JP4019221B2 - アナログ・ディジタル変換装置 - Google Patents

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Description

本発明は、アナログ・ディジタル変換装置に係り、特に、電力系統からのアナログ信号をディジタル信号に変換し、インテリジェント型ディジタル保護制御システムの入力センサとして用いるに好適なアナログ・ディジタル変換装置に関する。
従来、この種の装置としては、例えば、ディジタル保護リレー(第2世代ディジタルリレー)が知られており(非特許文献1)、この装置は、アナログ入力部、ディジタル演算処理部、整定部および出力部を備えて構成されている。アナログ入力部は、折返し誤差防止用のアナログフィルタ、サンプルホールド回路、マルチプレクサ、A/D変換器およびバッファを備えて構成されている。A/D変換器には16ビットの分解能を有するものが用いられており、A/D変換器の出力データに各種のフィルタ処理を施して使用する構成が採用されている。さらに、ディジタル保護リレーにおいては、高速サンプリングデータを用いたディジタルフィルタ処理用の入力基板と保護制御演算用の制御演算基板を備えて構成されており、入力基板は、主に電気角3.75度でアナログ信号をサンプリングし、サンプリングによって得られた信号を高調波除去用ディジタルフィルタを通過させ、ディジタルフィルタを通過した信号をディジタルデータとして30度に1回制御演算基板に転送するようになっている。制御演算基板においては、入力基板からのディジタルデータを基に電力系統を保護・制御するための演算を実行し、演算結果にしたがった制御信号を遮断器などに出力するようになっている。
一方、ディジタル保護リレーにおいては、電力系統からのアナログ信号を入力基板に取り込むに際して、電力系統を保護するための保護演算を行う保護装置と電力系統の構成を制御するための制御装置とでは取り扱うフルスケール電流値が異なるため、保護装置と制御装置には入力変換器としてのトランスがそれぞれ個別に接続されるようになっている。保護装置用のトランスは、電力系統からのアナログ信号を保護演算に適した信号レンジのレベルに変換するようになっており、例えば、数100Aの電流が入力されたときに数ボルトの電圧を出力し、数1000Aの電流が入力されたときには数10ボルトの電圧を出力するようになっている。
一方、制御装置用のトランスは、電力系統からのアナログ信号を制御演算に適した信号レンジのレベルに変換するようになっている。例えば、数10Aの電流が入力されたときに数ボルトの電圧を出力し、数100Aの電流が入力されたときに数10ボルトの電圧を出力するようになっている。そして各トランスでレベルが変換されたアナログ信号をマルチプレクサを介して順次16ビットのA/D変換器に入力し、A/D変換器でディジタル信号に変換するようになっている。
また、保護装置において、フルスケール電流値の異なる複数のアナログ信号をディジタル信号に変換するに際しては、電力系統からのアナログ信号を、フルスケールの異なる複数の電気量入力回路に取り込み、各電気量入力回路においてアナログ信号をサンプリングしてホールドし、ホールドされた信号をマルチプレクサを介してA/D変換器でディジタルデータに変換し、このディジタルデータを基に各電気量入力回路に対応する複数の保護リレー演算部で系統を保護するための保護演算を行うようにしたもの提案されている(特許文献1)。
電気協同研究 第50巻第1号 特開平5−161245号公報(第3頁〜第4頁、図1、図2)
前記従来技術においては、フルスケールの電流値が異なるアナログ信号のレベルを変換するに際して、アナログ信号のレベルを変換する信号レベル変換手段としてのトランス(入力変換器)を複数台設けなければならず、1台のトランスで共用化することができない。
本発明の課題は、制御演算に適した小信号領域のアナログ信号から保護演算に適した大信号領域のアナログ信号までを、単一の信号レベル変換手段によって精度の高いディジタル信号に変換することにある。
