JP4007643B2 - 顕微鏡用焦点検出装置および顕微鏡用焦点検出方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低倍率の対物レンズを使用した場合でも高精度な焦点検出が可能となる顕微鏡用焦点検出装置および顕微鏡用焦点検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来顕微鏡等の合焦点検出技術に関する公知例として、以下に述べる第1〜第3の公知例がある。
第1の公知例は、特開昭56−64323号公報に示すものであり、これは次のような技術である。すなわち、結像レンズの合焦面と光学的に共役な面を挟んで一定の光学的距離をもって前後して配置された、それぞれK個の光電変換素子からなる一対の受光素子列に、結像レンズにより物体像に光強度分布に応じた照度信号としての光電変換信号を発生させて、この照度信号に基づいて各受光素子列に投影された物体像の鮮明度の評価関数値を算出し、この両評価関数値を比較することによって合焦状態を判別するようにした合焦検出方法において、各受光素子列ごとにあらかじめ定められた評価関数に従って微調整用の評価関数を算出し、各受光素子列を互いに隣り合うm個の光電変換素子よりなる組に分け、この各組を実行的な1つの光電変換素子とみなし、各組の光電変換素子からの照度信号を合計して、その合計照度信号をその組の照度信号とし、評価関数に従って粗調整用の評価関数値を算出し、微調整用の評価関数値が前もって設定されたあるしきい値以下であるときには、粗調整用の評価関数値を互いに比較して合焦状態を判別し、微調整用の評価関数値がしきい値以上であるときには、この微調整用の評価関数値を互いに比較して合焦状態を判別する合焦検出方法である。
【0003】
第2の公知例は、特開昭56−54418号公報に示すものであり、この第2の公知例においても、第1の公知例と同様に粗調整用の評価関数と微調整用の評価関数を用いて合焦度評価レベルによって両評価関数を使い分ける合焦検出方式である。
【0004】
さらに、第3の公知例は、特開昭61−245123号公報に示すものであり、これは次のような技術である。すなわち、対象物の光像を形成する結像光学系の焦点調節状態を検出する焦点検出装置において、光電変換素子が多数配列された一対の光電変換素子アレイと、一対の光電変換素子アレイに対象物の略同一部分の光像をそれぞれ投影する焦点検出光学系と、一対の光電変換素子アレイの光電出力から高次の周波数成分を除去する第1のフィルタ手段と、一対の光電変換素子アレイの光電出力から低次の周波数成分を除去する第2のフィルタ手段と、第1のフィルタ手段の出力に基づいて焦点調節状態を表す第1の信号を生成するとともに、第2のフィルタ手段の出力に基づいて焦点調節状態を表す第2の信号を生成する演算処理手段と、第1の信号及び、または第2の信号に基づいて最適デフォーカス量を決定する決定手段とを有し、決定手段は、前回決定されたデフォーカス量が基準値以上の場合には第1の信号に基づいて最適デフォーカス量を決定し、前回決定されたデフォーカス量が基準値未満の場合には第1及び第2の信号に基づいて最適デフォーカス量を決定する焦点検出装置である。
【0005】
この場合、第1の信号は、低次な周波数成分のデータに基づいた第1のデフォーカス量及び第1の情報量を含み、第2の信号は高次な周波数成分のデータに基づいた第2のデフォーカス量及び第2の情報量を含み、決定手段は前回決定されたデフォーカス量が基準値以上の場合には第1のデフォーカス量を最適デフォーカス量として選択し、前回決定されたデフォーカス量は基準値未満の場合には第1及び第2情報量、及び第1及び第2のデフォーカス量のそれぞれの量における基準値に対する大小関係に基づいて第1または第2のデフォーカス量を最適デフォーカス量として選択する焦点検出装置である。
【0006】
【発明が解決しょうとする課題】
