JP4016606B2 - ブレーキバンド組付け構造及び組付け方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トラックやバス等の大型車両への適用が検討されている動力伝達装置のギア駐車用ブレーキのブレーキバンドの組付け構造及び組付け方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、トラックやバス等の大型車両においてはエンジンの動力を変速機側に伝達するための動力伝達装置として、流体継手(フルードカップリング)と湿式多板摩擦クラッチとを併用した動力伝達装置が提案されている。
【0003】
この動力伝達装置は、図5に示すように、エンジンの出力軸1と変速機2側の入力軸3間を、流体継手4と摩擦クラッチ(湿式多板式)5とで継断自在に連結したものであり、運転員によるクラッチ操作を必要とせず、スムーズな変速操作と確実な動力伝達を行うようにしたものである。
【0004】
以下、このような構造をした従来の動力伝達装置の基本的な構造及びその作用を説明する。
【0005】
先ず、流体継手4は、従来公知の流体継手と同様にエンジンのクランク軸1側に、ケーシング6を介して固定されたポンプシェル7と、このポンプシェル7と対向するように位置するタービンシェル8とその間に固定されたステータ9とから主に構成されており、クランク軸1の回転力がポンプシェル7からその内部に充填されたフルードを介してタービンシェル8側に伝わり、そのタービンシェル8の回転力がハブ10を介して摩擦クラッチ5側の出力軸11に伝達されるようになっている。尚、このケーシング6とタービンシェル8間には、後述する流体作動機構12によって作動されるロックアップ機構13が設けられており、回転速度が所定速度に達したときにこれらを介してクランク軸1と出力軸11とが直結されて効率的な動力伝達がなされるようになっている。
【0006】
次に、摩擦クラッチ5は、この出力軸11側にスプライン嵌合されたクラッチアウタ14と、変速機2の入力軸3側に取り付けられたクラッチセンタ15とからなるものであり、従来の摩擦クラッチと同様にクラッチアウタ14の内側に複数設けられた摩擦板16とクラッチセンタ15の外側に複数設けられた摩擦板17とを相互に接触させることで出力軸11の動力を変速機2の入力軸3側に伝達するようになっている。また、この摩擦クラッチ5には、後述する流体作動機構12によって作動される継断機構18が備えられており、エンジン始動時や変速操作時等にクラッチアウタ14とクラッチセンタ15とを切り離して出力軸11と入力軸3間との動力を断つようになっている。
【0007】
また、この流体継手4のロックアップ機構13及び摩擦クラッチ5の継断機構18を作動する流体作動機構12は、上記流体継手4と摩擦クラッチ5とを収容する継手ハウジング19の中間壁20内に設けられた油圧ポンプ21と、図7に示すように、この油圧ポンプ21から吐出された作動油によって作動するロックアップ機構制御弁22及び継断機構制御弁23と、これら各制御弁22,23の作動・停止を制御する電磁切替弁24,25とから主に構成されている。この油圧ポンプ21は、流体継手4側のポンプシェル7の回転に伴ってエンジン作動時には常に作動するようになっており、継手ハウジング19底部、より詳しくは摩擦クラッチ5を収容するクラッチハウジング36の作動油貯留部26内に溜められた作動油を吸込通路27を介して吸い込み、上記ロックアップ機構制御弁22及びクラッチ継断機構制御弁23等側に送ってこれらを作動、あるいはそのまま通過した後、再び作動油貯留部26内に戻すように循環するようになっている。尚、このロックアップ機構制御弁22及び継断機構制御弁23を切り替える電磁切替弁24,25は、マイクロコンピュータ等から構成されるコントローラ(図示せず)からの制御信号によってそれぞれ制御されるようになっている。
【0008】
そして、このような構成をした動力伝達装置にあっては、先ず、エンジン始動時には、流体継手4のロックアップ機構13及び摩擦クラッチ5の継断機構18がそれぞれ切れた(OFF)状態に制御されているため、流体継手4にあってはいわゆるクリープ状態となっており、エンジンのクランク軸1からの動力が摩擦クラッチ5で断たれて変速機2の入力軸3側に伝達することはない。次に、この状態からドライバーが変速機2を発進段にシフトすると、その信号を受けたコントローラが電磁切替弁25を作動してクラッチ継断機構制御弁23が作動する。すると、油圧ポンプ21から吐出された作動油によって継断機構18が作動し、摩擦クラッチ5をつなぐことで出力軸11側の動力が入力軸3を介して変速機2側に伝達され、車両が発進することになる。