JP4017915B2 - マッサージ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、心地よい部位を自動的に探してその部位をマッサージするマッサージ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、特開2001−190616号公報や特開平9−192186号公報に示すマッサージ機が知られている。
【0003】
前者のマッサージ機は、リモコン装置に設けたセンサ部から皮膚温、心拍周期、血圧などの生体情報を検出し、この検出した生態情報に基づいて使用者の体調に合わせたマッサージを行うようにしたものである。
【0004】
また、後者のマッサージ機は、心拍数,呼吸数や脳波等の生体情報を検出する検出装置と、動作速度が可変となっているマッサージ機構と、検出装置の検出出力に応じてマッサージ機構の動作速度を変更する制御部とからなり、生体情報を参照しつつマッサージ機構の動作速度を変更していくものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のマッサージ機では、人体の各部位毎に心地よさを検出してマッサージを行う構成になっていない。このため、心地よい部位だけをマッサージする場合、使用者は操作ボタンを操作して心地よい部位をいちいち選択していかなければならないという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、自動的に心地よい部位を探してその部位をマッサージすることのできるマッサージ装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記目的を達成するため、身体の各部位をそれぞれマッサージする複数のエアバッグと、前記身体の各部位がマッサージされる毎に心拍の脈波波形を検出する心拍検出手段とを備え、前記エアバッグの動作条件である施療要素に基づいてそのエアバッグを動作させるマッサージ装置であって、
前記心拍検出手段によって検出された脈波波形に基づいて前記身体の各部位がマッサージされる毎に心拍周期を算出する心拍周期検出手段と、
前記心拍周期検出手段により算出された心拍周期に基づいて、単位時間内の心拍周期の平均である平均心拍周期と、単位時間内の心拍周期の変化の割合である心拍変化率と、単位時間内の心拍周期の長さの変化の大きさである心拍変動度とをそれぞれ求める心拍特徴検出手段と、
前記平均心拍周期と前記心拍変化率と前記心拍変動度とから前記身体の各部位毎における快適度を算出する施療要素変更手段と、
該施療要素変更手段によって算出された快適度に応じて施療要素を変更する動作制御部と、を備え、
その各部位毎に変更された施療要素に基づいて前記各エアバッグを動作させることを特徴とする。
【0008】
【実施の形態】
以下、この発明に係るマッサージ装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
図1に示すマッサージ装置10は、座部11と、この座部11の後ろに設けた背もたれ部12と、座部11の前に設けたオットマン13と、座部11の両側に設けたアームレスト部14,15と、座部11の下側に設けられた給排気装置100とを有している。背もたれ部12はリクライニングが可能となっており、モータM1(図3参照)を備えた図示しない電動機構により背もたれ部12が傾動するようになっている。
【0010】
背もたれ部12の前面には、首肩用のエアバック(施療子)20と、背筋用のエアバック(施療子)21と、背中用の一対のエアバック(施療子)22,23と、腰用のエアバック(施療子)24とが設けられている。座部11の上面には、臀部用のエアバック(施療子)25と、もも用のエアバック(施療子)26とが設けられている。また、オットマン13には左右に一対のエアバック(施療子)27,28がそれぞれ設けられている。首肩用のエアバック20は、図示しない電動機構により上下にスライド移動できるようになっており、この電動機構はモータM2(図3参照)を備えている。
【0011】
各エアバック20〜28は、座部11,背もたれ部12,オットマン13に取り付けられたカバーKによって覆われている。
【0012】
