請求項1に記載の発明は、断熱壁で形成した断熱箱体と、前記断熱箱体内の上部に設けた第一の貯蔵室と、前記第一の貯蔵室の下部に設けた第二の貯蔵室と、前記第一の貯蔵室と第二の貯蔵室とを仕切る仕切壁と、前記第二の貯蔵室の後方に配置され風路を断熱材で形成した冷却ダクトと、前記冷却ダクト内に設けた前記第一の貯蔵室もしくは前記第二の貯蔵室内への冷気供給量を調整するダンパー装置とを備え、前記第二の貯蔵室を上下で仕切る仕切壁のうち、少なくとも一方の仕切壁の前記第二の貯蔵室側表面を覆う外郭と前記冷却ダクトの前記第二の貯蔵室側表面を覆う外郭と前記冷却ダクトとを一体に構成し、前記仕切壁内と前記断熱箱体の断熱壁内とに一体的に発泡断熱材を充填発泡して、かつ前記仕切壁の上面の冷蔵庫設置面からの高さ寸法を97センチ以下として、前記冷却ダクトには前記ダンパー装置の上部に着脱部材を設けることにより、前記ダンパー装置を前記第一の貯蔵室内から着脱可能にして前記第二の貯蔵室の後方に配置したものであり、冷却ダクトを後方に設けた第二の貯蔵室の室内側からダンパー装置を着脱できなくても支障がないために、特に作業者が腰を屈め、狭い室内を覗き込むような作業負担が掛からず、立ち姿勢で、広い第一の貯蔵室内から対面で見渡して組み立てや取り外しの着脱作業ができる。
仕切壁の上面の冷蔵庫設置面からの高さ寸法が日本人成人女性の標準的な身長(157cm)の使用者の肘高さである97センチ(図説エルゴノミクス,日本規格協会編,1990年発行)以下となり、製造工程での組み立て時やサービス交換時に、第一の貯蔵室側からダンパー装置の着脱や結線作業を行う際にも、作業者が肘を上げて行う必要がないので作業負担が少なく、また作業精度も高くなる。作業者が平均身長の高い男性である場合は、女性以上に肘高さが高くなるので負担の程度をさらに軽くでき、作業能率が極めて高いものとなって生産性やサービス性を高めることができる。
また、冷却ダクトを後方に設けた貯蔵室の室内側からダンパー装置を組み込む構成でなくなると、組み込みのために当該貯蔵室の室内高さ寸法を必要以上に大きくする必要がなく、当該貯蔵室の室内高さは、真に収納物の貯蔵のために必要な程度にまで設計上圧縮することができてその分スペースも生み出せる。この結果、直上部の冷蔵室の底面の高さラインを引き下げれば、使用者の肘高さ以下の高さ(標準的な女性の肘高さで97センチ)に設定しやすくなる。かつ生み出せたスペースを冷蔵室に振り替えれば、日常的に使用頻度の最も高い冷蔵室の実質的に有効な内容積を増加させることができ、使用者にとっては、重い収納物などを持ち上げる負担の程度が軽減され、出し入れの使い勝手に配慮がなされた容量が大きく収納性に優れた冷蔵室を有する冷蔵庫を提供することができる。
また、前記仕切壁内と前記断熱箱体の断熱壁内とに一体的に発泡断熱材を充填発泡したものであり、仕切壁と断熱箱体とが発泡断熱材を介して一体的に接合され、ダンパー装置を収容した冷却ダクトも同時に発泡断熱材で接合される構成とすることがシール構成上合理的であるため、ダンパー装置を第一の貯蔵室側から組み付ける構成がより有効となる。併せて、仕切壁との一体形成により発泡断熱材の箱体強度が強化されて、冷蔵庫扉に収納された食品の荷重や扉開閉による冷蔵庫本体の歪みを抑制し、圧縮機や送風機などの振動源からの冷蔵庫本体への振動伝播を抑制できる。
また、第二の貯蔵室側からダンパー装置を着脱するために冷却ダクトの前面を覆う外郭を分離形成することで発生する継ぎ目箇所がなくなる、もしくは減り、この結果、継ぎ目からの冷却ダクトの冷気漏れをシール構成が不要となり、第二の貯蔵室内に冷気が直接漏れる虞もなくなって冷却品質的に安定する。併せて、その継ぎ目部分がシームレス構成となることで、第二の貯蔵室の室内外観が意匠的に向上し、すっきりとした品位の高い室内構成を提供できる。
