JP4005931B2 - 誘導加熱方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘導加熱方法及び装置に係り、特に複数の誘導加熱コイルを要する制御回路における相互誘導電圧の影響を抑制するのに好適な誘導加熱方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、加熱昇温性・熱効率の良い誘導加熱コイルは、様々な分野で使用されている。しかし、複数箇所の温度を任意に調整しようとする場合、誘導加熱コイルを複数配置し、かつ個別に制御する必要が生じる。隣接配置された複数の誘導加熱コイルを同時に起動する場合、各誘導加熱コイル間には相互誘導電圧の影響による干渉が生じる。この干渉により各誘導加熱コイルに投入する電力の制御が不能となり、被加熱物の温度制御を行うことができなくなってしまうことがある。
【0003】
このような相互誘導電圧の影響を抑制・回避する手段として、例えば特許文献1の発明を挙げることができる。特許文献1の発明は、複数の加熱ユニットのうち一つをメイン加熱ユニットとして、他をそれに従属させるように制御するものである。詳しくは、複数の加熱ユニットを稼動させる際に各々の電流の位相差を検出し、各々の加熱ユニットに設けられたインバータを制御し、前記メイン加熱ユニットに従属させるようにして相互誘導電圧の影響を回避するというものである。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−260833号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1のような構成の回路によれば、確かに相互誘導電圧の影響を回避し、各誘導加熱コイルの投入電力を個別に制御し、被加熱物を任意に温度制御することが可能である。しかしながら、特許文献1の構成の回路においては、投入電力の増大等に伴って相互誘導電圧が増大した場合、インバータ出力電圧を増大させるため、容量の大きいインバータが必要とされる。
【0006】
本発明では、相互誘導電圧が増大した場合であってもインバータ出力を抑えて各誘導加熱コイルの投入電力を制御することができる相互誘導電圧抑制方法及び装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の誘導加熱方法は、隣接して配置した複数の誘導加熱コイルに電流を供給した時に生じる相互誘導電圧を抑制する誘導加熱方法において、隣り合う誘導加熱コイルの回路間に逆極性の起電力を発生させて当該隣り合う回路間における相互誘導電圧の影響を相殺、又は一部相殺した後、前記相互誘導電圧の影響を相殺した後の出力電流を投入電力検出制御器にフィードバックし、当該相互誘導電圧相殺後の電流を基に、相殺されなかった相互誘導電圧の影響を回避するための電力制御信号を生成し、当該電力制御信号を前記投入電力検出制御器から共振型インバータへ送り、被加熱物の温度をゾーンコントロールすることを特徴とする。
【0008】
また、誘導加熱装置については、隣接して配置された複数の誘導加熱コイルを有する誘導加熱装置であって、隣り合うようにして配置された誘導加熱コイルを備える回路に、逆極性の誘導起電力を発生させて前記回路間に生ずる相互誘導電圧を相殺、又は一部相殺する構成要素と、前記構成要素により相互誘導電圧が相殺された後の出力電流に基づく電力制御信号を出力する投入電力検出制御器と、前記投入電力検出制御器により出力された電力制御に基づいて電力制御を行い、前記構成要素により相殺されなかった相互誘導電圧の影響を回避して被加熱物の温度をゾーンコントロールする共振型インバータとを備えたことを特徴とする。
【0009】
【作用】
上記のような誘導加熱方法において、隣り合う誘導加熱コイルの回路間に逆極性の起電力を発生させて当該隣り合う回路間における相互誘導電圧の影響を相殺、又は一部相殺した後、各誘導加熱コイルに投入する電力をインバータによりフィードバック制御して前記相互誘導電圧の影響を回避することにより、影響の大きい相互誘導電圧を相殺するようにした後、インバータ制御により、相殺されなかった相互誘導電圧を回避するようにしているため、相互誘導電圧の増大に伴うインバータ容量の増大を避けることができる。
【0010】
