JP4010991B2 - 滑り止め用スタッドおよびこれを有するスポーツシューズ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴルフ、野球等、右足と左足が異なる動作を行うスポーツの際に用いるスポーツシューズのスタッド体および靴底に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ゴルフ、野球等、右足と左足が異なる動作を行うスポーツの際に用いるスポーツシューズの靴底構造について、例えば、特開2001―299406号公報に示すようなものが提案されている。この靴底は、左足の靴底が爪先方向に突出部として筋山を有し、また、右足の靴底が踵方向に突出部として筋山を有しており、右利きのゴルファーの使用に適した構造となっている。
【0003】
特開2001―299406号公報
【0004】
また、特開2002-45203号公報に示すものでは、右利きのゴルファーが使用した場合でも左利きのゴルファーが使用した場合でも、スリップが抑制される靴底が示されている。この靴底は、爪先側防滑壁と踵側防滑壁とを有しており、例えば右利きのゴルファーが左足用に用いた場合にも、右足用に用いた場合にも、それらが適切なスリップ防止機能を有するように配置されている。
【0005】
特開2002-45203号公報
【0006】
また、野球シューズにおいては、特開平9−173104号公報に示すように、野球競技におけるバッティング、スローイング、ランニングなどのあらゆる動作中に靴底に作用するせん断応力とその方向を解析し、スパイクシューズの突片が設けられている。
【0007】
特開平9−173104号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開2001―299406号公報に示す方法では、例えば右利きの使用者が使用した場合の左足と右足の動きにそれぞれ対応できるものの、右利きのゴルファー用のシューズと左利きのゴルファー用のシューズがそれぞれ必要であり、生産効率が良いとは言えず、その結果コストアップにつながるものであった。
【0009】
また、特開2002-45203号公報に示すものでは、右利きのゴルファーの使用にも左利きのゴルファーの使用にも対応できるものの、両足に使用できる様になっているため、最低限必要以外の突起も配置されており、その結果重量が増加し、また各足のスリップ防止機能も減少してしまう、という問題点があった。
【0010】
また、特開平9−173104号公報に示すような野球シューズにおいては、走行等の動作のみを重視する場合は、左右対称形状に突片を配置すればよいことが分かっており、その方向は図15に示すとおりである。しかし、投手の投球動作に着目した場合、軸足の母趾球部分に関してのみ、他の動作とは大きく異なったせん断力が加わることが分かっている。
【0011】
すなわち、投手の投球動作においては、マウンド上に硬質板で形成される投手板が投球方向と垂直に埋め込まれており、投手は投球動作において軸足すなわち右投手であれば右足を投手板の長手方向と靴底の長手方向を平行にし、投手板の投球方向側のエッジに、母趾球部の突片を引っ掛けるようにして、外甲側に蹴る動作をする。よって、軸足の母趾球部の突片は、投手板の長手方向、すなわち靴底の長手方向と平行になるように配置しなければ、より安定してグリップ力を発揮することが出来ない。
【0012】
よって、特開平9−173104号公報に示すものは、右足と左足の両方に使用できるよう考慮されているものの、投球時の軸足と言う点ではそれぞれの動作に最適なものではなかった。
【0013】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたもので、スポーツシューズにおいて、右利きの使用者でも左利きの使用者でも使用でき、かつ、必要最小限の重量で、適切なスリップ防止機能を有するようにすることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係る滑り止め用スタッドは、スポーツシューズの靴底に着脱自在に取り付けられるものであって、回転対称性を有するとともにその回転中心軸に取付用の係合凸部が設けられる多角柱状のベース部と、ベース部の多角形状の底面の一辺から当該底面に対して斜め下方に櫛歯状に突出するとともに上下方向に弾性変形可能な複数の突出片からなる第1の突起部とを備えている。
