JP4011959B2 - 電波音波吸収構造物およびそれを用いた電波音波吸収壁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電波音波吸収体と、該電波音波吸収体を収納する筐体とを備える電波音波吸収構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】
道路交通の発達に伴い、車両の走行などによる騒音が社会問題の一つとなっている。このため、音波を吸収して吸音能を有する吸音壁を道路脇などに設け、騒音を抑制する試みが従来よりなされている。吸音壁は、グラスウールやロックウールをパネル状(板状)に成形したものを複数個、断面H字状の支柱を介して並設し、壁状としたものが一般的に用いられていた。
【0003】
また近年、ITS(Intelligent Transport Systems;高度道路交通システム)に代表される交通インフラの情報化に伴い、ETC(Electronic Toll Collection;ノンストップ自動料金収受)システムやAHS(Advanced cruise-assist Highway System;走行支援道路システム)、レーダ、双方向道路情報システムなどによるDSRC(Dedicated Short Range Communication;狭域通信)、ミリ波、マイクロ波などの電波の使用による無線通信技術を応用したシステムの導入が拡大している。これらのシステムでは、路面や上記吸音壁などで使用電波が反射することによる通信領域内での電波の乱反射が、システムの誤作動を引き起こす原因となっており問題とされている。この問題を解決すべく、当該システム近傍の路側、吸音壁、高架、料金所の天井などに、電波吸収特性を有する電波吸収体を設置する試みが従来よりなされてきた。電波吸収体は、たとえば、ゴムやプラスチックなどのバインダーに導電性カーボンの粉末やフェライトの粉末などの電波損失材を混合し、これをシート状(板状)に成形したものなどにて実現されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、道路脇に吸音壁と電波吸収体を併設すると、道路近傍の設置空間を有効に利用できなかったり、吸音壁の音波吸収特性および電波吸収体の電波吸収特性を有効に活用できないといった問題があり、電波吸収特性と音波吸収特性とを同時に兼ね備える電波音波吸収体の開発が求められている。
【0005】
ところで電波吸収体は、その強度の確保の目的で、一般には、電波吸収を意図する表面が少なくとも露出し得るように箱状の筐体内に収納される(この電波吸収体が筐体内に収納されてなる構造物を、以下、「電波吸収構造物」と呼ぶ。)。このような構造物は、ETCシステム用途においては筐体側から料金所の天井や近傍の側壁に固定されるが、筐体より電波吸収体が脱落すると、道路上に散乱し、交通の妨げになるだけでなく、大事故を誘発する危険があるため、電波吸収体が筐体に強固に固定されている必要がある。
したがって上述したシステムに実用的な電波音波吸収体を提供するにあたっては、電波音波吸収体が筐体内に収容されてなる構造物(この構造物を、以下、「電波音波吸収構造物」と呼ぶ。)の形態であって、かつ電波音波吸収体が筐体より脱落し得ないものを提供することが求められる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、電波音波吸収体が筐体より脱落することのない電波音波吸収構造物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下のとおりである。
(1)電波音波吸収体と、該電波音波吸収体を少なくとも厚み方向一方側が露出し得るように収納する直方状の筐体とを備える電波音波吸収構造物であって、
筐体は、金属材料からなり、該筐体の二つの幅方向のうち、少なくともいずれか一方の幅方向における両端部の開放端に、電波音波吸収体を係止し得る係止部材を有し、
前記電波音波吸収体は、連続気孔を有する多孔質無機材料と、電波損失材と、珪酸アルカリ水溶液とを少なくとも含有する混合物に炭酸ガスを接触し、固化してなるものであって、平板状の台部を有し、該台部のうち電波および音波の入射を意図する側である該台部の厚み方向一方側の表面には複数個の凸部が形成され、かつ、該表面のうち筐体の係止部材が係止する箇所は凸部が形成されない略平坦な領域とされ、
筐体の金属材料からなる底壁と電波音波吸収体の厚み方向他方側との間には空気層が設けられており、該空気層によって、抑制すべき音が筐体の底壁の金属面で反射し共鳴効果によって抑制される構成となっていることを特徴とする電波音波吸収構造物。
(2)上記係止部材が、上記幅方向における両端部の開放端において、その全長にわたって形成されているものである、上記(1)に記載の電波音波吸収構造物。
(3)抑制すべき音の周波数が100Hz〜4000Hzであって、上記空気層の厚みが10mm〜100mmである、上記(1)または(2)に記載の電波音波吸収構造物。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の電波音波吸収構造物を、厚み方向一方側が同方向となり、かつ上記幅方向両端部のうち、一方側の端部が他方側の端部に隣接するように、複数個並設した電波音波吸収壁であって、