その後、このようにしてエンジンの動力が変速機2側に伝達されて車両が発進し、所定に速度に達したならば、さらに車両の速度を上げるべくその後ドライバーがシフトレバー28を操作して変速機2を2速→3速→…と順次シフトアップしてことになるが、このシフトアップに際しては、ドライバーがシフトレバー28を操作した瞬間にこれをコントローラーが検知して摩擦クラッチ5を一時的に切り、次の段へのシフトが完了した後に再び摩擦クラッチ5を繋ぐといった制御が自動的に行われるようになっており、これによってスムーズなシフトアップが達成される。また、これと同時に車両が所定の速度に達したならば、同じくコントローラにより作動する電磁制御弁24によって流体継手4のロックアップ機構13が作動し、そのクランク軸1と出力軸11とが直結されることでエンジンのクランク軸1の動力が無駄なく変速機2側に伝達されることになる。
【0009】
ところで、この摩擦クラッチ5には、図6に示すように、エンジン停止時のギアイン駐車を行うべく、ブレーキバンド式のギア駐車用ブレーキ31が備えられている。
【0010】
このギア駐車用ブレーキ31は、同図及び図8に示すように示すように、摩擦クラッチ5のクラッチアウタ14側に同軸上に一体的に設けられたブレーキドラム32と、このブレーキドラム32の周囲にこれを囲繞するように環状に設けられたブレーキバンド33と、このブレーキバンド33を縮径して上記ブレーキドラム32を締め付ける油圧ピストン34とから構成されており、エンジンが停止すると同時にブレーキバンド33によってブレーキドラム32の回転を規制して摩擦クラッチ5の空回りを抑制することでギアイン駐車を可能としたものである。
【0011】
すなわち、このブレーキバンド33は、その一端がクラッチハウジング36の変速機側中間壁35の取付部37側に取付けボルト38によって取り付けられ、他端がブレーキバンド33上に位置するように設けられており、そのブレーキバンド33の他端部に設けられた係合突起39を油圧ピストン34のプランジャ40で押し付けることによってブレーキバンド33を締め付け、その摩擦力でブレーキドラム32の回転を強制的に止めるようになっている。
【0012】
そして、この油圧ピストン34は図7に示すように油圧ポンプ21から送り出される作動油の一部によって作動、すなわち、図8に示すように油圧が加わった時にシリンダ41内のピストン42が押し戻されてプランジャー40が引っ込み、反対に油圧が抜けたときにシリンダ41内のコイルスプリング43の付勢力によってピストン42が押されプランジャー40が押し出されてブレーキバンド33を締め付けるようになっている。そのため、エンジン作動時にはこれに伴って常時駆動される油圧ポンプ21によってピストン42が押し戻されてブレーキバンド33をブレーキドラム30上に押し付ける力がなくなるため、ブレーキバンド33とブレーキドラム30との間に摩擦が生じることなくブレーキドラム32が摩擦クラッチ5のクラッチセンタ15と共にスムーズに回転してクラッチセンタ15から変速機2の入力軸3への動力伝達がロスなく行われ、反対にエンジンを停止した際には、これに伴って油圧ポンプ21も停止し、油圧ピストン34への油圧が抜けてピストン42がコイルスプリング43の付勢力によって押し出されるため、ブレーキバンド33がブレーキドラム32上に押し付けられ、これを締め付けるように作用し、その結果、ブレーキバンド33とブレーキドラム32との間に大きな摩擦力が生じてブレーキドラム32の回転が規制される。
【0013】
これによって、変速機2の入力軸3の回転も規制されることになるため、駐車に際して変速機2のギアを入れた状態でエンジンを停止すれば、その下流側の駆動系の回転が規制され、いわゆるギアイン駐車が可能となる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような構成をしたギア駐車用ブレーキ31のブレーキバンド33をブレーキドラム32の周囲に組み付けるに際しては、その一端をクラッチハウジング36の取付部37に取り付けた後、環状に撓ませてからその他端部を、同じくクラッチハウジング36の側面に取り付けられる油圧シリンダ34のプランジャ40に係合させて環状に保持した状態でそのブレーキバンド33内にブレーキドラム32を、摩擦クラッチ5のクラッチセンタ15と共に挿入させるようにしてブレーキバンド33の周囲に組み込むようにしている。
【0015】
しかしながら、組付け後におけるブレーキドラム30とブレーキバンド33との隙間は、ブレーキを効率的に効かせるために両者が接触しない程度の僅かしかないことから、組み付けに際してブレーキバンド33の軸がブレーキドラム32の軸に対して少しでもずれているとそのブレーキバンド33内にブレーキドラム32を挿入できないことがあり、その組み付け作業は容易ではなかった。
【0016】