以上述べた第1及び第2の公知例は、いずれも顕微鏡で観察している試料の光像を予定焦点位置前後のコントラスト値を比較して両者がある規定値以内に入るように焦点調節をする光路差方式の自動焦点検出方法であり、この光路差方式では、次のような問題点がある。
【0007】
予定焦点面前側(前ピン)、予定焦点面後側(後ピン)のコントラスト値は、図8に示すようにステージ位置に対して変化する特徴を有している。図8の前ピンコントラスト値を示すカーブと後ピンコントラスト値を示すカーブの相対的位置は、対物レンズの倍率によって変化し、高倍率では、図9のように互いに接近し、また低倍率では図10のように互いに離れる。
【0008】
通常、焦点調整動作を行う場合には前ピンコントラスト値と後ピンコントラスト値の差を焦点からのずれ量とし、前ピンコントラストと後ピンコントラスト値との大小関係を焦点からのずれ方向として制御を行う。
【0009】
ところが、対物レンズが低倍率の場合には焦点深度が深くなることと、図10のように前ピンコントラストカーブと後ピンコントラストカーブが離れてしまうことから、焦点付近で特にステージ位置に対する焦点ずれ量演算結果の変化が非常に緩やかになる。
【0010】
図11は前ピンコントラスト値と後ピンコントラスト値を差し引いた結果を表したもので、符号が焦点の存在する方向を示し、差の絶対値がずれ量を表すことになる。
【0011】
従って、通常行われているように焦点からのずれ量を繰り返し演算しながら焦点に近づく方向にステージを駆動し、焦点からのずれ量が予め決められた規定値以内に入ったところでステージを停止させるという制御を行うと、焦点からのずれ量は規定値以内であるが規定値内でもずれ量の大きい位置に停止する確率が非常に高くなる。
【0012】
また、図11で示すように焦点からステージが離れていても焦点からのずれ量演算結果は規定値からの差は小さくなってしまうので、外乱によって誤った位置で合焦と判断してしまう恐れがある。
【0013】
さらに、焦点付近では図11に示すようにコントラスト特性の直線性が損なわれるので、直線近似による焦点位置の予測をしたとしても誤差が大きくなってしまい精度を充分とれなくなる。
【0014】
前述の第3の公知例では、光像の合焦度を評価するのに、光像の高域成分に着目する手段例えばフィルタ、低域成分に着目する手段例えばフィルタを設け、それらをデフォーカス量や高域、低域の割合によって選択的に用いるようにしている。
【0015】
このような合焦度評価でも、光路差方式、山登り上り方式などの方式に関係なく、対物レンズの倍率や観察物の光像の特性によって、ピントからのずれ量に対するコントラストなどの合焦度評価値の変化(コントラストカーブ)が異なるので、第1および第2の公知例と同様の不具合が発生してしまう。
【0016】
そこで、本発明の目的は、低倍率の対物レンズを使用する場合でも高精度な焦点検出ができ、疑合焦を避けることができる顕微鏡用自動焦点検出装置および顕微鏡用焦点検出方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、請求項1に対応する発明は、顕微鏡で観察している試料の光像を、予定焦点前後に配置された一対の光電変換素子によって受光すると共に、前記一対の光電変換素子が出力する各信号から算出される評価関数値を比較して両者の差分又は正規化された差分が予め設定された所定値以内に入るように焦点調節を行うことで前記試料に対する合焦位置を検出する焦点検出装置において、
前記焦点調節を行う際に前記差分の符号及び焦点調節方向によらず、前記差分が規定値以内となった位置を合焦位置として前記焦点調節を行う第1の合焦制御と、前記焦点調節を行う際に前記差分が前記規定値以内で且つ前記差分の符号及び焦点調節方向が反転した位置を合焦位置として前記焦点調節を行う第2の合焦制御とを切換える制御手段とを具備し、