各電波音波吸収構造物が、上記係止部材を有する幅方向端部に断面H字状の支持部材を介在し、当該端部が当該支持部材の凹部に嵌合するようにして支持されてなるものである、電波音波吸収壁。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい一例の電波音波吸収構造物1を簡略化して示す図であり、図1(a)は断面図、図1(b)は正面図である。なお図1(a)は、図1(b)の切断面線IA−IAからみた断面図である。本発明の電波音波吸収構造物1は、電波音波吸収体2と、当該電波音波吸収体2を少なくともその厚み方向一方Z1側が露出し得るように収容し得る直方状の筐体3とを備える。
ここで、上記「電波音波吸収体」は、電波吸収特性と音波吸収特性とを同時に兼ね備える構造体をいう。なお本明細書中でいう「電波」とは、ITSに代表される交通インフラに使用される「GHz」の周波数帯域の電波を指し、特には5.8GHz帯の周波数のものをいう。また本明細書中でいう「音波」とは、自動車から発生する音(騒音)、具体的には100Hz〜4000Hzの周波数の音をいう。本発明における電波音波吸収体は、電波吸収特性および音波吸収特性を同時に兼ね備えるものであれば、有機系、無機系などいずれの材料で形成されたものであってよいが、燃焼時に煙が発生しにくいという点で無機系が好ましい。
【0009】
筐体3は、上記のように電波音波吸収体2を覆い得るならば、その形状および大きさに特に制限はない。図1には、一方側で開口した直方状の箱状物で実現される筐体3によって、電波音波吸収体2をその厚み方向他方Z2側から覆って電波音波吸収構造物1を形成してなる例を示す。筐体3を形成する材料としては、特に制限はなく、たとえば鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などの金属材料が適用される。中でも、強度が優れている鉄合金(炭素鋼、ステンレス鋼)が好ましい。また、筐体は、その表面に防食処理を施したものであるのが好ましい。防食処理としては、ペンキなどの塗料による防食処理、亜鉛などのメッキによる防食処理などが適用される。
【0010】
本発明の電波音波吸収構造物は、筐体が、その二つの幅方向のうち、少なくともいずれか一方の幅方向における両端部の開放端に、電波音波吸収体を係止し得る係止部材を有することをその大きな特徴とする。
なお本明細書における電波音波吸収構造物の「二つの幅方向」とは、電波音波吸収体を厚み方向に垂直な断面でみたときの、互いに垂直に交差する二つの方向であって、筐体の上記断面における四辺のうち互いに垂直な二辺にそれぞれ沿った方向をいう。図1の例においては、筐体3の二つの幅方向のうち、一方の辺に沿った方向を第一幅方向X1、他方の辺に沿った方向を第二幅方向X2としている。なお電波音波吸収体、筐体および電波音波吸収構造物についての各厚み方向および二つの幅方向(上記第一幅方向、第二幅方向)は、図1に示した状態において、それぞれいずれも同じ厚み方向Z、第一幅方向X1および第二幅方向X2を指すものとする。
【0011】
本発明における係止部材の形状は、電波音波吸収体を係止し得る形状であるならば、特に制限はなく、上記少なくともいずれか一方の幅方向における両端部の開放端において、当該幅方向に対し垂直な他方の幅方向に関して連続的に形成されていても、断続的に形成されていてもよい。後述する電波音波吸収壁を形成した際における、断面H字状の支持部材との接触による電波音波吸収体の欠け落ちを確実に防止し得る観点からは、上記他方の幅方向に関して連続的に、換言すれば、当該他方の幅方向の全長にわたって形成されているのが好ましい。また、本発明における係止部材は、上記二つの幅方向の両方に形成されていてもよい。
図1には、筐体3の第一幅方向X1における両端部の開放端(厚み方向一方Z1側の端部)に、第二幅方向X2に関して全長にわたってそれぞれ係止部材4,5が形成されてなる例を示している。
【0012】
本発明における係止部材4,5を形成する材料としては、特に制限はなく、上述した筐体3を形成する材料と同様のものを、特に制限なく使用することができるが、屋外で使用されることから強度および耐候性に優れた材質で形成するのが好ましく、無機材あるいは有機材を被覆、塗布し、表面を防食加工した鉄合金(具体的には、炭素鋼、ステンレス鋼)にて形成するのが特に好ましい。
【0013】
本発明における係止部材4,5は、従来公知の種々の方法にて形成することができ、特に制限はない。たとえば、係止部材4,5を、筐体3の上記開放端にボルト締めや溶接によって固定して形成する方法が例示される。この方法によれば、電波音波吸収体2を筐体3内に強固に固定し得る利点がある。なお、本発明において図1に示すような、厚み方向一方Z1側に複数個の凸部を有するような電波音波吸収体2を用いる場合には、電波音波吸収体2の当該厚み方向一方Z1側の係止部材4,5を形成する箇所においては、凸部を形成せずに略平坦な表面の領域を形成しておく必要がある。