アームレスト部14の上面の前側には表示部30が設けられており、この表示部30には、図2に示すように、オン・オフスイッチ31と、全身コースと上半身コースと下半身コース等を選択する選択スイッチ32と、エアバック20を上にスライド移動させる上スイッチ33S1と、エアバック20を下にスライド移動させる下スイッチ33S2と、背もたれ部12を倒していく倒スイッチ34S1と、背もたれ部12を起こしていく起スイッチ34S2と、各エアバック20〜28の膨・縮の速さを調整するパルススイッチ35と、マッサージの強さを調整する強さスイッチ36と、快適お探しモードと自動コースモードなどを選択する選択スイッチ37と、納得スイッチ38と、足同時スイッチ39等とが設けられている。各スイッチ31〜39はタッチパネルで構成され、そのタッチパネルに触れることにより各スイッチ31〜39が操作されるようになっている。
【0013】
また、表示部30には、首/肩,背中,背筋,腰,しり,もも,脚の心地よさを示す4つのランプ画像L1a〜L1d,…L7a〜L7dがそれぞれ表示され、その心地よさに応じてランプ画像L1a〜L1d,…L7a〜L7dが点灯表示するようになっている。
【0014】
また、表示部30には、その心地よさを示す棒グラフ画像40が表示される他に人体を示す人体画像41と、各エアバック20〜28に対応したエアバック画像G20〜G28とが表示され、各エアバック画像G20〜G28にはタッチパネルが設けられており、これらタッチパネルに触れることにより各エアバック画像G20〜G28に対応した各エアバック20〜28が選択され、その選択されたエアバックだけを膨縮させることができるようになっている。
【0015】
給排気装置100は、図3に示すように、ポンプ101と複数の電磁弁102〜109と制御装置110とを有している。
【0016】
電磁弁102は、開成されるとポンプ101とエアーバック20とを連通してポンプ101からエアーバック20にエアーを給気するようになっている。電磁弁102が閉成されるとエアーバック20が大気に開放されてエアーバック20のエアは排気されていくようになっている。
【0017】
同様に、各電磁弁103〜109は、開成されるとポンプ101とエアーバック21〜28とを連通してポンプ101からエアーバック21〜28にエアーを給気するようになっており、電磁弁103〜109が閉成されるとエアーバック21〜28が大気に開放されてエアーバック21〜28のエアは排気されていくようになっている。
【0018】
制御装置110は、CPU等を有しており、表示部30のスイッチ操作と心拍検出部200の検出信号に基づいてポンプ101,電磁弁102〜109,モータM1,M2等を制御する。
【0019】
また、制御装置110は、図4に示すように演算部120と動作制御部130とを有している。演算部120は、心拍検出部200の検出信号から心拍周期を算出する心拍周期算出手段(心拍周期検出手段)121と、この心拍周期算出手段121が算出した心拍周期から平均心拍周期を算出する平均心拍周期算出手段(心拍特徴検出手段)122と、その心拍周期から心拍変化率を算出する心拍変化率算出手段(心拍特徴検出手段)123と、その心拍周期から心拍変動度を算出する心拍変動度算出手段(心拍特徴検出手段)124と、平均心拍周期算出手段122が算出した平均心拍周期と心拍変化率算出手段123が算出した心拍変化率と心拍変動度算出手段124が算出した心拍変動度とのうちの少なくとも1つから快適度を算出する快適度算出手段(施療要素変更手段:施療要素算出手段)125と、快適度算出手段125が算出する快適度とこの快適度に対応した各部位とを記憶するメモリ(記憶手段)127とを備えている。126は心拍周期を算出するための閾値を設定する閾値設定手段である。この閾値設定手段126は必ずしも必要とするものではない。
【0020】
動作制御部130は、メモリ127に記憶された各部位の快適度に応じて、各エアバック20〜28の膨縮回数(動作条件:施療要素)、膨縮時間(動作条件:施療要素)、膨張度によるマッサージの強さ(動作条件:施療要素、)などを求めてポンプ101および電磁弁102〜109を制御していく。また、動作制御部130は、表示部30のスイッチ操作に基づいてモータM1,M2を制御したり、表示部30の画像表示を制御するようになっている。
【0021】
心拍検出部200は、耳朶に装着して耳朶の血流に応じた血流信号を出力する脈波センサ(心拍センサ:心拍検出手段)201と、血流信号を増幅する増幅回路202と、増幅した血流信号をA/D変換するA/D変換回路203とを備えている。
【0022】
脈波センサ201は、耳朶に向けて光りを発光する発光素子と、その耳朶を透過する光を受光する受光センサ等とから構成されている。ここでは、脈波センサ201は耳朶の血流を検出するが、指などの血流を検出するものでもよい。また、受光素子から十分な大きさの血流信号が得られる場合には増幅回路202は不要である。また、A/D変換回路203も制御装置110の演算部120にA/D変換回路があれば不要となる。