また、このブレーキバンド33は、非作動時にブレーキドラム32に対して引き擦りをなくすために、及びプランジャ40との係合を確実にするために、拡径方向に付勢させたいわゆるスプリングバックを有しているものが用いられるが、その付勢力が不均一であるとこれを環状に撓ませた場合に真円形にならず、軸が一致している状態でもそのブレーキバンド33内にブレーキドラム32を挿入できないことがある。
【0017】
そこで、本発明はこのような課題を有効に解決するために案出されたものであり、その目的は、ギア駐車用ブレーキのブレーキバンドを容易かつ確実に組み付けることができる新規なブレーキバンド組付け構造及び組付け方法を提供するものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、クラッチハウジングに環状に装着されたブレーキバンドの内方に、摩擦クラッチのクラッチセンタに一体的に且つ同軸上に設けられたブレーキドラムを挿入するようにしたブレーキバンドの組付け方法において、上記ブレーキバンドの一端部を上記クラッチハウジングに取り付けると共に、そのクラッチハウジングに上記摩擦クラッチ側に突出する突起を複数環状に設け、これら複数の突起で上記ブレーキバンドを拡径方向に付勢された状態で環状に保持した後、上記クラッチセンタを上記クラッチハウジングに軸支された変速機の入力軸にスプライン嵌合させて上記ブレーキドラムを上記ブレーキバンドの内方に挿入するようにしたものである。
【0019】
これによって、ブレーキバンドの拡径方向の広がりを抑えつつ、ブレーキドラムに対して同軸上かつ真円状に保持することができるため、ブレーキドラムに干渉することなく確実かつ容易にブレーキバンドをブレーキドラムの周囲に組み付けることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施する好適一形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1及び図2は本発明に係るブレーキバンドの組付け構造及び方法に適用するクラッチハウジング36の実施の一形態を示したものである。
【0022】
図示するように、このクラッチハウジング36は、その表面に多数の補強リブが形成されたハウジング本体45の仕切壁35の中央部に前述した変速機2側に連通する開口孔46が形成されており、この開口孔46内を貫通して変速機2の入力軸3が内部に挿入され、その入力軸3に対して前述した摩擦クラッチ5が取り付けられるようになっている。
【0023】
また、この仕切壁35の内側には前述した取付部37がこれより隆起するように形成されており、この取付部37に対して前述したギア駐車用ブレーキ31のブレーキバンド33の一端部が取付ボルト38及び取付けピン48によって取り付けられるようになっている。
【0024】
また、この仕切壁35の内側であってその開口孔46の周囲には、その表面よりロッド状に隆起した(図3)4つの突起47,47,47,47がこの開口孔46を中心としてそれぞれ一定の間隔を隔てて設けられており、図2に示すように、取付部37に一端が取り付けられたブレーキバンド33を環状に撓ませた状態でその外側4箇所で環状に保持するようになっている。
【0025】
従って、前述したようにブレーキバンド33を、摩擦クラッチ5側に一体的に設けられたブレーキドラム32の周囲に組み付けるには、先ず、図2に示すようにブレーキバンド33の一端部を取付ボルト38及び取付けピン48によって仕切壁35の内側に取り付けた後、その他端部を環状に撓ませて突起47,47,47,47の内側に位置させてから離すと、同図に示すようにその付勢力によって拡径方向に広がろうとするがその周囲の突起47,47,47,47によってその広がりが規制され、開口孔46を中心として真円状を保ったままこれら突起47,47,47,47に保持される状態となる。
【0026】
次に、このようにしてブレーキバンド33が真円状に保持された状態のクラッチハウジング36を図4に示すように上向きの状態で変速機2側に取り付け、その入力軸3をその開口孔46内に挿入してから、その入力軸3の先端に対してクラッチハウジング36の仕切壁35を上下から挟むように摩擦クラッチ5のクラッチセンタ15をスプライン嵌合して取り付ける。
【0027】
これによってクラッチセンタ15側に設けられたブレーキドラム32がブレーキバンド33に干渉することなく、確実にブレーキバンド33内に挿入され、その周囲にブレーキバンド33を容易に組み込むことができる。尚、図中49は仕切壁35に対するクラッチセンタ15の回転をスムーズにするためのベアリングである。
【0028】