【0015】
請求項2の発明では、請求項1において、ベース部の底面が正多角形状を有している。
【0016】
請求項3の発明では、請求項1において、ベース部の底面の多角形状を構成する辺が曲線から形成されている。
【0017】
請求項4の発明では、請求項1において、ベース部の多角形状の底面の他の辺から当該底面に対して斜め下方に突出するとともに上下方向に弾性変形可能な第2の突起部をさらに備えている。
【0018】
請求項5の発明では、請求項1において、係合凸部が雄ネジ部である。
【0019】
請求項6の発明は、着脱自在な滑り止め用スタッドを有するスポーツシューズにおいて、滑り止め用スタッドが、回転対称性を有するとともにその回転中心軸に取付用の係合凸部が設けられる多角柱状のベース部と、ベース部の多角形状の底面の一辺から当該底面に対して斜め下方に櫛歯状に突出するとともに上下方向に弾性変形可能な複数の突出片からなる突起部とから構成されており、シューズの靴底には、滑り止め用スタッドのベース部が着脱自在に嵌合する多角柱状の凹部と、該凹部内において滑り止め用スタッドの係合凸部が係止する係合凹部とが形成されている。
【0020】
請求項7の発明では、請求項6において、係合凸部が雄ネジ部であって、係合凹部が雌ネジ部である。
【0021】
請求項8の発明では、請求項6において、シューズの靴底には、滑り止め用スタッドの嵌合のための目印がマーキングされている。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施態様を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施態様によるスタッド体1の全体斜視図である。図1に示す様に、スタッド体1は、ベース部21と滑り止め突起部22と取り付け部3とを備えている。また、図2は同じくスタッド体1を靴底4に取り付けた場合の平面図である。また、図3は本発明の一実施態様による靴底4の全体平面図である。図3に示すように、靴底4には凹部42が設けられており、また、左足には右足の凹部42の位置と形状が鏡像となるように反転した形状に、凹部42が設けられている。
【0023】
図4は、右利きのゴルファーのスウィング動作において、インパクト時に足裏すなわち靴底4から地面に加えられる足圧分布図に、せん断応力の作用方向を書き加えたものを、足裏方向から見たものである。
【0024】
図4より、左足には、略爪先方向へのせん断応力が靴底4から地面に加えられていることが分かる。従って、左足には略爪先方向に対応する滑り止めを設けることにより、せん断応力に対するグリップ力を有効に発揮することが出来る。
【0025】
また、同じく図4より、右足には、外甲側後方へのせん断応力が靴底4から地面に加えられていることが分かる。従って、右足には外甲側後方方向に対応する滑り止めを設けることにより、せん断応力に対するグリップ力を有効に発揮することが出来る。
【0026】
具体的には、前足部においては、靴底4の長手方向に対して外甲側後方を正方向とすると、左足に加わるせん断応力の方向は−16度から44度の範囲内にあり、右足に加わるせん断応力の方向は104度から164度の範囲内にある。よって、左足に加わるせん断応力と右足に加わるせん断応力は、約120度の角度をなしていることが分かる。従って、右足に加わるせん断応力には、左足に設けられた滑り止めを120度外甲側後方に回転させることによって、対応出来ることが分かる。
【0027】
すなわち、図7に示すように、左足の靴底4と右足の靴底4のそれぞれ対応する位置にある被取り付け部41に、左足は略爪先方向に、右足は外甲側後方に120度回転させた方向に、滑り止めであるスタッド体1を回転させて取り付けることによって、それぞれの足に加わるせん断応力に対するグリップ力を有効に発揮出来ることが分かる。
【0028】
よって、スタッド体1のベース部21の外周形状は回転対称形状とする。回転対称形状とは、一つの図形を一定軸の周りに一定の角度だけ回転するごとに最初の位置の図形と同一になる性質をもつ形状であり、具体的には、図5に示す様に正三角形、正四角形、正五角形、正六角形、星形、およびこれらの形状に同じく回転対称となるように切込みや凸部を設けた形状や、円に回転対称となるように切り込みや凸部を設けた形状である。
【0029】