請求項2に記載の発明は、前記第二の貯蔵室の下部に設けた第三の貯蔵室と、前記第二の貯蔵室と第三の貯蔵室とを仕切る仕切壁をさらに有し、前記第一の貯蔵室と第二の貯蔵室とを仕切る仕切壁内、および、前記第二の貯蔵室と第三の貯蔵室とを仕切る仕切壁内と、前記断熱箱体の断熱壁内とに、一体的に発泡断熱材を充填発泡したものであり、第二の貯蔵室を仕切る上下の仕切壁と断熱箱体とが発泡断熱材を介して一体的に接合されるので、ダンパー装置を収容した冷却ダクトも同時に発泡断熱材で接合される構成とすることがシール構成上一層合理的であるため、ダンパー装置を第一の貯蔵室側から組み付ける構成がより有効となる。併せて、冷蔵庫本体を二枚の梁となる仕切壁との一体形成により発泡断熱材の箱体強度が一層強化されて、冷蔵庫扉に収納された食品の荷重や扉開閉による冷蔵庫本体の歪みを抑制し、圧縮機や送風機などの振動源からの冷蔵庫本体への振動伝播を抑制できる。
請求項3に記載の発明は、前記第二の貯蔵室の室内高さを、前記第一の貯蔵室および前記第三の貯蔵室の室内高さより低くして設けたものであり、第二の貯蔵室内高さが低い場合は、本来、室内側から室内後方の部品を組み付けたり、取り外したりする作業が非常な作業性の悪さを伴うために、第一の貯蔵室側からダンパー装置等の部品を着脱することは特に有効である。
また、第二の貯蔵室が、たとえば冷蔵庫本体の高さ方向の中央より低いような配置である場合は、特に作業者が腰を屈め、狭い室内を覗き込むような作業負担が掛かるので、極めて有効であり、第一の貯蔵室側からダンパー装置等の部品を着脱すると、腰を屈めず極めて作業効率が良く、広く見渡せるので作業精度も高い構成となる。
請求項4に記載の発明は、前記第二の貯蔵室を左右に分割して二つの貯蔵室を設け、少なくとも一方の貯蔵室内への冷気供給量を調整するダンパー装置を前記冷却ダクト内に設けたものであり、冷気を供給する対象の貯蔵室から至近距離に冷気供給制御用のダンパー装置が配置され、冷却制御の効率や精度を高めたコンパクトな組み込み構成が実現できる。
請求項5に記載の発明は、前記第二の貯蔵室を上下で仕切る仕切壁のうち、少なくとも一方の仕切壁の前記第二の貯蔵室側表面を覆う外郭と前記冷却ダクトの前記第二の貯蔵室側表面を覆う外郭とを一体に形成したものであり、第二の貯蔵室側からダンパー装置を着脱するために冷却ダクトの前面を覆う外郭を分離形成することで発生する継ぎ目箇所がなくなる、もしくは減り、この結果、継ぎ目からの冷却ダクトの冷気漏れをシール構成が不要となり、第二の貯蔵室内に冷気が直接漏れる虞もなくなって冷却品質的に安定する。併せて、その継ぎ目部分がシームレス構成となることで、第二の貯蔵室の室内外観が意匠的に向上し、すっきりとした品位の高い室内構成を提供できる。
請求項5に記載の発明は、冷凍サイクルの圧縮機を収容する機械室を、前記断熱箱体の天面部の一画に設けたものであり、一般的に冷蔵庫本体の最下部に設けられている容積的に大きな機械室が天面部の一画に移ることにより創出された本体下部領域のスペースの一部または相当な部分を、本体上部領域の第一の貯蔵室に振り替えれば、下部貯蔵室の内容積を減らさずに、或いは増大させながらも本体上部領域の第一の貯蔵室に振り替えた内容積分だけ下部貯蔵室の室内高さが下がることとなり、このため本体上部領域の第一の貯蔵室の内容積が増大するとともにその室内底面の冷蔵庫設置面からの高さラインが引き下げられて、重い収納物などを持ち上げる負担の程度がより一層軽減され、出し入れの使い勝手にさらに配慮がなされた貯蔵室レイアウトを有する冷蔵庫を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面図である。図2は、同実施の形態における冷蔵庫の縦断面図である。図3は、同実施の形態における冷蔵庫の仕切壁と冷却ダクト付近の要部断面図である。