前記課題を解決するために、本発明は、電力系統の電圧・電流信号を保護装置及び制御装置に対応した入力電圧レベルのアナログ信号に変換して出力する電圧・電流変換手段と、該電圧・電流変換手段により変換された前記アナログ信号をサンプリング周波数にしたがってディジタル信号に変換するアナログ・ディジタル変換手段と、接地電位を信号源として、前記信号源からのアナログ信号を前記アナログ・ディジタル変換手段に同期してディジタル信号に変換する補助アナログ・ディジタル変換手段と、前記アナログ・ディジタル変換手段により変換されたディジタル信号と前記補助アナログ・ディジタル変換手段により変換されたディジタル信号との差分を演算してディジタル変換出力とする演算手段とを備えてなることを特徴とするアナログ・ディジタル変換装置を構成したものである。
また、前記アナログ・ディジタル変換装置を構成するに際しては、以下の要素を付加することができる。
)前記アナログ・ディジタル変換手段と前記補助アナログ・ディジタル変換手段は、前記アナログ信号をΔΣ変調方式によって前記ディジタル信号に変換する要素として、前記アナログ信号を積分する積分器と、前記積分器の出力信号をデルタ変調するデルタ変調器とを備えてなる。
)前記アナログ・ディジタル変換手段と前記補助アナログ・ディジタル変換手段は、同一の半導体チップ上に形成されてなる。
)前記演算手段は、前記補助アナログ・ディジタル変換手段の変換によるディジタル信号をゲイン倍するゲイン補正用乗算器と、前記ゲイン補正用乗算器によってゲイン倍されたディジタル信号と前記アナログ・ディジタル変換手段の変換によるディジタル信号との差分を演算するノイズキャンセル用差分器とを備えてなる。
)前記演算手段は、前記ノイズキャンセル用差分器の演算結果から直流分を抽出する積分器と、前記ノイズキャンセル用差分器の演算結果と前記積分器の出力との差分を演算するオフセット補正用差分器と、前記オフセット補正用差分器の演算結果にゲイン誤差補正係数を乗算して出力するゲイン誤差補正用乗算器とを備えてなる。
)前記ゲイン誤差補正用乗算器の出力による電気信号を光信号に変換して送出する光電変換器を備えてなる。
また、電力系統からのアナログ信号をディジタル信号に変換するアナログ・ディジタル変換装置と、前記アナログ・ディジタル変換装置の出力によるディジタル信号を基に保護・制御対象を保護・制御するための演算を行い、前記演算に従った保護・制御信号を前記保護・制御対象に出力する保護・制御演算装置とを備えたディジタル保護制御システムを構成するに際しては、前記アナログ・ディジタル制御装置として、前記いずれかのアナログ・ディジタル変換装置を用いることができる。
前記した手段によれば、電力系統信号を信号源とするアナログ・ディジタル変換手段と、接地電位を信号源とする補助アナログ・ディジタル変換手段を同期して動作させ、2つのアナログ・ディジタル変換手段の出力の差を取ってノイズ成分を除去できるので、小信号のアナログ信号でも高精度にディジタル信号に変換することができる。よって、小信号から大信号までの信号を、単一の信号レベル変換手段によって信号変換できるようになるので、信号レベル変換手段を共用化することができ、ハードウエアの構成の簡素化およびコスト低減に寄与することができる。
本発明によれば、単一の信号レベル変換手段によって変換されたアナログ信号を高精度にディジタル信号に変換することができるとともに、信号レベル変換手段を共用化することができる。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態を示すアナログ・ディジタル変換装置をディジタル保護制御システムの入力センサとして用いたときのブロック構成図である。
図1において、ディジタル保護制御システムの入力センサを構成するアナログ・ディジタル変換装置は、信号レベル変換手段として、電流センサ10、積分回路12、差動アンプ14、折返し誤差防止用ローパスフィルタ16を備え、アナログ・ディジタル変換手段として、ΔΣA/D変換器18、タイミング制御回路20、クロック発振回路22、24、各種演算を実行するマイクロコンピュータ(CPU)26、シリアルデータをパラレルデータに変換するシリアル・パラレル変換回路(S/P回路)28、双方向のポートを有するデュアルポートメモリ30、信号バス32、マイクロコンピュータ26のワークメモリ34を備えて構成されており、信号バス32には外部との通信を行うための通信回路36が接続され、通信回路36には、通信回路36の電気信号を光信号101dに変換する電気/光変換器(E/O変換器)38が接続されている。積分器12〜電気/光変換器38は1枚のプリント基板(半導体チップ)上に実装されている。