また、回転対称形状としては、図6に示す様に、正三角形、正四角形、正五角形、正六角形、星形、およびこれらの形状に同じく回転対称となるように切込みや凸部を設けた形状の各頂点を同一の円弧で結んだ形状としても良い。各頂点を同一の円弧で結んだ形状にすることによって、各頂点部分の隣り合う辺同士がなす角度が大きくなり、頂点部分の破損等を防ぐ事が出来る。また、各頂点の折れ・破損を防ぐ為に、頂点の先端を円弧で丸めた形状としても良い。
【0030】
回転対称形状の回転対称角度は、例えば、ゴルフシューズの様に左足と右足に加わるせん断応力の方向が120度異なる種目においては、120度とすればよい。
【0031】
図7は、本発明の一実施態様によるスタッド体1を靴底4に取り付けた場合の全体平面図であるが、回転対称角度を120度とした場合、図7に示すように、左足の前足部の被取り付け部41と対応する位置にある右足の前足部の被取り付け部41に、スタッド体1を1頂点分回転させて取り付けることにより、1種類の靴底及びスタッド体で、左足および右足の両方の動きに対応させることが出来る。
【0032】
他の種目においても同様に、左足と右足に加わるせん断応力の方向がなす角度において回転対称形状となるように、スタッド体1のベース部21の外周形状を形成すればよい。具体的には、図5に示すように、左足と右足に加わるせん断応力の方向が90度異なる種目の場合は、ベース部21の外周形状を90度回転対称となる形状、すなわち、四角形や、また図示はしないが、四角形の各辺に切り欠きや凸形状を設けた形状等とすれば良い。
【0033】
また、左足と右足に加わるせん断応力の方向が70度程度異なる種目の場合は、ベース部21の外周形状を72度回転対称となる形状、すなわち、五角形や星形等、また図示はしないが、五角形や星形の各辺に切り欠きや凸形状を設けた形状等とすれば良い。
【0034】
また、ベース部21の外周形状を六角形または六角形の各辺に切り欠きや凸形状を設けた形状、すなわち60度回転対称形状とすることで、左足と右足に加わるせん断応力の方向が60度程度異なる種目はもとより、ゴルフシューズの様に左足と右足に加わるせん断応力の方向が120度異なる種目においても、個人のフォームや好みに応じて、滑り止め方向を60度ずつ回転させる事が出来、よりきめ細かい対応が出来るようになる。
【0035】
図13に示すように、左利きの使用者が使用する場合は、右利きの使用者が使用する際に取り付けた方向と鏡像になる方向にスタッド体1を取り付けることによって、対応する事が出来る。すなわち、例えば、ゴルフシューズにおいては、右足は略爪先方向に、左足は外甲側後方方向に対抗する方向に、スタッド体1を回転させて取り付けるとよい。
【0036】
このように、右利きの使用者が使う場合と左利きの使用者が使う場合とで、取り付ける方向を変えることによって、1種類の靴底及びスタッド体で、右利きの使用者および左利きの使用者の両方に対応させることが出来る。
【0037】
図1に示すように、滑り止めの手段としては、スタッド体1のベース部21上の接地面側に滑り止め突起部22を設けると良い。滑り止め突起部22は、少なくとも一つの突起側面24の仰角26がベース部21の延長面25に対して鋭角に傾斜している形状を有するようにするとよい。
【0038】
図8は図2のI―I線断面図である。図8に示す様に、滑り止め突起部22を、少なくとも一つの突起側面24の仰角26がベース部21の延長面25に対して鋭角に傾斜している形状である傾斜滑り止め突起部22bとする事で、滑り止め機能をより効果的に発揮させることが出来る。
【0039】
ここで、傾斜滑り止め突起部22bの仰角26とは、傾斜滑り止め突起部22bの突起側面24とベース部21の延長面25とがなす角度のことである。また、傾斜方向27とは、傾斜滑り止め突起部22bをベース部21の延長面25に平行な方向とベース部21の延長面25の鉛直方向に分解した場合に、ベース部21の延長面25と平行な方向である。
【0040】
図9はスタッド体1の傾斜滑り止め突起部22bの突起側面24の傾斜方向27と同じ方向に、靴底4からせん断応力が加えられた状態を示す図である。同じく、図10はスタッド体1の傾斜滑り止め突起部22bの突起側面24の傾斜方向27とは反対方向に、靴底4からせん断応力が加えられた状態を示す図である。
【0041】
図9に示す様に、傾斜滑り止め突起部22bの突起側面24の傾斜方向27と同方向に靴底4からせん断応力が加えられた場合は、傾斜滑り止め突起部22bが地面と対抗しようとして立ち上がり、せん断応力に対するグリップ力を有効に発揮することが出来る。
