が、系内で25mg/リットルを毎回15分間維持するように、1日に3回、すなわち8時間ごとに間欠注入した以外は、実施例1及び比較例1と同様に評価した。この板紙抄造機より採取した白水に、抗菌剤組成物を添加することなく試験した場合、スライム付着開始時間は12時間であった。
実施例2
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、(B)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール及び(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンの3成分を白水に注入して、試験を実施した。
(A)成分と(B)成分と(C)成分の重量比を0.633:0.317:0.050としたとき、スライム付着開始時間は43時間であり、したがって遅延時間は31時間であった。
(A)成分と(B)成分と(C)成分の重量比をさらに変化させて、試験を継続した。(A)成分と(B)成分と(C)成分の重量比と、遅延時間を第3表に示す。
比較例2
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド及び(B)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールの2成分を白水に注入して、試験を実施した。
(A)成分と(B)成分の重量比を0.667:0.333としたとき、スライム付着開始時間は37時間であり、したがって遅延時間は25時間であった。
(A)成分と(B)成分の重量比をさらに変化させて、試験を継続した。(A)成分と(B)成分の重量比と、遅延時間を第3表に示す。
比較例3
(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンの1成分のみを白水に注入して、試験を実施した。スライム付着開始時間は19時間であり、したがって遅延時間は7時間であった。
【0022】
実施例3
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、(B)1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン及び(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンの3成分を白水に注入して、試験を実施した。
(A)成分と(B)成分と(C)成分の重量比を0.633:0.317:0.050としたとき、遅延時間は31時間であった。
(A)成分と(B)成分と(C)成分の重量比をさらに変化させて、試験を継続した。(A)成分と(B)成分と(C)成分の重量比と、遅延時間を第4表に示す。
比較例4
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド及び(B)1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタンの2成分を白水に注入して、試験を実施した。
(A)成分と(B)成分の重量比を0.667:0.333としたとき、遅延時間は23時間であった。
(A)成分と(B)成分の重量比をさらに変化させて、試験を継続した。(A)成分と(B)成分の重量比と、遅延時間を第4表に示す。
実施例4
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、(B)1,3−ビス(ブロモアセトキシ)プロパン及び(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンの3成分を白水に注入して、試験を実施した。
(A)成分と(B)成分と(C)成分の重量比を0.633:0.317:0.050としたとき、遅延時間は31時間であった。
(A)成分と(B)成分と(C)成分の重量比をさらに変化させて、試験を継続した。(A)成分と(B)成分と(C)成分の重量比と、遅延時間を第5表に示す。
比較例5
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド及び(B)1,3−ビス(ブロモアセトキシ)プロパンの2成分を白水に注入して、試験を実施した。
(A)成分と(B)成分の重量比を0.667:0.333としたとき、遅延時間は21時間であった。
(A)成分と(B)成分の重量比をさらに変化させて、試験を継続した。(A)成分と(B)成分の重量比と、遅延時間を第5表に示す。
【0023】
実施例5
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、(B)1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン及び(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンの3成分を白水に注入して、試験を実施した。
(A)成分と(B)成分と(C)成分の重量比を0.633:0.317:0.050としたとき、遅延時間は34時間であった。
(A)成分と(B)成分と(C)成分の重量比をさらに変化させて、試験を継続した。(A)成分と(B)成分と(C)成分の重量比と、遅延時間を第6表に示す。
比較例6
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド及び(B)1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテンの2成分を白水に注入して、試験を実施した。
(A)成分と(B)成分の重量比を0.667:0.333としたとき、遅延時間は24時間であった。
(A)成分と(B)成分の重量比をさらに変化させて、試験を継続した。(A)成分と(B)成分の重量比と、遅延時間を第6表に示す。
実施例2、比較例2及び比較例3の結果を第3表に、実施例3及び比較例4の結果を第4表に、実施例4及び比較例5の結果を第5表に、実施例5及び比較例6の結果を第6表に示す。
【0024】
【表3】
【0025】
【表4】
【0026】
【表5】
【0027】
【表6】
【0028】
第3〜6表に見られるように、添加した工業用抗菌剤組成物の有効成分の濃度が同じであっても、(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、(B)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン、1,3−ビス(ブロモアセトキシ)プロパン又は1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンの3成分を注入した実施例2〜5の方が、2成分のみを注入した比較例2と比較例4〜6よりも、また、1成分のみを注入した比較例3よりも遅延時間が明らかに長く、スライムの付着防止に対して、3成分間の顕著な相乗効果が発現していることが分かる。