ΔΣA/D変換器18は、二組のΔΣ変調A/D変換回路18a、18b、二組の帯域制限用ディジタルフィルタ18c、18d、各ディジタルフィルタ18c、18dの出力信号を1本の出力信号に合成してシリアル/パラレル変換回路28に出力する出力インターフェイス回路(IF回路)18eを備えて構成されている。ΔΣ変調A/D変換回路18aは1チャネルのA/D変換回路として、電力系統からのアナログ信号を取り込むために、ローパスフィルタ16に接続され、ΔΣ変調A/D変換回路18bは、2チャネルのA/D変換回路として、ΔΣA/D変換器18に近接した部位の接地電位に接続されている。すなわちΔΣ変調A/D変換回路18bは、クロックのノイズの影響をキャンセルするために設けられている。そして各ΔΣ変調A/D変換回路18a、18bは独立した状態で且つ同期したタイミングで変換動作を行うように構成されている。
タイミング制御回路20は、クロック発振回路22からのクロックに応答して、マイクロコンピュータ26に対して起動信号を出力するとともに、ΔΣ変調A/D変換回路18a、18bに対して変換開始指令信号101aを出力し、シリアル/パラレル変換回路28に対してシリアル/パラレル動作クロック信号101bを出力するようになっている。
電流センサ10は、電力設備(遮断器)に直付けされた状態で電力系統に接続されており、この電流センサ10としては、例えば、ロゴスキーコイルが用いられている。電流センサ10は、電力系統からアナログ信号として電流を取り込み、アナログ信号のレベルが小信号領域にあるときにはその入力レベルに応じて電力系統の構成を制御するための制御演算に適した小信号レンジのレベル(小信号レンジに属するレベルの電圧信号)に変換し、アナログ信号のレベルが小信号領域よりも高いレベルの大信号領域にあるときにはその入力レベルに応じて電力系統を保護するための保護演算に適した大信号レンジのレベル(大信号レンジに属するレベルの電圧信号)に変換し、変換されたアナログ信号を積分回路12に出力するようになっている。積分回路12は、電流センサ10にロゴスキーコイルを適用した場合、その周波数特性により、電流が高周波領域まで増幅されるので、高周波領域を減衰させるために設けられている。なお、電流センサ10の代わりに、電力系統からのアナログ信号として電圧を取り込む場合には、電流センサの代わりに電圧センサが用いられる。電圧センサは、並列接続された複数のコンデンサによって電力系統からの電圧を分圧し、分圧された電圧を差動アンプ14に出力するように構成される。
差動アンプ14は、電流センサ10の出力電圧が非常に小さく、例えば、±10V程度であるため、その信号を増幅させる目的で設けられており、また微小信号に重畳するコモンモードノイズを低減するために設けられている。
図2は、差動アンプ14、ローパスフィルタ16の詳細回路例を示すものである。差動アンプ14は、抵抗RD1、RD2、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、演算増幅器(オペアンプ)OP1、OP3、OP2、OP3を備えて構成されており、抵抗RD1、RD2に積分回路12からの信号が入力されるようになっている。
上記構成による差動アンプ14の出力電圧は、次の(1)式で表すことができ、入力電圧V+inおよびV−inの差動電圧を増幅することができる。
Vout1=(V+in−V−in)×(1+2・R2/R1)×(R6/R
4)・・・・・・・・(1)
(1)式から明らかなように、差動アンプ14は、入力電圧の差動電圧のみを扱うことが可能であるため、入力端子とアナロググランド間に発生するコモンモードノイズを除去することができる。
ローパスフィルタ16は、図2に示すように、抵抗R8、コンデンサC1、演算増幅器OP4を備え、一次遅れ要素のフィルタとして構成されており、その伝達関数は次の(2)式で表すことができる。
T(jw)=1/(1+jwC1・R8)・・・(2)
上記構成によるローパスフィルタ16は、サンプリングによる折返し誤差を防止するための信号帯域制限用として機能するようになっている。すなわち、ΔΣA/D変換器18におけるサンプリング周波数の1/2倍以上のアナログ信号をローパスフィルタ16の減衰特性で減衰させるものである。通常、ΔΣA/D変換器18のサンプリング周波数が低い場合、折返し誤差防止フィルタは遮断周波数を低くする必要があるため、遅れ次数を大きく必要があり、抵抗・コンデンサを大きくする必要がある。しかし、本実施形態では、ΔΣA/D変換器18におけるサンプリング周波数を従来よりも大幅に高く、例えば、1MHzに設定しているため、ローパスフィルタ16の減衰特性をなだらかな特性することができ、回路の小型化が達成できる。
