JP4004719B2 - 難燃性樹脂組成物 - Google Patents

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  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性樹脂組成物に関し、詳しくは、難燃剤そのものを含むことなく、米国UL規格94V−2に合格する難燃性を有し、しかも機械的物性バランスにすぐれた難燃性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂とゴム強化スチレン系樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物は、強度特性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性等の物性にすぐれており、従来、OA機器の筐体材料として広く用いられているが、しかし、難燃性が不十分であり、従来、難燃性を向上させる試みが多くなされている。例えば、特開平64−22958号公報には、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂とからなる熱可塑性樹脂組成物に難燃剤として有機ハロゲン化合物を、難燃助剤として三酸化アンチモンを配合して、難燃性を付与することが提案されている。
【0003】
しかし、このように、樹脂にハロゲン化合物を添加した樹脂組成物は、成形時の流動性が低い、熱分解してハロゲン化水素を発生し、金型を腐食させる、樹脂自身を劣化させたり、着色させたりする、更には、作業環境を悪化させる等の問題を有する。ハロゲン化合物を含む樹脂組成物は、燃焼時にダイオキシンを発生させるおそれもある。他方、難燃助剤として用いられる三酸化アンチモンについても、健康に有害であるおそれがあるとされている。
【0004】
このように、従来、用いられている難燃剤や難燃助剤を樹脂に配合することは、種々の問題を生じる。
【0005】
他方、ハロゲンを含まない難燃剤も、従来から知られており、そのような難燃剤として、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を金属水酸化物系の難燃剤を挙げることができる。しかし、これらの金属酸化物系の難燃剤は、上記ハロゲン系難燃剤に比較すれば、難燃化効果が著しく低いので、これらを用いて樹脂に十分な難燃効果を付与するには、多量に添加しなければならないが、多量に添加すれば、樹脂本来の特性が損なわれるという問題が生じる。また、近年、前述したような燃焼時のダイオキシン発生の問題から、ハロゲン系難燃剤に代えて、リン化合物を難燃剤として樹脂に配合することも提案されている。しかし、リン化合物を配合した樹脂組成物によっては、耐衝撃性や耐熱性の低下の問題のほか、埋立て時の土壌汚染、水質汚染等、環境問題の懸念もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の樹脂の難燃化における上述した問題を解決するためになされたものであって、ハロゲン系難燃剤、リン化合物系難燃剤、金属酸化物系難燃剤や三酸化アンチモン等の難燃助剤を一切使用することなく、米国UL規格94V−2に適合する難燃性を有し、しかも、耐熱性と耐衝撃性にすぐれており、物性のバランスにすぐれた難燃性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による難燃性樹脂組成物は、
(A)芳香族ポリカーボネート10〜60重量%と、
(B)ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物をグラフト共重合させてなるグラフト共重合体であって、このグラフト共重合体のアセトン可溶分の重量平均分子量が80000〜220000の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが2.5〜4.0の範囲にあると共に、このグラフト共重合体における枝ポリマーの重量平均分子量が80000〜160000の範囲にあるグラフト共重合体15〜30重量%と、
(C)芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物を共重合してなり、重量平均分子量が50000〜90000の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0の範囲にある硬質共重合体(C−1)と芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物を共重合してなり、重量平均分子量が90000を超えて、160000以下の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが2.0〜3.0の範囲にある硬質共重合体(C−2)とから選ばれる少なくとも1種の硬質共重合体10〜75重量%
とからなることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明による難燃性樹脂組成物において、芳香族ポリカーボネートは、芳香族ジヒドロキシ化合物にホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性重合体である。しかし、上記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部に3官能以上のポリヒドロキシ化合物を用いて、分子鎖に分岐を有せしめてもよい。
【0009】
上記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等を挙げることができる。これらのなかでは、特に、ビスフェノールAが好ましく用いられる。このようなジヒドロキシ化合物は、得られるポリカーボネートの難燃性を高めるために、分子中の芳香環は、スルホン酸テトラアルキルホスホニウム基を有していてもよい。
【0010】
また、上記ポリヒドロキシ化合物として、例えば、
フロログルシン、
4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、
4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、
1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、
1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(即ち、イサチンビスフェノール)、
5−クロルイサチン、
5,7−ジクロルイサチン、
5−ブロムイサチン
等を挙げることができる。
【0011】
上記ポリヒドロキシ化合物の使用量は、通常、上記芳香族ジヒドロキシ化合物の0.01〜10モル%の範囲であり、好ましくは、0.1〜2モル%の範囲である。
【0012】
芳香族ポリカーボネートの製造において、その分子量を調節するには、一価芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよい。このような一価芳香族ヒドロキシ化合物として、例えば、m−又は及p−メチルフェノール、m−又はp−プロピルフェノール、p−t−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等を挙げることができる。
【0013】
本発明において用いる芳香族ポリカーボネートは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂や、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が好ましい。しかし、本発明においては、芳香族ポリカーボネートとして、2種以上の樹脂を混合して用いてもよい。
【0014】
また、本発明において用いる芳香族ポリカーボネートは、塩化メチレン溶液とし、温度25℃で測定した溶液粘度から換算した粘度平均分子量が16000〜30000の範囲にあることが好ましく、特に、18000〜23000の範囲にあるのが好ましい。芳香族ポリカーボネートにおいて、上記粘度平均分子量が上記範囲をはずれるときは、得られる樹脂組成物が成形加工性、耐衝撃性及び耐熱性の少なくともいずれかに劣ることとなり、これらの物性バランスにすぐれた難燃性樹脂組成物を得ることができない。
【0015】
本発明による難燃性樹脂組成物は、このような芳香族ポリカーボネートを10〜60重量%、好ましくは、10〜50重量%の範囲で含む。
【0016】
本発明による難燃性樹脂組成物は、上述したポリカーボネートと共に、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物をグラフト共重合させてなるグラフト共重合体であって、このグラフト共重合体のアセトン可溶分の重量平均分子量が80000〜220000の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが2.5〜4.0の範囲にあると共に、このグラフト共重合体における枝ポリマ−の重量平均分子量が80000〜160000の範囲にあるグラフト共重合体を含む。
【0017】
上記ゴム状重合体としては、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム等が用いられる。これらは、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0018】
また、上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、又はこれらの混合物が好ましく用いられるが、しかし、これら以外にも、必要に応じて、p−メチルスチレン等も用いられる。また、シアン化ビニル化合物としては、通常、アクリロニトリルが好ましく用いられるが、メタクリロニトリルやアクリロニトリルとメタクリロニトリルとの混合物も用いられる。このようなグラフト共重合体は、乳化重合、懸濁重合,塊状重合又はこれらの組み合わせによって製造することができる。
【0019】
本発明によれば、グラフト共重合体は、好ましくは、上記ゴム状重合体30〜70重量%に上記芳香族ビニル化合物25〜40重量%とシアン化ビニル化合物5〜30重量%とをグラフト共重合させてなるものであり、特に、好ましくは、上記ゴム状重合体35〜60重量%に上記芳香族ビニル化合物30〜45重量%とシアン化ビニル化合物10〜20重量%とをグラフト共重合させてなるものである。
