JP4005803B2 - 流体解析方法、及び、その流体解析方法を用いた流体解析装置 - Google Patents

流体解析方法、及び、その流体解析方法を用いた流体解析装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、解析対象とする設計領域内を小さな固体が無数に散らばっている多孔質体と仮定し、上記設計領域を複数の演算領域に細分割して流体の解析を行う流体解析方法、及び、その流体解析方法を用いた流体解析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、空調ダクト等の設計においては、限られたスペース内で配風要件を満足させ、しかも圧力損失の少ないダクト形状を検討することが必要である。このようなことから、本発明者は、社団法人自動車技術会 学術講演会前刷集964 No.9636899(1996年10月)において、圧力損失の少ないダクトを最適ダクトと定義し、限られたダクト容積で出入り口間を連結する概念形状を求めるダクトレイアウト最適化の手法を提案している。
【0003】
このダクトレイアウト最適化の手法では、設計領域として、図12に示すように、内部に小さな固体が無数に散らばっている多孔質体を考え、この多孔質体の空隙率に相当する流動抵抗が流体に作用するものとする。そして、例えば図13に示すような検討空間(設計領域)を、図14(a)、図14(b)、或いは、図14(c)に示すような、複数の演算領域に細分割(複数の計算セルに細分割)して考え、設計領域内に占める物体の容積を一定に保ちながら(図15におけるダクト容積:これが制約条件となる)、多孔質体の空隙率をコントロールすることで圧力損失の少ない概念形状を求める手法である。すなわち、圧力勾配の大きい、流れやすい計算セルの空隙率を大きく、逆に圧力勾配の小さい、あまり流れのない計算セルの空隙率を小さくコントロールする。こうして得られる結果から、例えば、空隙率が0.5の等値面を境界部位としてポスト処理することで物体形状(概念形状)を求めるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のダクトレイアウト最適化の手法では、計算当初に設定しておいた計算セルによっては、図14(a)に示すように計算セルのサイズが粗い場合には、図16(a)に示すように物体形状が滑らかに表現することができないという問題があり、逆に図14(b)に示すように各計算セルのサイズが細かすぎると演算負荷が大きくなるという問題がある。また、図14(c)に示すように各計算セルの密度が不均一な場合には、形状表現にムラを生じてしまい、図16(c)に示すように、精度の良い滑らかな物体形状が得られないという問題がある。精度の良い滑らかな物体形状を得るために、予め必要な部位の計算セルのサイズを細かくしておくことも考えられるが、予め必要な部位を予想して他の部位と調整しながら細かく分割しておくことは困難で、このような作業を行うことは解析方法の汎用性を低下させる一因となってしまう。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、汎用性に優れ、また、演算負荷が必要以上に増加することなく、且つ、精度良く滑らかな物体形状を解析し得ることが可能な流体解析方法、及び、その流体解析方法を用いた流体解析装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1記載の流体解析方法は、解析対象とする設計領域内を小さな固体が無数に散らばっている多孔質体と仮定し、上記設計領域を複数の演算領域に細分割して流体の解析を行う流体解析方法であって、上記解析対象とする設計領域には、更なる細分割を実行する領域と更なる細分割を禁止する領域の少なくともどちらかを予め設定自在で、上記複数の演算領域の細分割を変更自在とすることを特徴とする。
【0007】
すなわち、請求項1記載の流体解析方法は、解析対象とする設計領域内を小さな固体が無数に散らばっている多孔質体と仮定し、設計領域を複数の演算領域に細分割し、更に、必要に応じて複数の演算領域の細分割を変更して、流体の解析を行う。このため、様々な設計領域で応用が可能で汎用性に優れ、また、演算領域の細分割の変更は、精度良く滑らかな物体形状を解析する部位にのみ行えば良いため、演算負荷が必要以上に増加することがない。また、解析対象とする設計領域には、更なる細分割を実行する領域と更なる細分割を禁止する領域の少なくともどちらかを予め設定自在であり、ユーザがより深く解析したい部位や、或いは、解析を必要としない部位における演算の節約を図れるように満足して、ユーザにとっての利便性をより向上させる。