【0023】
そして、心拍検出部200と演算部120とでリラックス状態推定装置が構成されている。すなわち、脈波センサ201と心拍周期算出手段121と平均心拍周期算出手段122と心拍変化率算出手段123と心拍変動度算出手段124と快適度算出段125とでリラックス状態推定装置が構成されている。このリラックス状態推定装置は、平均心拍周期算出手段122と心拍変化率算出手段123と心拍変動度算出手段124のうち少なくともいずれか1つの算出手段を備えていればよい。
【0024】
ここで、脈波波形の一例を図5に示す。図5において、横軸が時間、縦軸が 透過光量(すなわち血流量)を示している。血流量は心臓の鼓動で変化するものであるから、脈波波形の1つの山が心臓一拍分とみなすことができる。
【0025】
従って、例えば脈波波形のピークを検知し、次のピークまでの時間を計測すれば心拍の周期が求められることになる。尚、図5ではピーク検出を脈波波形の 山のピークで行っているが、谷(バレー)を検知しても同様に心拍周期を求める事ができる。また、ピーク検知を行う以外にもゼロクロス法等で心拍周期を求めてもよい。これら心拍周期は心拍周期算出手段121が求めていく。
【0026】
このようにして、得られた瞬時心拍周期から、評価対象単位時間内の心拍周期を1つのグループとみなし、そのグループ内での変化の仕方を捉える事で、マッサージ装置の使用者の心地よさの程度、すなわちリラックス状態(マッサージ効果)を数値として推定することができる。
【0027】
ここで 評価対象単位時間とは、同じマッサージを続けている時間であり、発明者らの実験によれば5秒から10秒程度がもっともマッサージ効果の推定が しやすいことが判った。これは、これよりも短い時間では情報量(心拍数)が 少なく、正確に推定できず、逆に長い時間では使用者のマッサージに対する感覚が変わるため、その感覚によって心拍周期が変化したのかマッサージ効果によって心拍周期が変わったのかが判断できないからである。
【0028】
次に、このマッサージ効果の数値化について説明する。
【0029】
マッサージ効果の推定は、平均心拍周期、心拍変化率、心拍変動度の3つの 値のうち少なくとも1つを算出する事で実現できる。以下、その具体的計算方法を示す。
【0030】
まず、対象単位時間内(対象刺激単位内)の心拍周期の平均値である平均心拍周期は下記の(1)式で求めることができる。
【0031】
平均心拍周期=(Σyi)/n …(1)
ここで、(1)式のyiは対象単位時間内のi番目の心拍周期で、nは対象時間内のデータ数(心拍周期の数)である。
【0032】
演算部120の平均心拍周期算出手段122は、心拍周期算出手段121が算出した心拍周期yiに基づいて(1)式から平均心拍周期を算出していく。
【0033】
この平均心拍周期の値が大きいほどリラックスの度合(心地よさの度合)が大きいと判断する。
【0034】
心拍変化率は、評価対象単位時間内で心拍周期が長くなってゆくのか、逆に短くなっていくのかを表すものであり、ある評価対象単位時間(評価対象刺激単位)内で横軸に時間を縦軸に心拍周期をとった図6のグラフF1を直線近似した場合のその直線F2の傾きで定義されるものである。
【0035】
この傾き(心拍変化率)は、(2)式によって求められる。
【0036】
心拍変化率={nΣxiyi−(Σxi)(Σyi)}/{nΣxi2−(Σxi)2}…(2)
ここで、nはデータ数、yiはi番目の心拍周期、xiはi番目までの経過時間、すなわちこの経過時間はy1からyiまでの心拍周期の累積時間を示す。
【0037】
この心拍変化率が大きいほどリラックスしている度合いが大きいと判断する。
【0038】
この心拍変化率は、演算部120の心拍変化率算出手段123が心拍周期算出手段121の心拍周期yiに基づいて(2)式から算出するものである。
【0039】
次に、心拍変動度の算出方法について説明する。
【0040】
図7はあるマッサージ刺激を1分間継続したときの心拍周期を、横軸:時間、縦軸:心拍周期としてプロットしたグラフを示すものであり、+印は心拍周期そのものを(生データ)示す。●印は5つの生データの平均値を算出したものであり、この5つの生データの取り方は、1番目から5番目までの平均と、2番目から6番目までの平均と、…平均とを取っていくものであり、5つの生データを1つづつずらしながら順番に取って、その各々の平均を求めた値(第2移動平均値)である。