【0014】
上述した本発明の電波音波吸収構造物は、上記係止部材を設けることで、電波音波吸収体2が筐体3に係止されているため、電波音波吸収体2の筐体からの脱落が確実に防止される。したがって、ETCシステムやAHS、双方向道路情報システムなどDSRCを利用したITSシステムにおける不要電波の除去と騒音抑制の目的で構造物(たとえばETCシステムにおける料金所の屋根や近傍の高架、側壁など)に設けられても、電波音波吸収体2を抜け落ちてしまうことなく筐体3内に係止でき、電波音波吸収体が道路上に落下するのを確実に防止でき、安全性が向上される。
このような本発明の電波音波吸収構造物は、単独で使用してもよいが、通常、次のように複数個並設した状態で、電波音波吸収壁として使用される。
【0015】
本発明の電波音波吸収壁は、上述した電波音波吸収構造物を、厚み方向一方側が同方向となり、かつ上記幅方向両端部のうちの一方側の端部が他方側の端部に隣接するように、複数個並設してなるものである。本発明においては、上記のような電波音波吸収構造物を一単位として、複数個、規則的に並べて壁状物としてなる電波音波吸収壁をも提供するものである。本発明の電波音波吸収壁は、上記電波音波吸収構造物の並設に際し、上記係止部材を有する幅方向端部に断面H字状の支持部材を介在し、当該端部が当該支持部材の凹部に嵌合するようにして支持されてなるようにして、実現する。
図2は、本発明の好ましい一例の電波音波吸収壁11を簡略化して示す斜視図である。図2には、各電波音波吸収構造物1を、その第二幅方向X2が上下方向と概ね平行となるように、かつ電波音波吸収体が露出してなる厚み方向一方Z1側が電波および音波の吸収を意図する領域に面するような配置にて並設して形成された例の電波音波吸収壁11を示す。なお図2においては、図1に示したような電波音波吸収体2の厚み方向一方側に形成された複数個の凸部は省略して示している。図2には、各電波音波吸収構造物1が、上記第一幅方向X1に、長手方向における断面がH字状の支持部材12を介在した状態で、上記係止部材4,5が形成された第一幅方向X1における各端部が支持部材12の凹部12aに嵌合して支持されてなるように実現された例を示している。電波音波吸収体の上記第一幅方向X1の両端部は、それぞれ上記支持部材12の凹部12aに嵌合され、その状態で適宜の固定手段を用いて、各支持部材12に固定される。当該支持部材12としては、当分野において広く使用されているH状鋼材などを好適に用いることができる。
【0016】
このような本発明の電波音波吸収壁においては、断面H字状の支持部材に係止部材を介在した状態で電波音波吸収構造物が当該支持部材の凹部に嵌合されるため、電波音波吸収体が上記支持部材に直接接触することがなく、当該電波音波吸収壁の形成に際し上記接触による電波音波吸収体の不所望な欠け落ちを防止することができる。
【0017】
また、本発明の電波音波吸収構造物は、上記筐体の底壁と上記電波音波吸収体の厚み方向他方側との間に、空気層が設けられてなるものであることが好ましい。このような空気層を設けることで、電波音波吸収体を通過した音波を筐体の底壁で反射させ、共鳴効果を生じさせて音を抑制する効果を発揮し得、さらに遮音効果に優れる電波音波吸収構造物を実現することができる。
図3は、本発明の好ましい他の例の電波音波吸収構造物21を簡略化して示す断面図である。図3に示す例の電波音波吸収構造物21では、筐体の底壁と、電波音波吸収体2の厚み方向他方Z2側との間に空気層23を形成し、そのための構造を施した筐体22とした以外は、上述した図1に示した態様の電波音波吸収構造物1と同様であり、当該同様の構成を有する部分については、同一の参照符を付して説明を省略する。
【0018】
本発明における空気層23は、上記共鳴効果を好適に得るという観点からは、電波音波吸収体2の背面(厚み方向他方Z2側の面)2aと、筐体22の底壁22aとが互いに略平行であって、いわば略直方状の形状を有するように形成されるのが好ましい。この場合において空気層23の厚さは、共鳴させたい音の周波数によって適宜決定すればよいが、たとえば、100Hz〜4000Hzの音を共鳴させるのには、10mm〜100mm程度の厚みに設定するのが好ましい。
【0019】
本発明における電波音波吸収体は、電波吸収特性および音波吸収特性を同時に兼ね備えるものであれば、有機系、無機系などいずれの材料で形成されたものであってよいが、特に優れた電波吸収特性および音波吸収特性を付与し得る観点から、後述するような、連続気孔を有する多孔質無機材料と、電波損失材と、珪酸アルカリ水溶液とを少なくとも含有する混合物に炭酸ガスを接触し、固化してなるものであることが好ましい。ここで、上記「優れた電波吸収特性」は、たとえば、5.8GHz帯の電波を20dB以上減衰できる性質をいう。また「優れた音波吸収特性」は、たとえば、JIS A 1409に規定された残響室法にて測定された400Hzの吸音率が0.7以上、1000Hzの吸音率が0.8以上であることをいう。
【0020】