その後、このクラッチハウジング36に前述した油圧ピストン34を取り付け、そのプランジャ40をブレーキバンド33先端の係合突起39に係合させることでブレーキバンド33及びギア駐車用ブレーキ31の取付が終了し、その機能を発揮させることができる。
【0029】
このように本発明方法は、ブレーキバンド33をクラッチハウジング36側に取り付けるに際して、その仕切壁35に摩擦クラッチ5方向に延びる突起47を複数環状に設け、これら複数の突起47,47…によってブレーキバンド33を保持してから組み付けるようにしたため、ブレーキバンド33の拡径方向の広がりを抑えつつ、ブレーキドラム32に対して同軸上かつ真円状に保持することができ、ブレーキドラム32に干渉することなく確実かつ容易にブレーキバンド33をブレーキドラム32の周囲に組み付けることができる。
【0030】
尚、本実施の形態では、4つの突起47,47,47,47を設けた例で説明したが、その突起47の設置数は4つに限定されるものでないことはいうまでもなく、例えばクラッチハウジング36やブレーキバンド33の大きさや組付スペース,あるいはブレーキバンド33の付勢力等といった種々の要因によって適宜増減することは勿論である。
【0031】
また、クラッチハウジング36を変速機2側に組み付けた後に、そのクラッチハウジング36側にブレーキバンド33を組み付けるようにしても良い。
【0032】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、クラッチハウジングに突起を複数環状に設け、これら複数の突起によってブレーキバンドを保持してから、組み付けるようにしたため、ブレーキバンドの拡径方向の広がりを抑えつつ、ブレーキドラムに対して同軸上かつ真円状に保持することができる。そして、摩擦クラッチのクラッチセンタを変速機の入力軸にスプライン嵌合させているので、ブレーキバンドに干渉することなく確実かつ容易にブレーキドラムをブレーキバンドの内方に挿入して、ブレーキバンドをブレーキドラムの周囲に組み付けることができる等といった優れた効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に適用するクラッチハウジングの実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】ブレーキバンドをクラッチハウジング側に取り付けた状態を示す正面図である。
【図3】図2中A−A線拡大断面図である。
【図4】ブレーキバンドを保持したクラッチハウジングに対してブレーキドラムを備えた摩擦クラッチを組み付ける状態を示す概念図である。
【図5】従来の動力伝達装置の一例を示す部分破断断面図である。
【図6】従来の動力伝達装置の摩擦クラッチ部分を示す部分拡大図である。
【図7】従来の動力伝達装置の流体作動機構を示す流体回路図である。
【図8】従来のギア駐車用ブレーキの一例を示す構成図である。
【符号の説明】
2 変速機
3 入力軸
5 摩擦クラッチ
15 クラッチセンタ
31 ギア駐車用ブレーキ
32 ブレーキドラム
33 ブレーキバンド
34 油圧ピストン
35 仕切壁
36 クラッチハウジング
37 取付部
41 油圧ピストン
45 ハウジング本体
47 突起
Claims (3)
- クラッチハウジングに環状に装着されたブレーキバンドの内方に、摩擦クラッチのクラッチセンタに一体的に且つ同軸上に設けられたブレーキドラムを挿入してなるブレーキバンドの組付け構造において、上記ブレーキバンドの一端部を上記クラッチハウジングに取り付けると共に、そのクラッチハウジングにそのブレーキバンドの拡径を防止すべく上記摩擦クラッチ側に突出する突起を複数環状に設け、上記クラッチセンタを上記クラッチハウジングに軸支された変速機の入力軸にスプライン嵌合させて上記ブレーキドラムを上記ブレーキバンドの内方に挿入してなることを特徴とするブレーキバンド組付け構造。
- クラッチハウジングに環状に装着されたブレーキバンドの内方に、摩擦クラッチのクラッチセンタに一体的に且つ同軸上に設けられたブレーキドラムを挿入するようにしたブレーキバンドの組付け方法において、上記ブレーキバンドの一端部を上記クラッチハウジングに取り付けると共に、そのクラッチハウジングに上記摩擦クラッチ側に突出する突起を複数環状に設け、これら複数の突起で上記ブレーキバンドを拡径方向に付勢された状態で環状に保持した後、上記クラッチセンタを上記クラッチハウジングに軸支された変速機の入力軸にスプライン嵌合させて上記ブレーキドラムを上記ブレーキバンドの内方に挿入するようにしたことを特徴とするブレーキバンド組付け方法。
- 上記クラッチセンタの軸を鉛直方向上向きの状態で上記入力軸に取り付けるようにした請求項2に記載のブレーキバンド組付け方法。
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