【0041】
また、図7において、○印は9つの生データの平均値を算出したものであり、9つの生データを1つづつずらしながら順番に取って、その各々の平均を求めた値(第1移動平均値)である。
【0042】
この+印の生データは、マッサージ刺激終了後にマッサージ使用者に対するインタビューを行い、気持ちよかったという回答が有ったもののデータを示したものであり、気持ちよかった場合には、図7に示すように心拍周期が周期的に変動することが発明者らの実験で明らかになった。
【0043】
これは、心拍周期の移動平均値、心拍周期の心拍変化率や周期的変動度の大きさからリラックス状態の度合いを検出することができることを意味するものである。
【0044】
そこで、この周期的変動の大きさを心拍変動度として算出し、この心拍変動度からマッサージ効果、すなわちリラックス状態を推定すればより的確なリラックス状態の推定が可能になる。
【0045】
ところで、移動平均は、ローパスフィルターと同等の効果があり、平均をとる数(n)を増やすと、波形がだんだん滑らかになる。そこで、n=9の場合とn=5の場合とをそれぞれ算出し、それぞれ全体のばらつき、すなわち標準偏差を算出し、その差を算出すれば周期的な変動のある場合のみ値が大きくなり、周期変動の大きさを数値化する事が可能である。
【0046】
つまり、周期変動の大きさ(心拍変動度)は次式で求める事が可能である。
【0047】
ただし、n1>n2
尚、周期的変動の大きさを求めるには、フーリエ変換等の周波数解析手法を使うことも可能であるが、上の方法の様に単位データ数の異なる2種類の移動平均値を算出して、それぞれのデータ群の標準偏差を算出する方法で心拍変動度の計算を行うことで、フーリエ変換などの複雑な計算を行うことなく、周期的変動の大きさを求めることが出来る。この心拍変動度が大きいほどリラックスしている度合いが大きいと判断する。
【0048】
図7から心拍周期の周期的変動の周波数は0.1Hz程度(周期が約10秒)であることが分かり、評価対象単位時間(同じマッサージを行う時間)が短い場合、例えば10秒程度では、山1つが収まるだけである。そこで、心拍変動を数値化する方法として次のような方法も適用する事が可能である。
【0049】
図8は、ある評価対象単位時間内で横軸に時間を縦軸に心拍周期をとったグラフを示した例である。
【0050】
マッサージの効果に応じて、周期的な変動を起こす例は、短い時間(図8では10秒)のデータを見ると、いったん心拍周期が短くなった後に長くなる。すなわち、谷型のグラフとなる(山型の場合もある)。そこで、この谷型の分布を放物線近似して、この近似放物線の2乗係数をマッサージ効果(リラックス状態)の推定に用いる事が可能である。
【0051】
この様に、評価対象単位時間内の心拍周期の時系列データを放物線近似した場合の2次係数として心拍変動度を求める事で、短い時間で的確にマッサージ効果、すなわちリラックス状態を推定することができる。
【0052】
近似放物線の2乗係数は次の(4)式で求められる。
【0053】
ただし、nはデータの個数
yiはi番目の心拍周期
ziは xi−x
xiは i番目までの累積時間
xは 平均心拍周期
心拍変動度は、演算部120の心拍変動度算出手段124が心拍周期算出手段121の心拍周期yiに基づいて(3)式あるいは(4)式から算出するものである。
【0054】
図12は実験結果の一例を示したものである。この実験はエアーバッグ式マッサージ装置で、もも、脚、首の三箇所を各一分間マッサージした際の心拍周期を測定したものであり、3つの刺激の前後(各一分間)に比較対象用に安静(マッサージなし)の心拍も測定している。
【0055】
横軸が時間、縦軸が心拍周期を示している。実験において被験者(マッサージを受ける人)はグリップスイッチを保持しており、自身が気持ちよいと感じている場合にボタンを押すように指示してあり、実験システムはボタンを押している間だけプロットを黒丸から白丸に変えるように作成されている。つまり図12の白丸プロット部分は被験者自身が気持ちよいと感じている時を指している。
【0056】
図12をみると脚のマッサージ中(ほぼ全域で白丸プロット)に心拍周期が10秒前後の周期で変動を繰り返している事がわかる。また、同一の領域で緩やかな右上がりをしている事がわかる。さらに首、もも、のマッサージ中も含めて、白丸プロット部分は全体的に黒丸プロットに比べて、心拍周期が長い傾向が読み取れる。これは、心拍周期の長さからリラックス状態の度合いを検出することができることを示すものである。