図において、断熱箱体201は外箱202と内箱203で構成され、内部には例えば硬質発泡ウレタンなどの発泡断熱材201aが充填され周囲と断熱され、複数の貯蔵室に区分されている。最上部に第一の貯蔵室としての冷蔵室204、その冷蔵室204の下部に第四の貯蔵室としての切換室205と第五の貯蔵室としての製氷室206が横並びに設けられ、その切換室205と製氷室206の下部に第二の貯蔵室としての野菜室207、そして最下部に第三の貯蔵室としての冷凍室208が配置される構成となっている。
冷蔵室204は冷蔵保存のために凍らない温度を下限に通常1℃〜5℃としている。また、野菜室207は冷蔵室204と同等もしくは若干高い温度設定の2℃〜7℃とすることが多い。低温にするほど葉野菜の鮮度を長期間維持することが可能である。冷凍室208は冷凍温度帯に設定されており、冷凍保存のために通常−22℃〜−15℃で設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、例えば−30℃や−25℃の低温で設定されることもある。
切換室205は、1℃〜5℃で設定される冷蔵、2℃〜7℃で設定される野菜、通常−22℃〜−15℃で設定される冷凍の温度帯以外に、冷蔵温度帯から冷凍温度帯の間で予め設定された温度帯に切り換えることができる。たとえば、ソフト冷凍(概ね−12〜−6℃程度),パーシャルフリージング(概ね−5〜−1℃程度),チルド(概ね−1〜1℃程度)等の冷蔵と冷凍の中間の温度帯である。切換室205は製氷室206に並設された独立扉を備えた貯蔵室であり、引き出し式の扉を備えることが多い。
また、切換室205の主要機能となる冷蔵と冷凍の中間の温度帯に適する貯蔵食品類は、冷蔵庫に収容される食品類に占める比率がそれほど大きくないために、比較的容量の小さめの貯蔵室で対応できるため、切換室205の室内高さを、冷蔵室204,野菜室207,冷凍室208の室内高さより比較的低く構成している。
なお、本実施の形態では切換室205を冷蔵,冷凍の温度帯までを含めた貯蔵室としているが、冷蔵は冷蔵室204,野菜室207、冷凍は冷凍室208に委ねて、冷蔵と冷凍の中間の上記温度帯のみの切換えに特化した貯蔵室としてももちろん構わない。
製氷室206は、冷蔵室204内の貯水タンク(図示せず)から送られた水で室内上部に設けられた自動製氷機(図示せず)で氷を作り、室内下部に配置した貯氷容器(図示せず)に貯蔵しておくスペースであり、切換室205に並設された間口の小さい独立扉を備えた貯蔵室であり、引き出し式の扉を備えることが多い。
断熱箱体201の天面部は冷蔵庫の背面方向に向かって階段状に凹みを設けた形状であり、この階段状の凹部に機械室201bを形成して圧縮機209、水分除去を行うドライヤ(図示せず)等の冷凍サイクルの高圧側の構成部品が収容されている。すなわち、圧縮機209を配設する機械室201bは、冷蔵室204内の最上部の後方領域に食い込んで形成されることになる。手が届きにくくデッドスペースとなっていた断熱箱体101の最上部の貯蔵室の後方領域に機械室201bを設けて圧縮機209を配置することにより、従来の冷蔵庫で、使用者が使いやすい断熱箱体201の最下部にあった機械室のスペースを貯蔵室容量として有効に転化することができ、収納性や使い勝手を大きく改善することができる。
なお、本実施の形態における、以下に述べる発明の要部に関する事項は、従来一般的であった断熱箱体201の最下部の貯蔵室の後方領域に機械室を設けて圧縮機209を配置するタイプの冷蔵庫に適用しても構わない。