前記制御手段は、顕微鏡光学系の観察倍率に応じて、前記倍率が高倍の場合には第1の制御を選択し、低倍の場合には第2の制御を選択することを特徴とする顕微鏡用焦点検出装置である。
【0018】
前記目的を達成するため、請求項5に対応する発明は、顕微鏡で観察している試料の光像を予定焦点位置前後のコントラスト値を比較して両者の差分又は正規化された差分が予め設定された規定値以内に入るように焦点調節を行うことで前記試料に対する合焦位置を検出する光路差方式の焦点検出装置において、
顕微鏡光学系の観察倍率を検出して高倍、低倍の判別を行う判別手段と、
前記焦点調節を行う際に、前記判別手段が、前記観察倍率が高倍であると判別した場合は、前記差分の符号及び焦点調節方向によらず、前記差分が規定値以内となった位置を合焦位置として前記焦点調節を行い、前記観察光学系の倍率が低倍であると判別した場合は、前記差分が前記規定値以内で且つ前記差分の符号及び焦点調節方向が反転した位置を合焦位置として前記焦点調節を行う制御手段と、
を具備したことを特徴とする顕微鏡用焦点検出装置である。
【0019】
前記目的を達成するため、請求項6に対応する発明は、顕微鏡で観察している試料の光像を、予定焦点面前後に配置された一対の光電変換素子によって受光すると共に前記一対の光電変換素子が出力する各信号から算出される評価関数値を比較して両者の差分又は正規化された差分が予め設定された所定値以内に入るように焦点調節を行うことで前記試料に対する合焦位置を検出する顕微鏡用焦点検出方法において、
前記焦点調節を行う際に前記差分の符号及び焦点調節方向によらず、前記差分が規定値以内となった位置を合焦位置として前記焦点調節を行う第1の合焦制御と、前記焦点調節を行う際に前記差分が前記規定値以内で且つ前記差分の符号及び焦点調節方向が反転した位置を合焦位置として前記焦点調節を行う第2の合焦制御とを顕微鏡光学系の観察倍率に応じて切換え、前記倍率が高倍の場合には第1の合焦制御を選択し、低倍では第2の合焦制御を選択することを特徴とする顕微鏡用焦点検出方法である。
【0020】
前記目的を達成するため、請求項8に対応する発明は、顕微鏡で観察している試料の光像を予定焦点位置前後のコントラスト値を比較して両者の差分又は正規化された差分が予め設定された規定値以内に入るように焦点調節を行うことで前記試料に対する合焦位置を検出する光路差方式の顕微鏡用焦点検出方法において、
顕微鏡光学系の観察倍率を検出して高倍か低倍かを判別し、
前記倍率が高倍である場合、前記焦点調節を行う際に前記差分の符号及び焦点調節方向によらず、前記差分が規定値以内となった位置を合焦位置として前記焦点調節を完了し、前記倍率が低倍である場合は、前記焦点調節を行う際に前記差分が前記規定値以内で且つ前記差分の符号及び焦点調節方向が反転した位置を合焦位置として前記焦点調節を完了することを特徴とする顕微鏡用焦点検出方法である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態について、図面を参照して説明するが、本発明の概要について説明する。すなわち、対物レンズが低倍率の場合、焦点位置検出動作において、前ピン、後ピンのコントラスト値から次の演算式による焦点ずれ量が規定値に入ってもそのまま追い込みを続け、焦点方向が反転するのを確認したところで、焦点検出を完了する。つまり、焦点からのずれ量が小さくなる方向に追い込んできて、ずれ量0点の存在を確認してから停止する制御を行うものである。このような方式で焦点検出を行うことで、極低倍率の対物レンズに対しても高精度な制御が実現できる。
焦点からのずれ量=[(後ピン)−(前ピン)]/[(後ピン)+(前ピン)]
<第1の実施形態>
(構成)