【0008】
また、本発明の請求項2記載の流体解析方法は、請求項1記載の流体解析方法において、上記複数の演算領域毎に、連続の式と流れの運動方程式に基づき所定のパラメータを演算する手順を有し、上記所定のパラメータが予め設定しておいた範囲の値の演算領域を更に細分割することを特徴とする。
【0009】
すなわち、請求項2記載の流体解析方法は、請求項1記載の流体解析方法において、複数の演算領域毎に、連続の式と流れの運動方程式に基づき所定のパラメータを演算し、所定のパラメータが予め設定しておいた範囲の値の演算領域を更に細分割する。
【0010】
更に、本発明の請求項3記載の流体解析方法は、請求項1又は請求項2に記載の流体解析方法において、上記複数の演算領域毎に、連続の式と流れの運動方程式に基づき所定のパラメータを演算する手順と、上記所定のパラメータが予め設定しておいた値の部位を境界部位として連続させる手順とを有し、上記境界部位の形状の変化量が予め設定する値を超える際に、該境界部位が存在する演算領域を更に細分割することを特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項3記載の流体解析方法は、請求項1又は請求項2に記載の流体解析方法において、複数の演算領域毎に、連続の式と流れの運動方程式に基づき所定のパラメータを演算し、所定のパラメータが予め設定しておいた値の部位を境界部位として連続させる。そして、境界部位の形状の変化量が予め設定する値を超える際に、境界部位が存在する演算領域を更に細分割する。
【0014】
更に、本発明の請求項記載の流体解析方法は、請求項1乃至請求項の何れか一つに記載の流体解析方法において、上記複数の演算領域の細分割の変更で、更なる細分割を繰り返して実行する際は、元の領域の細分割を実行して形成した領域を元の領域に対する1世代後の子の領域とし、該子の領域の細分割を実行して形成した領域を上記元の領域に対する2世代後の孫の領域として複数世代で形成する場合、2世代以上離れて形成した領域間の隣接を禁止することを特徴とする。
【0015】
すなわち、請求項記載の流体解析方法は、請求項1乃至請求項の何れか一つに記載の流体解析方法において、細分割を繰り返すことによる各演算領域間の接続が不自然となることを防止する。
【0016】
また、本発明の請求項記載の流体解析方法は、請求項1乃至請求項の何れか一つに記載の流体解析方法において、上記複数の演算領域の細分割の変更で、更なる細分割を繰り返して実行する際は、上記細分割した後に上記細分割の対象外となった演算領域は、上記細分割の前の大きさの演算領域に復元自在であることを特徴とする。
【0017】
すなわち、請求項記載の流体解析方法は、請求項1乃至請求項の何れか一つに記載の流体解析方法において、細分割を繰り返すことにより、不要なデータが多く蓄積されることを未然に防止できるようにする。
【0018】
更に、本発明の請求項記載の流体解析装置は、上記請求項1乃至請求項の何れか一つに記載の流体解析方法を備え、流体の解析を行うことを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1〜図11は本発明の実施の一形態に係わり、図1は流体解析装置の機能ブロック図、図2は検討空間の初期計算セルの説明図、図3は細分割処理に係る2つの領域についての説明図、図4は図3の2つの領域の組み合わせについての説明図、図5は細分割する計算セルの形状の説明図、図6は計算セルの細分割処理の世代の説明図、図7は細分割処理を実行する条件の他の例の説明図、図8は細分割処理により新たに細分割処理が必要となる場合の説明図、図9は流体解析プログラムのフローチャート、図10は2次元四角形セルによる流体解析結果の説明図、図11は2次元三角形セルによる流体解析結果の説明図である。
【0020】
図1において、符号1はマイクロコンピュータとその周辺回路を備えて構成された流体解析装置を示し、この流体解析装置1は、初期空隙率設定部2、流れ解析実行部3、圧力空間微分値演算部4、空隙率更新部5、計算セル細分割判断実行部6、更新判断部7、境界部位形成部8、データ出力部9、データ保存部10から主要に構成されている。尚、本発明の実施の形態においては、検討空間(設計領域)として、例えば図13に示す空間、すなわち、左側の壁に垂直吹き出しの入口を有し、右側の壁に自由流出の出口を備えた空間を例に説明する。
