JP4010776B2 - 累進多焦点レンズのレイアウトマーク及び累進多焦点レンズのチェック方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は眼鏡用として用いられる累進多焦点レンズのレイアウトマーク及びそのレイアウトマークを用いた累進多焦点レンズのチェック方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に眼鏡用累進多焦点レンズは、レンズ製造側で製造工程の後に、レイアウトマーク工程が設けられ、レンズに光学的レイアウトを示すマーキングが行なわれる。これは、通常は消去可能なペイントでレンズの凸面にレンズメータによる遠用度数測定位置や近用度数測定位置を明示したり、フレームへの枠入れ加工のための種々の基準指標を明示するものとして実施される。
【0003】
従って、表示方法はJISで定められた遠用度数測定位置や近用度数測定位置の所定の項目以外はレンズ製造側や累進多焦点レンズのタイプによっても異なり、種々の標記方法が実施されている。特に近年、累進多焦点レンズは、眼生理学的機能を加味した種々の設計思想のもとに多様な種類のレンズが出現してきており、その光学設計の多様性に対しても対応できるようなレイアウトマークの提案もなされてきている。
【0004】
図5は従来の累進多焦点レンズのレイアウトマークの例を示す図である。図5に示されるレイアウトマークは、累進多焦点レンズ21の枠入れの際の基準となるフッティングポイントを示す十字線22、遠用部の度数の測定場所を示す円形の遠用部測定基準エリアマーク24、並びに、近用部の度数の測定場所を示す長円又は楕円形状の近用部測定基準エリアマーク26等を有する(特開平2001−51241号公報参照)。
【0005】
このレイアウトマークは、近用部測定基準エリアマーク26を左右方向に長い長円形状または楕円形状にしたことにより、近用度数が異なる故に測定領域が異なるレンズに対しても共通のレイアウトマークを付すだけで、そのマークの機能を発揮できるようにしている。すなわち、同様の設計思想の累進多焦点レンズであっても、度数が異なると、その度数の違いによって、インセット量(内寄せ量)が違ってくる。このため、近用度数測定位置もそれに伴って変るので、近用度数測定領域に合わせた円形マークを用いた場合には、個々のレンズ毎にそのマーキング位置を変える必要が生じ、繁雑である。これを長円又は楕円にすることによって、大略の領域位置を示しながらその位置変化を吸収できるようにし、マークの共通化を可能にしているものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平2001−51241号公報に記載のレイアウトマークを用いても、近年における多様な要請に十分に応えることは困難であることが分かってきた。すなわち、近用部測定基準エリアマーク26の機能を確保するためには、むやみに大きな楕円とすることはできない。そうすると、おのずとインセット量の変化範囲もそれによって規制され、その範囲を外れる場合には適用できない。
【0007】
また、従来のレイアウトマークは、通常、遠用部測定基準エリアマーク24及び近用部測定基準エリアマーク26共に円形等の略閉曲線で構成されている。また、フッティングポイントは、十字線22によって構成されている。ここで、レンズの設計によっては、遠用部測定基準エリアマーク24とフッティングポイントの十字線22がほとんど重なる程に近接する場合がある。そうすると、十字線とエリアマークの線とが重なって識別が困難になったり、レンズ度数測定領域内に十字線が入って測定誤差の原因となる場合のあることが判明した。
本発明はかかる課題を解決するものであって、異なるインセット値を有する累進多焦点レンズに共通に用いることができるとともに、マークが度数測定等の邪魔になることがないようにした累進多焦点レンズのレイアウトマーク及び累進多焦点レンズのチェック方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するための手段として、第1の手段は、
累進多焦点レンズのレンズ表面に施される累進多焦点レンズのレイアウトマークであって、
少なくとも、遠用部の度数の測定場所を示す遠用部測定領域マークと、近用部の度数の測定場所を示す近用部測定領域マークとを有し、
前記遠用部測定領域マーク及び近用部測定領域マークは、度数測定領域を示すための円形の一部を取り除いた円弧状曲線と、遠用アイポイントの高さ位置及び近用アイポイントの高さ位置を示す直線又はこの直線を特定するための2以上の位置を示すマークと、をそれぞれ組み合わせた複合図形のマークであることを特徴とする累進多焦点レンズのレイアウトマークである。
第2の手段は、