本発明における電波音波吸収体は、連続気孔を有する多孔質無機材料と、電波損失材と、珪酸アルカリ水溶液とを少なくとも含有する混合物に炭酸ガスを接触し、固化してなるものであることが好ましい。以下、これらの電波音波吸収体を形成するのに好適な各材料、およびこれらを用いた場合の電波音波吸収体の製造方法について詳述する。
【0021】
〔1〕連続気孔を有する多孔質無機粒子
本発明に使用される「連続気孔を有する多孔質無機粒子」は、図4、図5に示す走査型電子顕微鏡(SEM)による断面写真に示すように、互いに連なった複数個の気孔を有する内部構造を有する多孔質の無機粒子を指す。なお図4(a)は、連続気孔を有する多孔質無機粒子の一つである軽石の第一のサンプルのSEM断面写真であり、図4(b)は図4(a)を10倍拡大したSEM断面写真である。また図5(a)は、連続気孔を有する多孔質無機粒子の一つである軽石の第二のサンプルのSEM断面写真であり、図5(b)は図5(a)を4倍拡大したSEM断面写真である。電波音波吸収体に、連続気孔を有する多孔質無機粒子が含有されているか否かは、たとえば、連続気孔を有する多孔質無機粒子を樹脂に埋め込んで、樹脂ごと研磨して、前記多孔質無機粒子の断面を作成し、その断面を、走査型電子顕微鏡で拡大観察することで確認できる。
本発明において使用できる連続気孔を有する多孔質無機粒子としては、具体的には、軽石、バーミキュライト、パーライトが挙げられる。
【0022】
軽石は、火山噴出物の一種であって、火山から噴き出した溶岩が急速に冷えてできた岩石をいう。軽石は、火山噴出により空中に飛ばされた際、圧力の急激な減少によって溶岩中のガスが逸出することで、上記のような連続気孔を有する内部構造が形成される。本発明で使用する軽石は、天然のものであっても、また従来公知のように天然鉱物の焼成によって人工的に得たものであってもよい。形成された電波音波吸収体に軽石が含まれていることは、たとえば走査型顕微鏡による観察やX線回折の解析により確認することができる。
【0023】
バーミキュライトは、マグネシア(MgO)の多い輝岩が、熱水の影響でアルカリ分逸脱して水分が加わり、雲母の性質を帯びた鉱物である蛭石を、約800℃〜1000℃で焼成させたものをいう。上記焼成により、蛭石は、雲母の層が、アコーディオン状に剥離膨張し(連続気孔を形成し)、容積を増加させる。またバーミキュライトは、化学成分としてシリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO)を含有する。本発明においてバーミキュライトは、天然のものであっても、また従来公知のように天然鉱物の焼成によって人工的に得たものであってもよい。形成された電波音波吸収体にバーミキュライトが含まれていることは、たとえば走査型顕微鏡による断面観察やX線回折の解析により確認することができる。
【0024】
パーライトは、真珠岩という鉱物を800℃〜1000℃で膨張させたものであって、SiO2を主成分とし、SiO2の他にAl2O3、Fe2O3、CaO、K2O、Na2Oなどを含有する。本発明においてパーライトは、天然のものであっても、また従来公知のように天然鉱物の焼成によって人工的に得たものであってもよい。形成された電波音波吸収体にパーライトが含まれていることは、たとえば走査型顕微鏡による断面観察やX線回折の解析により確認することができる。
【0025】
本発明において用いる連続気孔を有する多孔質無機粒子は、上記軽石、バーミキュライト、パーライトを単独で用いてもよいし、これらの混合物(2種の混合物、3種の混合物)であってよい。
【0026】
本発明に使用される連続多孔を有する多孔質無機粒子は、良好な音波吸収特性を付与し得る最適な空隙率が得られる観点から、その粒径が5mm以下であるのが好ましく、3mm以下であるのがより好ましい。用いる前記多孔質無機粒子の粒径が5mmを超えると、得られた電波音波吸収体の音波吸収特性が低下する傾向にあるため好ましくない。なお5mm以下の粒径の前記多孔質無機粒子は、5mm角メッシュを通過させることで得ることができる。
また低周波数域(300Hz〜500Hz)および高周波数域(900Hz〜1100Hz)の音の吸収の観点から、上記粒径は、1mm〜2mmであるのが好ましい。1mm〜2mmの粒径の規定は、2mm角メッシュを通過し、1mm角メッシュを通過しない多孔質無機粒子を指す。
【0027】
〔2〕珪酸アルカリ水溶液
本発明に使用される「珪酸アルカリ水溶液」は、上記多孔質無機粒子間を結合する結合材(バインダー)として機能する。本発明において好適に使用される珪酸アルカリとしては、珪酸カリウム、珪酸ソーダ、珪酸リチウムが例示される。また本発明における混合物に使用する珪酸アルカリ水溶液としては、珪酸カリウム、珪酸ソーダおよび珪酸リチウムのうちの2種以上を含むものであってもよい。
【0028】