【0057】
発明者は、同様な実験を繰り返すことで、心拍平均周期、心拍変化率、心拍変動度が刺激(マッサージ)を受ける人のリラックス状態(心地よいという感覚)と相関があることを見い出した。すなわち、心拍平均周期、心拍変化率、心拍変動度が大きいほどリラックス状態の度合いが大きいことが分かった。
【0058】
また、図12の例では同一の人物で心拍平均周期と心拍変化率、心拍変動度の3つに変化が現れたが、人によってはこのうち1つあるいは2つだけがリラックスした場合に変化する事もあった。そこで、どのようなタイプの人が使っても同じようにリラックス状態(リラックス度)の推定が行えるように下記の(5)式を定義した。
【0059】
この(5)式により、リラックスした場合に例えば心拍周期が変化する(遅くなる)だけのタイプの人でも、他の刺激部分との差をとることによって当該刺激のリラックス状態が相対的に定量化できるようになった。尚、(5)式の重み定数C1、C2、C3は多数の実験を繰り返し、その結果を用い快適度が各被験者の印象に最もよく合うように最適化した値を用いた。また、年代や性別毎にカテゴライズしたデータを用いて各カテゴリー毎に最適化を行う事も可能である。この場合は、刺激を受ける人がどの分類に属するかの情報を与える事でより厳密にリラックス状態の推定を行う事が可能である。
【0060】
リラックス状態(心地よさ)=C1×平均心拍周期+C2×心拍変化率+C3×(心拍変動度)-2…(5)
リラックス状態である快適度は、演算部120の快適度算出手段125によって(5)式に基づいて算出する。
【0061】
この様に算出したリラックス状態(マッサージ効果の推定結果:心地よさ)をもとに、効果の高かったところを優先的にマッサージする事で使用者が満足できるマッサージを実現する事が可能となる。
【0062】
ところで、心拍周期を検出する際に、ピーク検出の精度不足やノイズ等の影響で正しく検出できない場合がある。また、図9の例に見られるように心地よさを感じていても、心拍周期は一般にばらつきが大きく、直線近似や放物線近似がうまくできない場合がある(図9の●印は心拍周期の生データであり、○は5つの生データの平均値を算出した移動平均値である)。
【0063】
そこで、生データから移動平均を算出し、そのデータを用いてその後の解析を行うと、ノイズ等の影響が小さくなり、より的確にマッサージ効果の推定が可能になる。
【0064】
移動平均を算出する単位データ数があまり大きくなると、周期的な変動が埋もれてしまう。また、逆に小さすぎるとノイズに対するフィルター効果が得られない。発明者らの実験結果では、単位データ数は5前後がもっとも適していた(図9の○印)。ただし、心拍周期は脈波波形の注目点(先に述べた例では山のピーク)を順次カウントして求めているため、仮に注目点検知に誤差があって、心拍周期が現実より短く検出されると、次の心拍はその分長く検出されることになる。したがって、注目点のずれが大きい場合にはそれが相殺されるように、単位データ数は偶数の値をとることが望ましい。それ以外の場合は、所定位置の心拍周期の前後同数が取れるように単位データを奇数とすればよい。
【0065】
先に述べた例では、脈波波形から心拍周期を求める方法として、脈波の山もしくは谷のピークを検出し、そのピークと次のピークまでの時間を測定する方法について説明したが、それ以外に2つの別な方法でも可能である。以下、その方法について説明する。
【0066】
図10に示すように、脈波波形上に一定の閾値を設定し、その閾値と脈波波形の例えば立ち上がり波形がクロスする点を検知し、クロス点から次のクロス点までを心拍周期とする事ができる。
【0067】
一般に、山または谷のピーク付近はなだらかな変化をしているため、時間軸方向でどのポイントが真のピークかが判定しにくい場合がある。これに比べて急峻な立ち上がり部分でのクロスポイントは正確に時間を定める事が可能である。
【0068】
図11は、もう一つの方法を示すものであり、一般に、脈波波形は時間軸方向のみでなく、振幅方向にも変動する。そこで、谷側のピークと山側のピークから当該波形の一波分の振幅を求め、この振幅に対し一定の割合(図では50%)を閾値とし、それと脈波波形のクロスするポイントを求める事でも心拍周期を定義することができる。
【0069】
この場合、一定の閾値を用いる場合に比べて、振幅方向の変動の影響が小さくなるというメリットを有している。
【0070】
