JP4017261B2 - コンクリート表面の防水加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート製の屋上、バルコニーやルーフバルコニー、ベランダ等の防水処理工法に関し、特定のシートを組合せて効率よく防水仕上げすることができるコンクリート表面の防水加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コンクリートやモルタル等の不燃構造材は、経時的に強度が低下して亀裂が入り易く、そのひび割れから雨水や散水等が内部に透過し漏洩する不都合を回避できなかった。
かかる不都合を防止するために、各種の防水処理方法が提案され実施されている。特に、近年、FRP防水処理工法として、複数種の不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル、エポキシ系塗布剤を用いてポリエステル不織布や無機ガラス繊維等の基材に、通気シートとしての通気性有機繊維不織布等の多数を組合せて使用する方法が開発され、それぞれの処理対象に応じた方法が提案されている。
【0003】
しかし、このような防水処理は、例えば、コンクリートの表面にプライマーを塗布した後、下塗材の一種又は二種、中塗材又は上塗材及びトップコートの一種又は二種等をそれぞれ所望の厚さに塗布する多数工程を組合せて仕上げられるものであり、しかも各塗装は、塗膜の乾燥を待って次の塗布作業をしなければならないので、多数の塗布工程は、塗布作業の厄介さだけでなく、仕上げまでに長時間を要し、防水工法としては実用上なお改善が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記のような多数の塗材を組合せ塗布する厄介な作業工程を必要としない工業的に望ましい防水工法を提供することにある。
また、本発明の他の課題は、処理工程が少なく、操作が簡単で効率よく防水処理をすることができ、しかも長期にわたって安定な防水性能が得られる新規方法を提供することにある。本発明のさらに他の目的ないし技術的特徴は、以下の記載から一層明らかになるであろう。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記特許請求の範囲の請求項1に記載の要件からなるコンクリート表面の防水加工方法を提供するものである。
しかして、本発明の方法は、塗布液によるものではなく、特定の二枚の組合せ防水シート類を組合せて敷き詰める簡易方法に技術的特徴があり、コンクリート等の表面に、光硬化して軟質樹脂を形成する透明ないし半透明な未硬化樹脂シートを敷詰め、さらにその表面に、光硬化して硬質樹脂を形成する透明ないし半透明で、強化繊維を含有する未硬化樹脂のシートを敷詰める組合せシートによる防水工法に新規性及び進歩性を主張するものである。
【0006】
本発明の防水加工方法に使用される光硬化して軟質樹脂を形成する未硬化樹脂シートは、光を透過し得る透明ないし半透明であって、表面から透過する光により硬化してコンクリート表面が万一ひび割れしたときに上層のFRPにひび割れが発生しないように、弾性を有する軟質樹脂のシートを提供し、また、その上層を構成する光硬化して硬質樹脂を形成する未硬化樹脂シートは、光を透過し得る透明ないし半透明のシートであって、シート全体が光硬化してFRPとなり、外側からの押圧力に対する充分な抵抗力を有する硬質層を提供するシートである。
【0007】
本発明の方法は、この下層の軟質樹脂シートと上層の硬質樹脂シートとを、コンクリート表面に順次敷詰めて接合面を密に接合一体化するとともに、それぞれを光硬化させて、コンクリート表面に安定な防水重層を形成させることにより、防水効果の優れたコンクリート防水層を簡易に形成させるものである。
なお、コンクリート表面へのシートの密着性を高めるために、必要に応じてコンクリート表面に予めプライマー(ウレタン、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル、エポキシ等)を塗布してもよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の方法において、コンクリート表面に敷き詰められる軟質樹脂形成シートは、光硬化によって架橋させるとき、弾性を有する軟質樹脂を形成する低架橋性の未硬化の不飽和樹脂類を主成分とするシートであって、コンクリート等のひび割れにも亀裂が入ることなく、その広がりに追随して伸長し得る弾性を有する軟質樹脂材料を包含する。
【0009】
そのような未硬化樹脂シートの材料として、例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ等のような樹脂類が挙げられるが、いずれも架橋性官能基の含有割合の比較的小さい不飽和樹脂類であり、架橋反応が完結したときに弾性を保有する不飽和の未硬化樹脂類である。そのような樹脂として、特に不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシが好ましい。