ΔΣA/D変換器18は、図3(a)に示すように、クロック発振回路から出力される基本クロックCLKを受けて動作し、(b)に示すように、基本クロックを1/2に分周したクロックBCLKに同期してデータを出力するようになっている。そして1チャネルのΔΣ変調A/D変換回路18aは、(c)に示すように、最上位ビットMSBから順に最下位ビットLSBまでのデータをシリアル(直列的)に出力する。続いて、(d)に示すように、2チャネルのΔΣ変調A/D変換回路18bは、最上位ビットMSBから順に最下位ビットLSBまでシリアルにデータを出力する。このとき、出力インターフェイス回路18eの出力ポート101cからは、1チャネルのデータと2チャネルのデータが時分割的に切り替えられて出力される。ポート101cからシリアルのデータが順次出力されると、各シリアルのデータはシリアル/パラレル変換回路28において並列データ(パラレルデータ)に変換され、変換されたデータはデュアルポートメモリ30にそれぞれ格納される。
ここで、ΔΣ変調A/D変換回路18a、18b、ディジタルフィルタ18c、18dはそれぞれ同一の特性を有し、且つ動作タイミングも同時に並列に動作するようになっている。また、ΔΣ変調A/D変換回路18a、18bは、例えば、アナログ信号を積分する積分器と、積分器の出力信号をΔ変調するΔ変調器とを備えて構成されており、各ΔΣ変調A/D変換回路18a、18bは、その積分特性により、信号(S)に対して、図4(a)に示すように、周期性を持たないランダムノイズ(N1)を高周波領域に移行させることができ、信号周波数帯域のノイズを圧縮させることが可能である。図4(b)は、ΔΣ変調A/D変換回路18aの出力をディジタルフィルタ18cを通過させたあとのパワースペクトル図を示す。図4(b)に示すように、ディジタルフィルタ(ローパスフィルタ)18cの減衰特性により、ΔΣ変調A/D変換回路18aの積分特性によって高周波領域に移行したランダムノイズ(N1)と一部高周波領域に発生した周期性のあるノイズ(クロックなどによって発生したノイズ)を大幅に除去することができる。ただし、ディジタルフィルタ18cでは除去できないノイズであって、周期性を持ったノイズ(N2)については信号通過帯域内に発生するので、ノイズとして残ってしまう。
ここで、周期性を持たないランダムノイズ(N1)とは、A/D変換時の量子化誤差や熱雑音になどに伴うノイズのことを言い、比較的明確な周期性を持ったノイズ(N2)とは、クロック信号の誘導ノイズ(数MHzオーダーのノイズ)、スイッチング電源からの誘導ノイズ(100kHz〜200kHzオーダーのノイズ)などの影響でA/D変換誤差が生じるノイズを言う。
周期性を持ったノイズ(N2)を除去するために、本実施形態では、マイクロコンピュータ26に、図5に示すように、ノイズキャンセル処理部26a、オフセット誤差補正処理部26b、ゲイン誤差補正処理部26cとしての機能が付加されている。
マイクロコンピュータ26は、ディジタルフィルタ18cの出力によるディジタル信号とディジタルフィルタ18dの出力によるディジタル信号との差分を演算する演算手段として、プログラムメモリを内蔵し、デュアルポートメモリ30に格納されたデータを順次取り込み、取り込んだデータを基に各種の演算を実行するようになっている。この場合、マイクロコンピュータ26は、クロック発振回路24をクロック源として動作し、タイミング制御回路20から出力される起動信号に応答して所定のプログラムを起動する。一般的には、マイクロコンピュータ26においては、割り込み信号を印加することにより定周期に処理が開始される。
ノイズキャンセル処理部26aは、ゲイン補正用乗算器5aと、ノイズキャンセル用差分器5bとを備えて構成されており、差分器5bにはディジタルフィルタ18cの出力による1チャネルのディジタル信号が入力され、乗算器5aにはディジタルフィルタ18dの出力による2チャネルのディジタル信号であって、周期性のノイズであるアナロググランド信号(ΔΣ変調A/D変換回路18の接地電位を信号源として入力された信号)501bが入力されている。アナロググランド信号501bは乗算器5aによってゲイン(K)倍され、ゲイン倍された信号が差分器5bに入力されるようになっている。差分器5bは、電力系統からのアナログ信号をA/D変換して得られたディジタル信号501aと乗算器5aの出力によるアナロググランド信号との差分を演算し、演算結果をオフセット