図1は第1の実施形態の概略構成を示すブロック図である。試料1を載せるステージ2と、試料1の光像をとらえる対物光学系例えば対物レンズ3と、試料1の光像を予定焦点面に投影する結像光学系例えば結像レンズ4と、予定焦点面または予定焦点面前後に配置され結像レンズ4によって投影された画像を光電変換された画像情報を出力するイメージセンサ5と、イメージセンサ5によって電気信号に変換された試料1の画像データを所定の評価関数によって処理し焦点からのずれ量・焦点の存在する方向を出力する合焦度評価回路6と、対物レンズ3の倍率などの光学条件を認識し合焦度評価回路6から出力された焦点方向・ずれ量演算結果に基づいて焦点調節を行うためのステージ駆動指令を算出するCPU(中央演算処理回路)7と、CPU7からのステージ駆動指令によりステージ2の駆動量・方向・速度などCPU7から指定された条件に従ってステージ2を上下駆動するステージ駆動回路8から構成される。
【0025】
試料1の光像は対物レンズ3、結像レンズ4を介してイメージセンサ5上に投影される。イメージセンサ5は投影された試料1の画像を光電変換し、画像情報を電気信号として合焦度評価回路6に対して出力する。合焦度評価回路6は、受信した試料1の画像情報に所定の演算処理を加え、焦点からのずれ量、焦点の存在する方向を演算結果としてCPU7に対して出力する。
【0026】
CPU7は合焦度評価回路6からの演算結果と対物レンズ3などの光学条件に基づいて焦点からのずれ量が所定量以内に入るようにステージ2の駆動量、駆動方向、駆動速度などを算出し、ステージ駆動指令をステージ駆動回路8に出力することで試料1に対する焦点状態を調節するようになっている。
【0027】
焦点からのずれ量が所定の範囲以内に入ったら、CPU7は対物レンズ3の倍率を確認して高倍率であればその位置で焦点調節を完了し、また、対物レンズ3が低倍率であれば焦点の存在する方向を確認しながらにステージ2を駆動し、焦点の存在する方向が反転する(焦点ずれ量が0の点を通過する)位置に到達したところで焦点調節を完了する。
【0028】
(動作)
実際の動作の流れについて図2のフローチャートを参照して説明する。
焦点調節動作を開始すると(S0)、先ず焦点からのずれ量をCPU7が読みとる(S1)。
【0029】
次にCPU7は読みとった焦点からのずれ量(焦点ずれ量)が所定の範囲以内であるかを判別し(S2)、判別した結果、焦点からのずれ量が所定範囲以内である場合は、S5に移る。また、S2において判別した結果、焦点からのずれ量が所定量よりも大きい場合、焦点の存在する方向を読みとり(S3)、焦点の存在する方向にステージ2を駆動する(S4)。そして、再度S1に戻り、焦点からのずれ量を確認しながら焦点方向にステージ2を駆動する動作を繰り返し(S1〜S4)、焦点からのずれ量が所定の範囲以内に入ったらS5に移る。
【0030】
S5では、CPU7が対物レンズ3の倍率を確認して(S5)、対物レンズ3の倍率が所定の倍率より高倍かどうかを判別し(S6)、高倍率であればその位置で焦点調節を完了する(S11)。
【0031】
また、対物レンズ3の倍率が所定の倍率よりも低倍率であれば、焦点の存在する方向を読み込み(S7)、焦点の存在する方向にステージ2を駆動して(S8)、CPU7は再度焦点の存在する方向を読み込み(S9)、焦点の存在する方向が前回とは反転したかどうかを判別する(S10)。
【0032】
S10において、焦点の存在する方向が前回と一致していれば再度S7に戻り、焦点の存在する方向にステージ2を駆動する動作を繰り返す(S7〜S10)。
【0033】
S10において、焦点の存在する方向が前回とは反転したことが判別された場合、その位置で焦点調節を完了する(S11)。
このようなステップで焦点調節を行うことにより、特に焦点深度の深い極低倍率の対物レンズを使用した場合においても、繰り返し焦点調整動作を行った結果が焦点ずれ量0付近に集中させることができる。
【0034】
<第2の実施形態>