前記近用部測定領域マークは、その度数測定領域を示すための円弧状曲線によって示される領域が、考えられるインセット量の変化範囲の大部分を含むことのできる広い領域であることを特徴とする第1の手段にかかる累進多焦点レンズのレイアウトマークである。
第3の手段は、
前記遠用アイポイントの高さ位置及び近用アイポイントの高さ位置を示す直線は、基準水平線に平行な直線であることを特徴とする第1又は第2の手段にかかる累進多焦点レンズのレイアウトマークである。
第4の手段は、
前記基準水平線と直交し、かつ、前記累進多焦点レンズの幾何中心を通る基準垂直線を示す基準垂直線マークを、前記遠用部測定領域マーク及び近用部測定領域マークが設けられた領域外に設けたことを特徴とする第1〜第3のいずれかの手段にかかる累進多焦点レンズのレイアウトマークである。
第5の手段は、
前記近用度数測定場所の中心の高さ位置を示す直線を特定する少なくとも2点の位置を示すマークを、前記近用部測定領域マークの円弧状曲線又は前記近用部測定領域外に設けたことを特徴とする第1〜第4のいずれかの手段にかかる累進多焦点レンズのレイアウトマークである。
第6の手段は、
処方にしたがって製造された累進多焦点レンズをチェックする累進多焦点レンズのチェック方法であって、
前記処方にしたがって製造された累進多焦点レンズに請求項1〜5のいずれかに記載の累進多焦点レンズのレイアウトマークを付し、
前記累進多焦点レンズにインセット量を含むレイアウト情報を付属させるか又は関連づけを行い、
枠入れの際等において、前記累進多焦点レンズの近用度数のチェックを行なうときに、度数測定手段を、前記レイアウトマークの近用度数測定領域内に位置させ、かつ、前記付属されたレイアウト情報又は関連づけられたレイアウト情報からインセット量を読み取り、このインセット量にしたがって前記度数測定手段の位置を正確に決めて測定することを特徴とする累進多焦点レンズのチェック方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1及び図2は本発明の実施の形態にかかる累進多焦点レンズのレイアウトマークの説明図である。以下、図1及び図2を参照にしながら実施の形態にかかる累進多焦点レンズのレイアウトマーク、並びに、累進多焦点レンズのチェック方法を説明する。図1に示されるレイアウトマークは、右眼用(R)の累進多焦点レンズ1の凸面表面に光学的レイアウトを示すためのレイアウトマークをペイントマークしたものである。
【0010】
この累進多焦点レンズ1は、遠用の球面度数が0.00(D)、近用度数が+3.00(D)で加入度数が、3.00(D)、外径75mmである。尚、レンズ屈折率は1.50である。
【0011】
図1及び図2において、符号2はレンズの幾何学的中心を表示する幾何中心ドットである。また、その幾何中心ドット2の左右には、幾何学的水平位置を示す水平基準線3が破線で設けられている。そして、上下には一箇所づつ遠用部と近用部に幾何学的垂直位置を示す2mm程度の垂直基準線マーク4a,4bが実線で、それぞれ表記してある。
【0012】
さらに、左方の水平基準線3の上方には、「R」の指標4があり、これは右眼レンズであることを標記している。また、この「R」の指標4の下方には、「V3P」の文字標記5が表記してあり、これはレンズメーカーの商品名となっている。即ち、レンズの左右とレンズ商品名を表記することによって、受注レンズを確認できるようになっている。
【0013】
そして、遠用部6には、前記一方の垂直基準線マーク4aと幾何中心ドット2との間に、Ω字形状に近似した遠用部測定領域マーク7が表示してある。この遠用部測定領域マーク7は、破線からなる遠用アイポイントの高さ位置を示す遠用アイポイント高さ位置マーク71a,71bと、破線からなる円形の一部で描かれている円弧形状の遠用部円弧状マーク72とから構成されている。
【0014】
遠用部円弧状マーク72によって囲まれる領域が遠用度数測定場所又は位置を示す。また、遠用アイポイント高さ位置マーク71a,71bは、遠用アイポイント高さ位置を示す。本実施の形態では、遠用アイポイント高さ位置マーク71a,71bは、幾何中心ドット2から4mm上方に位置するように配置されている。そして、遠用部円弧状マーク72は、直径8mmの円形の一部で構成されている。
【0015】
図2に示されるように、遠用部測定領域マーク7は、遠用度数測定位置を示すとともに遠用アイポイント位置Ieの高さ位置がわかるように表記されている。そして、遠用アイポイント位置Ieは、図に示されるように、遠用部測定領域マーク7の上方に配設してある垂直基準線マーク4aと組み合わせて、探しだすことができるようになっている。
【0016】