ここで、脈波波形の振幅方向の変動は、心臓からの血流量の変化以外に、血管の緊張度合いなどの影響を受けているものと考えられる。この血管の緊張の度合いは自律神経系の活動状態によっても変化するものであり、例えばマッサージ効果によって使用者がリラックスできたとすると、脈波の振幅に変化が現れる事も起こりえる。
【0071】
また、この振幅方向の変動はマッサージ椅子の使用者の年齢などによっても 変わると考えられる。従って、これらの心拍周期の検出方法のうち、その使用者に適したものを用いればよい。
【0072】
発明者らの実験によれば、脈波振幅の変動に応じて閾値レベルを変化させる変動型閾値設定方法を用いてマッサージ効果を推定した結果がマッサージ椅子の使用者自身の感覚に合うと答える人が多かった。
【0073】
先に述べたように、マッサージ装置にはもみ玉を機械的に動作させてツボを刺激するメカ式のものとエアーバッグを収縮させて刺激を得るエアーバッグ式がある。また、肩や腰などの上半身はメカ式で、ふくらはぎなどの下半身はエアーバッグで挟み込むように刺激するハイブリット型のものもある。
【0074】
ところで、図9の測定例はエアーバッグ式のマッサージ装置を用いて心拍周期を測定したものであるが、一旦短くなってその後長くなる谷型の変動となっている10秒から20秒までの期間では、マッサージ後の使用者に対するインタビューで、使用者が気持ちよかったと答えた部分である。この一旦短くなって長くなるタイミングがエアーバッグの収縮のタイミングとほぼ一致することが実験的に確認されている。
【0075】
すなわち、心拍周期が一旦短くなる区間ではエアーバッグは膨張し、心拍周期が増加している区間ではエアーバッグが収縮している。これは、エアーバッグの刺激により末梢血管が収縮した事の影響と考えられるが、同じ刺激でも気持ちよいと答えなかった場合には谷型にならない傾向が強いことも分かった。すなわち、実際に使用者が気持ちよいと感じた場合にのみエアーバッグの収縮と同期した
変動が見られる傾向が強い。
【0076】
一方、メカ式のマッサージ機の場合には、一般にもみ玉が数ヘルツから十数ヘルツで振動する刺激であるから、このような谷型の変動は見られなかった。
【0077】
従って、本マッサージ効果の推定方法は、心拍変動度による推定が有効になるという意味で、エアーバッグ式のマッサージ機において特に有効である。いうまでも無く、ハイブリットタイプのエアーバッグの収縮による下半身マッサージにも同様に効果が高い。
[動 作]
次に、上記のように構成されるマッサージ装置10の動作を図13に示すフロー図を参照しながら説明する。
【0078】
先ず、電源プラグPをコンセント(図示せず)に接続する。この接続により表示部30に図2に示す画面が表示される。そして、使用者は例えば選択スイッチ37を指で触れると、快適自動モードと自動コースとお好みコースとが順次選択されていく。この選択スイッチ37により快適自動モードを選択し(ステップ1)、脈波センサ201を耳朶に装着し、オン・オフスイッチ31をオンすると、ステップ2で脚用のエアバック27,28が膨縮されていく。ステップ3ではエアバック26が膨縮され、ステップ4ではエアバック25が膨縮されていく。同様にして、ステップ5ないしステップ9ではエアバック24〜20,27,28が順次膨縮されていく。
【0079】
それぞれのエアバック20〜28の膨縮の回数は1回であり、膨縮の時間は5秒から10秒の間である。
【0080】
各エアバック20〜28の膨縮時の血流信号(心拍信号)を脈波センサ201が出力し、心拍周期算出手段121がその心拍信号から心拍周期を逐一算出していく。そして、平均心拍周期算出手段122がその逐一算出される心拍周期から平均心拍周期を算出し、心拍変化率算出手段123がその逐一算出される心拍周期から心拍変化率を算出し、心拍変動度算出手段124がその逐一算出される心拍周期から心拍変動度を算出する。
【0081】
快適度算出手段125は、算出された平均心拍周期と心拍変化率と心拍変動度とから各部位であるもも,しり,腰,背筋,背中,首/肩,脚の快適度(リラックス状態)を算出し、この算出した快適度から快適度のランク(施療評価)を判定していく。すなわち、快適度算出手段125は各部位毎に快適度のランクを求めていく。この算出された各部位毎の快適度と判定したランクはメモリ127に記憶されていく。
【0082】
そして、ステップ10では、メモリ127に記憶された各部位毎の快適度のランク、すなわち施療評価に応じてランプ画像L1a〜L1d,…L7a〜L7dがそれぞれ点灯表示される。また、その快適度に応じて棒グラフ画像40が表示される。