上記混合物における珪酸アルカリ水溶液の含有率は、形成しようとする電波音波吸収体の吸収対象とする電波の波長や要求される電波吸収特性に併せて適宜設定すればよく特に制限はないが、上記多孔質無機粒子100重量部に対して20重量部〜200重量部配合されるのが好ましく、100重量部〜150重量部配合されるのがより好ましい。上記珪酸アルカリ水溶液の含有率が多孔質無機粒子100重量部に対して20重量部未満であると、得られた電波音波吸収体の強度が充分に付与されずに脆くなってしまう傾向にあるため好ましくない。また珪酸アルカリ水溶液の含有率が上記多孔質無機粒子100重量部に対して200重量部を超えると、上記混合物の粘度が大きくなりすぎて常温での成形性が悪くなったり、あるいは炭酸ガスの注入後、電波音波吸収体に充分な強度を付与できなくなる傾向にあるため好ましくない。
【0029】
上記混合物中における珪酸アルカリ水溶液は、アルカリ珪酸塩の濃度(2種以上の珪酸アルカリを含有する場合には、それらの総濃度)が30重量%〜50重量%であるのが好ましく、35重量%〜45重量%であるのがより好ましい。上記アルカリ珪酸塩の濃度が30重量%未満であると、電波音波吸収体が脆くなる傾向にあるため好ましくない。また上記アルカリ珪酸塩の濃度が50重量%を超えると、電波音波吸収体が重くなってしまい布設が困難となる傾向にあるため好ましくない。
【0030】
珪酸アルカリが珪酸カリウムの場合の珪酸アルカリ水溶液としては、たとえばSiO2濃度が25.5重量%〜27.5重量%、K2O濃度が12.5重量%〜14.5重量%の水溶液やSiO2濃度が27重量%〜29重量%、K2O濃度が21重量%〜23重量%の水溶液などが例示される。
【0031】
また珪酸アルカリが珪酸ソーダの場合の珪酸アルカリ水溶液としては、たとえば濃度が28重量%〜48重量%、特には36重量%〜38重量%のアルカリケイ酸塩の濃厚水溶液が例示され、とりわけ、市販されているNO.1号〜NO.4号の水ガラスが好ましく用いられる。水ガラスの主成分は一般式Na2O・nSiO2(n=2〜4)で表される。なお、一般にNO.1号の水ガラスは比重が38ボーメ〜59ボーメ、組成がSiO2分21重量%〜38重量%、Na2O分10重量%〜18重量%である。NO.2号の水ガラスは比重が42ボーメ〜49ボーメ、組成がSiO2分26.5重量%〜32重量%、Na2O分10.5重量%〜12.7重量%である。NO.3号の水ガラスは比重が40ボーメ以上、組成がSiO2分28重量%〜30重量%、Na2O分9重量%〜10重量%である。NO.4号の水ガラスは比重が30ボーメ以上、組成がSiO2分23重量%〜25重量%、Na2O分6重量%〜7重量%である。
【0032】
また珪酸アルカリが珪酸リチウムの場合の珪酸アルカリ水溶液としては、たとえばSiO2濃度が15重量%〜25重量%、Li2O濃度が1重量%〜1.5重量%の水溶液やSiO2濃度が15重量%〜25重量%、Li2O濃度が2重量%〜3.5重量%の水溶液などが例示される。
【0033】
〔3〕電波損失材
本発明に使用される「電波損失材」としては、粒状でありかつ誘電損失、導電損失、磁性損失など吸収すべき電波に損失を与え減衰させ得る作用を有するものであれば特には限定されない。このような電波損失材としては、導電性カーボン、磁性体粉(例えば、フェライト)、金属粉(例えば、鉄粉)など、従来公知の種々のものが挙げられる。電波損失材は、上記のものを単独で用いてもよく、またこれらを適宜組み合わせて用いてもよい。中でも、適度な導電率(抵抗率)を有するとともに、導電率を幅広く選択することが可能な導電損失を与えるという観点から、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、膨脹黒鉛などの導電性カーボンを使用するのが好ましい。
【0034】
上記混合物における電波損失材の含有率は、得られた電波音波吸収体の吸収対象とする電波の波長や要求される電波吸収特性に併せて適宜設定すればよいが、上記多孔質無機粒子100重量部に対して0.5重量部〜700重量部配合されるのが好ましい。上記混合物における電波損失材の含有率が多孔質無機粒子100重量部に対して0.5重量部未満であると、電波音波吸収体として充分な誘電損失が得られず、電波吸収特性が低下する傾向にあるため好ましくない。また上記混合物中における電波損失材の含有率が多孔質無機粒子100重量部に対して700重量部を超えると、電波音波吸収体の強度が低下し、その結果、電波音波吸収体が割れ易くなる傾向にあるため好ましくない。
【0035】
電波損失材の好ましい配合量は、その種類によって上記範囲内で異なり、例えば電波損失材が導電性カーボンである場合、前記多孔質無機粒子100重量部に対して0.5重量部〜20重量部配合されるのが好ましく、1重量部〜5重量部配合されるのがより好ましい。導電性カーボンが前記多孔質無機粒子100重量部に対して0.5重量部未満であると、得られた電波音波吸収体において良好な電波吸収特性を得ることができなくなる傾向になるためであり、また導電性カーボンが前記多孔質無機粒子100重量部に対して20重量部を超えると、得られた電波音波吸収体が脆くなってしまう傾向にあるためである。
また例えば、電波損失材がフェライトの場合、前記多孔質無機粒子100重量部に対して20重量部〜700重量部配合されるのが好ましく、50重量部〜200重量部配合されるのがより好ましい。
