JP4009065B2 - 廃プラスチック熱分解炉 - Google Patents

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  • Separation, Recovery Or Treatment Of Waste Materials Containing Plastics (AREA)
  • Production Of Liquid Hydrocarbon Mixture For Refining Petroleum (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃プラスチックを熱分解して燃料油等として有効活用するための廃プラスチック油化システム等に用いられる廃プラスチック熱分解炉に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、増加の一途を辿るゴミの処理対策のうち、最も重要な課題の一つとして電気製品、家庭用品、自動車、PETボトル等といった殆どの工業製品に使用されているプラスチック部品やプラスチック容器の処分がある。
【0003】
すなわち、このような廃プラスチックは、生ゴミや木材ゴミ等のような微生物による生分解が困難であるため、その殆どが焼却処分されているのが現状であるが、周知の通り、プラスチックは、焼却時に大量の煤煙や有害ガスを発生する上にその燃焼温度の高さゆえに焼却炉に悪影響を及ぼす等といった問題がある。
【0004】
そのため、近年ではこの廃プラスチックを回収し、貴重なリサイクル資源の一つとして再利用することが試みられているが、そのリサイクルに際しては、例えば成分や色合い等毎に回収・分別しなけらばならない等といった煩わしい作業が伴うことから、多大なコストと手間を要し、経済的に採算が合わないといった問題がある。
【0005】
そこで、本出願人は従来このような処分やリサイクルが困難な廃プラスチックを効果的に処分すると共にこれを再生油等として有効活用できる新規な廃プラスチック油化システムを開発し、先に特許出願を行っている(特許願2000−63335号)。
【0006】
この廃プラスチック油化システムは、図12に示すように、廃プラスチックをガスバーナー4等の熱によって加熱溶融及びガス化する廃プラスチック熱分解炉1と、この廃プラスチック熱分解炉1で得られた熱分解ガスを冷却・凝縮して油化する油化部2とから主に構成されており、主に熱可塑性の廃プラスチックをこの廃プラスチック熱分解炉1で溶融・ガス化させてスチレンモノマーや低分子ポリエチレン等に熱分解した後、この熱分解ガスを油化部2において冷却水と気液接触させて冷却・凝縮して再液化させ、しかる後、この分解液を冷却水と分離回収してボイラー等の燃料や新たなプラスチック製品の原料等として有効活用するようにしたものである。
【0007】
すなわち、図示するように、先ずこの廃プラスチック熱分解炉1内にその上部投入口から廃プラスチックを少量の水と共に投入し、その上部投入口を開閉自在なシャッター3で閉じて密閉した後、その底部のガスバーナー4を燃焼させてその炉内を加熱する。すると、この加熱によって投入された水分が最初に蒸発し、これが蒸気となって炉内から延びるガス出口5からガスラインGに流れ出た後、油化部2を通過して廃油ラインL1側に流れる。これによって熱分解炉1内は勿論、ガスラインG及び油化部2並びに排油ラインL1が蒸気で満たされ、その内部に溜まった空気の殆どが全て系外へ排出される。
【0008】
次に、この初期投入の水が全て蒸発してその熱分解炉1内の温度がさらに上昇すると、投入されていた廃プラスチックが溶融・液化し始めて溶融液となり、やがてその一部が順次熱分解してガス化し、ガス出口5からガスラインGに流れ出た後、油化部2に到達する。この油化部2は、液体を溜める水槽6に冷却器となるジェットスクラバー7と中和塔8等を一体的に備えたものであるため、油化部2に達した熱分解ガスは、先ず、このジェットスクラバー7で冷却水循環ラインL2から吹き出される冷却水と気液接触して急激に冷却されて凝縮・液化した後、分解液となって冷却水と共に水槽6内に一時的に溜められる。
【0009】
そして、このようにして得られた分解液と冷却水の混合液は所定時間経過することによって分解液と水分とに上下に比重分離した後、液面側に集まった分解液は水槽の端部に設けられた溢流堰9をオーバーフローして排油ラインL1側に流れ、フィルター10で濾過されて固形物が分離された後、再生油等として回収槽4に回収され、底部に集まった冷却水はポンプ11によって水槽6内から抜き出され、冷却水循環ラインL2を介して再びジェットスクラバー7に送られ、順次流れ込んでくる高温の熱分解ガスの冷却水として再利用される。
【0010】