【0020】
このグラフト共重合体において、ゴム重合体の含有量が30重量%よりも少ないときは、得られる難燃性樹脂組成物が耐衝撃性に劣り、他方、70重量%を越えるときは、他の共重合体との相溶性が低下するので好ましくない。また、グラフト共重合体における芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物の含有量が上記範囲をはずれるときは、得られる難燃性樹脂組成物が難燃性、成形加工性、耐衝撃性及び耐熱性の少なくともいずれかに劣ることとなり、これら物性のバランスにすぐれる難燃性樹脂組成物を得ることができない。
【0021】
本発明においては、上記グラフト共重合体は、そのアセトン可溶分の重量平均分子量が80000〜220000の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが2.5〜4.0の範囲にある。グラフト共重合体のアセトン可溶分の重量平均分子量又は分子量分布が上記範囲をはずれるときは、得られる難燃性樹脂組成物が米国UL規格94V−2に合格する難燃性をもたない。
【0022】
更に、本発明によれば、上記グラフト共重合体は、その枝ポリマ−の重量平均分子量が80000〜160000の範囲にある。ここに、上記枝ポリマーとは、上記ゴム状重合体を幹とし、これに芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物が化学的に結合して、枝を形成したものをいう。グラフト共重合体において、上記枝ポリマーの重量平均分子量が上記範囲をはずれるときは、得られる難燃性樹脂組成物が米国UL規格94V−2に合格する難燃性をもたない。
【0023】
本発明による難燃性樹脂組成物は、このようなグラフト共重合体を15〜30重量%の範囲で含む。グラフト共重合体の含有量が15重量%よりも少ないときは、得られる難燃性樹脂組成物が耐衝撃性に劣り、他方、30重量%よりも多いときは、得られる脂組成物が米国UL規格94V−2に合格する難燃性をもたない。
【0024】
本発明による難燃性樹脂組成物は、更に、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物を共重合してなる硬質共重合体を含む。この硬質共重合体の単量体成分である芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、又はこれらの混合物が好ましく用いられるが、しかし、これら以外にも、必要に応じて、p−メチルスチレン等も用いられる。また、シアン化ビニル化合物としては、通常、アクリロニトリルが好ましく用いられるが、メタクリロニトリルやアクリロニトリルとメタクリロニトリルとの混合物も用いられる。
【0025】
このような硬質共重合体は、上記単量体を乳化重合、懸濁重合、塊状重合又はこれらの組み合わせからなる重合方法によって製造することができる。
【0026】
本発明によれば、上記硬質共重合体として、次の2種類のうち、少なくとも1種が用いられる。
【0027】
即ち、第1の硬質共重合体(C−1)は、好ましくは、芳香族ビニル化合物50〜80重量%とシアン化ビニル化合物20〜50重量%を共重合してなり、重量平均分子量が50000〜90000の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0の範囲にある。
【0028】
第2の硬質共重合体(C−2)は、好ましくは、芳香族ビニル化合物50〜80重量%とシアン化ビニル化合物20〜50重量%を共重合してなり、重量平均分子量が90000を超えて、160000以下の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが2.0〜3.0の範囲にある。
【0029】
硬質共重合体において、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物の含有量が上記範囲をはずれるときは、得られる難燃性樹脂組成物が成形加工性、耐衝撃性及び耐熱性の少なくともいずれかに劣ることとなり、これら物性のバランスにすぐれる樹脂組成物を得ることができない。同様に、硬質共重合体が上記重量分子量と分子量分布をもたないときは、成形加工性と耐衝撃性とにすぐれ、更に、耐熱性にすぐれる樹脂組成物を得ることができない。
【0030】
本発明による難燃性樹脂組成物は、上記第1の硬質共重合体(C−1)と第2の硬質共重合体(C−2)から選ばれる少なくとも1種を10〜75重量%、好ましくは、20〜75重量%の範囲で含むことによって、耐熱性を確保しつつ、すぐれた成形加工性と耐衝撃性とを有する。難燃性樹脂組成物における硬質共重合体の含有量が上記範囲にないときは、成形加工性と耐衝撃性とにすぐれ、更に、耐熱性にすぐれる樹脂組成物を得ることができない。
【0031】