【0036】
本発明において使用される電波損失材の大きさ(粒径)は、吸収すべき電波の周波数帯にもよるが、電波損失材が導電性カーボンの場合、その粒径が20nm〜40nmであるのが好ましく、25nm〜35nmであるのがより好ましい。電波損失材の粒径が20nm未満であると、電波損失材を電波音波吸収体中に均一に分散させるのが困難な傾向にあるため好ましくない。また電波損失材の粒径が40nmを超えると、良好な電波吸収特性を得ることが困難となる傾向にあるため好ましくない。
なお、電波音波吸収体中における導電性カーボンの粒径は、たとえば、走査型電子顕微鏡を使って、高倍率で粉末そのものの写真を撮影し、写真に撮られた粉末の形状の面積と同等の円を想定して、その円の直径を粒径とする、顕微鏡法によって測定できる。走査型電子顕微鏡としては、具体的には、JSM−5610LV(日本電子(株)社製)が好適に使用でき、たとえば、倍率が100000倍である。なお本発明で使用される導電性カーボンは、たとえば測定粒子数が100(n=100)で測定された平均粒径が、30nm前後であるのが好ましい。
【0037】
〔4〕その他の添加物
(1)アルミナセメント
本発明における電波音波吸収体を形成する上記混合物は、強度を向上させる点で、前記多孔質無機粒子100重量部に対して10重量部〜80重量部のアルミナセメントをさらに含有するものであることが好ましい。アルミナセメントは、溶融セメント、バン土セメントなどとも呼ばれる、アルミン酸カルシウムを主鉱物とするセメントを指す。本発明で用いられるアルミナセメントとしては、Al2O3とCaOとを主成分とし、これにSiO2、Fe2O3、TiO2、MgOなどを添加したものが挙げられる。アルミナセメントを含有することで、強度がより向上され割れにくい電波音波吸収体を実現することができる。
【0038】
アルミナセメントの含有率が前記多孔質無機粒子100重量部に対して10重量部未満であると、電波音波吸収体に充分な強度が得られなくなる傾向にあるため好ましくない。またアルミナセメントの含有率が前記多孔質無機粒子100重量部に対して80重量部を超えると、得られる電波音波吸収体に対する顕著な強度の向上がない。
【0039】
(2)補強材
また上記混合物は、さらに補強材が混合されてなるものであることが好ましい。上記補強材としては、具体的には、カーボンファイバ、ガラスファイバ、スチールファイバ、PVA(ポリビニルアルコール樹脂)繊維など繊維形状物が例示される。補強材としてはこれらのうちから選ばれる少なくとも1種を使用すればよいが、上記混合物中との濡れ性が良好であるという点から、PVAを使用するのが特に好ましい。上記補強材の繊維形状としては線径10μm〜700μmであり、かつ長さが5mm〜20mmの比較的短尺のものを用いるのが、得られる電波音波吸収体の強度の点から、好ましい。
【0040】
上記補強材は、前記多孔質無機粒子100重量部に対し、1重量部〜20重量部混合するのが好ましく、5重量部〜10重量部混合するのがより好ましい。補強材が前記多孔質無機粒子100重量部に対し1重量部未満であると、得られた電波音波吸収体に十分な強度を付与できない傾向にあるため好ましくない。また補強材が前記多孔質無機粒子100重量部に対し20重量部を超えて混合しても、顕著な強度向上を得ることができないため好ましくない。
【0041】
上記補強材をさらに混合することで、得られた電波音波吸収体において、強度が向上され、割れなどが生じにくくなって電波音波吸収体が不所望に破損してしまうことによる飛散を防止するとともに、仮に飛散が生じたとしても、補強材が含有されない場合と比較して小さな塊が飛散するため、安全性が向上される。
【0042】
上述したような材料を使用した場合、本発明における電波音波吸収体2は、たとえば、以下の▲1▼〜▲3▼の工程を含有する製造方法によって製造できる。
まず▲1▼の工程において、上記の多孔質無機材料、珪酸アルカリ水溶液、電波損失材を各々上述した割合で混合させる。この際、必要に応じ、後述するような他の添加物(アルミナセメント、補強材など)を、適宜混合する。混合する手順としては、特に制限はないが、なお電波損失材を出来るだけ均一にバインダー中に分散させた方がミリ波等の極めて短波長の電波に対する吸収性能を図ることができる点から、まず電波損失材を珪酸アルカリ水溶液中に混入させた状態で、上記多孔質無機粒子を添加すると、電波損失材を極めて均一にバインダー中に分散できる、という利点がある。
この▲1▼の工程の混合は、たとえばプロペラ式攪拌機を用いて、常温で行えばよい。
【0043】
続く▲2▼の工程では、まず、たとえば一方向にのみ開口し、底部に、製造する電波音波吸収体に形成したい表面形状に応じた凹部38が形成され、後に係止部材を形成する箇所において略平坦な部分が形成された型枠37内に混合物36を注入し(図6(a))、プレス板39によりプレス成形を行う(図6(b))。図6には、たとえば上述の図1に示した凸部が正四角錐で形成される場合を示す。上記プレス成形は、当分野において通常行われているプレス条件、すなわち0℃〜50℃の温度条件かつ0.1MPa〜0.5MPaの圧力条件で行えばよい。