例えば、(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドと(B)2−ブロモ−2−ニトリロプロパン−1,3−ジオールの重量比2:1の混合物を注入したときの遅延時間は25時間であり、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンを単独で注入したとはの遅延時間は7時間であるのに対し、(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドと(B)2−ブロモ−2−ニトリロプロパン−1,3−ジオールの重量比2:1の混合物に、さらに(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンを加えたときは、遅延時間は31〜42時間に伸びている。
【0029】
実施例6及び比較例7においては、製紙工場の上質紙抄造機で使用されているデンプン塗工液を採取し、細菌増殖防止試験を行った。
採取した製紙用デンプン塗工液は、pH9.6、寒天平板希釈法により測定した生菌数4.3×105個/mlであり、主要な構成細菌種は、シュードモナス属、アルカリゲネス属、フラボバクテリウム属であった。採取したデンプン塗工液の一部を予め保温器に入れて十分に腐敗させ、これを種菌としてデンプン塗工液に加えて生菌数を6.0×108個/mlとし、試験液とした。この試験液を試験管に分注し、工業用殺菌剤組成物を(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計の濃度が30mg/リットルになるように添加し、30℃に保った恒温器に5日間保存したのち、試験液中の生残菌数を寒天平板希釈法により測定した。
実施例6
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド12.5重量部、(B)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール7.5重量部、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン5.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を含有する工業用抗菌剤組成物Aを試験液に添加したとき、5日後の生残菌数は102個/ml以下であった。
工業用抗菌剤組成物B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、O及びPを用いて、同様に細菌増殖防止試験を行ったところ、5日後の生残菌数は全試験についてすべて102個/ml以下であった。
【0030】
比較例7
(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド15.0重量部、(B)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール10.0重量部及びジエチレングリコールモノメチルエーテル75.0重量部を含有する工業用抗菌剤組成物aを試験液に添加したとき、5日後の生残菌数は2.1×103個/mlであった。
工業用抗菌剤組成物bを試験液に添加したとき、5日後の生残菌数は8.3×103個/mlであった。
工業用抗菌剤組成物cを試験液に添加したとき、5日後の生残菌数は5.7×103個/mlであった。
工業用抗菌剤組成物dを試験液に添加したとき、5日後の生残菌数は5.2×103個/mlであった。
工業用抗菌剤組成物eを試験液に添加したとき、5日後の生残菌数は9.0×102個/mlであった。
工業用抗菌剤組成物fを試験液に添加したとき、5日後の生残菌数は4.5×103個/mlであった。
工業用抗菌剤組成物gを試験液に添加したとき、5日後の生残菌数は2.2×104個/mlであった。
工業用抗菌剤組成物hを試験液に添加したとき、5日後の生残菌数は3.6×104個/mlであった。
工業用抗菌剤組成物iを試験液に添加したとき、5日後の生残菌数は6.6×104個/mlであった。
工業用抗菌剤組成物jを試験液に添加したとき、5日後の生残菌数は3.9×104個/mlであった。
工業用抗菌剤組成物kを試験液に添加したとき、5日後の生残菌数は7.3×105個/mlであった。
実施例6及び比較例7の結果を、まとめて第7表に示す。
【0031】
【表7】
【0032】
第7表に見られるように、添加した抗菌剤組成物の有効成分の濃度が同じであっても、(A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、(B)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン、1,3−ビス(ブロモアセトキシ)プロパン又は1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンの3成分を含有する本発明の工業用抗菌剤組成物を生菌数6×108個/mlに調整したデンプン塗工液からなる試験液に添加した場合は、5日後の生残菌数はすべて102個/ml以下であるのに対して、2成分又は1成分のみを含有する工業用抗菌剤組成物を注入した比較例7においては、5日後の生残菌数は9.0×102〜7.3×105個/mlである。この結果から、(A)成分と(B)成分と(C)成分の3成分を含有する本発明の抗菌剤組成物の方が生残菌数が圧倒的に少なく、製紙用デンプン塗工液の防腐に対して、3成分の顕著な相乗効果が発現していることが分かる。
【0033】
【発明の効果】
本発明の工業用抗菌剤組成物は、紙・パルプ工業における抄紙工程水、各種工業用の冷却水や洗浄水のスライム防止用、重油スラッジ、金属加工油剤、繊維油剤、ペイント、紙用塗工液、ラテックス、糊剤などの防腐用、殺菌用として有用であり、水中の分散菌に対しても、壁面のスライムに対しても顕著な効果を発揮する。
Claims (3)
- (A)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドと(B)2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン、1,3−ビス(ブロモアセトキシ)プロパン及び1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテンから選ばれる少なくとも1種の化合物と(C)1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンを含有することを特徴とする工業用抗菌剤組成物。
- (A)成分と(B)成分との重量比が1:99〜99:1であり、かつ(A)成分と(B)成分の合計量と(C)成分の重量比が1:99〜99:1である請求項1記載の工業用抗菌剤組成物。
- 請求項2記載の工業用抗菌剤組成物を、(A)成分と(B)成分と(C)成分の濃度の合計が0.01〜200mg/リットルとなるように添加することを特徴とする抗菌方法。
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