JP4013443B2 - プロピレンオキサイドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、、イソプロピルベンゼンから得られるイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを酸素キャリヤーとして用いてプロピレンをプロピレンオキサイドに変換し、かつ該イソプロピルベンゼンを繰り返し使用することができ、しかもプロピレンからプロピレンオキサイドを得るエポキシ化反応に用いる触媒の活性を高水準に長期に維持することができるという優れた特徴を有するプロピレンオキサイドの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エチルベンゼンのハイドロパーオキサイドを酸素キャリヤーとして用いてプロピレンを酸化し、プロピレンオキサイド及びスチレンを得るプロセスはハルコン法として知られている。この方法によると、プロピレンオキサイドと共にスチレンが必然的に副生されるため、プロピレンオキサイドのみを選択的に得るという観点からは不満足である。
【0003】
また、イソプロピルベンゼンから得られるイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを酸素キャリヤーとして用いてプロピレンをプロピレンオキサイドに変換し、かつ該イソプロピルベンゼンを繰り返し使用するプロセスの概念はチェコスロバキア特許CS140743号公報に記されているが、該特許公報に記されている方法は、酸化工程、エポキシ化工程、水素化分解工程以外の必要な工程に関して詳細な記載が無く、実際にイソプロピルベンゼンをリサイクルすると様々な問題が生じてしまい、工業的に実現するには十分とは言い難いものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
かかる現状において、本発明が解決しようとする課題は、イソプロピルベンゼンから得られるイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを酸素キャリヤーとして用いてプロピレンをプロピレンオキサイドに変換し、かつ該イソプロピルベンゼンを繰り返し使用することができ、しかもプロピレンからプロピレンオキサイドを得るエポキシ化反応に用いる触媒の活性を高水準に長期に維持することができるという優れた特徴を有するプロピレンオキサイドの製造方法を提供する点に存するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、アルカリを用いる酸化工程及び/又は酸化工程後とエポキシ化工程の間にアルカリ洗浄工程を有し、下記の工程を含むプロピレンオキサイドの製造方法であって、エポキシ化工程に供されるイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを含む溶液中のナトリウムの濃度が1000重量ppm以下であるプロピレンオキサイドの製造方法に係るものである。
酸化工程:イソプロピルベンゼンを酸化することによりイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを得る工程
エポキシ化工程:酸化工程で得たイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドとプロピレンとを反応させることによりプロピレンオキサイド及びクミルアルコールを得る工程
水素化分解工程:エポキシ化工程で得たクミルアルコールを水素化分解することによりイソプロピルベンゼンを得、該イソプロピルベンゼンを酸化工程の原料として酸化工程へリサイクルする工程
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の酸化工程は、イソプロピルベンゼンを酸化することによりイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを得る工程である。イソプロピルベンゼンの酸化は、通常、空気や酸素濃縮空気などの含酸素ガスによる自動酸化で行われる。この酸化反応は添加剤を用いずに実施してもよいし、アルカリのような添加剤を用いてもよい。通常の反応温度は50〜200℃であり、反応圧力は大気圧から5MPaの間である。添加剤を用いた酸化法の場合、アルカリ性試薬としては、NaOH、KOHのようなアルカリ金属化合物及びその水溶液や、アルカリ土類金属化合物又はNa2CO3、NaHCO3のようなアルカリ金属炭酸塩又はアンモニア及び(NH4)2CO3、アルカリ金属炭酸アンモニウム塩等及びその水溶液が用いられる。
【0007】
本発明のエポキシ化工程は、酸化工程で得たイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドとプロピレンとを反応させることによりプロピレンオキサイド及びクミルアルコールを得る工程である。エポキシ化工程は、目的物を高収率及び高選択率下に得る観点から、チタン含有珪素酸化物からなる触媒の存在下に実施することが好ましい。これらの触媒は、珪素酸化物と化学的に結合したTiを含有する、いわゆるTi−シリカ触媒が好ましい。たとえば、Ti化合物をシリカ担体に担持したもの、共沈法やゾルゲル法で珪素酸化物と複合したもの、あるいはTiを含むゼオライト化合物などをあげることができる。