図3に基づいて本発明の第2の実施形態を説明する。図1の実施形態とは、次に述べる周波数分布演算回路9を新たに追加し、合焦度評価回路6に対して並列に接続した点のみが異なる。周波数分布演算回路9は、イメージセンサ5によって光電変換された画像情報を所定の評価関数によって処理し、試料1の光像の周波数分布を算出するものである。
【0035】
CPU(中央演算処理回路)10は、対物レンズ3の倍率などの光学条件と周波数分布演算回路9から出力された周波数分布情報を認識し合焦度評価回路6から出力された焦点方向・ずれ量演算結果に基づいて焦点調節を行うためのステージ駆動指令を算出するを行うものである。
【0036】
焦点からのずれ量が所定の範囲以内に入ったら、CPU10は対物レンズ3の倍率を確認して高倍率であればその位置で焦点調節を完了する。また、低倍率であれば周波数分布演算回路9から試料1の光像の周波数分布を読みとり、所定の周波数より低域の成分が規定値よりも大きい場合はその位置で焦点調節を完了し、規定値よりも小さい場合は焦点の存在する方向を確認しながらステージ2を駆動し、焦点の存在する方向が反転する(焦点ずれ量が0の点を通過する)位置に到達したところで焦点調節を完了する。以上述べた点以外の構成は、図1と同一であるので、ここではその説明を省略する。
【0037】
次に、図4のフローチャートに基づいて実際の動作の流れについて説明する。焦点調節動作を開始する(S0)と、先ず焦点からのずれ量をCPU10が読み込む(S1)。次にCPU10は焦点からのずれ量が所定の範囲以内であるかを判別し(S2)、S2で判別した結果、焦点からのずれ量が所定範囲以内である場合は、S3に移り、焦点からのずれ量が所定量よりも大きい場合、焦点の存在する方向を読みとり、焦点の存在する方向にステージ2を駆動し(S4)、再度S1に戻り、焦点からのずれ量を確認しながら焦点方向にステージ2を駆動する動作を繰り返し(S1〜S4)、焦点からのずれ量が所定の範囲以内に入ったら、S5に移る。
【0038】
次にCPU10は対物レンズ3の倍率を確認し(S5)、対物レンズ3の倍率が所定の倍率より高倍かどうかを判別する(S6)。S6において、対物レンズ3の倍率が高倍率であると判別すれば、その位置で焦点調節を完了する(S11)。また、S6において対物レンズ3の倍率が低倍率であれば、周波数分布演算回路9から周波数分布情報を読み込み(S12)、この周波数分布情報で所定の周波数より低域の成分が規定値より大きいか判別する(S13)。
【0039】
S13において、周波数分布の低域成分が規定値より大きいと判別した場合はその位置で焦点調節を完了する(S11)。また、S13において周波数分布の低域成分が規定値よりも小さい場合は焦点の存在する方向を読み込み(S7)、焦点の存在する方向にステージ2を駆動して(S8)、CPU10は再度焦点の存在する方向を読み込み(S9)、焦点の存在する方向が前回と反転しているかどうかを判別する(S10)。S10において、焦点の存在する方向が一致していれば再度S7に戻り、焦点の存在する方向にステージ2を駆動する動作を繰り返す(S7〜S10)。
【0040】
S10で焦点の存在する方向が前回と反転することが判別された場合、その位置で焦点調節を完了する(S11)。
このようなステップで焦点調節を行うことにより、特に焦点深度の深い極低倍率の対物レンズを使用した場合においても、繰り返し焦点調整動作を行った結果が焦点ずれ量0付近に集中させることができる。また、極低倍率でも試料の光像の周波数分布によっても例えば低域の成分が大きい場合は低域の成分が小さい場合に比べ、試料1と対物レンズ3の相対的距離を大きくしてもコントラスト値が下がりにくい特徴を有する。
【0041】
従って、図5に示すように所定の周波数よりも低域の成分が大きい場合は高倍率の対物レンズと同様の制御をしても焦点調節の精度を充分確保でき、不必要な動作を避けることができる。
【0042】
<第3の実施形態>