野菜室207と冷凍室208の背面には冷却室210が設けられ、冷却室210は断熱性を有する第一の冷却ダクト211により野菜室207と冷凍室208を仕切っている。冷却室210内には、代表的なものとしてフィンアンドチューブ式の冷却器212が配設されており、冷却器212の上部空間には強制対流方式により冷却器212で冷却した冷気を冷蔵室204、切換室205、製氷室206、野菜室207、冷凍室208に送風する冷却ファン213が配置され、冷却器212の下部空間には冷却時に冷却器212や冷却ファン213に付着する霜を除霜する装置としてのガラス管製のラジアントヒータ214が設けられている。
第一の冷却ダクト211には、冷凍室208と冷蔵室204、切換室205、製氷室206、野菜室207に冷気を送風するための風路215が形成されている。また、第一の冷却ダクト211の外周には冷気、水漏れがないように、たとえば軟質フォーム等のシール材が貼り付けられている。冷凍室208と野菜室207を仕切る第一の仕切壁216は発泡ポリスチレン等の断熱材で成形され取り外し可能である。
切換室205,製氷室206と野菜室207を仕切る第二の仕切壁217は、側面断面から見て略L字形の第二の仕切り上板218と平板状の第二の仕切壁下板219で外郭を構成され、第二の仕切壁217の内部は硬質発泡ウレタンなどの発泡断熱材201aが発泡充填されている。略L字形の第二の仕切壁上板218の背面には、発泡ポリスチレン等の断熱材220aで成形され、冷蔵室204と切換室205,製氷室206を冷却するための冷気が送風される風路220bを形成した第二の冷却ダクト220が設けられ、内部には冷蔵室204と切換室205の冷気の流れをそれぞれ調節するダンパー装置としてのツインダンパー221が設けられており、冷蔵室204と切換室205の冷気の流れをそれぞれ調節するダンパー装置をツインダンパー化することにより収容スペースのコンパクト化とコスト削減を図っている。
冷蔵室204と切換室205,製氷室206を仕切る第三の仕切壁222は、第三の仕切壁上板223と第三の仕切壁下板224とで外郭を構成され、第三の仕切壁222の内部は硬質発泡ウレタンなどの断熱材201aが発泡充填されている。冷蔵室204の背面には冷蔵室204の庫内に冷気を送風するための第三の冷却ダクト225が取り付けられており、第三の冷却ダクト225と第二の冷却ダクト220との接合面には冷気、水漏れがないようにシール材が貼り付けられている。また、第一の冷却ダクト211と第一の仕切壁216と第三の冷却ダクト225は取り外しが可能であるが、第二の仕切壁217と第二の冷却ダクト220と第三の仕切壁222は断熱箱体201のウレタン発泡前に取り付けられたものであるため取り外しができず、発泡断熱材201aによって断熱箱体201と強固に接合されている。
また、切換室205の背面に位置する第二の冷却ダクト220内に設けられたツインダンパー221の上部に、着脱可能な着脱部材(ここでは発泡ポリスチレン製の断熱部材)226が設けられており、着脱部材226を外せばツインダンパー221が上部から着脱可能となるようにしている。なお、着脱可能な着脱部材226はツインダンパー221を収容して一体に着脱できるようにしても組み込み、取り外しの作業性や精度が好ましくなるのでよい。また、冷蔵室204の底面奥部にはツインダンパー221などのハーネスを結線するコネクタ収納部227が設けられている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