【0008】
本発明において、エポキシ化工程の原料物質として使用されるイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドは、希薄又は濃厚な精製物又は非精製物であってよい。
【0009】
エポキシ化反応は、プロピレンとイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを触媒に接触させることで行われる。反応は、溶媒を用いて液相中で実施できる。溶媒は、反応時の温度及び圧力のもとで液体であり、かつ反応体及び生成物に対して実質的に不活性なものでなければならない。溶媒は使用されるハイドロパーオキサイド溶液中に存在する物質からなるものであってよい。たとえばイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドがその原料であるイソプロピルベンゼンとからなる混合物である場合には、特に溶媒を添加することなく、これを溶媒の代用とすることも可能である。その他、有用な溶媒としては、芳香族の単環式化合物(たとえばベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン)及びアルカン(たとえばオクタン、デカン、ドデカン)などがあげられる。
【0010】
エポキシ化反応温度は一般に0〜200℃であるが、25〜200℃の温度が好ましい。圧力は、反応混合物を液体の状態に保つのに充分な圧力でよい。一般に圧力は100〜10000kPaであることが有利である。
【0011】
エポキシ化反応は、スラリー又は固定床の形の触媒を使用して有利に実施できる。大規模な工業的操作の場合には、固定床を用いるのが好ましい。また、回分法、半連続法、連続法等によって実施できる。反応原料を含有する液を固定床に通した場合には、反応帯域から出た液状混合物には、触媒が全く含まれていないか又は実質的に含まれていない。
【0012】
本発明の水素化分解工程は、エポキシ化工程で得たクミルアルコールを水素化分解することによりイソプロピルベンゼンを得、該イソプロピルベンゼンを酸化工程の原料として酸化工程へリサイクルする工程である。すなわち、水素化分解により、酸化工程で用いたイソプロピルベンゼンと同一のものが再生される。水素化分解反応は、通常、クミルアルコールと水素とを触媒に接触させることで行われる。触媒としては水素化能を有するいずれの触媒を用いることができる。触媒の例としてはコバルト、ニッケル、パラジウム等の8A族金属系触媒、銅、亜鉛等の1B族及び2B族金属系触媒をあげることができるが、副生成物を抑制する観点からいえば銅系触媒を用いることが好ましい。銅系触媒としては銅、ラネー銅、銅・クロム、銅・亜鉛、銅・クロム・亜鉛、銅・シリカ、銅・アルミナ等があげられる。反応は、溶媒を用いて液相又は気相中で実施できる。溶媒は、反応体及び生成物に対して実質的に不活性なものでなければならない。溶媒は使用されるクミルアルコール溶液中に存在する物質からなるものであってよい。たとえばクミルアルコールが、生成物であるイソプロピルベンゼンとからなる混合物である場合には、特に溶媒を添加することなく、これを溶媒の代用とすることも可能である。その他、有用な溶媒は、アルカン(たとえばオクタン、デカン、ドデカン)や、芳香族の単環式化合物(たとえばべンゼン、エチルベンゼン、トルエン)などがあげられる。水素化分解反応温度は一般に0〜500℃であるが、30〜400℃の温度が好ましい。一般に圧力は100〜10000kPaであることが有利である。水素化分解反応は、スラリー又は固定床の形の触媒を使用して有利に実施できる。本発明の方法は、回分法、半連続法又は連続法によって実施できる。反応原料を含有する液又はガスを固定床に通した場合には、反応帯域から出た液状混合物には、触媒が全く含まれていないか又は実質的に含まれていない。
【0013】
本発明においては、エポキシ化工程に供されるイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを含む溶液中のナトリウムの濃度が1000重量ppm以下であることが必要であり、好ましくは500重量ppm以下である。ナトリウムはエポキシ化工程において使用される触媒上に蓄積する成分であり、蓄積が進むと触媒活性を低下させるとともに、リアクターの閉塞といった重大な問題を引き起こす原因となりうるため、エポキシ化工程に供されるイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを含む溶液中のナトリウムの濃度を本発明の範囲内に抑える必要がある。ナトリウムの濃度を抑える方法としては、洗浄、中和、抽出等によりナトリウムの全て又は一部を本発明の工程からなる系外へ除去する方法、吸着剤等により濃度を減少させる方法等のいずれを用いてもよい。系外へ除去する場合、ナトリウムを除去する工程(以下、「ナトリウム除去工程」と記すことがある。)は、酸化工程、エポキシ化工程及び水素化分解工程の少なくとも各工程内又は各工程を結ぶ少なくとも一ケ所において実施できるが、酸化工程においてアルカリを用いる場合があること、酸化工程後においてアルカリ洗浄を実施する場合があること、また水と油の分離が容易であることを考慮すると、エポキシ化工程の前において水洗浄を行なうことが、ナトリウムの効率的な一括除去という観点から好ましい。