ここで、遠用アイポイント位置Ieは、レンズの枠入れの際、装用者の瞳孔と一致させて一つの光学系を作り出す眼鏡の最も重要な光学指標といわれている。このため、従来は、クロスライン等で直接的表記方法によってマーキングされるのが一般的であった。しかし、従来の技術の欄において説明したように、近年種々の設計の累進多焦点レンズが提案されており、その中には、遠用アイポイント位置が遠用度数測定位置と近い設計のレンズが登場している。その場合、クロスラインのような直接的な表記方法では、遠用度数測定において、眼鏡のJISに規定される直径6mmの基準開口径を備えたレンズメータのアパーチャーの測定領域内にこのマークなどが入り込む場合があり、測定の障害となる場合が想定された。
【0017】
本実施の形態では、遠用部測定領域マーク7と、その遠用部測定領域マーク7の上方に設けたもう一つの垂直基準線マーク4aとを使用して間接的に遠用アイポイントIeを示すようにしたものである。したがって、アパーチャーの測定領域内にマーク等の障害物が入るおそれが完全になくなっているものである。
【0018】
近用部8には、遠用部6と類似して、垂直基準線マーク4bと、幾何中心ドット2との間に、遠用部6よりも大きいΩ字形状に近似した近用部測定領域マーク9が記されている。この近用部測定領域マーク9は、破線で記されている近用アイポイントの高さ位置を示す近用アイポイント高さ位置マーク91a,91bと、中央部にスリット10a,10bを入れた円弧マークで描かれている近用部円弧状マーク92a,92bとから構成されている。近用アイポイント高さ位置マーク91aと91bとをつなぐ直線の中点Ikが近用アイポイント位置である。また、スリット10aと10bとを結んだ直線の中点Koが近用測定領域の中心である。
【0019】
前記近用アイポイント高さ位置マーク91a,91bは、本実施の形態では、幾何中心ドット2から10mm下方に配置されている。近用部円弧状マーク92a,92bは、左の円弧92aと右の円弧との間は最大で11.2mm離れている。円弧の曲率半径Rは4.5mmである。この円弧マーク内で囲まれた比較的大きな領域が近用度数測定場所を示すものである。
【0020】
すなわち、近用部円弧状マーク92a,92bによって囲まれる近用度数測定場所は、直径6mmの基準開口径を備えたレンズメータのアパーチャーの大きさに比較してかなり大きい。したがって、このマークは、アパーチャーの位置をおおよそ決めるために用いられる。正確な位置は、別途、数値の情報として取得されるインセット量によって定める。
【0021】
つまり、本実施の形態においては、正確なインセット量の情報はレイアウトマークによって図示するのではなく、別途、数値の情報として取得されるように製造者側が用意する。例えば、レンズ袋に表示するとか、レンズレイアウト用紙に一緒にプリントして前記レンズ袋の中に入れる等の方法を採用してもよい。また、例えば、レンズの製造番号に対応させてオンラインで読み取れるようにしてもよい。このインセット情報は、例えば、レンズの幾何学中心2を通る垂直線を基準線にして、この基準線からの距離を表す数値等で示すことができる。
【0022】
上述の通り、この実施の形態にかかるレイアウトマークは、近用部円弧状マーク92a,92bによって囲まれる近用度数測定場所は、直径6mmの基準開口径を備えたレンズメータのアパーチャーの大きさに比較してかなり大きい。したがって、インセット量が大幅に異なるレンズに対しても共通に用いることができる。その場合、マークによる場所の特定の不正確さを、数値で得られる正確なインセット量によって修正できるので、正確な位置決めも可能である。さらに、マークとして、円形全部を記すのではなく、その一部を用いたり、また、直線を示すのに、2以上のポイントで示す等、必要最小限のペインティングで表示できるものを用いたので、度数測定等の際にマークが測定の妨げとなることを有効に防止可能となった。
【0023】
次に、上記実施の形態にかかるレイアウトマークを利用して累進多焦点レンズをチェックする方法について説明する。
まず、レンズ製造工場から、眼鏡店からの受注条件に基づき、砂かけ、研磨など、表面処理等の工程を経て、凹面、凸面が最終加工された状態で、レンズ袋に受注のレンズ度数とインセット量が明記されて円形のオーダーレンズが送付される。その出荷の際、レンズの凸面側には、図1、2に示されるレイアウトマークが白い消去可能なペイントでマーキングされている。
【0024】
眼鏡店では、オーダー内容と同一のレンズかどうか、まず、レンズ袋の表記(遠用度数、近用度数、加入度等)を確認する。次に、レンズ袋からレンズを取り出し、レンズの中身をレンズメータで測定する。レンズメータでは最初に、遠用度数をチェックする。レンズメータを覗きながらレンズメーターのアパーチャー部にレンズを移動させ、本実施例の遠用部測定領域マーク7内の遠用度数測定位置にあわせる。そして、遠用度数を確認する。次に、近用度数をチェックする。