【0021】
初期空隙率設定部2は、予め設定された後述の制約ボリュームが入力され、この制約ボリュームが初期空隙率として設定されて、流れ解析実行部3に出力される。制約ボリュームは、図15に示すように、検討空間内において予め指定された、占有することのできるダクト容積を検討空間の全容積で除した(=(ダクト容積)/(検討空間容積))ものである。
【0022】
流れ解析実行部3は、検討空間の境界条件や、初期計算セルの形状等が入力され、以下の多孔質体内における流れの数値計算を実行する。そして、この数値計算により得られた各計算セルの圧力値pは、圧力空間微分値演算部4へと入力される。
・連続の式
∂(ε・ui)/∂xi=0 …(1)
・流れの運動方程式
uj・(∂(ε・ui)/∂xj)=−∂(ε・p)/∂xi+(1/Re)・(∂(ε・ui)/∂xj)−Ri …(2)
ここで、計算セルの空隙率εを次のように定義する。
【0023】
ε=(流体領域の体積)/(計算セル体積) …(3)
u:速度成分、x:座標軸、p:圧力、Re:レイノルズ数、R:流動抵抗(=f(ε,ui))、添え字i,jは、総和規則に従う(=1,2,3)
【0024】
また、初期計算セルの形状は、図2に示すように、2次元における解析では、複数の四角形の計算セル(図2(a))、或いは、複数の三角形の計算セル(図2(b))となっている。
【0025】
更に、図2の実線の閉空間で示すように、検討空間には、例えば長方形(図2(a))、楕円(図2(b))、円及びこれらの組み合わせ形状による幾何学的領域が、ユーザにより任意に設定自在になっており、計算セルの中心が、この領域内にある計算セルを、強制的に更に細分割することや、或いは、細分割することを禁止することが可能になっている。これは、例えば、細分割する領域が図3(a)の斜線のように得られ、強制的に更に細分割する領域を図3(b)の斜線のように設定しておいたものとすると、結果として細分割される領域は図4(a)に示す斜線領域となる。一方、細分割する領域が図3(a)の斜線のように得られ、細分割することを禁止する領域を図3(b)の斜線のように設定しておいたものとすると、結果として細分割される領域は図4(b)に示す斜線領域となる。このような、細分割を選択可能な領域を設けることにより、ユーザが、より高度で緻密な解析を行いたい部位での利便性を図ることができ、また、解析にあまり必要としないデータ部分での演算の削減を行うことが可能となっている。
【0026】
尚、図示はしないが、3次元における解析では、初期計算セルの形状は、複数の6面体の計算セル、或いは、複数の四面体の計算セル等である。この場合においても、検討空間には、例えば円柱や、球及びこれらの組み合わせ形状による幾何学的領域が、ユーザにより任意に設定自在になっており、計算セルの中心が、この領域内にある計算セルを、強制的に更に細分割することや、或いは、細分割することを禁止することが可能になっている。
【0027】
圧力空間微分値演算部4は、流れ解析実行部3から各計算セルの圧力値pが入力され、これら圧力値pの空間微分を演算し、空隙率更新部5に出力する。
すなわち、
∂pi/∂n=(Σ(∂pi/∂xi)(1/2) …(4)
【0028】
空隙率更新部5は、圧力空間微分値演算部4から各計算セルの空間微分値(∂pi/∂n)が入力され、空間微分値(∂pi/∂n)の大きい方から計算セル容積の和を算出し、計算セル容積の和が制約ボリュームと等しくなった時点の空間微分値(∂pi/∂n)(=(∂p/∂n)ε0.5とする)を、空隙率=0.5に更新する。
【0029】
そして、空間微分値(∂pi/∂n)が、(∂p/∂n)ε0.5より大きい計算セルの空隙率εを0.5以上に、小さい計算セルの空隙率εを0.5以下に更新し、これを繰り返し計算することで空隙率εの分布を更新していく。最終的に得られた空隙率分布から、ε=0.5を物体表面形状(ε>0.5を流体領域、ε<0.5を物体領域)と定義するのである。尚、本実施の形態の例では、空隙率εが0.5で設定しているが、制約ボリューム等の条件によっては、他の値、例えば、0.3や、0.2として演算しても良い。
【0030】
このように、空隙率更新部5で更新される各計算セルの空隙率の分布状態は、計算セル細分割判断実行部6へと出力される。
【0031】