一方、このジェットスクラバー7で液化しきれなかった熱分解ガス及び冷却によっても液化しない塩素や臭素等の有害成分は、そのままガスの状態で中和塔5に達し、ここで冷却水ラインL4から再び新たに供給される冷却水で再度冷却・凝縮されると同時に中和剤タンク12から冷却水中に供給される中和液で中和されることによって無害化されてから大気中に放出、あるいはガス回収ラインG2を介して熱分解炉1に戻され、ガスバーナー4の燃料ガス等として有効利用されることになる。尚、このガスバーナー4で発生した燃焼排ガスは、排ガスラインG1に流れ、フィルター13で濾過清浄化されてから大気中に放出され、また、油化部2の水槽6内に溜まった余剰の冷却水は排水ラインL3から順次排出されることになる。
【0011】
従って、このような廃プラスチック油化システムによれば、従来、処理が困難であった廃プラスチックを効果的に処理できることは勿論、これを可燃性の再生油として有効利用することができるため、経済的かつ効率的に廃プラスチックをリサイクルできる。また、この処理に際しては有害なガスが原則として一切外部に漏れ出すことがないため、地域環境を汚染するおそれもない等といった優れた効果を発揮することが可能となる。尚、図中15は,廃プラスチックの投入を容易にするためのホッパー、16は、燃焼排ガスを炉の周囲に導いて周囲から加熱するためのジャケットである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような廃プラスチック油化システムの要部である廃プラスチック熱分解炉1にあっては、その構造上、以下に示すようないくつかの不都合が生ずるおそれがある。
【0013】
▲1▼すなわち、先ず、この廃プラスチック熱分解炉1は、廃プラスチックを炉内に投入した後、その投入口を板状のシャッター3で塞いで炉内を密閉するようにしているが、このシャッター3は、図13(A),(B)に示すように、その両側に形成されたレール17,17に係合し、モーター18で駆動するラックアンドピニオン方式によってそのレール17,17に沿って水平方向に開閉移動するようになっている。そのため、このシャッター3が投入口を閉じた時には、その投入口のシール面S上にその自重によって単に載るような状態となるため、炉内圧が高まって熱分解ガスの一部がその隙間から漏れ出し、周囲環境を汚染してしまったり、内圧が低下して油化部への分解ガスの供給量が減少してしまうおそれがある。
【0014】
▲2▼また、廃プラスチックの投入に際して、その投入口のシール面Sに廃プラスチックやごみが付着すると、シャッター3が完全に閉まらず、その間に隙間が生じて同じような不都合が発生することが考えられる。
【0015】
▲3▼一方、溶融液が直接溜められる炉本体はガスバーナー9からの熱を良好に伝えるために、熱伝導率に優れた金属から構成されているが、特にその炉底は平板状となっているため、高温の燃焼ガスとの接触面積が小さく、加熱効率が低いといった欠点がある。
【0016】
▲4▼また、処理する廃プラスチックによっては、土砂や金属等の不溶物が付着しているため、これら不溶物が残滓として炉底に蓄積し又は付着し、これによって炉容積が徐々に減少するばかりでなく、不溶物自体が炉底部の断熱材として作用し、熱伝導率を著しく悪化させてしまうことが考えられる。
【0017】
そのため、定期的に炉底部からこの残滓を取り除く作業が必要となるが、その作業は、システム全体を一旦完全に停止させ、冷却するまで暫く放置した後、作業員がその投入口をスクレーパーや吸引機等の工具を用いて除去するようになるため、稼働効率がいきおい低下し、かつ、その作業が煩わしいといった欠点がある。
【0018】
そこで、本発明はこのような課題を有効に解決するために案出されたものであり、その主な目的は、投入口からのガス漏れを完全に防ぐと共に、熱効率及び稼働効率等に優れた新規な廃プラスチック熱分解炉を提供するものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、請求項1に示すように、上部に廃プラスチックの投入口を備えた窯状の炉体の底部にその炉体内の廃プラスチックを加熱・溶融させて熱分解する加熱手段を備えると共に、その投入口にこれを開閉する開閉機構を備えた廃プラスチック熱分解炉において、上記開閉機構は、少なくとも上記投入口の開口面積よりも大きい板状のシャッターと、このシャッターを上記投入口周縁部のシール面に押し付けて固定する固定手段とを備え、シャッターには、投入口の両側から水平に延びる一対の平行レールに沿って走行する車輪が設けられ、その平行レールが長手方向に二分割されると共に投入口側の分割レールがコイルバネによって上下移動自在に支持され、上記シャッターと平行レールとが、投入口に設けた投入ケーシング内に収容され、投入口ケーシング上に廃プラスチックを投入するホッパーが形成され、上記投入口ケーシングには、シャッターを水平方向にスライドさせて上記投入口を開閉するスライド手段が設けられ、上記固定手段は、投入ケーシングに設けられ、上記上下移動自在な分割レールごとシャッターを上下動させて、シャッターを上記投入口周縁部のシール面に押し付けて固定する油圧シリンダからなるものである。これによって、板状のシャッターが閉じた際に、強く押圧されて投入口周縁部のシール面に密着して隙間が生ずることがなくなるため、炉体の内圧が高まってもそのシャッターとシール面との間から炉内のガスが漏れ出すといった不都合を完全に防止することができる。