誤差補正処理部26bに出力するようになっている。ノイズキャンセル処理部26aによる処理が行われると、ディジタルデータ501aに重畳されたノイズ成分であって、周期性を持ったノイズ(N2)をキャンセルすることができる。すなわち、1チャネルと2チャネルのΔΣ変調A/D変換回路18a、18bが同時に且つ並列に動作するため、クロック信号の誘導ノイズあるいはスイッチング電源の誘導ノイズはディジタルデータ501aとアナロググランド信号501bに対して同じように作用するため、ディジタルデータ501aから乗算器5aの出力信号を減算することで、ノイズ(N2)をキャンセルすることができる。
また、同一半導体チップ内にΔΣA/D変換器18を実装することで、物理的にも1チャネルと2チャネルのΔΣ変調A/D変換回路18a、18bは同時に同じようなノイズの影響を受けるみなすことができる。またノイズの影響はノイズ源からの距離、浮遊容量、ノイズ源の電圧値がパラメータとなるが、同一半導体チップにおいては、これらパラメータの影響は同じ割合と考えられる。
オフセット誤差補正処理部26bは差分器5bの出力信号から直流分を抽出する積分器5cと、差分器5bの出力信号と積分器5cとの差分を演算するオフセット補正用差分器5dとを備えて構成されている。差分器5bの出力信号を積分器5cの出力信号で減算することで、差動アンプ14のオフセットを補正することができる。
ゲイン誤差補正処理部26cは差分器5dの出力信号にゲイン誤差補正係数Kgを乗算して出力するゲイン誤差補正用乗算器5eを備えて構成されている。ゲイン誤差補正用乗算器5eは、差分器5dの演算結果にゲイン誤差補正係数Kgを乗算することで、ゲイン誤差の補正された信号成分のディジタル信号を出力することができる。このディジタル信号は、ディジタルフィルタ18cの出力によるディジタル信号とディジタルフィルタ18dの出力によるディジタル信号との差分を示すディジタル信号として、信号バス32を介して通信回路36に出力される。
ここで、信号対ノイズのパワースペクトルを図6に示す。図6(a)は、系統電圧または系統電流を取り込み、取り込んだ電圧または電流の信号をA/D変換した1チャネルのデータのパワースペクトル、(b)は、アナロググランド信号をA/D変換したときの2チャネルのデータのパワースペクトル、(c)は、ノイズキャンセル処理部26a、オフセット誤差処理部26b、ゲイン誤差補正処理部26cの処理によって得られた補正後のパワースペクトルを示す。
(a)および(b)では、ディジタルフィルタ18c、18dでは除去できない、信号通過帯域内の周期性を持った(N2)が存在するのに対して、(c)に示すように、周期性を持ったノイズ(N2)が信号通過帯域内から除去され、信号通過帯域内には信号(S)のみが存在することが分かる。
このように、マイクロコンピュータ26において、1チャネルのデータと2チャネルのデータとの差分を演算する処理を行うことで、ノイズキャンセルはもちろんのことオフセット補正、ゲイン補正を行うことができるとともに、入力信号が微小電圧であっても、ノイズに影響されない高精度なディジタルデータ(ディジタル信号)を得ることができる。
さらに、本実施形態では、微小電圧が管理できるため、A/D変換器として、従来の分解能(16ビット)よりも高い分解能、例えば、20ビットや24ビットのものを用いることができるため、ダイナミックレンジを大幅に高めることができる。すなわち、電流センサとして、制御演算に適した小信号レンジと保護演算に適した大信号レンジを含むレンジ、例えば、小信号レンジと大信号レンジの和となるレンジをアナログ信号に対するフルスケールレンジとして構成したときに、電流センサ10のフルスケールレンジに対応した分解能として、小信号レンジまたは大信号レンジのうち一方のレンジをアナログ信号に対するフルスケールレンジとするときの分解能より大きい分解能、例えば、20ビット以上の分解能有するΔΣA/D変換器18を用いることで、高精度なディジタルデータを得ることができるとともに、単一の電流センサ10を制御演算用の入力変換器および保護演算用の入力変換器として共用することができ、ハードウエアの簡素化およびコストの低減に寄与することができる。またΔΣA/D変換器18としては、20ビットに限らず、24ビット相当のものを用いれば、さらに高精度なディジタルデータを得ることができる。