【0010】
また、この下層シートは、上層のシートを透過する光、特に紫外線をシート全体に受け入れて硬化し得る透明ないし半透明であることが要求され、そのような光によって硬化して伸長性のよい弾性軟質樹脂を与えるものである。
そのような機能を付与する軟質シートの厚さは、例えば、0.1〜5.0mm程度である。
【0011】
この軟質樹脂シートは、そのコンクリートのひび割れに対する伸長追随性を高めるために、ガラス繊維やカーボン繊維等の高弾性で低伸び率の無機繊維ではなく、透明または半透明の低弾性で高伸び率の有機繊維を含有強化させることが有効で、そのような有機繊維としては、例えば、アクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の有機合成繊維が代表的に挙げられる。
これらの有機合成繊維は、光硬化した軟質樹脂類の強化繊維として、いわゆる軟質樹脂FRPを形成し、コンクリートのひび割れにも、その弾性により安定な防水機能が提供される。
ただし、軟質樹脂シートが、厚さ1mm未満の薄さで済む場合には、上記有機合成繊維を含有させずに、樹脂単体であっても、上記にような効果を十分に発揮することができる。
【0012】
有機合成繊維の軟質樹脂シート中への含有量は、通常、50重量%未満であるが、シート構成樹脂の光硬化性と透明性を考慮して選択的に採用される。実用上好ましい範囲は5〜15重量%である。繊維の長さは、樹脂中への分散性を考慮して25mm以下が好ましく、また、フェルト状の長繊維とするのが実用的である。この未硬化の軟質樹脂中に、必要に応じて、硬化触媒の少量を添加することができる。
【0013】
軟質樹脂形成シートの表面に敷き詰められる光硬化する未硬化樹脂シートは、光線、通常、紫外線により架橋反応して硬化し、適度の硬さと耐摩耗性を有する硬質樹脂表面を形成する未硬化樹脂のシートである。
そのような未硬化樹脂類として、例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、アクリル、ポリアミド、エポキシ等のような樹脂類を挙げることができる。その中で、特に好ましいものは、不飽和ポリエステルである。
【0014】
この上層の硬質樹脂シートは、下層の軟質樹脂と同じ種類の樹脂を使用することが好ましい。また、この上層のシートは、下層の軟質樹脂形成シートに光を供給し得る透明ないし半透明であることが重要であり、さらに、この硬質シートには、強化繊維を含有させて耐摩耗性を増大させるFRPが採用される。
【0015】
上記強化繊維としては、光透過性及び耐摩耗性向上並びに強度、剛性を考慮した場合、強化ガラス繊維が好ましいが、他の光透過性のよい材料を使用することもできる。
この強化繊維の含有量は、例えば、20〜60重量%の範囲が実用的である。また、その繊維の長さは、強度、剛性を考慮して、12mm以上が実用的であるが、施工上問題のない場合は長繊維の織布を使用してもよい。
未硬化樹脂シート中には、必要に応じて、硬化触媒の適量を添加させることができる。上層の硬質樹脂シートの厚さは、必要な強度や剛性によって異なるが、通常、1.0〜5.0mm、好ましくは、1.5〜2.5mmの範囲である。
【0016】
本発明の方法は、樹脂塗材の多数をそれぞれ望ましい厚さに塗布する作業に換えて、予め製作された二枚の組合せ未硬化樹脂シートを順次敷き詰める防水工法であって、その適用面形状に合わせて光硬化性軟質樹脂シート及び光硬化性硬質樹脂シートを裁断し、順次敷き詰める工法である。
【0017】
本発明の方法においては、光硬化性硬質樹脂シートを光硬化性軟質樹脂シートの上面に載せるように敷き詰め、脱泡するだけで、両樹脂シートの接合面は、容易に密着一体化し、両シートは、その状態のまま放置することにより、自然光(太陽光)、特に紫外線により、あるいは自然光が到達し難い室内では紫外線ランプの光線により自然硬化して安定な防水層に形成される。各樹脂層の組合せによっては、シート接合面間に接着剤を適用することもできる。
【0018】
次に、添付図面により、本発明のコンクリート表面の防水加工方法を具体的に説明する。
図1は、本発明の方法によって形成される防水加工シート構成を示す断面図である。
【0019】
図1において、コンクリート1の表面に、必要に応じてプライマー2が塗布され、その上面に光硬化して軟質樹脂を形成する透明ないし半透明で有機合成繊維3を含有する未硬化樹脂シート4が敷詰められ、さらにその表面に、光硬化して硬質樹脂を形成する透明ないし半透明で強化繊維5を含有する未硬化樹脂シート6が敷詰められ一体化されると共に、それぞれの未硬化シートは光硬化されて安定な防水層が形成されている。
【0020】
【実施例】
本発明の方法を具体例により、更に詳細に説明する。
[実施例1]
本発明の方法を用いて、表面がコンクリート製で、広さが100m2 の面積を有するビルの屋上の施工を行った。