【0020】
また、請求項2に示すように、スライド手段として、一端が上記シャッター側に連結され、他端が上記投入ケーシング側に揺動自在に連結された油圧シリンダを用いれば、その開閉を自動的かつ迅速に行うことができる。
【0021】
また、請求項に示すように、上記投入口の周縁部に、そのシール面にパージガスを吹き付けるパージガスヘッダを備えれば、仮にそのシール面に廃プラスチックの一部やごみが付着しても、シャッターを閉じる前にこれをパージガスで除去することができるため、シャッターとシール面との間に隙間が生ずるのを未然に防止することができる。
【0022】
また、請求項に示すように、上記炉体の底部を、複数の樋状部材を平行に並べた凹凸形状に形成することによって炉底部の表面積が増大して熱効率が増大する。さらに、請求項に示すように、その各樋状部材の端部にこれらと合流する樋状の排出路を有すると共に、上記各樋状部材及び排出路内にそれぞれスクリューコンベアを備えることにより、炉底に溜まった不溶物等の残滓をそれぞれのスクリューコンベアを回転させることによって各樋状部材から排出路を介して除去し容易に外部に排出することができる。
【0023】
また、請求項に示すように、上記加熱手段がガスバーナーからなると共に、上記炉体の周囲にそのガスバーナーからの燃焼排ガスを流すジャケットを備えることによって炉体をその底部のみならず、その周囲からも加熱できると共に、さらにそのジャケットに螺旋状の仕切板を備えることによって、燃焼排ガスを炉体の周囲に螺旋状に流すことができるため、燃焼排ガスと炉体との接触時間が長くなって効率的な炉体加熱を達成できる。
【0024】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施する好適一形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は本発明に係る廃プラスチック熱分解炉の実施の一形態を示した縦断面図、図2はそのX−X線断面図である。
【0026】
図示するように、この廃プラスチック熱分解炉は、廃プラスチックの投入口Hを備えた窯状の炉体20に、その投入口Hを開閉する開閉機構21と、これを外側から加熱する加熱手段22とを一体的に備えると共に、これらを断熱性のケーシング23で覆った構造となっている。
【0027】
この炉体20は、その全体が耐熱性,耐食性及び熱伝導性に優れた金属、例えばハステロイやステンレススチール、あるいは超合金等から形成されており、その投入口Hから投入された廃プラスチックを加熱手段22によって加熱溶融して熱分解し、その熱分解ガスをガス出口20aから順次、前述した油化部側に供給するようになっている。
【0028】
開閉機構21は、廃プラスチックの投入口Hを開閉する板状のシャッター24と、このシャッター24をその投入口Hの周縁部に形成されたシール面Sに押し付けて固定する固定手段25とからなっている。
【0029】
このシャッター24は、図3及び図4に示すように、矩形状に開口した投入口Hと相似形で、かつ少なくともその投入口Hの開口面積よりも十分に大きい耐熱性の矩形状平板からなっており、その両側に一対ずつ(計4つ)設けられた車輪26,26,26,26(一つ或いは2つでも良い)が、投入口Hの両側から水平に延びる一対のレール27,27に沿って走行することで投入口Hに対して水平に移動するようになっている。また、このシャッター24の端部両側には、移動方向と直交する方向に延びるブラケット28,28が一体的に設けられており、一対の油圧シリンダ29,29からなるスライド手段によってシャッター24を水平方向にスライドさせて投入口Hを開閉するようになっている。すなわち、この油圧シリンダ29,29はその一端がシャッター24のブラケット28,28側にそれぞれ連結され、他端側が投入口ケーシング23a側のブラケット30,30に固定されたものであり、このブラケット30,30を起点として油圧シリンダ29,29を同時に伸縮させることで図4に示すようにシャッター24を自在に開閉制御するようになっている。