計算セル細分割判断実行部6は、空隙率更新部5から各計算セルの空隙率の分布状態が入力され、また、細分割する条件(初期条件:例えば、細分割を行う計算セルの空隙率の範囲εmin〜εmax)が入力されて、各計算セルの細分割の実行可否を判断し、細分割する計算セルを抽出して細分割処理し、細分割処理を終えたデータを更新判断部7に出力する。
【0032】
ここで、計算セルの細分割は、例えば図5に示すように、計算セルの形状によって異なっている。例えば、計算セルが2次元の四角形であれば、図5(a)に示すように、細分割する計算セルは、四角形を4等分するものであり、これを更に細分割する計算セルも、細分割した計算セルを4等分するものとなっている。
【0033】
また、計算セルが2次元の三角形であれば、図5(b)に示すように、細分割する計算セルは、三角形を4等分するものであり、これを更に細分割する計算セルも、細分割した計算セルを4等分するものとなっている。
【0034】
更に、計算セルが3次元の6面体であれば、図5(c)に示すように、細分割する計算セルは、6面体を8等分するものであり、これを更に細分割する計算セルも、図示はしないが、細分割した計算セルを8等分するものとなっている。
【0035】
また、計算セルが3次元の4面体であれば、図5(d)に示すように、細分割する計算セルは、4面体を8等分するものであり、これを更に細分割する計算セルも、図示はしないが、細分割した計算セルを8等分するものとなっている。
【0036】
細分割する計算セルは、図6に示すように、本実施の形態においては、世代で定義する。すなわち、初期の計算セルは、複数の親セルから構成され、この親セルから細分割されたセルは、親セルに対して1代下の代として子セルとして定義する。同様に、子セルから細分割されたセルは、親セルに対して2代下の代として孫セルとして定義する。更に、孫セルから細分割されたセルは、親セルに対して3代下の代としてひ孫セルとして定義する。
【0037】
計算セル細分割判断実行部6では、空隙率が、予め細分割する条件、すなわち、予め設定しておいた初期条件の範囲にある計算セルを抽出し、細分割処理を行うが、以下のような条件としても良い。
【0038】
空隙率が、予め設定した空隙率(例えば0.5)でポスト処理される境界部位(以降、等値面という)の形状変化率が、予め設定する値を超える際に、この等値面が存在する計算セルのみを細分割する。
【0039】
すなわち、図7(a)に示すように、まず、ポスト処理にて空隙率が0.5の等値面を形成する。次いで、これら等値面の各計算セル毎の法線ベクトルn1〜n11を算出し、これら法線ベクトルn1〜n11の隣接するベクトル同士のなす角が、予め設定しておいた角度を超えている場合、その法線ベクトルの等値面が所属する計算セルを、図7(b)に示すように細分割処理する。そして、これを繰り返していくことで、形状変化の大きな部分が滑らかに表現できるようになっている。尚、3次元においても、図7(c)に示すように、上述の2次元の細分割処理と同様に、ポスト処理にて形成した空隙率0.5の各等値面に法線ベクトルm1〜m4を算出し、これら各法線ベクトルの隣接する法線ベクトル同士のなす角を求め、設定値と比較することにより、等値面が所属する計算セルを細分割処理することで行うことができる。
【0040】
また、計算セル細分割判断実行部6では、細分割する計算セルは、滑らかな連続性を維持するために、2世代以上離れた計算セルと隣接しないようにする。特定の計算セルの細分割により、2世代以上離れるような場合は、図8に示すように、例えば、子セルの細分割により新たな孫セルが親セルと隣接するような場合は、この孫セルと隣接する親セルも子セルに細分割する。
【0041】
また、計算セル細分割判断実行部6では、計算セルの細分割を繰り返し、過去に細分割した計算セルにおいて、現在の物体形状表現に使われていない(計算に関与していない)計算セルは、適宜、1世代前の計算セルに戻すことが可能になっている。このようにすることで、全体の計算セル数の削減を図り、データ数を削減することが可能になっている。
【0042】
更新判断部7は、当初入力された演算の更新回数(例えば、100回等)に達しているか否か判定し、演算回数が更新回数に達している場合には、演算により得られたデータを境界部位形成部8に出力する。
【0043】
境界部位形成部8では、入力された各計算セルの空隙率のデータに対し、予め設定しておいた物体表面形状とみなす空隙率、すなわち、0.5の等値面を表示させる。
【0044】