まず、冷凍サイクルの動作について説明する。庫内の設定された温度に応じて制御基板(図示せず)からの信号により冷凍サイクルが動作して冷却運転が行われる。圧縮機209の動作により吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器(図示せず)にて放熱して凝縮液化し、キャピラリーチューブ(図示せず)に至る。その後、キャピラリーチューブでは圧縮機209への吸入管(図示せず)と熱交換しながら減圧されて低温低圧の液冷媒となって冷却器212に至る。冷却ファン213の動作により、各貯蔵室内の空気と熱交換されて冷却器212内の冷媒は蒸発気化し低温の冷気となる。低温の冷気は冷却ファン213から第一の冷却ダクト211に送られ、冷気の一部は冷凍室208に送風される。また残りの冷気は第二の冷却ダクト220に導かれツインダンパー221を経由し切換室205に送風され、さらに残りの冷気は第三の冷却ダクト225を経由し冷蔵室204に送風され、所望の冷却を行う。冷却器212を出た冷媒は吸入管を経て圧縮機209へと吸い込まれる。
次に、切換室205,製氷室206に対する区画構成を例にとってみてみると、第二の仕切壁217を構成する外郭となる第二の仕切壁上板218を略L字形として第二の冷却ダクト220の前面を覆う外郭と一体化し、第二の仕切壁上板218と第二の仕切壁下板219と風路220bを形成した発泡ポリスチレン等の断熱材220aで成形された第二の冷却ダクト220とを予め一体化し、内箱203に取り付けた後断熱箱体201にウレタン等の発泡断熱材201aを充填発泡している。
これにより、まず、切換室205,製氷室206室内に露出する外郭となる第二の仕切壁上板218と第二の冷却ダクト220の前面板を一体化することによって、第二の仕切壁217と第二の冷却ダクト220との外郭の継ぎ目がなくなり、第二の冷却ダクト内の風路220bを流れる冷気がシール部から漏れたとしても上記外郭に第二の仕切壁上板218と第二の冷却ダクト220の前面板との継ぎ目がないシームレス構造であるため、結果的に切換室205,製氷室206内に直接漏れ出すことがなく、両室内の温度制御など冷却品質の安定化を図り過冷却や局部冷却による結露や凍結の発生を抑制することができる。
また、第二の仕切壁上板218と第二の仕切壁下板219と風路220bを形成した発泡ポリスチレン等の断熱材220aで成形された第二の冷却ダクト220とを予め一体化して、発泡断熱材201aで囲んで強固に密着させるため接合面でのシール材が不要となり、接合面自体が存在しないような構造となることにより、第二の冷却ダクト内の風路220bからの冷気漏れの可能性がなくなり、切換室205,製氷室206内に対する温度制御など冷却品質の安定化や過冷却や局部冷却による結露や凍結の発生防止において極めて顕著な効果を得ることができる。
次に、このような貯蔵室のレイアウトに対して、冷蔵庫が設置される床面からの高さ寸法を特定の範囲に規定している。
すなわち、冷蔵室204の室内底面となる第三の仕切壁222の上面の冷蔵庫設置面からの高さ寸法をH1とし、H1≦97センチとしている。このことにより、冷蔵室204の室内底面の高さを、日本人成人女性の標準的な身長(157cm)の使用者の肘高さである97センチ(図説エルゴノミクス,日本規格協会編,1990年発行)以下の範囲内に収めていることになる。
以上のような構成によると、庫内で最も温度の高い設定である野菜室207と切換室205,製氷室206とは温度差が大きいため、第二の仕切壁217は断熱性能が優れている硬質発泡ウレタンなどの断熱材201aが充填される冷却品質上の効果は大きい、かつ第二の冷却ダクト220からの冷気漏れの虞がなくなり、温度制御や結露,凍結品質の大幅向上だけでなく、従来のように冷気漏れ等の防止のために多量に用いていたシール材が大幅に減り、直接材料費だけでなく作業コストの大幅な低減によるコストダウンが可能となる。