次に、本発明の他の実施形態を図7にしたがって説明する。本実施形態は、ΔΣA/D変換器18と同一の機能を有するΔΣA/D変換器40を設けるとともに、シリアル/パラレル変換回路28と同一の機能を有するシリアル/パラレル変換回路42を設け、タイミング制御回路20からΔΣA/D変換器40に対してA/D変換信号701aを出力するとともに、S/P変換制御信号701bをシリアル/パラレル変換回路42に出力し、さらにΔΣA/D変換器40内のΔΣ変調A/D変換回路の入力端子をそれぞれ接地するようにしたものであり、他の構成は、図1のものと同様である。この場合、マイクロコンピュータ26のノイズキャンセル処理部26aには、図8に示すように、乗算器8a、8b、8cが設けられるとともに、差分器8dが設けられる。ただしオフセット誤差補正用処理部26bとゲイン誤差補正用処理部26cは図5のものと同様である。乗算器8aはディジタルフィルタ18dの出力によるアナロググランド信号501bをゲインK1倍し、乗算器8b、8cはそれぞれΔΣA/D変換器40に内蔵されたディジタルフィルタの出力によるアナロググランド信号801a、801bをそれぞれゲインK2、K3倍して出力するようになっている。差分器8dはディジタルフィルタ18cの出力によるディジタルデータ501aから各乗算器8a、8b、8cの出力信号を減算してオフセット誤差補正処理部26bに出力するようになっている。
本実施形態においては、接地電位を信号源とする部位3点設け、これら3点からの信号からをセンシングすることで、ノイズの影響分を正確に除去することができるとともに、高精度な信号成分(ディジタル信号)を抽出することができる。
次に、本発明に係るアナログ・ディジタル変換装置をディジタル保護制御システムに適用したときの応用例を図9にしたがって説明する。本実施形態におけるディジタル保護制御システムは、インテリジェント変電システムの一要素として構成されており、変電機器であるA相の遮断器50、B相の遮断器52、C相の遮断器54には、アナログ・ディジタル変換装置としての電流センサユニット56、58、60と電圧センサ62,64,66が設けられている。すなわち電流センサユニット56、58、58は、電流センサ10を入力変換器に用いたときのアナログ・ディジタル変換装置で構成され、電圧センサ62、64、66は、電流センサ10の代わりに、電圧センサを用いたときのアナログ・ディジタル変換装置から構成されている。電流センサ56、58、60からは、ノイズキャンセリングしたA/D変換データ901a〜901fが光信号として出力され、電圧センサユニット62、64、66からはノイズキャンセリングされたA/D変換データ901d〜901fが光信号として出力されている。各光信号はマージングユニット68で集約されたあと光ケーブル902a、902bを介して保護ユニット70または制御ユニット72にシリアルデータで出力されるようになっている。
保護ユニット70は、光ケーブル902aからのデータを受信し、予め設定したプログラムにしたがって、事故を検出するための検出演算および事故を除去するための保護演算を行い、演算結果による制御信号を遮断器50、52、54に出力するようになっている。制御ユニット72は、光ケーブル902bからのデータを受信し、予め設定したプログラムにしたがい、変電機器のタップ制御や計測に代表されるモニタリング処理などの制御演算を行い、演算結果にしたがった制御信号を制御対象に出力するようになっている。
このように、本実施形態においては、変電機器としての遮断器50、52、54にインテリジェント機能を持たせることで、情報の共用化が図れ、装置によらずデータの一元化が達成できる。
本発明の一実施形態を示すアナログ・ディジタル変換装置のブロック構成図である。 差動アンプとローパスフィルタの回路構成図である。 A/D変換器の動作を説明するための波形図である。 A/D変換器の信号対ノイズの関係を示すパワースペクトル図である。 ノイズキャンセル処理部とオフセット誤差補正処理部およびゲイン誤差補正処理部のブロック構成図である。 マイクロコンピュータの処理によるノイズキャンセル方法を説明するための信号対ノイズのパワースペクトル図である。 本発明の他の実施形態を示すブロック構成図である。 本発明の他の実施形態におけるマイクロコンピュータのノイズキャンセル処理部の構成を説明するためのブロック図である。 本発明の応用例を示すディジタル保護制御システムのブロック構成図である。