【0042】
同じく、図10に示す様に、傾斜滑り止め突起部22bの突起側面24の傾斜方向27とは反対方向に靴底4からせん断応力が加えられた場合は、傾斜滑り止め突起部22bが地面上をすべるように移動するので、不要に地面に抵抗することを防止できる。
【0043】
また、ベース部21の外周の一辺上に、傾斜方向27が同じである前記傾斜滑り止め突起部22bを二つ以上設けることによって、傾斜方向へのグリップ力をより効果的に発揮する事が出来る。
【0044】
また、全ての傾斜滑り止め突起部22bを、同じ向きに平行に傾斜させて設けることによって、傾斜方向へのグリップ力をさらに効果的に発揮する事が出来る。
【0045】
また、図2に示すように、ベース部21の外周形状が正多角形状もしくは正多角形状の各頂点を同一の円弧でつないだ形状の場合、辺の両端に位置する頂点を結んだ線分に対して垂直な方向に二つ以上の傾斜滑り止め突起部22bを設けることによって、傾斜方向27への一辺の投影長さがもっとも長くなるので、一つの辺上により多くの傾斜滑り止め突起部22bを設けることが出来、よりグリップ力を高めることが出来る。
【0046】
また、図1に示すように、滑り止め突起部の接地面に小突起を設けても良い。滑り止め突起部の接地面に小突起29を設けることによって、よりグリップ力を高めることが出来る。
【0047】
スタッド体1の靴底4への脱着方法としては、図8に示す様に、靴底4上にスタッド体1の取り付け手段31に対応する被取り付け部41を設けるとよい。
【0048】
なお、スタッド1を回転して取り付けるために、取り付け手段31はスタッド1の外周形状の回転対称形状の中心となる位置に設ける。
【0049】
スタッド体1の取り付け手段31は、スタッド体1の方向を任意に固定できる構造であれば良い。具体的には、図8に示す様に、スタッド体1のベース部21に設けられた貫通孔23に、靴底4に設けられた雌ネジ等の被取り付け部41に係合することのできる雄ネジ等の取り付け手段31を有した軸部32を挿入して、取り付け手段31と被取り付け部41と係合させると良い。
【0050】
また、図11は、取り付け手段として延長取り付け部材33を設けた場合のスタッド体1および靴底4の斜視図である。
【0051】
図11に示す様に、取り付け手段としてスタッド体1にはベース部21から軸部32を介して三方向に伸びる延長取り付け部材33を設け、また靴底4には延長取り付け部材33の形状に対応する延長取り付け係合部43を設けることによって、スタッド体1のベース部21の延長取り付け部材33の三方向に合致する方向にのみ、スタッド体1を係合させることが出来る。延長取り付け部材33を延長取り付け係合部43に係合後、スタッド体1を回転させ、延長取り付け係合部43から連続して設けられた空間部44に延長取り付け部材33をはめ込むことによって、スタッド体1は靴底4に固定される。
【0052】
この場合、延長取り付け部材33が3方向、すなわちそれぞれが120度の角度を有していることにより、スタッド体1を120度回転対称な方向に取り付けることが出来る。
【0053】
図8に示すように、靴底4の被取り付け部41周辺には、スタッド体1のベース部21の外周形状に係合する凹部42を設ける。スタッド体1を凹部42内に装着することによって、スタッド体1が不用意に回転することを防止することが出来る。
【0054】
凹部42の形状は、対応させる種目の右足と左足に加わるせん断応力の方向とスタッド体1の外周形状によって、決定する。
【0055】
図4に示す様に、例えばゴルフ動作においては、左足の前足部には略爪先方向、具体的には靴底4の長手方向に対して外甲側後方を正方向とすると、−16度から44度の方向へのせん断応力が、靴底4から加えられている。
【0056】
また、右足には外甲側後方、具体的には、靴底4の長手方向に対して外甲側後方を正方向とすると、104度から164度の方向へのせん断応力が靴底4から加えられている。
【0057】
よって、図7に示す様に、前足部においては、滑り止め突起部22および傾斜滑り止め突起部22bのせん断応力に対抗する方向が略爪先方向、および外甲側後方を向く方向にスタッド体1を取り付けることが出来るように凹部42を設けると良い。
【0058】