【0044】
▲3▼の工程では、プレス成形後の混合物を、炭酸ガスに接触させる。
好ましい態様としては、図6(c)に簡略化して示すように、外径が1mm〜3mm程度の棒材を混合物内部の中心まで達するように刺し込み、これによってできた孔に細管40(炭酸ガス注入ノズル)を挿入し、該細管40から混合物36の内部に炭酸ガスを供給する態様が挙げられる。なお細管40の管壁に多数の孔を設けておけば、炭酸ガスが更に均一に混合物36と接触するのでより好ましい態様となる。また、棒材の代わりに細管を直接混合物に刺し込んで炭酸ガスを供給するようにしても良い。炭酸ガスの供給圧力は2kg/cm2〜5kg/cm2程度とするのが好ましい。
上記混合物と炭酸ガスとの接触は、混合物が十分に固化するように行えば良いが、混合物全体が均一に固化するように行うのが好ましい。
なお混合物の表面が炭酸ガスとの接触の前に空気に触れると、空気中の炭酸ガスによって表面が固化し、棒材や細管による刺し込みが行えなくなる場合がある。そのため、混合物の表面には、樹脂または金属のフィルムを貼付するか、塗膜を設けるなどしておき、これらの上から棒材や細管を刺し込むようにするのが好ましい。なお棒材や細管の刺し込みによって生じた孔は、そのままでも問題はないが、固化後、火山噴出物の発泡粒子と結合材(CMCなどの有機バインダーや水ガラスなどの無機バインダー)との混合物を充填して埋めるのが、強度を維持する上で好ましい。
【0045】
上述したような▲1▼〜▲3▼の工程を含有する製造方法においては、上述のように前記多孔質無機粒子、電波損失材ならびに珪酸アルカリ水溶液を少なくとも含有する混合物に、炭酸ガスを接触させ、当該混合物を固化する。炭酸ガスが接触すると、珪酸ゲルと炭酸アルカリが生成(例えば、珪酸アルカリ水溶液が珪酸ソーダ水溶液である場合には、珪酸ゲルと炭酸ソーダが生成)され、上記混合物が固化される。このようにして得られた電波音波吸収体は、優れた電波吸収能と音波吸収能とを同時に兼ね備える。
このような製造方法で得られた電波音波吸収体が、何故優れた電波吸収特性および音波吸収特性を兼ね備えるのか、その詳細は不明であるが、配合される電波損失材に起因して電波吸収特性が付与され、さらに連続気孔が形成された内部構造を有する多孔質無機粒子が有するによって吸音特性が付与されるものと考えられる。
【0046】
このように本発明においては、従来別体であった電波音波吸収体と音波吸収体(吸音壁)とを、電波音波吸収体として一体のものとして実現できる。これによって、設置空間の限られた場所でも布設が可能であるというような効果がある。
【0047】
また本発明における電波音波吸収体は、上記の構成材料を用いて形成されてなることによって、火災が起きたときにも煙が発生しにくいという利点もある。
【0048】
上記で得られた電波音波吸収体に、その厚み方向他方側から、当該電波音波吸収体の厚み方向一方側が少なくとも露出するよう収納し得るように筐体にて覆った後、上述のようにして係止部材を形成することで、本発明の電波音波吸収構造物を製造することができる。
なお、上記空気層を形成する場合には、電波音波吸収体を収納する前に、設けたい空気層の厚みだけ筐体の底壁から距離をあけて、筐体の内部空間に突出するような突片を筐体の側壁に設けて「段」を形成し、その上から電波音波吸収体を収納するようにすればよい。当該突片は、溶接やボルト留めにて筐体の側壁に板状体を固定するようにしてもよいし、単にボルトで筐体の側壁を貫通させるだけでもよい(図3は、ボルトで筐体22の側壁を貫通させて突片25を形成した例を示している。)。
【0049】
また本発明における電波音波吸収体は、平板状の台部と台部の厚み方向一方側に形成される複数個の凸部とを備え、該凸部は略規則的に配列された複数個の錐体および/または錐体台形で実現される。錐体の具体例としては、四角錐、三角錐、多角錐(五角錐、六角錐、八角錐など)、円錐などが挙げられる。錐体台形の具体例としては、上記錐体の具体例として挙げたものと同様の底面形状を有する錐体台形(四角錐台形、三角錐台形、多角錐台形、円錐台形など)が挙げられる。該多角錐台形には、五角錐台形、六角錐台形、八角錐台形などが含まれる。特に正六角錐および/または正六角錐台形を配列する場合にはハニカム構造を構成することができる。
【0050】
複数個の凸部は、これらの錐体、錐体台形のうち、同じ形状および同じ高さのものであっても、互いに異なる形状および同じ高さのものであっても、同じ形状および互いに異なる高さのものであっても、またいずれもが互いに異なる形状および異なる大きさのものであってもよい。凸部の配列の仕方としては、概ね規則性をもって配列されていれば特に制限はない。例えば、各凸部が、上述した正四角錐、正四角錐台形、円錐、円錐台形、三角錐、三角錐台形、多角錐、多角錐台形などから選ばれるいずれかが行列状または最密状に配列されて実現されてもよく、大小の正四角錐の台形が組合わされて配列されることによって各凸部が実現されるものであってもよい。ここで「行列状」とは、略合同な底面形状を有する複数個の凸部が、全体として方形状(矩形状、正方形状)となるように略等間隔で配置された状態をいい、「最密状」とは、略合同または略相似な底面形状を有する凸部が、上記行列状以外の形態にて、互いに隣接するように二次元的に充填されて配置された状態をいう。