【0083】
使用者は、ランプ画像L1a〜L1d,…L7a〜L7dの点灯表示を見て納得できれば納得スイッチ38をタッチする。ステップ11では納得スイッチ38がタッチされたか否かが判断され、タッチされればイエスと判断されてステップ12へ進む。ステップ12では、判定結果、すなわちメモリ127に記憶された各部位毎の快適度のランクに応じて各エアバックが膨縮されていく。
【0084】
各エアバック20〜28の膨縮回数は快適度のランクに応じて多くなる。例えば、ランプ画像L1a〜L7aが点灯すれば膨縮回数は1回、ランプ画像L1b〜L7bが点灯すれば膨縮回数は2回、ランプ画像L1c〜L7cが点灯すれば膨縮回数は3回、ランプ画像L1d〜L7dが点灯すれば膨縮回数は4回となる。
【0085】
例えば、ランプ画像L1aとランプ画像L2a,L2bとランプ画像L3a〜L3cとランプ画像L4a〜L4dとランプ画像L6aとランプ画像L7aとが点灯した場合、例えば最初にエアバック,27,28が1回膨縮され、この後エアバック26が1回膨縮される。そして、エアバック25は膨縮されず(非実施)、エアバック24が4回膨縮され、この後エアバック21が3回膨縮される。そして、エアバック22,23が2回膨縮され、エアバック20が1回膨縮されていく。そして、これら動作が繰り返し行われていく。
【0086】
このように、自動的に心地よい部位を探し、その探した各部位の快適度に応じて各エアバック20〜28の膨張回数が多く行われることにより、気持ちよいと感じる部分だけが重点的にマッサージされることになる。このため、マッサージ効果を上げることができ、使用者は気持ちよさを感じて十分にリラックスすることができることになる。また、心地よい部位を自動的に探していくので、使用者は操作ボタンを操作して心地よい部位をいちいち選択していく必要がない。
【0087】
ステップ13では、マッサージを行っている時間が予め設定されている時間に達したか否かが判断され、ノーであればステップ12へ戻り、イエスであれば終了する。
【0088】
ところで、ランプ画像L1a〜L1d,…L7a〜L7dの点灯表示の数に納得の行かない場合には、背中や腰等の表示部(各部にタッチパネルが設けられている。)をタッチして、各部分の点灯表示の増減を行なって使用者の納得状態にする(ステップ14)。各部分の点灯表示の増減により、メモリ127に記憶された各部位毎の快適度のランクが書き換えられる。
【0089】
そして、納得スイッチ38をタッチすればステップ11からステップ12へ進み、ステップ12では変更した判定結果、すなわちメモリ127に書き換えられた各部位毎の快適度のランクに応じて上記と同様に各エアバック20〜28が膨縮されていく。
【0090】
選択スイッチ37により自動コースを選択した場合、選択スイッチ32により全身コースを選択し、オン・オフスイッチ31をオンすると、予め設定されている順序で各エアバック20〜28が膨縮されていく。同様に、上半身,下半身コースを選択すれば上半身または下半身のエアバックが順番に膨縮されていく。
【0091】
選択スイッチ37によりお好みコースを選択した場合には、マッサージしたい部分の各エアバック画像G20〜G28をタッチすれば、このタッチした各エアバック画像G20〜G28に対応した各エアバック20〜28が選択される。そして、オン・オフスイッチ31をオンすれば、その選択されたエアバックだけが膨縮していく。
【0092】
上記実施形態では、各部位の快適度に応じて各エアバック20〜28の膨張回数を多くしているが、エアバック20〜28の膨縮の時間を長くしたり、マッサージの強さを強くしたりしてもよい。また、各部位の快適度に応じて各エアバック20〜28で行うマッサージの頻度を多くしてもよく、膨張回数,膨縮時間,強さ,頻度のうち少なくとも2つ以上のものを行うようにしてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では椅子式のマッサージ装置10について説明したが、マット式のマッサージ装置であってもよく、また、エアバックの替わりに例えばローラ等を使用する機械式のマッサージ装置であってもよい。
【0094】
上記実施形態では、(5)式からリラックス状態を求めているが、平均心拍周期と心拍変化率と心拍変動度のうち少なくともいずれか1つを使用してリラックス状態を求めてもよい。また、移動平均値からリラックス状態を求めてもよい。
【0095】