図6に基づいて本発明の第3の実施形態を説明する。図1の実施形態に以下に述べる外部入力装置12を新たに追加し、これをCPU11に入力させるように構成した点が、図1の実施形態とは異なる点である。外部入力装置12は、使用している対物レンズ3の光学的特性および観察している試料1の特徴などの情報を入力するものである。CPU11は、外部入力装置12から入力された対物レンズ3の光学的特性、観察している試料1の特徴を認識し、合焦度評価回路6から出力された焦点方向・ずれ量演算結果に基づいて焦点調節、すなわち焦点からのずれ量が所定量以内に入るようにステージ2の駆動量、駆動方向、駆動速度などを含むステージ駆動指令を算出する。該ステージ駆動指令をステージ駆動回路8に出力することで試料1に対する焦点状態を調節するようになっている。
【0043】
これ以外の点は、図1の実施形態と同一である。
このような構成のものにおいて、試料1の光像は対物レンズ3、結像レンズ4を介してイメージセンサ5上に投影される。イメージセンサ5は投影された試料1の画像を光電変換し、画像情報を電気信号として合焦度評価回路6に対して出力する。合焦度評価回路6は、受信した試料1の画像情報に所定の演算処理を加え、焦点からのずれ量、焦点の存在する方向を演算としてCPU11に対して出力する。CPU11は合焦度評価回路6からの演算結果と対物レンズ3などの光学的条件に基づいて焦点からのずれ量が所定量以内に入るようにステージ2の駆動量、駆動方向、駆動速度などを算出し、ステージ駆動指令をステージ駆動回路8に出力することで試料1に対する焦点状態を調節するようになっている。
【0044】
焦点からのずれ量が所定の範囲以内に入ったら、CPU11は対物レンズ3の光学的特性・観察している試料1の特徴などの情報を外部入力装置12から受け取り、その情報に基づいてさらに真の焦点位置に追い込む必要があるかどうかを判断するとともに、追い込みが充分な対物レンズの倍率であるかを確認して高倍率であればその位置で焦点調節を完了する。
【0045】
また、追い込みが不十分と判断された場合には、焦点の存在する方向を確認しながらにステージ2を駆動し、焦点の存在する方向が反転する(焦点ずれ量が0の点を通過する)位置に到達したところで焦点調節を完了する。
【0046】
次に、図7のフローチャートに基づいて実際の動作の流れについて説明する。焦点調節動作を開始すると(S0)、先ず焦点からのずれ量をCPU11が読みとる(S1)。次にCPU11は焦点からのずれ量が所定の範囲以内であるかを判別し(S2)、判別した結果、焦点からのずれ量が所定範囲以内である場合はS14に移る。S2において、焦点からのずれ量が所定量よりも大きいと判別した場合、焦点の存在する方向を読みとり(S3)、焦点の存在する方向にステージ2を駆動し(S4)、再度S1に戻り、焦点からのずれ量を確認しながら焦点方向にステージ2を駆動する動作を繰り返す(S1〜S4)。このようにして、焦点からのずれ量が所定の範囲以内に入ったら、S14に移る。
【0047】
次にCPU11は、S14において外部入力装置12から使用している対物レンズ3の光学的特性・観察している試料1の特徴などの情報を受け取る(S14)。その情報に基づいてさらに真の焦点位置に追い込む必要があるかどうかを判別し(S15)、追い込む必要がないと判別すればその位置で焦点調節を完了する(S11)。また、さらにS15において、追い込む必要があると判別すれば焦点の存在する方向を読み込む(S7)。そして、焦点の存在する方向にステージ2を駆動し(S8)、CPU11は再度焦点の存在する方向を読み込み(S9)。次に、焦点の存在する方向が前回と一致しているかどうかを判別し(S10)、焦点の存在する方向が前回と一致していれば、再度S7に戻り、焦点の存在する方向にステージ2を駆動する動作を繰り返す(S8〜S10)。
【0048】
S10で焦点の存在する方向が前回と反転することが判別された場合、その位置で焦点調節を完了する(S11)。