【0051】
各凸部の高さ(底面と、頂点または上面との間の直線距離)は、特に制限はないが、吸収すべき電波または音波の波長と同程度の大きさ、あるいはそれ以上の大きさであることが好ましい。凸部の高さがこのように選ばれることで、広角度から入射する電波および音波を良好に吸収する、という効果を有する電波音波吸収体を実現することができる。
【0052】
凸部が錐体および/または錐体台形で実現されることによって、電波および音波の入射を意図する電波音波吸収体の表面に凹凸が形成され、様々な角度の面が存在することになり、広範囲の角度から入射される電波および音波を吸収することができる。これにより、表面がフラットな電波音波吸収体と比較して、様々な角度にて入射する電波および音波に対して略垂直に存在し得る面が多く形成され、電波音波吸収体によって好適に吸収し得る電波および音波の入射角度の範囲が広く、より優れた電波吸収特性と音波吸収特性とを同時に兼ね備える電波音波吸収体を実現することができる。このような電波音波吸収体は、ETCシステムをはじめとしたITSなどにおける電波吸収体と吸音壁との役割を兼ね備えた電波音波吸収体として、非常に有用である。
【0053】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、電波音波吸収体が筐体より脱落することのない電波音波吸収構造物を提供することができる。またこのような本発明の電波音波吸収構造物を用いた電波音波吸収壁においては、断面H字状の支持部材に係止部材を介在した状態で電波音波吸収構造物が当該支持部材の凹部に嵌合されるため、電波音波吸収体が上記支持部材に直接接触することがなく、当該電波音波吸収壁の形成に際し上記接触による電波音波吸収体の不所望な欠け落ちを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい一例の電波音波吸収構造物1を簡略化して示す図であり、図1(a)は断面図、図1(b)は正面図である。
【図2】本発明の好ましい一例の電波音波吸収壁11を簡略化して示す斜視図である。
【図3】本発明の好ましい他の例の電波音波吸収構造物21を簡略化して示す断面図である。
【図4】図4(a)は、連続気孔を有する多孔質無機粒子の一つである軽石の第一のサンプルのSEM断面写真であり、図4(b)は図4(a)を10倍拡大したSEM断面写真である。
【図5】図5(a)は、連続気孔を有する多孔質無機粒子の一つである軽石の第二のサンプルのSEM断面写真であり、図5(b)は図5(a)を4倍拡大したSEM断面写真である。
【図6】本発明における電波音波吸収体の製造方法の好ましい一例を、段階的に簡略化して示す図である。
【符号の説明】
1 電波音波吸収構造物
2 電波音波吸収体
3 筐体
4,5 係止部材
11 電波音波吸収壁
12 支持部材
Claims (4)
- 電波音波吸収体と、該電波音波吸収体を少なくとも厚み方向一方側が露出し得るように収納する直方状の筐体とを備える電波音波吸収構造物であって、
筐体は、金属材料からなり、該筐体の二つの幅方向のうち、少なくともいずれか一方の幅方向における両端部の開放端に、電波音波吸収体を係止し得る係止部材を有し、
前記電波音波吸収体は、連続気孔を有する多孔質無機材料と、電波損失材と、珪酸アルカリ水溶液とを少なくとも含有する混合物に炭酸ガスを接触し、固化してなるものであって、平板状の台部を有し、該台部のうち電波および音波の入射を意図する側である該台部の厚み方向一方側の表面には複数個の凸部が形成され、かつ、該表面のうち筐体の係止部材が係止する箇所は凸部が形成されない略平坦な領域とされ、
筐体の金属材料からなる底壁と電波音波吸収体の厚み方向他方側との間には空気層が設けられており、該空気層によって、抑制すべき音が筐体の底壁の金属面で反射し共鳴効果によって抑制される構成となっていることを特徴とする電波音波吸収構造物。 - 上記係止部材が、上記幅方向における両端部の開放端において、その全長にわたって形成されているものである、請求項1に記載の電波音波吸収構造物。
- 抑制すべき音の周波数が100Hz〜4000Hzであって、上記空気層の厚みが10mm〜100mmである、請求項1または2に記載の電波音波吸収構造物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の電波音波吸収構造物を、厚み方向一方側が同方向となり、かつ上記幅方向両端部のうち、一方側の端部が他方側の端部に隣接するように、複数個並設した電波音波吸収壁であって、
各電波音波吸収構造物が、上記係止部材を有する幅方向端部に断面H字状の支持部材を介在し、当該端部が当該支持部材の凹部に嵌合するようにして支持されてなるものである、電波音波吸収壁。
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