上記方法を実現するための回路として、隣り合うようにして配置された誘導加熱コイルを備える回路に、逆極性の誘導起電力を発生させて前記回路間に生ずる相互誘導電圧を相殺、又は一部相殺する構成要素と、前記構成要素により相殺されなかった相互誘導電圧を相殺、または一部相殺して複数の誘導加熱コイルのそれぞれをゾーンコントロールする共振型インバータとを備えるようにすることにより、大きな影響を奏する相互誘導電圧を逆極性の誘導起電力を発生させる構成要素により相殺、又は一部相殺した後、さらにインバータ制御により相互誘導電圧の影響を回避するため、相互誘導の影響の略全てを回避することができ、かつ上記方法の効果を奏することができる。また、相互誘導電圧の回避手段を2通りとしたことにより、1通りの手段とする場合に比べ、装置にかかる負担又は装置自体を軽減することができる。例えば、インバータ制御のみの場合は、前記した通り相互誘導電圧の増大に伴う容量の増大が否めない。また、逆極性の誘導起電力を発生させる構成要素のみで相互誘導電圧の回避を完全に行おうとする場合は、誘導加熱コイルが増えるに従い、当該構成要素を相互誘導電圧の影響が及ぶコイルの数に従って増やさなければならない。このため、設置コスト、メンテナンス、制御・調整等の面から考えると現実的でなくなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係る誘導加熱装置の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態を示す概要構成図である。この誘導加熱装置10は、電力を供給する電源部30と、供給電流を整流する順変換部40及び、駆動制御回路20(20m、20s)と負荷コイル部22(22m、22s)とから構成される複数の加熱ユニットとから成る。
【0012】
本実施形態では、複数の誘導加熱コイル56の相互誘導電圧の影響(干渉)により生じる干渉起電力(誘導起電力)を後述する逆極性の誘導起電力を発生させる構成要素である逆接続トランス64により相殺しつつ、複数の誘導加熱コイル56をそれぞれ制御することが可能なインバータ52により個別に電力制御することにより回避するようにしている。これにより、隣接配置された個々の誘導加熱コイル56への投入電力を個別に制御しても相互誘導の影響を回避することができ、被加熱物をその要求温度分布となるようにゾーンコントロールすることができる。
【0013】
前記逆接続トランス64は、隣り合う誘導加熱コイル56を有する負荷コイル部22等に、例えばコイルの巻き方向が逆向きである等により各々の極性が逆になるように向かい合わせに備えられる調整コイル63により構成される。つまり、トランスの1次コイルと2次コイルの双方に、対向する方向の電流を流すようにすれば、互いのコイルに逆極性の磁場が発生し相互誘導電圧(磁場による起電力)を相殺し合うという原理である。前記逆接続トランス64によれば、相互誘導電圧の影響(干渉)が最も大きい隣り合う回路中に発生する干渉起電力(誘導起電力)を相殺して、または影響を及ぼしている相互誘導電圧全体の内の一部を相殺して、インバータ52の負荷を軽減する役割を果たす。
【0014】
よって本実施形態における各加熱ユニットの負荷コイル部22には、相互誘導電圧を発生する回路のそれぞれに、逆接続トランス64を構成するように調整コイル63が設けられている。また、任意の誘導加熱コイル56mとその駆動制御回路20mとをメインユニットとし、その他の誘導加熱コイル56s1、56s2・・・56sxと駆動制御回路20s1、20s2・・・20sxとをサブユニットとしている。
【0015】
この実施形態では、メインユニット並びにサブユニットの各々は、共通の電源部30から順変換部40を介して電源供給を受けて駆動されるようになっており、メインチョッパ50m、サブチョッパ50s(s1〜sx以下同じ)を備えて電力調整ができるようになっている。チョッパ50の出力側にはインバータ52(52m、52s)が接続されている。各インバータ52の出力側の誘導加熱コイル56を含む負荷コイル部22(22m、22s)には、コンデンサ54(54m、54s)が誘導加熱コイル56と直列に接続して直列共振回路を構成している。さらに、前記負荷コイル部22(22m、22s)には、前記誘導加熱コイル56と直列に1個または2個の逆接続トランス64が構成されている。逆接続トランス64を構成する調整コイル63は、対向するコイルと極性を逆とするため、相互誘導電圧の影響が最も大きい隣り合う回路間の相互誘導電圧を相殺させるようにすることが望ましい。これらの構成により、各誘導加熱コイル56を制御しつつ、被加熱物の加熱制御をすることができる。
【0016】
ところで、本実施形態では、複数の誘導加熱コイル56を作動させることによって生じる相互誘導電圧の影響を回避するために、隣り合う誘導加熱コイル56間に生じる干渉起電力(誘導起電力)を相殺し、かつ複数の加熱ユニットにおける誘導加熱コイル56への投入電力をインバータ52の制御をすることにより調整するようにしている。このため、各サブユニットには、投入電力検出制御器62を付帯させており、メインユニットの負荷コイル部22mに投入される電力と、サブユニットの負荷コイル部22sに投入される電力とを入力し、両者に発生する相互誘導電圧の影響を回避するようにインバータ52sを駆動制御するようにしている。これにより、メインユニットとサブユニットの各チョッパ50にて誘導加熱コイル56が必要とする投入電力を調整しても、隣接する誘導加熱コイル56間で相互誘導による影響を完全に又は、最小限に抑制することができるので、電力調整を安定して行わせることができ、各誘導加熱コイル56で加熱される被加熱物の温度を任意に設定することができ、昇温を高速に行わせつつ、ゾーンコントロールをすることが可能となるのである。