【0025】
同様に、レンズメータを覗きながら、レンズメーターのアパーチャー部にレンズを上方移動させ、幾何学中心位置を検出し、更にレンズ袋のインセット量分水平方向に移動させ、縦方向に移動させつつ、近用部測定領域マーク9内での近用度数測定位置のマークをあわせる。そして、近用度数をチェックする。次いで、縁ずり加工を行い、縁ずりされた加工レンズを所定の眼鏡フレームに枠入れを行なう。
【0026】
フレームの装用のためのフィッティング調整を行ない、顧客に眼鏡をかけさせる。そして、光学的に正しくレイアウトして眼鏡として完成しているかどうか、遠用アイポイントと近用アイポイントとチェックする。遠用アイポイントは装用者を無限遠方視させ、その瞳孔位置が、Ieの位置にあるかどうかを確認する。近用アイポイントは装用者を近業目的距離で近方視させ、その瞳孔位置が、Ikの位置にあるかどうかを確認する。そして、このチェックが終わった後、エーテルなどでペイントマークをふき取る。
【0027】
図3及び図4は遠用部測定領域マーク7及び近用部測定領域マーク9の変形例を示す図である。上述の実施の形態では、遠用部測定領域マーク7及び近用部測定領域マーク9を、略Ω字形状に近似した形状にした例を掲げた。しかし、これは、図3及び図4に示されるように、アイポイント高さ位置マーク71a,71b,91a,91bと、円弧状の遠用部円弧状マーク72及び近用部円弧状マーク92a,92bとを、切り離した形状としてもよい。また、近用部円弧状マーク92a,92bにスリット90a,90bを設ける代わりに、突起90c,90dを設けてもよい。また、各マークを構成する直線や曲線は、実線でも点線でも破線でもよい。この場合、直線は2点以上のポイントで特定することもできる。
【0028】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、遠用部測定領域マーク及び近用部測定領域マークを、度数測定領域を示すための円形の一部を取り除いた円弧状曲線と、遠用アイポイントの高さ位置及び近用アイポイントの高さ位置を示す直線又はこの直線を特定するための2以上の位置を示すマークと、をそれぞれ組み合わせた複合図形のマークで構成するようにしたことにより、異なるインセット値を有する累進多焦点レンズに共通に用いることを可能にするとともに、マークが度数測定等の邪魔になることがないという効果を得ている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態にかかる累進多焦点レンズのレイアウトマークの説明図である。
【図2】 本発明の実施の形態にかかる累進多焦点レンズのレイアウトマークの説明図である。
【図3】 遠用部測定領域マーク7の変形例を示す図である。
【図4】 近用部測定領域マーク9の変形例を示す図である。
【図5】 従来のレイアウトマークの説明図である。
【符号の説明】
1 累進多焦点レンズ
2 幾何中心
3 水平基準線
7 遠用部測定領域マーク
9 近用部測定領域マーク
Ie 遠用アイポイント
Ik 近用アイポイント
Claims (1)
- 累進多焦点レンズのレンズ表面に施される累進多焦点レンズのレイアウトマークであって、
少なくとも、遠用部の度数の測定場所を示す遠用部測定領域マークと、近用部の度数の測定場所を示す近用部測定領域マークとを有し、
前記遠用部測定領域マーク及び近用部測定領域マークは、円形の一部を取り除いた円弧状曲線と、遠用アイポイントの高さ位置及び近用アイポイントの高さ位置を示す直線、又はこの直線を特定するための、2以上の位置を示すマークとを、それぞれ組み合わせた複合図形のマークであり、
前記近用部測定領域マークは、直径6mmの基準開口径を備えたレンズメータのアパーチャーより大きく、
前記遠用アイポイントの高さ位置及び近用アイポイントの高さ位置を示す直線は、レンズの水平基準線に平行な直線であるとともに、
前記水平基準線と直交し、かつ、前記累進多焦点レンズの幾何中心を通る垂直基準線を示す垂直基準線マークを、前記遠用部測定領域マーク及び近用部測定領域マークが設けられた領域外に設け、
前記近用度数測定場所の中心の高さ位置を示す直線を特定する少なくとも2点の位置を示すマークを、前記近用部測定領域マークの円弧状曲線又は前記近用部測定領域外に設けることにより、遠用度数測定位置及び近用度数測定位置のレンズ度数測定領域内からレイアウトマークの存在を除くとともに、インセット量が異なるレンズに対しても共通に用いることができるようにしたことを特徴とする累進多焦点レンズのレイアウトマーク。
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