具体的には、図3に示すように、一つの辺が靴底4の長手方向に対して外甲側後方を正方向とすると、−16度から44度に対応する方向とする。この場合、もう一つの辺は、靴底4の長手方向に対して外甲側後方を正方向とすると、104度から164度に対応する方向となり、これは、右足に加わっているせん断応力と等しくなる。よって、右足に加わるせん断応力にも左足に加わるせん断応力にも対応することが出来る。
【0059】
同じく、図4に示す様に、踵部分には左足、右足ともに、外甲側後方方向へのせん断応力が加わっていることが分かる。具体的には、左足には靴底4の長手方向に対して外甲側後方を正方向とすると、一様に118度、右足には靴底4の長手方向に対して外甲側後方を正方向とすると、103度から133度の方向へのせん断応力が加わっている。
【0060】
よって、図3に示す様に、滑り止め突起部22および傾斜滑り止め突起部22bのせん断応力に対抗する方向が外甲側後方、すなわち靴底4の長手方向に対して外甲側後方に103度から133度の方向を向く方向にスタッド体1を取り付けることが出来るように、凹部42を設けると良い。
【0061】
図12は、本発明の一実施態様によるスタッド体を靴底に取り付けたゴルフシューズの靴底の全体平面図である。図12に示す様に、靴底4上の凹部42の外周縁46の頂点部分に文字および図形による係合目印45を設けると良い。
【0062】
具体的には、ゴルフシューズの場合、左足においては、右利きの使用者にグリップ力を持たせたい方向、すなわち滑り止め突起部22および傾斜滑り止め突起部22bのせん断応力に対抗する方向が略爪先方向となるようにスタッド体1を取り付けた際に、せん断応力に対抗する方向と対峙する頂点部分に、「右」もしくは「R」等の係合目印45を設けると良い。また、係合目印45は円形等の記号でも良い。
【0063】
また、左利きの使用者が使用する場合は、右利きの使用者が使用する際に取り付けた方向と鏡像になる方向にスタッド体1を取り付ける必要がある。よって、右利きの使用者に対応して設けた目印44と左右鏡像になる位置にある頂点付近に、「左」もしくは「L」等の係合目印45を設けると良い。また、係合目印45は×印等、右足に設けた記号との違いが識別出来るような記号でも良い。
【0064】
係合目印45を設ける方法は、金型を加工することによって、靴底4を形成する際に同時に凹凸を形成しても良いし、また、靴底4に印刷したりシールを貼ることによって設けても良い。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を用いてさらに具体的に説明する。
〔実施例〕
図12は本発明の一つの実施例であるゴルフシューズのスタッド体と靴底本体である。
【0066】
スタッド体1のベース部21の外周形状は正三角形の各頂点を同一の円弧で結んだ形状とした。これは、図4に示す様に、ゴルフのスウィング動作において、右足に加わるせん断応力の方向と左足に加わるせん断応力の方向が約120度の角度をなしていることによるものである。
【0067】
スタッド体1の全ての滑り止め突起部22は、図1のように、傾斜滑り止め突起部22bとした。これは、グリップ力を得たい方向には傾斜滑り止め突起部22bが立ち上がる事によりグリップ力が有効に発揮され、またグリップ力を得たい方向と逆の方向には傾斜滑り止め突起部22bが逆方向に倒れこみ不要に地面に抵抗することを防止でき、必要な方向にのみグリップ力を得られるからである。
【0068】
また、ベース部21の一辺上に、辺の両端の頂点を結んだ線分に対して垂直な方向に傾斜滑り止め突起部22bを4つ配置した。これは、一つの辺上により多くの傾斜滑り止め突起部22bを設け、かつ、複数の傾斜滑り止め突起部22bを並列して並べることにより、より強い滑り止め効果を得るためである。
【0069】
スタッド体1の靴底4への取り付け手段として、図8のように、スタッド体1のベース部21に設けられた貫通孔23に、取り付け手段31として雄ネジを有した軸部32を挿入した。また靴底4には、取り付け手段31に対応する雌ネジを有した被取り付け部41を靴底4と一体に形成した。
【0070】
また、図12に示すように、靴底4の凸部42の形状は、スタッド体1のベース部21の外周形状、すなわち、正三角形の各頂点を同一の円弧で結んだ形状を、外側に0.5mmオフセットした形状とした。
【0071】
これは、生産においてスタッド体1のベース部21の外周形状が設計より大きく成型される、あるいは靴底4の凹部42の外周縁46が設計より小さく成型される等のばらつきが発生した場合を考慮してのことである。