このようなステップで焦点調節を行うことにより、特に焦点深度の深い極低倍率の対物レンズを使用した場合においても、繰り返し焦点調整動作を行った結果が焦点ずれ量0付近に集中させることができる。
【0049】
また、極低倍率の対物レンズ使用時やその他顕微鏡の光学系の状況によってステージ上下方向に対するコントラスト値などの合焦度評価結果の変化の度合いは異なるので、外部入力装置12によって観察している顕微鏡の光学系の状態や試料1の特徴の情報を入力できるようにしたことで、焦点調節時の追い込み量を適正にすることができる。
【0050】
<他の実施形態>
以上述べた実施形態は、いずれも対物レンズ3を固定とし、試料1の載置されたステージ2を上下動させて試料1の焦点を合わせる構成について説明したが、ステージ2を固定とし、対物レンズ3を上下動可能な構成とし、これにより試料1の焦点を合わせる構成の顕微鏡であっても同様に実施できる。
【0051】
【発明の効果】
以上述べた本発明によれば、次のような作用効果が得られる顕微鏡用焦点検出装置および顕微鏡用焦点検出方法を提供できる。
(1)焦点深度の深い低倍率の対物レンズを使用した場合においても、繰返し焦点調整動作を行った結果が焦点ずれ量0付近に集中させることができる。
【0052】
(2)所定の周波数よりも低域の成分が大きい場合は高倍率の対物レンズと同様の制御をしても焦点調節の精度を充分確保でき、不必要な動作を避けることができる。
【0053】
(3)焦点深度の深い低倍率の対物レン使用時やその他顕微鏡の光学系の状況によってステージ上下方向に対するコントラスト値などの合焦度評価結果の変化の度合いは異なるので、外部入力手段によって観察している顕微鏡の光学系の状態や試料の特徴の情報を入力できるようにしたことで、焦点調節時の追い込み量を適正にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の顕微鏡用自動焦点検出装置の第1の実施形態を概略構成を示すブロック図。
【図2】図1の実施形態の動作を説明するためのフローチャート。
【図3】本発明の顕微鏡用自動焦点検出装置の第2の実施形態を概略構成を示すブロック図。
【図4】図3の実施形態の動作を説明するためのフローチャート。
【図5】図3の実施形態の作用効果を説明するための低域成分の大小による特性の変化を示す図。
【図6】本発明の顕微鏡用自動焦点検出装置の第3の実施形態を概略構成を示すブロック図。
【図7】図6の実施形態の動作を説明するためのフローチャート。
【図8】従来の光路差方式の顕微鏡用自動焦点検出装置の問題点を説明するためのコントラスト特性を示す図。
【図9】従来の顕微鏡用自動焦点検出装置の問題点を説明するための高倍対物レンズのコントラストカーブを示す図。
【図10】従来の顕微鏡用自動焦点検出装置の問題点を説明するための低倍対物レンズのコントラストカーブを示す図。
【図11】従来の光路差方式の顕微鏡用自動焦点検出装置の問題点を説明するため倍率による焦点ずれ特性を示す図。
【符号の説明】
1…試料
2…ステージ
3…対物レンズ
4…結像レンズ
5…イメージセンサ
6…合焦度評価回路
7…CPU
8…ステージ駆動回路
Claims (8)
- 顕微鏡で観察している試料の光像を、予定焦点前後に配置された一対の光電変換素子によって受光すると共に、前記一対の光電変換素子が出力する各信号から算出される評価関数値を比較して両者の差分又は正規化された差分が予め設定された所定値以内に入るように焦点調節を行うことで前記試料に対する合焦位置を検出する焦点検出装置において、
前記焦点調節を行う際に前記差分の符号及び焦点調節方向によらず、前記差分が規定値以内となった位置を合焦位置として前記焦点調節を行う第1の合焦制御と、前記焦点調節を行う際に前記差分が前記規定値以内で且つ前記差分の符号及び焦点調節方向が反転した位置を合焦位置として前記焦点調節を行う第2の合焦制御とを切換える制御手段とを具備し、