また、リラックスモードと施療モードの2つのモードを設けておき、リラックスモードが設定されたら上述の動作を行い、施療モードが設定されたら上記と逆の動作を行うようにしてもよい。すなわち、快適度が低いほどエアバックの膨張回数や膨縮時間,強さ,頻度等を多くするものである。
【0096】
これは、例えば肩が凝りすぎている場合、その部分をマッサージすると心地よさを感じずに、逆に痛みなどを感じてしまうからである。すなわち、その患部を施療する場合、快適度が低いほどエアバックの膨張回数等を多くすれば、患部の部位の施療を行うことができることになる。
【0097】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、自動的に心地よい部位を探してその部位をマッサージすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る椅子式のマッサージ装置を示した斜視図である。
【図2】図1に示したマッサージ装置の表示部を示した説明図である。
【図3】図1に示したマッサージ装置の給排気装置の構成を示したブロック図である。
【図4】図3に示す制御装置の構成を示したブロック図である。
【図5】脈波波形の一例を示した説明図である。
【図6】心拍周期と直線近似した直線とを示したグラフである。
【図7】マッサージ刺激を1分間継続したときの心拍周期を示したグラフである。
【図8】マッサージ刺激を行ったときの心拍周期を示した他の例のグラフである。
【図9】心拍周期と移動平均値とを示したグラフである。
【図10】心拍周期の他の求め方を示した説明図である。
【図11】心拍周期の別な他の求め方を示した説明図である。
【図12】マッサージ箇所と心拍周期とマッサージを行わなかった場合の心拍周期を示したグラフである。
【図13】マッサージ装置の動作を示したフロー図である。
【符号の説明】
20〜28 エアバック(施療子)
122 平均心拍周期算出手段(心拍特徴検出手段)
123 心拍変化率算出手段(心拍特徴検出手段)
124 心拍変動度算出手段(心拍特徴検出手段)
125 快適度算出手段(施療要素変更手段)
130 動作制御部
201 脈波センサ(心拍検出手段)
Claims (5)
- 身体の各部位をそれぞれマッサージする複数のエアバッグと、前記身体の各部位がマッサージされる毎に心拍の脈波波形を検出する心拍検出手段とを備え、前記エアバッグの動作条件である施療要素に基づいてそのエアバッグを動作させるマッサージ装置であって、
前記心拍検出手段によって検出された脈波波形に基づいて前記身体の各部位がマッサージされる毎に心拍周期を算出する心拍周期検出手段と、
前記心拍周期検出手段により算出された心拍周期に基づいて、単位時間内の心拍周期の平均である平均心拍周期と、単位時間内の心拍周期の変化の割合である心拍変化率と、単位時間内の心拍周期の長さの変化の大きさである心拍変動度とをそれぞれ求める心拍特徴検出手段と、
前記平均心拍周期と前記心拍変化率と前記心拍変動度とから前記身体の各部位毎における快適度を算出する施療要素変更手段と、
該施療要素変更手段によって算出された快適度に応じて施療要素を変更する動作制御部と、を備え、
その各部位毎に変更された施療要素に基づいて前記各エアバッグを動作させることを特徴とするマッサージ装置。 - 前記心拍周期検出手段は、前記脈波波形毎の振幅の一定割合を閾値とし、この閾値と前記脈波波形とのクロスポイントを心拍周期の基準として心拍周期を算出することを特徴とする請求項1に記載のマッサージ装置。
- 前記施療要素の変更は、前記各部位毎に行うマッサージについて施療頻度の増減と施療時間の増減と施療の強さの増減のうち少なくともいずれか1つを行うこと又は施療を実施から非実施に変えることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ装置。
- 前記各エアバッグを予め設定した順序で動作させてマッサージ部位を順じ変えてマッサージを行っていく自動マッサージモードにおいて、
前記心拍特徴検出手段は、その最初のサイクルで前記身体の各部位毎に前記平均心拍周期と前記心拍変化率と前記心拍変動度とを検出し、
前記施療要素変更手段は、その各部位毎の前記平均心拍周期と前記心拍変化率と前記心拍変動度とに基づいて快適度を算出していくことを特徴とする請求項1に記載のマッサージ装置。 - 前記平均心拍周期と前記心拍変化率と前記心拍変動度とに基づいて各部位毎に求められた快適度を表示することを特徴とする請求項1に記載のマッサージ装置。
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