【0072】
また、同じく図12に示すように、靴底4の前足部には、凹部42の外周縁46の一つの辺が略爪先方向、もう一つの辺が外甲側後方方向に対応するに、凹部42を配置した。具体的には、滑り止め突起部22および傾斜滑り止め突起部22bのせん断応力に対抗する方向が略爪先方向、すなわち、1度から22度の方向にスタッド体1を取り付けることが出来るように、凹部42を配置した。
【0073】
これは、図4に示すように、右利きのゴルファーが使用した場合において、左足の前足部に設けられた被取り付け部41周辺に加わるせん断応力の方向が、靴底4の長手方向に対して外甲側後方を正方向とすると、1度から22度の範囲にあるためである。
【0074】
この場合、もう一つの辺は、靴底4の長手方向に対して外甲側後方を正方向とすると、121度から142度に対応する方向となり、これは、右利きのゴルファーが使用した場合の、右足の被取り付け部41周辺に加わる断応力の方向と等しくなる。
【0075】
また、同じく図12に示すように、靴底4の踵部には、凹部42の外周縁46の一つの辺が外甲側後方方向に対応する方向に、凹部42を配置した。
【0076】
具体的には、滑り止め突起部22および傾斜滑り止め突起部22bのせん断応力に対抗する方向が外甲側後方、すなわち靴底4の長手方向に対して外甲側後方に103度から133度の方向を向く方向にスタッド体1を取り付けることが出来るように、凹部42を配置した。
【0077】
また、同じく図12に示すように、スタッド体1を取り付けた際に傾斜滑り止め突起部22bの傾斜方向25と対峙する頂点に“R”の係合目印45を設けた。また、靴底4の“R”と鏡像になる位置に対応する頂点に、”L”の係合目印45を設けた。係合目印45は靴底4を成型する際に用いるインジェクション成型型に彫りこみ、靴底4を成型すると同時に凸形状に形成した。
【0078】
図12に示すように、右利きのゴルファーが使用することを想定して、靴底4上の“R”と表示されている係合目印45に、スタッド体1の傾斜滑り止め突起部22bの傾斜方向27に対峙する頂点部分が合致するように、スタッド体1を取り付けた。
【0079】
なお、左利きのゴルファーが使用する場合には、図13に示す様に、靴底4上の“L”と表示されている係合目印45に、傾斜滑り止め突起部22bの傾斜方向25と対峙する頂点部分が合致するように、スタッド体1を取り付けると良い。
【0080】
なお、踵部分は外甲側後方方向へのせん断応力に対応する方向、すなわち、右足・左足ともに、靴底4上の“RL”と表示されている係合目印45に、傾斜滑り止め突起部22bの傾斜方向27に対峙する頂点部分が合致するように、スタッド体1を取り付けた。
踵部分は右足左足ともに外甲側後方方向へのせん断応力が加わるので、図13に示すように、左利きのゴルファーが使用する場合も同様に取り付けた。
【0081】
スタッド体1を図12のように取り付ける事によって、右利きのゴルファーがスウィングする際に靴底4から加えられるせん断応力に対して、過不足無くグリップ力を発揮することが出来る。
【0082】
また、スタッド体1を図13のように取り付ける事によって、左利きのゴルファーがスウィングする際に靴底から加えられるせん断応力に対して、過不足無くグリップ力を発揮することが出来る。
【0083】
〔参考例〕
図15は本発明の参考例である野球シューズのスタッド体1である。
野球動作においては、右利きの投手と左利きの投手の投球動作、および投球以外の動作における各足に加わるせん断応力の方向は、拇趾球部分を除いてどの動作でも同方向であるが分かっている。
【0084】
また、拇趾球部分に関しては、投手の軸足のみ、靴の長手方向と平行な方向、すなわち外甲側へのせん断力が加わることが分かっている。また、それ以外の動作では、外甲側後方へのせん断力が加わることも分かっている。
【0085】
よって、スタッド体1の外周形状は、拇趾球部分の内甲側へのせん断力に対応する方向と外甲側後方へのせん断力に対応する方向がなす角度である、120度対称形状である正三角形の各頂点を円弧でつないだ形状とした。
【0086】
また、図15に示すように、滑り止め突起部22として板状の金属ブロック51を、スタッド体1の一辺上に、ベース部21に垂直に設けた。
【0087】
スタッド体1の靴底4への取り付け手段として、スタッド体1のベース部21に設けられた貫通孔23に、取り付け手段31として雄ネジを有した軸部32を挿入した。また図示はしないが、靴底4には、取り付け手段31に対応する雌ネジを有した被取り付け部41を靴底4と一体に形成した。