前記制御手段は、顕微鏡光学系の観察倍率に応じて、前記倍率が高倍の場合には第1の制御を選択し、低倍の場合には第2の制御を選択することを特徴とする顕微鏡用焦点検出装置。 - 前記制御手段は、前記光像の周波数分布を検出し、所定の周波数より低域の成分が規定値よりも大きい場合は前記第1の制御を選択し、前記規定値よりも小さい場合は前記第2の制御を選択することを特徴とする請求項1記載の顕微鏡用焦点検出装置。
- 前記観察倍率、前記所定の周波数又は前記規定値を、条件設定値として入力可能な外部入力手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の顕微鏡用焦点検出装置。
- 前記第2の合焦制御は、前記差分が前記規定値以内に入ったと判断された場合でも、さらに焦点に近づく方向に前記試料と対物光学系との相対的距離を調節し、焦点位置を通り越した位置で焦点調節を完了することを特徴とする請求項1記載の顕微鏡用焦点検出装置。
- 顕微鏡で観察している試料の光像を予定焦点位置前後のコントラスト値を比較して両者の差分又は正規化された差分が予め設定された規定値以内に入るように焦点調節を行うことで前記試料に対する合焦位置を検出する光路差方式の焦点検出装置において、
顕微鏡光学系の観察倍率を検出して高倍、低倍の判別を行う判別手段と、
前記焦点調節を行う際に、前記判別手段が、前記観察倍率が高倍であると判別した場合は、前記差分の符号及び焦点調節方向によらず、前記差分が規定値以内となった位置を合焦位置として前記焦点調節を行い、前記観察光学系の倍率が低倍であると判別した場合は、前記差分が前記規定値以内で且つ前記差分の符号及び焦点調節方向が反転した位置を合焦位置として前記焦点調節を行う制御手段と、
を具備したことを特徴とする顕微鏡用焦点検出装置。 - 顕微鏡で観察している試料の光像を、予定焦点面前後に配置された一対の光電変換素子によって受光すると共に前記一対の光電変換素子が出力する各信号から算出される評価関数値を比較して両者の差分又は正規化された差分が予め設定された所定値以内に入るように焦点調節を行うことで前記試料に対する合焦位置を検出する顕微鏡用焦点検出方法において、
前記焦点調節を行う際に前記差分の符号及び焦点調節方向によらず、前記差分が規定値以内となった位置を合焦位置として前記焦点調節を行う第1の合焦制御と、前記焦点調節を行う際に前記差分が前記規定値以内で且つ前記差分の符号及び焦点調節方向が反転した位置を合焦位置として前記焦点調節を行う第2の合焦制御とを顕微鏡光学系の観察倍率に応じて切換え、前記倍率が高倍の場合には第1の合焦制御を選択し、低倍では第2の合焦制御を選択することを特徴とする顕微鏡用焦点検出方法。 - さらに前記光像の周波数分布を検出し、所定の周波数より低域の成分が、規定値よりも大きい場合は前記第1の制御を選択し、前記規定値よりも小さい場合は前記第2の制御を選択することを特徴とする請求項6記載の焦点検出方法。
- 顕微鏡で観察している試料の光像を予定焦点位置前後のコントラスト値を比較して両者の差分又は正規化された差分が予め設定された規定値以内に入るように焦点調節を行うことで前記試料に対する合焦位置を検出する光路差方式の顕微鏡用焦点検出方法において、
顕微鏡光学系の観察倍率を検出して高倍か低倍かを判別し、
前記倍率が高倍である場合、前記焦点調節を行う際に前記差分の符号及び焦点調節方向によらず、前記差分が規定値以内となった位置を合焦位置として前記焦点調節を完了し、前記倍率が低倍である場合は、前記焦点調節を行う際に前記差分が前記規定値以内で且つ前記差分の符号及び焦点調節方向が反転した位置を合焦位置として前記焦点調節を完了することを特徴とする顕微鏡用焦点検出方法。
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