また、相互誘導電圧が生ずる各負荷コイル部22に逆接続トランス64を構成するようにしたことにより、最も大きい相互誘導電圧の影響を相殺することができる。このため、誘導加熱コイル56への入力電力が増大し、それに伴い相互誘導電圧が増大した場合であっても投入電力を制御するインバータ52の出力及び容量を低減させることが可能となる。さらに、負荷コイル部22(22m、22s)には、誘導加熱コイル56と直列に変流器58(58m、58s)が設けられており、その出力電流を投入電力検出制御器62にフィードバックするようになっている。このフィードバック値を基にインバータ52に電力制御信号が送られる。
【0017】
上記のような実施形態において、誘導加熱コイル56を有する複数の加熱ユニットの負荷コイル部22の各々に、逆接続トランス64を構成するようにしたことにより、大きな影響を奏する相互誘導電圧を相殺、又は一部相殺した後、さらにインバータ制御により相互誘導電圧の影響を回避することとなるため、相互誘導の影響の略全てを回避することができ、かつインバータ52の容量を低減させることができる。また、相互誘導電圧の回避手段を逆接続トランス64と、インバータ52との2通りとしたことにより、どちらか片方の手段で相互誘導電圧の回避を行おうとする場合に比べ、装置にかかる負担又は装置自体を軽減することができる。例えば、インバータ制御のみの場合は、相互誘導電圧の増大に伴う容量の増大が否めない。また、逆接続トランス64のみで相互誘導電圧の回避を完全に行おうとする場合は、誘導加熱コイル56の数が増えるに従い、当該逆接続トランス64の数を、相互誘導電圧の影響が及ぶコイルの数に従って増やさなければならない。このため、設置コスト、メンテナンス、制御・調整等の面から考えると現実的でなくなる。
【0018】
また、上記実施形態において、逆接続トランス64の調整コイル63に図示しない鉄心を入れて逆誘導の効率を上げるようにしても良い。
また、実施形態では、逆極性の誘導起電力を発生させる構成要素を逆接続トランス64としたが、これに限定せず、ブスバー等によって逆極性の誘導起電力を発生させるようにしてもよい。
【0019】
【発明の効果】
上記実施形態において、隣接して配置した複数の誘導加熱コイルに電流を供給した時に生じる相互誘導電圧を抑制する誘導加熱方法において、隣り合う誘導加熱コイルの回路間に逆極性の起電力を発生させて当該隣り合う回路間における相互誘導電圧の影響を相殺、又は一部相殺した後、前記相互誘導電圧の影響を相殺した後の出力電流を投入電力検出制御器にフィードバックし、当該相互誘導電圧相殺後の電流を基に、相殺されなかった相互誘導電圧の影響を回避するための電力制御信号を生成し、当該電力制御信号を前記投入電力検出制御器から共振型インバータへ送り、被加熱物の温度をゾーンコントロールする
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態の概案を示す図である。
【符号の説明】
10………誘導加熱装置、20………駆動制御回路、22………負荷コイル部、30………電源部、40………順変換部、50………チョッパ、52………インバータ、54………コンデンサ、56………誘導加熱コイル、58………変流器、62………投入電力検出制御器、63………調整コイル、64………逆接続トランス。

Claims (2)

  1. 隣接して配置した複数の誘導加熱コイルに電流を供給した時に生じる相互誘導電圧を抑制する誘導加熱方法において、隣り合う誘導加熱コイルの回路間に逆極性の起電力を発生させて当該隣り合う回路間における相互誘導電圧の影響を相殺、又は一部相殺した後、前記相互誘導電圧の影響を相殺した後の出力電流を投入電力検出制御器にフィードバックし、当該相互誘導電圧相殺後の電流を基に、相殺されなかった相互誘導電圧の影響を回避するための電力制御信号を生成し、当該電力制御信号を前記投入電力検出制御器から共振型インバータへ送り、被加熱物の温度をゾーンコントロールすることを特徴とする誘導加熱方法。
  2. 隣接して配置された複数の誘導加熱コイルを有する誘導加熱装置であって、隣り合うようにして配置された誘導加熱コイルを備える回路に、逆極性の誘導起電力を発生させて前記回路間に生ずる相互誘導電圧を相殺、又は一部相殺する構成要素と、前記構成要素により相互誘導電圧が相殺された後の出力電流に基づく電力制御信号を出力する投入電力検出制御器と、前記投入電力検出制御器により出力された電力制御に基づいて電力制御を行い、前記構成要素により相殺されなかった相互誘導電圧の影響を回避して被加熱物の温度をゾーンコントロールする共振型インバータとを備えたことを特徴とする誘導加熱装置。
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