【0088】
また、図16に示すように、靴底4の凹部42の形状は、スタッド体1のベース部21の外周形状と同様の形状とした。
【0089】
また同じく図16に示すように、靴底4上の拇趾球以外の部分に、投球以外の動作における各足に加わるせん断応力の方向に対抗する方向に滑り止め突起部22が対応するように、凹部42を配置した。
【0090】
また、靴底4上の拇趾球部分には、投手の軸足の場合は外甲側に、それ以外の場合は外甲側後方にせん断応力が加わることより、スタッド体1を取り付けた際に滑り止め突起部22のせん断応力に対応する方向が、一辺が靴の長手方向に平行な方向、もう一辺が外甲側後方に対応する方向に、凹部42を配置した。
【0091】
右足の靴底4の拇趾球部分に設けられた凹部42の外周縁46の頂点部分には、右利きの投手が使用する場合、すなわち滑り止め突起部22が内甲側へのせん断応力に対抗する方向にスタッド体1を取り付けた場合に、滑り止め突起部22と対峙する頂点付近に“R”の係合目印45を設けた。
【0092】
また、左利きの投手が使用する場合および投手以外の選手が使用する場合、すなわち滑り止め突起部22が外甲側後方へのせん断応力に対抗する方向にスタッド体1を取り付けた場合に、滑り止め突起部22と対峙する頂点付近に“O”、“L”の係合目印45を設けた。
【0093】
また、左足の靴底4の拇趾球部分に設けられた凹部42の外周縁46の頂点部分には、左利きの投手が使用する場合、すなわち滑り止め突起部22が外甲側へのせん断応力に対抗する方向にスタッド体1を取り付けた場合に、滑り止め突起部22と対峙する頂点付近に“L”の係合目印45を設けた。
【0094】
また、右利きの投手が使用する場合および投手以外の選手が使用する場合、すなわち滑り止め突起部22が外甲側後方へのせん断応力に対抗する方向にスタッド体1を取り付けた場合に、滑り止め突起部22と対峙する頂点付近に“O”、“R”の係合目印45を設けた。
【0095】
係合目印45は、靴底4を成型する際に用いるインジェクション成型型に彫りこみ、靴底4を成型すると同時に凸形状に形成した。
【0096】
図16に示すように、右利きの投手が使用することを想定して、靴底4上の拇趾球部分に設けられた凹部42の“R”と表示されている係合目印45に、スタッド体1の滑り止め突起部22が対峙する頂点部分が合致するように、スタッド体1を取り付けた。
【0097】
また、図17に示すように、左利きの投手が使用する場合は、靴底4上の“L”と表示されている係合目印45に、スタッド体1の滑り止め突起部22が対峙する頂点部分が合致するように、スタッド体1を取り付けると良い。
【0098】
また、図18に示すように、投球動作以外で使用する場合は、靴底4上の“O”と表示されている係合目印45に、スタッド体1の滑り止め突起部22が対峙する頂点部分が合致するように、スタッド体1を取り付けると良い。
【0099】
スタッド体1を図16のように取り付ける事によって、右利きの投手の投球動作において靴底4から加えられるせん断応力に対して、過不足無くグリップ力を発揮することが出来る。
【0100】
また、スタッド体1を図17のように取り付ける事によって、左投手の投球動作において靴底4から加えられるせん断応力に対して、過不足無くグリップ力を発揮することが出来る。
【0101】
また、スタッド体1を図18のように取り付ける事によって、投手の投球動作以外の動作において靴底4から加えられるせん断応力に対して、過不足無くグリップ力を発揮することが出来る。
【0102】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、靴底とスタッド体を1種類用意するだけで、右利きの使用者にも左利きの使用者にも対応でき、右足および左足ともに、過不足無くグリップ力を発揮できる靴底を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様によるスタッド体1の全体斜視図である。
【図2】スタッド体1を靴底4に取り付けた場合の平面図である。
【図3】本発明の一実施態様による靴底4の平面図である。
【図4】右利きのゴルファーのスウィング動作において、インパクト時に足裏すなわち靴底4から地面に加えられる足圧分布図に、せん断応力の作用方向を書き加えたものである。