【0030】
また、固定手段25は、図1及び図2に示すように投入口ケーシング23a側上部に垂直に支持立設された前後一対ずつ、計4つの油圧シリンダ31,31,31,31と、シャッター24の各角部にそれぞれ設けられたコ字形状の押え爪32,32,32,32とからなっており、シャッター24を閉じたときにそれら各押え爪32,32,32,32と、各油圧シリンダ31,31,31,31のシリンダロッド33,33,33,33とがそれぞれ係合し、その押え爪32,32,32,32をシリンダロッド33,33,33,33で投入口Hのシール面に押え付けることでシャッター24を固定して投入口Hを密閉するようになっている。
【0031】
すなわち、図5〜図8に示すように、これら各シリンダロッド33,33,33には円板状の鍔部34がそれぞれ設けられており、押え爪32がピストンロッド33に嵌め込まれた後、シリンダロッド33を延ばし、その鍔部34が押え爪32を強制的に押し下げることでシャッター24を各角部四カ所で投入口Hのシール面Sに強く密着させるようになっている。尚、このようにシャッター24によって投入口Hを密閉した後、これをスライド移動させる際には、単にこのシリンダロッド33を上方に引き込むだけで容易に解除することができる。
【0032】
また、このようにシャッター24を強制的に投入口H側に押し下げるに際して、このシャッター24を支持するレール27,27が固定された状態であると、シャッター24の上下動が車輪26,26,26,26を介して規制されてしまう。そのため、本発明では、図1及び図3等に示すように、このレール27,27が、その長手方向に二分割されていると共に、投入口H側の分割レール27a,27aが図5等に示すようにコイルバネ35によって上下動自在に支持されており、この分割レール27a,27a側が図6に示すように、シャッター24と共に上下動することでシャッター24の上下の動きを規制しないような構造となっている。尚、図5に示すように、分割レール27a,27aの先端をH状の連結ビーム36で連結すると共に、上記シリンダロッド33にさらにもう一つの鍔部37を設け、この鍔部37に連結ビーム36を係合させることで、シリンダロッド33の上下動に伴って分割レール27a,27aをも同時に上下動させるような構造にしても良い。また、図示するようにそのシリンダロッド33下端部にこれを垂直に案内する筒状のガイド49を備えるようにしても良い。
【0033】
また、図11に示すように、この炉体20の投入口Hの周縁部には、パージガスヘッダ38がその全周に沿って延びるように設けられており、図示しないパージタンクなどから供給されるパージガスをその上部に開口されたスリット39から投入口Hのシール面に吹き付けることで、そのシール面Hに廃プラスチックの一部やごみが付着・堆積した場合でも、これをパージガスの圧力で強制的に除去できるようになっている。尚、このスリット39には、パージガスをシール面H方向に流すガイド片40が設けられているが、このガイド片40は可撓性の板バネ状になっており、シャッター24の開閉に際してはこれが容易に変形するため、シャッター24と干渉することはない。
【0034】
一方、図1,図2及び図10に示すように、この炉体20の底部は、複数の樋状部材20b,20b…をそれぞれ平行に並べた凹凸(波形)形状に形成されると共に、その各樋状部材20b,20b…の端部にこれらと合流すべく同じく樋状の排出路20cを有しており、その炉底の面積が平板状に比べて増大、すなわち、平板状の面積に比べて約1/2π倍程度大きくなっている。
【0035】
さらに、これら各樋状部材20b,20b…及び排出路20c内には、それぞれその長手方向に延びるスクリューコンベア41,41…が同軸上に回転自在に備えられており、炉底に溜まった不溶物、例えば、土砂や金属,ガラス等の固形物あるいはスラッジ等を炉底壁から強制的に掻き取り、これを各樋状部材20b,20b…から排出路20cを介して、ケーシング23に形成された排出孔42から外部に排出するようになっている。尚、この排出孔42には、図示しない開閉弁が設けられており、通常の運転時には閉じてこの炉体20内の溶融液や熱分解ガスが排出孔42から外部に漏れ出さないようになっていることは勿論である。
【0036】
この各樋状部材20b,20b…に備えられるスクリューコンベア41,41…は、それぞれその回転軸の端部がケーシング23を貫通して外部まで延びると共に、その端部にそれぞれプーリー43,43…が設けられており、これら各プーリー43,43…とケーシング外部に固定された掻取用モータ44間をベルト45で架け渡して相互に連結することによって各スクリューコンベア41,41…が同時にかつ同方向に回転駆動されるようになっている。
【0037】