データ出力部9では、境界部位形成部8からのデータを、図示しないモニタに出力させる。また、必要に応じて、等値面を構成する面群データ或いは点群データからCAD(Computer Aided Design)のSurfaceデータ又はVolumeデータを作成しておき、ハードディスク等のデータ保存部10に、IGES形式、STEP形式、或いは、STL形式等のCADで多く用いられるデータ形式で保存する。
【0045】
そして、ダクト等の設計の際に、ハードディスク等のデータ保存部10から、直接、保存しておいた最適な物体表面形状のデータを読み込むことにより、流体解析の設計へのフィードバックが迅速に行われるようになっている。
【0046】
次に、上記構成の流体解析装置1で実行される流体解析について、図9のフローチャートで説明する。
まず、ステップ(以下、「S」と略称)101では、解析に必要なデータの入力が行われる。これは、検討空間の形状や入口・出口の境界条件、初期計算セルの形状、ダクトの制約ボリューム、演算の更新回数、細分割する条件(細分割する計算セルの空隙率の範囲)等である。
【0047】
次いで、S102では、初期空隙率設定部2において、初期空隙率の設定を行う。本実施の形態において、この初期空隙率は、制約ボリュームが初期空隙率として設定される。
【0048】
次に、S103に進み、流れ解析実行部3において、上述の(1)、(2)、(3)式に基づき、各計算セルの流れ解析が実行され、各計算セルの圧力値pが演算される。
【0049】
次いで、S104に進み、圧力空間微分値演算部4において、上述の(4)式に基づき、各計算セルの圧力値pの空間微分を演算する。
【0050】
次に、S105に進み、空隙率更新部5において、各計算セルの空間微分値(∂pi/∂n)の大きい方から計算セル容積の和を算出し、計算セル容積の和が制約ボリュームと等しくなった時点の空間微分値(∂pi/∂n)(=(∂p/∂n)ε0.5とする)を、空隙率=0.5に更新する。
【0051】
そして、空間微分値(∂pi/∂n)が、(∂p/∂n)ε0.5より大きい計算セルの空隙率εを0.5以上に、小さい計算セルの空隙率εを0.5以下に更新し、これを繰り返し計算することで空隙率εの分布を更新していく。最終的に得られた空隙率分布から、ε=0.5を物体表面形状(ε>0.5を流体領域、ε<0.5を物体領域)と定義する。
【0052】
次いで、S106に進み、計算セル細分割判断実行部6において、計算セルを細分割するか否か判定する。この判定は、計算セルの空隙率が、予め細分割する条件、すなわち、予め設定しておいた初期条件の範囲(εmin〜εmax)にあるか否かで行い、計算セルが、初期条件の範囲にある場合には細分割を行うと判定し、初期条件の範囲にない場合には細分割を行わないと判定する。
【0053】
尚、前述の如く、計算セル細分割判断実行部6では、空隙率が、予め設定した空隙率(例えば0.5)でポスト処理される等値面の形状変化率が、予め設定する値を超える際に、この等値面が存在する計算セルのみを細分割するように判定するものであっても良い。
【0054】
そして、上述のS106の判定の結果、計算セルを細分割すると判定した場合はS107に進み、計算セルの細分割を実行し、S108へと進む。一方、S106の判定の結果、計算セルを細分割しないと判定した場合は直接S108へと進む。
【0055】
S108では、初期入力した演算の更新回数に達したか否か判定し、更新回数に達していない場合は再びS103へと戻り演算を繰り返す。
【0056】
一方、S108で演算の更新回数に達したと判定した場合は、S109に進み、境界部位形成部8において、ポスト処理にて空隙率0.5の等値面で最終的な境界部位、すなわち、表面形状を形成する。
【0057】
その後、S110に進み、データ出力部9により、境界部位形成部8からのデータを、モニタ等に出力させる。また、必要に応じて、等値面を構成する面群データ或いは点群データからCAD(ComputerAided Design)のSurfaceデータ又はVolumeデータを作成しておき、ハードディスク等のデータ保存部10に、IGES形式、STEP形式、或いは、STL形式で保存する。
【0058】
このように、本発明の実施の形態により、実際に形成した表面形状の結果を図10、及び、図11に示す。
【0059】
図10は、2次元四角形セルによる流体解析結果の説明図であり、表面形状が存在する部分の計算セルが細分化され、ダクトの形状が滑らかに再現することができている。
【0060】