【図5】スタッド体1の外周形状の実施例である。
【図6】スタッド体1の外周形状の実施例である。
【図7】本発明の一実施態様によるスタッド体1を靴底4に取り付けた場合の全体平面図である。
【図8】図2のI―I線断面図である。
【図9】スタッド体1の傾斜滑り止め突起部22bの突起側面24の傾斜方向と同じ方向にせん断応力が加わった状態を示す図である。
【図10】スタッド体1の傾斜滑り止め突起部22bの突起側面24の傾斜方向に対抗する方向に靴底4からせん断応力を加えられた状態を示す図である。
【図11】取り付け手段として延長取り付け部材を設けた場合のスタッド体1および靴底4の斜視図である。
【図12】本発明の一実施態様によるスタッド体を靴底に取り付けたゴルフシューズの靴底である。
【図13】本発明の一実施態様によるスタッド体および靴底を採用したゴルフシューズにおいて、左利きの使用者に対応してスタッド体1を取り付けた場合の靴底4の平面図である。
【図14】本発明の第2の実施態様によるスタッド体の全体斜視図である。
【図15】従来の野球シューズに用いられている滑り止めの方向を模式的に表したものである。
【図16】本発明の第2の実施態様によるスタッド体および靴底を採用した野球シューズにおいて、右利きの投手が使用した場合に対応してスタッド体1を取り付けた場合の靴底4の平面図である。
【図17】本発明の第2の実施態様によるスタッド体および靴底を採用した野球シューズにおいて、左利きの投手が使用した場合に対応してスタッド体1を取り付けた場合の靴底4の平面図である。
【図18】本発明の第2の実施態様によるスタッド体および靴底を採用した野球シューズにおいて、投球動作以外に使用した場合に対応してスタッド体1を取り付けた場合の靴底4の平面図である。
【符号の説明】
1:スタッド体
21:ベース部
22:滑り止め突起部
22b:傾斜滑り止め突起部
23:貫通孔
24:突起側面
25:ベース部21の延長面
26:仰角
27:傾斜方向
28:外周形状の中心
29:小突起
3:取り付け部
31:取り付け手段
32:軸部
33:延長取り付け部材
4、4a、4b:靴底
41:被取り付け部
42:凹部
43:延長取り付け係合部
44:空間部
45:係合目印
46:外周縁
51:金属ブロック
Claims (8)
- スポーツシューズの靴底に着脱自在に取り付けられる滑り止め用スタッドであって、
回転対称性を有するとともにその回転中心軸に取付用の係合凸部が設けられる多角柱状のベース部と、
前記ベース部の多角形状の底面の一辺から当該底面に対して斜め下方に櫛歯状に突出するとともに上下方向に弾性変形可能な複数の突出片からなる第1の突起部と、
を備えた滑り止め用スタッド。 - 請求項1において、
前記ベース部の底面が、正多角形状を有している、
ことを特徴とする滑り止め用スタッド。 - 請求項1において、
前記ベース部の前記底面の前記正多角形状を構成する辺が、曲線から形成されている、
ことを特徴とする滑り止め用スタッド。 - 請求項1において、
前記ベース部の多角形状の前記底面の他の辺から当該底面に対して斜め下方に突出するとともに上下方向に弾性変形可能な第2の突起部をさらに備えた、
ことを特徴とする滑り止め用スタッド。 - 請求項1において、
前記係合凸部が雄ネジ部である、
ことを特徴とする滑り止め用スタッド。 - 着脱自在な滑り止め用スタッドを有するスポーツシューズにおいて、
前記滑り止め用スタッドが、回転対称性を有するとともにその回転中心軸に取付用の係合凸部が設けられる多角柱状のベース部と、前記ベース部の多角形状の底面の一辺から当該底面に対して斜め下方に櫛歯状に突出するとともに上下方向に弾性変形可能な複数の突出片からなる突起部とから構成されており、
前記シューズの靴底には、前記滑り止め用スタッドの前記ベース部が着脱自在に嵌合する多角柱状の凹部と、該凹部内において前記滑り止め用スタッドの前記係合凸部が係止する係合凹部とが形成されている、
ことを特徴とするスポーツシューズ。 - 請求項6において、
前記係合凸部が雄ネジ部であって、前記係合凹部が雌ネジ部である、
ことを特徴とするスポーツシューズ。 - 請求項6において、
前記シューズの前記靴底には、前記滑り止め用スタッドの嵌合のための目印がマーキングされている、
ことを特徴とするスポーツシューズ。
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