また、排出路20c側に設けられたスクリューコンベア41もその回転軸端部がケーシング23を貫通して外部まで延びており、その端部に設けられたプーリー46と、同じくケーシング外部に固定された搬出用モータ47間をベルト48で架け渡して連結することによってそのスクリューコンベア41が回転駆動されるようになっている。
【0038】
さらに、図11に示すように、この各樋状部材20b,20b…間には、それぞれその長手方向に延びる帯板状の補強板49,49…が設けられていると共に、その補強板49にはメタル温度計50が埋め込まれており、これら補強板49,49…によって炉体20底部の強度を確保すると共に、メタル温度計50によってその炉底温度を随時検出できるようになっている。尚、このメタル温度計50の計測情報は、後述するガスバーナーの出力を制御する制御部に随時入力されるようになっている。
【0039】
他方、この炉体20を加熱する加熱手段22は、図1及び図2に示すように、炉体20の下部に位置する燃焼室51と、この燃焼室51に設けられたガスバーナー52と、炉体20の周囲を一定の間隙を隔てて覆うジャケット53とから形成されており、ガスバーナー52によって燃焼室51で生じた燃焼ガスによって炉体20をその底部から加熱すると共に、その燃焼排ガスをこの燃焼室51と連通するジャケット53側に案内し、そのジャケット53頂部の排ガス出口54から外部に流すことでその側面周囲からも炉体20を加熱するような構造となっている。
【0040】
さらに、本発明にあっては、このジャケット53内にその内部を螺旋状に仕切る仕切板55が設けられており、ジャケット53側に流れ込んできた高温の燃焼排ガスを直接排ガス出口54に流すのではなく、この仕切板55によってその燃焼排ガスを炉体20の周囲に螺旋状に流すことで、高温の燃焼排ガスと炉体20とができるだけ長時間に亘って相互に接触するようになっている。尚、図1及び図2中56,57は、燃焼室を開閉するためのマンホール及びその開閉蓋、58,58は本分解炉を支持するための支持脚、59は炉体20内に廃プラスチックを投入し易くするためのホッパー,60は燃焼室51内を確認するための覗き窓である。
【0041】
そして、このような構造をした本発明の廃プラスチック熱分解炉にあっては、先ず、炉体20の投入口Hを閉じるシャッター24が油圧シリンダ31及び押え爪32等によって投入口Hのシール面Sに強く押え付けられて密着するような状態で閉じられるようになることから、運転中に炉体20内の内圧が上昇してもこのシャッター24とシール面Sに隙間が生ずることなり、通常そのままでは有害な熱分解ガスが漏れ出して周囲の環境を悪化するといった不都合を確実に防止することができる。
【0042】
加えてこの投入口Hの周縁部にパージガスヘッダ38を備え、シャッター24を閉じる際にこのパージガスヘッダ38からシール面Sに高圧のパージガスを吹き付けることで廃プラスチック投入時等にそのシール面Sに廃プラスチックの一部やごみが付着してもこれが確実に除去されるようになるため、ごみなどの付着によるシール面Sの隙間の発生を確実に回避することができる。
【0043】
また、この炉体20の炉底を樋状部材20bを複数並べて凹凸(波形)形状に形成してその表面積を増大することにより、発生直後の高温の燃焼ガスと炉底との接触面積が増大するため、炉体20の加熱率が向上し、効率的な溶融・熱分解を達成することができる。さらに、この樋状部材20b等にスクリューコンベア41を備えるとにより、炉底に堆積・付着した固形物あるいはスラッジ等を炉底壁から強制的に掻き取り、これを容易に除去することができるため、従来のように手作業による煩わしい除去作業が不要となると同時に、炉体20が高温の状態でその除去を行うことができるため、炉の停止時間が短縮化され、高い稼働効率を維持することができる。
【0044】
また、炉底にその炉底温度を計測するメタル温度計50を備えることにより、従来から備えられている炉内温度計と共にその炉体20全体の温度を正確に計測することができる。例えば、メタル温度計50で計測された炉底の温度と炉内温度計炉体による炉体20内の温度との差が小さければ、ガス化途中であるとして運転をそのまま継続し、その温度差が一定値を越えたときには、ガス化が終了したものと判断することが可能となる。
【0045】
尚、本発明の廃プラスチック分解炉の初期運転方法は、前述した従来のものと同様に廃プラスチックの投入と同時に又は前後して水を加えることになっているが、その炉底が凹凸(波形)となっているため、投入された廃プラスチックと炉底(炉壁)との接触面積が減って初期段階において良好に伝熱(溶融)が行われない場合が考えられる。そのため、例えば、再生油等から得られた少量の高沸点油をさらにこの水と共に投入すれば、水の蒸発に続いて高沸点油の蒸発が起こるため、廃プラスチックと伝熱面(炉壁)との接触面積が小さくとも良好に伝熱が行われ、効率的な加熱溶融を達成することができる。