また、図11は2次元三角形セルによる流体解析結果の説明図であり、この図11も図10と同様に、表面形状が存在する部分の計算セルが細分化され、ダクトの形状が滑らかに再現することができている。
【0061】
そして、図10、図11の図からも分かるように、本発明は、計算セルの大きさや、形状に影響されることがなく、汎用性に優れ、最適なダクト形状を得ることができる。また、計算を行う領域も、ダクト形状が存在する領域に限られるため、演算量が特に大きく増加することも無い。
【0062】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、汎用性に優れ、また、演算負荷が必要以上に増加することなく、且つ、精度良く滑らかな物体形状を解析し得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係る、流体解析装置の機能ブロック図
【図2】同上、検討空間の初期計算セルの説明図
【図3】同上、細分割処理に係る2つの領域についての説明図
【図4】同上、図3の2つの領域の組み合わせについての説明図
【図5】同上、細分割する計算セルの形状の説明図
【図6】同上、計算セルの細分割処理の世代の説明図
【図7】同上、細分割処理を実行する条件の他の例の説明図
【図8】同上、細分割処理により新たに細分割処理が必要となる場合の説明図
【図9】同上、流体解析プログラムのフローチャート
【図10】同上、2次元四角形セルによる流体解析結果の説明図
【図11】同上、2次元三角形セルによる流体解析結果の説明図
【図12】従来のダクトレイアウト最適化の手法を説明する、多孔質体の説明図
【図13】同上、検討空間の説明図
【図14】同上、当初より検討空間に設定される計算セルの説明図
【図15】同上、検討空間内のダクト容積の説明図
【図16】同上、図14の各計算セルにて得られた物体形状の結果の説明図
【符号の説明】
1 流体解析装置
2 初期空隙率設定部
3 流れ解析実行部
4 圧力空間微分値演算部
5 空隙率更新部
6 計算セル細分割判断実行部
7 更新判断部
8 境界部位形成部
9 データ出力部
10 データ保存部

Claims (6)

  1. 解析対象とする設計領域内を小さな固体が無数に散らばっている多孔質体と仮定し、上記設計領域を複数の演算領域に細分割して流体の解析を行う流体解析方法であって、
    上記解析対象とする設計領域には、更なる細分割を実行する領域と更なる細分割を禁止する領域の少なくともどちらかを予め設定自在で、
    上記複数の演算領域の細分割を変更自在とすることを特徴とする流体解析方法。
  2. 上記複数の演算領域毎に、連続の式と流れの運動方程式に基づき所定のパラメータを演算する手順を有し、
    上記所定のパラメータが予め設定しておいた範囲の値の演算領域を更に細分割することを特徴とする請求項1記載の流体解析方法。
  3. 上記複数の演算領域毎に、連続の式と流れの運動方程式に基づき所定のパラメータを演算する手順と、
    上記所定のパラメータが予め設定しておいた値の部位を境界部位として連続させる手順とを有し、
    上記境界部位の形状の変化量が予め設定する値を超える際に、該境界部位が存在する演算領域を更に細分割することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体解析方法。
  4. 上記複数の演算領域の細分割の変更で、更なる細分割を繰り返して実行する際は、元の領域の細分割を実行して形成した領域を元の領域に対する1世代後の子の領域とし、該子の領域の細分割を実行して形成した領域を上記元の領域に対する2世代後の孫の領域として複数世代で形成する場合、2世代以上離れて形成した領域間の隣接を禁止することを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか一つに記載の流体解析方法。
  5. 上記複数の演算領域の細分割の変更で、更なる細分割を繰り返して実行する際は、上記細分割した後に上記細分割の対象外となった演算領域は、上記細分割の前の大きさの演算領域に復元自在であることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか一つに記載の流体解析方法。
  6. 上記請求項1乃至請求項の何れか一つに記載の流体解析方法を備え、流体の解析を行うことを特徴とする流体解析装置。
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