なお、本実施の形態では第二の仕切壁217と第二の冷却ダクト220との接合部において少なくとも切換室205,製氷室206内に臨む外郭側には継ぎ目が露出しないように略L字型に一体に形成したが、冷蔵室204と切換室205,製氷室206とを仕切る第三の仕切壁222と第二の冷却ダクト220との接合部において、少なくとも切換室205,製氷室206内に臨む外郭側には継ぎ目が露出しないように略逆L字型に一体に形成することも可能である。
このように、切換室205,製氷室206に臨む第二の仕切壁217の表面外郭と第二の冷却ダクト220の表面外郭とが少なくとも一体に形成されていると、両者の継ぎ目が室内側に露出しなくなるので、第二の仕切壁217と第二の冷却ダクト220との接合面から切換室205,製氷室206内に冷気漏れを引き起こす虞がなくなり、温度制御や結露,凍結等の不具合に対する品質が安定し、併せてこれらを補償するための構成(ヒーター等の追加)も不要となって、製造コストや消費電力に関わるランニングコストなど経済的にも組み立て作業的にも合理的な構成を実現できる。
そして、切換室205,製氷室206に臨む第二の仕切壁217の表面外郭と第二の冷却ダクト220の表面外郭とが少なくとも一体に形成するということは、切換室205,製氷室206内側から第二の冷却ダクト220に組み込まれた、たとえば冷気量制御用のダンパー装置221等を組み込む構成ではなくなり、したがって、従来、これらの部品の室内側からの組み込みのために切換室205,製氷室206の室内高さ寸法を実際に食品等を収納するのに必要なスペース以上に拡げて、いわゆる実質的な無効スペースを設けるという不合理が解消できる。
このため、切換室205,製氷室206の室内高さの制限は、真に収納物の貯蔵のために必要な程度にまで設計上圧縮することができ、冷蔵庫全体としては、高さ方向に上記の実質的無効スペースが削減できる分、他の貯蔵室等に有効なスペースとして振り替えて冷蔵庫全体の実質的に有効な内容積を増加させることができ、その結果、収納性が高く、使い勝手がさらに向上した貯蔵室レイアウトを提供することも可能となる。
また、第二の仕切壁217内に発泡断熱材201aを充填発泡して第二の仕切壁217と第二の冷却ダクト220とを断熱箱体の内箱203に取り付けた後発泡断熱材201aの発泡充填を行って一体に接合形成したものであり、仕切壁と冷却ダクトの接合面まで発泡されたウレタンが充填されることによって、切換室205,製氷室206内への直接の冷気漏れだけでなく、室内へは漏れなくとも室内表面外郭が過冷却されるケースが発生するもととなる隙間がなくなり、冷却品質の安定化を確実に図ることができる。また、併せて接合面に使われるシール材が不要となり材料コストや作業コストを低減することができる。
さらに、断熱箱体201内が第二の仕切壁217と第三の仕切壁222により二枚の発泡断熱材201aで充填された仕切構造で接合区画されるために、冷蔵庫本体の箱体強度を強化することができ、冷蔵庫扉に収納された食品の荷重や扉開閉による冷蔵庫本体の歪みを抑制することができる。また、この箱体強度の強化により、圧縮機や送風機などの振動源からの冷蔵庫本体への振動伝播を抑制できる。これらのことは、本実施の形態のように圧縮機209を断熱箱体201の天面部に載置した圧縮機上部配置型の冷蔵庫においては特に有効な構造体となる。
また、第二の冷却ダクト220の上部に着脱部材226を設けてツインダンパー221を冷蔵室204側から取り外せるようにしたことにより、腰を屈めて、室内高さの低い切換室205,製氷室206内側から不自然な姿勢で覗き込んでの精度の悪い作業に頼らず、屈まずに広いスペースからダンパーを着脱することができ、作業性、サービス性の向上が大幅に図れる。