【0046】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、廃プラスチックの投入口を確実に密閉することができるため、炉内のガス漏れによる炉内圧の低下や周囲環境の悪化を未然に防止することができる。また、炉底の表面積を増大すると共に、その炉底に蓄積した不溶物等を容易に除去排出できるため、優れた熱分解効率及び稼働効率を発揮することができるといった優れた効果を発揮する。これによって、廃プラスチック分解炉、ひいては廃プラスチック再生システム全体の安全性,信頼性の向上に大きく貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る廃プラスチック熱分解炉の実施の一形態を示す縦断面図である。
【図2】図1中X−X線縦断面図である。
【図3】図1中Y−Y線平面図である。
【図4】図3に示す状態からシャッターを開いた状態を示す平面図である。
【図5】図1中A部を示す部分拡大図である。
【図6】図5に示す状態から油圧シリンダを作動させた状態を示す縦断面図である。
【図7】図3中A部を示す部分拡大図である。
【図8】図3中B部を示す部分拡大図である。
【図9】図2中A部を示す部分拡大断面図である。
【図10】図1中Z−Z線平面図である。
【図11】図2中B部を示す部分拡大図である。
【図12】従来の廃プラスチック油化システムを示す構成図である。
【図13】従来の廃プラスチック油化システムに用いられている熱分解炉の投入口付近の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
20 炉体
20b 樋状部材
20c 排出路
21 開閉機構
22 加熱手段
23 ケーシング
24 シャッター
25 固定手段
31 油圧シリンダ
38 パージガスヘッダ
41 スクリューコンベア
53 ジャケット
55 仕切板
H 投入口
S シール面

Claims (6)

  1. 上部に廃プラスチックの投入口を備えた窯状の炉体の底部にその炉体内の廃プラスチックを加熱・溶融させて熱分解する加熱手段を備えると共に、その投入口にこれを開閉する開閉機構を備えた廃プラスチック熱分解炉において、上記開閉機構は、少なくとも上記投入口の開口面積よりも大きい板状のシャッターと、このシャッターを上記投入口周縁部のシール面に押し付けて固定する固定手段とを備え、シャッターには、投入口の両側から水平に延びる一対の平行レールに沿って走行する車輪が設けられ、その平行レールが長手方向に二分割されると共に投入口側の分割レールがコイルバネによって上下移動自在に支持され、上記シャッターと平行レールとが、投入口に設けた投入ケーシング内に収容され、投入口ケーシング上に廃プラスチックを投入するホッパーが形成され、上記投入口ケーシングには、シャッターを水平方向にスライドさせて上記投入口を開閉するスライド手段が設けられ、上記固定手段は、投入ケーシングに設けられ、上記上下移動自在な分割レールごとシャッターを上下動させて、シャッターを上記投入口周縁部のシール面に押し付けて固定する油圧シリンダからなることを特徴とする廃プラスチック熱分解炉。
  2. 上記スライド手段は、一端が上記シャッター側に連結され、他端が上記投入ケーシング側に揺動自在に連結された油圧シリンダであることを特徴とする請求項1に記載の廃プラスチック熱分解炉。
  3. 上記投入口の周縁部に、そのシール面にパージガスを吹き付けるパージガスヘッダを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の廃プラスチック熱分解炉。
  4. 上記炉体の底部が、複数の樋状部材を平行に並べた凹凸形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の廃プラスチック熱分解炉。
  5. 上記各樋状部材の端部にこれらと合流する樋状の排出路を有すると共に、上記各樋状部材及び排出路内にそれぞれスクリューコンベアを備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の廃プラスチック熱分解炉。
  6. 上記加熱手段がガスバーナーからなると共に、上記炉体の周囲にそのガスバーナーからの燃焼排ガスを流すジャケットを備え、かつそのジャケットに螺旋状の仕切板を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の廃プラスチック熱分解炉。
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