本発明による難燃性樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネートを上述したようなグラフト共重合体と硬質共重合体と共に通常の混練手段、例えば、押出機、バンバリーミキサー等を用いて均一に混練することによって得ることができる。本発明による難燃性樹脂組成物は、その特性を損なわない範囲において、上記グラフト共重合体と硬質共重合体以外に、安定剤、可塑剤、ガラス繊維、カーボン繊維、タルク、炭酸カルシウム、マイカ等の充填剤、紫外線吸収剤、顔料等の種々の添加剤を含有していてもよい。
【0032】
【実施例】
以下にグラフト共重合体と硬質共重合体の製造例と実施例を比較例と共に挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。製造例において、得られたグラフト共重合体と硬質共重合体の重合体の数平均分子量と重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。
【0033】
製造例1
(グラフト共重合体(B−1)の製造)
蒸留水200重量部にゲル含有率98重量%、重量平均粒子径1800〜3000Åのポリブタジエンゴム50重量部、不均化ロジン酸カリウム1重量部、水酸化ナトリウム0.01重量部、ピロリン酸ナトリウム0.45重量部、硫酸第一鉄0.01重量部、デキストローズ0.57重量部、t−ドデシルメルカプタン0.15重量部及びクメンハイドロパーオキサイド1.0重量部を反応容器に仕込んだ。次に、スチレン38重量部とアクリロニトリル12重量部とを連続的に仕込みながら、60℃から反応を開始し、途中で75℃まで昇温し、2時間後、乳化グラフト重合を停止して、グラフト共重合体(B−1)を得た。単量体転化率は96%であった。
【0034】
こにして得られたグラフト共重合体のアセトン可溶分の重量平均分子量は123000であり、分子量分布Mw/Mnは2.8であった。また、このグラフト共重合体における枝ポリマーの重量平均分子量は135000であった。
【0035】
製造例2
(グラフト共重合体(B−2)の製造)
蒸留水200重量部にゲル含有率98重量%、重量平均粒子径1800〜3000Åのポリブタジエンゴム50重量部、スチレン38重量部、アクリロニトリル12重量部、不均化ロジン酸カリウム1重量部、水酸化ナトリウム0.01重量部、ピロリン酸ナトリウム0.45重量部、硫酸第一鉄0.01重量部、デキストローズ0.57重量部、t−ドデシルメルカプタン0.08重量部及びクメンハイドロパーオキサイド1.0重量部を仕込み、60℃から反応を開始し、途中で75℃まで昇温し、2時間後,乳化グラフト重合を停止して、グラフト共重合体(B−2)を得た。単量体転化率は98重量%であった。
【0036】
このようにして得られたグラフト共重合体のアセトン可溶分の重量平均分子量は380000であり、分子量分布Mw/Mnは5.0であった。また、このグラフト共重合体における枝ポリマ−の重量平均分子量は110000であった。
【0037】
製造例3
(硬質共重合体(C−1)の製造)
蒸留水120重量部にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.003重量部、スチレン75重量%とアクリロニトリル25重量%とからなるビニル単量体混合物100重量部、t−ドデシルメルカプタン0.8重量部、過酸化ベンゾイル0.15重量部及びリン酸カルシウム0.5重量部を反応容器に仕込み、110℃で10時間懸濁重合して、硬質共重合体(C−1)を得た。この硬質共重合体(C−1)の重量平均分子量は67000、数平均分子量は31000であり、従って、分子量分布Mw/Mnは2.1であった。
【0038】
製造例4
(硬質共重合体(C−2)の製造)
蒸留水120重量部にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.003重量部、スチレン77重量%とアクリロニトリル23重量%とからなるビニル単量体混合物100重量部、t−ドデシルメルカプタン0.3重量部、過酸化ベンゾイル0.15重量部及びリン酸カルシウム0.5重量部を反応容器に仕込み、110℃で10時間懸濁重合して、硬質共重合体(C−2)を得た。この硬質共重合体(C−2)の重量平均分子量は151000、数平均分子量は66000であり、従って、分子量分布Mw/Mnは2.3であった。
【0039】
製造例5
(硬質共重合体(C−3)の製造)
蒸留水120重量部にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.003重量部、スチレン73重量%とアクリロニトリル27重量%とからなるビニル単量体混合物100重量部、t−ドデシルメルカプタン0.2重量部、過酸化ベンゾイル0.15重量部及びリン酸カルシウム0.5重量部を反応容易に仕込み、110℃で10時間懸濁重合して、硬質共重合体(C−3)を得た。この硬質共重合体(C−3)の重量平均分子量は215000、数平均分子量は71000であり、従って、分子量分布Mw/Mnは3.0であった。
【0040】
実施例1〜6及び比較例1〜6
芳香族ポリカーボネート(三菱エンジニアリング(株)製ユーピロンS−3000、粘度平均分子量21000)に上記製造例において得られたグラフト共重合体と硬質共重合体を表1に示す割合で加え、バンバリーミキサ−にて混練した後、ペレット化した。得られたペレットを260℃で射出成形して試験片を得、この試験片について下記の方法で流動性、熱変形温度、メルトフローインデックス及び難燃性を評価した。結果を表1及び表2に示した。