屋上のコンクリート表面に、プライマー[サンコープライマーA−100(サンコーテクノ社製、商品名)]を塗布し、その上面に、不飽和ポリエステル樹脂に、長さ5mmのアクリロニトリル繊維を20重量%を含有させた厚さ2mmの未硬化の軟質樹脂シートを敷詰め、さらにその上に、上記同様の不飽和ポリエステルにガラス繊維33重量%を含有させ、さらに硬化触媒[パラタール(BASF社製、商品名)]を添加してなる厚さ2mmの未硬化の硬質樹脂シートを敷詰め、3日間(1日晴天、2日曇天)放置したところ、自然硬化して、表面が硬質で中間層が適度な軟質性を有する理想的な防水床面が形成できた。なお、上記施工に要した時間は6時間であり、作業は1日で完了した。
【0021】
[実施例2]
実施例1と同じ広さのコンクリート面を有するビルの屋上に、プライマー[同前]を塗布し、その上面に、不飽和ポリエステル樹脂からなる厚さ0.5mmの未硬化の軟質樹脂シートを敷詰め、さらにその上に、上記同様の不飽和ポリエステルにガラス繊維33重量%を含有させ、さらに硬化触媒[パラタール(BASF社製、商品名)]を添加してなる厚さ2mmの未硬化の硬質樹脂シートを敷詰め、3日間(1日晴天、2日曇天)放置したところ、自然硬化して、表面が硬質で中間層が適度な軟質性を有する理想的な防水床面が形成できた。なお、上記施工に要した時間は6時間であり、作業は1日で完了した。
【0022】
[比較例1]
実施例1と同じ広さのコンクリート面を有するビルの屋上に、プライマーを塗布しその上に、下塗、中塗、上塗、及びトップコート処理を施す従来の代表的な防水処理加工を行った。この防水加工処理に要した時間は30時間で、作業日数は5日間を要した。
【0023】
【発明の効果】
本発明の方法は、光硬化して軟質樹脂を形成する透明ないし半透明で有機合成繊維を含有する、もしくは樹脂単体の未硬化樹脂シートを敷詰め、さらにその表面に、光硬化して硬質樹脂を形成する透明ないし半透明で強化繊維を含有する未硬化樹脂シートを敷詰めるという単純な作業で、効率よく安定な防水層が簡易に提供される。
従って、従来のような樹脂塗材の多数を順次塗り上げる厄介な作業を必要とせず、工業的に極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の方法によって形成されたコンクリート表面の防水層の一例の断面図である。
【符号の説明】
1 コンクリート
2 プライマー
3 有機合成繊維
4 軟質未硬化樹脂シート
5 強化繊維
6 硬質未硬化樹脂シート
Claims (4)
- コンクリート表面に、光硬化する軟質樹脂を形成する透明ないし半透明な未硬化樹脂シートを敷詰め、さらにその表面に、光硬化後硬質樹脂を形成する透明ないし半透明で強化繊維を含有する未硬化樹脂シートを敷詰めて、それぞれのシートの接合面を密着させるとともに、未硬化の各シートを光硬化させることを特徴とするコンクリート表面の防水加工方法。
- 前記軟質樹脂を形成する未硬化樹脂シートが、有機合成繊維を含有したものである請求項1記載の方法。
- 前記軟質樹脂を形成する未硬化樹脂シートが、有機合成繊維と50重量%以上の不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル、エポキシから選ばれる1種とを含有したものである請求項1記載の方法。
- 前記硬質樹脂を形成する未硬化樹脂シートが、20〜60重量%の強化繊維と不飽和ポリエステル樹脂とを含有したものである請求項1記載の方法。
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JP25992098A JP4017261B2 (ja) | 1998-09-14 | 1998-09-14 | コンクリート表面の防水加工方法 |
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JP25992098A JP4017261B2 (ja) | 1998-09-14 | 1998-09-14 | コンクリート表面の防水加工方法 |
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JP2000087511A JP2000087511A (ja) | 2000-03-28 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP7368008B2 (ja) | 2018-08-03 | 2023-10-24 | シーレンス エス.ピー.エー. | 海上船舶用の船外ウォータージェットを伴う推進デバイス |
-
1998
- 1998-09-14 JP JP25992098A patent/JP4017261B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JP7368008B2 (ja) | 2018-08-03 | 2023-10-24 | シーレンス エス.ピー.エー. | 海上船舶用の船外ウォータージェットを伴う推進デバイス |
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