また、ツインダンパー221などのハーネスを結線するコネクタ収納部227を冷蔵温度帯である冷蔵室204内に設けたことにより結露、凍結を防止することができ、組み立てやサービス時の結線の作業性もよい。さらにコネクタ収納部227内をシールするためのシール材が不要になるために、品質確保とコスト低減を図ることができる。
本実施の形態に取り上げた切換室205,製氷室206のように、貯蔵室内高さが低い場合は、本来非常な作業性の悪さを伴うために特に有効である。また、当該貯蔵室が、たとえば冷蔵庫本体の高さ方向の中央より低いような配置である場合は、特に作業者が腰を屈め、狭い室内を覗き込むような作業負担が掛かるので、ダンパー装置の着脱を当該貯蔵室の直上部の広い貯蔵室内(たとえば冷蔵室204のように一般的に大きな容量で室内を対面で見渡して使うような貯蔵室)から行えるようにすると、腰を屈めず極めて作業効率が良く、広く見渡せるので作業精度も高い構成となる。
このように、組み込みのために当該貯蔵室(ここでは、切換室205,製氷室206)の室内高さ寸法を必要以上に大きくする必要がなく、当該貯蔵室の室内高さが、真に収納物の貯蔵のために必要な程度にまで設計上圧縮することができると、その生み出したスペースを他の貯蔵室に有効に移すことができる。
たとえば、このスペースを直上部の冷蔵室204に振り替えて、冷蔵室204の底面の高さラインを引き下げれば、日常的に使用頻度の最も高い冷蔵室204の実質的に有効な内容積を増加させることができ、かつ、使用者にとっては、冷蔵室204の底面の冷蔵庫設置面からの高さラインが下がることによって、重い収納物などを持ち上げる負担の程度が軽減され、出し入れの使い勝手に配慮がなされた貯蔵室レイアウトを有する冷蔵庫を提供することができる。
冷蔵室204は、冷蔵室204の庫内だけでなく冷蔵室204の扉部に収納された比較的重みのあるペットボトル飲料や牛乳パック等の出し入れが多く、冷蔵室204の底面ラインが低くなることにより女性や子供でも出し入れの負担が軽減される。
また、これに加えて、冷蔵室204内底面、すなわち第三の仕切壁222の上面の冷蔵庫設置面からの高さ寸法を97センチ以下とすれば、日本人成人女性の標準的な身長(157cm)の使用者の肘高さである97センチ(図説エルゴノミクス,日本規格協会編,1990年発行)以下となり、冷蔵室204の下部に収納された比較的重量の重い収納物の出し入れの負担が軽減される。
一方、製造工程での組み立て時やサービス交換時に、冷蔵室204側から着脱部材226を取り外してツインダンパー221などのダンパー装置の着脱や結線作業を行う際にも、作業者が肘を上げて行う必要がないので作業負担が少なく、また作業精度も高くなる。作業者が平均身長の高い男性である場合は、女性以上に肘高さが高くなるので負担の程度をさらに軽くでき、作業能率が極めて高いものとなって生産性やサービス性を高めることができる。
このように、冷蔵室204内底面、すなわち第三の仕切壁222の上面の冷蔵庫設置面からの高さ寸法を97センチ以下としておけば、平均身長の低い女性を想定した使い勝手の向上と、製造,サービス時の作業能率の向上を同時に図ることができ非常に好都合である。