【0041】
流動性
ショートショット圧力(SSP)を流動性の指標とた。即ち、射出成形機(東芝機械(株)製IS55FP)を用いてASTM D638引張試験片(厚み3.2mm)を成形するに際して、成形温度(260℃)と射出速度を一定としたときの最小充填圧力を測定し、これを流動性の指標とした。
熱変形温度
ASTM D648に準拠し、厚み6.4mmの試験片を用いて、荷重1.82MPaの下に測定した。
アイゾット衝撃強度
ASTM D256に準拠し、厚み3.2mmのVノッチ付き試験片を用いて、温度23℃で測定した。
UL燃焼試験
米国アンダーライターラボラトリーズ発行のUL94に準拠した方法によって、厚み1.6mmの試験片についてV−2試験を行なった。
【0042】
【表1】
Figure 0004004719
【0043】
【表2】
Figure 0004004719
【0044】
比較例1によるグラフト共重合体と硬質共重合体との混合物は、米国UL規格94V−2を満たす難燃性をもたず、耐衝撃性に劣るのみならず、耐熱性にも劣る。比較例2による難燃性樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネートの配合割合が高く、成形加工性に劣る。比較例3〜5による樹脂組成物は、グラフト共重合体の重量平均分子量が大きすぎるので、米国94V−2に規定する難燃性をもたない。比較例6による樹脂組成物は、グラフト共重合体の配合割合が高く、成形加工性に劣るのみならず、米国94V−2に規定する難燃性をもたない。
【0045】
これに対して、本発明による難燃性樹脂組成物は、米国UL規格94V−2に合格する難燃性を有し、しかも機械的物性バランスにすぐれている。
【0046】
【発明の効果】
以上のように、本発明による難燃性樹脂組成物は、ポリカーボネートにゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物をグラフト共重合させてなるグラフト共重合体と芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物を共重合してなる硬質共重合体をそれぞれ所定の範囲で配合してなり、難燃剤を含むことなく、米国UL規格94V−2に合格する難燃性を有し、しかも、機械的物性バランスにすぐれている。

Claims (5)

  1. (A)芳香族ポリカーボネート10〜60重量%と、
    (B)ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物をグラフト共重合させてなるグラフト共重合体であって、このグラフト共重合体のアセトン可溶分の重量平均分子量が80000〜220000の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが2.5〜4.0の範囲にあると共に、このグラフト共重合体における枝ポリマーの重量平均分子量が80000〜160000の範囲にあるグラフト共重合体15〜30重量%と、
    (C)芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物を共重合してなり、重量平均分子量が50000〜90000の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0の範囲にある硬質共重合体(C−1)と芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物を共重合してなり、重量平均分子量が90000を超えて、160000以下の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが2.0〜3.0の範囲にある硬質共重合体(C−2)とから選ばれる少なくとも1種の硬質共重合体10〜75重量%
    とからなることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
  2. グラフト共重合体がゴム状重合体30〜70重量%の存在下に芳香族ビニル化合物25〜40重量%とシアン化ビニル化合物5〜30重量%とをグラフト共重合させてなるものである請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
  3. 芳香族ビニル化合物がスチレンであり、シアン化ビニル化合物がアクリロニトリルである請求項2に記載の難燃性樹脂組成物。
  4. 硬質共重合体が芳香族ビニル化合物50〜80重量%とシアン化ビニル化合物20〜50重量%を共重合してなるものである請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
  5. 芳香族ビニル化合物がスチレンであり、シアン化ビニル化合物がアクリロニトリルである請求項4に記載の難燃性樹脂組成物。
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