【0014】
更に、本発明においては、エポキシ化工程へ供給されるイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを含む溶液中の有機酸の濃度が0.5重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは0.1重量%以下である。このことにより、エポキシ化工程で用いる触媒の活性を高水準下に維持でき、触媒寿命を長く保つことができる。
【0015】
更に、本発明においては、エポキシ化工程に供するイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドが下記式(1)で表される温度(t℃)以上の熱履歴を受けていないことが好ましい。
t(℃)=150−0.8×w (1)
w:イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを含有する溶液中のイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドの含有量(重量%)
【0016】
このことにより、エポキシ化工程で用いる触媒の活性を高水準下に維持でき、触媒寿命を長く保つことができる。
【0017】
更に、本発明においては、エポキシ化工程へ供給されるイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを含む溶液中の水の濃度が1重量%以下であることが好ましい。このことにより、エポキシ化工程で用いる触媒の活性を高水準下に維持でき、触媒寿命を長く保つことができ、エポキシ化反応収率を高く維持することができる。
【0018】
【実施例】
実施例1
ナトリウムの濃度が10重量ppmであるイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを含む溶液を、Ti含有珪素酸化物触媒存在下、固定床流通反応器に、酸化液中イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド1モル当たりに対して、10倍モルのプロピレンと共に連続的に反応器内に通過させる。入口温度を調節することにより、クメンハイドロパーオキサイド変換率を99%に保ち、定常安定化させる。このときの反応温度は60℃で、選択率は95%である。50時間反応後の触媒上に蓄積したナトリウム濃度は170重量ppmとなり、活性は反応初期の1/5まで低下する。
【0019】
比較例1
ナトリウムの濃度が2000重量ppmである以外は実施例1と同様の条件でエポキシ化反応を行うと、50時間反応後の触媒上に蓄積したナトリウム濃度は3重量%となり、活性は反応初期の1/30以下まで低下する。また、析出するナトリウム塩のために触媒層の閉塞が生じ、圧損がつきはじめる。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明により、イソプロピルベンゼンから得られるイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを酸素キャリヤーとして用いてプロピレンをプロピレンオキサイドに変換し、かつ該イソプロピルベンゼンを繰り返し使用することができ、しかもプロピレンからプロピレンオキサイドを得るエポキシ化反応に用いる触媒の活性を高水準に長期に維持することができるという優れた特徴を有するプロピレンオキサイドの製造方法を提供することができた。
Claims (2)
- アルカリを用いる酸化工程及び/又は酸化工程後とエポキシ化工程の間にアルカリ洗浄工程を有し、下記の工程を含むプロピレンオキサイドの製造方法であって、エポキシ化工程に供されるイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを含む溶液中のナトリウムの濃度が1000重量ppm以下であるプロピレンオキサイドの製造方法。
酸化工程:イソプロピルベンゼンを酸化することによりイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを得る工程
エポキシ化工程:酸化工程で得たイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドとプロピレンとを反応させることによりプロピレンオキサイド及びクミルアルコールを得る工程
水素化分解工程:エポキシ化工程で得たクミルアルコールを水素化分解することによりイソプロピルベンゼンを得、該イソプロピルベンゼンを酸化工程の原料として酸化工程へリサイクルする工程 - 請求項1記載の各工程内又は各工程を結ぶ少なくとも一ケ所において、ナトリウムを系外へ除去する工程を有する請求項1記載の製造方法。
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