符号の説明
10 電流センサ
12 積分回路
14 差動アンプ
16 ローパスフィルタ
18 ΔΣA/D変換器
18a、18b ΔΣ変調A/D変換回路
18c、18d ディジタルフィルタ
18e 出力インターフェイス回路
20 タイミング制御回路
22、24 クロック発振回路
26 マイクロコンピュータ
28、42 シリアル/パラレル変換回路
30 デュアルポートメモリ
34 ワークメモリ
36 通信回路
38 電気/光変換器
40 ΔΣA/D変換器
50、52、54 遮断器
56、58、60 電流センサユニット
62、64、66 電圧センサユニット
68 マージングユニット
70 保護ユニット
72 制御ユニット

Claims (7)

  1. 電力系統の電圧・電流信号を保護装置及び制御装置に対応した入力電圧レベルのアナログ信号に変換して出力する電圧・電流変換手段と、該電圧・電流変換手段により変換された前記アナログ信号をサンプリング周波数にしたがってディジタル信号に変換するアナログ・ディジタル変換手段と、接地電位を信号源として、信号源からのアナログ信号を前記アナログ・ディジタル変換手段に同期してディジタル信号に変換する補助アナログ・ディジタル変換手段と、前記アナログ・ディジタル変換手段により変換されたディジタル信号と前記補助アナログ・ディジタル変換手段により変換されたディジタル信号との差分を演算してディジタル変換出力とする演算手段とを備えてなることを特徴とするアナログ・ディジタル変換装置。
  2. 請求項に記載のアナログ・ディジタル変換装置において、前記アナログ・ディジタル変換手段と前記補助アナログ・ディジタル変換手段は、前記アナログ信号をΔΣ変調方式によって前記ディジタル信号に変換する要素として、前記アナログ信号を積分する積分器と、前記積分器の出力信号をデルタ変調するデルタ変調器とを備えてなることを特徴とするアナログ・ディジタル変換装置。
  3. 請求項に記載のアナログ・ディジタル変換装置において、前記アナログ・ディジタル変換手段と前記補助アナログ・ディジタル変換手段は、同一の半導体チップ上に形成されてなることを特徴とするアナログ・ディジタル変換装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアナログ・ディジタル変換装置において、前記演算手段は、前記補助アナログ・ディジタル変換手段の変換によるディジタル信号をゲイン倍するゲイン補正用乗算器と、前記ゲイン補正用乗算器によってゲイン倍されたディジタル信号と前記アナログ・ディジタル変換手段の変換によるディジタル信号との差分を演算するノイズキャンセル用差分器とを備えてなることを特徴とするアナログ・ディジタル変換装置。
  5. 請求項に記載のアナログ・ディジタル変換装置において、前記演算手段は、前記ノイズキャンセル用差分器の演算結果から直流分を抽出する積分器と、前記ノイズキャンセル用差分器の演算結果と前記積分器の出力との差分を演算するオフセット補正用差分器と、前記オフセット補正用差分器の演算結果にゲイン誤差補正係数を乗算して出力するゲイン誤差補正用乗算器とを備えてなることを特徴とするアナログ・ディジタル変換装置。
  6. 請求項に記載のアナログ・ディジタル変換装置において、前記ゲイン誤差補正用乗算器の出力による電気信号を光信号に変換して送出する光電変換器を備えてなることを特徴とするアナログ・ディジタル変換装置。
  7. 電力系統からのアナログ信号をディジタル信号に変換するアナログ・ディジタル変換装置と、前記アナログ・ディジタル変換装置の出力によるディジタル信号を基に保護・制御対象を保護・制御するための演算を行い、前記演算に従った保護・制御信号を前記保護・制御対象に出力する保護・制御演算装置とを備えたディジタル保護制御システムにおいて、前記アナログ・ディジタル制御装置として、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアナログ・ディジタル変換装置を備えてなることを特徴とするディジタル保護制御システム。
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