切換室205の主要機能となる冷蔵と冷凍の中間の温度帯に適する貯蔵食品類は、冷蔵庫に収容される食品類に占める比率がそれほど大きくないために、比較的容量の小さめの貯蔵室で対応できるため、実質的な室内高さを圧縮しても実用上支障がなく、他室に生み出したスペースを振り替える貯蔵室として好都合となる。また、製氷室206の主要構成は室内上部に固定された自動製氷機と室内下部に載置された貯氷容器であり、特に貯氷容器における貯氷量の確保は室内高さにのみ依存せず、室内奥行きのスペースを利用可能であるために室内高さを確保する制約に裕度がある。このため、冷蔵と冷凍の中間の温度帯の貯蔵室とともに室内高さを圧縮しても実用上支障がなく、他室に生み出したスペースを振り替える貯蔵室として好都合となる。このため、本実施の形態のように切換室(もしくは冷蔵と冷凍の中間の温度帯室)205,製氷室206をその対象とした冷蔵庫のレイアウトであると、冷蔵室204の底面ラインを下げた使い勝手に優れた冷蔵庫を実現しやすい。
さらに、冷凍サイクルの圧縮機209を収容する機械室201bを、断熱箱体201の天面部の一画に設けたような、いわゆる圧縮機上部配置型の冷蔵庫では、一般的に冷蔵庫本体の最下部に設けられている容積的に大きな機械室201bが天面部の一画に移ることにより創出された本体下部領域のスペースの一部または相当な部分を、本体上部領域を占める冷蔵室204に振り替え可能であり、下部貯蔵室である冷凍室208の内容積を減らさずに、或いは増大させながらも冷蔵室204に振り替えた内容積分だけ冷凍室208の室内高さが下がることとなり、このため冷蔵室204の内容積が増大するとともにその室内底面の冷蔵庫設置面からの高さラインがさらに引き下げられて、重い収納物などを持ち上げる負担の程度がより一層軽減され、出し入れの使い勝手にさらに配慮がなされた貯蔵室レイアウトを有する冷蔵庫を提供することができる。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の仕切壁と冷却ダクト付近の要部断面図である。
図において、第二の仕切壁217と第二の冷却ダクト220と第三の仕切壁222との切換室205,製氷室206内側に臨む外郭の接合構成において、第二の冷却ダクト220の前面板を上下に分割する接合部を一箇所のみ設けて上限に分割し、高さの低い略L字型の外郭である217aと略逆L字型の外郭である222aの組み合わせとしている。
この場合、切換室205,製氷室206内に臨む第二の仕切壁217と第二の冷却ダクト220と第三の仕切壁222との外郭の継ぎ目は室内奥面の一箇所のみとなり、切換室205,製氷室206内側への冷却品質面への影響を最小限に抑制できるとともに、室内外郭を高さの低い上下二分割構造体となる略L字型の第二の仕切壁上板217a,略逆L字型の第三の仕切壁下板222aで組み込むことになるため組み立て作業が容易であり、成形体としても高さが低く二分割されてコンパクトになるので成形加工や成型品取り扱いの負担が少なく、合理的な構造体の組み合わせとなって現実的な選択となりうる。
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫の仕切壁と冷却ダクト付近の要部断面図である。
図において、第二の仕切壁217と第二の冷却ダクト220と第三の仕切壁222との切換室205,製氷室206内側に臨む外郭の接合構成において、少なくとも切換室205,製氷室206内に臨む外郭側には継ぎ目が露出しないように略コ字型の仕切壁板228によって一体に形成している。
この場合、切換室205,製氷室206内に臨んで第一の仕切壁118と第二の冷却ダクト115と第二の仕切壁119との外郭の継ぎ目がないシームレスの構造となるため、切換室205,製氷室206内への冷気漏れが確実に防止でき、より一層品質面の安定化が期待できる。
また、少なくとも室内側の天面,背面,底面が連続したシームレス構造となることで、室内側の外観意匠性が向上し、スッキリ感のある品位の高い貯蔵室構成を提供できる。